全183件 (183件中 51-100件目)
昨日、モンゴル初の感染者が出たとの記事を書きましたが、どうやらその余波はその人だけでは済まないようです。今のところは、モンゴルで感染が確認されたのはそのフランス人だけです。しかも外国人で、3月2日つまりほんの10日ほど前に入国したばかりです。ですので、その人の足取りを厳重に管理しようとしているとの報告が届いてます。まずターゲットになるのは「その日の同じ飛行機に乗っていた人」は全て管理の対象のようです。発症がわかったのは昨日の朝ですから、もちろん外国人にしろモンゴル人にしろ、2日以降一週間余りは自由に行動していたわけです。その中には、UB市内ではなく田舎の方に行ってしまった人も当然います。その中の一人がある県の田舎にいることが判明したそうです。UBから300km余り離れた田舎で、県庁所在地からも離れた場所です。しかもソム(役場がある村)レベルよりももっと田舎という場所らしいです。で、このフランス人感染者騒ぎで、その田舎までもが突然騒ぎに巻き込まれたというのです。つまり、同じ飛行機に乗ってたとう理由で突如拘束され(すいません、悪い意味じゃないです。誤解しないでください)、その田舎の地域は封鎖されたというのです。たまたまその日にその田舎に出かけていた隣の村の人も、その地域から出られなくなったというわけです。これはすごいです。その地域は封鎖ですから、入ることも出ることもできなくなったのです。あと1週間余りも隔離されることになりました。たまたまその時に通りかかった人にはお気の毒としか申し上げられません。社会主義の経験のあるモンゴルは、こうした「移動規制」は躊躇せずやりますし、できます。武漢からの帰国便で帰ってきたとある日本人が大騒ぎして「俺は帰る!」と言ってそのまま帰してしまったゆるゆるの日本とは大違いです。こうした場合の人権とは「その騒いだ人の人権」ではなく「うつされる可能性のある人たちの人権」の方が大事だと思うのですが、平和ボケの日本は違うようです。飛行機で同乗した人を遠い田舎まで追跡するのですから、恐らく今頃は「そのフランス人と同じ飛行機だった人」「同じ日にバヤンゴルホテルに泊まった人」「バヤンゴルホテルのスタッフやレストランの人」「サインシャンドまで同じ列車に乗った人」「その列車のスタッフ」「ゴビで滞在したホテルのスタッフ」などが、徹底的に追跡されているんじゃないでしょうか?他国の例を見るまでもなく、一度二次感染が起きると、あっという間に広がります。モンゴル民族生き残りの戦いは、これからが本番になりそうです。
2020.03.11
コメント(0)
モンゴルから新型ウィルス感染のニュースが飛び込んできました。今朝、モンゴル国内で新型コロナウイルス感染者が確認された、とのことです。感染者はフランスの原子力開発企業アレバの社員で国籍はフランスとのことです。アレバはゴビでウランの採掘をやっています。3月2日UBに到着し、バヤンゴル・ホテルに宿泊しました。その後、ウランバートルからサインシャンドへの列車で7日にサインシャンド到着し、その後ウランバドラハ村にあるキャンプへ移動したそうです。移動中は個室で一人だったそうですが、同じ列車(同じ車両という意味でしょう)には28名が乗車していたとのことです。モンゴル初の感染者が、モンゴル人でも中国人でもないまさかのヨーロッパ人でした。恐らく、モンゴル国内で感染したのではなく、ヨーロッパで感染したのではないかと私は推測します。これを機に一気に拡大しないか、心配です。UBからのアジア路線は全部運航停止にしましたが、ヨーロッパ線は残ってました。今後運航停止に追い込まれる可能性があります。
2020.03.10
コメント(0)
ラグビーと言えば昨年のワールドカップでの活躍が記憶に新しいところです。中でも注目されたのは、日本代表の出身地の多様性ではないでしょうか?海外出身者で人気、実力とも抜群なのはキャプテンのリーチ・マイケルです。そのリーチ・マイケルに関する記事を読んでいました。リーチ・マイケルの出身高校は札幌山の手高校で、記事には「リーチも3月から母校の札幌山の手高にモンゴル人の高校生がラグビー留学をする支援をするなど精力的だ。」とあるではないですか!考えてみれば、モンゴル人の屈強さは大相撲でもレスリング、柔道の強さでも証明されています。問題はチームプレーです。個人では強くともチームになると「自分中心になりたがる」性格が災いして、なかなか強くなれないというのが今までの定評でした。サッカーで言えば、誰もがフォワード的プレーになってしまう、ということです。ですが、高校生の時からチームスポーツの代表でもあるラグビー精神を叩き込まれれば、生まれながらの才能と合わせて将来トップ選手になる可能性は十分にあるでしょう。この例が上手くいけば、モンゴル人がラグビー界に進出する可能性は十分にあると思います。大いに期待したいです。先日オリンピック関連のテレビを見ていた時、バスケットボール3X3が新種目になると紹介されました。街中でゴールさえあれば、小さなスペースでもやれるバスケットです。モンゴルはまだまだスポーツ施設は少ないですが、ちょっとした公園ならバスケットボールのリンクがある場所は多いです。しかもこの時期(マイナス20度??)くらいでも、プレーしている若者を結構見るほど人気があります。もちろん新種目になるくらいですからルールは細かかく規定されていますが、「これならモンゴルもいつか出られる日が来るかも」なんて思いながら見ていたら・・・「日本女子チームはまだ出場は確定していません。確定しているのは・・・」とのナレーションがありました。そして「女子で確定しているのはロシア、中国、モンゴル、ルーマニア」と言うではないですか!おー、すごい!!モンゴル女子はもう確定なんですね。しかもロシアはモンゴルの人口45倍以上、中国に至っては450倍です。それらの間に割って入る(地理的にも割って入ってますけど)ほど強いってことです。素晴らしい!というわけで、ちょっと3X3バスケットボールを検索してみました。世界ランキングを見てみましょう。(ちなみにモンゴル男子はまだオリンピック出場確定はしていないようです。)まずは男子です。10位はフランスでその上の9位が日本。アメリカは5位でなんとモンゴルはその上の4位です。トップ3は1位からセルビア、ロシア、中国です。これは凄いことです!女子はどうか?10位はイタリアですが日本、アメリカはトップ10のランク外!台湾が7位に入っています。モンゴルは5位です!!トップ3は1位からロシア、中国、ルーマニアです。男女両方がトップ10に入っている国は、ロシア、中国、フランスとモンゴルだけです。そういう意味では「世界4強の一角を占めている」と言っていいでしょう。この競技は世界180か国で行われていると言いますから、人口小国のモンゴルがこの地位にいることは奇跡に近いと言っていいんじゃないでしょうか?ちなみに若い世代のU23では、男子は世界3位、女子は世界4位と更に順位を上げています。若い世代はますます期待できるということでしょう。オリンピックの注目すべき競技がまた一つ増えたようで、楽しみです。
2020.02.18
コメント(0)
モンゴルにも当然軍隊があります。しかも基本的には徴兵制の国なので、男性は皆、一度は兵役を経験するのです。とはいえ、このブログをご覧の日本人の多くは、兵隊に行ったことがあるモンゴル人男性とはほとんど会ったことがないのではないでしょうか?実は、実際には抜け道ルールが多いのです。留学したら免除とか、大学院(?)は免除とかいろいろあるらしいのです。私の知っているモンゴル人の多くも、ほとんど徴兵には行ってません。ですが、お客さんの会社の社員さんとか運転手さんなどには結構います。やはり訓練は相当厳しいらしく、無事任期を勤め上げてきた人を見ると、何と言いますか、モンゴル人らしいモンゴル人男性に見える人が結構います。どういうことかというと、鍛え上げた肉体と強靭な精神力、そして「なんでも自分で何とか解決してしまおう」という自立心を持った人という感じです。要するに最近多い「なよなよ」したモンゴル人ではなく、昔いたであろう「遊牧騎馬民族の末裔」的強さを持っているように見えるということです。なぜ軍隊のことを書きだしたかというと、「グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)」という機関が「2019年軍事力ランキング(2019 Military Strength Ranking)」というのを発表したからです。それは55以上の要素を総合的に評価し、世界137か国の軍事力を評価したものです。結論的には、なんの意外性もなく、大体皆さんが思っているような結果でした。超大国アメリカがダントツで、2位は中国ではなくロシアでした。3位はもちろん中国。ちなみに日本は6位です。そしてモンゴルは、これまた当然ですが下位の89位でした。人口や予算を考えれば、妥当な水準です。ちなみに他の中央アジア諸国を見ると、カザフスタン54位、アフガニスタン74位、トルクメニスタン75位とモンゴルより上位ですが、キルギスタン91位、タジキスタン94位がモンゴルより下位でした。いずれにしても、これらの国と一戦を交える可能性も必要性も全くないでしょう。モンゴルの具体的戦力にも若干触れています。空軍には9機の機体があるようですが、6機は運輸用、3機はヘリコプターということで、戦闘機などはゼロのようです。他にも戦車などあるようですが、当然戦力としての水準は低いです。私はそれでいいと思います。というか、そもそもモンゴルの軍隊は一体何のためにあるのだろうかと思ってしまいました。空軍の装備からもわかるように、モンゴルが国を超えて(海を越えて)他国と対戦する可能性すらもほぼゼロだと思います。なので、実質的には国境を接している隣国に対する軍備以外には考えられないのです。(ちなみに、モンゴル軍は国連平和維持軍によるPKOには積極的に参加しています)その隣国というのが、世界第2位と第3位の軍事力を持つロシアと中国です。この2か国しか「仮想敵国」はないのです。この彼我の軍事力の巨大な差を考えた時、一体このモンゴルの軍事力は何なんだろうか、と思うわけです。もちろん、いろいろ考えることはできます。「勝つことはできなくとも、攻撃されたときに少しでも敵の攻撃を防いで、他国からの援軍を待つための時間稼ぎにはなる」とか「国境紛争が起こったときには、モンゴル側も最小限の軍事力は必要」など、机の上でなら私だって考えられます。でも、そんなこと本当に考えている人はいるんでしょうか?ロシアから、ガソリンなどの石油製品をストップされれば、モンゴルはそれで終わりです。電力供給を止められたら、冬場ならたくさんの死人が出るでしょう。中国が食料供給を止めたら、田舎はともかくウランバートル市民はあっという間に困窮するでしょう。更にかの国が本気で軍事力を使ったら、時間稼ぎどころかほんの数時間で結果は出ることでしょう。戦闘機が飛んできても、こちらは何もできないのですから、あっという間に終わりです。私は、中露が攻撃する可能性があると言っているのではありません。逆に、これだけ軍事力に差があり、かつ、非軍事的な方法で簡単に攻め落とせる国にわざわざ軍事力を使う可能性は限りなくゼロに近いと思っています。なので、結論としては頭書の疑問の通り、モンゴルの軍備は一体何のためにあるのでしょうか?という疑問だけが残るということです。国内災害救助など、もちろん軍事以外の貢献はあるでしょうが、やはり軍隊は軍事専用と見ていいと思います。私は「廃止を提言する」ほどの強い気持ちで軍隊反対という気持ちはありません。ただ、目的は何なのかを知りたいのです。一般的な意味の軍隊ではなく、モンゴルにとっての具体的な役割といいますか、「タラレバ」でもいいですが、具体的に使う可能性のあるシチュエーションが思い浮かばないということです。
2019.10.03
コメント(0)
韓国の大統領が「一度合意したからと言っても、それで解決したことにはならない」みたいな発言をしているようです。そもそも韓国語の発言内容を直接わかるわけではないので、詳細は何とも言えませんが、言ってみれば対外的な条約という約束事の有効性に疑問を持っているということなんだと思います。これに対して、日本政府は「外国との約束事を破るような国はけしからん」と言っているわけです。ここで私が日韓関係を論じようという気はさらさらありません。「対外的な約束事を守らない政治家?」それってモンゴルのことと?思ったのです。韓国大統領の件は、日本にとっても重大な発言なので大ごとになっていますが、「目立たない」モンゴルの政治家は、正式な契約をひっくり返すとか対外的な公約を無視するなんて、言ってみれば「当たり前のこと」であって、騒ぐような話ではありません。そもそもモンゴル人にとって、対外的であっても、合意や条約というものは「その時はそう思った」「確かにその時は約束をした」「でも、約束を守るとは言ってない」という認識でしかないのですから、世界の大多数の国の人たちからは「嘘つき!」だと思われてしまうのです。ですがモンゴル人は「嘘つき!」と言われると、大いに怒ります。私たちは絶対に嘘はつかないので、と。「ただ、あの時とは考えが変わっただけだ」或いは「あの時約束した政治家は確かにそう思ったのだろうけど、今の私は違う考えだから、嘘ではない。」という恐るべき思考回路があるのです。タワントルゴイ(世界最大級の石炭鉱山)の入札は一体何回やったのでしょうか?もう何年も前からなので私も覚えてないほどです。正式な「国際入札」をかけたときも、中国、カナダ、オーストラリア、アメリカそして日本などの企業が入札に参加しました。その結果は?発表しないのです。聞いても「まだ」とか「検討中・・・」などと言って無視。あの入札は立ち消えになったのかな?と思っていると、2‐3年後にしゃあしゃあと「国際入札」を始めます。前回の入札がどうなったかの経緯説明はもちろんありません。まるで初めて入札をするかのように。理由はもちろん政治家たちにとってどういうやり方が一番メリットあるか(国にとってではなく、政治家にとって、です)を検討しているうちに、別の入札案が出てくるのです。ちなみに、その2回目もうやむやにされました。日本の新聞は「日本企業、モンゴルの鉱山開発に入札」なんて書かれましたが、その後のことは誰も知りません。英豪鉱山企業であるリオティエントはオユントルゴイ(金、銅鉱山で世界トップクラス)でなんとかモンゴル政府との交渉を実らせ、開発しました。当然、鉱山開発のプロですから、契約では詳細まで決められています。が、モンゴル政治家は突然「もっと金よこせ、でないと開発させない」といちゃもんを付けてきました。本当の理由は「契約当時の政治家は裏金もらったのに、俺たちはまだもらってないんだ」です。当然リオは毅然と断りましたが、モンゴルの政治家は契約書のことなんて気にしてませんから、あらゆる法律を使って脅してくるわけです。もちろん詳細は分かりませんが、結局は再契約させられたようです。来年開業予定の新空港管理会社にしたって、建設前から日本側が運営すると決められていました。それも一つの条件だったからです。ですが、実際に新空港ができてきて、空港ビジネスにはうまい話がある(事業として成功させる力はなくても、お気に入りの売店をテナントに入れたり、コネ採用したりなど、いろいろあります)とわかってくると、運営会社はモンゴル側がやると言い出したり。ま、詳細は置いておいて、私が思ったのはモンゴル政治家が韓国の立場だったら、どんな要求をするのかな?と。恐らく韓国の大統領のように「過去に合意をしたからと言っても、それで解決にはならない」とか「被害者の気持ちが完全に癒されるまでは解決したとは言えない」なんてことは言わないんじゃないかと。そもそもモンゴル人は韓国人のように過去のことをネタに金をせびるようなことをする人たちではありません。その辺はあっさりしています。ただ、この問題が「政治家自身の金につながる」と考えたときは、きっと行動は変わるでしょう。私が思うには、まず声を大にして「正しそうな議論を吹っ掛ける」ことはないのではないかということです。そんな筋論とか「気持ちを考えろ」みたいなのを大声出しても、1円にもならないをわかっているからです。むしろ、「国民(今でいえば韓国民)が騒いでいる」「問題を大きくしようとする動きがあるようだ」と日本側に投げかけます。その上で「この問題を大きくしたら面倒ですよね?裁判所がおかしな判決だしたら、戻れなくなるかもしれません」と言うでしょう。「でも、私たちは日本との関係を重視しています。大ごとにしたくはありません。」と。「ただ、そのためにはいろいろと手を回さないといけないし、お金もかかります」「もちろん、日本政府として条約にて解決済みとなってる件に、公式に税金を投入することはできないでしょう。わかってますよ。」と。結局は何かの巨大ODAでもやってもらい、そこから政治家が結構な額を抜ける仕組みを考えて「これであれば、我が国は最高裁も抑えるし、一部の運動家も黙らせますよ」と言うんじゃないかと思います。で、問題発生から1‐2年後には、あら不思議、問題は沈静化し、日本との友好関係は維持されている、ということになると思います。これが正しいやり方かどうかは別にして、ここまで世界中を巻き込むような事態にはならないんじゃないかと思うわけです。
2019.08.30
コメント(0)
昨年6月15日付け本ブログ「突然注目を集めたウランバートル対話」って何?」(https://plaza.rakuten.co.jp/mongolmasami/diary/201806150000/)で書いたように、昨年突然この「対話」が話題になりました。そして今年もやはりこの名前がニュースに出てきたのは、北朝鮮のおかげ(?)です。毎日新聞ニュースによれば、「安倍晋三首相は無条件で日朝首脳会談に臨む意向を打ち出し、モンゴルで5、6の両日開かれる国際会議「ウランバートル対話」で日本側は北朝鮮側との接触を試みる。」とあり、この舞台の活用を考えているようです。「ウランバートル対話」はマイナーな国際会議ではありますが、日本が北朝鮮と同席できる唯一?或いは、数少ない国際会議の場であることは事実です。それを可能にしたのは、モンゴルが北東アジアのどの国とも友好関係にあるからです。ただ、これは「対話」であって「会議」ではありません。何かを決めるという会議体ではないということです。北朝鮮問題がないとしたら、この「対話」の存在意義がどういうものであるか、将来も続ける価値があるのかどうかはわかりません。ですが、北朝鮮同席の国際会議だという意味では、日本政府はこの「対話」継続を支持し続けるのではないかと思います。とはいえ、連日の報道の通り、北朝鮮と前向きな「対話」ができるかどうかはわかりません。毎日新聞ニュースも「ただ北朝鮮側の日本に対する警戒心は強く、首脳会談に向けた道のりは平たんではない。」と伝えています。新聞ニュースと言えば、先日、国際交流会議「アジアの未来」で来日したモンゴルのサンダンシャタル国会議長が、日経新聞のインタビューに応えていました。それによればやはり新空港の開港は2020年5月とのことです。本ブログでわざわざ「今年はありません」と書いたときには「そんなことはない、年内開港と報道されている」との声もいただきましたが、やはり年内はないということです。モンゴル国内の情報に接することができる人でもなかなか正しい情報を得られないのがモンゴルです。情報を混乱させているのは、7月に開港式をやるからです。これは「2019年に開港する」と言ったことのためのアリバイつくりみたいなもんで、モンゴルではよくある話です。「確かに3年前にそのような約束はしたが、約束を守るとは言ってない」とかね。なので今回も「2019年に開港すると約束し、事実7月に開港する。但し、開港後も継続して飛行機を飛ばすとは言ってない。」みたいなもんです。日本人なら誰だって、「開港式をするなら、その後継続して飛行場として活用するだろう。」と思うのですが、そこはそうじゃないのが、モンゴルなんですね。皆さんも、モンゴル人と約束するときは「具体的に何を約束しているのか?」を確認するようにした方がいいですね。もっとも、約束したからと言って、そうなる確率は高くはないですけど。
2019.06.05
コメント(0)
パリのノートルダム寺院が大火災になり、大変なことになっています。世界のあらゆる宗教の寺院の中でも最も有名な寺院の一つと言っていいでしょう。フランスは観光客数が世界一の観光大国で、年間に9000万人もが訪れます。日本が2000万人を超えたと騒いでいますが、レベルが違います。その中でも一番人気がこのノートルダム寺院で年間1400万人が来るところです。ある意味、世界一の観光スポットと言っていいでしょう。もちろん世界遺産です。その寺院で15日に大きな火災が起こりました。そりゃあ、大変な騒ぎでしょう。日本で言えば、、、法隆寺が火事になる?法隆寺の重要性はノートルダム寺院に劣ることはないでしょうが、観光地としては少し違うかも。まあ、ありえないですが、東京都内に法隆寺があって、これが火災になるって感じでしょうか?奈良県の皆さん、勝手に法隆寺を東京に持って来てごめんなさい。ちなみに法隆寺では実際に1949年に火災があって、国宝の壁画を焼失したそうです。もう既に火災の映像をニュースなどでご覧になっている方も多いでしょうが、火災の様子の写真を載せます。念のため、火災前の写真もご覧ください。別の角度の火災の写真こんなに綺麗だった建物が・・・悲惨な状態になっています。この歴史あるノートルダム寺院はいつ創建されたのでしょうか?調べてみると着工 1163年 完成 1225年 うーん、どこかで見た数字に似てます。生誕 1162年 死亡 1227年そうです、チンギスハーンの生きていた時代とほぼ同じなのです。(生誕、死亡年には諸説あり)つまり「モンゴル国誕生」とほぼ同時代に建てられた世界的な寺院だということです。この頃の世界?ヨーロッパはこんな大聖堂ができるくらいだから、キリスト教が普及し、十字軍があったり、大学が作られたり(パリ大学、オックスフォード大学はなんと12世紀)、マグナ・カルタ(世界初の憲法?)などこの頃はすっかり先進国っぽいです。日本はもちろん鎌倉時代。武士が政治の表舞台に出始めたころです。天皇との二元政治、「将軍」が政治のトップ、一般大衆も仏教を信仰する、などの明治以前の日本社会の原形のようなものが出来上がった頃と言えるでしょう。モンゴルはもちろん、モンゴル帝国の発足です。では、その前は?モンゴル族は超マイナーな存在でした。モンゴル族以外の遊牧民は、ほぼ全部今では地球上からその名前は消えてしまっています。人々が消えたのではなく、ほぼ全部がモンゴル族に同化し今のモンゴル人になっているのです。コンギラト、オングト、ケレイト、ナイマン、メルキト、オイラトそしてヨーロッパでモンゴル人と混同されたタタルなどなど、多くのモンゴル族以外の遊牧民がいる中の、マイナーな存在でした。そのマイナーなモンゴル族も、タイチウト氏、キャト氏(チンギスハーンの氏族)、ジャンダラン氏(ジャムカで有名)などに分かれていて、多分、恐竜時代の「ネズミのような哺乳類」のように、恐竜に潰されないように生きていたんでしょう。でも「最終的に残ったのは哺乳類」のように、その後800年以上も名前が残ったのはモンゴル族だけでした。そんな時代の大聖堂が火災にあうのは、悲しいことであると同時に、こうしてモンゴルの昔を思い出させてくれました。
2019.04.16
コメント(0)
