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義経千本桜　忠信篇　秋の京都☆３　2010.

テーマ：【演劇】何か見に行きますか？　行きましたか？(3316)

カテゴリ：歌舞伎

歌舞伎の序幕は「鳥居前」。タイトルどおり、真っ赤な鳥居が舞台中央に、

【舞台の内容に触れますので、ご覧になりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】

「鳥居の前で、都を追われる源義経（翫雀さん）一行についていこうとする
静御前（壱太郎さん）を、弁慶（権十郎さん）はじめ家臣たちが留まるように説得する。
結局、聞き入れなかった静御前は、初音の鼓とともに梅の木に縛られ、取り残される。

この耳慣れたオールスターキャストのあとから、忠信（海老蔵さん）が登場。
義経追討にやってきた早見藤太（市蔵さん）が静御前を連れ去ろうとするのを
踏み殺し、戻ってきた義経から『源九郎』の名と鎧を与えられ、

実は忠信は、初音の鼓に張られた夫婦狐の皮の、その子狐、
親を慕って、鼓の持ち主である義経の家臣・忠信に変化したもの。
序幕のラストは狐の仕草で六法を踏む様子が、ユーモラスでした。

「忠信篇」の二幕目（「義経千本桜」では三幕目）、
「道行初音旅」は、静御前と、鼓の音に応じて現れた忠信の舞踊。

序幕の壱太郎さんから入れ替わり、二幕目の静御前は玉三郎さんで、
これが初めて、玉さまをライブで拝見する機会になりました。

幼いころ「椿姫」の記事を新聞でみて、何と美しい人だろうと思って以来、
麗しい姿を直接、目にするまで何年かかったでしょうか。

新之助時代の源氏物語も、玉三郎さんが藤壺を演じられた初回バージョンは未見、
南座の瀬戸内寂聴さん脚本バージョンと初回の写真が載ったムック本を手に入れた際は、

その再来を、舞踊の形で体験することができ感無量。

「鳥居前」の絵看板の中央は、勇猛に早見藤太を踏みつける忠信、次の幕の
「道行初音旅」は、静御前と、鼓の音に応じて現れた忠信。
画面では分かりにくいのですけれども、忠信の衣裳は源氏車がデザインされていて。

姫路城でも見かけた、この雅な源氏車の紋、少し調べてみましたら佐藤氏の家紋とのこと、

鼓の形をした静御前の髪飾りも印象的でした。

大詰は、「川連法眼館・蔵王堂」

「義経の前に本物の忠信が現れ、静御前を守るように命じられたことも
名や鎧を与えられたことも覚えはないと応えたことで、詮議が始まる。
静御前が初音の鼓を鳴らして問いただすと、狐忠信は全てを語って正体を現し、
その孝心に心打たれた義経は鼓を忠信に与える。」

宙乗りもさることながら、鼓を手にした瞬間の、喜びを全身で表す子狐の、
見た目には笑いを誘うような仕草にも、親を想うこころが溢れていて。

美々しい海老蔵さんを観に、何度か足を運ばせていただいていますけれども、
涙で目がかすむような情愛に満ちた舞台は初めて。様々な経験をつまれるなかで
麗しい上にも、あらゆる生きざまを豊かに表現する役者さんになってゆかれるのでしょうね。

宙乗りで狐忠信が去ったあとは、「蔵王堂」での大立ち回り。
本物の佐藤忠信の活躍を盛り立てる若い役者の方々にも沢山の拍手が送られます。

そして、平氏の教経（我當さん）、安徳帝、源氏の義経、弁慶、静御前が
一堂に会しての大団円。
このメンバーが煌びやかに居並ぶ光景を設定した心情は、
琵琶法師の語る平家物語と色合いは違っても、きっと同じものなのでしょう。

続きます。

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