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2021.03.05
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カテゴリ: アート
図書館で『バンクシー アートテロリスト』という本を、手にしたのです。
21世紀のピカソ? 詐欺師? ビジネスマン?と問われるバンクシーであるが・・・
表紙のコピーにもある「アートテロリスト」がしっくり来るのかも。






毛利嘉孝著、光文社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
正体不明の匿名アーティスト、全体像に迫る入門書の決定版!
【目次】
第1章 正体不明の匿名アーティスト/第2章 故郷ブリストルの反骨精神/第3章 世界的ストリート・アーティストへの道/第4章 メディア戦略家/第5章 バンクシーの源流を辿る/第6章 チーム・バンクシー/第7章 表現の自由、民主主義、ストリート・アートの未来

<読む前の大使寸評>
21世紀のピカソ? 詐欺師? ビジネスマン?と問われるバンクシーであるが・・・
表紙のコピーにもある「アートテロリスト」がしっくり来るのかも。


rakuten バンクシー アートテロリスト




まず、「はじめに」を、見てみましょう。
p9~12
<はじめに>
 バンクシーは、自らのインスタグラムで「破壊の衝動は創造の衝動でもある」というピカソの言葉とともに、「競売にかかったら裁断するために」シュレッダーを数年前に取りつけたことを明らかにしました。バンクシーは美術作品をお金の価値でしか判断しないオークションという制度に徹底的に批判的だったのです。

 また、今回の事件がオークション会社とバンクシーとの「やらせ」ではないかという疑惑に反論して、「当初の計画では途中で止まらずに完全に裁断するはずだった」という声明を、完全な裁断に成功しているリハーサル映像とともに出しました。

 興味深いのは、裁断でこの作品は絵画としては破壊されてしまったにもかかわらず、現代美術の作品としては価値が上がってしまったということです。サザビーズはこの事件の直後に、この悪品が「史上初めて、オークションの最中に生で制作された作品だ」という声明を出しました。

 落札者は、サザビーズと協議の上、この作品を落札価格どおりで購入することにしました。遺された作品には新しく≪愛はゴミ箱の中に≫という名前がつけえられ、今ではヨーロッパの美術館やギャラリーでうやうやしく展示されています。オークション会場で作品が裁断されるという前代未聞の出来事によって、この作品の価格は落札価格の2倍にもなったのではないかという専門家もいます。

<21世紀のピカソ? 詐欺師? ビジネスマン?>
 日本でもこの事件は大きく取り上げられました。美術雑誌や新聞の文化面だけではなく、一般向けのテレビのワイドショーでも広く紹介され、バンクシーという名前は一躍有名になりました。バンクシーの名前は、現代美術に興味のない人にまで知られるようになったのです。

 同時に、この絵が1億5000万円もの高額で落札されたこと、そして、それがシュレッダーで途中まで裁断されたことは、「現代美術とは何か」とか「アート・マーケットとは何か」ということについてあらためて議論を喚起しました。

 バンクシーの「シュレッダー事件」は現代美術のパフォーマンスというよりも、子どものイタズラのようにも感じられます。実際バンクシーも、現代美術の業界では異端のストリート・アートの領域に活動し、専門家以外にはなかなか難しくて入っていけない現代美術をある種バカにしてみせることで、現代美術に興味のない人々にも広く受け入れられていると言えます。

 その一方で、バンクシーがどれほど現代美術やアート・マーケットをからかっても、まさにそのことによってバンクシー自身の価値が上がり続けているのも皮肉なことですが、事実です。この「シュレッダー事件」も、バンクシーの反論にもかかわらず、サザビーズとバンクシーの「やらせ」じゃないかという疑惑はずっとつきまとい続けています。

 特にこの数年のバンクシーの作品は高騰しており、バンクシー自身いつのまにか(彼の意図にかかわらず)すかっりと資本主義の罠の中にからめとられてしまっているように感じられます。

 でも、別の見方もできるでしょう。2019年にイギリスのインターネット・マーケティング会社YouGovが『ホーム&アンティーク』誌で「現代のイギリスで、歴史上もっとも人気のあるアーティストは現在誰か」という調査を行ないました。その調査によれば、レオナルド・ダ・ヴィンチやヴァン・ゴッホ、クロード・モネといったそうそうたる歴史上の巨匠を抑えて、バンクシーが堂々の一位に選ばれたのです。現存の作家の中でベストテンに入ったのも、バンクシー一人です。

 バンクシーは、ロックを知らない人でもビートルズの名前を聞いたことがあるように、現代美術を知らない人でもその名前を聞いたことがあるという、時代のポップ・アイコンになりつつあるのです。

 バンクシーとは、いったい何者なのでしょうか。どのような活動をしてきたのでしょうか。その活動の背景には、どのような文化的な文脈があるのでしょうか。バンクシーは21世紀のピカソなのでしょうか。それとも壮大な詐欺師なのでしょうか。反体制のヒーローなのでしょうか。洗練されたビジネスマンなのでしょうか。

 この本を、バンクシーをめぐる謎に迫るガイドブックとして読んでもらえると幸いです。


この本も バンクシーあれこれR3 に収めておくものとします。
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Last updated  2021.03.05 00:44:07
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