日本オリンピック委員会(JOC)の竹田会長が退任すると発表がありました。来年の東京オリンピックのために長い間奔走してきたであろう人が、このタイミングで退任するということは相当なプレッシャーがあったのでしょう。竹田会長については、数か月前からフランスで調査されているとか、不正にかかわったという報道がありましたから、そういったことが原因なのでしょう。私が初めて、そして最後に竹田会長を見たのは、今から2週間ほど前のとある会合でした。そこにでは、いろんな人がスピーチするのですが、多くの場合英語でした。なぜなら、聴衆の多くが外国人だったからです。(主として欧州系?)社会的地位の高そうな感じの方々がスピーカーになっていましたが、外国人、日本人を問わず、スピーチの最初はウィットにとんだ挨拶から始まります。要は、原稿棒読みではなく、少しは当日の雰囲気に合わせて気の利いたことを言うってことです。私も竹田会長に関する報道は目にしていたので、何か言及するのかなと思って注目していました。例えば「今、お騒がせしている竹田です。笑」とか。ですが、そんなことは全くなく、すべて英語原稿の棒読み。しかもほとんど顔を上げることすらしません。彼くらいのキャリアの人であれば、聴衆を引き付けるスピーチには慣れているはずですが、そんな雰囲気は微塵もありませんでした。国会答弁の官僚並みです。私はそれを見て、「ああ、この人はもう無理だな」と思いました。もちろん、舞台裏なぞ知るはずもありませんが、こんな棒読みしかできな状態であと1年以上持つはずありませんから。残念ですが、それが現実になりました。そして、カザフスタンのナザルバエフ大統領です。もちろん会ったことはありませんが、モンゴルの隣国の大統領として、いつもニュースはチェックしていました。モンゴルの民主化の成果や政治家たちの腐敗ぶり、そしてモンゴルという国を正しい方向に導けないリーダーたちを見るにつけ、この人の名前が浮かんできました。そしていつも結論は「民主主義は難しい」と。カザフスタンとモンゴルはほぼ同時期に社会主義を離れ、民主主義、資本主義に移りました。その後のモンゴルはご存知の通り、政治腐敗はひどいし、国の発展もなかなか進みません。ですが、「選挙による政治家の選択」という意味では機能しています。現に、政権交代は何度も起こっていますから。そういう意味では民主主義は「機能している」と言えるでしょう。別な言い方をすると「機能はしてるけど、成功はしてない」というところでしょう。一方のカザフスタンは、形式的には民主主義とか大統領制とか言ってますが、共産主義時代から今まで同じ人が30年近くトップを続けるという、ありえないような独裁体制が続きました。ある意味、プーチン大統領よりもずっと強烈な独裁と言っていいでしょう。なので、この両国、何かと比較しやすいのです。元匈奴(フンヌ)のモンゴルと元突厥(テュルク)のカザフスタンはともに遊牧民の末裔で、ともに隣国に超わがまま国家であるロシアと中国に接しています。モンゴル人はそうは言いませんが、私たち第三者から見れば、カザフスタンは世界で一番モンゴルに近い形態の国と言えると思います。ソ連崩壊時は共に非常に貧しい国でした。ですが、当時の統計を見ると一人当たりGDPはわずかにモンゴルの方が上でした。で、その後は?残念ながら今ではカザフの方が2倍から3倍近く豊かになっています。ナザルバエフの独裁ぶり、悪評、強烈な賄賂、などもちろんいろいろ問題はありますが、彼の功績はカザフをこの地域屈指の豊かな国に作り上げたことでしょう。他方、我らがモンゴルは、民主主義の成功を自慢しつつ、いつまでたっても豊かにできない国民をしり目に、賄賂を追いかけている政治家がなんと多いことか。ナザルバエフ大統領がクーデターでもないのに、自ら退任するということは、よほど体調が悪いのでしょう。恐らく余命いくばくも、という状態なんだと思います。一度彼のモンゴルに対する見解を聞いてみたかったです。
2019.03.20
コメント(0)
13年ぶりにクルマを買い替えたことは先日のブログに書きました。安全装備は進化していますが、当然ですがそれ以外も変わっています。その一つがオーディオです。以前のはCDを入れて聞くタイプで、6枚CDチェンジャーなどにCDを入れて聞いてました。ですが今のは当然ですが、HDDか何かで音楽は全部覚えてくれます。とはいえ、最初はなんらかの形で一度はクルマに覚えさせる作業が必要です。というわけで、適当にCDをかけ、それを一つ一つメモリーに落としていきました。今のは便利で、例えばサザンならサザンのCDのジャケットの写真がナビの画面に映し出され、しかも全曲名が表示されます。古いCDでもジャケット表示がされるので、CDそのものに表示すべき情報が組み込まれているのではなく、CDの固有番号に反応して、情報が引き出されているようなのです。細かい仕組みはわかりませんが。マライア・キャリーのももちろんCDジャケットと全曲名が表示されます。恐らく日本で普通に売っているものは大体表示されるのでしょう。私はさすがに最近は滅多には聞きませんが、モンゴル時代に結構モンゴルのCDを愛車プラドの車内で聞いていたので、それらのCDも東京で聞くことがあります。そのCDはどう表示されるのか?やってみたら、「不明なアルバム」という表示とともに、各曲名のとこにはただ番号が出てくるだけです。ま、これは仕方ないです。モンゴルの立派な(日本やアメリカからの輸入中古)ランクルでもナビシステムは使えませんから、モンゴルのCDが日本に登録されているわけありませんからね。ですが、このままでは「不明なアルバム」というのが増えてしまうと、不便で困ります。なので、ディーラーに行って「マニュアルでアルバム名を書き入れる方法」を教えにもらいに行きました。まずは症状を説明し、「不明なのは仕方ないですが、このタイトルや歌手名だけでも私の手入力で変えたいのです」とお願いしました。当初は「はい、大丈夫です」と言ってましたが、さすがに思ったより大変そうです。で、「しばらくおまちください」とのことで、私はクルマから離れ展示車見ながら待ってました。すると、15分ほどでしょうか、呼ばれて行ってみると・・・なんとサラー(モンゴルの有名な歌手)のCDジャケットの写真がナビの画面に映っているではないですか!私はちょっと興奮気味に見入ってしまいました。実は私はこのディーラーの人にはモンゴルのCDなどとは一言も言ってないのです。ただ「不明なアルバム」という表示が出たとしか言ってません。ですからこの人がサラーを知ってるはずないです。私がやり方を聞くとこうでした。この「不明なアルバム」を車内のシステムにある「アルバム情報オンライン」と結び付けたら、自動的に出てきたというのです。更に全曲名も。更に更に驚いたのが、全部アルファベットに直されているということです。モンゴルのCDは当然ですが、モンゴル語、つまりキリル文字で書かれています。ですが、日本で買ったクルマにはキリル文字なんて表示できません。私は当初は一字一字をキリル文字をアルファベット文字に変換しながら入力しようとしてました。なのに、全部アルファベット(キリルではなく英語のアルファベット)に直っているのです。えーー?どういうこと?最初にサラーのアルバムを入れました。オリジナルの名前はСарааですが、それがちゃんとSaraaになっているのです。次にアリウナのアルバムを入れました。すると当然ですが、АриунааがAriunaaに変換されているのです。一体どうして?だれがこの変換をやっているのでしょうか?モンゴル側?まさか。モンゴルのCD、しかも結構古いCDですから世界進出を目指してCD内にアルファベット化を指示する暗号?が埋め込まれているとは思えません。とすると、このシステム?ディーラーの人に「このナビ、オーディオシステムはどこ製ですか?」と聞くと「日本製です。恐らくアルパインでしょう。」とのこと。さすがメイドインジャパン!素晴らしい。この「アルバム情報オンライン」のオンライン先には、日本で売っていないCDも入っているのでしょう。(台数が多い)欧米や中国の音楽ならともかく、新車台数がほとんどないモンゴルの10年以上前のCDまで記憶されているとは!しかもアルファベットへの変換機能付きで。うーん、素晴らしいの一言です。私が感激している意味を、そのディーラーの方は知る由もなく「大体の曲は入っていると思いますよ」とおっしゃっていました。はい、はい、そうでしょう。普通はその「大体」の範囲に入っていないのがモンゴルなんですけど、今回ばかりは感服しました。アルパイン、素晴らしい!「あっ晴れ!」
2019.01.14
コメント(0)
再びトランプ大統領と金正恩の会談が米朝首脳会談が開催されそうな情勢です。先日のニュースを見たら「ハノイやジャカルタなどが候補になっている」とあったので、もうウランバートルは無理かなと思っていました。が、今日のニュースによると「開催地を巡っては、インドネシアやモンゴルなども取りざたされているが、実際に名乗りを上げているのはベトナムだけだという。」と読売新聞に出ています。つまりモンゴルは名乗りを上げてもいないということです。もちろん現実的な問題はいろいろ考えられます。前回のシンガポールを見ればわかりますが、そもそも警護費用が相当かかりそうだということがあります。報道によれば、あれはシンガポール政府が負担したとあったみたいですから、それは確かに大変です。それと今の時期であること。そもそも時期すらはっきりしないわけで、下手すりゃ来月のツァガンサルに引っかかるかもしれないし、そうなればとても対応できない。もう一つはこの寒さ。外気がマイナス30℃となることを考えると、警備も大変だし、飛行機も順調に飛ぶかどうかもわからない。そう考えると、今立候補するのは無理なんでしょう。とはいえ、UBを「国際的な会議都市」に魅せるためには、アセムなんかよりもよっぽどインパクトあるような気がします。そこで何か歴史的な重大事が決まれば「レイキャビクの米ソ首脳会談」のように向こう30年間も人々の記憶に残る地名になるかもしれないのです。1986年のアメリカ・レーガン大統領とソ連・ゴルバチョフ書記長による歴史的な会談は、冷戦の終結として今も歴史に深く刻み込まれています。アイスランドがわからない人でも、レイキャビクの名前を知っている人は結構いますから。今回は真冬なので無理にしても、第3回米朝会談には開催都市として是非とも名乗り出てもらいたいものです。長期的に見れば、費用対効果はあると思います。
2019.01.13
コメント(0)
世界中のセレブ達が、動物の毛皮のみならず、アンゴラなどの毛の製品の不買運動を続けているのが気になります。テンやクマ、オオカミなどの毛皮を着るのを止めようというのはかなり以前からモデルや女優たちの間で広まっていたのは知っていましたが、最近の動きはそれが「毛」にまで及んでいるのです。毛皮そのものについては、毛皮のために野生動物を殺すのは良くないという意味ではよくわかりますが、毛までだめだというのはどういうことか?それは動物虐待だというのです。最初は意味がよくわかりませんでしたが、ネット上で映像などを見てビックリです。生きたアンゴラヤギやアンゴラウサギから、毛をむしり取っている映像が動物愛護協会によってアップされているのです。さすがに本ブログで写真をお見せするのもはばかられるほどです。映像は中国や南アフリカのもので、確かにひどいです。人間だって、髪の毛を強引にむしり取られたら、生きた心地はしないでしょう。ウサギなどの悲鳴を聞くだけ、地獄絵のように感じます。じゃあ、はさみでカットするところは大丈夫なのかと言えば、それがそうでもないのです。やはりアフリカでは、毛を切る人は成果報酬なんだそうです。つまり一定の時間でどれだけたくさんの毛を刈ることができるかです。そうなると無茶苦茶です。やたら大きなはさみで、すごいスピードでカットします。なので、うさぎなどの皮膚も一緒に切ってしまうことが多く、カットされた動物は血だらけなのです。確かにこれは虐待です。こうした映像が流れ、世界的に毛皮や毛に対しての批判が高まると、当然のことながら世論を気にするセレブ達はもう着ることはありません。プリウスにセレブ達がこぞって乗ったのと同じで、彼ら、彼女たちはイメージが全てですから。そうなるとどうなるか?リアルが減って、フェイクが増えるのです。普通はフェイクの方がリアルよりもイメージが悪いはずなのですが、毛に限っては反対なのです。リアルファーというのは、本物の毛皮でフェイクファーは人工皮革です。当然、もともとはリアルが高くて手が出ないので、フェイクを買ったということでした。が、今は「あなた毛皮着てるの?」と聞かれると、「私のはフェイクよ」と言い訳するんだそうです。しかも技術の進歩で、フェイクの品質がどんどん上がっています。そしてこの傾向が、毛皮だけだったのが今ではアンゴラなどの高級毛にも及んでいるのです。私が懸念しているのはここの点です。私はモンゴルで羊毛やカシミヤの毛を刈るところを見たことがありますが、もちろんアフリカや中国と違ってそんな残忍なことはやっていません。丁寧に刈り取っています。ですが、アメリカやヨーロッパのセレブ達には、どれが優しくカットされたもので、どれが虐待で切られたのかなんてわかりません。今はアンゴラヤギやアンゴラウサギがターゲットになっていますが、彼らがアンゴラヤギとモンゴルのヤギの違いなんてわからないでしょう。いずれ「リアルは禁止」とか「リアルは悪いこと」となっていくのではないかと懸念しています。世界的に「フェイクを着よう」なんて動きになったら、いくらモンゴル人が「私たちは優しくカットしています」と言ったところで、その流れは止められません。しかもあの中国の映像を見てしまうと、もしかしてカシミヤヤギも中国では虐待的にやられている可能性もゼロではありません。もし中国でのひどい映像が世界に流れたら、カシミヤもアウトでしょう。モンゴルと中国の違いなんてだれもわかりませんし、ましてやそれが内モンゴルだったら、間違いなくモンゴルも同列に扱われます。なので、今モンゴルがやるべきことは、「モンゴルの羊毛やカシミヤは、こんなに丁寧に作られている」「動物にも優しく接している」というのをアピールしないといけません。これは個々の企業の問題を超えています。GobiやGoyoなどが協力して、「モンゴル優しいキャンペーン」でもしないと、取り返しのつかないことになってしまうと危惧しています。カシミヤはモンゴルが世界に提供できる数少ないプレミアム製品なのですから。
2018.12.24
コメント(0)
「もくりこくり」または「むくりこくり」というのを聞いたことありますか?もしあるとしたら、恐らく子供の頃でしょう。先日NHKの「蒙古来襲」という番組を見て、元寇関係のことをネットで調べていたら、この言葉が出てきました。この言葉は漢字で書くと「蒙古高句麗」です。これは元寇の時に元(モンゴル帝国の一部)が日本襲来した時の経験から、日本全国に広まった言葉です。理由は、元寇時に対馬島民や長崎周辺の離島、九州の人々が大変恐ろしい目に合ったことから、その恐怖が数百年たった現代にも言い伝えられているということです。一般的には二度の元寇はともに「神風」が吹いたので、日本は無事だったと思われていますが、それは最後の最後であって(しかも最初の元寇にはほとんど「神風」はなかったと言われている)、実際には対馬全土などでは多くの略奪、虐殺があったのです。ですがここでは別に「モンゴル軍はひどいことをした」などと非難するつもりは毛頭ありません。そういう意図は全くありません。700年以上も前のことですし、モンゴル軍は日本だけではなく東欧を含む世界中でそうしてきたのです。史上最大の帝国が平和裏にできたわけではありませんから、当然のことと受け止めています。この言葉の使われ方はほぼ日本全国共通のようです。基本的には、悪いことをした子供に対してとか、子供を泣き止ませる時などに「もくりこくり(蒙古高句麗)の鬼が来るぞ」などと言って、子供をおとなしくさせる文言です。現在でもこの言い方が残っているのは、調べただけでも九州全土はもちろん、和歌山、仙台、岩手、青森にもあるそうです。岩手の例で言えば「泣ぎやまねぇどモーコが来っつぉ」「早ぐ寝んねぇば山がらモーコが来っつぉ」と子供に言い聞かせたそうです。九州で今も残るというのは、戦場でしたからわかりますが、なんで東北?なんで青森まで?という疑問があります。その答えは驚くべきものでした。元が来るかもしれないということで、時の鎌倉幕府は九州方面に防御体制を築くように命令しました。ですがそれは主として博多付近です。元は朝鮮半島からまず対馬に上陸しました。対馬は必至で抵抗しましたが、かなうはずありません。ほとんどの住民は殺されたり奴隷にされたとの記録も残っています。その当時、あまりの恐怖で島を抜け出した集団がなんと青森まで船でたどり着いたんだそうです。その時の子孫が「対馬」「對馬」「津島」という名前を名乗って今も青森にいるというのですから、驚きです。歴史というのは繋がっているんだなとつくずく思います。今日のブログの表題が「モンゴル帝国の痕跡は世界レベル?」というのはなぜか?それは、これは日本だけの現象ではないからです。以前私のビジネスパートナーだったベルギー人がいるのですが、彼からこの話を聞いたときは本当に驚きました。彼が子供の頃、いたずらしたり、言うことを聞かなかったりしたら、彼のおばあちゃんから「いうこと聞かないと、モンゴが来るぞー」と言って押し入れじゃなく、物置に閉じ込められたんだそうです。しかも、「モンゴが来るぞー」と言いながら、両手で両目を左右に引き延ばし、細い目を作って子供に迫って言うんだそうです。13世紀に欧州を襲ったモンゴルですが、東欧は実際に蹂躙されましたが、西欧は実際には大丈夫でした。ですが、モンゴル軍の恐怖は西欧でも非常に大きくなり、「皆殺しにされる!」という噂がものすごい勢いで広がったのです。私はベルギー人の同僚に聞いた話を、フランス人の友人にも話しました。「ベルギーでは、モンゴが来るぞー」っておばあちゃんから脅されてたって。すると彼は当然のように「僕もそうだったよ。やっぱりおばあちゃんに怒られるときに言われた」と。うーむ、これはすごい。700年もたっているんですよ。過去の話ではなく、現在の話です。モンゴル帝国が本当に東の端の国(日本)から西の端(西欧)にまで勢力を伸ばそうとした痕跡が今も残っているのです。しかもその言い伝え方が全く同じのに驚きました。こんなに存在感のある帝国は、二度と出てこないでしょう。
2018.12.06
コメント(0)
11月9日に日朝政府高官が、ウランバートルで接触していたとの報道がありました。当然日本側は拉致問題、北朝鮮側は戦後補償みたいな話なんでしょう。ですが、良く調べてみるとここ数か月で結構頻繁に接触しているようです。日本側は警察庁出身の北村滋内閣情報官、北朝鮮側は統一戦線部の金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長とのこと。今回の報道を各紙はどう伝えているかを知ろうとネットニュースを見ると、この両人は10月7日前後にもウランバートルで会っているようです。更にその前は、7月中旬にもベトナムで会っているとのことです。安倍さんがトランプさんに「拉致問題も言及してね」とお願いした米朝首脳会談後、少なくとも3回は日朝政府高官同士で会っているということです。一般の新聞報道では、どちらかといえば北朝鮮の外相だったか外務次官だったかの人が「それは解決済み。いつまで日本はそんなこと言ってるんだ!」的な発言しか目にしませんでしたが、水面下ではやっているんですね。話の内容はともかく、私の関心はその舞台です。まず感じたのは、やはり日朝秘密会談には(現・元)社会主義国の方が北朝鮮は乗りやすいのかな、ということです。もっと具体的に言えばビザの問題もあるでしょう。外交官でもない政府高官は、北朝鮮の場合どこへ行くにもビザが必要でしょう。今はいろんな制裁があるので、ベトナムや旧社会主義で北朝鮮の友好国であるモンゴル以外だとビザ取得も簡単ではないような気がします。もちろん、中国なら簡単でしょうけど、盗聴やらなにやらなんでもありの中国では日本側はもちろん、北朝鮮側も避けたいのが本音でしょう。2回続けてウランバートルということは、両者にとってもUBは結構使いやすいというか、安心感があるのかもしれません。北朝鮮という特殊事情があるのは確かですが、こういう機会をきっかけに、「モンゴルは中立で安心な国」というイメージを植え付けたいですね。難しい国際政治の話はいつもワシントンやパリで行っているわけではないのですから。レイキャビクのあるアイスランドは人口わずか30万人の少国です。永世中立国スイスも小国です。アジアではそのイメージがあるのは、米朝会談をやったシンガポールくらいでしょうか?香港はもう完全に中国ですから。モンゴルへは、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタンなどの中央アジア各国の国民はビザ不要です。将来、こうした国々もいずれ国際社会に出てくることもあるでしょうから、その時こそモンゴルがその舞台となるのです。中国でやるとロシアがイラつきますし、これらの国々にとっても経済的侵略だけでも中国の存在が大きいのに、政治も中国となるとほとんど吸収されかねません。ロシアに関してはソ連邦崩壊を機に、カザフスタンをはじめとしてロシア離れを加速化させていますから、やはりもう巻き込まれたくはないでしょう。そうなればやはりモンゴルです。そうなる日のためにも、モンゴルはより透明性、公平性を持った社会システム(自国優先の裁判所や外資差別などがない社会)を目指してほしいものだと思います。
2018.11.14
コメント(0)
今日はチベット系のお話を。話はイギリスによるインド統治時代に戻ります。イギリスは鎖国状態だった清との取引をして、お茶などを輸入して大きな利益を得ていました。そのため、当時の決済通貨であった銀が清にどんどん流出するという事態になったのです。その流出を止めるために、イギリス産品である毛織物を売ろうとしたのですが、その目論見は外れ、銀の流出は止まらなくなりました。そこでイギリスは当時清も禁止していたアヘンに目を付け、それをインドから輸出することで銀の流出を防ごうとしたのですが、当然清は反対します。それがアヘン戦争につながり、清におけるイギリスの利権はますます拡大しました。植民地のインドはアヘンを輸出し銀を得て、その銀をイギリスからの工業製品購入に充てたというわけです。とまあ、アヘン戦争の間接的な原因はイギリス人のお茶好きにあったのかもしれません。当たり前ですが、イギリス人にとってはインドは大変暑いところでした。勝手に植民地にしたわけですから、自業自得なんですけど。そこで1850年頃からヒマラヤ山麓にあったダージリンという村を保養地としました。日本の軽井沢が外国人の手で保養地になったのと似てますね。この涼しい良き土地で、イギリスはお茶の栽培を始めたのです。これをきっかけに、インド(アッサムやセイロンも)におけるお茶栽培は成功し、中国からのお茶輸入を減らせるのみならず、インドの主要輸出品になっていったのです。ダージリンというのはチベットの南にあるインド領で、イギリスはこのあたりからチベットを経由して清への交易ルートを開拓しようとしたのです。船ルートを使わずに直接交易ができると睨んだのです。近代史を見ると、イギリスは当時の清に対してチベットの利権を要求していました。その後のチベット問題が起こる時は必ず西側の保護国的な態度をイギリスが取るのは、この頃の事情が続いていたからなのです。で、ダージリンです。今はダージリンという名前が通ってますし、中国語でも大吉嶺と書きます。が、もともとの名前はチベット語でドルジリンで、中国語的には金剛洲です。ドルジ?そうです、あのモンゴル人の名前に多いドルジです。ドルジはチベット語で金剛とか強いという意味があります。リンはその土地とか洲という意味があります。ですから、金剛の地、力強い土地という意味だったのでしょう。朝青龍の名前はダグワドルジです。ダグワはラマ教の神様の名前でドルジは文字通りはがねのように強いという意味です。日本語にすると金剛神とでもいうのでしょうかね、朝青龍の名前は。まさに朝青龍の場合は、名は体を表してます。いろいろ批判もあるでしょうが、当時のビデオを見るとやっぱり強い。強さだけで言えば、白鵬より上に見えるほどです。白鵬は上手さで勝ってますね。その後のダージリンティの世界的躍進ぶりはご存知の通りです。日本全国のスーパーのどこにでもダージリンティーは売ってますからね。もちろんモンゴルのザハでもダージリンは売ってます。でも、この名前がドルジだというのは、多分モンゴル人も知らないと思います。
2018.10.19
コメント(0)
北朝鮮の党機関紙である労働新聞に「モンゴルからの招待状が届いた」という記事が出たそうです。ネットニュースによると「北朝鮮指導者の金正恩(キム・ジョンウン)がモンゴルを公式訪問する招待状を受けた。 モンゴルのKh. バトルガ大統領からの招待状が北朝鮮の労働新聞に掲載された。バトゥルガ大統領は、平壌とウランバートルの外交関係70周年を祝うとともに、北朝鮮指導者をモンゴルへ受け入れることを表明した。 モンゴルと北朝鮮の外交関係は、1948年10月15日に樹立された。」とあります。なるほど、確かにこの日付け、10月15日付けのニュースです。この記事によると「招待状が掲載された」と英文記事にもそう書いてあります。そんな招待状を新聞に載せるんですかね、かの国は??そのニュースには、モンゴルはトランプ大統領と金委員長との会談場所の候補にもなった、と加えられています。例のシンガポール会談の時ですね。私はこうしたことはどんどんやればいいんじゃないかと思います。国連の制裁決議の問題などありますが、はっきり言ってモンゴルとして何をやっても、その制裁に触れるほどの問題になるとは思えません。北朝鮮を巡っては、日米が制裁強化、中露が制裁緩和を主張し、韓国はアメリカの目を気にしながらも実質的な緩和を望んでいるように見えます。こうした主要関係国は、何か動き出すと勘繰られる部分もあるでしょうが、モンゴルは少なくとも「経済制裁」という視点ではほとんど関係ありません。だったら、モンゴル独自の立場でこうした動きに自ら参加して、中立性・協調性を大いにアピールするのがいいんじゃないかと思います。残念なのは、本気出せば結構いろんなことを発言したり、行動したりできる立場なのに、それをあまり積極的にやろうとしないことです。今月上旬の国連総会でも、モンゴルの首相はスピーチの機会や北朝鮮外務大臣との会談の機会があったようですが、ほとんと決まりきったことしか言わなかったそうです。以前日本でやっていた投資セミナーみたいなもんでしょう。官僚の用意した作文を読むだけで、何も相手に伝わらないという手法ですね。私はせっかく北朝鮮の外務大臣に会うんだから、何か面白い提案でもしたらいいとは思いましたけど。でも、北朝鮮問題はこの先まだまだ続くでしょう。非核化も拉致問題も。会談場所もこれから何回も機会はあるでしょう。どこかで「北東アジアの中立国はモンゴル」「北朝鮮と中露も、韓国と日米とも話ができる国モンゴル」というイメージが出てくればいいなと願っています。ヨーロッパで言えば、スイスやアイスランドみたいに。
