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行き先が定まったわけではないのだけれど、ここを離れる日は延びはしない。ざわざわした気持ちのまま、浅い呼吸しかできないような体感で、こなす速度をうわまわる勢いでやるべきことが増えてゆくのが見える。たいしたことはしていないのだけれど。☆歯科医通い押さえつけられて削られた3歳時の恐怖心から、笑気ガス使用以外の治療は決して受けないと誓いを立てている私。渡独に備えて行き着けの歯科医を予約したところ、新人なのか、やたらと若く男前な歯科医師が現れ、一気に不安に。「腕、大丈夫か??」。。。偏見のおももくままに、やはり医者は、あまり美形でないほうがいい。☆日本食買いが抑えられずアパートを引き払う日も近づき、船便戦線も終盤に入った。仕事帰りにスーパーに寄る度に、「きっとこれもドイツじゃ高い」という呪文が頭をぐるぐるまわり、買いだめしてしまう。トリガラスープ、増えるワカメちゃん、切干大根、春雨、あらゆる種類のフリカケ、ひじき。。。。アパートには、ドラちゃんが数年前に買いだめしたまま賞味期限のすぎた、あらゆる種類のドイツのお茶がうんざりするほど残っていると知っているのに。
Sep 15, 2005
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スイスへ行ったこともドイツ語圏スイス人と知り合ったこともないけれど、スイスジャーマンを聞き分けられるようになりつつあるこのごろ、もちろん聞き取りはできていないわけだけれど。本日の上客は、日系某企業スイス支社社員ツアー。求められるままに「菊と刀」を古典コーナーから探しだし、日本の文壇の動向を解説しながら、初心者向けの、でもつぼを押さえた小説を何点か選んで薦める。夫には作務衣とじんべえの違いを説明しながら、妻には予算の範囲内で着物を見立てついでに帯の結び方も伝授する。寄木細工と樺細工の相違から東西の美的感覚の相違へと会話を広げる横目で、西陣織のスカーフをくれと言う難題に頭を悩ます。日本に対するそれなりの知識や関心や体験を持つ人がお客の日には、仕事場での一日の速度と濃度が増す。これらすべてをドイツ語でこなせるように一日も早くなりたいものだわと疲れきった頭で考えながら、明日のゲーテの宿題をする。前回の特訓は「形容詞」、習った形容詞を無理にでも使って、お気に入りの土地を紹介するという、お題。雨風吹き荒れる北ドイツの風物を紹介するテキストに登場した形容詞をどのように駆使したら、果たして私の愛するキプロス島の紹介ができるだろうか、悩み中。すべて否定形で作ってみるか(笑)。頭とからだのあちこちにさまざまな言葉が音のかたちで浮いている感覚。子供のころ言葉や音楽を習い始めた時期にいつもあったものだなと、懐かしさを覚える。からだがアンテナになるような感覚、その心地よさ。
Sep 9, 2005
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「安全のために、私たちはあなたの目をつぶして私の耳の中を焼くことに合意した」。'Folie a Deux'Rebecca Brown、邦題は、「私たちがやったこと」。ドイツへ送る荷物を選別するうちに、ふと開いた短編だった。互いに相手をいつも必要とするように、彼女の耳の中を焼き、彼の目をつぶしたふたりの物語。彼女は画家、彼は演奏家。互いだけが存在する他者である、完結した世界に生きようとした。これだけでは決してただしくないけれど、このこと自体はきっとただしい。「愛だけが、与えることを幸とする」。結婚祝いの深緑のカードに金の飾り文字で、ドイツ人の友人が記してくれた。これもきっと、ただしいことだ。「今の暮らしのレベルを落とす結婚は、やっぱちょっとできないと思うわ」。少し年下の同僚たちの結婚観は、ここのところで一致した。そしてこれもまたきっと、やはりただしいことなのだ。手放すことを覚悟したものを悔やみすぎて、遠くにあるものを渇望しすぎて、持たないすべてに欲情しすぎて、わたしは半ば、瞳が見えなくなりつつあるのではないかと恐れる。失えないものが何なのか、わからないふりを決め込みつつあるのではないかと。ドイツ滞在中のドラちゃんは電話の向こうで、すべてを聞いたあとポツリと、「息を深く吸って、頼むから少しリラックスして、枕にボクの香水をふりかけて眠ってほしい」とわたしに告げた。
