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秋の夕暮れ。空に漂うあかね雲。夏の匂いがほのかに残る9月の初旬。僕はある山のふもとで暮らしていた。小さな丘が至るところに突出している。その中の、ある丘の上に小さな家が建っていた。僕が帰るころには既にあたりは闇に染まっている。その中でポツンと浮かぶ灯の光。その灯を見ると僕は立ち止まってしまう。しばらく何も考えずにぼんやりとその灯を観続ける。その間に、僕を囲む芝生は草と草が擦れる僅かな音をのせてさざ波をたて、上空の星々は静かに光を降り注いぐ。ある日、いつものように僕がその丘の前を通りかかったとき、灯は消えていた。出掛けているのか、と思い特に気にはしなかったが、頭にはなにか妙なひっかかりが残った。それから数日経っても灯は燈らなかった。僕は日が経つにすれ何故か焦りを憶え、家に帰ってもその状態から抜け出す事が出来なかった。真夜中に何度も目を覚まし、その度に異常なほどの渇きを覚えた。冷蔵庫から水を取り出し一気に飲み干す。窓から見える空には、不気味なほど明るい光を放っている月がポッカリと浮かんでいた。死んだ魚が虚ろな目で僕を見る。一週間が経ったが、灯は燈らなかった。僕は一度その家の近くまで行ってみる事にした。仕事は相変わらず日常の延長線上にあったがその日は休む事にした。会社は何も言わなかった。電話を置くと、早速トートバッグに簡単な軽食を入れ、ポロシャツに着替えて、ボロボロのジーパンを穿いた。靴箱からコンバースのシンプルなデザインの靴を選び、汚れ防止のスプレーをかけた。鏡を見つめて最終チェックを繰り返す。外に出ると陽は既に高く上り、大きな入道雲を傘下におさめていた。僕は歩き始めた。いつもの灯を眺める場所に着いた。時計を見ると既に一時をまわっていた。すぐ近くにあった大きな平たい石に腰をかけて昼食をとった。陽の光を体で受けているために、石は暖かかった。朝早く起きて握ったおにぎりをむしゃむしゃと食べながら、こんなにのんびりするのはいつ以来だろうと考えた。毎日の決まりきった生活は僕から考える力や独創性を奪っていく。そしてそれを奪われていると感じる心さえもいつの間にか掠れていく。蚊が血を吸うように。色をつけすぎて真っ黒になってしまったキャンパスのようだ。しかし、だからと言って新しいキャンパスに絵を描くわけにはいかない。人間は一生のうちに一枚の絵しかを描ききる事は出来ないのだ。中には描ききれないまま死んでいくものも居るだろう。充分なほどの画材を持ち合わせるには血肉を争うほどの努力が要る。しかし結果、それが自らのキャンパスを描き切るための充分なほどの画材になるとは限らない。色を数千色持っていたところで使い方を間違えれば、何にも染まぬ黒になる。一色だけでも人生は描ける。いずれにせよ、キャンパスに色はつくのだ。一色だろうが千色だろうが真っ白なままのキャンパスでは生きてはいけない。僕は色をどのようにつけてきたのだろう。間違えずに筆をふるうことをができたのだろうか。いや、どのようにふるっても結果は同じなのだ。今の僕にはあの灯があるだけでいい。極めてどうでもいい話しだ。既に歩き始めて2時間は経過した。足の疲労もピークに達している。足が棒になるとはこのようなことだったのか、と思うと同時に勉強だけを重ねた学生時代を思い出す。勉強とは自らが結論を持っていく学問ではない。既に在る事を暗記するだけの記憶力検査である。やればできるのは当たり前だろう。既に中学の時に僕はそれをわかっていた。だから勉強をして大企業に入った。しかし、その時既に僕は真っ黒だった。目前に迫るナニモノカさえ感じる事はできない体になっていた。今でさえ僕は足の感覚がなくなることを察知できなかった。自分の体さえ把握できない。何故歩くのかさえわからない。灯を見たいがために歩いているのか。それは目標なのだろうか。目標とは?中間?終り?あるいは始まり?わからない。わからない事が多すぎる。僕に分かる事といえば、あの灯を僕が見たいという気持ちだけだ。夕陽がオレンジ色に僕のキャンパスを染める。僕は小さな家の前に立っていた。北欧の農村にあるような蔦が絡まったレンガ造りで、周りには様々な種類の花が植えてあったが暗いためぼんやりとしている。僕はガラス細工が嵌め込まれた木の扉をノックした。不思議と迷いはなかった。扉はとても美しかった。よく観ると、ガラス細工は魚を形作っていた。目のところには大きな赤いサファイヤが埋め込まれ、月の光を反射させている。その向こうでランプの光がちらちらと揺れた。僕は体勢を立て直すと、夜空の星を見上げた。扉は古い木々が擦れる甲高い音を立て、開いた。真っ赤なワンピースに灰色の毛糸のセーターを羽織ったショートカットの少女が立っていた。「何か御用ですか。」と彼女は言った。僕はなんて話せばいいか分からず、ポケットの煙草を取り出して火をつけてあたりを眺めるふりをした。ここに来るまでに何を話せばいいのかなんて全く考えていなかったのだ。「いいや、特に用は無いんだが。それにしても不思議な家に住んでいるね。ひとりで住んでるの。」「用は無いんですか。」と少女は僕の質問を無視してもう一度尋ねた。「いや、実はここのところこの家の灯がついてなかったからどうしたのか聞きたくなったんだ。」と、僕は答えた。少女は一瞬僅かに顔を変えたが、すぐに無表情な顔に戻った。「入って。」彼女は両手を両肩に乗せたまま僕を中に入れた。家の中は外観からは予想もつかないほど広かった。「そこに座ってて。」と少女はソファーを顎で指した。僕はソファーに座った。少女は木々を暖炉に押し入れ、飴細工のように丁寧にマッチで火をつけた。こぼれるような吐息で火を吹き消すと、廊下の奥の部屋に消えた。僕はぼんやりと部屋を眺めた。暖炉の上には大きな鹿の頭部の剥製が飾られ、壁には数枚写真が掛かっていた。その下にはチェストが並び、引き出しが所々開けっ放しになっていた。僕の前には平たいガラステーブルが置かれ、それを囲むようにソファーが位置していた。ソファーの間にはCDラックが置かれていた。僕の中には先ほどから既視感が駆け回っていた。暖炉からはパチパチと音が弾ける。少女はコーヒーカップを二つ持って、一つを僕の前に置き、自分は持ったままふらふらと周りを歩いた。コーヒーは、まさにコーヒーだった。僕にとって、体が棺にぴったりと嵌るようにまさにこれはコーヒーだった。「何故火を燈さなくなったんだ。」と僕は言った。「そんな気分なの。頃合だと思ったの。」と少女は言った。少女は一口コーヒーを飲むと暖炉の上に置いた。「随分と久し振り。この家に人が来るなんて。」「あの長い道のりをわざわざ歩いてくる人間なんてそうはいないと思うよ。草木が生い茂ってるから車もバイクも通れないしね。」と僕は言った。少女は部屋の角に焦点を合わせたまま、コーヒーを再び口にして僅かに笑った。僕ら二人はしばらく何も話さないまま木の焼ける音を聴いた。「外を見て。」「外。」僕は視線を少女から窓に移した。窓の向こうには闇しか見えない。「外に何かあるのか。」「よく見て。窓の近くで。」僕は仕方なくソファーから立ち上がり、窓の向こうを覗いた。そこにはもうあのなだらかな丘は無かった。アスファルトで固められたような灰色の地面が地平線まで続いていた。空の闇にはとてつもない大きさの太陽が数個浮かんでいる。虚構世界の虚無が辺りにひしめき合うように漂っている。「なんだこれは。」と僕は言った。「あなたよ。ここは。そしてこの家があなたの形而的空間なの。」と少女は言った。「そして、私はあなたの中にいるあなた。あなたは私の中にいる私。概観なんてどうだっていいの。観念的な世界はもうあなたには必要ないんじゃないかしら。」恐らく言葉を口から出したところでこの状況が変わるわけではない。僕は素直にこの空間を受け入れる事にした。「君がもし、僕の中に居る形而的存在なら、一体僕らは今どこにいるんだ。」「私の中のあなたの中の私の中のあなたの中の・・・。永遠に続くわ。内側も外側も表も裏も存在し得るし、存在し得ないのよ。あなたはどこにも存在するし、どこにも存在しない。」彼女はコーヒーを口にした。「やれやれ。」僕は窓から離れ、ソファーに座った。窓の淵には僅かに闇が蠢いている。「この家はどこにでも存在するんだね。世界中に。いや、宇宙にもか。」「そうよ。」と少女は言った。「世界中に丘はあるの。もちろん渋谷にだってニューヨークにだってパリにだってボストンにだって至るところに。でもね、家に来る人はいないわ。みんな既存の量のお金を回すので手一杯みたい。」「じゃないと生きていけない。」と僕は言った。「観念的な世界で絶対的な力を持つのは下らない偽善より資本や戦争なんだ。空間には何が起こるかわからないからみんな怖いんだ。だから判断基準を一定に保つために、既存の資本をぐるぐると回している。金が増えることなんてないのに。でもそれをしなければなにも出来ないんだ。」「そうかしら。あなたはこうして形而的な自分に出会えたのよ。私をよく見て。あなたは私さえ理解できてない。」と少女は言った。「あなたが形而的な存在になれば、あなたの中にある全てのものも形而的な存在になるの。」「ここは、くぼみなのか。」「くぼみはどこにでも存在するの。あなたには視えていないだけ。灯が見えなくなったのはあなたの中の灯が消えてしまったからよ。だから私は灯を消したの。」と少女は言った。少女はワンピースを脱ぐと裸になった。まさに形而的な裸体だった。全ての曲線が何かを意味していたし、意味の無いものでもあった。少女は僕の前に立つと、包み込むように僕を抱いた。「帰りなさい。あなたはまだここに来なくてもいいの。観念的世界を楽しまなきゃ。やりたい事だけを必死にやり続ければいいの。命を燃やし尽くすの。自分の観念を忘れなければいいのよ。」と少女は言った。「ここには二度と戻って来れないような気がする。君はもうじき僕の中から消えてしまうんだ。」と僕は言った。「消える事は存在するの。だから私は消えないわ。」僕の体が彼女の中に入っていく。まるでゼリー状の液体の中にずぶずぶと埋め込まれていくようだ。「あなたの中に居る私の中にあなたが入っていく。」「何をすればいい。僕には淡々とただ日々を生活していく能力しかない。パスタを茹でて風呂を洗うくらいしか出来ないんだ。」「あなたの中で答えは分かっているはずよ。私はあなただもの。」次第に意識は薄れていく。頭の中が霧でいっぱいになる。真っ白だ。僕は丘の上の家に住んでいる。毎日、雨が降らない限り窓の向こうの観念的な夕陽をぼんやりと眺めている。ある日突然、扉はノックされる。扉は僕が特注した自慢の扉なのだ。わざわざガラス細工で魚を彫ってもらった。眼にはアメリカの友人から貰った大きな赤いサファイヤも埋めた。扉は再びノックされる。僕はランプに火をつけて扉に向かう。そういえばコーヒーが作りかけだったな。扉の前には赤いワンピースの少女が立っていた。「どうして灯を燈さないの。」
2006.08.17
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はい、只今受験勉強中。毎日しております。たいへんです。でも、勉強なんて暗記すればいいんだから案外簡単なもの。その暗記量が受験日までに間に合うかが問題。さあ、来年は受かっているのでしょうか。
2006.06.22
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雄々しい山々は霧を纏い、身を深く沈める。広大な海は光を閉ざし、澄んだ闇を産み出し続ける。空には星々が鏤められ、光の雫を落として消える。この町は完結している。何処をとっても完璧なのだ。満ち足りていて欠ける事が無い。町は夜になると一気に気温が下がり、山のような雪をしんしんと降らす。町は朝になると一気に気温が上がり、山のような雪をじりじりと溶かす。人は朝になれば仕事に赴き、夜になれば帰路に着く。この町には大きな工場がある。とてつもないほど大きく、全容を掴むものは工場長とその幹部達だけである。高さは地上から千メートルほどあり、横幅は約五十キロほどある。働く者は自分の職場の仕事を毎日こなすだけで、余分な想像力はいらない。お互いがお互いにどこでどのような仕事をしてるのかさえも彼らは知らない。同じ仕事を毎日くりかえすのだ。街灯がポツポツと道に灯るころ、彼らの家にも灯が灯る。家に帰れば、食卓にはビールと栓抜きと枝豆が工場からのサービスとして配給されている。晩酌を楽しんだ後は、嫁としっぽりと身体の精力を使い果たしてから寝る。窓の外には雪が降り始め、音は吸い込まれるように消えていく。同じように僕も僕なりにそこで一生懸命働いていた。しかし、僕はある日僕という存在に気付いてしまったのだ。僕が僕に気付くまでには長い年月と多大なる労力と甚大なる犠牲者の記憶があった。この世界は完結している。この世界が完結しているのは、完結している人間がより完結化に向かって完結しているからだ。ただ、僕と言う存在に気付いた僕は、完結する方向と言うよりも、非完結化に向かっている。先日ファクトリーは僕の存在に気付いた。僕の作業中の何気ない仕草がそれを気付かせてしまったのだ。今頃ファクトリーは「キルギス」をこちらに向かわせているところだろう。キルギスは恐ろしい連中だ。並外れた行動力と体力を併せ持ち、得意気に拳銃を腰からぶら下げている。光沢のある甲冑を身にまとい、カスの様な脳が頭の中でカラカラと音がする「ハラリ」を統率してる。ハラリとは、キルギスによて行動を束縛されている集団である。ハラリには考えることがファクトリーから与えられたなかったため、目の中に入ったものは本能的に全て口の中に入れてしまう。しかし夜目に非常に優れていて、暗闇からひゅっと手を伸ばし、人間だろうが犬だろうが喰い殺してしまう、こちらも恐ろしい連中なのだ。取り敢えず、僕はここから逃げなければならない。僕だってそんな奴らを待つほどお人好しでもないし、考える力だって備わっている。もし見つかったのなら、キルギスは僕に向かって憎しみが込められた鉛を僕の身体の中に撃ち込むだろうし、あるいは口から牙があちらこちらに飛び出しているハラリにむしゃむしゃと食べられてしまうかもしれない。どちらも喜ばざる体験である。僕はロープをドアのノブにぐるぐる巻きにして家の柱に結んだ。さらに窓という窓には板を打ちつけ、電動ドリルでしっかりと固定した。家の中に灯油を撒き散らして、発火装置をそこに置いた。ドアを無理やり開ければ、マッチが十本ほど擦れて火がつくのだ。僕は顔を洗い、歯を磨き、髪を梳かして、ジェルを塗りたくった。そして、彼らの足音が聞こえてくる頃、窓から外に出て、最後の板を貼り付けた。外には既に雪が降り積もっていた。
2006.05.04
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議論とか言ってたけれど、誠に勝手ながら学校が始まってなんだか忙しくなり始めたのでちょっと無理っぽくなりました。う~むここまで忙しくなるとは。。。ただ、毎回お互いの意見を交換し合うような議論なら一週間おきくらいで出来そうです^^;すいません伊倉さん!ルールとか議題とか聞いておきながらできなくなってしまいました。申し訳ないです。そして、重要なことといえば、今年僕は受験生となりましたので、更新もほとんどしなくなります。要するに放置プレイということ。小説なんて書いてる暇ありません。おそらく日記はMIXIのほうでちょくちょく更新していくつもりです。カフカで検索すれば出てくると思います。ではまた一週間後に会いましょう!