2018.10.16
コメント(0)
ちょっと旧聞に属する話になってしまいますが、今月中旬に「アジアの未来」という国際交流会議が東京で行われました。今年が24回目なので、結構歴史ある国際会議です。出席者も各国大統領、首相クラスも含むかなりハイレベルな人が多いです。私の記憶では、マレーシアのマハティール首相(今ではなく、昔)とかシンガポールもリークアンユー首相など、アジアの有力指導者たちは、少なくとも一度は出席していたものです。テーマは「トランプ政権の保護主義にどう向き合うか?」とか「先端技術の集積をどう進めるか?」など、まさにアジアの持つ課題が出てきます。とはいえ、偉い人たちがそれぞれの国の事情を抱えながらの講演が中心ですから、議論を深めて解決策を提示しようという性格ではなさそうです。毎回しっかり注視しているわけではありませんが、この会議にはモンゴル人もほぼ毎年登場します。外交好きなエルベグドルジ元大統領は何度も出席していたような気がします。もちろん現役の大統領としてでしたから、講演もしました。今回はバトボルド元首相が講演しました。バトボルド氏は2009年から12年まで首相をやってました。まさにモンゴルがバブルに向かい、絶頂に達し、その後経済急落となったジェットコースターのようなときの首相だったということです。講演の内容は「小国の潜在力を生かせ」というもので、自らを小国と位置づけ「内陸国や島しょ国」などの役割を語っています。更には先般話題になった「ウランバートル対話」の役割も語っています。ま、いいでしょう。妥当な内容だと思いますが、新聞紙面的には(主催者である日経新聞)ラオス首相、ミヤンマー国家顧問府省、インドネシア副大統領らの扱いよりはマイナーっぽいです。彼らは現役でこちらは元ですから、仕方ないかもしれません。その新聞で注目すべきはモンゴルの扱いでした。モンゴルだけ、元首相の講演内容に加え、「知られざるモンゴル」と題したモンゴルの近況も書かれていました。内容は基本中の基本みたいなものですが、一般読者にモンゴルを解説しているのはいい扱いだと思います。更にパネル討論の様子が書かれていました。これは講演だけではなく、いくつかのテーマ別にあった討論会の様子をまとめたものです。テーマは「揺れるグローバルリズム」「北朝鮮危機の行方」「どう進めるアジアのインフラ整備 その商機と思惑」などで、その中になんと「モンゴル経済の可能性と未来」として、モンゴルが取り上げられていたのです。これは素晴らしいです。問題はパネリストです。アジアインフラ整備のパネリストには、司会以外にアジア開銀副総裁のグロフ氏(多分、アメリカ人?)、同じくアジア投資銀行副総裁のアムスベルク氏(ドイツ人)、JETRO理事の佐藤氏そして丸紅副社長の柿木氏が登場しました。内容はともかく、人選は妥当です。グローバリズムは、ニュージーランド、メキシコ、中国、アメリカ、日本からのパネリスト。北朝鮮危機は、韓国、中国、アメリカ、日本からと、妥当な人選です。そしてモンゴルテーマのパネリストは?私はいつも接するモンゴル人や日本人以外の人のモンゴルに対する視点に興味を持ちました。ですがそのパネリストは・・・元首相バトボルト氏が発言、次はブルガントゥヤ氏、次はゾリグド氏、次はエルデムビレグ氏・・・???は?これ全部モンゴル人の名前じゃない!!皆モンゴル人で、皆メッセージは一緒なので、議論にならない。主な発言も、バドボルド氏:モンゴルの成長性は高い、ブルガントゥヤ氏:経済成長率は高い、エルデムビレグ氏:財政再建を進めている、ゾリグド氏:日本への輸出を増やす、ブルガントゥヤ氏:モンゴルへの観光は増えている、バトボルト氏:北朝鮮と良好な関係が続いている・・・うーん、パネル討論なんですが、皆同じベクトルで「モンゴルは素晴らしい!」で、それに対する突込みはもちろんなし。課題も見えない。そんなに素晴らしいなら、「勝手にどうぞ」と言いたくなる内容です。モンゴル国民からしたら、せっかくの国際会議でモンゴルが取り上げられるなら、本当に困っていることを世界に訴えて、意味のある協力や支援を仰ぎたいところです。この人たちは、モンゴル人お得意のプライドがあるのかはわかりませんが、モンゴル自慢しにやってきたように見えます。ですが、そもそもこのパネル討論の人選に問題があるわけで、これはモンゴル人を責めるわけにはいきません。日経新聞側が人を呼べなかったということでしょう。4人もいて全部モンゴル人ですから。知モンゴル日本人は確かに少ないですが、でも前大使の清水さんを含め他にも何人もいます。私は中国人のモンゴル評を聞いてみたい気もします。ただ、モンゴル側からすると「痛いところをつつかれるのは嫌」というのはあるかもしれません。民間主催のセミナーなどでも、モンゴル政府関係者は厳しい質問を嫌がりますから。とはいえ、こうして少しずつモンゴルの名前が表に出てくる頻度は確実に上がっていると思います。
2018.06.26
コメント(0)
ここから私の考察です。ナショナリズムの本質の議論は置いておいて、ナショナリズムって「マイノリティ」「少数派」の方が強いんじゃないかと思ったわけです。当たり前の話ですが、江戸時代の日本人には、日本人というナショナリズムはなく、薩摩だ長州だ、いやいや会津だという郷土意識に似たナショナリズムしかなかったのではないでしょうか?なので私は「他と違う」ことがナショナリズムの原点だと思うわけです。日本という国の違いは?と言われても、集団としての違いはピンときません。だって周りは全部日本人だからです。ですが、アメリカやロシアなどの異国の人を見て初めて「日本人の集団としての他民族との違い」を認識するわけです。鎖国中の日本では、肥後だ、駿河だという国(日本の中のくに)にだけ明確な「違い」を認識できるのです。なので、一般的には大国のナショナリズムは小国に比べ弱いと思います。10億人以上もいる漢民族のナショナリズムは弱いでしょう。中国のナショナリズムは、共産党による官製であって、実際に会えばわかりますが一般的な中国人の国家意識や民族意識なんて大して強くはありません。むしろ「チベット族」とか「ウィグル族」などのマイナーな存在の方が、ずっと民族意識が強いです。中国国内では客家(はっか)という少数集団の方がずっと仲間意識が強いのも、これと同じです。私の例でいえば、東京にいれば「新潟出身」は多少なりとも「違い」ではありますが、新潟知事となれば、何ら「違い」ではありません。しかもマイノリティーでなければナショナリズムは盛り上がらないのです。新潟高校も新潟県内では全然マイノリティではないので、これまた盛り上がりません。ですが、佐渡出身となると新潟市では「違い」が出るし、そこに新潟高校が絡むと「超マイノリティ」になって、理由のないナショナリズムが沸いてしまうのです。実はモンゴルもそうではないかと思っています。13世紀のチンギスハーンの時にはナショナリズムはあったか?もちろんモンゴル族はもともとマイナーではあったわけですが、メルキト、タタル、ナイマン、ケレイトなどを倒しているうちに、それらが全部「モンゴル」になってしまい、オリジナルのモンゴル族意識は薄れていったんだじゃないかと思います。例えて言えば「ソ連人にナショナリズムはあったか?」です。ソ連内の各民族にはあったでしょうが、共産党のスローガンを別にすれば「我々はソ連人だ!」なんて意識はなかったと思います。なのでモンゴル帝国には大したナショナリズムはなかったと思いますが、今のモンゴルは違います。中露両大国10数億人に挟まれた人口300万人の国です。これは数字的には「マイナーな存在」であることは間違いないでしょう。だからモンゴル人のナショナリズムは強いんじゃないかと思うのです。モンゴル国内でも、ハルハ人にはハルハとしてのナショナリズムなんてほとんどないでしょう。でも、カザフ人やツァータン人には強烈な民族意識があるのではないかと思います。モンゴル人が中露の民族的横暴を感じるときがあれば、それはそれで事実なんですが、「あなたもツァータンの人の気持ち考えたことある?」「バヤンウルギーのカザフ人への配慮は十分?」と考えてみるのも大切なのではないでしょうか?日本人も同じです。琉球、アイヌ、蝦夷への尊重の念が減るとともに、その人たちのナショナリズム意識は高まっていくんだと思います。マジョリティに認められない分、マイノリティのナショナリズムは高まるんだと思います。今回の自分の経験から、ナショナリズム意識は理由もなく湧いてくるんじゃないかと本当に思いました。ある集団で自分がマイノリティ(悪い意味ではなく、少ない立場という意味)だとそれが強くなることも。(完)
2018.06.20
コメント(0)
私は昔から民族に関心があり、世界各地の民族、特に少数民族側の視点に立った書籍や小説をかなり読んできました。が、だからと言って民族の定義をここで書こうとは思っていません。民族の定義はわかったようでわからない話が多く、学者の間でも定説はないようです。今回、自分の身近なところで起きた経験から少し考えてみたいと思います。今回というのは、先日の新潟知事選挙です。国政はともかく、自分の故郷である新潟県の政治にはほとんど関心はありません。まあ、できるだけ新潟県が良くなってくれるような県政をやってくれればいいなと思う程度です。6月10日の知事選も大して関心はありませんでしたが、どちらかと言えば新聞等で「安倍政権に審判を下す」というのを見て、いろんな問題で国民を無視しているというか軽視している安倍さんにお灸を据える意味でも、「野党議員が勝つのもいいんじゃないか」と思っていた程度でした。なので私にとっては、大した関心はなかった中でも「原発再稼働よりも安倍さんへの警鐘」の方が興味がありました。で、当日午後8時過ぎに開票速報をネットで見ました。衆議院選挙などでNHKは投票締め切りの午後8時を過ぎた途端に「開票速報」が流れます。何十人もの当選確実が1分もたたないうちに出てきます。で、知事選もそうかと期待して見たのです。ですが、やはり地方の知事選なんてさすがのNHKも力を入れているようではなく、投票率0%のままでした。その時NHKのHPで初めて与党系、野党系の二人の候補者のプロフィールを見たのです。上記の理由で「なんとなく」野党系が勝てばいいかな、と思っていた女性候補は原発の地元柏崎出身の方です。確かに原発再稼働阻止を主張する気持ちが伝わってくる内容でした。保守系候補はというと元官僚で、これまた「なんとなく」好きじゃないタイプに見えました。その時の私の心理状態はそうだったわけです。ところが・・・彼のプロフィールを見たら、私の気持ちは動いてしまったのです。「この人いいじゃないかな?知事になったらいいな。」と。なぜか?元官僚:これは私には減点要素 大学:まあ、官僚向けの標準的大学なのでプラスマイナスゼロ 新潟県出身:新潟県知事なんだから当然でしょう。他県出身の落下傘役人ではないので、ゼロよりはちょっと上。でも野党候補者ももちろん新潟県出身なので、結局はプラスマイナスゼロ。新潟高校出身:へー、同窓か?年齢も近いな。まあ、これはプラス要因だろうけど、新潟市長だって新潟高校だし、田舎はそういうもんでしょう。若干プラスだけど、心を動かかすほどじゃない。佐渡出身:えっ?佐渡出身?佐渡生まれってこと?佐渡生まれで新潟高校なんて、そうはいないでしょう。私は未だ私以外には会ったことありません。もちろん過去にはいるに違いありませんが、間違いなく少ないでしょう。圧倒的に少ないでしょう。うーん、「このいい人かもしれない」と思う自分がいました。(笑)この時のはっきりした気持ちの動きを覚えています。もちろん、単なる出身だけであり、政策とか人柄は無関係です。その時に思ったのです。「これがナショナリズムの原点か?」と。で、考えました。今回の例でいえば、彼が日本人だからなんて理由はゼロです、当然です。新潟県人?これも全然。新潟高校?へー、とは思いましたが、心への刺激はゼロです。つまり理由は佐渡であり、しかも佐渡出身X新潟高校という超マイナーな存在だからだと思わざるを得ません。(続く)
2018.06.18
コメント(0)
昨日、今日と「ウランバートル対話」という文字が何度か新聞やネットニュースに乗ってます。注目が集まる理由は「日朝政府高官が接触するのでは?」というものですが、私が気になったのは「ところで、この国際会議みたいなのは何?」ということです。まずこの「対話」という日本語(訳語)ですが、これは複数の報道機関が使っているようなので、一応公的な名称なのでしょう。ちなみに英語名は「Ulaanbaatar Dialogue」ですから、確かに対話ですね。会議だと「何かを決める」という目的が必要ですが、北朝鮮も含めた場ですので「まずは、話し合いましょう」という意味なのかもしれません。ちょっと調べてみました。2013年に当時のエルベグドルジ大統領が提唱した「北東アジアすべての国と良好な関係を持つモンゴルが主催する、地域の安全保障を話し合う国際会議」が、2014年6月に実現したものです。これが第1回目。ネットで過去の情報を調べてみましたが、第1回目の報道はそこそこあるものの、2015年(第2回)、2016年(第3回)の日本語での報道は非常に少なく、昨年2017年(第4回)のが多少ある程度です。そういう意味では、今回の第5回が少なくとも日本で突然注目された感は、確かにあるでしょう。実はエルベグドルジ大統領は、こうした外国に向けたモンゴルの役割というのを非常に意識していた人でした。こうした動きを私が最初に知ったのは、2015年5月に来日したときでした。東京で開かれた国際交流会議「アジアの未来」で講演し、アジア全体が協調して行動する新たな国際組織の設立を提唱したのです。講演後に応じた日本経済新聞とのインタビューでは、新組織は中東、ロシアを含む国連加盟48カ国を中心に構成し、領土問題の解決や貿易の自由化を推進する構想を明らかにしました。残念ながら、この構想はその後何も動きはありません。当時のことは、2015年5月22日付け本ブログ「エルベグドルジ大統領、2時間も生番組に!」 (https://plaza.rakuten.co.jp/mongolmasami/diary/201505220000/ )をご覧ください。この発言が2015年ですから、既にその前にこのウランバートル対話を提言し、2014年から実行していたということになります。もちろん、当時の私はこのウランバートル対話の存在は知りませんでした。ハーバード大学院を出たこの大統領は、国内向けよりも対外向けの英語での発信が好きな大統領でした。モンゴル人の友人らからは「確かに対外的には格好いいスピーチをするんだけど、国内の地方の人たちにはあまり人気がない」とか「若くして大統領になったから、大統領を終えたら次は国連の何かのポストを狙っているんじゃないかな?」などという声も聞きました。このウランバートル対話がメジャーになれるチャンスが実はありました。それは2013年10月です。安部首相と仲のいい大統領は、いかにも「よし、今度北朝鮮に行くから、その時にキム委員長に話をつけてやる」と言ったかどうかはわかりませんが、そうした期待を一身に集めて北朝鮮に乗り込んだのです。確かにモンゴルは北東アジアすべての国と良好な関係を結んでおり、それはあの北朝鮮も例外ではありません。というより、北朝鮮にとっては数少ない「友好国」なのがモンゴルなのです。はっきり言って、モンゴル人は北朝鮮を「上から目線」で見ている部分もあり、我らが大統領が訪問するんだからキム委員長に会えるのは当然であるけど、拉致の解決まではどうかな?という感じでした。ところがなんと、結果は会うこともできずに帰ってきたのです。日本人的には「拉致問題の解決が遠のいた」ことで落胆しましたが、多くのモンゴル人は「うちの大統領がわざわざ出向いているのに、会わないとは何事だ!」「もう援助なんかやめちまえ」と北朝鮮に馬鹿にされたと感じ、ひどく立腹する雰囲気が多かったのを覚えています。これが2013年ですから、ウランバートル対話を提唱してから4か月後、第1回ウランバートル対話の半年前です。安部さんも含めた日本側のモンゴル大統領への期待が急速に萎えていったような気がしました。もしあの時、キム委員長と会えて第1回ウランバートル会議に引っ張り出せたら、そりゃあものすごく有名な会議になっていたでしょうね。今回のシンガポール米朝会談について。トランプ大統領が「キム委員長と会ってもいい」という報道が流れたのが3月9日。私は即刻「ウランバートルが立候補すべき」と政府関係者に連絡を入れました。が、週末金曜日で反応は鈍く、そのまま土日になってしまいました。そうした経緯は、2018年3月10日付け、本ブログ「ウランバートル、立候補したら?」 (https://plaza.rakuten.co.jp/mongolmasami/diary/201803100000/ )に書きました。その時、バトトルガ大統領はこの手の話に乗ってくるかはわかりませんが「エルベグドルジ前大統領なら、この提案に即乗ってくるでしょうね。こういう国際的に目立つこと好きですから。」と書きました。そして今頃になって、その頃の様子がわかってきました。私からのメールとほぼ同時に、エルベグドルジ元大統領がウランバートルでの開催を提案したツイッターを発信したようです。やはりエルベグドルジ元大統領は、この手の話への反応は素早いです。多分、バトトルガ大統領はこうした立候補の意義も理由もピンとこないんじゃないかと思います。基本的には国内派でしょうから。第5回ウランバートル対話が思いもよらない形で注目を浴びましたが、長期的視野でエルベグドルジ元大統領が提唱した会議の存在意義が少しずつ広まりそうな感じです。
2018.06.15
コメント(0)
先日の日経新聞に、モンゴルのベンチャー企業が紹介されていました。OTやTTなどの鉱山会社、MCSなどの大手企業などは日本の新聞でも見たことありますが、モンゴルのベンチャー企業が日本で紹介されるというのは非常に珍しいんじゃないかと思います。会社の名前はアンドグローバルで、スマートフォンを使った小口金融「レンドMN」を手掛けるとあります。恐らくレンドは貸す、MNはモンゴルという意味でしょう。この金融事業会社をモンゴルの証券市場で上場させたのだそうです。アンドが先に来るという名前はちょっと不思議な感覚です。英語のandを意識しているそうですが、もう一つモンゴル語の友人という意味もあるそうです。恐らくチンギスハーンの時代にもあった「アンダの誓い」と言われるものでしょう。お互いに傷をつけ、血を流して一生の友情を誓うという儀式です。まあ、日本でいえば血判同盟みたいなものでしょうか。創業者でCEOはアナラ・チンバートルCEOとあります。アナラはもしかしてモンゴルではアナルと呼ばれる名前のことかなと思います。ローマ字でAnarとありますから、日本語的にはアナルの方が近いでしょう。レンドMNの特徴はスマホで小口金融をやるということです。小口というのは、5万トゥグルグからだそうで、日本円で2200円ほど。これを無担保で貸し、借り入れ期間は30日だそうです。なるほど、これは確かに給与所得者が「ほんのちょっと借りたい」「給料日まで数週間だけ」というニーズに応えているのでしょう。驚くのは利用者数です。2017年4月にサービスを開始して今年2月の時点、つまり10か月で利用者は35,000人だそうです。これが延べ人数なのか、実顧客人数なのかは不明ですがそれでも大したもんです。なぜならモンゴルの人口は300万人ですから、ざっと1%です。もし日本なら・・・100万人以上という計算になります。この顧客の広がり方は日本では想像できないでしょうね。さて、ここからが私の余計な解説です。想像でしかありませんが、こんなところだと思います。「たった2200円の貸し出しで儲かるの?」という疑問についてです。これは日本の感覚からすると随分少額に見えます。物価水準が違うという点もありますが、もう一つの最大の違いはスプレッドです。当たり前ですが、金貸し業の利益は資金コストと貸し出しコストの差、いわゆる利ザヤ(スプレッド)にあります。日本は低金利が続いており、メガバンクから大企業が借りるときは利ザヤが1%もなく、0.5%とか0.3%などというとんでもなく低いスプレッドになります。個人向けも、住宅ローンも競争が激しく、スプレッドは1%未満です。モンゴルの場合は、こうした法人向け貸し出し金利自体が非常に高く、年利20%とか25%とかで貸し出すのです。1年間の定期預金金利が15%近くもあり、その他の普通預金は6-7%もあります。詳細はわかりませんが、調達コストを10%程度とみると、大手銀行でも貸し出し時のスプレッドが10%とか15%と、日本の銀行の20倍とか50倍になるのです。ちょっと信じられない差ですが、本当にモンゴルのスプレッドは非常に大きいのです。これが澤田さんをして「ハーン銀行はものすごく儲かる」と言わせたのでしょうね。これが個人向けの小口となると、もっと大きい。質屋みたいなのがモンゴルには多いのですが、私が聞いた範囲では短期(1か月以内)小口で年利35%というのもあるようです。というか、モンゴルでは金利は年利では言いません。月利とでも言うのでしょうか、月単位です。例えば定期預金も「今ですと、1.2%です」などと言います。最初聞いたときは「ああ、モンゴルでもそんなもんか」と思ったのですが、なんと月単位でした。複利を無視した単純計算では14.4%とうことです。小口消費者金融では2%どころか3%やそれ以上もあります。つまり年利36%からそれ以上ということです。上限は怖くなるほどでしょう。定期預金並み調達コストとしても、スプレッドが20%にもなります。日本の銀行と比べると、10倍どころか100倍。カードローンなどと比べても、5倍から10倍くらいはあるんじゃないでしょうか?5倍とすると、2200円の貸し出しのスプレッドと同じだけ稼ぐには、11,000円貸さないといけません。10倍なら22,000円。しかもスマホで無店舗貸し出しであれば管理コストも低いです。モンゴルで1万円の貸し出しなら、日本では5万や10万貸さないと利ザヤが取れないということです。モンゴルのこの会社は、将来東南アジアでも事業展開したいそうです。日本の常識(低スプレッド)では、こうした小口金融のベンチャーは出てこないのではないでしょうか?モンゴルのベンチャーがどんどん出てくることを期待します。
2018.04.16
コメント(2)
1か月前の3月10日付けの本ブログ「ウランバートル、立候補したら」で書いたように、会談の内容はともかく場所の問題は一向に決まっていないようです。私はトランプ大統領が会談をすると決めた報道を見て、即座に「これはモンゴルにチャンスあり」と感じました。で、すぐにモンゴルへ連絡。政府の偉い人へ通じるルートに伝えましたが、なんせ週末ということもありほとんど反応ありませんでした。大統領府と内閣府に近い筋に伝えても、その時は手ごたえなかった(なんでモンゴルが立候補?)ので、このニュースで最初に反応したのは私なんじゃないかと思っています。それでもその後もプッシュし続けた結果、週明けの火曜日にやっと政府高官が「会談場所として、ウランバートルで受け入れる用意がある」と発表しました。(3月15日付け、「ウランバートル立候補、ようやく表明?」更に3月16日に具体的に動き出しました。モンゴルのネットニュースMONTSAMEによると、「Z.エンフボルド大統領府長官は、両大使と会談で、「モンゴルは北朝鮮と米国の両方と友好関係にある」と強調するとともに「モンゴルは米朝首脳会談の開催地にふさわしく開催する余地がある」と開催に向けて意欲を示した。」とあります。その後米朝の駆け引きのような報道はありましたが、場所の問題に関しては未だに発表がありません。先週になっていくつかの報道機関が、再び場所の問題を報じだしました。朝日新聞:米朝首脳会談の開催地、スウェーデンとモンゴルが意欲(ソウル発、4月6日付け)「米朝関係筋によれば、両政府は米朝に対し、それぞれの首都を会談の舞台として提案。「開催を希望するなら、対応できる準備がある」と働きかけているという。米朝は共に回答を保留している模様だ。」日経新聞:米朝首脳会談、北朝鮮が平壌開催を提案か 米報道 米が応じるかは不明 ウランバートルも候補(4月8日付け)「米側が応じるか不明で、モンゴルの首都ウランバートルも候補地の一つに挙がっているという。」現在候補地は5つあるようです。お互いの国、つまりピョンヤンとニューヨーク、そして板門店。第三国としてはスウェーデンとモンゴルです。ですが最近の中朝首脳会談があったことを考えると、北京も立候補するでしょうね。私はウランバートルが有力だと思っているわけではないし、今回選ばれなくても構わないと思います。ですが、こうした機会に立候補することで「中立性」や「国際会議の場」になりうる可能性をアピールできれば十分だと思っています。今後の報道に注目したいと思います。
