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第二五巻　癩王のテラス/LONG AFTER LOVE

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飾り窓を遠目に見て、その夜は気軽でない国境越え。

壁は崩壊したというものの、ベルリンは東ドイツに浮かぶ
西側の小島のようなもの。
壁によって一夜にして西と東に分けれられた、当時の世界の縮図。
東ベルリンにゆくには、現地の宿泊先の届出が必要。
Ｕさん「私のパスポートだと、東側には入れないかもしれない。」
時間もないため、西ベルリンのみの訪問になりました。

オランダ、西ドイツはユーレイルパスで行けるものの、

ベルリンまでの切符を別途購入。
列車から降りることもはばかられます。

「グッバイ、レーニン！」

さてさて、オランダからベルリンへ向かう人のなんと多いこと。
それはそうでしょう。
ちょうど四ヶ月前、壁が崩壊したばかり。
まもなく撤去されるとあっては、見ておくには今しかない。
ロンドンでも、１００メートル歩けば３人は同国人に会いましたが、
今度はその比ではありません。

当然、列車の中もぎっしり。
終夜運行なので皆、コンパートメントで眠る体勢に。

他はみな女性だったせいか、その方、ずっと話し続けていました。

ベルリンの駅は、さらなる人ごみ。
というより、明らかに駅で寝泊りしている人が足も踏み場もないほど。
早々に街へ出て、朝もやの中を歩きます。
壁はどこ？

どこまでも続く平面は、全て派手なペイントで覆い尽くされています。
コンクリートを削る人、その破片を売る人買う人。
背の届く範囲はほとんど削られてデコボコしていて、
さらに上からペイントがほどこされてゆきます。
中には、背の届かない場所の表面が平らな破片が欲しい人のために、
梯子で登ってツルハシをふるう人も。

「恐怖の中の平和」

壁の下の砂地にはたくさんの細かい破片が。
お金を払うまでもないと、私たちはすこしずつ拾い集めます。
ふと見ると、ひと一人やっと通り抜けられるくらいの穴。
覗いてみると、こちら側ほどではありませんが、壁にペイント、
そして削られた跡。
表面の平らな破片も無数に落ちています。

向こう側には誰もいない様子だったので、三人で潜り抜けることに。
近くにいた子供に、おいで、と手招きしましたが恐がってやってきません。
すぐ前には監視塔らしき建物。
それでも、誰も咎めるもなく。
破片を売っている人たちはきっと、ここの平らな部分にペイントしたものを
並べているのでしょう。

「パーマーの危機脱出」

ほんの数ヶ月前なら、と考えていると、遠くを見つめるＵさんが泣いています。
こうして東と西から段々と垣根が削られてゆく。
Ｔさんと私は、黙って破片を拾い続けました。

東西の出入口、ブランデンブルグ門はたいへんな車の波。
マクドナルドを見つけ、昼食をとっていると、
呆然という顔をした男性がやってきて、同じ日本人と見るや話し掛けてきました。
「東ベルリンに行ってきたんだけど、向こうで西ドイツマルクを東のと替えてくれって。
ほんの少し出しただけなのに、札束をくれたから、向こうで買い物し放題。
バックを両手に抱えてこちら側にこようとしたら、監視員に止められて尋問。
全部没収されちゃったよ。」
入国の際、いくら持って入るかもチェックされているため不審に思われたのでしょう。