2006.04.14
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2006.04.10
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議論をしてどんなに素晴らしい理論を構築できたとしても、それを他人に強要するのならば、強者唯存の世界になってしまう。理論は自らで証明せねばならない。良い考えも悪い考えもどちらも手段を間違えれば同じものになる。だから相手を納得させるまで議論を展開することはとても難しい。僕は議論で負けたことがない。特に勉強もしていないのに模試で全国で百番代に入った。いつも大人からは「頭良いね」なんて言われたりもする。 でも高校はバカなところに推薦で入った。 どんなに辛いことかこれが分かってもらえるだろうか。確かに小学生の時は勉強ばかりしていた。そのときは、自分のためじゃなくて、周りの人を喜ばせるためにやっていた。あるいは、特技がないので自分と言う存在を認めてもらおうとしていたのかもしれない。でも中学の時にそれがどんなに下らないことであるか気付いてしまった。実際の僕は何も出来ないのだ。社会で生きていけるわけでもない。他人を喜ばせているわけでもない。だからここでボソボソくだらないことを書いているわけで。毎日サザンの音楽聴いて村上春樹の本読んで表参道散歩して絵を描いて。どうしようもないことばかりだ。僕自身金なんかになんの頓着もない。日本を変えてやろうとかおせっかいなことも思わない。自分が生活できるだけの金とちょっとの贅沢があれば充分なのだ。大会社の数万人を引き連れる社長なんかにもなりたくない。毎日何か考えて考えて考えて考えて 、ちょっとの文章を書いていれば僕は幸せなのだ。小さい世界、と人には言われる。世界に大きいも小さいもないだろう。大きい世界に出られない人は不幸なのだろうか。大きい世界に無理やり出て行くことの何が正しいのだろうか。周りからみて頭の良い人っていうのはとても辛いのだ。無神経な期待を毎日背負って。学校の勉強なんてバカなことを毎日させられて。でも、頭が良いことだけしか取り柄がないから、頭が悪くなると一気にバッシングを受ける。「こんな子じゃなかった」「昔は頭良かったのにね」どうだっていいじゃないか。本人がどうだっていいと思っていることに何故他人は加わろうとするのだろう。僕はここで好きなことを喋って反論なんかが着たら踊りだすくらい喜ぶ、そんな人間なのだ。少なくとも周りにいる僕の友達なんかは面倒くさい話をしたがらない。僕は面倒くさい話をグダグダ聞くのが大好きなのだ。その場の状況を話すなんてつまらない。別に声を大きくして盛り上がる必要もないじゃないか。 あーなんてネガティブな人間なのだろう。
2006.04.08
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先日、以前書いた「何故人を殺してはいけないのか」になんと、素晴らしい反論が届いていました。伊倉さんにもコメントいただいていたので最後の方に載せようかと思います。僕のどうでもいい問いかけにお答えいただきほんとありがとう。では始まり始まり~。喧嘩を売っている訳ではないです・・・。 Doooooooomさん だから憤慨とかしないでほしいんですけどね。理論ってのは、それぞれの現象を法則的かつ統一性をもって説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系そのものである、というのを父に諭されたことがあります。そう考えると感情が入り込むことはそもそも、「理論」そのものとは一線をかくと思いますよ。責任の連鎖を謳っていますけど、それ以前の問題で、人と人とのつながりってのがある以上、感情そのものを殺す必要性があるんですよ。「だから人が人を殺したいって思う感情はとても大切なもの。」とありますが、はっきり申し上げますと、殺人の衝動はまったく必要ないモノなのです。抱くのは自由ですよ、もちろん。でも、周囲とのつながりの中ではそれこそ、押し殺す必要のある感情だと思います。(←なんだか統一性のない文章ですね。すいません。)私はいつも、このような精神論になると現行法を用いたくなるのですが、「なぜ人を殺してはいけないのか。」に対しては、私は『日本国憲法、第13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。』より、殺人は公共の福祉に反するので実行してはならない、と考えています。追記:確かに感情というモノを取り払ったらそれはもはや人間ではないと、私は思います。しかし、貴殿の文面を見ると「殺されたい人がいたら殺したい人がその人を殺す。 別にそれはおかしいことじゃない。」とあります。何を例にとっての発言かは定かではありませんが、この発言は撤回していただきたい。殺されたくて殺されている訳ではないんだから。私の親戚は、決して自殺志願者ではありませんでしたし。(2006.03.31 00:23:21)同じ高校生なのにこんなにも文章のレベルの差があるとは・・・。どうでもいいか。中身中身。まず、理論ていうのは所詮筋道立てたからって人間の妄想でしかない。何故なら人間が想像して考えてるんだから。どんなに頭の中で、これがこうなってああなって~とか考えたって、その理論ってのは人間の延長上でしかない。理論を考えよう、と思ってること自体感情的なんだから理論に感情が入らないことはおかしいと僕は思う。もし、感情を押し殺して人間の生理的な部分にだけ観点をおいてきたのなら、法律だって作られていない。人間の尊重を謳う法律が理論ならば、理論に人間の精神が組み込むのもまた然り。感情を殺すってのもまた感情的。いずれにせよどうでもいいこと。だって前にも書いたけれど、人間てのは欲望と感情で動いている生物なんだから。じゃ、本題に入ります。問題になった僕の言葉。「殺されたい人がいたら殺したい人がその人を殺す。別にそれはおかしいことではない。」この言葉を撤回してください、と書かれたわけですがまずこの言葉を論理的に説いてみようと思います。この言葉を書いた時点で、最低でも5つの考え方が浮かんできます。1、殺されたい人=自分以外の他人から殺されたいと思っている人。2、殺したい人=自分以外の他人を殺したいと思っている人。3、殺されたくない人=自分以外の他人から殺されたくない人。もしくは自殺願望ありの人。4、殺したくない人=自分以外の他人を殺したくない人。5、どちらでもない人=上記のいずれかにも満たない人。考えられるケース 例 1+2=○ 3+4=○ 2+3=× 1+4=× 5+X=?ってな感じです。別に殺されたい人もいて殺したい人もいたら、その二人がそれから行う行為は誰にも口出しできない。二人とも了承しているんだから、それに順ずる行為であるわけです。しかし、日常的な殺人事件てのは殺されたくない人が、人を殺したい人に殺されてしまうから問題なんです。だって二人の考えには相違があり、お互いを認め合ってもいないから。Doooooooomさんのいう人の感情を挟まない理論は、アメリカやドイツの大量虐殺と同じことになってしまうのではないだろうか。論理的に考えた理論で、筋道を完璧に立てれば、そこに殺されたくない人の感情はどうでもいいのだろうか。もし、人を殺す、という理論が人を殺してはいけない、と言う理論に打ち勝ってしまった場合、人を殺してもいいのだろうか。どのようにして感情を入れないで理論を構築できるのだろうか。僕には考えることが出来ません。>理論ってのは、それぞれの現象を法則的かつ統一性をもって説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系そのものである、というのを父に諭されたことがあります。>私は『日本国憲法、第13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。』より、殺人は公共の福祉に反するので実行してはならない、と考えています。てのがあるけれど、あなたは親戚のことを例に出していたけれど、知人を他人に殺された時、あなたは一瞬にしてこの言葉が浮かんだのだろうか。僕だったら、犯人をなにがなんでも殺してやる、と思う。許せないもの。でも、やったらやり返す、はある部分で誰かが止めなければならないんだよね。僕はこんな法律や親父の言葉なんかより、あなたの答えを聞きたい。あなたの答えが出てない時点で、答えを法律や親父の言葉にしているのならば、なんか、ひどく悲しい。殺人の衝動に駆られたとき、殺人をしてもいいのか。もっと自由に考えられないのだろうか。所詮人間なんて、脳内分泌液と、シナプスを通る電子信号、海馬の記憶、塩基配列、数十兆個の細胞の集合体、とか考えてたらつまらない。法律なんてどうだっていいじゃないか。法律の壁にぶち当たる時はぶち当たるんだし。せめて議論の時くらい自由にお互いの意見を言い合いたい。どこにも依存をしていないその人自身。まあ、日本語で議論をしている時点でもう依存しているのだけれど。いくら法則性を考えたって、それに順じて人間なんて動いていない。それぞれの欲望を引っさげて蠢いている。人を助けたいって思うのも所詮自己満足。だから理論は感情が入らないと矛盾が生じてくるんです。現実に通じない理論は、屁理屈にしか過ぎません。学校の勉強は、頭を馬鹿にしないとできません。勉強をすればするほど、頭の良い人は頭が悪くなります。上から送られてきた書類を完璧にこなす、という行為しかできない人間になってしまう。つまらないなあ、と僕は思う。人を何故殺してはいけないのか、という問題が出されて、もし答えが、法律で駄目だから、ならば僕はその答えを書かない。理解もしていないのに軽々しく答えをかけるのが学校のテストです。じゃないと教師達も面倒くさいからね。あなたは法則性をもった統一性のある生活を毎日していますか。していたらあなたのことを論理的に諭すことが出来るけれど、実際はそんな生活してないだろう。おそらく、高校生の僕達がこんなことを議論すること自体間違っているのだろう。だから、実体験を通じたことのある、父や法律の言葉を用いるのは正しいのかもしれない。でもそれは真実ではないと僕は思います。あとで、修正を加えます。書きたいことがありすぎて上手くまとめられていないので。Re:何故人を殺してはいけないのか?(02/26) 伊倉さん 「私はあなたを傷つけませんから、あなたも私を傷つけないで下さいね」という条件を出された場合、平穏な生活を送りたい人には利益になりますから、これに同意するでしょう。しかし、利益を守る為にこれに同意できない人もいます。個人レベルで考えるとどちらが良いのかは判断できませんが、社会全体の利益として見ると、社会を構成する人数が減らない前者の方が好都合です。……というのは表向きの話ですが、日本にいる限りでは、合法な殺人が国民によって行われています。国民主権の国による死刑の事ですが、集団の利益を害する人間の排除を堂々と行えるという事は、「場合によっては人を殺してもいい」事を容認しているんでしょうね。「好き勝手」は個人、「自由」は社会の視点に立った言葉なのではないでしょうか。(2006.02.26 19:12:20)
2006.04.04
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世界は回る。血が流れようが世界は回る。人が死のうが世界は回る。僕が悲しくても世界は回る。貴方が悲しくても世界は回る。雨が降っても雪が降っても風が吹いても。この銀河系は時速何百キロというスピードで動いている。終着点はブラックホール。とても大きなブラックホール。ブラックホールは球体。脱出速度がもの凄くて光さえ脱出できない。だから暗いんだ。宇宙の構造は網の目状になっていて、80パーセントがダークマター。ダークマターは暗黒物質。では僕らの目はどういう経過を経て光と言うものを認識したのだろう。眼球があるから、瞼を閉じても光を感じられるわけで、始めから眼球が無ければ光は感じられない。もちろん、ニュートリノ等の透過性の高い光ならば何か感じられるかもしれないけれど、「見る」という機関では無に近い。これらのことをふまえて考えられるのは、僕らは始めから眼球を持っていたのか、あるいは、以後誰かの意志によって眼球が突如として出現したか、ということ。始めから、と言うのは生物が誕生した瞬間だ。その時既に意志を持ち、眼球を欲していたのだとすれば、単細胞と言うのはどれだけ切れ者なのだろうか。「誰かの意志」だとすれば、その「誰か」は誰だろう。物質を組み合わせることができたって、それを機能として使うのはもの凄く難しい。ぼくの考えとしては、後者だと思う。だけれど、僕らを作ったのはやはり誰なのだろう。眼球と言う一つの機能を持たせたのは誰なのだろう。そこに景色があり、光があり、物があり、地面があり、空があり、雲があることを彼らはどのようにして知ったのだろう。知ってから気付いたのか。気付いてから知ったのか。ややこしいことは抜きにして、これらは不思議。そして、ほとんどが闇で覆われているこの宇宙で、光を生み出す、あるいはそれを認識する、と言うことは奇跡に近い。存在するものは存在する。存在しないものは存在しない。何故存在しないものは存在しないのか。存在するものは存在した瞬間、終わりを約束される。無は永遠だ。始まりのある永遠なんてものは無いんだよ。だから昔の人は考えた。循環説。輪廻転生。地動説。全ては回っている。この宇宙が膨張宇宙で、いつか終ることになってしまっても、永遠の流れの中にあるのなら永遠に存在する。生と死。善と悪。楽と悲。愛と哀。相対的と絶対的。普遍と特殊。全てはぐるぐる回っている。昨日と今日と明日も同じ。去年も今年も来年も同じ。変わっているのは人間だけ。自然は回る。世界は回る。宇宙は回る。時間は回る。僕達は止まる。
2006.02.27