2018.04.09
コメント(0)
モンゴルの大きな問題として、前の大統領も今の大統領もずっと公約してきた「賄賂」をなくさねばならない、ということがあります。公約が歴代の大統領に受け継がれているということは、要するになくならない、改善しないから、なんだということです。因果関係を正確に記すことはできませんが、世界の一人当たりGDPの高い国と腐敗度が低い国とは相関関係にあります。もちろん一部の産油国などの例外はあるでしょうが、一般の国として考えれば、腐敗指数が悪いまま豊かになる国はまずないでしょう。そう考えればモンゴルが腐敗を減らしてもらいたいのは、単なる「政治家への批判」ではなく国としての発展の礎つまり必要条件と考えるべきです。単なる倫理観だけでなく、改善してもらわねばいつになっても途上国の地位から脱することはできないでしょう。モンゴルでは賄賂が社会の隅々まで浸透しているので、まるで「文化の一部」と思っている人もいるようですが、もちろん文化なんかじゃありません。そしてそのことは立派な「ビジネス上の障害」になっています。一見ビジネスと関係ない習慣に見えるところにあります。医者にまともに診てもらうために賄賂が必要、学校の先生どころか幼稚園の段階でも先生への賄賂が必要、仕事を探すにも賄賂が必要などなど、様々な分野での不正を耳にします。私の大学教員時代も、生徒がモジモジして成績の改変(CをAにしろ、とか)の相談を何度も受けたことがあります。私はロジカルに、「どうしてあなたが今回Cになったのか」を証拠立てて説明しました。私としては「好き嫌いで成績を付けているのではなく、予め説明したとおりにきちんとやっている」ことを言いたかったわけです。ですがその話を聞いたモンゴル人の友人は「そんな説明を聞いているんじゃなく、いくらで成績を上げてくれるんだという相談ですよ」と教えてくれました。私はそういうことに全く取り合いませんから、かなりしょ気かえってしまった人を何人も見ています。中には逆切れして怒り出す人もいたほどです。こうした医療や教育、就職などの現場にも浸透している賄賂の習慣の本丸はもちろん政治家と役人です。日系企業の人や、モンゴル人ビジネスマンによれば、役人は「呼吸をするように賄賂を要求する」と言います。こうした賄賂は都会に多いどころか、むしろ田舎の閉鎖された小さな社会でも頻繁に、しかも当たり前の習慣のようにあるから根が深いです。都会なら、過大な金を要求する医者がいたら、他の選択肢もありますが、田舎のソム(村みたいな小集落)あたりでは一人しかいないので、拒否できません。そうした問題を一掃しようと、新大統領のたびに賄賂のない国を宣言するし、新しい政府になると「外国人投資家にとって賄賂のない優れた環境が整っている」などとのアナウンスもよく聞きます。実態はどうなんでしょうか?私の懸念は別に正義感を持ち出して、倫理的に社会を正そうなんて思っていません。やりたければ勝手にやってもいいとも思っていますが、それがビジネスに悪影響を与えるならダメだということです。実態の改善も大事ですが、そもそも世界的にどう見られているかも外国からの投資を呼び込むには大切なことです。で、世界腐敗認識指数、英語でCorruption Perceptions Index, CPIという指標が一般的に使われています。どういう国がランク上位なのか?(腐敗が少ないのか?)これはこんな指数を見たことない人だって、簡単に想像できます。いわゆる「いい国」が上位にいます。いろんな国際指標(豊かさ、教育、安全、自由、人権・・・)などの上位国は大体決まっています。上位に来るのは、北欧、北米、オセアニア、西欧そしてアジアの先進国です。因果関係の説明があろうとなかろうと、腐敗指数の悪い国は先進国にはなれません。これは明白です。モンゴルも豊かになりつつありますから、少しは改善しているのでしょうか?最近3年間の世界順位(180か国中)を見ましょう。2015年 72位2016年 87位2017年 103位うーん、年々悪くなっていますね。こういう指標は人口が少ないとかGDPが低いだとかとは関係なく、国民や政治家の意思で変えることができる数少ない指標だと思うのですが、それがどんどん悪くなっているところに問題の根深さがあります。要するに外的要因よりも圧倒的に内的要因であるということです。なので他国と比べるというよりは、内部から崩壊していく過程にあると言えるんだと思います。立派なこと言っている大統領も「退任後一番怖いのは在任中の不正を訴えられること」だと言われていますから、どこから手を付けたらいいかわからないほど構造的です。どうしたらいいのか?方法論はいくつも思いつきますが、そもそも大統領や政府トップ自らが「自分自身も含め本気になる」ことがなければ、どんな提案も意味がないでしょう。残念ならが、今の政治家にはそんな「本気度」は感じませんね。こうした賄賂がいかに多くの面で(対国民、対外投資、対教育など)悪影響を及ぼしているかを本当に理解しないと、変わらないのかもしれません。
2018.04.07
コメント(0)
キルギスの映画「馬を放つ」を見てきました。キルギスの遊牧民を描いている映画ということで興味を持ちました。ベルリン国際映画祭やアカデミー賞外国語映画賞キルギス代表を獲得しており、優秀な映画ということなのでしょう。ですが、この大都会東京で上映しているのはなんとたったの一か所だけというのは、いくら素晴らしくても商業的には成功しない(要するに見に来る人がほとんどいない)と思われているからなのでしょう。これがパンフレットの表紙です。場所はマイナイー映画の聖地ののような神保町の岩波ホールでした。週末にもかかわらず、この小さな映画館でも満席にはとても及びませんでした。東京で上映1か所なのに、ちょっと寂しいです。私は新聞の映画紹介のコラムで見て、遊牧民の文字に惹かれ見に行きました。ストーリー的には確かに「すごく面白いか?」と聞かれれば、返事が難しそうです。ですが、私の興味はそんなストーリーではなく、景色や言葉、習慣などにモンゴルとの類似性が見られるかどうかにありました。そういう意味では興味深かったです。まず景色。草原ぽい風景は出てきますが、モンゴルのような大草原ではありません。そして景色は常に高い山に囲まれていました。天山山脈が近い国ですから、イメージは山に囲まれた草原です。モンゴルももちろん山はありますが、大体モンゴルで遊牧民の映画を撮るとなれば大草原を舞台にするでしょうね。主人公は既に遊牧民生活ではなく、固定式家屋(ゲル地区にあるような固定式家屋)に住んでいます。その内部の様子は違うと言えば違いますが、なんとなく似てるなと思いました。言葉については、そもそもモンゴル語がわからない私ですから、聞いてわかるはずもないのですが、少しは共通点はありました。例えば数字の5万というのが出てきましたが、モンゴル語では50(タヴン)千(ミヤンガ)と言うところを、50の方は聞き取れませんでしたが、千の方は確かにミヤンガに聞こえました。(もちろん本当の発音はこんなカタカナ通りではありません)これは納得です。キルギスはテュルク系ですから、トルコ語に近い言葉だと思いますので、5や50というのはその言語で話すでしょう。が、遊牧民は元来、チンギスハーンやその前の匈奴(モンゴルではフンヌ)の時代から、10進法で人々を管理していましたから、100とか1000、10000という言葉はユーラシア遊牧民には共通言語だったのだと思います。遊牧民社会は文字通り遊牧する、つまり移動社会なので、日本や漢人社会のように「土地を管理する」のではなく、人を管理してきました。なので1000年以上も前から、ハーンなど上に立つ人は、100人の管理集団を持ち、それを10束ねて1000、それを10束ねて10000として管理してきました。なので、個別の数字(1から10まで)はともかく、千や万は遊牧民共通の言葉になっているのでしょう。また女性の名前もドルマーだったかな?とにかく女性の名前にマーがついていたので、これもモンゴルと同じだと思いました。他にもドルジというお馴染みの名前もありました。これはチベット仏教から来た名前ですから、いろんな地域にもあるのでしょう。というわけで、内容に関する解説を期待された方には申し訳ありませんが、私が申しあげることができるのはモンゴルとの関連であって、映画評論ではありません。この映画を見て二つのことを思いました。一つは、こうした遊牧民の映画をどの国であれ、どういう内容であれ、もっと世界に広めてほしいなということです。もう一つは、こんなに世界的に立派な賞をもらった作品であっても、そして巨大都市東京であっても小さな映画館一つで上映するだけなのか、という寂しさです。モンゴルにもいい映画はたくさんあると思いますが、なかなか世界進出とはいきません。いつかモンゴル映画が、東京やニューヨークで上映されることを楽しみに待っています。遊牧民と資源開発の葛藤でもいいし、伝統的生活と都市化の葛藤でも、十分にグローバルな視点での題材になると思います。
2018.03.26
コメント(0)
今日の日経新聞にモンゴルで発見された5億5千万年前の巣穴化石が発見されたとありました。記事は結構大きく、発見者は名古屋大学のグループです。発見内容は結構難しいのでここでは十分に説明できませんが、要するに5億5千万年前にモンゴルは海の底で、そこに思ったよりも進化した生物がいたらしいということです。今回の発見がこうして報道されたのは、その生物が「穴を掘る」機能があったということだそうです。どういうことかというと、細菌のような原始的生物やクラゲのような「非左右相称動物」は大昔からいたが、「左右相称動物」のように進化した動物がこの時代にいたことが大きな発見なんだそうです。左右相称動物なんて、全く聞きなれない言葉です。説明によると、体のつくりが左側と右側で同じようになっている動物で、私たち人間はもちろんですが、ミミズも同じ仲間なんだそうです。それに対して、クラゲやイソギンチャクは非左右相称動物なんだそうです。で、今回発見されたんがあえて分ければ人間と同じグループである左右相称動物なのです。じゃあその骨が残っている化石が発見されたのかというとそうではなく、その動物が作ったであろう「巣穴」が発見されたということです。新聞の写真をご覧ください。写真右上に巣穴化石とありますが、要するにミミズみたいな動物が2つの出入り口を備えた巣穴を作った跡が見つかったということです。それがそんなにすごいのかと思いましたが、確かによく考えると穴を掘る生物というのはかなり進化しないとできないでしょう。クラゲやイソギンチャクでは筋肉というか、穴を掘る力なんてないでしょうから。でも、新聞には「定説より1000万年以上早く」とありますから、確かに時間軸でみると大きな違いにも見えます。でも、5億5千万年前と5億6千万年前の違いなんてしょせん誤差でしかないと思ってしまうのは、考古学者に対して失礼なんでしょうか?当然ですが、こうした太古の歴史を考えると人間なんてほんの最近の生物であり、その中の人生100年と言ったら「瞬間」の出来事なんでしょう。でもその瞬間を悩まいながら生きるのも人間なんでしょう。とにかく、考古学でも何でもいいので、こうしてモンゴルが前面に出るのは嬉しいですね。昨年ほとんど休場ばかりだった鶴竜も優勝したし、いい話が続くといいです。
2018.03.25
コメント(0)
2日前、つまり13日でしょうか、ようやくモンゴルがアメリカと北朝鮮の会談の場所として、ウランバートルで受け入れる用意があると表明したようです。うーん、ちょっと遅いかな。実は、トランプ大統領が金正恩と会ってもいいというニュースが出たとき、私はすぐに「ウランバートルは立候補すべきだ」と思いました。その旨は、本ブログにも書きました。それが3月10日の昼頃です。で、私はその時にモンゴル政府に向けて「立候補すべきだ」とメールを送りました。もちろん、私が直接偉い人にメールを送るわけにもいかないので、「大統領に通じるルート」で送りました。ですが、結果は私がその時に懸念したとおりになりました。その懸念というのは「土日に働くような役人はモンゴルにはいないだろう」ということです。中に入ってくれた人は結構頑張って各方面に連絡してくれたのですが、案の定「土日なので、誰も反応が悪いです」との返事がきました。ですが週末にもかかわらず、スイスやスウェーデンの動きは早く、ともに「受け入れる用意がある」と週末中に報道されました。やっぱり日ごろの意識が違うなと思いましたね。週末に「米朝会談が決まりそう」なんて誰も予想できたわけではないと思います。ですが、この両国は常日頃から「中立国としてどう国際貢献できるか」を考えているんだと思います。だからこそ、反射神経良く、ああして発表できるのでしょう。他方、モンゴルはまだそんな立場も自覚していないし、「仮にこうなったら・・・」なんて頭の中でのシミュレーションもできていないんだと思います。で、週明け月曜日に私は再プッシュしました。10日(日本時間)の時点では、米朝会談が行われるという驚きのみがニュースになりましたが、私は必ずや「場所の問題」が出てくると思いました。そしたら案の定、週明けからは「場所はどこでやるんだ?」との報道が出だしました。そして、13日の夜のNHKニュースニュースでのテーマは、会談の場所はどこか?でした。有力候補は韓国の板門店ですが、それ以外にスイスやスウェーデンやアメリカのワシントンなどが出ました。更に「北京」「シンガポール」とともに「モンゴル」の名前が出たのです。もしかしたら、モンゴル側の発表した声が届いたのでしょうか?モンゴルでは13日に外務次官がBloomberg TVのインタビューでウランバートルで受け入れたいという趣旨のことを言ったそうです。こうした中立国のイメージは大切です。今回実現しなくとも、モンゴルの役割を世界に示すいい機会です。できれば大統領に世界に向かって「モンゴルで開催する用意がある」と宣言してほしかったです。現実的には多分実現しないでしょうが、こうした「中立的で良いイメージの国々」と並んで名前が世界に示されるのはいいことだと思います。お金のかからない、世界への広告みたいなものです。こうした声明を見て「そうか、モンゴルはそういう難しい国との会談の場として使えるような中立の国なのか。」と少しでも感じてもらえたら、十分です。私の声が届いたのかどうかは不明ですが、こうして少しずつでも世界に向かって発信できるようになっていけば、モンゴルのイメージも向上し、役割期待も段々モンゴル自身も自覚してくるようになるんじゃないかと期待しています。
2018.03.15
コメント(0)
北朝鮮の金正恩とトランプ大統領が5月に会談をすることが決まったそうです。その会談の意義やそれによって何が解決されるのかはわかりませんが、どうやら本当に会談はありそうです。そうなると、どこでやることになるのかに関心が出てきます。まずあり得ないのは、アメリカでしょう。ここに金正恩が来たら、安全の保証はないでしょうから。トランプ大統領、文大統領、安倍首相と金正恩との最大の違いは何か?それは命の重みです。人間としての重みを言っているのではなく、国の体制にとっての重みです。前3者は民主国家なので、仮に亡くなったとしても国会体制が揺らぐことはないでしょうし、大きなニュースにはなるものの、その後は民主的手続きにより後任が決められていきます。ですが、金正恩は違います。彼が亡くなったら、国家体制そのものが変わってしまう可能性を大きく秘めているからです。ま、だから昨年来特殊部隊が暗殺を狙っているなどの報道が出ているんだと思います。ですから、トランプ大統領よりも金正恩の方が、安全には一層拘ることでしょう。なので、アメリカ開催は全くあり得ないです。現実的な候補は板門店と言われています。ここで南北会談もやるようですので、確かに4月でうまくいけば5月もよさそうです。ですが、もう一つの考え方は中立国でやるという手もあります。1986年のレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が会談したのは、レイキャビクでした。人口30万人程度の北欧の島国の首都です。世界が西と東陣営に分かれていた時に、中立的と目されたことが大きな理由でしょう。場所の問題ですから、国の規模とか経済力なんて関係ありません。もし第3国での開催となると、場所はどこがいいでしょうか?普通に考えると中国・北京だと思うのですが、ここ数年中国と北朝鮮の関係は悪化しており、金正恩にとっては「中立国」には見えないんじゃないでしょうか?例えば会談が上手くいかず「このままでは全面戦争だ!核戦争を覚悟しろ!」なんて事態(になる可能性は1%未満でしょうが、ゼロではない)になったら、習は金を北京で拘束することも考えられます。このまま帰したら、二度と抑えられるチャンスはないでしょうから。むしろ、金正恩からすればロシアの方が「安全」と感じるでしょう。相手がアメリカ大統領であっても、ロシアは「守ってくれそう」な気がするかもしれません。ただ、その場合は場所の問題になります。モスクワは遠すぎますから、ウラジオストックかハバロフスクあたりでしょうか?この場合、韓国が設定してアメリカが決断したにも関わらず、なんとなく最後はプーチンが演出して、「俺が世界平和のために汗をかいたんだ」と言いそうで、韓国、アメリカ両国にとってはなんだか釈然としません。場所は場所だけ提供すればいいのであって、経緯や中身に干渉されたくありませんから。ここまで来ると、フェアーで善良で余計な口出しをしそうにないモンゴルが有力候補になってきます。場所はもちろんウランバートルのシャングリラホテルです。モンゴルは依然として北朝鮮の数少ない「友好国の中のまともな国」ですし、安倍さんも関係ないと言えば関係ないけど、なんとなく事情通ぶって「モンゴルのことなら、私にお任せください」なんて言えるかもしれません。エルベグドルジ前大統領なら、この提案に即乗ってくるでしょうね。こういう国際的に目立つこと好きですから。バトトルガ大統領はどうでしょうか?パフォーマンス好きには見えませんでしたが、もし実現すればモンゴルのイメージアップにもなるし、数十年たっても「ウランバートル会談」は歴史に名を遺すでしょう、レイキャビックのように。今回立候補して空振りでもいいと思います。アメリカと北朝鮮に「そういうオプションもあるのか」と知らせておけばいいのです。仮にこの会談が成功したら、今後は政治家や高官同士の会談の場が必要になるでしょう。そうした時の一つのオプションになるかもしれませんから。
2018.03.10
コメント(0)
年末、BSで「シベリアを行く」というような番組を二日続けてやっていました。私は途中から見ただけですが、バイカル湖などが映し出されました。番組としては、「日本人のルーツ?を探す」みたいな感じでしたが、モンゴル的視点で見ても大変良い番組でした。ちなみに、今回のは2015年に放送された番組の再放送でした。モンゴル的視点で言えるのは、今回登場する地域は全てロシア国内ですが、その行先の多くがモンゴル語語源の地名だったということです。バイカル湖、ナリン・ヤグラ、トゥバ、ブリヤード、サハ、ヤクーツク、ウランウデなどは全てモンゴル語であり、これら広い地域が元々はモンゴルの領土であったことを示しています。13世紀の旧モンゴル帝国の復活はもちろん無理としても、モンゴル人が大半を占める地域が近代においてロシアと中国に奪われてしまったことがよくわかります。ちなみに、「シベリア」という地域名や北方森林地帯を指す「タイガ」という言葉も、当然ながらモンゴル語です。もっと言えば、モスクワだってモンゴル語語源です。中国のモンゴル自治区は有名ですが、ロシア側のトゥバやブリヤードは外国人には馴染みがないので、そうした戦後のソ連による植民地化を知らない人が多いのは残念です。中国におけるモンゴル自治区は文化大革命時に中国人によるモンゴル人の大量虐殺が行われたことは、日本では有名とまではいかないにしろ、何らかの形で日本には伝えられています。が、ソ連邦におけるトゥバやブリヤードでの「粛清」はほとんど報じられていないと思います。モンゴルでも粛清はありましたが、とにかくロシア人にとっては「タタール人」すなわちモンゴル人が憎くてたまらないのです。モンゴル国内でも多くの悲劇がありましたが、トゥバやブリヤードはソ連邦、ロシア連邦内の国ですから、どれだけひどい目にあったかは想像に難くありません。もちろん、この番組ではそんな政治的なことは一切取り上げられていませんでした。中国とソ連を見てわかるのは理由はどうでもよく、要するに社会主義国家というのは「気に入らない民族」は国家として平気で殺してもかまわないという考え方でしょう。で、今回のテレビです。意外なほどに「モンゴル的生活」を続けている人が多かったということです。番組としてはモンゴルとの近似性は一切触れていませんでしたが、見る人が見ればわかります。トゥバ共和国で、旅人の伊藤英明が草原で音楽を聴くというシーンがありました。草原は、モンゴル北部、例えばフブスグルやセレンゲの延長上の草原のように見えました。そこで奏でる楽器にはなんと馬の細工が。そうです、馬頭琴でした。衣装はもちろんデールです。しかも歌い方はホーミーでした。小さな違いはともかく、普通にみればまんまモンゴル人です。ホーミーをその地域の人は「フーメイ」と呼んでいました。ま、この程度であれば十分方言の範囲内です。テレビで見るとトルクメスタンとか西の草原国家の移動式住居はモンゴルのゲルと見た目が若干違う場合があるのですが、トゥバのゲルはモンゴルのそれと全く同じで、名前もゲルでした。私から見ると、今は中国政府によって生活スタイルを無理やり変えられてしまった内モンゴルより、もっとモンゴルに近いように見えました。サハ共和国へ来ると、一層日本人にもモンゴル人にも顔かたちが似てきます。実際には、ブリヤート人です。ブリヤートは、ブリヤートモンゴルとも言われ、その一部は今もモンゴルの北部森林地帯付近に住んでいます。番組によると、ブリヤート人のDNAの95%くらいは日本人と同じらしく、その中のなんとかという遺伝子は、ブリヤート人と日本人には共通だけど、韓国人、中国人とは違うんだそうです。そういう科学的根拠を知ると、一層ブリヤートモンゴル人との共通性を感じます。今のモンゴル国の多くは「ハルハ」という人たちで、「ブリヤート」はモンゴル国内では少数民族となっています。が、ブリヤート人は「きれい好き」「勤勉」「木の家が好き」「集団を大事にする」など、妙に日本人の特徴と符合するから不思議です。DNAという科学的事実とハルハ人から見たブリヤート人評という文化的側面から考えると、我々日本人のモンゴロイドとしてのルーツの一端はブリヤード人にあるような気がしてきます。実際、テレビに出てきたブリヤード人の顔立ちは本当に日本人に似ていました。プーチンはシベリアでの日本からと投資資金や技術援助を期待しています。モンゴルもいろいろありましたが、今はロシアと上手くやっていきたいと思っています。日本も北方領土問題はあるものの、それ以外のネタは資源開発くらいしかありません。ここは思い切って、日本、モンゴル、ロシアの3国で「シベリア極東モンゴロイド文化圏研究会」なるものを立ち上げて、そこでの共同研究などをやるのもいいんじゃないでしょうか?そういう研究は、結局アイヌ(樺太アイヌ、北海道アイヌ、国後アイヌなどの共通性)や北方領土の正当性にもつながることにもなると思います。多分予算的には、リスクの大きいい資源開発や、法的整備にないままに行う莫大な北方領土へのインフラ投資に比べても、大した金額じゃあないでしょう。そうした非経済分野の交流も大切なんじゃないかと思います。安倍さん、モンゴルをそういう切り口で考えてみてもいいんじゃないですか?
