近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2026.02.07
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カテゴリ: 昭和期・後半男性
『東大で文学を学ぶ』辻原登(朝日新聞出版)

 図書館で見つけて、あ、これはマイフェイヴァレット系の本だろうと直感して、借りて読みました。
 面白かったです。なかなか納得できる、あるいは考えさせられる部分もたくさんあって、とても面白かったです。
 幾つかそんな個所で、短く抜き出せそうなところを挙げてみますと、こんな感じです。

 (『ドン・キホーテ』が近代小説の濫觴とされることについて)それはなぜかというと、本を読む人間を主人公にしたからです。本を読む人間、つまり本というのは物語で、その物語を読むことによって世界を変えようとする、そういう人間、それがまさに近代人の始まりと言ってもいいのです。近代人が主人公の小説。まさに近代小説です。

 (ジェルジ・ルカーチの書より)「小説は神に見捨てられた世界の叙事詩である」

 (横光利一の書より)「純文学とは偶然を廃すること、今一つは、純文学とは通俗小説のように感傷性のないこと」

 リアリティというのは、いわゆる「現実」というものに対応しているのではなく、その「現実」をどういうふうに受け取るかという、共有された感受のかたちです。

 よく谷崎の関西移住を伝統回帰、日本回帰などと呼びますが、そんな単純なものではありません。これは谷崎たったひとりによって敢行されたルネッサンス、文芸復興の試みだったのです。

 ……いかがですか。きりがないからこのあたりで引用はやめますが、いかにも面白そうですね。
 実はわたくし、最近ちょっと思うことがあったんですね。
 何かというと、そもそも好きなものですから、文学者や文学研究者などの講演会に、結構探して行っていたんですね。
 ところが、最近どうもそんな先生方のお話が、さほど面白くないと感じ出したんですね。なんでかなー、と思っていたところ、先日行った小説家の講演会で、入る時にアンケート用紙をもらいました。

 幾つか質問項目があったのですが、その中に、あなたはひと月に何冊くらい本を読みますかといった質問がありました。それをぼんやり見ていましたら、後ろの席から女性のおしゃべりの声が聞こえてきました。

 「月に何冊本を読むかって、そんなこと聞かれても、わたしら一年に何冊かしか読まないからなー……」
 と、そんな会話を聞いているうちにわかったんですね。
 そのような聴衆を想定して、講演者は語らねばならないのだと。

 ちょっとここからは書きにくいのですが、敢て書いてしまいますと、よーするに、私はそんな文学講演会の内容に物足りなかったというわけであります。
 いくら、小説家がここだけの話だと若干の私生活を語ってくれても、それだけではやはりわたくしには「ガツン」と来るものがなかったわけですね。(かなり尊大と思われかねないことを書いていて、何とも恥ずかしいのですが。)

 と、そんな思いを持っていた時の本書ですから、それはとても面白いものでした。
 しかし、しかし、にもかかわらず、私は読んでいて、やはり微妙な違和感を感じ始めました。この違和感は何なんだろうかと、私はまた戸惑い始めました。

 本書は、西洋文学から中国古典文学、もちろん日本の古典文学・近代文学なども広範囲に触れつつ、テーマである文学とは何かについて東大で授業をなさった記録(ただし、そのままの講義録ではなさそうです)です。その博覧強記ぶりにはもちろん圧倒されますが、しかし、結局のところ、文学とは何かについては、はっきりと述べられているわけではないと、私は感じました。述べられているのは、文学にはこんな側面がある、このように理解できる、といったあたりでしょうか。

 しかし、それは、ある意味で、当たり前のことでもあると思います。
 常々私は、文学の実体や真理・真実などは、自然科学におけるそれらと大きく異なっているのはもちろん、社会科学的なそれらとも、かなり異なっているのではないかと思っていました。

 それは素人考えではありますが、例えば100人の文学者が、それぞれ自分にとって文学とはこういうものだと口々に言い合う中で、ぼんやり総体としての輪郭が見えてくるといったタイプの真実ではないか、と。

 つまり私は、本書で説かれている筆者の文学論について、感心はするが、でもそれはあなたの文学論ですよね、の小さな一言が言いたく思ったわけであります。
 しかし同時に、そのような論を数を重ねていくことが、文学とは何かの真の姿の輪郭を浮かび上がらせていくことになるのだ、とも思ったわけであります。

 こんな捉え方は本書にとって、素人が何を言っているのだ、なんでしょうかね。そんな気もしますが。
 いえ、確かに文学について、私が本書で大いに「学んだ」ことは、きっと間違いないとは思うのですが。


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Last updated  2026.02.07 16:06:04
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Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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