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答え 自分が殺されたらたまったもんじゃないって事じゃないのか。理論に感情を入れちゃいけないって誰が言ったの?それは定義?人間がなにか考えること自体、既に感情的じゃない。だから殺されることが「嫌」ってのは立派な理由になると思うんだけど。どうしてテレビとかのディスカッションでこんなのが議題に挙がるのか全くわからない。人間は基本的に感情と欲情で動いてんだからわざわざそれを消す必要は無い。殺されたい人がいたら殺したい人がその人を殺す。別にそれはおかしいことじゃない。おかしくないことをおかしいことに無理やり理論付けていれば、どこかで必ず矛盾が生じる。だから人が人を殺したいって思う感情はとても大切なもの。決まり文句だけ押し付けて勝手に死刑にするな。どうせなら殺したい人に殺させてあげればいいのに。殺された家族でもなんでもいい。それは誰の責任でもない。みんなの責任。責任は連鎖する。だってみんな繋がってるからね。肉体的にも精神的にも。「だから一人で生きる」って言ってもどこかで必ず繋がってるんだから、一人で生きさせてあげればいいのに。場所が変わっても、切れないものは切れないんだよ。死んでも切れないものは切れないんだよ。言葉ってのは、存在した瞬間に意味を成す。言霊は存在する。だから軽はずみな言動は止しなさい。言った以上はみんなの責任になる事を、本当の意味で理解しないといけない。それは自分の一部だってこともね。なにも身体の一部が自分の一部って事じゃない。もっと自由に考えよう。考えれば考えるほどほとんどのものに意味など無いことに気付くだろう。でも意味など無いってことは、意味など無いっていう意味がある。だから意味がないってことも大切な理由。間違えて併用している人が多い。見せ掛けの、ペラペラしている看板だけ抱えて何をわめいているの。何を叫んでいるの。そんな言葉が世界に含まれる。どうせならそこで乱さないで欲しい。自由。ちなみに自由って言葉は夏目漱石が外国語から訳した言葉です。それまでの日本の自由って言う言葉の意味は「好き勝手」もし夏目漱石がこの言葉を訳してくれさえなかったら、もうちょっと規律のとれた国になっていたと思う。いや、逆の場合もあるか。・・・どうでもいいね。
2006.02.26
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僕はウソツキが好きです。中途半端なウソツキじゃないです。とことんウソツキな人が好きなんです。身体も心もどこでもいい。とことんウソツキな人は立派、とさえ思います。だって綺麗過ぎるとつまらないじゃない。A「私綺麗でしょ?」B「うん。何も無いからね。」これじゃあ、みもふたも無い。何も始まらないし、終らない。ただずっと同じ時間が流れていくだけ。汚い部分(それが汚いかはわからないけど)があるからやっぱ生きていける。汚い部分が無かったら生きていけない。だから、子供っていうのは一番汚いんだよ。綺麗。綺麗じゃないものをそこから取り除いたから綺麗になった。ということは取り除く時に、綺麗じゃないところを切り離すだけの意志が無いとできない。なんで大人って言うのは子供を綺麗にしたがるんだろうね。自分のルールを子供に押し付けるんだろうね。汚れを知らない子供は、綺麗にならないことをわかってないのか。真ん中。真ん中だと一番汚れないかもね。頭と尻が支えてくれているから。「俺は幸せなんだ」って言うセリフが妥協にしか聞こえないのは何故だろう。しかし、彼らがいないと社会は成り立たない。ベイベーイエローモンキー。情報ってのは止まってる。だから体験談をいくら身体の中に入れたって現実に繋がらないことが多い。非現実。非日常。この二つの言葉は同じじゃない。だから僕らも今を生きるしかないね。未来も過去も考えたってしょうがない。全部含まれてる。点では区切れない。だから、綺麗になろうとしたってもはや無駄さ。 って話。
2006.02.25
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仮定 「宇宙に果てがあるとしたら・・・」宇宙に果てがあるとしたらそのまた外に宇宙がある。そして、その外の宇宙の外に果てがあるならばまた宇宙がある。というように、ぼくらの膨張宇宙は永遠に続いていく。何かとてつもない大きさのものでも、それを受け入れる容量があるものがなければそれは存在しない。僕らがここに存在できるのは、ここに存在できるだけの空間があって、存在できるだけの家族があって、家があって、金があって、体があって、精神があるからだ。どれかが省かれていようと、それは人それぞれだ。でも、存在するものがすべてその容量の内にあることは確かだ。僕らの宇宙を受け入れているものがあるならば、やっぱりそれはすごいこと。人間なんて本当にちっぽけなことでさえ受け入れられないことがあるんだから。だから戦争は起こるし、人が人を殺すし、物を盗むし、人を騙すし。それが生きるためならば、僕は完全に否定はしない。しかし、それが利害によって引き起こされているのならば、やっぱりちっぽけなこと。宇宙を考えられる人間の精神はそんなにちっぽけなものなら、残念なことだと思わないだろうか。友達が、彼氏(彼女)が、妻(夫)が、親が、兄弟が。。。人への責任ばかり探さないで、素直に物事を受け入れることが出来ないか。簡単には無理だろうねぇ。だって精神には物質が関わってくるんだもの。(精神は、二種類ある。考える精神と感情の精神だ。感情の精神はおそらく、脳内物質がひどく関連している。だからいくら考えて行動しても、スケジュールってのは上手くいかない。感情と物質がどちらが先か。鶏と卵みたいなものだろう。)僕らが生きているこの世界。時間が一定じゃない。次に話すつもりだけど、例えば時間が止まるとする。でも時間が止まっても時間が止まった分の時間は動いているんだよね。宇宙と同じくらい大きなものだけど、時間が動いた瞬間(あるいは動いた瞬間)永遠に一瞬に時間の外にある時間が増えていくんだろう。話は脱線したけど、要するに僕が言いたい事は、受け入れるって大変なことなんだなぁ、と。存在することって大変なことなんだなぁ、と。改めて思い知らされました。宇宙の事を考えて、まさかここに辿り着くなんて思いもよらなかったです。だからさっき日記で簡単に書いてしまったわけです。空想にふけるのだっていい。しかし、数々の有名なファンタジーの中には、やはりいろいろな生への考えが詰まってる。僕が思うに、現実に通じない理論は何処までいっても屁理屈でしかない。だって生きているわけでしょ?生きていることに通じなければ、だれにもそれは通じない。共感されない。だから言葉で自分の考えを伝えるって事はとても難しい。今回の日記も、いろいろな考え省いています。だって書くの面倒くさいしね。誤字脱字は直すの面倒だし。取りあえず、当たり前のことを理解することがとても難しい。みんなそのこと気付いてる?
2006.02.19
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君達気付いてる?宇宙の果てがあるってことは、そのまた外に宇宙があるってことなんだよ。僕の頭の外に世界があるって事をやっと理解できました。
2006.02.19
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―僕の中には君がいて君の中には僕がいる―「唯心論かしら?」と彼女は言った。「そうだよ」と僕は言った。一つ傘の下、僕らは並んで歩いた。突然降り出した雨はあたりを一瞬にして闇に変え、体にねっとりと染み付くような湿気をもたらす。道を照らす灯りは淡い光を綿のように放出している。しかしそれはすぐに雨に滲む。雨は強くもなく、弱くもなかった。周りの音を静かにふき取り、自らの誕生の音を地面に打ち付けていた。僕らはおそらく宛ても無く雨の道を歩いていた。おそらくと言うのは、今や僕らにはそれを明確に確証付ける記憶も記録も物証も何もないからだ。この「時」の事を反芻することができるのは、この「時」より少なからず先の「時」である。しかし、それらと同時に、もしくはそれらと連動して僕らの過去は動いている。いや、それが言えるのは過去だけではなく未来もであろう。時間と言うのは液体のようなものだ。何処にでも流れ込む。「過去」「現在」「未来」何故僕らはそれらを「点」で区切ってしまうのだろう。時間と言うものを意識できるのは部分でしかない。断片化した時間は流れない。流動。「雨、長いわね」と彼女は言った。「それでも流しきれないんだよ、僕たちを。」と僕は言った。雨音は窓に当たる度に弾けて消える。光は時間が経過するごとに確実に侵食される。街には車のライトが溢れる。どこを照らすのでもない、ただの道標。人のニオいがからみついた風が意味も無く漂う。何故か僕にはわからない、でもそれは雨と共に激しく踊っている。タノシソウ。高層ビルの真下で蠢く僕ら。形を成さない笑いはもう止めよう。僕らにとって裸のまま死ぬ事が唯一の報い。子供は欲望の塊だ。大人は欲望の塊だ。では大人でも子供でもない僕らは一体なんなんだ。同じ生物だとしたら、僕らはどの服を着ればいいのだろう。服を着なければいい。あなたにはできますか?アナタニハデキマスカ?「雨が止んだわ。」と彼女は言った。「止まっただけさ。」と僕は言った。ベッドから窓を見る。始動。
2006.02.09
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自分の延長上でしか日常を捉えられない人にとっては、外の世界は不必要だろう。ポストモダン?バカにするな現代!TVよ、歌よ、風よ、笑え海辺の黒いひまわり一粒の滴が・・・。形を成すとき、それは閃光のよう。マウスは走る。ディスプレイは叫ぶ。イカズチの輪はどこにあるのか。虹?眼球ピアス。蛇とリンゴ。神児「「「あなたはそこに全てを置いてきたの」」」 預けたのは貴方の魂よ。地下牢は柵。柵は地下牢。少女。
2006.01.19
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ぐっすりと10時まで寝た。存分に睡眠を味わった。それから歯を磨いた。顔を洗った。髪を梳かした。布団をたたんだ。シーツと枕カバーを洗濯機にぶち込んだ。アップルパイを食べた。アップルジュースを飲んだ。テレビを点けた。テレビを消した。外は曇りだ。どんより。雨が降ってきた。どっしゃり。傘だけが蠢いている。人の姿は見えない。僕は今暗闇にいる。そしてキーボードを打っている。メッセージはどこまでも。でも宛先の無いメッセージはどこへ向かうのだろう。
2006.01.14
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って誰も見てないってーの!
2005.11.19
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人間のエゴは時にぶつかる。それによって今苦しんでます。どうしようもありません。12月3日。その日がタイムリミット。
2005.11.18
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村上春樹。・毎日4時に起床。・毎日7時間執筆。・毎日10ページ。増減なし。・午後ぶらり。・毎日10キロ走る。・毎日9時に就寝。・定期的に旅に出る。・日本の文壇は好きじゃない。・今後アメリカで活動の幅を広げる予定。実に実に実に、村上春樹は本の中の主人公と変わらないのだと思った。
2005.11.17
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なんかYAHOO!も小説コミュニティ始めた。でに「小説コミュニティ」ってグーグルで検索するとうちのHPが一番に出てくる。YAHOO!に勝ったみたいでなんか嬉しい。まぁ、今そんなこと思いましたよ。
2005.11.16
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僕が笑いかけると彼らは死んでしまう。僕が涙を流すと彼らは死んでしまう。僕が怒ると彼らは死んでしまう。彼らが死んでしまうと僕も死んでしまう。そして、枯れるまで涙を流し続ける。この世界は僕の涙で溢れるのだ。つながっているもの全てが連鎖している。一人が動けば波がたち、他の波とぶつかりさらに大きく成長する。僕がこのパソコンのキーを打ち込むことによってアフリカの象が夜空を飛ぶかもしれない。アフリカの象が夜空を飛んだことによって地球の反対側では暴動が起こるかもしれない。暴動が起こることによって新たなる生命が生まれるのかもしれない。新たな生命によって僕達は終わりを迎えるのかもしれない。善い事も悪い事もすべてつながっている。激しい雨が町に降ろうと、人知れず海の真ん中で降ろうと、だれもそれを確認せずとも、ちゃんとここにつながっているのだ。シーザーサラダ。チーズとドレッシングとクルトンと新鮮な野菜があればシーザーサラダ。シーザーサラダはおいしい。僕はいつまでもそれを食べ続ける。毎日毎食それしか食べない。まるで飽きないのだ。シーザーサラダはおいしい。とてもおいしい。歪んだ空間が僕の視界を覆っていく。それと一緒に僕も歪んでいく。歪んでいかなければすぐに闇に捨てられてしまう。歪みの中で揺らぎを感じ、生を感じる。そのなかで失くしたものが見つかるかもしれない。矢の如く僕らは走る。効率を求められた世界は科学技術によって全てが短縮化される。移動時間も、食事時間も、睡眠時間も。そのくせに仕事は増え続ける。最近そろそろ限界が来たようだ。全てが軋んだ音をたてている。その音が聞こえるのは生物だけ。聞こえないのは生物じゃない。みんなそれはわかっているんだ。かりかりに焼けたソーセージをかりかりに焼けたパンに挟みむしゃむしゃと食べる。あつあつのコーヒーカップにあつあつのコーヒーを注ぎ鉄板の上でじゅうじゅうと音をたてているステーキにかぶりつく。透き通る肌と艶やかな長い髪。やれやれ。仕方がない。想像が止まらないんだ。
2005.11.13