2017.12.31
コメント(5)
エルデネバト首相が解任されたとのニュースが、日経新聞に出ていました。「なんで?」というのと「やっぱり?」というのが半々の感じです。「なんで?」というのは、昨年夏の選挙で人民党が大勝し、単独政権下で指名された首相ですから、よほどのスキャンダルでもない限り解任されるはずがないからです。新聞によると「与党主導で」とあります。つまり、野党の攻勢とかスキャンダルがあったわけではないようなのです。そして「やっぱり?」というのが、どうも本当の理由のようです。今年2月から3月にかけての一連のIMFとの交渉で、モンゴルの経済危機はなんとかやり過ごすことができました。当然のことながら、周囲やモンゴル人らはとにかく安堵したというところでした。私もこれで当分は大丈夫、あとは経済発展に向けて舵を切れると思ったのです。ですがその頃から「モンゴル人にとっての約束は、世界の常識とは違いますよね?」とか「あんなの、その時にうんと言えばいいだけのことなんじゃないの?」などという話も聞こえてはいました。私もこのブログで何度も書いていますが、モンゴル人にとっての約束というのは「その時は、そう思った」というだけで、別に未来に向けて守らなければならないことではないのです。「その時はそう思ったけど、その後変わったから合意を破棄する」というのは「嘘つき」とは言わないのです。だからモンゴル人に対して、約束を違反したことに対して「嘘をついた」と言うと、ひどく怒ります。「嘘ついてなんかいない!その時はそう思ったんだから」となるのです。ま、こういう認識違いは個人間の約束違反程度ならいいのですが、モンゴルの政治家はその感覚をそのまま、相手がIMFだろうが世銀だろうが平気で合意を反故にできる「特殊な能力」を持っています。でも、その「特殊な能力」は中国向けには発揮してないので、やはり安全な相手を選んでいるとも言えます。日本なんかは、一番の安全な相手だと言えますね。IMFとの合意直後から、「本当に合意を守るのか?」という懸念は聞かされていました。5か月も前の情報でも「最大の懸念が消えたモンゴル人は相手がどこであろうと、そんなもの気にせずに反故にするだろう」というのです。どういうことか?4月の時点では「最大の懸念である開発銀行債の借換が、IMFとの合意により実現できた。」「本当に怖い中国が夏の通貨スワップ延長を認めたら、怖いものはない」「石炭価格が安定しているんだから、緊縮財政にする必要はない」などの懸念が既にモンゴルでは漂っていたのです。例の子供手当を始めとする社会保障費削減などの不人気施策も「合意してから、後からまた変更して元通りにしたらいいじゃないか」と見られてました。なので「一旦合意しておいて、後から御破算にする可能性は十分にあり」とその時点で言われていたのです。つまり「国会議員は財政支援の金をなんとか自分の物にするためにも、一旦は合意(条件を飲む)するが、結局財政支援金額は雲散霧消して政治家及び役人のポケットに形を変えて入ってゆくことになるだろう」というのです。一部にある「IMF合意が御破算になった場合は、開発銀行借換債を買った海外投資家への背任行為であり、モンゴルの信用力がさらに落ちる」という声に対しては、既に「信用などとっくの昔に消えており、いまさら信用なんて誰も(政府含め)考えていない」のではないか、と言うのです。つまり「モンゴルがモンゴルでなくなる日」(世界に対してちゃんと約束を守る国になるということ)というのは夢のまた夢であり、「やはりモンゴルはモンゴルか」(世界に対する約束よりも、政治家個人の私利私欲の方が大切というモンゴル人らしさ)というのが、その頃の現地識者の見方だったのです。私は「いくら何でも、それはないでしょ。そんなことしたら、モンゴルは本当にダメになるよ。」なーんて甘ちゃんなことを言っていたのです。反省します。私のモンゴルに対する見方はまだまだ甘いことを認めざるを得ないですね。新聞によると「同首相がIMFとの合意で進めた財政再建策への不満が解任の底流にある」とあります。大統領選のさ中に「IMFとの合意を破って子供手当を復活」させたり、その後結局選挙で人民党が負けたりで、いろいろごたごたはあるとは思っていましたが、最後は上記の予言通りになりそうです。誰が新首相になるかはわかりませんが、本気でIMF合意を破棄するならヤバいですね。為替はまた落ちていくでしょうし。
2017.09.09
コメント(2)
更に「過去の選挙では見られなかった政治的討論の低調さ、特に政党に対する批判が一般市民の一部で不満が表明された。」とあります。これは昨年の選挙時の話で、その頃私も感じましたが「どっちの政党も不人気で、今までで一番選びにくい選挙になる」ということを言っているのだろうと思います。要するに「人民党は嫌いだけど、民主党はもっとひどい」ということです。これらのコメントが具体的に各要素にどう反映しているのはわかりませんが、批判めいたことを含めてもやはり「モンゴルは選挙によって政権を交代させる制度もあるし、実際にそれは実行できた」ということが、アジアの中でも高い評価につながったのだと思います。それはそれで素晴らしいことだと、素直に認めたいと思います。ただそれでモンゴルが国として発展するのかどうかは、別問題です。以前私が「こんなにいい加減な政治家がころころ変わって、約束を平気で破るようでは、国際社会からは信頼されない。ビジネスパーソンからすれば、独裁だろうが、約束を守るカザフスタンのナザルバエフ大統領の方が信頼できるよ。」と言った時です。友人のBさんが「そこなんですね。民主主義だがまだ成熟していないモンゴルの方がいいのか、一人がなんでも決めてしまう独裁者の方がいいのか?そういう問題なんです。」と言ったことを思い出します。そういう中央アジアの国々は、一体どんな評価になっているのでしょうか?多分、スコアは良くないだろうなというのは想像できますが・・・トルクメニスタン3点で北朝鮮並みです。ウズベキスタンも同じく3で、南スーダンの4より下です。うーむ、低いとは思っていましたが、ここまでひどいとは。要するに世界最悪レベルってことです。当然4つの要素は全部最低です。タジキスタン11でカザフスタン22とやはり相当低いです。ロシアは20ですから、この間ってことです。タリバンが健在で、米軍が増兵を決めたばかりのアフガニスタンが24ですから、中央アジアはすべて戦争中のアフガニスタンよりも自由度が低いってことです。ランキング下位の多くは、アフリカ諸国と旧ソ連の国や社会主義国が多いです。上記以外では、ベラルーシ、南オセチア、アゼルバイジャンがありますし、既に書いた通り中国もベトナムも低いです。こう見てくると確かにモンゴルの85点というのは、奇跡のような数字に思えてきます。モンゴルは旧社会主義国であり、地理的な隣国は中ロや中央アジア諸国とまともな国はゼロなんですから。モンゴル人の友人のBさんが言っていたように、独裁者が開発を引っ張って経済成長させるモデルがいいかどうかは議論のあるところではありますが、ここまでの差を見ると、私は「自由なモンゴル」の方がいいと思いますし、この自由はとても大切にしなければならないモンゴルの財産のように思えてきます。参考のため、独裁で経済発展を成し遂げてきたカザフスタンのデータを見てみましょう。まず4つの要素の内訳は、「freedom Statusは自由ではない、Political Rights7、Civil Liberties5、Freedom Rating6」と、当然低いです。政治的権利の保証は40点満点中5点です。その内訳は「選挙過程」は12点満点で1点。「政治的多元性と参加」項目では16点満点中3点。「政府の機能」が12点中1点。話しにならないくらい、ひどいレベルです。市民の自由度は60点満点中17点です。こちらの内訳は、「表現や信仰の自由」は16点中4点。「連携や結社の自由」は12点中1点。「法による支配」は16点中4点。そして「個人の自由や権利」が16点中6点となっています。確かにモンゴルがこんな国になっては困ります。カザフスタンの評論も見てみます。「カザフスタンは、1991年の独立以来、旧ソ連時代の共産党カザフ支部第一書記のナルサルタン・ナザルバエフ大統領が統治してきた。通常の国会と大統領選挙は存在するものの、国際的選挙監視団から一度も自由で公平であると認められたことはない。」「メディアは国家の手にあるか、政府と親しいビジネスマンによって所有されている。言論と議会の自由は制限され、ナザルバエフに対する批判は許されず、腐敗は風土病である。」とあります。選挙が機能してないということは、当然ですが全く民主主義ではないということであり、いろいろ問題はあってもこの点はモンゴルとは大きく違います。これ以外にも「政敵の逮捕、投獄」「政府に反対しようとする人、メデアへの圧力、投獄」などいろいろ書かれています。モンゴルでもゼロとは言いませんが、政権交代がありうるので、いつ立場が反対になって逮捕されるかわからないので、最近はそういう動きも少なくなりました。日本人は私も含め、日本や馴染みのある欧米などをベースに評価しがちですが、「アジアにある元社会主義国、現社会主義国は例外なく自由のない国」と評価されているこの調査結果を見ると、例外的に高評価を得たモンゴルに対しては、もっと礼賛し、リスペクトしてもいいのではないかと思います。(完)
2017.09.01
コメント(0)
「連携や結社の自由」は12点中12点で満点。法による支配は16点中15点となっています。ここでは裁判所は独立して公平だと書かれています。減点になりそうな記述は「組織化された犯罪者集団がある」要するにやくざのことでしょう。他には「日本古来の差別問題、アイヌ問題、植民地時代からの問題(中国や半島出身者)」などがあるので、この点が問題なのだと思います。そして「個人の自由や権利」が16点中14点と2点も減点となっています。ここでも市民は個人的自由が保証されているとあるものの、問題点が指摘されています。「女性に対するセクハラ。男女別姓を認めない。国会議員など主要な地位での女性比率の低さ。」などの対女性差別問題が課題となっています。また特に外国人女性の人身売買問題も書かれています。更に本ブログでも何度か指摘している「外国人技能実習制度」という、人権を無視した半分奴隷制度みたいな外国人労働者の問題も書かれています。こう見てくると、恐らく普通の日本人男性は「え?日本は個人の自由は全然問題ないよ」なんて寝ぼけたことを言う人がいるかも知れませんが、日本人男性以外の人たちは何らかの差別や問題を感じていると考えた方がいいのかもしれません。ここを直さないと、永遠に北欧並みの満点は取れないでしょうね。と、ここまで長々と引っ張ってきましたが、いよいよ第三位の発表です。はい、ご推察の通りモンゴルで55位85点です!アメリカが51位89点ですから、大健闘と言えます。しかもその4つの要素の内訳もいいです。「freedom Statusは自由、Political Rights1、Civil Liberties2、Freedom Rating1.5」です。上記の香港やシンガポールと比べても、その差は歴然です。モンゴルのページは、台湾のような詳細分析は載っていませんが、コメントは結構あるのでそれを書きます。まず書かれているのは「1990年の平和的革命の後、モンゴルは複数政党の選挙を開始し、それ以来、選挙による民主主義として確立してきた。2大政党はその支持者との後援関係に根ざしたままであるので、広範な腐敗が開発の妨げになっている。それにも関わらず、政治的自由と市民的自由がしっかりと制度化されている。」とあります。まさに私が言わんとしていることです。この調査・分析は「ダメな政治家」を評価するのではなく、それでもちゃんと市民の自由が保たれているかを評価しているのです。この評価がアジア3位だからと言って、モンゴルの政治家が腐っていることは関係ないのです。モンゴルの政治家が賄賂まみれなのは、ちゃんとわかっているってことです。更に、2016年春に小選挙区制に移行したことや、それによって昨年6月の選挙では投票獲得率45%の野党モンゴル人民党が76議席中65議席を獲得したことが書かれています。この制度改革については「選挙監視をしているOSCE(欧州安全保障協力機構)は改革プロセスについて、急ぎすぎて不透明なものであり、新しい選挙区割りは不公平に決められた批判した。」とあります。ですが、選挙そのものは秩序ある方法で行われたとあります。また一部のジャーナリストや活動家は、新しい選挙法について不安感を抱いていると報じており、報道の自由を脅かすという主張がある、と書かれています。私は新しい選挙法の中身はわかりませんが、モンゴルでは従来よりマスメディアが政治家の影響を強く受けすぎるという批判は多いので、そういうこととも関連しているのかもしれません。(続く)
2017.08.31
コメント(0)
回りくどいですが、その前にアジア諸国を見てみます。中国は新聞にも載っていたように15点で、かなり下位です。韓国は82ですが、アメリカが89と考えれば健闘しています。以下、インド77、インドネシア65、フィリピン63、ブータン55、マレーシア44、タイ・ミヤンマー32、ベトナム20と続きます。点数と世界順位の目安は、世界50位が89点、世界100位が64点、世界150位が36点、世界200位が9点で、最下位は211位のシリアでマイナス1点。210位はチベットの1点です。シリアは戦争中ですから、非戦争状態で世界で最も自由がない国がチベットということです。こういうところにも、中国のひどい植民地支配の様子がうかがえます。ところで、GDPがアジアトップクラスで「一般的にビジネス上は自由化が進んでいる」とされている2大都市国家、香港とシンガポールはどうなんでしょうか。経済的ランキングやビジネスインフラランキングでは常に上位にいますが・・・なんと香港は61とフィリピン以下で、シンガポールに至っては51とブータン以下です。4つの要素の内訳は香港は「freedom Statusは部分的自由、Political Rights5、Civil Liberties2、Freedom Rating3.5」です。シンガポールは「freedom Statusは部分的自由、Political Rights・Civil Liberties・Freedom Ratingの全てが4」です。つまりこの調査発表は「GDP]とか「経済発展度合い」などはほとんど考慮されずに、純粋に自由かどうかだけを測っているということなのでしょう。で、第二位です。それは台湾で91点で、内訳は100点満点の国と同じくオール1です。台湾の国別講評を見てましょう。政治的権利の保証は40点満点中37点です。その内訳は「選挙過程」は12点満点で12点。蔡英文総統が選ばれ、中国からの政治的圧力があるにもかかわらず政権交代ができたことが評価されています。「政治的多元性と参加」項目では16点満点中15点です。「政府の機能」が12点中10点。市民の自由度は60点満点中54点です。なるほど、政治的権利の保証40点と市民の自由度60点を合わせて100点にしているのですね。100点の根拠がわかりました。市民の自由度の内訳は、「表現や信仰の自由」は16点中16点。「連携や結社の自由」は12点中11点。法による支配は16点中14点。そして「個人の自由や権利」が16点中13点となっています。つまり、台湾の自由度は他のアジア諸国に比べて大きく進んでいるということなのです。中国の15とは比較にならない差です。共産党支配の異常さがこういうところでも鮮明にわかります。ここまで見てくると、日本の100に届かなかったマイナス4点が気になります。で、日本も調べてみました。政治的権利の保証は40点中40点で満点です。では市民の自由度はどうか?「表現や信仰の自由」は16点中15点でこれは台湾に負けています。なぜマイナス1かは明確には書かれていませんが、いくつかの問題点が書かれています。1つは記者クラブの存在。まあ、これは政府の御用記者優先という仕組みですからね。2つ目が最近の安倍政権になってからの政府からマスメディアへの圧力についても書かれています。あと、教科書問題というか、政府与党の保守派は天皇制や第二次大戦について、左翼的な日教組とときどきぶつかる、ということも書かれています。とはいえ、基本的には日本は自由だとあります。(続く)
2017.08.30
コメント(0)
本ブログの読者は、私がモンゴルの政治家のことをこのブログでこき下ろしているのは良くご覧になっていると思います。ですが、一方ではモンゴルの民主化はかなり高く評価されているようです。敢えて解説するならば、ここで紹介する指数は制度・政治システムなどの「自由度」の問題であり、賄賂とかの「政治家」の指数ではありません。なので、政治家はひどいけど、政治システムは結構いいんじゃないかという結論になるのです。一体何の話か?日経新聞に中東の民主化の度合いがひどいという記事があり、そこで米国のフリーダムハウスによる「世界の自由スコア」というのが載っていました。その指数は最高が100で最低がゼロで、シリアのマイナス1は論外にしても、サウジアラビア10とかイラン17などが出ていました。それらとの比較として世界の主要国の数字も出います。日本96、ドイツ95、アメリカ89、中国15とあり、「へー、日本の評価は随分高いんだな」と思ったのです。更に「じゃあ、モンゴルはどのくらい?」と気になりました。で、そのサイトを探していくと、2017年度版を見つけることができました。これらのスコアはどのようにして決まるのか?詳細な計算式は全くわかりませんが、4つの要素が書かれています。まずはfreedom Statusです。自由であるかどうかの状態ということでしょうが、これは指数ではなく、自由、部分的に自由、自由ではないの3つの評価で表示されます。次にPolitical Rightsです。これは市民の政治的権利が保障されているかを7段階で表示しています。1が最高で7が最低です。次が Civil Libertiesです。これは市民の自由度を表し、4つめがFreedom Ratingで自由度を表しています。いずれも7段階で表示しています。1が最高で7が最低です。このように、freedom StatusとFreedom Ratingが何が違うのか、とか各要素を十分理解しているわけではありませんが、とにかくこの4つが要素としてあり、最終的にAggregate Scoreつまり総合指数となって100点満点で表示されるという仕組みです。もちろん、計算式などわかりませんが、取りあえずは100が良くて0がだめという理解で以下を読み進めてください。まず思ったのは「日本の96ってすごいな。ドイツやアメリカよりも上なんだ。じゃあ、どこが一番なんだろう?」ということです。大体こういう指数は常に北欧諸国が上位に来るというのはわかっていましたが・・・正解は?全くその通りでした。100点満点の国はノルウェー、フィンランド、スウェーデンの3か国でした。上記の4つの要素で言うと、freedom Statusは自由、Political Rights・Civil Liberties・Freedom Ratingの全てが最上ランクの1です。ですが、上位3国と同じように「freedom Status、Political Rights・Civil Liberties・Freedom Ratingの全てが1」という国は日本も含め40以上もあるのですが、総合指数は100に届かない国が多いのです。日本の96は15位ですが、4つの要素評価は上位国はどこも最高評価なので、ほとんど差がないと考えていいでしょう。97以上の国はほとんどヨーロッパの国で、ヨーロッパ以外ではカナダ99、オーストラリア・ニュージーランド98と旧英国連邦の国です。アジアでは日本が一番で、第二位はどこか?(続く)
2017.08.29
コメント(0)
2013年4月24日付け本ブログ「「えっ、北朝鮮って友好国なの?」(https://plaza.rakuten.co.jp/mongolmasami/diary/201304240000/)は、ブログに載せてから4年以上も経つのに、今も訪問者が結構来ます。今のモンゴルの若い人にとっては、世界中の嫌われ者である北朝鮮がまさかモンゴルと友好国と見られているなんて、思いもしないということを書いたものでした。その後の北朝鮮の世界での益々の孤立化はご存知の通りで、特に最近はさすがの中国も相当頭に来ているようで、国連の制裁決議にも賛成しました。北朝鮮にとっては、石炭のみならず鉄鉱石なども禁輸扱いとなり、より一層外貨獲得を必死で考えないといけない状況に陥っています。そんな北朝鮮にとって、まだモンゴルは友好国なんでしょうか?そんな折、面白いニュースに目が留まりました。それによると、モンゴル政府高官と北朝鮮の高官がアジア太平洋地域民間航空会議で会談をしたとのあります。その会議は40カ国・12団体の合計400人の民間航空代表者が出席しているようで、会場はなんとウランバートルのシャングリラホテルです。シャングリラのお陰で、国際会議を誘致しやすくなったのは確かでしょう。その席で、北朝鮮側は1978年に署名した航空協定の更新とモンゴルにおいて北朝鮮の飛行管理者の訓練を要請した、とあります。世界中が「北朝鮮制裁モード」になっているこの時期、中国はもちろん、クアラルンプールでの金正男殺害事件後、急速に関係が悪化したアセアン諸国にも頼れない北朝鮮にとって、恐らく最後に残された唯一の「友好国」がモンゴルだということなのでしょう。数年前にエルベグドルジが訪問した時に金正恩との会談をドタキャンしたくせに、しゃあしゃあと要請してくるわけです。民間航空管理者の訓練を要請とあります。当然、先生はモンゴル側で生徒が北朝鮮だということはわかります。でも具体的に誰が先生になるのでしょうか?この流れではMIATですよね?つまりMIATが先生だということです。フォーブスで世界の航空300社中299位にランクされたMIATが先生です。(ちなみに300位は、当時戦争をしていたアフガニスタン航空でしたから、実質的に世界最下位ということでしょう。)そういう意味では、MIATの生徒になりうる唯一の国が北朝鮮というのは、まあ納得できます。更になんとピョンヤン(平壌)とウランバートル間の直行便の開設まで言及しているそうです。直行便を飛ばして、少しでも外貨建て航空収入を増やしたいのが見え見えです。本当にそんな話に乗るんでしょうか?私から見ると、モンゴルは随分安く見られているんじゃないかという気がします。中国もダメ、東南アジアもダメ、資源輸出もダメ・・・八方ふさがりの中、今まで大してモンゴルに対して友好の姿勢を示してこなかったくせに、外貨目当てに言い寄ってきているとしか思えません。これだけ世界が制裁の実効性に注目しているのですから、モンゴルはその場で「きっぱりと」断るべきだったと思います。どうなんでしょうか、もしかして世論を無視して「やってやるか」という政治家がいてもおかしくないのがモンゴルです。北朝鮮はそういう「発展途上国型の政治家」を操るのは上手そうですし、そういう手に乗りたがる政治家がモンゴルにいるのも事実ですから。いずれにしろ、あの北朝鮮からこの時期にお声がかかるんですから、やはりモンゴルは「友好国」であることは間違いありませんね。若いモンゴル人は納得しないでしょうけど。ただ、日本のODAで作った新空港に「北朝鮮高麗航空直行便就航!」なんて、皮肉以外の何でもないです。