Sep 7, 2005
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朝イチからの客は珍しく、英語に不自由のあるドイツ人団体ツアー客だった。ドイツ語に切り替えてはみたものの、ひとつひとつを考えなくては発語できないため、からだに錘をつけて動いたときのようにあとからどっと疲労した。「子供の服が20オイロ?高すぎるわ、そんなん何ヶ月着れるかもわからへんのに」ー子供用着物に心ひかれる初老の女性に、断固買わない姿勢を主張する夫の発言。「緑で桜模様のが欲しいんやけど、今見たら鶴のも綺麗やから迷ってきたわ」ーもういい加減疲れてきた夫に、生き生きした顔で相談している妻の言葉。「これ、洗濯機洗いできんの?水は何度にしたらいいのん?」ー日本の洗濯機の説明までしてらんない。。ともっとも効率的な説得方法を考えている私に浴びせられる、Tシャツに関するおばちゃんの質問。「どこでドイツ語習ったん?あとは何語がしゃべれんの?なんでドイツ語習ってんの?今はどこで勉強してるん?」ー妻の買い物に飽きてきたおっちゃんたちの、私への質問タイム。何がもっとも疲労を招くかと言えば、「相手の言うことはわかるけれども語彙が足りなすぎて答えられない」という、赤ちゃんがえりのもどかしさだ。今の私はまさに3歳児。言葉もでてきたし大人の言うこともわかるけれど、まだまだ言いたいことをじゅうぶんに伝えられない。姪のアナレナは2歳になった。その兄パスカルにはすでに追い越されてしまった、初めて会ったときはタウフェだったのに。せめてアナレナには勝ちたい、と、ゲーテのクラスは今回、「語彙を増やそう!ー中級者のための語彙レッスン」だ。ドイツ語圏からの帰国子女にまじって奮闘中。
Sep 4, 2005
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引越しをすすめなくてはならず、日本で買ってゆきたいものもそろえなくてはならず(ドイツ対応のバカ高い炊飯器を買ってゆくべきか?)、まだまだ続く結婚関係の書類作り(Familienbuchって今すぐ作ったほうがよいのだろうか??)もやめるわけにもいかず、進学準備の書類もあちこちにとりにいかねばならず、そういえば運転免許はどうしようかと今思い当たり、渡独前に歯科へも行っておきたく、かといって退職日まではまだまだで、在日ドイツ大使館は突然翻訳業務を停止してしまい、半分の労働を受け持ってもらえるはずのドラちゃんはスケジュールがずれこんだためいまだドイツで奮闘中で、そういう中で無謀にもゲーテの集中講座が始まった。申し込んだ2ヶ月前に、今の惨状を予測できていたならば決してこのタイミングでわざわざゲーテ通いなどしなかったものを。。。と言ってみたところであとのまつりだ。7月にドイツ語試験を受けて以来、文字通り一秒たりとも勉強していないことを知ってはいたものの、授業中「unglaublichってなんだっけ。。。?」とこころの中でつぶやいたときにこれはまずい、と青くなってみた。数秒後、「das Talの英語がどうしても思い出せない。。。」と悩んだときに、青くなってみている場合じゃない、と深刻さを認識した。ドイツ語について3歩進んで2歩さがり、英語をだんだん忘れてゆくなんて、頭の中身がどんどんほどけてゆくような恐怖感を覚えぞっとする。家の中じゅうが出された荷物でひっくりかえっていようと、毎日昼ご飯を食べる時間がなかろうと、職場で消えないクマを指摘されようと、しっかりたってふんばらないといけない、わたしの脚で。
Sep 3, 2005
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