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2005.11.06「ひっさしぶりの日記」についてのコメント>涙兎さんありがとうございました。たとえ一瞬でも見ていただいたことに深く感謝します。えー初めてですが、偉そうなことをいいます。勉学に頑張って、ブラックボックスを持っている人に会いたいとおっしゃいましたが、勉学を頑張るからといって、ブラックボックスを持つ人間に出会えるか?というと、そうでもないような気がします。もちろん、勉学を通して広い世界に出る方が確実なのですが。人は、他人が知らないところで色々深く考えていたりするものです。表面は小学生みたいでも。。。ただ、それを話さないとか、話す機会がないとか。もっともっと話してみないとわからないことも、たくさんあるんじゃないかな、と思います。本当に偉そうにコメントしてしまいました。ごめんなさい。でも、否定しているわけではありませんので。僕は簡略化して文章を書きます。そこに説明は入りません。なので結論だけを書くことになり、勘違いをされる方も多いと思います。なので2005.11.06の日記について説明をしようかと思います。僕には好きなことがありません。人が運動や、芸術に目を惹かれてその分野を選ぶ。ということが僕には無かったのです。なので僕は勉学と言う道を選びました。それは運動や芸術を選ぶのと同じように、勉学と言うものを一つの道として考え、選んだんです。何故、選んだのかと言うと、スタートラインが違うから。勉学が全てではない、と僕も思います。この社会で一番強いのは運動が出来る人でも、芸術が出来る人でも、勉学が出来る人でもなく、「人の流れ」です。これは誰に止められません。でも、その中で多くの人を動かしている人達には必ずブラックボックスがあります。何も努力せずに、何も考えずに、何も悩まずにスポットライトにあたることは出来ません。出来たとしてもただの薄い板になってしまうので当然忘れ去られます。そして、そのような人達と出会うためには、偶発的でなく、必然的に出会うようにするには、僕自身も努力をしなければならないんです。今の社会はどうしてかはわからないけれど、勉学を頑張れば確実に社会に一歩先に出ることができる確率が高い。それは誰が決めたのでもないし、誰が求めたのでもない。ただ、それは社会が決めたことなんです。六大学や、国立大学に入れば、中堅の大学に行くより既に社会の輪が広がっています。慶応などは、父親が社長だったり、部長だったり、著名な人である確率が多いんです。それは僕が決めたのではなく、すでにそう成り立っています。僕はその伝を求めるべく大学に行きます。そして、その人達からいろいろな世界を聞き出します。彼らがブラックボックスを持っているかは知りませんが、彼らは既に強いのです。社会はつながっています。自分が何かしたいと思ったとき、つながりが無ければ何も出来ません。ましてやブラックボックスを持った人に辿り着くまでにはより大きなつながりが必要です。僕は銀座にあるフランス料理店の社長のバカ息子です。父たちが建てたその店にはいろいろな人が着ます。芸能人やら銀行の頭取やら社長やら。でもそれは、僕がその店のバカ息子であるからその人達とつながりがもてるのではなく、確実に父が努力して建てた店だからこそ出会えるのであると思っています。他に特に才能が無い僕には、勉学に励むしかないんです。そして、その結果に僕は彼らと会えることを望んでいるんです。何もしない人が、何かあってただ悩んでいても、僕は何も思いません。悩んでいない人なんて絶対いないと思うからです。彼らの悩みを消すには彼らの悩みを聞いている暇はないんです。自分自身で解決していくしかないんです。そこを強く乗り越えているのがブラックボックスを持っている人達なんです。人間は表現という機能を持っています。その機能を使うことも出来ない人には誰も手を差し伸べません。高校生で学校を走り回っている人をどう思いますか。体当たりをしている人をどう思いますか。バラエティ番組の話で盛り上がる人をどう思いますか。やっていることが小学生と同じなら、いくら内面で悩んでいても同じなんです。だから僕は彼らに何の関心も待ちません。話をするだけの時間が無駄なんです。悩みを聞いてもらいたいなら自分で言って欲しい。それが言えないなら自分で解決していくしかない。僕自身今までそうしてきました。やられたらやり返してきました。それが出来ないほど弱い人に、僕は何の関心も持ちません。逆に、どうしてやり返さないのか、と憤りさえ感じます。涙兎さん。口に出すことは簡単です。でも、あなたが言うことは大きするんです。いつか一人の力じゃ支えきれないほどになりますよ。テーマは良いと思います。だから、あなた自身で頑張ってみてください。僕は僕自身を頑張らせるので精一杯なんです。今日の日記は説明になってしまいました・・・。普段は他人の意見なんか干渉しないんですが。僕もまだまだです。
2005.11.12
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「あなたって本当は地球人じゃないんでしょう。」彼女は窓辺に立って僕にそう言った。夜風を受けた長いカーテンがひらひらと舞っている。窓の向こうには新宿の様々な灯が虚ろに漂っていた。彼女はバスローブを羽織った格好で、長い髪は水気を帯び輝いていた。「そうかもしれないな。」と、僕は言った。彼女は暫く僕を見つめた後、窓の外を向いた。「あなたといると心が浮いてしまうの。本当に他の感情はなくて、ただ心だけが浮いてしまうの。」僕は体を起こし、ベッドに座った。そして彼女の話を聞いた。「それは私にとってとても嬉しいことだったの。こんな不思議な心を持ったのも初めてだった。でもあなたと寝るとね、私の全てが否定されてしまうの。私だけが心を浮かせ、あなたは地の底からじっと私を見ているの。」「私とついさっき寝たことなんて既に貴方の人生の一部分にもなっていないみたい。」と、彼女は言った。そして小さなクールボックスを開け、瓶のコーラを取り出し一口飲んだ。軽くコーラを上げた。「いや、僕はいらない。」と、僕は言った。そして、彼女は一気にコーラを飲みこんだ。あんなにきつい炭酸も今の彼女の前ではほとんど意味をなさないのだろう。彼女はコーラを飲みたかったから飲んだのではなく、今は飲むしかなかったのだ。彼女は、空の瓶をクールボックスの上に置き、僕のいるベッドに向かって歩いてきた。「寒い。」そう言って、素早くベッドにもぐりこんだ。彼女は僕を見上げて、僕は彼女を見下した。「そんな目をしないで。」「あなたは私に関心を持っていないのよ。いいえ、あなたは今まで誰にも関心を持ったことはないんだと思うわ。」彼女は僕に向かってそう言った。僕にとってその言葉はひどく心外だった。「そんなことはないよ。僕は君についてとても関心がある。今バスローブを羽織ったままベッドに入っている君はとても美しく見える。そして、今日の君の仕事具合や、それに関連した男達。それだけではなく、君が触ったコピー機や、スターバックスのコーヒーカップ、ボールペン、今身に着けているスローブにでさえ僕はやきもちをやいている。つまり、僕は君における全ての事柄に強く関心があるんだと思う。」と、僕は言った。彼女は静かにゆっくりと目を閉じた。まるで眠ってしまったように、深く深く目を閉ざした。そして目を閉じたまま僕に言った。「それはあなたにとっての関心があることなのよ。私自身を必要とはしていない。あなたはいつも私を通り越した先にあるものを見ているの。だから私は浮いてしまうの。心が浮いてしまうの。あなたは普通の地球人とは違うのよ。」「あなたは全てを受け入れるけど、あなたはその流れを止めようとはしない。まるで関心がないのよ。その中でいくら誰かが叫んでも、泣いても、貴方の関心はいっこうにこちらに向かないの。」この街のどこかで救急車のサイレンが鳴っている。それはこのホテルに近づくにつれ大きくなり、そして小さくなっていった。「僕は地球人ではないのだろうか。」と、僕は言った。「そうよ、あなたは地球人ではないの。銀河系よりさらに外の深い深い闇の中にある一つの星があなたの国なの。だから、あなたの気を惹きつける魅力的な事柄はこの星には無いのよ。でも、あなたはそれをわかってくれない。あなたの周りには様々なものが浮かび、やがてどこかへ消えていってしまう。私も確かにその一部分なんだわ。」と、彼女は言った。彼女は僕に体をくっつけ、僕のペニスを握った。「それなら地球人の定義は何なのだろう。」僕のペニスは勃起を始めていた。彼女の手は優しくそれを包み、もてあそぶように上下に動かした。彼女は一度僕にキスをし、僕の目を覗き込んだ。「簡単よ。」またどこかで救急車のサイレンが鳴り始めた。「あなたではない全ての者。」と、彼女は言った。どうやら僕が自分の星に帰るには完璧な地球人になる必要があるらしい。
2005.11.11
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真っ暗だ。僕が目を覚ましたとき、僕の体は駅のホームのベンチに、まるで誰もが置き去りにしていく不要物のように横たわっていた。まぁ、確かに僕は周りから見ればやっかい者だろう。ぼんやりと、僕は体を横にしたまま周りを見渡してみる。見たこともない寂れた、そして錆びれたホームだった。ホームの中心には太い木があった。その木の柱は、長年の雨風によって黒く変色していた。僕の頭上を覆う天井もやはり木でできていて、変色していた。掲示板であろう緑色のボードには白黒の大小様々なポスターが数枚貼ってあった。いくつかのポスターは画鋲がとれ、垂れ下がっている状態で、もはや掲示板としての機能は遠い昔にボード自身が捨ててしまったようだった。僕は体を起こし、黄色のラインまで歩き、プラットホームから線路を覗き込んだ。もはや線路と呼べる代物ではなかった。線路と言う形状を、意義を忘れ、ただそこに存在するだけの「道」になってしまっていた。これでは当然電車など走れない。もってのほかだろう。僕はふと、今更のようだがここの駅名の看板を見ていないことに気づいた。どんな駅にだって自己を主張する看板は置いてある。本当に、どんな駅にだって。しかし、いくら僕が見回しても、看板は無かった。看板がそこに設置してあっただろう痕跡は見つけたが、看板は無かった。僕は井戸より深いため息をつくと、仕方なく先程横になっていたベンチに座った。そして僕の立場について考えた。僕はただの大学生だ。そこら一般のただの大学生だ。家族構成は、両親と僕と妹と犬。両親は二人そろって未だに元気だし、口うるさい妹も勉強は出来るようで有名私立高校に通っている。犬は僕が小学校に入学した頃に親がどこからか連れてきた。なのでいい加減死んでもおかしくないような年だが、毎日彼の生体機能は彼を生かすべく欠かさずに動いているようだ。僕には友達が数人いる。そういえば、今日はその友達と「Half Moon」というバーで飲んだのだった。スコッチやらビールやらワインやらいろんな酒を飲み、東京タワーが宇宙に向かって飛び立つくらい気分が良くなったところで友達と別れ、原宿駅から山手線に乗った。そこまではハッキリと覚えている。僕は酒を飲んでもそこまで酔わない。だからそこまでの僕の記憶は確実なのだ。そしてそこから僕の記憶がなくなったのも確実なのだ。僕は今見知らぬ駅にただ一人居る。この場所から駅を見渡した限り、この駅は木でできている。要するに木造の駅だ。こんな駅、山手線には無い。僕はもう一度周りを見渡した後、ベンチから立ち上がり、改札口に向かった。改札口は自動改札口ではなく、駅員がはさみなる物で切符に穴を空ける、その行動のためのボックスが置いてあった。もちろん駅員など居ない。僕だって、こんな駅でsuicaを使おうとは思っていない。僕はそこを無視し、改札口を通り、駅の入口に出た。今は、夜だ。多分深い夜の時刻だろう。夏を惜しむような秋風が僕に冷たく当たっていく。そして、僕を通った風は、駅の周り一面に広がる草原の中へ滑り込んでいった。それに連れて、後を追うように草が揺れた。果てしない草原の中に駅がポツンと存在する状態。どうしようもない虚無感に襲われた大学生の僕。明りはこの駅にしかついていなかった。それも、ホームと入口にだけ。僕は電線を探してみたが、何処にも電線は無かった。自家発電なのだろうか。駅の外観は古い木造校舎の様だった。入口の真上には大きな時計があった。寒さから身を守るため、上腕二等筋を両手で押さえたまま僕は明りのついていない時計をにらんだ。しかし、いくらにらみつけても、時計は時刻を表示してくれなかった。遠くから車の走る音が聞こえる。僕はすぐに音のする方向を向いた。小さな光が瞬く間に大きくなって、こちらに向かってくる。闇夜に慣れてしまった僕の目に光は勢いよく刺し込んでくる。目を細め、それをよく見るとタクシーだった。車体は黄色で、頭上に光る宣伝広告をのせたタクシー。目を細め、僕は必死になってその姿を確認した。クモの糸に地獄に落ちた罪人が必死になってぶら下がったのがよくわかった。そして、次の瞬間タクシーは僕の目の前で止まっていた。僕がタクシーに向かって一歩踏み出すと後部座席のドアは勢いよく開いた。そして運転席の窓が下がり、運転手が顔を乗り出してきた。「お客さんか。それとも別のものか。そんなことなんだって良い。別物だってかまわない。そう、俺には何だっていいんだ。とりあえずお前は選択しろ。今すぐこの俺のタクシーに乗るか、それとも乗らないで3日後にこの場で仏様になるかだ。冬は寒くて辛い。そして春は暖かいんだ。だから俺はこんな冬からは一刻も早く逃げてしまいたい気持ちにかられているんだ。お前になんか選ばせている時間なんか無い。選ばせてなんかやら無いね。どうしようもない。どうしようもないらしい。さぁ、お前は一体このタクシーをどうするんだ。」大声で彼はそう言った。僕は、いきなりの質問に一瞬止まってしまった。その僕の戸惑いのせいで後部座席はじらされた子供のように開いたり閉じたりをまたもや勢いよく繰り返した。「そうか。乗らないのか。乗らないと俺のタクシーには乗れない。もちろん後部座席にだって座らせてやらない。食べ物も、飲み物も、この町の地図でさえお前には教えてやらない。」そう大声で言い終えると、顔を引っ込むと同時に窓をピシャリと閉め、どこかに向かって猛スピードで走り去っていった。僕はしばらくタクシーが走り去った後を眺めていた。町。彼は確かに町と言った。ここには町があるのだ。しかし、そんな僕の希望も全てを飲み込むであろう果てしない草原を見ると、瞬く間に消えてしまった。そのたびに僕は深く落ち込んだ。そして次の瞬間にはやはりタクシーが止まっていた。「お客さんか。それとも別のものか。そんなことなんだって良い。別物だってかまわない。そう、俺には何だっていいんだ。とりあえずお前は選択しろ。今すぐこの俺のタクシーに乗るか、それとも乗らないで3日後にこの場で仏様になるかだ。冬は寒くて辛い。そして春は暖かいんだ。だから俺はこんな冬からは一刻も早く逃げてしまいたい気持ちにかられているんだ。お前になんか選ばせている時間なんか無い。選ばせてなんかやら無いね。どうしようもない。どうしようもないらしい。さぁ、お前は一体このタクシーをどうするんだ。」運転手は窓が開けきらないうちに顔をドアから乗り出し、さきほどより早口で大声で僕に怒鳴った。「乗るよ。」と、僕は言った。「そうだ。それしかない。君は賢明な判断を今したんだ。賢明で堅実な実に素晴らしい君の判断だった。」そういい終えると、やはり窓をピシャリと閉め、もの凄いスピードで急発進し、空を駆け上って行った。空には星が浮かんでいた。宇宙の9割以上がダークマターだなんてこれを見たら誰も信じられないだろう。一面に広がる星を一瞬にして通り過ぎ、タクシーは恐ろしいうなりをあげている彗星へ突っ込んだ。「この彗星は宇宙のハイエナだ。時には星々を食いつぶしていくんだ。