2017.08.16
コメント(4)
7月13日の本ブログで、外国の記事で「北朝鮮制裁のお陰でモンゴルが儲かる」というような趣旨が載っていたと書きましたが、やはり本当のようです。モンゴルの新聞でもそのことを認めています。 モンゴルの新聞によると、北朝鮮の石炭に対する中国の輸入禁止のお陰で、その減少分を埋めるために2016年の10.4百万トンから79.5%もモンゴルから中国への輸出が増えたとあります。この記事の文章からすると、昨年1年分よりも8割も多い石炭が既に中国に輸出されているということでしょう。ということは、今年全体でいえば昨年比2倍どころか3倍近くになるのではないでしょうか?確かにこれは、厳しいモンゴル経済には恵みの雨かもしれません。 そしてこの北朝鮮制裁の好影響を受けているのは、モンゴルだけでなくロシアもそうだとあります。確かにロシアも資源輸出国ですから、そうなんでしょうが、この2か国からの輸出が急拡大したということは、やはり北朝鮮からの輸入はかなりの量があったということでしょう。 中国側の統計でも、この2国が最も大きな好影響を得ているとあります。中国側の統計によると、モンゴルからの先月の石炭輸出は371万トンで前年比58.9%増で、ロシアは257万トンで前年比41.7%増です。確かにすごい数字です。この2国だけで600万トンということです。 日本の石炭輸入量は年間約1億8千万トンですから、月に約1500万トンと推定されます。その3分の1以上に相当する量をこの2か国から輸出しているわけですから、結構なボリュームです。 それでも中国の先月の石炭輸入量は昨年8月以来初めて前年を割っているということですから、北朝鮮ギャップはまだ埋め切れてないということなんでしょうか?逆に言えば、まだモンゴルからの輸出を増やせるチャンスもあるということも言えます。 実は中国政府は5月に「外国産の低品質石炭(通常は発電用)輸入を5-10%減らせ」との通達を出しているようですが、現実には中国のこの夏の猛暑や少雨による水力発電不足によって、石炭による火力発電の需要は増えているんだそうです。なので、モンゴル石炭への需要増加はしばらくは続きそうです。 不思議ですね・・・ トランプの当選とモンゴル経済のつながりなんて、きっと誰が考えたってわからなかったでしょう。トランプ大統領と習主席のやり取りが、一見関係ないモンゴルに影響を与えるという事実というかグローバル化に驚きです。
2017.07.26
コメント(0)
風が吹けば桶屋が儲かる、ではないですが、一見無関係に見える事象が、深いところでつながっているってことがあるかもしれないという話です。 登場人物ではなく、登場国は北朝鮮、インドと中国、ベトナムです。で、その影響がモンゴルにはプラスになるかもしれないということなんですが・・・これだけでは想像もつかないでしょうね。まず北朝鮮ですが、トランプ大統領が中国をプッシュしたせいかどうかはわかりませんが、北朝鮮から中国への石炭輸入はこの春にストップしました。そのニュースは知っていましたが、ある外国の記事を読んでびっくり。その穴埋めに、モンゴルからの石炭輸入が増えるだろうとあったのです。北朝鮮がどのくらいの量を輸出していたかは知りませんが、その程度のもがモンゴルの輸出にインパクトがあるのかどうかわかりません。まあ、ないよりはいいでしょうという程度でしょうか?インドというのは、牛肉です。私たち日本人からすると、世界の牛肉輸出国と言えばアメリカやオーストラリア、更にはカナダ、ニュージーランド辺りかなと思うのですが、なん牛肉の輸出世界一はインドなんだそうです。ちなみに世界第二位はブラジルです。インドの牛肉?これは意外でした。確かヒンズー教では牛は神様じゃなかったっけ?確かにその通りで、インドの牛肉はほとんどが輸出用なんだそうです。テレビ等で見るインドの牛は、ちょっと痩せ気味の水牛のようなイメージですが、それはその通りで、主に水牛の肉を輸出するんだそうです。で、想像通りというか、さすがに肉としての品質は低いらしく、先進国には輸出していません。主な輸出先は、アフリカやアジア。アジアでは、中国とベトナムへの輸出が多いようです。そのインドで、さすがにヒンズー教の神様を輸出用とはいえ食用肉を売るのはけしからんということになり、輸出が大幅に制限されることになったんだそうです。なんせ世界一の輸出国ですから、その影響は大きいようです。で、アジアの2大インド牛肉輸入国である中国とベトナムが、モンゴルの牛肉輸入をその代替にしようという動きがあるようです。なるほど、そういう背景があったのかと合点がいきました。というのは、ちょっと前にベトナムの政治家がモンゴルに来た時に、今後の期待できる貿易品目に牛肉が入っていたからです。その時は「モンゴルからベトナムに牛肉?なんで?」と思ったのですが、こういう背景があったのでしょう。肉の品質や口蹄疫の問題などで、EPAを締結したとはいえ当面は対日輸出は難しいでしょうが、中国やベトナムが受け入れるというなら、それは遊牧民にとっても朗報と言えるでしょう。それにしても、核問題の北朝鮮、牛が神様であるヒンズー教の国インドと、一見関係なさそうな国の出来事がモンゴルにも関係するというのは、まさにグローバル時代なんだなあと思う次第です。
2017.07.13
コメント(0)
前回1月10日の本ブログで「エルデネバト首相が3月の借金返済は大丈夫と言ったけど、本当なのだろうか?本当ならその返済方法も発表すべき」というような内容の記事を書きました。まるでその「アンサーソング」かのようなモンゴルのニュースが載っていたのでです。それはエルデネバト首相が借金返済は大丈夫と言った件についてのコメントです。「モンゴルは現在、経済成長の減速、MNT2.6兆への予算赤字、外国投資の大幅な減少などの重大な状況に直面している。 モンゴルの対外支払を可能にする能力は、IMFや日本などの国際機関からの資金援助や融資を受けることができるかどうかにかかっている。 モンゴルは、IMFや日本から15億ドルの援助を受けることを期待している。 来月に援助が来るとすれば、国は3月に借金を支払うことができる。」とありました。これはモンゴル国内のニュースです。つまり、首相は「解決策が見つかった」とか「大丈夫」とか言っているけど、何のことはない、単に「期待している」だけのことのようなのです。もちろんモンゴルの政治家のいい加減さは、前から重々知ってはいましたが、この通りであるとすれば単なる「希望的観測」であって、なんら確約されたものではないということです。それにしても、このニュースの中で日本が大きく期待されているのがわかります。簡単に意思決定できる中国に期待しているならわかりますが、そんな話が話題にもなっていない日本で本当にそんな意思決定はできるのでしょうか?もちろん、こうしたモンゴル関連の「非合理的な意思決定」については安倍さんが関与するに決まっていますが・・・どっちにしても、まだまだ簡単には「大丈夫です!」とは言えないようです。それがわかっているからこそ、市場もエルデネバト首相の発言に何の反応もしないということでしょう。
2017.01.16
コメント(4)
今年から日本に輸入され、スーパーのいなげやなどで売られているということは、以前から何度かこのブログでもお伝えしてきました。あの日本への輸入されたのと同じものが、韓国でも発売されたそうです。モンゴルではゴイ(goodという意味)という名のブランド名(モンゴルでは有名です)ですが、この名前で日本と韓国に輸出しているということです。なかなかモンゴルからブランドのついた消費財が輸出されているという例は少ないですが、こういう事例はどんどん増えていくといいですね。日本でも結構「モンゴル好き」「モンゴル通」と思われる方でも、日本のスーパーでモンゴル産のジュースが売られていることはご存じない方が多いようです。250ml300円と、ちょっと高いですが、近くにいなげやがある方は手に取ってみてください。スタートも大変ですが、日本市場では棚の維持も大変なので、是非とも継続されることを願っています。
2016.11.26
コメント(0)
カザフスタンのナザルバエフ大統領が来日していました。例によって安倍首相と会って「資源分野での一層の協力」「ユーラシアの中心にある国との重要な関係」などと言いながら握手していました。内容だけ見ると、モンゴルの首脳と会う時と大して変わらない内容に見えますが、実効性はどうなんでしょうか?これは私のイメージだけかもしれませんが、同じように「資源分野で協力しましょう」と握手しながら、過去からほとんど実績らしい実績がないのがモンゴルで、カザフスタンは意外と具体的な案件が進んでいるように感じます。イメージだけなのかどうか、ちょっとデータを見てみます。2国間の「交流」と言う意味では、圧倒的に日本とモンゴルの関係の方がカザフスタンより強く見えます。例えば、在モンゴル日本人数は外務省によれば468人ですが、カザフは153人。在日モンゴル人は7,698人いるのに対しカザフ人は307人。カザフの人口がモンゴルの5倍以上であることを考えると、相当な差です。ですが、実利と言うかビジネスとなると違います。日本からモンゴルへの輸出額は303億円に対してカザフへは701億円です。これは人口やGDPの差を考えれば、こんなものでしょう。問題は日本への輸入です。当然日本向けに大きな金額があるとすれば資源でしょう。カザフから日本へは798億円と日本側の輸入超となるほど輸入しているのに対し、モンゴルからはなんとたったの65億円です。カザフからの10分の1以下です。もちろんカザフだって内陸国ですから、モンゴルが条件的に非常に不利と言うわけではありません。これは私の全くの個人的見解ですが、過去例えば10年ほどの間にモンゴルともカザフとも資源開発の話題は結構ありました。が、モンゴルの場合はほとんどが「話だけ」だったり「何度も変更したり」で、結局まともな資源開発ビジネスにはなっていないのに対し、カザフの場合はそのうちのいくつかが実際の商談になり、それが貿易実績として表れているんだと思います。以前テレビでカザフのことを見た時、輸出も輸入もまだ中国が一番と言うわけではないですが、中国に傾注するのを恐れているということを言ってました。ですので、日本との貿易も現実問題として大事なんだと思います。一方、モンゴルは口では「第三の隣国が重要」などと言いながら、結局目の前の金しか見ていないので、中国比率が異常に上がり、輸出相手の90%近くになっているのに大した危機感がないのです。賄賂も考えると、中国大好きモンゴル人政治家が多いことの表れでしょう。ここでいつも考えさせられるのが、「未熟な民主主義」と「国民を豊かにしてきた独裁者」とどっちがいいかという問題です。1991年の民主化直後は、モンゴルもカザフも非常に苦しい時期を経験し、ともに貧しい国でした。民主主義のモンゴルは、ご存知の通り年がら年中政治家の身勝手さに振り回され、経済は停滞しています。政権交代があれば「前政権の約束したことなんか知らん!」というのも何度もありましたから、外国投資家からするといつも疑わざるを得ません。他方、カザフは長年ナザルバエフの独裁ですが、その強烈な指導力により国は発展し、対外貿易も発展させてきました。以前、モンゴル駐在の日本の商社の方に聞いたことがあります。その方は、モンゴルに赴任する前はカザフ駐在だったのです。「モンゴルとカザフとではどちらがビジネスをやりやすいですか?」と聞くと、即答で「そりゃあ、カザフですよ。」と言いました。その理由は、カザフはビジネス的に信頼できるが、モンゴルは信頼できないからだそうです。モンゴルはご存知の通り、首相が変わったり、大臣が変わったり、また政権交代があるたびに過去の約束を平気で反故にしてきました。なので、外国から信頼されてないのです。他方、カザフは独裁なので、一度大統領が約束すれば、その約束は守られるのです。もう一つは賄賂です。カザフもいろいろ対策しなければならないことはあるようですが、それは大統領レベルで決まれば、後は官僚や役人たちもそれに従います。ですがモンゴルは、上で決まっても下は下で欲しがり、小さな窓口の担当者も含めほとんどすべての対応者が何かを求めて来るので、対応しきれないと言ってました。未熟で不透明な民主主義が独裁国家に勝てるようになるのは、いつになるんでしょうか?カザフついでに、もう一つ。カザフの新車販売のデータです。新車販売のデータなんて、ほぼすべての国に存在しますが、モンゴルにはないのです。こんなデータすらまだ整備されてないってことなんですね。まずはメーカー別で、今年1-9月の販売ランキングです。1位がLadaで月平均676台。2位はトヨタで655台。以下、ルノー、ヒュンダイ、キアと続き、日産が9位で122台です。Ladaはやはり旧ソ連だからなんでしょうか?モンゴルではLadaの新車は今はほとんどゼロでしょう。あとルノーが強いのは意外です。モンゴルでこうしたランクがあるとしたら、トヨタ、日産、ヒュンダイ、ベンツくらいの順番じゃないでしょうか?もちろんトヨタは過半数のシェアでしょう。次は車種別で、同じく1-9月の販売ランキングです。1位はなんとカムリで月平均250台。2位はLada Prioraで248台。以下、Lada 4X4、GAZ Gazelle、ルノー・ダスター、ヒュンダイ・アクセントと続き、トヨタ・プラドが11位で106台、RAV-4が12位、ランドクルーザーが13位です。レクサスのLXは29位、RXは38位などと続きます。モンゴルでの今の「新車」販売では、おそらくトップがランクル、レクサスLX、あとはベンツのGクラス、ヒュンダイのセダン系あたりが続くのではないでしょうか?なんせ公式のデータもなく、中古車比率が90%以上なので、なかなか実態は見えませんけど。中央アジアで先頭を走るカザフスタンですが、モンゴルとの類似性もあるのでいろいろ参考になることが多いのではないかと思います。
2016.11.09
コメント(0)
日経新聞の「習近平の支配」という特集が続いています。その記事自体は、特に目立ったことが書かれているわけではありませんが、私にはどうしても気になるポイントがありました。 例えば、10月20日の記事。ここには一国二制度のことが書かれ、香港で実施されているが実は台湾と将来統合するための知恵なのだということが書かれています。ですがこのせっかくの知恵が、最近の香港の状態からして、「高度の自治」とはとても言える状態ではない、というものです。 なので、共産党政権を脅かす存在として、香港も考慮に入れないといけないというわけです。ここからの記事が私には気になりました。 「著名な中国専門家、米ジョージワシントン大学教授のデービッド・シャンポー(63)は、中国政府と大きな対立を引き込む恐れがある不安定な地域として、新疆ウイグル、チベット、台湾に加え、香港を挙げた。」と書かれているのです。そうです、内モンゴルなんてどこにも書かれていません。つまりもうモンゴルについては、領土問題や民族問題として考える対象ですらないってことなんです。 うーむ、これは嬉しいことなんでしょうか?もう完全に漢人からは「モンゴル人は完全に我々漢人の傘下に下った」と安心されているような気がして、ちょっと違和感を感じた次第です。実際、内モンゴル人の人たちは口では「もう中国なんか嫌だ」などと言うこともあるでしょうが、それは全く伝わっていないってことです。 これは中国外部からの見方です。では内部的にはどうなんでしょうか?10月22日の記事には例の「中華民族復興の夢」が載っています。ここには、中華民族が偉大な復興を遂げることに加え、新型大国関係と核心的利益が書かれています。新型大国関係は習主席が何度もオバマ大統領に「太平洋は米中両国を受け入れる十分な空間がある」と言いながらも、全然相手にされてない、あのフレーズです。 そして核心的利益についても解説してます。中国が絶対に譲ることのできない利益のことで、独立問題を抱える「台湾」「チベット」「ウイグル」に「南シナ海」が加わった、と書かれているのです。ここにも内モンゴルのことは書かれていません。「チベット」「ウィグル」は現在は中国の領土であるにも関わらず、「いつか独立するかもしれない」「外国から干渉されたら、分離してしまうかもしれない」という危機感があるからこそ、核心的利益に入れているのでしょう。 つまりここでも内モンゴルは、漢人にとっては「ありえないでしょ?」「そもそもそんな危機感を感じることは全くない」という証左ではないかと思います。 外部からも「内モンゴルの問題」なんて全く見えないし、内部からも「内モンゴルには誰も危機感を持っていない」ということです。簡単に言ってしまえば、内モンゴルは超安全パイというか、早い話が舐められているだと思います。その遠因にはモンゴルという国自体が、中国から見て「恐れるに足らず」という存在なんじゃないかと思います。 別に喧嘩しろとか、テロを起こせと言っているのではありません。が、領土問題、民族問題で内外から話題にもならないほど安心な内モンゴルは、多分この先50年100年はモンゴルと一緒になることはないんだろうなと、これらの新聞を読んで感じました。
2016.10.23
コメント(0)
リオ・オリンピックでは、日本チームのメダル数が随分多いなあと感じてます。とはいえ、別に過去の記録を調べて比較しているわけではないので、正確にはわかりませんが、メダル獲得数が今のところ世界第3位だとか、金メダルもロシアやドイツより上の3位だとか見ると、そんなに多かったっけ?と思う次第です。ですが、まだ日程的にはちょうど半分というところですから、この先どうなるかわかりませんけど。ただ、今までの獲得競技を見ると、今後は順位は下がるんだろうなとは思います。今日のニュースで「男子柔道、全階級メダル獲得!」というのを見ました。柔道は全部で7階級もあって、そこで全て銅メダル以上を獲得したってことです。女子柔道も5つ獲得で、柔道だけでなんと12個も獲得、つまり日本の全メダル数の半分が柔道ということなのです。お家芸とはいえ、一つの競技で12個はすごいです。これを見ると、「お家芸」とか「絶対金メダル」の競技を持っている国は強いとは思いますが、団体競技は非常に不利なんだなと感じました。例えば、サッカー。オリンピックのサッカーが本当の世界一かどうかの話は置いておいても、1チーム11人、いや選ばれたメンバーは20数人でしょう。そしてサッカーは間違いなく、世界の超メジャースポーツです。これで優勝できるのは素晴らしいことだと思いますが、優勝できても金メダルは1個です。男女合わせても2個。柔道の男女合計14個とはずいぶん違います。言葉としては「柔道王国」も「サッカー大国」も似たような響きですが、14個と2個の違いがあります。更に、銀や銅を入れれば、男女合わせて42個用意されているメダル競技と6個しかない競技とは、開始前の時点で36個も違うわけです。水泳に至っては、男子だけで22個、女子は24個、合計46個もの「金メダル」が用意されています。もちろん、同じ個人が全部獲得できるわけではありませんが「水泳王国」と呼ばれる国には、メダル数獲得レースでは圧倒的に有利でしょう。どんなに人気のサッカーでも、たったの2個なんですから。陸上競技も男女合わせて47個もあり、水泳を上回っています。陸上、水泳で93個もあるわけです。メダルという意味では、279個も提供されます。それに対して、サッカーとバスケットとラグビーとハンドボールとホッケーは、これら5団体競技の男女の金銀銅全部足しても、水泳競技一種に遠く及ばない30個しかありません。団体教溥儀ですから、参加人数はすごい数でしょうけど。こう見てくると、もし国が「メダルの獲得数を増やす」ことを大きな目的とした場合は、サッカーとかバレーボールとかに力を入れるよりは、メダル数の多い競技に力を入れるほうが効率的だということになります。ですが、この陸上と水泳の2大競技はアメリカが強く、なかなか簡単にはメダルを増やすというわけにはいかないのでしょう。そうなると、この2大競技以外でメダル数の多いところに強い国が有利となります。その視点で競技を見ると、同じ競技でも「体重別」「種目別」が多いほうが、可能性が高いことが挙げられます。前者の例は、まさに柔道、そしてレスリングでしょう。後者の例は、体操でしょう。意外なところでは、後者の例として自転車があります。男女合わせて、18個も金メダルが用意されています。日本は上記に挙げた男女各1個しかない5つの団体競技ではとても金メダルを獲得できるとは思えませんが、数だけを言うなら「ま、そういう競技は取れなくても構わない」といったところなんでしょうか。こうして見ると、アメリカ、中国は別格でしょうが、日本以下の国のメダル獲得数競争は、要するに「たくさんのメダルが取れる競技に強いかどうか」もっと言えば「たくさんのメダルを取れる競技をオリンピック種目に取り上げられるかどうか」にかかっていると言えるでしょう。もし柔道がオリンピック競技から外れれば、日本は相当メダル獲得順位は下がるでしょうし、野球を認められたとしても、日本のメダル獲得数にはほとんど影響はないということです。むしろ、「体重別」が期待できる空手のほうがずっと数での貢献という意味では大きいでしょう。モンゴルはこの点で言えば、ポテンシャルは持っています。モンゴルが団体競技でメダルを取る可能性は、向こう何年にわたっても相当可能性は低いと思いますが、個人競技には期待が持てます。現に、過去も柔道やレスリング、射撃などで実績があります。この中では、格闘技以外では射撃の可能性がありそうです。射撃競技は金メダルが15個と意外と多いのです。もちろん、最近もモンゴル人女性によるメダル獲得があった分野です。本当は馬術も可能性はあるとは思いますが、種目数は少ないうえに、モンゴル的ではない、欧州的な馬術技術を競う競技のようですから、難しいでしょう。ちなみに、野獣こと日本女子柔道の松本選手を破ったモンゴルのドルジスレン・スミヤさんは銀メダルでした。日本語の報道では「ドルジスレン選手」という記事もありました。ま、仕方ないですが、これはお父さんの名前なんですよね。ただ、英語の報道でも「ドルジスレン・スミヤ」と「スミヤ・ドルジスレン」の両方がありました。この辺の扱いはモンゴル人はちょっと難しいですね。この場合は「姓がドルジスレン」で「名がスミヤ」という扱いなんですが、実はモンゴル人自身もその表し方に戸惑っているように見えます。モンゴルでの名刺の表記でも「スミヤ・ドルジスレン型」と「ドルジスレン・スミヤ」型の両方があるのです。なので、私はわかりにくいときは最初に確認することにしています。(モンゴルでは姓、つまり苗字=お父さんの名前では相手を呼ばないのです。呼ぶときは、名で呼びます)柔道は終わったので、今後モンゴルがメダルを期待できる競技としてはレスリングと射撃となるでしょう。日本のテレビで放映されるかどうかはわかりませんが、ネットなどでモンゴル勢の結果をチェックしていきたいと思います。
2016.08.13
コメント(0)