そう、怖い怖い彗星なんだ。誰もこの星には近よらねえのさ」激しくタクシーが地面に突き刺さると地面はパッカリと割れた。その振動で遠くで雪山が崩れていた。運転手は数十個もついた鍵束を耳から取り出し、ボックスにあったコショウをまぶした。数十個あった鍵たちはみるみる間に結合しあい、一つの大きな鍵になった。「コーラの実とねじれたわしばな!」運転手がそう叫ぶと、後ろのトランクが悲鳴のような音を立てて開き、鍵穴が天井を突き破って入ってきた。僕は後部座席に張り付いていた。先程の大きな鍵をその鍵穴に差し込むと、地面の中から光が漏れ出した。暖かくて、やわらかくて、僕の心をすべて洗浄してくれるような光だった。タクシーはその光の中へさらに突き進む。長い光の空間がしばらく続いた。僕はなんだか夢を見ているような気分になっていた。しかし、その時も運転手は真剣に運転を続けていた。突然燃えるような熱さに襲われた。服は一瞬にして燃え上がり、僕は丸裸になった。運転手の服は何故か燃えていなかった。熱かったのはその一瞬だけで、僕は再び夢に落ちていった。すべてがどうでもよくなってきた。服が燃えようと、タクシーが猛スピードで空を飛ぼうと、雪山が崩れようと、そんなことは運転手が言うようにどうでもいいことなのだ。そして、光の中に一点の暗闇が現れた。「着いたぜ。町だ。」汗をぐっしょりとかいている運転手が僕の顔を覗き込んでそう言った。よくみると運転手には鼻と唇が無かった。僕がタクシーの窓から外を見渡すと、そこは見たこともないような素晴らしい町だった。そして、僕はいつの間にか長いコートを羽織っていた。「料金はいくらだい」愚問のようだった。「料金?なんだいそれは。それは一体何の意味があるものなんだい。」運転手にはどうでもいいようなことだったのだ。それを彼に今言っても仕方が無い。僕は料金を払うのを諦めた。思い返せば、服が燃えてしまったのだから払えるわけが無かったのだ。地面に降り立つと、後部座席のドアが勢いよく開いた。「俺の役目はここまでだ。ここまでと俺の役目は決まってるんだ。この後も前も俺には手出しをすることができねぇ。」そう言い終えると、僕は吐き出されるようにタクシーから降ろされた。そしてタクシーは猛スピードで空に向かって飛んで行った。僕は再び一人になってしまった。周りを見渡すと、古い木造の家々が並んでいた。ただの木造の家ではなく、各家が8階建てくらいの高さだった。やはりこの町も夜で、通りには僕一人しかいなかった。街頭がひどく間を開けて静かに真下を照らしていた。僕はコートを引き締め、何かが起こるのを待った。タクシーのように、ここは誰かが僕を導いてくれるのだろう、と思っていた。それは間違いではなかった。小太りの男が僕のほうに向かって歩いてくる。僕の目の前で彼は立ち止まった。「やあ。」と、彼は言った。「やあ。」と僕は言った。彼の額には時計が埋め込まれていた。
2005.11.10
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「冬のくせに」千駄ヶ谷の住宅街を歩いている時、僕はそう思った。とてもとてもそう思ったのだ。何故なら前日も、その前日も、そしてそのまた前日も記録的な大雪だったからだ。大雪の日。賑やかな原宿の街から「音」が、まるであらゆる物質が壁の中に潜むように消え、そこに居る全ての人々が寒さから身を守るため肩を寄り添い合った。道路も歩道も真っ白な雪で覆われ、ビルや、服屋や、靴屋や、レストランの電気看板の光も、ひどく滲んで見えた。口うるさい選挙カーの放送もなくなり、さおだけ屋のスピーカーもなくなり、この世における全ての不純物が取り除かれたような気がした。その時、僕はずっと窓を見ていた。なんせ、何十年ぶりかの記録的な大雪だったものだから、僕はそれを永遠に頭の中に記憶したかったのだ。それなら本当は外に出ればよかったのかもしれない。しかし、僕は出れなかった。その時僕は風邪をひいていたのだ。それも僕の人生における記録的な風邪だった。多分、今後の人生においても、このようなもの凄い風邪はひかないだろう、とベッドの中で思っていた。僕の額はステーキ用バターが軽く溶けるくらいの熱さで、意識は氷のように冷え切っていて、手は小刻みに震えていた。もちろん、こんな記録的な風邪をいきなりひいたわけではない。風邪をひいておきながら、僕は毎日何時間もかけてアメリカより遠く、立川市より近い僕の勤めているPR宣伝会社に向かい、自分のデスクのある部屋のソファーに横になり、旅行広告のPR宣伝を考えていた。僕の役職は副社長だった。この会社は10年位前に、僕が僕の友達と一緒に始めたもので、その僕の友達が社長だった。みるみる間に会社は大きくなった。彼の営業指南が天才的であり、堅実で、実用性と宣伝性の高いものばかりだったからだ。彼はPR宣伝の営業方法を創造するべく生まれてきたような男で、PR宣伝においては才能の塊だった。この業界でも段々と名が知られてくるようになった頃、彼はガンであっけなく死んだ。日々仕事に追われていたせいで、彼が会社で倒れるまで誰も彼の異変には気づけなかったのだ。その後、彼の息子が彼に代わって社長職を引き継いだ。しかし、彼の息子には全くと言っていいほど才能がなかった。その上、会社の規模を大きくするために多角経営に乗り出し、失敗を続けた。借金は膨れ上がり、以前使用していた超高層ビルのオフィスも、彼は売っ払ってしまった。彼の失敗点は、父親と自分を同等に見ていたことだった。彼の父親のような人物はごく稀にしか生まれてこない。しかし、彼と言う人間は、毎時間大量生産されたおもちゃのようなもので、要するに一般人となんら変わらない能力しか持っていなかったのだ。彼は先日、ようやくその事に気づき、中小企業に成り下がった自分の会社のビルの屋上から飛び降りた。幸い地面に激突する前に木にぶつかり、即死には至らなかった。肋骨を十分なほど折ったうえ、手足も完全に折れてしまったらしく、集中治療室から未だに出てこない。だから、今、会社のトップは社長ではなく、副社長である僕だったのだ。そのため、僕は無理してでも会社に出なくてはならず、しまいには、会社で寝起きをするような生活を強いられてしまったのである。そのうえ何故か行き帰りの電車の中は冷房がかかっていた。僕は毎日分厚いセーターを着込み、分厚いコート―以前登山家の友達が古くなったからといってくれたもの―を羽織り、雪山専用の分厚いズボンを穿き、雪山専用のブーツを履いた。しかし、そこまでしてもJRの冷房には全くと言っていいほど効果がなかった。一体どのような冷房システムを彼らは作っているのだろう。JRの冷房はそこまで他者の冷房より、ずば抜けて性能が良いのうだろうか。もかしたらJRの山地奥深くにある極秘研究所で、とても暑がりでひどく太った冷房研究員たちが、日夜乗客を暑さから守るという大儀のために研究しているのかもしれない。もちろんその研究所にはいろんな種類の冷房が至る所でかかっている。その光景は随時監視カメラで記録され、そこの部屋での人間の体温、心拍数、脳のa波の数値を計られている。部屋を出入りする際には、その理由と、理由に基づく根拠を論文にして提出しなければならない。そして、乗車してくる乗客の為にその完璧なまでに計算され尽くした冷房を用い、車内を快適な空間にしているのかもしれない。これで車掌の暑がりも解消されるだろう。しかし、実際そんな面倒なことをJRはしないのだろう。だが、僕の乗ったその電車はその概念を打ち崩すほどの冷房具合だった。それは僕の想像かもしれないし、実際にそのような極秘プロジェクトが運行しているのかもしれない。そんなことは誰も知らない。もちろん、僕はその片鱗にさえ触れることは出来ないのだろう。彼らはひどく光を嫌い、暗闇を好むのだ。そして、人の頭の中に現れては消えていく、そのような存在でしかないのだ。そんな想像を3日続けて夢の中でしたあと、僕はスッキリと目覚めた。床に転がっていた目覚まし時計をにらむと、6時50分だった。外は暗く、どんよりとしていた。間延びした黒い雲が空を覆い。地の果てまで続いていた。そのため、僕には「6時50分」という時刻が夜なのか昼なのか判断できなかった。しばらく、僕は天井を眺めていた。いくつもの顔が浮かび出てはまた天井に吸い込まれていった。すべて僕の人生の登場人物だった。出て行った僕の妻も出てきた。もちろん死んではいない、だろう。こうして天井を眺めていると、天井と言うものは普遍的なものなのかもしれない、と思えてくる。どれだけ時間が過ぎても、第三者が何かを加えない限り、天井と言うものはそこで何かを生み出し続ける。しかし、天井自体には何の変化も起こらない。ただ生み出していくだけだ。突然、僕は猫に餌を与えていないことを思い出した。僕はここで3日寝込んでいた。要するに3日間餌を与えていないことになる。計9回近くになる。僕はベッドを飛び出した。そして、リビングや僕の部屋を探した。しかし、いくら探しても猫は出てこなかった。まぁ、頭の良い猫だ。僕が餌をあげなくても彼女なら必ず自分で餌を調達しているはずだろう。と、僕は思った。そして、猫のことはそこで終え、冷蔵庫から水を取り出しコップに注ぎ、一気に飲んだ。冷たい液体が喉を通り、食道を通り、胃に落ちていくことが手に取るようにわかった。僕は冷蔵庫の残りを点検した後、少し期限が切れている野菜を手でちぎり、ボールに入れ、上から刻んだチーズをまぶし、ドレッシングをかけた。ベーコンはフライパンで軽く焼き、オーブンで焼いたカリカリのパンの上にのせた。ミルクは電子レンジで軽く暖めた。10分くらいで僕はそれを全部食べてしまった。なんだか物足りなかったので、再びパンをオーブンでカリカリに焼き、今度はカリカリのソーセージを焼いた。挟んでむしゃむしゃと食べた。その後、急いで洗面所に向かい、洗顔フォームで顔を洗い、歯を磨き、ドライヤーとくしを用いて髪の毛を梳かした。もう2度と風邪はひきたくなかったので、また分厚いセーターに分厚いコートに分厚いズボンに分厚いブーツという格好に着替えた。外に出ると僕はドアに2重ロックの鍵をかけ、郵便物をチェックすることなく、マンションの扉を開けた。僕はなんだか無性に外が恋しくなっていた。外に出たくて出たくてたまらなかった。そして、やっとのことで3日ぶりに僕はベッドから外に出たのだ。そこまでの躍動は30を過ぎた僕にはとても久しく感じられた。しかし、そんな僕の考えは千駄ヶ谷の住宅街を歩いているうちに薄れていった。いつの間にか僕の頭上にはさんさんと輝く太陽が光線をあたりかまわず放っていたのだ。彼(彼女?)も3日ぶりの外なのだろう。しかし、それにしても太陽の力は凄まじく、記録的な大雪の残された記録たちは次々と溶かされていった。何もそこまでしなくたっていいじゃないか。容赦ない太陽の破壊光線は止むことはなく、悲鳴も、何もあげることなく彼らは溶かされるだけだった。そして、その対象は次に僕を狙ってきた。「冬のくせに」僕は汗をぐっしょりとかいていた。早く帰らなければ体が冷えてしまう。冷えればまた風邪をひいてしまう。しかし、3日間運動機能を停止していた僕の体は上手く動かない。僕が太陽に対して深い憎しみを持ち始めた頃、彼は隠れるように雲の中へ姿を消した。途端に、空は憂鬱な雰囲気を醸し出し、冷気が街を包んでいった。僕の存在をあざけ笑うように風は強くなっていった。体から噴き出していた汗は一瞬のうちに衣類に吸い込み、僕の体を凍らせていった。やっとのことで僕はマンションに辿り着いた。病み上がりのくせに最初遠くまで行き過ぎたようだった。エレベーターで4階に上がり、体を引きずりながら僕の家に向かった。猫だ。僕の家の前に、一匹の猫が座っていた。僕の猫だ。急いで駆け寄ると、猫は突如として走り出し、僕を通り過ぎてどこかに行ってしまった。僕は猫の後ろをとらえたのは、既に猫が突き当たりを曲がったところだった。僕はその突き当たりにあった猫の後姿をぼんやりと考えていた。猫は、大丈夫だった。そして、2重ロックをはずし、ドアを開けようとしたところ、ドアは開かなかった。逆にドアを閉めてしまったようだった。僕は考えた。確かに、急いでいたにせよ、ここを出る時僕はちゃんと鍵をかけた。嫌な予感が僕の頭をよぎる。「やれやれ」2重ロックを再び開けた後、僕は用心して部屋の中を確認した。なんと、僕の知らない靴が一足、行儀よく玄関に並べられていた。何処のメーカーのものでもなく、見たこともないような形の靴だった。僕はもしかして空き巣が入ったのかと思っていたのだが。中に入って扉を閉めると、その反動で張り詰めていた部屋の空気が揺れた。しばらく、僕は玄関で第三者による事態の変動を待っていたのだが、それはいっこうに訪れなかった。仕方なく僕は靴を穿いたまま部屋に上がった。その瞬間、部屋のチャイムが鳴った。僕はその場に凍りついた。
2005.11.09
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久し振りに日記書く。ここで日記書くって事はさぁ、身近な誰かには知ってもらいたくない心の叫びだよね。嫌なことがあろうが、嬉しいことがあろうが、内面のことは意外と身近な人に知ってもらいたくない。でも、誰かには聞いてほしいことが毎日毎日少しずつだけど増えていって・・・不思議な形の山になる。どうにもなんないときもあるし、どうにかなるときもある。どうにかなんないときのほうが圧倒的に確率は高いけど。人間関係って諸刃の剣。片方が関係を崩しちゃったら簡単に破綻しちゃう。そこを綱渡りみたいに微妙な均衡を保ちながら付き合っていかないといけない。嫌だね。気持ち悪い。憎い。泣きたい。逃げたい。一人になりたい。「人間は、助け合いながら生きている。お前の着ている服もズボンも靴も、全て助け合いの中から生まれてきたものだ。」そんな事言ったって一人になりたいときはなりたいさ。小学生のような付き合いをすることしかできない高校生。うちのクラスはそんな奴らの集まり。いい加減嫌になる時だってある。でも、卒業証書をもらうまでは付き合っていかなくちゃならない。過ぎていく時間。その中で僕は想像する。そして創造する。ゆっくりと、何かを絞るように誰かの首を絞めている自分の手を。なにも一瞬で殺すなんて勿体ないじゃないか。バッドでやるにせよ、ナイフで刺すにせよ、後処理が大変だ。音も出るし、後で血を拭かなきゃならない。首を絞めるのが殺しとしては一番能率的でないだろうか。でもね、そんなバカなことはしない。何故なら、僕はそれが想像だと分かっているから。境界線をハッキリと色の濃い黒のマジックで引かなければ、こんな世界生きていられない。義務的に生きるのなんて真っ平だ。僕は自分が良いと思った人間には助けの手を差し伸べる。頑張らない奴は、何をしたって同じ。続かない。自分の考えを持っている奴には人生のブラックボックスがある。そんな人と早く出会いたい。出会うためには、自分も頑張らなくては。学生のうちは勉学に頑張らなくては。そんなことを思う今日この頃でした。全然まとまってない 笑