スロバキアは若い国です。なんせ1993年にチェコから分離独立したばかりの国なのです。東欧の旧社会主義の国には、ソ連崩壊後苦しんだ国も多いようですが、この国は経済的にも順調に発展しているように見えます。(一人当たりGDPは2万2千ドル)ですが、新しい国であることの辛さを垣間見たような思いになったのが、国立自然博物館に行った時のことです。同じ新しい国といっても、どこかの国の植民地であった場合は、国そのものの形は継続しているでしょうが、この国の場合は首都さえなかったわけですから、新しさも格別です。普通は首都にはあるであろう博物館などもゼロから作らねばなりません。民主化直後ですから、資金も枯渇していたことでしょう。この自然博物館もそのようです。入ってすぐにこの博物館の説明が書かれていましたが、ともかく資金がなく、買えるものを何でも買った、とありました。買った金額も出ていて、大体毎年1000万円くらいの範囲だったようです。これでは個人のコレクターよりも少ない予算かもしれません。1階の展示場に入って驚きました。なんの脈絡もなしに、とにかく買い入れたものを展示しているという感じなのです。具体的に言うと、入り口にはまずライオンやトラなどのはく製(?)が登場します。私は驚いて「スロバキアには元々ライオンやトラがいたのですか?」と聞きましたが、残念ながら入口の説明員は英語はわからないようでした。入ると、今度は楽器や楽譜があります。なるほど、音楽が盛んだったのかと思うと、その隣にはなんと人骨が。さらにその隣には、動物の骨。その隣には、昔の武器。今度は昔使われていたであろう、道具類。鍋釜などの家事をする道具です。すると今度は装飾類も。ボタンのコレクションみたいだったり、櫛だったり。食器類もありました。そしてなぜか今度は魚の標本?要するに分類分けなど全くなく、とにかくこの地域に関するものなら何でもいいから買っておいてあるという感じなのです。最初は「こんな支離滅裂な展示時方法見たことないな」と思いましたが、壁に書かれていた文章を読んで「いかに低予算の中、この地域に関するものを集めるのが大変だったのだろうか」と思いを馳せるようになりました。本来は、この地域にも立派な歴史があり、いろんなメッセージを伝えたいところでしょうが、貴重なコレクションは既に外国に渡ったり、個人のコレクションにあったりして、とても手が出ないのでしょう。もしかしてチェコの方にはあるのかもしれません。自国の歴史を示すという当たり前の行為すら、新しいく誕生した国にとっては大きなハンデなんだなと思ったわけです。仮に、今日突然、内モンゴルが独立したらどうなるか?歴史を物語る多くのものは中国によって破壊されたでしょうし、あったとしても貴重なものであれば漢人の手に渡っているでしょう。そんなことを考えてしまいました。おそらく観光産業はこの国の重要な政策ではないかと思います。その理由は、旧市街の在り方です。この首都の旧市街(昔城壁に囲まれていたであろう地域)は、どこへ行くにも1km以内で歩けるような小さなエリアです。ここは早朝などを除き、ほとんど終日歩行者天国のようになっています。街の中には原則として車は入らないようです。(一部の住人は例外)なので、歩行者は本当に気楽に石畳の道を歩きます。そしてその路上にはカフェやレストランの椅子とテーブルが並びます。歩道という概念がない(車道がないので、歩道もない)ので、歩道との段差もなく、道の両脇はレストランの椅子とテーブルに埋め尽くされたかのようです。夕方以降は、どこも客でほとんど満席です。正確に言えば、店内部は空いているというよりはガラガラですが、外の部分は多くの人たちで賑わっています。そして不思議なほどの「安全」感覚があります。世界中、どんな街に行っても飲食が集中している地域があります。夜ともなると、人々が集まってきて、安全そうな有名レストランもあれば、ちょっとやばいかな、と思えるような店もあります。ここは地元の人しか行けないかな?という店もあります。ですが、この旧市街にはそういうリスク感覚がほぼゼロなのです。ちょっと不思議な感覚です。あまりに多い客を見て、当初私は「この人たちは地元の人?観光客の方が多いのかな?」などと思いましたが、よくよく観察しているとほぼ全員観光客だとわかりました。そして「異常」なまでの安全感覚。諸外国でこんなに「リスク」を感じない、ある意味「猥雑さ」がゼロの街は初めてです。健全で安全な状態が深夜まで続くのです。私はこの感覚はどこの街にも似たところがないと思いましたが、あえていえばテーマパークです。もっと具体的に思い出せば、ハウステンボスでしょうか。長崎県にある、オランダやヨーロッパの街並みを再現した人気スポットです。ハウステンボスに入ってしまえば、誰だって「この街は一人歩きでは危ないかも?」なんて思いませんね。人工的に作られた街でもあり、リスクや治安を気にする人はまずいないでしょう。それはディズニーランドも同じです。この旧市街は、そんな感覚に近いのです。試しに、夜、旧市街から出てみました。わずか50m離れただけで、普通の街の夜の感覚を感じました。人々は当然地元の人たちでしょうし、いい店もあれば入りにくそうな店もあります。バーでぼったくられたとしても「それは自己責任でしょ」と言われてしまいそうな雰囲気もあります。この首都の名誉のために言いますが、決して他国より怖いということはありません。とても健全です。が、それはあの旧市街地内のような「異常な安全さ」とは違う「普通の安全な街」といえます。なので、観光客は子供連れも含めて安心して街の中の散歩もできるし、どのレストランやバーに入っても安全といえるでしょう。政策として完全に観光地化させてるなと思えるのは、普通の人が普通に買い物する場所がないことです。スーパーマーケットもないし、洋服屋さんもほとんどありません。ヴィトンなどのブランド屋さんもありません。もちろん、それらはこのブラティスラバには存在するでしょうが、この閉鎖的な旧市街にはないのです。建物も、一歩この旧市街を出ると、近代的なビルディングやショッピングセンターなどがあります。旧市街地にあるのは、ほぼ飲食店と土産物屋さんだけと言っていいほどです。(あとは薬屋くらい)旧市街地内ではすべての店が路上に椅子とテーブルを置いて営業していますが、一歩この旧市街地を出れば「車道も歩道もある普通の状態」なので、歩道上の飲食店の椅子やテーブルは皆無です。おそらく規制されているのでしょう。なるほど、こういう観光地化というのがあるのかと驚きました。街全体を本気でテーマパーク化したということです。まるで手入れの行き届いた箱庭のようです。地元民には不便さもあるでしょうが、オープンカフェやオープンレストランが大好きなヨーロッパ人観光客を獲得するための手段としては、簡単には真似されない戦略だなと思いました。
2016.07.28
コメント(0)
少し前の日本の英字新聞Japan Timesにモンゴルの水力発電所の記事が出ていました。前回の本ブログの記事はソーラー発電、今回は水力発電と、確かにモンゴルの電力問題は重要な課題なのです。要すれば、モンゴルが真の独立国家となれるか、ロシア(旧ソ連)のくびきから自由になれるかどうかの問題なのです。社会主義時代のソ連は、社会主義諸国を国として自立できないように、国の存続に必要な全機能をあえて各国に持たせずに、国ごとに分散させていました。例えば、農業国が「工業化もやりたい」と言っても、その国には農業しかさせず、工業製品は社会主義の他国から(もちろん、一番いいのはロシアです)輸入しろと。逆に工業国が農業も強化しようとすると、農業は他国に任せろといった具合です。それはエネルギー政策でも顕著でした。民主化後四半世紀を過ぎているのに、ウクライナは未だに冬のエネルギー供給に怯えています。これが単なるロシアからの「脅し」でないことは、実際にエネルギーをストップさせたニュースを見ればわかります。モンゴルも同じ状況なのです。モンゴルにとっての「エネルギー」とは、電力と石油です。K先生(現在中央銀行ボードメンバー)からこんな話を聞きました。「モンゴルだって、なんでも自分でやりたかったのですよ。電力だって、もっと発電所作りたかったし、石油だって自国にあったのですから、生産したかったですよ。でも、全部ソ連に拒否されたのです。一人前の国にさせないために、です。」と。例えば石油生産。モンゴルは資源国であり、実は石油の埋蔵もあるのです。現在、モンゴル東部で原油生産を行っていますが、それは原油のまま中国に輸出しているだけで、ガソリンのほぼ100%はロシアに頼っています。なぜか?他の社会主義諸国と同じように、重要な施設の意思決定はすべてモスクワで決められました。ロシア人がやってきて、モンゴルにある資源探索を行ったときに有望な石油埋蔵を見つけたのです。ですが、ロシアは原油の生産だけを行い、精製所は作りませんでした。もちろん、生産された原油はそのまま直接ロシアへ持っていかれてました。中露関係が険悪(戦争勃発か?)となった時、ロシアは将来モンゴルが中国に占領された時にこの原油採掘所が中国側の手に渡ると困るので、なんと採掘再開が困難になるほどこの採掘所を破壊してしまったのだそうです。ちょっと信じられませんね。なので、民主化後もすぐには原油採掘はできず、再開にかなりの時間とお金がかかったようです。石油精製所もないので、掘ったらそのまま中国に送っているだけなのです。ようやく一部に石油精製所を建設しようという動きはあるようです。実現には、中国、ロシアの同意が不可欠なので実現するかどうかはまだ不明ですが。で、今回の水力発電です。電力もロシア依存度が大きく、ウクライナの例を見るまでもなく、真冬のモンゴルに電力を止められたらどうなるか・・・想像しただけでも恐ろしいシーンが浮かんでしまいます。現在ある発電所に加え日系企業と組んで火力発電所を建設中ですが、これはウランバートルだけで消費されるでしょう。モンゴルとしては、地方の需要を賄うべく、モンゴル北部に水力発電所を計画していたのです。これには中国からの融資もついており、あとは建設するだけだったのですが、ロシアからいちゃもんがつきました。もちろん狙いは「モンゴルをロシアの電力なしでは生きられない国のままにする」ことです。表向きの主張は「この発電所をつくると、世界有数の透明度を誇るバイカル湖の環境悪化につながる懸念がある」というものです。その代わりに「エネルギーの安定的供給及び供給量の増加」を提案しています。要するに現状維持のままってことです。モンゴル側は「そもそも建設予定地のエグ川は国境を超える川ではない」と、これは環境問題ではなく政治問題だと主張します。実際地図を見ても、フブスグル湖の南側に川はあるわけで、いかにも無理やりロシア側が問題化しているように見えます。中国側もこれが環境問題ではなく政治問題だと分かっているようで、ロシア側が文句を言うなら手を引く姿勢をとっています。つまり、融資はしないということです。こうなると、残念ながらモンゴルは何もできません。モンゴルの高官は「我々は独立した国なのか、あるいはロシアと中国の操り人形であるかどうかを知る必要がある。」「私たちが建設を諦めた場合、それは西側の国々から見ると、モンゴルはロシアや中国の許可なしに何もできない国であることを知ることになる。」と述べています。現在、中ロはともに世界から孤立しつつあるという点で接近していますから、実現の道のりは難しそうです。モンゴル高官はこうも言ってます。「どうなるかはロシア側の手にある。我々は常に冬に電力供給遮断の恐怖を持っているのです。」と。なんだかやくざ者に一度でも頼ったら、一生その関係を断つことができない、みたいな話に聞こえてしまいます。唯一の解決策は、日本など西側諸国が発電所建設資金を出すことでしょうが、民間金融機関はまず無理ですし、政府系も大きすぎて無理でしょう。ロシアのくびきからなかなか抜け出せないモンゴルです。
2016.07.22
コメント(0)
連日、日本の新聞ネタで申し訳ありません。が、連日なんらかのモンゴル関連のニュースが流れているのです。まずは、ASEM関連です。正直申し上げて、このASEMという会議体のことはモンゴルで開催されるというニュースを見るまで全く知りませんでした。日本では過去のテレビのニュースにもほとんど出てこなかったんじゃないかと思います。アセアンとか東アジア首脳会議とかG7,G20はもちろん有名ですけど。今回のモンゴル開催で改めて知った人も結構いるんじゃないでしょうか?それにしても51か国もの首脳が集まって、一体何を決めることができるのでしょうか?今回のASEMについての記事を見てみましょう。本格的な首脳会談は7月ですが、6月10日に閉幕したのはASEM財務相会合です。財務相ですから、基本的には経済関係のことでしょう。で、その記事を読むと・・・一番驚いたのは、討議内容ではなくその参加者です。アジアと欧州の「財務相」の会合のはずなんです、文字通りに読めば。ですが、欧州からの参加者はどのくらいいると思いますか?ちなみに欧州の参加国は30か国以上です。なんと、このモンゴルでの会合に参加した欧州側の財務相はたったの2人なんです。それはマルタとエストニアだけだそうです。マルタというのは、地中海に浮かぶ島国で人口40万人くらいです。エストニアはバルト三国の1つで人口130万人と人口小国のモンゴルの半分以下です。この2国だけが財務大臣を送っているってことです。この事実だけでASEMの位置づけがわかろうというものです。なぜ一般の日本人に馴染みのない会議体なのかは十分に推測できます。記事にもこう書かれています。「1996年に発足したASEMは、欧州にとって米国抜きで中国など巨大な市場を持つアジア諸国と対話できる重要な枠組みだった。だが、モンゴルでの会合に参加した欧州の財務相はマルタとエストニアの2人のみ。「もはやアジアどころではないのではないか」(日本政府関係者)との観測が飛び交った。」まさに、欧州関係者のこの会合への無関心が透けて見えます。しかも、現在欧州で一番大きなアジア関連の経済問題といえば、中国の鉄鋼過剰生産問題によるダンピングともいえる欧州への輸出攻勢なのですが、そのことにも触れられないのだそうです。「今回の会合では、米中戦略対話などで米国が強く批判した中国の鉄鋼過剰生産問題などについて直接言及することはなかった。欧州サイドの中国配慮がくっきり浮かんだ。中国経済の大きな「ひずみ」に切り込めない欧州の姿を露呈した格好だ。」確かに、こんなメンバーではとてもじゃないですが、お得意様の中国に物申すなんてできないのでしょう。残念ながら、法的拘束力もない、実質的指導国家である独仏英などが財務大臣を送る気もないような「財務相会合」はほとんど成果はなかったのでしょう。そんな中で、数少ない「財務大臣」として出席した麻生さんが目立ったのは、仕方ないことなんでしょう。とはいえ、モンゴルの漫画家との再会がニュースになる程度ですけど。もう一つのニュースは、モンゴルの選挙です。選挙前から、モンゴルの選挙のことを報じてた日本の新聞ってあったでしょうか?少なくとも、2008年以前は、選挙後に「旭鷲山が当選した」とか「選挙後に暴動がおこった」というニュースはありましたが、これから選挙やりますよ、何人が立候補しましたよ、などという日本のニュースは記憶にありません。それだけ、モンゴルという国が注目されてきているという証左だと思います。記事の内容は、「定数76議席に対して498人が立候補した」こと、争点が「資源安による低迷する経済の再建」であること、そして「民主党と人民党の一騎打ちになる」ことが書かれています。ほんの数日前の同じ新聞には「外債償還問題が選挙の争点になる」と書かれていましたが、今回は違うようです。そしてつい先日再出馬を表明していた旭鷲山(バトバヤル氏)が、当選が見込めないので立候補を取りやめた、とあります。また小選挙区制になったことは書かれていません。この記事で一番気になったのは、発信者です。なんと発信は中国・大連の記者なのです。最近の記事は、一応「ウランバートルからの記事」でしたが、これは大連です。単に、日経新聞社内での担当割の問題だとは思いますが、大連のほうが東京よりもモンゴルの情報が多いとか取りやすいなんてことは、全くありません。そろそろ日経新聞社にもウランバートル駐在員を置いてほしいところですが、そこまでのニュースバリューがまだないってことなんでしょうか?ちなみに、私は選挙当日はウランバートルでその様子を見ることになりそうです。
2016.06.12
コメント(3)
台湾の新しい総統は、蔡英文氏で日本語読みではさいえいぶんです。中国の国家主席は習近平氏で同じくしゅうきんぺいです。今回広島にやってきたオバマさんはもちろんアメリカの大統領です。もちろん、現地読みはこれとは違います。台湾総統はTsai Ing-wenで、あえて日本語読みにするとツァイ インウェンでしょうか。中国国家主席はシー ジンピンです。ま、この辺は多くの方はご存知でしょう。ですが、総統とか国家主席とか、わかったようでわかりにくいタイトルですね。国のトップの肩書は、多くの国々では大体大統領か首相、または国王というのがほとんどじゃないでしょうか?大統領と首相はどっちが上かは国によって違うようです。両方いるけど、大統領の方が強い代表例は韓国やロシアでしょう。逆に、首相の方が強いのはドイツです。モンゴルはどうなんでしょうか?私は最初は当然民意で選ばれた大統領の方が政治的には強いのだと思っていましたが、どうもモンゴル政府がガタガタになっていく様子を見ていると、大統領よりは首相のほうが実質的な権限は強いように感じます。つまり、どんなに大統領が外国投資家との関係の重要性を叫んだところで、歴代首相はやりたい放題で、外国人投資家なんて屁とも思っていませんでしたから。結果も、首相の意向のほうが実際に強かったです。ま、だからモンゴル経済がこうなってしまったんですけどね。モンゴル人の友人に聞いても、大統領はやや象徴的な意味合いが大きいので、現実的な政策となるとあまり力はないと言います。一説には、国内ではあまり力がないので、外国へ「元首」として出かけて、演説する方が好きだとの声もあるようです。大統領、首相以外に国のトップを表すタイトルとして思い起こすのは、ソ連時代の「書記長」です。私は初めてこのタイトルを聞いたとき、学級会の書記を思い出し、その書記長がなんで国で一番偉いんだ?って感じたものです。学級委員長じゃないのって。ソ連共産党書記長の正式なタイトルを英語にすると、the General Secretary of the Central Committeeです。日本語ではソ連共産党中央委員会書記長です。ま、英語と同じです。そりゃあ当然で、英語を日本語に訳したからですから。で、今回の疑問です。台湾総統は、どういう意味なのか?中国国家主席とどう違うのか?です。この疑問の答えは実に簡単で、英語にしたらすぐにわかりました。まずは、台湾総統の英語名です。the President of the Republic of Chinaです。え?President?オバマと一緒?で、中国国家主席は?これは以前本ブログでも書きましたので、覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。the President of the People's Republic of Chinaです。台湾と中国の違いって「Peopole's」だけなんですね。ちょっと驚きです。逆に言えば、ほとんど同じ国名ってことです。もちろん、中国共産党総書記の肩書もあるので、その場合はthe General Secretary of the Communist Party of Chinaですが、国家主席はPresidentなのです。これまたオバマ大統領と一緒です。モンゴル語ではどうなんでしょうか?きっと全部大統領という意味なんじゃないかと推測します。つまり、総統だとか主席だとか、なんかいかにも違うように見せて、それを真に受けているのは世界中で漢字を使う国だけなんじゃないなかと思うわけです。中国、台湾を別にすれば、その可能性があるのは日本と韓国くらいでしょう。韓国語がわからないので、どう翻訳されているかはわかりませんが、どっちにしろ今は漢字を使っていません。ということは、この総統と主席の「表現の違い」(中身はともかく、見た目のタイトルは違う)を理解できているのは、世界中で当事国以外では日本だけなんじゃないかと思うのです。他の国は、英語を単にその国の言語で直訳するだけでしょうから、要するに大統領ってことです。この辺がまた日本の中途半端なポジションなんですね。余計なこと考えずに「ああ、台湾の大統領が変わったんだね」って報道してくれればいいのに、なんとなく台湾は「国」ではなく「地域」だから、呼び名も違うのかな?なんて勝手に考えたりするわけです。国家主席も、「やっぱり中華思想だから、肩書もその辺の国とは違うのかな?」なんて、これまた勝手に思いやれるのです。でも、そんなこと考えるのは日本人だけってことです。他の国の人たちにとっては、どちらも韓国やアメリカと同じ単なる「大統領」なんですね。わからなくてもいいことまでわかる割には、よくわからないってのが、日本人の対中国、対台湾観なのかなとも思います。要するに、普通の大統領制の国なんです。あ、中国は普通の国ではないですけどね。
2016.05.27
コメント(0)
イタリアから旅行に来ているPさんと、共通の知人であるモンゴル人女性の家に行くことになりました。その旦那さんはセルビア人で、なんでも5月1日日曜日はセルビア正教にとっての大事な日なんだそうです。説明を聞くとどうも「復活祭の日」のようです。復活祭は3月のイメージですが、東方教会では暦がちがうため、4月や5月のこともあるようです。で、現在旦那さんのお母さんがセルビアから日本に来ているということで、そのお母さんが作ってくれるランチを食べに行きました。これがお母さんが用意してくれたセルビア料理です。本来は、豚の丸焼き(丸煮?)をドーンと置くらしいですが、さすがに東京では無理なので、料理だけです。見た目はロールキャベツそのものですが、中は豚肉とお米が混ざって入っており、とてもおいしかったです。私たちはみなお代わりをお願いしたほどです。残念ながら、セルビア人のお母さんとはほとんど話せませんでした。お母さんはロシア語は大丈夫ですが、英語は話せないとのことです。とはいえ、ロシア語を知らないのは私だけで、モンゴル人の女性もイタリア人のPさんもロシア語は話せます。東欧系の人と会うと、ロシア語が共通語なんだということをいつも感じますが、ロシアとの交流が少ない日本人にはほとんど縁のない言語です。ソ連崩壊から4半世紀たっても、その影響力は残っているということです。モンゴル語もセルビア語もロシア語とは違う言語ですが、文字は一緒ですから。Pさんが広島旅行で撮影してきたビデオを、テレビにつなげて皆で見ました。広島スタジアム(野球)、宮島そしてマツダ工場。外国人専用の工場見学コースで、すべて英語で案内されていました。Pさんのマツダ好きは特別(今、乗っているのがマツダ3で、これとは別に旧いアスティナを所有している)ですが、西欧系には結構ファンがいるんだなと思いました。ですがなぜか、「次の車はレクサスISにしようと考えているんだ。程度のいい中古が見つかったので」と言ってました。イタリアでは間違いなくマイナー車である日本車のファンなんですね。イタリアやフランスには間違いなくジャーマン3(ジャーマンスリー。ベンツ・BMW・アウディのこと)以外を欲しがる層は必ずいるんだそうです。のんびりしたいいランチでした。
2016.05.02
コメント(0)
風が吹くと桶屋がもうかる・・・というのは昔から有名な、一見関係なさそうな事象でも遠い因果関係がある例ですが、そんな話が羊の話題で日本の新聞に載っていました。問題の発端は、学生服の値上げです。そう、あの中学生や高校生が着る学生服のことです。あれが今春から5-10%値上げされたんだそうです。なぜか?それは生地の値段が上がったからで、それの原因は羊毛の値上がりなんだそうです。へー、学生服って羊毛を使っているのかと感心しましたが、確かに冬でもコートなしでなんとか着れることを考えると、見た目よりは暖かかったような記憶もあります。ではなぜ羊毛が値上がりしているのか?それは世界の主要羊毛産地であるオーストラリアとニュージーランドの羊毛生産が減少しているからだそうです。じゃあなんで減少しているか、というとそこで中国の羊肉爆食が原因として出てくるんだそうです。中国では高度成長に伴い、羊肉の消費量が増えているんだそうです。中でも、薄切り羊肉を使う火鍋が全国的にブームで、羊肉の消費量が追い付かないんだそうです。原因の一つが、遊牧地の砂漠化です。要するにこれは内モンゴル地域に中国人が大量進出して、無理な開墾を続けた結果、農地にも遊牧地にも適さない砂漠化した土地になってしまったことが原因のようです。これは清朝末期以来、モンゴル人が嫌がるのを無理やり開墾した結果、ほとんど復元不可能な砂漠状態にしてしまったことが原因です。これにより、多くの(内)モンゴル人たちが貧困層に陥ったり、底辺労働者にさせられてしまったという話は無数にあります。ま、そのひどさはともかく、中国では自国生産能力を大幅に上回る羊肉への需要が増大しているということです。その結果、オーストラリアとニュージーランドからの羊肉輸入が増えたというわけです。で、この両国は生産対象を羊毛用の羊から食肉用の羊にシフトした結果、羊毛用の羊が減り、羊毛生産が減ったというわけです。そしてそれが、羊毛価格の上昇につながり、学生服の値上げにつながったというわけです。まさに、風が吹けば・・・みたいな話です。この記事を読んだとき、二つのことが頭に浮かびました。一つは「お隣中国で羊肉が足りないなら、モンゴルから輸出すればいいじゃないか」ということ。もう一つは「そうか、羊毛と羊肉では羊の種類が違うのか。世界はそこまで進化、分化しているんだな」ということです。せっかくの羊肉人気、羊毛価格上昇なんですから、モンゴルもこの流れに乗りたいところです。が、今のモンゴルの羊製品が世界のこの流れに乗れるかどうかはわかりません。世界的には、羊も牛もその用途に合わせて、品種が分化しているのが実態です。例えば、牛だって、牛乳用の牛と食肉用の牛が異なるのは、世界の常識です。羊も既にそうなっているってことです。そんな中、モンゴルではそういう話は聞いたことありません。モンゴル人にすれば「牛は牛、羊は羊で肉も乳も皮も毛も、全部同じ」ってことになるでしょうね。それはモンゴル国内であればもちろんそれでいいのですが、海外市場進出となると、とてもじゃないですが市場ニーズとは合わないことになってしまうでしょう。オーストラリアやニュージーランドは、羊肉にしても羊毛にしても、それに適した羊を求めて、何世代もかけ合わせたりして品種改良しています。そういう近代的な技術で生産された羊肉、羊毛に対してモンゴルは太刀打ちできるのかどうかといえば、正直難しいと言わざるを得ません。1000年以上の伝統を誇る遊牧で生まれるこれらの品々については、モンゴル人は大変な誇りがありますから、簡単には変えられないと思います。最近、モンゴルのある地方で乳牛を育てる話を聞きました。モンゴル人ビジネスマンが内モンゴルに行ったときに、内モンゴルの牛の乳の出が非常によくしかも高品質なのに感心したそうです。そこで、その内モンゴル人と技術提携して内モンゴルから牛を買ってきてモンゴル国内でそれを真似た方法で乳牛を育てようとしたんだそうです。が、見事に失敗したそうです。なぜか?内モンゴル方式は海外のやり方を参考にして、「牛舎でエサを与えながら育てる方式」だそうです。だそうです、なんて書いてますが、北海道をはじめ日本はもちろんこのやり方です。ですが、そのとある地方の遊牧民にそのやり方を教えてしばらくして見に行くと、内モンゴルのようにはうまくいかなかったそうです。モンゴル人遊牧民は、エサがなくなったら追加で買い求めることはせずに、遊牧に出したんだそうです。彼にすれば「タダの牧草があるのに、なんでエサ代まで出してお金かけなくてはならないんだ?」ってことになります。ウランバートルから関係者が見に来た時だけ、牛舎に入れておけばいいんですから。彼からすれば「自然の中で遊牧させるのが正しい。牛舎で運動しないなんてだめだ」との思いもあったことでしょう。ですが、結果は当然のように、普通のモンゴルの牛と同じになったということです。また、ウランバートルで売っているほとんどの牛乳はモンゴルの牛の乳ではなく、ニュージーランドから輸入している粉乳を加工したものだ(つまり粉に水を混ぜたもの)ということも事実です。こう考えると、最もモンゴル人が自信を持っている伝統的な遊牧というものが、実は世界的基準からみると結構遅れた分野であることがわかります。私もモンゴルの牛肉の味などについてモンゴル人と話したことがありますが、彼らは「牛の育て方を知らない日本人には言われたくない!」的オーラが噴出しそうで、なかなか言えたもんではありません。とにかくプライドが高いのです。実際、ロシア向けに輸出している牛肉は、血抜きなどの牛肉加工方法はモンゴルの伝統的なやり方とは違う方法でやっていると聞いたことがあります。モンゴル式のままでは、ロシアは輸入しないそうです。伝統分野でしかもモンゴル人は自分たちの最も得意な分野との意識が高いだけに、これを育成方法からグローバル化対応させるのは結構難しそうです。でも、せっかく隣国に爆食する国があるんですから、石炭がだめでも牛肉、羊肉にチャンスはあると思うんですけどね。難しいのかな、やっぱり。ちょっと残念です。
2016.04.09
コメント(0)
今朝の日経新聞に1月19日に行われたシンポジウムの記事が出ていました。そこに3人も私が会ったことある人が出ていたので、興味を持って読みました。題名は「アジアの価値観と民主主義」というものです。パネル討論には「アジアらしさとは」や「根ざす文化は」など、アジア諸国の民主主義を下支えするテーマがありました。登壇者は確かに多様性に富んでおり、国別では日本、インド、タイ、インドネシア、ミヤンマー、フィリピン、中国などの多彩な弁士たちに加え、なんとモンゴルからも参加していました。その人は、内閣官房長官のサンガジャブ・バヤルツォグトさんです。こういうアジア関係となると、多くの場合東アジア、東南アジアが中心となり、北アジアや中央アジアが抜けてしまうことがあるのですが、ここにモンゴルもちゃんと呼ばれているのはいいことだと思います。このシンポジウムの流れやバヤルツォグトさんの発言の趣旨から言って、50数か国からなるアジアの中では「遊牧民文化」「旧共産主義国家」を代表しているように感じました。確かにこの二つを代表できる国としてはモンゴルは非常にふさわしいと思いますし、政財界に日本語ペラペラ組も多いですから、今後も大いにこうした国際舞台に登場してほしいと思います。シンポジウムの詳細は、新聞などをご覧いただくことにして、ここではいくつか気になったキーワードをご紹介します。「イスラム教は仏教徒は正反対の宗教」と、仏教僧侶が発言しています。その意味するところは、絶対一神教のイスラムはどうしても過激になる要素があり、排他的になってしまうということです。仏教の他宗教への寛容さとは正反対にあるということです。ですので、インドの大学の先生は「単一信を信仰するイスラム教の原理を尊重する中東の国家が民主主義を導入するのは、困難を伴う」とも言ってます。民主主義の根幹は「違いを認め合う」ということですから。確かに現独裁政権を倒して選挙をすれば民主主義につながるなんて、単純なことではないことは、イラク、リビア、エジプトを見ればわかります。バヤルツォルトさんは「中東諸国の一神教の特殊性を勘案すると、旧共産圏の国家とは違う。民主主義の導入の可能性でいえば、中国の方がやりやすい」との興味深い発言をしています。中国の大学の先生は「民主化プロセスはリスクを伴う」と微妙な発言をしています。要するに、アラブの春後の混乱を見ると、民主化には慎重になるべきだと言いたいのでしょう。が、なんとなくそれが中国政府の代弁にも聞こえてしまいます。ま、北京大学の人が「民主主義を早く導入すべきだ」なんて言えるはずもないですけど。あと面白いと感じたのが、タイの人の発言です。「節度」は東アジアの価値観として共有されているものだが、この節度や寛容を重んじる知的なリーダーシップがアジア諸国には求められるだろう、と言ってます。なるほど、「節度」はいい言葉だと思いました。なんでもかんでも法律に頼らなくても、お互いの「節度」で調和を保ってきたということを言いたいのでしょう。そうした無言の「節度」を利用して、南シナ海だろうがどこでも無節操になんでもやりたがる現在の中国のリーダーに聞かせてあげたい話です。今の中国は自己チューの権利を主張するだけで、節度や礼節などというアジアの美徳は捨て去ったとしか見えません。結局、大国になればなるほど、周囲から(お金以外は)疎まれたり、警戒されるだけの国になっているのでしょう。もちろん、日本人にも反省すべき点は多々あります。民主主義が万全のように言われても「日本も戦前、男子普通選挙があったが、それでも満州事変は起きた」と日本人研究者は述べています。ま、ヒットラーだって民主的ステップを踏んで独裁者になったのですから、民主主義という形式だけではだめだということも明白です。日本の宗教者は「日本語には「いい加減」という言葉があり、ポジティブに言うとしなやかさや粘り強さにつながっている。民主主義はムダが多いプロセスなので、いい加減というスタンスも大切だ」と言ってます。なるほど、これもありだなと思いましたが、それは日本のような国でいう言葉だとも思いました。モンゴルでは、特に政治家はもう十分すぎるくらいに「いい加減」ですから。とはいえ、独裁体制で経済成長を成し遂げた隣国カザフスタンをしり目に、フラフラと困難にぶつかりながらも、なんとか民主主義体制を維持しているモンゴルには頑張ってほしいものです。今年の選挙では、一段と洗練された民主主義を見せてほしいと願っています。とはいえ、この経済状況ではだれがやっても大変だろうなー。魔法使いはいないわけですから。
2016.02.12
コメント(0)
スイスのIMDが発表している「世界競争力ランニング」(IMD World Competitiveness Yearbook) の2015年版にモンゴルが登場しました。この世界競争力ランキングはスイスのビジネススクールであるIMDが1989年から発表しているランキングで、データの3分の2が統計によるもの、3分の1がその国の当事者や関係者たちにアンケート調査を行って分析するというユニークなものです。私も1992年以降、ずっとこの調査に参加してきました。当然、日本についてのアンケート調査でしたが、調査対象が60か国にも満たないほどで少なかったことは残念でした。もちろん、モンゴルなどは含まれていませんでした。統計だけなら参加もできるでしょうが、アンケート調査数が十分に確保できないことも一つの要因であったのではないかと思っています。当初は日本だって、アンケート数が少ないと聞いていましたから。ところが、2015年の調査結果を見たら、なんとモンゴルが載っているではないですか。もちろん、初めてのことです。調査対象国数は61か国で総合ランキングは57位ですが、そんなことは問題ではありません。まずはこれら「主要60か国」に入ったというのは、大きなステップでしょう。ちなみにこの辺のランキングを見ると、55位がブルガリア、56位ブラジル、57位モンゴル、58位クロアチア、59位アルゼンチン、60位ウクライナ、そして61位ベネズエラとなります。いろんな項目のランキングが載っていますが、やはり一番厳しいのが「Risk of Political Instability」つまり、政治的不安定性のリスクって項目で、これが58位です。モンゴルより下は、59位ギリシャで、言わずと知れたここ数年EUを揺るがしてきた問題国です。60位ベネズエラもほとんど破産状態の国、そして61位と最下位なのがウクライナ。これはロシアに領土を奪われ、戦争状態です。こう見てみると、世界的に誰もが認める政治的破綻国を別にすると、モンゴルが実質的な最下位ともいえるような気がします。ただ、モンゴルを知れば知るほど「この調査結果はけしからん!」と言えないのが残念です。とはいえ、総合順位でブラジルやアルゼンチンなどと渡り合えるレベルですから、まずまずのデビューではないかと思います。ちなみに、日本ですが、もちろん昔の栄光ではランキングトップの座にありましたが、昨年はなんと27位まで落ちています。UAE12位、カタール13位の中東勢は遠く及ばず、マレーシア14位、中国22位、韓国25位などのアジア勢にも後れを取っています。もちろん「アジアの先進国」であるシンガポール3位なんて遠い存在になってしまいました。全く日本はどうなってしまったんだ!って思っても、それが実力だと認識せざるを得ません。ちなみに1位はアメリカです。今回の調査依頼に対しては、私はモンゴルを選んで答えました。もちろん、本来は日本を選択すべきなのはわかっていますが、日本について答えてくれる人はもうたくさんいることでしょう。他方、モンゴルはまだ少ないでしょうし、少なすぎて2016年版から外されても困りますから、一人でも多くと思い選びました。昔は英語とスペイン語など数か国語しか選択できなかったのに、今は日本語はもちろん、なんとモンゴル語まで含めた22か国語が用意されていたのにはびっくりです。世界には200か国以上もあると言われていますが、モンゴルは少なくとも経済的な「主要60か国」には名実ともに入ったんじゃないかと思っています。「だから何?」なんて冷たい質問ができるのは、経済大国の日本人だからでしょう。まずは小さいながらも世界に認められる国に成長してくモンゴルを素直に喜びたいと思います。
2016.02.08
コメント(0)
10月22日付けの本ブログで「安倍首相、モンゴル・中央アジア訪問へ」でも申し上げましたが、やはりモンゴルの地理的位置づけは微妙なようです。そういう意味では、本当に新潟県に似ています。新潟県?どこが似ている、とお思いの方も多いことでしょう。では質問です。「新潟県は何地方ですか?」小学生レベルであれば、教科書通りに「中部地方」と答えることでしょう。ですが、それは大昔に国土地理院が適当に決めただけのことで、実態としてはほとんど意味はありません。ここでいう実態というのは、経済圏または人の移動・交流、もっと言えば歴史や文化圏という意味も含みます。中部地方の中心都市はもちろん名古屋市です。ですが、新潟県が名古屋市と経済的に結びついているという実態はほとんどありません。親戚などの個人的につながりのある人はもちろんいるでしょうが、一般的に新潟の人が名古屋に何か親しみを持ったり、「行くべき場所」と意識している人はまずいないでしょう。見えやすいところから言えば、電力は東北電力、新潟市のガスは北陸ガス(北陸地方をカバーしているという会社ではありません)、JRは東日本。ブロック紙の中日新聞を購読している人はほぼ皆無、名古屋の主要地場企業である中部電力、名鉄、松坂屋ももちろん存在感ゼロ。そもそも新潟と名古屋の人的交流もほとんどありません。県外の大学進学先は圧倒的に東京や関東ですが、次に多いのは東北大学のある仙台でしょう。名古屋大学や東海地方へはほとんど行きません。新潟から名古屋に行くには、上越新幹線と東海道新幹線を乗り継いで行かねばなりません。1日2便の全日空もありますが、小型のボンバルディアですから、74席しかないそうです。いかに人的交流が少ないかわかります。一般大企業だって、新潟が名古屋支店管轄なんて聞いたことないですし、普通は新潟支店か北関東支店か関東支店の管轄です。昔の名残で信越と言って、長野と一緒というのはあるでしょうし、北陸支店の一部というところも少数ではあるでしょう。福島や山形と一緒という方がまだ現実的です。道州制が議論になると必ず出てくるのは「どうやって州割りをするか?」です。北海道と九州は大体決まりです。中国と四国は一緒か別か。関東は南関東と北関東とか、東京は別かどうか?いくつもの案が学者らから出てきますが、そのたびに所属が変わるのが新潟県です。あるときは北陸州に、別の場合は南東北州、または北関東州、はたまた甲信越州などなど、バラバラです。それだけ所属があいまいということでしょう。で、モンゴルです。先月のブログでも「モンゴルと中央アジア5か国訪問」と書かれていたように、モンゴルの位置づけは微妙です。ですが、私の中では「東アジア」に位置付けていることで、今はすっきりしているつもりでした。ところが・・・出張先でも読めるように日経新聞の電子版を購読していますが、モンゴルから帰って来た日に偶然でしょうか、アジア関係の記事を読んでいた時のことです。スクロールして、下の方に「国・地域別ページ」という見出しを発券しました。前からあったけど私が気づかなかったのか、最近こういう国別情報を整理して提供するようになったのかはわかりません。「おお、これは便利だな。モンゴルの情報はこの国別情報欄を見れば見落とすことはないってことだな」と喜んだ次第です。で、早速モンゴルをクリックしようとしました。が・・・東アジアは一番左、つまり見る人が最初に目をやる場所にあります。当然、一番の近隣諸国ですから当然の位置でしょう。上から、韓国、北朝鮮、台湾、中国、香港、マカオとあります。が、それだけです。え?モンゴルは?次は東南アジアですから、もちろんモンゴルはありません。その次が南アジアでブータンやモルジブはもちろん、アフガニスタンまで入っています。モンゴルはもしかしてリストにないのか?不安を抱えて次を見ると、なんとオセアニアです。あれ?もうアジアは終わり?イラン以西はありません。トルコもイラクもアジアじゃないの?オセアニアってことは、もうアジアは終わったってことかと思いきや、次もありました。その先頭にはトルコと書かれています。あ、やっぱり西アジアかと思いきや、その題名は「中央アジアなど」です。他の地域名は全て明確に「東アジア」と定義されているのに、ここだけには「など」が付いています。腰が引けています。この「など」には「中央アジアとそれに似たような国かな?」みたいなニュアンスを感じます。ここにはモンゴル、トルコと中央アジア5か国が含まれていました。これをどう解釈するか?気になるのは「など」です。この「など」を使うことによって、モンゴルは中央アジアじゃないけど、「一応ここに入れてあげるね」的扱いをされているような気がします。なんで堂々と東アジアに入れないのか?もちろん日経新聞に聞かないと分かりませんけど。敢えて推測すれば、日経新聞内でも一応議論はあったんだろうなと思います。「モンゴルどこに入れる?」「モンゴルって旧ソ連だっけ?だったら、カザフスタンとかの中央アジアでいいんじゃない?」「いや違うよ、れっきとした独立国だったんだよ。」「でも社会主義だったんだよね?ソ連崩壊で民主化したんでしょ?それって、カザフやキルギスと一緒でしょ?遊牧民の国だし。」「中東は今回入れないんだけど、トルコは大事な国なんで今回のリストに入れようと思うんだけど、この辺の国はイスラムの国だよね?ここにトルコも入れようか?」「イスラムでくくるなら、モンゴルは違うよ。モンゴルは東アジアに入れるべきじゃない?」「東アジア??モンゴルって漢字使うの?」・・・・ま、新潟県と同じで議論はすっきりしなかったんだと思います。日経新聞さんへ。国際連合の規定ではモンゴルは東アジアに所属しています。敢えてそれと違うカテゴリーに拘るなら、その理由を教えてください。
2015.11.27
コメント(0)
9月9日は北朝鮮の建国67周年だったそうで、朝鮮中央通信社は祝電を送ってきた国の名前を発表しました。それによると、9月9日午前までに祝電をくれたのは21か国で、その後にくれた国々と扱いを別にしているようです。つまり早くくれた国が北朝鮮と仲良し国家だとの栄誉が与えられるってことなんでしょうか?その栄えある21か国は以下の通りです。順番は、報道の新しい順です。でも、中国とロシアが最初に来るということは、何か意味ある順番かもしれませんね。中国 ロシア パレスチナ キューバ ベラルーシ ケニア 民主コンゴ ジンバブエ ミャンマー ザンビア エリトリア タイ ポルトガル インドネシア エチオピア アルジェリア モンゴル ナイジェリア シリア ラオス カンボジアこの後も更に20か国が発表されたが、やはり最初の21か国が重要な国と見なされていると言っていいでしょう。この栄えある21か国にモンゴルは入っています。つまり北朝鮮認定の「トップ21」に入っているということでしょう。この21か国を地域別に見てみましょう。アジアは7か国、アフリカは8か国、旧ソ連は2か国、中東は2か国、中米は1か国、西欧1か国です。さすがに西欧はゼロかと思いましたが、なぜかポルトガルがありました。歴史的に仲いいのでしょうか?次の20か国も含めた合計41か国の地域分布は、アジア11か国、アフリカ17か国、旧ソ連4か国、中東5か国、中米1か国、西欧3か国です。ちなみに追加の西欧はギリシャとサンマリノです。欧米主要国からは皆無であることは想像できましたが、アフリカからが一番多いのは意外でした。中国もそうですが、そこそこまともな国は支持したがらない国であってもアフリカ諸国からは結構交流があるんだと思いました。これに関したWebを見ていたら、「北朝鮮が赤道ギニアの巨額IT事業を受注」なんて記事も目にしました。その額なんと3700億円!国連の制裁なんてどこ吹く風だそうです。ちなみに赤道ギニアは「アフリカの北朝鮮」と呼ばれるような国だということも知りました。一般的に考えれば「モンゴルはなんでそんな国と付き合っているんだ?」と思われるかもしれませんが、逆に言えば北朝鮮はほとんどまともな国とは付き合っていないので、日本から見ればモンゴルが北朝鮮への貴重なルートだということがわかります。ちなみに米州から唯一のリスト入りをした国はキューバですが、なんとモンゴル人はキューバへのビザは不要なんだそうです。もちろん、北朝鮮に対してもも同様にビザ不要です。日本人がなかなか入れない国へモンゴル人はフリーパスだという事実、普通の日本人の想像力を超えていると言えるでしょう。世界はやはり広いのです。モンゴルという国を通して世界を見ると、また違った景色が見えます。本当の第三世界のことなんて、日本にいたままじゃあほとんどわからないんだろうなと思う次第です。
2015.10.16
コメント(7)
全183件 (183件中 51-100件目)