2005.11.06
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夏も終わり、静かな夕陽が空に静かに沈む頃になった。肌寒い風が体に当たり、薄い上着だけじゃそろそろ寒い。幾分、街を通る人たちの活気さえも、夕陽のように衰えた気がする。ゆっくりと道をほのかに照らしだす街灯。錆びれて傾いた信号機の長い影が地面を這っている。沈む夕陽を拒むかのように点滅する大きな看板の電球。誰もいなくなった公園。寂れたブランコとベンチが、次第に存在を闇へ隠す。既に真っ暗い闇を溢れさせてる細い裏道に入ると、どこかのアパートから笛の音と三味線が聞こえてくる。そんな情景を感じると、ため息と共に、「夏は終わったんだ」と、意味もなく一人でつぶやいた。少し急な坂を上ると、自分のアパートが見えてくる。もちろん、僕と一緒に住もうという物好きはいない。一匹の猫だけだ。だが、僕にとっては、それだけで十二分の価値がある。雨風によって、殆どのドアが錆びれ、軋み、大きくへこんでいる。建てつけも悪く、かなりの力を入れないと開かない。部屋に入る。猫の姿はない。時折、どこかへ出て行く。彼女にいつ、そんなあてが出来たか最初のうちは気になったが、もう構わないようにしている。気の向いた時に帰ってさえくれれば、それでいいと僕も思う。窓の外の夕陽を体に受け止めて、長い影を伸ばすコーヒーカップ。何かを必死に主張したいのだけれど、過去にそんなことはもう諦めた様な、そんなコーヒーカップ。それに、暖めたコーヒーを入れ、砂糖を3欠片ほどいれ、ミルクを混ぜ、昔インドで買ったお気に入りの椅子に座り、静かに飲む。それだけは誰にも邪魔されたくない。その間の空間の雰囲気が僕はとても好きなんだ。全ての時間は、ねじを抜かれたように突然ゆるやかになり、花は水をはじくような美しさを取り戻し、軋む床はさらに軋んで、沈んでいく。ありとあらゆるものが壁に吸い込まれ、ひとつの物と物の狭間が消える。全てが壁の中で混合し、他者が自分になり、自分が他者になり、物が結合し、分子原子は崩壊し、過去の自分をも巻き込み、時間を気にすることなく交わり続ける。そこに、何も意味などないのだ。ただ、その瞬間が僕は好きなんだ。
2005.08.29
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あるところに男がいた。何の特徴も無く、特質も無く、特技も無い、いわゆる普通の男だった。彼は長男として生まれた。後から生まれてきた2人の双子の弟の面倒はしっかりとみたし、兄として恥ずべき行為は何一つしなかった。勉強も頑張ったし、課せられた宿題を忘れたことも無い。恋人だって、中学生の頃からきちんといて、今までに2人と付き合った。彼は、2人をとても愛していたし、優しくした。相手が自分のことに関心を持たなくなったことを感じると、わざと自分に非があるようにして別れた。アダルトな本さえ買わなかった。小、中、高と、全て皆勤賞をもらい、親に面倒もかけなかった。今は、中堅の大学に籍をおき、今までと変わらず勉強を頑張っている。しかし、この男は頭が飛びぬけて悪かった。頭が悪かったため、どんなに勉強を頑張っても、普通の人の半分くらいまでの事しか彼は出来なかった。頭が悪い事で、同級生からバカにされたことも多々あった。しかし、男が何より辛いのは、自分より弟たちのほうがすこぶる頭が良い事だった。その上、身長さえも、彼らのほうが10センチも高く、男は彼らと並んで歩くことをひどく嫌がった。双子の弟たちは、出来の悪い兄をいつも誹謗と中傷の目で見下した。彼らは、頭脳も運動神経も普通の人よりも良く、女子からの注目の的でもあった。兄には彼らに勝てることが一つも無かった。親には、面倒をかけたことはなかったが、逆に親から期待されたことも無かった。いつも世界は彼の存在を通り越して弟たちだけを見ていた。男は、いてもいなくても、存在さえ感じえることが出来ないまで、家族から消されていた。両親にとっても男というのは、いても迷惑はかけないし、出て行ったら出て行ったことで、食費も光熱費も浮くので別にいい、と言うくらいにしか思っていなかった。過去の恋人たちにとっても、男と言う存在はプラスにもマイナスにもならなかったので、付き合っても付き合わなくてもどちらでもよかった。要するに、男の人生の中で、他者から特別に関心を持たれた経験は無かった。逆に、男が関心を持つものも少なかった。しかし、長く関心を持てるものが男にも一つあった。他者から見ればそれは特別な関心と思われるので、臆病な男は誰にも話したことは無い。彼は今日も大学の講習を終え、寄り道などせず、まっすぐ家に帰る。大学も、親に交通費や、アパート代などの迷惑をかけたくなかったため――家から自分がいなくなることで、存在を消されたくなかった――家からすぐ近くの大学を受けた。もちろん、友達はいなかった。彼の臆病な心は、傷つくことを恐れ、他者をひどく避けた。話すと自分の頭の悪さも知られてしまう。彼は自分の存在をあやふやなものとし、存在していた。家に帰るなり、男は洗面所に向かい、手と顔を洗った。手を、石鹸を使い、丹念にこすり、洗う。出始めのニキビはすぐに潰し、中から白い液体を出し、市販のクリームを塗りこむ。そして、居間に座り、作り置きされた夕飯を一人で食べる。よく噛んで食べる。後ろの台所で、母は無言のまま皿を洗っている。食べ終えた後は、皿を自分で洗い、また洗面所に向かい、口をゆすぎ、5分間かけて歯磨きをする。コップは水垢が付かないよう、すすぎ、洗う。その後2階に上がり、自分の部屋に入る。四畳ほどの広さの部屋には、机、本棚(もちろん本だけ)、壁には鏡がかかり、中古のパソコンが一台(回線には繋いでなく、論文を書くだけ)、そして床に小さなテーブルが置いてある。まず、机に向かい、今日の講習の復習を始める。一通り終えた後、一週間ほど前に出された論文の課題に取り掛かる。議題は「近代文学においての現代の子供たちへの警告」それを3時間ばかり取り掛かると、11時ごろになる。一階に降り、洗剤をかけ風呂を洗い、2,30分後に湯が沸いたら、家族が入り始める。そして最後に自分が入る。その頃は既に12時半近くになっている。その間も、彼は課題に取り組んでいる。頭が悪いため、思うようには進まない。思うように書くことが出来るまでに、頭の中の様々な自分と話し合い、結論を出さないと書くことが出来ない。大体それに2時間もかかるのだ。彼が書く字も、小学生のような汚い字で、書くための道具も2Bの鉛筆とMONOの消しゴムだけだ。誤字も多いので何回も書き直す。そのため、用紙は薄く黒ずんでいる。消しゴムを強く擦りすぎたことで用紙を破いてしまうことは幾度もあった。しかし、彼は、それは自分の頭が悪いせいなんだ、と自分に言い聞かし、課題に励んでいた。そんな彼の目の前に突如、光沢のある薄茶色の物体が現れた。彼の臆病な心は頭の中で破裂しそうなくらい膨れ上がった。驚きの余り、鉛筆を放り投げ、椅子ごと後ろに倒れた。その騒音に、隣の部屋から壁を蹴る音が聞こえた。懸命に姿勢をなんとか建て直し、よく見ると、それはゴキブリだった。10センチ近くもあるとても大きなゴキブリだった。光沢のある背中は光を跳ね返し、長い触角はせわしなく動いていた。彼の出来の悪い頭は、その自体を理解するのに4分かかった。まず、最初の疑問としては、何故ゴキブリが現れたのか。彼の部屋では食事をしたことが無かった。菓子類を食べることも無かった。友達を呼んだことも無いので部屋が汚れることさえなかった。食べ物の無いこの部屋に何故ゴキブリは現れたのか。暫く考えたが、その疑問は彼には解けなかった。次の疑問は、どうやって現れたのか。部屋を毎日のように掃除し、窓を開けるときは網戸を閉め、部屋を出入りする際もきちんとドアは閉める。入るところなどどこにもないのだ。壁に隙間さえない。昔、ここゴキブリを潰して、卵をおとされたこともない。もちろん、その答えも彼にはわからなかった。そして、最後の疑問は、このゴキブリをどうするか。窓から逃がすにせよ、ドアから出すにせよ、運動神経の悪い彼にゴキブリを捕まえることなど、到底無理なことであった。そして無謀なことだった。やはり、このゴキブリを部屋から出すためには、ゴキブリを殺すしかなかった。しかし、階下に下りて、ゴキブリが出たと一言言えば、母親から数十倍もの非難を浴びせられることになる。そして、すぐにそれを聞きつけた弟たちが2階から降りてきて、自分をひどく馬鹿にするだろう。見下すだろう。臆病な男は、自分の心がまた傷つくことと、騒ぎが大きくなることを恐れた。自分を否定されることを恐れた。その思いから逃げるかのように、彼は鞄から護身用のためのナイフを取り出した。ゴキブリがこの後、止まるとは限らない。動き出したら到底僕には殺すことが出来ない。今しかない。今、机で止まっている時しかない。自分自身を励まし、精一杯の想いをこめて、ナイフを持った片手を振り上げる。ゴキブリは相変わらず、動く様子も無く、触覚だけがせわしなく動いている。男の額から汗が吹き出る。頭の中の心は、既に破裂してもおかしくない状態で、頭蓋骨にへばりついていた。彼は想像する。ナイフを突き刺した後の、ゴキブリの姿を。液体は飛び散り、中から卵が溢れ、部屋は臭気に満たされる。想像は肥大化していく。止まらない。もうだめだ、、、彼は勢いよく、渾身の力をこめて、ナイフを振り下ろした。しかし、ゴキブリは見事に彼のナイフを避けた。避けられることを考えていなかった彼は、予想外の出来事についに頭が破裂した。膝をつき、床に降りたゴキブリめがけてナイフを突き刺し続けた。本棚に体が当たろうが、テーブルをひっくり返そうが、鏡を割ろうが、関係なかった。ゴキブリを殺すことも、彼の頭の中から消えていた。あたりは、本や、ガラスの破片で足の踏み場も無い状態に仕上がった。心拍数は上がり、汗は噴き出し続ける。彼は足を血だらけにしながらも、ついにゴキブリを追い詰めた。そして、今までの人生の中での、ひどく辛かった恐怖心や、誹謗、中傷、罵倒などへの全ての想いをゴキブリに与え、涙が頬をつたうのを感じた瞬間、彼はナイフを突き下ろした。逃げ場のなくなったゴキブリに見事に突き刺さり、液体が飛び出た。何もかもが、頭の中で空白になった。全てが消されていく。満たされていく。その瞬間、彼は心の中で快感を感じた。それは今までに無い快感だった。生まれきた中で最高の快感を彼は心の中で感じ取った彼の部屋からの騒音を何事かと、両親や弟たちが駆けつけた。男は、いくら両親がドアを開けろといっても、応じなかった。無言のまま、彼はナイフに突き刺されたゴキブリを見ていた。その後、そんな彼の部屋の隣で、薄笑いを浮かべる者たちがいた。双子の弟たちである。「あいつ、俺たちが放したゴキブリ一匹で相当暴れてるな」一人の弟が言う。「こりゃあ、傑作だ。荒れ果てた部屋を見れば親父たちもアイツを追い出すだろう。」「やっと、俺たち一人に一つの部屋がもてるな。出来の悪い兄貴は邪魔なだけだ。部屋を持ってても意味が無いだろう。」彼らは笑いあった。隣の部屋の騒音を聞くたびに彼らは腹を抱えて笑った。彼は数日間、部屋から出てこなかった。もともと、彼に対して関心も興味も持たなかった彼の親は、面倒に巻き込まれるのが厄介だったので放っておいた。ただ、自殺だけはするまい、と確信も持っていた。弟たちは話す。「しかし、一匹殺すのに、いやに時間かかってないか。」「あいつ、馬鹿だから食べることも忘れてゴキブリを追い続けてるんだろ」一人の弟が薄笑いしながら言う。「いや、しかし、何日もゴキブリを追うことは、いくらあいつでもしないはずだ。」一人の弟は言う。「じゃぁ、確かめてみるか。そして、暴れきったあいつと汚い部屋を見つけたらさっさと母さんに言って、たたき出してもらおう。」「よし、そうしよう。見に行こうぜ。」二人の弟は立ち上がった。その数日間の間、男は部屋にこもり、ゴキブリを殺し続けた。殺しても殺しても足らないくらいの数限りないゴキブリを殺していた。時には40センチものゴキブリを殺した。大きいものを殺せば殺すほど、彼の心の歓びは膨らみ続けた。彼の部屋はゴキブリの死骸で溢れた。そして、ついに今日、最大のゴキブリが現れた。2メートル近くあるゴキブリが、2対の足で立ったまま、彼の目の前に現れたのだ。彼は、喜びに震えた。かつて無いほどの緊張感と快感が彼の体を駆け巡った。全てが開放される。彼の顔には笑みさえ浮かんでいた。そして、狙いを、全神経を、ナイフをゴキブリに突き向け、血をたぎらせ、奥歯を噛み締め、心拍数を高め、全ての力を振り絞り、なんの関心も無く、頭めがけてナイフを突き刺した。その瞬間、彼の部屋のドアは開けられた。あまりの光景に、二人の弟はその場に立ち尽くした。部屋は、ガラスの破片や、本だけでなく、大量の血が壁や、天井に散らばっていた。そして、部屋の真ん中に、体に無数の穴を開けた兄が、立ったまま顔にナイフを突き刺し、死んでいたのだ。しかし、彼の顔には、この世とは思えないほどの笑みが、耳元まで浮かんでいて…‥・
2005.08.28
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夜。見たものを全て落胆させるような、古く、錆びれたアパートの一番奥の部屋に僕は居た。「原宿第一アパート」山手線が駅に入ってくるときの音が窓を越えて僕の耳に届いく。開け放した窓からは夏夜の風が静かに入り込む。部屋の中は暗いが、空は青い。とてつもなくダークブルーな空。その青さには不気味ささえ漂う。古代の人がこの空を見たのならば、恐怖によっておののめくだろう空とは打って変わり、町は賑やかに色づいている。ざわざわとした人が集まると出来る声の集合体。薄手の服を着て町を歩く若者たち。最高に楽しいのだろうか。少なくとも楽しいことには変わりない。しかし、僕は部屋に居た。僕は畳の上で仰向けになって寝ていた。何をするわけでもなく僕はここに存在していた。あても無く天井のシミを数え、模様を目でおい、それに飽きたら目を閉じた。町の声は華やかで、それは僕の部屋を寂しくさせる。部屋の隅にあるダイヤル式のテレビを点ける。何も写らない。当たり前だ。アンテナに繋げていないんだから。ただ僕が捨ててあったのを拾ってきたもの。それをゴミ捨て場で目にしたときに、僕はそれがメッセージのように受け取れた。僕はそれを部屋に持ち帰り、今電源を入れている。虚空の真っ黒な画面には僕の顔しか映らない。カーテンが揺れる。風が入ってくる。そして、歌も入ってくる。サザンオールスターズの「真夏の果実」懐かしくもあり、それで居て古くならない不思議な歌。今は夏なのだ。桑田佳祐の、音程によって変わらないハスキーで渋い歌声は、確かに夏を連想させる。彼は今何をしているのだろうか。相変わらず洋楽、して言えばエリッククラプトンでも聴いているのだろうか。それも、聴くのはジャケットつきのレコードだ。コーラを片手にジャケットとレコードを見比べながら聴いているのだろうか。まぁいい、僕には関係ない。また仰向けになる。やることは一つだけだ。時を待つしかない。その時がくれば、僕が急ごうが何をしようが、それは起こるのだ。玄関と六畳一間のこの部屋に居たとしてもそれは起こる。だから体力を極力使わないようにする。寝よう。そして「真夏の果実」を静かに聴こう。こんな夜は涙見せずにまた逢えるといってほしい見事に夏の寂しさを表している。見事だ。僕の気持ちを和らいでくれる。あと、数分でこんな安らぎは吹き飛ぶだろう。だが、これは僕にとって意味のある歌だ。とても気持ちがいい。山手線の駅のホームに入るときの音が聞こえてくる。女にでも電話しようか。何の意味も無いく、楽しい話をとりとめもなく話し、お互いに触れることなく、お互いを傷つかせること無くただ電話をするだけだ。彼女が誰と付き合おうが、何に憧れていようが僕には関係ない。要は話すことなんだ。ただ話し、そして切る。相手の迷惑も考えず、電話をかけ続け、話したいことだけ話したら、後は相手の話に適当に対応して切ればいい。それだけの機械だ。実に能率的で効率的で人間的で。僕は女なんて知らない。知り合いさえ居ない。だから取り敢えず自分の好きな数字を押してかかった番号が女だったら話せばいい。もちろん男でもいい。ただ、男は持論を話したがるやつが多いから、意味の無い話が出来る女のほうがいいのだ。それだけの理由さ。なんて言って電話をかけようか。「夜分遅くにすいません。唐突ですが、僕と意味の無い話を、とりとめも無く話してみませんか。」だめだ。どこかの宗教法人に間違えられて終わりだ。「僕は今無性に女の人と話したいんです。どうでしょうか、話してみませんか。」キャッチだこれは。だめだ、僕にはちょうどいい台詞が浮かばない。村上春樹の本の主人公ならそんなもの朝飯前に考えてしまうだろう。彼らは理性と知性に満ち溢れ、それでいて感性を持て余すほど持っているのだから。だが、僕には浮かばないんだからしょうがない。部屋の中央に置かれた電話を僕はにらみつける。黒いダイヤル式の電話。ローカルでマニュアル的な部屋だ。そんな部屋の黒い電話がけたたましく鳴ったのは、それから数分のことだった。
2005.06.22
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存在理由。単純に言えば、それは、そこに物(もしくは何か)が在る、ということだ。「それ」が生まれる前には「それ」は無いし、「それ」が死ぬ(もしくは消える)と、「それ」は無くなる。生と死の間には過程が在り、生と死の前後に存在は無い。確かに、物質としては存在するだろう。だが、そこから生み出される思考や、想像は無から生み出される有だ。その法則は宇宙に存在するが、法則を組み立てる思考は物質には出来ない。それが、物質と生物の差だ。学校の授業で習うだろうが、物質の最小は原子ではない。呼称で呼ぶのなら原子であるが、それより先はまだ無限に在る。そしてこの宇宙は膨張宇宙。無限に広がり続けるが、限度と言う境界線も確かに持つ。例えるなら、ゴム風船だ。パラレルワールドに存在するもう一人の自分。現実に存在するのだ。この宇宙のビックバンと同じ時間のビックバンの宇宙が存在すれば、在り得ることだ。そうすると「存在」というものがあやふやになってくる。この時間より先に位置するパラレルワールドが存在するのならば、我々の行動はもう決まっていることになってしまう。それは運命と呼べるのかもしれない。決まっている時間なのだ。もし、10分先のパラレルワールドがあるのならば、我々は10分先のパラレルワールドと同じ行動を10分後にする。自分は「ひとつ」だけだと思っていることが、3次元世界に「時間」が存在することによって、無限の自分が存在してしまう。四次元とは、それがすべて含まれた世界。無数に無限が広がる。無数と言ったら数えられてしまうから、無限が無限に同時に存在すること。そう。そこを理解できたら、この世界で僕らが存在する意味を考える事自体が、意味の無いことだと分かる。ただ、僕は今「例外」を見ている。極めて稀な「例外」だ。「君は普通の人間じゃない。」ジョンレノンは口を開く。「君ほど存在を理解しているものはいないのに、それはとても悲しいことじゃないか。」彼は話し続ける。「存在理由が無くなった。どういう意味か分かるかい。」僕は溜息を思い切り吐いた。僕は口を開かない。彼も口を開かない。沈黙がこの部屋を支配する。僕の機関としての穴から入り込み、体全体をなめ尽くすかのように支配する。一体どれだけの時間が経ったか分からない。もしかしたら、光のごとく一瞬のことだったのかもしれない。もしかしたら、宇宙が始まってから現在までの長さだったのかもしれない。しかし、ここには時間が無い。彼の額の時計が止まってから僕はひとつだけなんだ。そして、僕は口を開いた。「今の僕だけが「存在」なのか。」僕がそう言うと、ジョンレノンはピクリと何かを感じた。「その通り。君は今「ひとつ」だ。パラレルワールドにも、時間の中にも存在しない。完璧な「存在」いままで誰もなしえなかった存在なんだよ。」彼は口を耳元まで押し上げ、笑った。「例えば。」また、あの長い腕が出てきた。マジシャンのように、パチン、と指を鳴らす。彼の隣に若い女性が、とても綺麗で雪のように白くて華奢で気立てが良くて黒く長い髪はすべてを飲み込むほどに美しくきらめいている。そんな現実にはありえそうにも無い女性が居た。表情は無い。「時間というのはこういうことだ。」彼の腕は風を切る音を残し、彼女の胸元にえぐり込まれた。恐ろしい量の血が噴き出す。口からは、血と混じりあった液体が溢れでる。叫び声もあげず、彼女は静かに倒れた。その倒れ方でさえも、息を呑むほどに美しかった。両腕は、脈を打つように痙攣している。「これが死だ。」彼女の胸にえぐり込まれたジョンレノンの腕はそのまま脳までドリルのように進み、脳に達した。「死んだ。彼女は何処にでも居るような女じゃない。この世では絶世の美女と謳われるほどに素晴らしい女だった。後にも先にも彼女のような女は生まれない。そんな女だ。」悲しむように自分の手を眺めている。その手には彼女の脳髄がこびりついていた。そしてこちらを向くと、また耳元まで口を押し上げ笑った。「悲しいか。そんなことは無いのに。彼女が死ぬ必要なんて何処にも無かった。だが、彼女は死んだ。必要という意味など無い。私が殺したいから殺したのだ。」パチン、とまた彼は指を鳴らした。また同じ現象が起きた。彼の側らに、先程美しく死んでいった女が居た。表情は無い。「さっきの女の1分前の女だ。」いつの間にか彼の額の時計は一分戻っていた。「まぁ、一分待とう。」またあの光景見せられるのだ。我慢できない。僕の頭は狂いそうになる。「もう、分かった。というより分かってる。」僕は彼に言った。「その女はメタファーだろう。君が何を言おうとしているかは僕には分かる。そろそろ説明してくれないか。僕はこれからどうすればいいんだ。」彼は静かに僕を見下ろしながら答える。「一・分・待・て」果てしない一分が経過した。その間に僕は滝のように汗をかき、着ていた服はびしょ濡れになった。彼の時計は一メモリ進み、彼の長い腕は彼女の胸にえぐり込んだ。そして、一分前と同じ事が再現された。全く同じに。やはり倒れ方も美しかった。そして儚く死んでいった。「一分の世界はどうだった。長かっただろう。君には今まで時間というものは無かった。一分の間にも秒単位で数えれば60人のこの女が存在し、さらにそれを・・・。」「もう分かった。次この女について話したら僕は君を殺す。」彼の言葉をさえぎるように僕は言った。彼は話すのをやめた。そして、口を開いた。「では、いよいよだ。説明しよう。君の存在意義について。そして、今後君が取る行動について。」彼の手には、まだ、女の脳髄がついていた。
2005.06.11
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ここを更新しなおして早3週間近く経ちました。毎日のように更新して、結構大変でした。ので、更新を週に一回にします。そして、更新する場合はより内容の濃いものを目指します。ので、次の更新は日曜日です。以上!
2005.06.07
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彼は小さな、木で作られた椅子に可愛らしくと座っていた。黒い大きなコートを体を隠すかのように羽織り、頭にはつばの長い黒いハットを被っている。「やぁ。」帽子とコートの間から見え隠れする口が動く。「ジョンレノン」「僕はジョンレノンだ。」彼は動きもせずそう言う。僕は言う。「ジョンレノンには到底見えない。僕の知ってるジョンレノンはもっとスマートで、黒めがねをかけて、髪はボザボザで、それでいてオノヨーコとなんかと結婚してる不思議な男だ。君も不思議なところは変わりは無いけど」「君がなんと言おうが、僕はジョンレノンだ。そこに意味なんか無いよ。君が言うかのような概念も僕には存在しない。僕はジョンレノンでしかないんだ。君はこれまで扉を開き続けただろう。それと同じさ。僕はこれまでもジョンレノンであり、これからもジョンレノンなんだ。」カチ、カチ、と彼の額の時計の秒打つ音が部屋に響いている。「わかった。僕は君をジョンレノンと認めるよ。君は存在した瞬間からジョンレノンなんだ。僕がどんな概念を持っていたとしても君はジョンレノンでしかない。そこに、いくら反論を並べたからといって君を否定することは出来ない。キリストだろうが、神だろうが、君を否定できない。それはキリストや神を否定できないのと同じように。そういうことだろう。」彼はうなずいた。帽子が少しずれたのか、手を頭に乗せなおした。「君は物分りが早いね。存在と言うものをかなり理解している。ドーナッツでも食べるかい。それともクッキーが良い。どちらもカリッと焼けていて、中はしっとりしているよ。」そう言い終わると、恐ろしく長い手がコートから抜き出てきた。彼は中央にいるが、四方の壁に余裕で手が届くほどの長さだ。右手にはドーナッツ、左手にはクッキーの束が握られていた。「どっちが良い。選びな。どちらもこの世とは思えない味だよ。」コートからもう一本手が出てきて―その手にはクッキーが握られている―口に運ばれていった。「悪いけど、クッキーもドーナッツも今はいらない。」バリバリとクッキーを食べる音が聞こえる。「そうか。それはしょうがないね。」三本の腕は一瞬にしてコートの中に吸い込まれていった。「本題を話そうか。」時計の音が止んだ。「どうしたんだい。」と、僕は聞いた。「時間を止めたんだ。これから話す事は、時間が必要ないから。そして此岸では話せないことなんだ。」「此岸。」「この世のことさ。僕ら今まで此岸に存在してきた。君は扉を開き続けてきたし、僕はここで君をずっと待っていた。狭間に迷い込むものはいたけど、恐ろしく低い確率でしかありえなかった。君はもう気づいているけど、ここには扉が無い。これがどんな意味かわかるかい。 」彼の顔はコートの中に埋もれて行く。僕はその意味はわかっていた。来るべき時にだけ存在する理由だ。「そう、君に存在理由がなくなったんだ。」そう言うと、彼の口元が緩んだ。
2005.06.06
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気づいたら何も無かった。空も、雲も、海も、風も、何も無い。真っ白な地面。真っ白な天井。人もいない。誰もいない。壁は何も答えてくれない。目の前の空気は薄い。僕は動いた。恐ろしくゆっくりと僕は立ち上がった。そして、部屋の中央に扉が生まれた。地獄の扉だ。真っ黒な扉。ノブも、木の板も、すべて黒い。漆黒だ。装飾は何も無い。ただ、僕はそれが地獄の扉だと言うことはわかっていた。僕はノブに手をかけた。凄まじい風の音が鍵穴から聞こえてくる。ノブを回した。金属がこすれる音が聞こえる。まるで叫び声かのように。少しずつ扉は開いていく。生暖かい風が僕を通り抜けていく。開いた隙間から、大量の液体が流れ出てくる。血でも、水でもない。何かの液体だ。扉が開かれていく。僕はそれを止められない。それは止められないことなんだ。戦争で人を殺すのが大儀になるように。核爆弾を入道雲が浮かぶ真っ青な空から、突き落とすかのように。僕の心は揺らがない。それは決められたことだし、決められていたことだ。このとき、僕がこの扉を開くことは特別なことでもなんでもない。それは初めから在って、終わりが来るときは終わるのだ。先程流れ出ていた大量の液体は流れるのを止め、風は動くのをやめた。まるで自らの存在を、後から来る恐ろしいモノから隠れるように。そして、扉は開かれた。そこには何も無かった。また、ここと同じ真っ白な部屋が続く。同じなんだ。これが僕が生きることなのだ。扉を開ける。それが僕なんだ。それだけが僕の存在であり、存在価値でもある。僕にはブルジョワ的思考など存在しない。だが、僕はここで扉を開き続ける。誰のためでもない、自分のためでもない。来るべき時のために僕は扉を開き続ける。今まで僕は数え切れない数の扉を開いてきた。気づくとそこにいる。それだ。繰り返しではない。だが、僕は扉を開き続けてきた。来るべき時のために。それが今だったのだ。「やあ。」気づいたら何も無かった。「僕はここでずっと君を待ってた。」空も、雲も、海も、風も、何も無い。「だが、君と僕を繋げるには相当な数の壁を越えなければならなかった」真っ白な地面。「本当に大変な数だった。鼠も食べつくした。」真っ白な天井。「時には壁を壊したよ。」人もいない。「他にも、君以外の人がこの世界に紛れ込むこともあった。」壁は何も答えてくれない。「その時は、消した。僕にとっては身を引き裂かれるようなことだった。」目の前の空気は薄い。「でも、ようやく君と繋がった。」僕は動いた。「いよいよ完全に君は僕と繋がる。」恐ろしくゆっくりと僕は立ち上がった。「お帰り。」部屋の中央には、何かがいた。「僕は、ジョンレノンだ。」時計を額に埋め込まれた小太りの男はそう言った。
2005.06.05
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みんな自由に小説を書こう!そして小説コミュニティに参加してたくさんの人に読んでもらおう!時間ないから、以上!
2005.06.04
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只今参加者11名です^^参加したい方はふるってご参加ください。自由です。
2005.06.03
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まず、比べてみてください。私の小説コミュニティダーク0615の小説読書会館注意事項とか、もろパクリです。最低です。別にリンク体を作ることに対しては個人の自由ですが、文章まで真似されるとは心外です。でも、別に真似されてもかまいません。どうでもいいです。ご自由に使ってください。だが!これしきのことでは挫けない!!!中坊の遊びなど俺にはかまない!なぜなら!今年は!サザンのライブに行きまくるからです!感想は乞うご期待!
2005.06.01
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一応完成しました。登録方法はトップ画面に表記してあります。参加したい方は是非御申しください。
2005.05.31
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だめだ・・・無力^^;やばい出来だこれは。てか何だこれは。レイアウトなし。枠だけ。今から直します 笑
2005.05.30
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すいません、間に合わないかもしれません。表は大体出来ました。ただ、レイアウトが無いのがちょっと物足りないかもしれない。レイアウトは今後つけていくつもりですが、中間、体育祭、そして風邪が重なり、表紙か出来ませんでした。すいません。表は賛否両論さんの丸いテーブルを参考にさせていただきました。ありがとうございました。皆さんなくして、ここまで作れませんでした。では、完成を目指してがんばります。
2005.05.29
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小説って難しい。設定ちゃんと決めても、途中の経過を書くのが難しい。宮部みゆきだって、そこまで、凝った推理小説ではないのだけれど、あの文章力には惹かれてしまうものがある。村上春樹だってそうだ。みんな経過を書くのがうまいなぁ。知識が広くないと、登場人物の会話も面白くないしね。小説って難しい。
2005.05.28
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だれだろうね。名前は親が、またはほかの誰かが僕らに就けてくれたものだしね。べつに、今の名前は気に入ってる。最近気づいたんだけど、僕ってダレダ?今まで、文章や話を考えているこの「心」こそが自分かと思っていた。いますぐに、頭の中で「あ」と思い浮かんでください。その言葉はどこから出てきましたか?始まりのないところから出てきませんでしたか?僕はそれが怖くて仕方がない。僕らは脳によって操作されているだけなのかもしれない。だって、味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚、この五感が無くなってしまったら僕らは僕らの中でしか生きることが出来ない・・・。ようするに、内なる機能しか僕らは持っていないんだ。他に関係して、なにかできるわけでなく、自分の中ですべて解決していく。内なる自分。本当の外はどうなっているんだろう。もしかして脳だけしかないんじゃないか。「あ」って発想したのはダレ?僕?私?脳?いったいダレなんだ。真っ暗な部屋に、脳が規則正しく並んでいる。ひとつひとつの脳の中にはそれぞれひとつの世界が存在している。そして、脳によって僕らの行動は操作されている。これを運命とも呼べるかもしれない。中央に存在する扉が開く。僕らの頭の限界を超えたダレカが入ってくる。彼らは、僕らの頭の限界を超えた行動をする。僕らの世界は続く。例え、彼らの気分―気分と言えるものが彼らにあるのか知らないが―によって、脳を潰されたとしても、僕らは内なる世界で、変わらずに暮らしている。ひとつの世界の一人は、その世界を構築する一人。だが、一人ひとりの脳に世界があるのならば、その一人も、他の世界を構築する一人。他人が本人と繋がる。ブラウン管ではない何かで僕らと繋がっている。僕はダレだ?
2005.05.27
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ノルウェーの森ハンブルグ空港で不意に流れた「ノルウェイの森」によって「僕」は人生の課程で失ってきた多くのものを思い出す。限りない喪失と再生を描いた作品。1987年に刊行し、大ヒットとなった村上春樹の代表作。僕が初めて読んだ村上作品。「ノルウェイの森」はもちろんビートルズの曲。これはかなり心に残った。「僕」が、いろいろな人に出会い、付き合ったり、別れたり、交わったりしながら話は進んでいく。しかし、終始、「僕」は苦悩している。あの状況になったら、多分誰でもあのくらいの苦悩はするだろう。この本の中に出てくる登場人物も、読者を惹きつける魅力を持つ。彼らはそれぞれ違うことで苦悩しているのだけれど、根本的なことは、皆繋がっている。この本は難しい。はっきりいって、一回読むだけじゃわけがわからない。村上春樹の独特の文体は、本心をわかりにくくさせてくれる。そこが、逆にこの本の面白いところでもある、と僕は思う。皆さんも是非、機会があるなら読んでみてください。難しい本ほど、言葉では言い切れない、何かを語ってくれます^^
2005.05.26
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村上春樹の代表作でもある「ダンスダンスダンス」この本を読んだのはこの前のゴールデンウィーク。一日で、上・下巻とも読んでしまった。面白い。何か大きな事件が起こるとか、そんなことはまったくなく進むのだが、僕は惹きつけられてしまった。あと、あのさらりとした文体。日本語でべたつかない文章を書くのは相当難しい。あの人は、ひとつの文体を作り上げた。ストーリー「羊をめぐる冒険」から4年を経た1983年の春、激しく雪の降りしきる札幌の町から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら、「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。現実と幻想、生と死、沈黙と響き、虚無と豊饒。繋がれたものと、断ち切られたもの。それはいったいどこに向かい、何を希求しているのか。「風の歌を聞け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」の三部作で1970年代の魂の遍歴をたどった村上春樹が、80年代を舞台に、その新たな価値を求めて、闇と光の交錯を鮮やかに書き上げた。この本を読む場合、前作の「風の歌を聞け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」を読んだほうがいいかも。じゃ内とけっこう意味がわからないかも。鼠って誰?って感じになると思う。あと、この本の中でも出てくる羊男は別冊の「カンガルー日和」にも出てきます。村上春樹の本は、けっこう好き嫌いが分かれる。淡々と続いて、淡々と終わるからね。結末は毎回、何事もなく淡々と終わるから。でも、それが逆に良さでもある。僕は村上春樹のそんなところが好きなんです。まー読む価値はあるので是非見てください。魅力的な登場人物に夢中になるとおもいます^^
2005.05.25
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コードレスにしようと、セキュリティを解いた瞬間やられました。その後は、起動と、終了を繰り返すばかり。もう、あきらめるしかなかったです。内容のすべてを消すコードを入力し、今までの記録は消えていきました。そのせいで、「小説の書き方」の更新ができませんでした。ALIVE@世界一解りやすいタグ講座管理人さんの対応の速さには驚嘆しました。一日で読者のためにページの内容を大幅に進行するなんて・・・。まぁ、僕もそのようなHPを目指すべくがんばるしかありません・・・。
2005.05.24
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只今僕の理想郷を目指してテーブルタグを探しています。自分の小説を小説コミュニティに載せてほしい方、私書箱へご連絡下さい^^なかなか分かりやすいテーブルを探すのにも苦労しますね。しかし、来週中までには完成させるので待っていてください。小説の書き方というものを作りました。自分勝手なものなのですが皆さんの参考になったら幸いです。では、また明日。
2005.05.23
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兼ねてから僕には理想というものがあります。それは・・・楽天の小説コミュニティを作ろう!ということです。自分では小説はいくらだって書けます。しかし、ほかの人がどんな小説を作ったり、どんな詩を考えたりしてるかが僕には分かりません。HPを転々と見させていただいても、どのHPにどんな小説があるか、よく分かりません。そこで、僕は小説リンクを造ろうと思います。製作期間は一週間以内。リンクしてほしい方はトップ画面に説明は出ているのでそちらを読んでください。リンクしたい!という方は自分のHPや、小説のコメントも是非書いてください^^ではでは、よろしくおねがいします。。
2005.05.22
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トップ画面に投票箱が設置してあります。ぜひ投票してください。私は村上春樹や宮部みゆきが大好きです。。
2005.05.21
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10時まで寝た。今日は7時半まで暇だ。勉強と宿題でもやるか。
2005.05.20
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24クラス中9位だった。ほとんど練習してない割りには上出来だった。その後、ボロボロになりながら塾に行った。やっぱボーっとしたまま授業を聞いていた。眠かった。時々記憶が飛んでる。予習もしてなかったから、授業の内容まったく分からず。板書をテキストに書き移すだけで精一杯だった。そんなこんなで90分授業をやり終え、帰宅。久しぶりに疲れた一日だった。
2005.05.19
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私のHPには小説がトップに載っている。これはまだ枠。小説を作る際、私はいつも枠を描きます。話の大部分の枠を作り、そこに登場人物の考えや、彼らの人生の経緯などを細かく想像し、書き込んでいきます。比喩的表現を考えたり、慣用句を用いたり。小説は空想だけでは書けません。発想をつなげていくことなら赤ん坊にだって出来るのです。ただ、そこの接続部分を考えることが普通の人には出来ない。文体を考える人は少ない。楽天のHPの中でいくつか小説を読んできたけれど、ほとんどがただ起きている物事を書いているだけ。その場だけだったら読みやすいのかも知れないが、意味がない。本人が書きたい用に書けばいいのだけれど。でも、どうせ読むなら面白い作品を読みたい。私はそう思います。しかし、さきほども言ったように、書くのは本人の自由。表現の自由。どんなもの書いたっていい。書きたいだけ書けばいい。読む人が勝手に決めるんだから。
2005.05.18
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今日は6時に目が覚めた。いつもならこのまま2度寝をするのだが、今日は全然2度寝する気分じゃなかった。しょうがないから30分宮部みゆきの本を読み、7時に起きた。父と姉は既に起きていた。父はソファで新聞を広げ、姉は歩いていた。ふと、無性に急ぎたくなった。別に急ぐ必要もないし、急ぐための用事も無い。ただ、家から一秒でも早く出て行きたかった。論理的思考は朝なので完全に途絶えているから、脳がそう思ったんだろう。顔を洗い、歯磨きをして、朝食を食べ、制服を着て、弁当を持って出た。いつもより15分も早かった。電車はいつもより空いていた。僕は自分の高校の制服が嫌いなので、いつもは空いている電車にはあまり乗らない。なので、人がひしめき合っていない電車内を見るのは久しぶりだった。電車の中では村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」を読んだ。2回目。本を読みたいのもあるけれど、周りを見ないようにするためにも電車の中では欠かさず読む。逆に何か本を読んでいないとイライラしてくる。「席を譲れ」とでも言うかのように、若い人が座っている席の前に立つ5,60代のオヤジ共。大声で話す高校生。携帯を見るためにうつむく人達。見てて楽しいところなど一つも無いのだ。場所から場所への過程の場所。無駄の象徴的時間の代表例。よほどの電車好きでなければ、上記のことを無視してにかやかに乗れない。確実に乗れない。学校について、宿題の紙を忘れたことに気づく。別に昨日やっていなかったからあまりショックじゃない。資源の無駄遣いな宿題。講師室の前に置いてあるBOXから宿題の紙を持ってきて、10分で仕上た。後は英語の教員に出すだけ。いくつか文句は言われたが、再提出にならないくらいの丁寧さで10分も費やしたおかげもあって、受け取ってくれた。昼の弁当の時間、弁当の箸がないことに気づいた。かばんの中を探してもどこにも見つからない。箸を忘れた弁当を持つ男。自分が馬鹿のように見えてくる。手で食べるのはちょっと気が引けた。しょうがないからあきらめて弁当をかばんの中に戻す。しかし、後ろの席に座っている坊主頭の野球少年が割り箸をくれた。自分はスプーンがあるからいいのだと言う。彼が僕の弁当と僕の胃と脳の空腹感を救ってくれた。「ありがとう」と僕は言った。HR(ホームルーム)が終わった後、大縄の練習。17歳の高校生が大縄をクラスのみんなと協力し合って飛ぶ。その中には、意見のぶつかり合い、助け合い、作戦、悩み、苦労、体力、個人の能力の違い、さまざまな要素が含まれている。これをやり遂げた後、クラスとして僕たちはまたひとつ成長する。そんな馬鹿な話があるか。大縄をこれだけ美化して話す高校は日本のどこを探してもない。そして、これだけ美化してまじめに飛ぶ高校生もどこにもいない。沖ノ鳥島にだっていない。17歳のサルだっていくらなんでも大縄を飛ぶことはない。そんな大縄だが、53回飛んだ。これは良く分からない数字だろうけれど、38人で53回飛ぶのは容易なことではないのだ。しかし、喜ぶのもつかの間、隣のクラスが70回飛んでいた、70回というのは、僕のクラスの、うちでは到底届かないであろうと予測し、考えて考えたクラス目標回数だ。ま、いいか。放課後は4人5脚の練習。やっぱり、女子と男子の混合はまずい。とりあえず遅い。早く走っても女子がついてこれない。しょうがないか。しょうがない。とりあえず、昨日の女の子と彼氏が仲直りしてて良かった。無駄な干渉はやはり必要なかった。その後、急いで家に帰り、塾に出発。宿題は間に合わず、やってない。でも、内容はちゃんと理解できるから大丈夫だろう。充実した90分だった。ちなみに現代文。そして帰ってきたら、両親はいない。どっか出かけたらしい。テーブルの真ん中に誰にも相手にされず、全てにあきらめたような皿。盛られていた一口ステーキをオカズにご飯を食べる。野菜も食べる。トマトは食べない。そして、眠い。眠い。眠い。。。
2005.05.17
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