F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。歳三は両班の家に生まれながら、正室の娘として産まれた信とはその環境が天と地程の差があった。信の母は生前、歳三達母子をあばら屋に住まわせ、彼らを使用人のように扱った。『お前の所為だ、お前を産んだから、わたしは不幸になったんだ!』歳三の母は、事あるごとにそう彼を罵り、殴った。歳三の母・モランは、都一の妓生だった。絶世の美貌と知性を兼ね備えたモランは、王に気に入られ、一時期側室として暮らした。そして彼女は、歳三を産んだ。王の側室として、モランは一生王宮で幸せに暮らせるのだと、信じて疑わなかった。だが、そんな彼女の甘い夢を打ち砕いたのは、世子の誕生だった。庶子である歳三と、その母であるモランは王宮から追い出され、路頭に迷っていた二人を拾ったのが、信達の父・土方隼人だった。隼人は血の繋がらない歳三と自分の子供達を、分け隔てなく育ててくれたが、隼人の妻・ユン氏は違った。王宮で美しく着飾り、側室であったが何不自由ない生活を送っていたモランにとって、奴婢同然の生活は屈辱以外の何物でもなかった。行き場のない彼女の怒りは、幼い歳三へと向けられた。歳三は精神を病んだ母から毎日殴られ、いつも生傷が絶えなかった。辛い現実から逃れたくて、歳三は毎日読書や裁縫をしたり、伽耶琴を奏でたりした。そんなある日の事、彼がいつものように屋敷の中庭の隅で伽耶琴を奏でていると、そこへ一人の少女―異母姉・信がやって来た。「ねぇ、わたしにも教えてくれない?」それが、信と歳三との出会いだった。年が離れた弟を信は可愛がり、歳三も信を実の母のように慕った。ユン氏は二人の交流に余り良い顔はしなかったが、隼人にたしなめられて渋々と二人の交流を許した。信の他に、歳三には二人の兄達が居た。異母兄達は、歳三に学問や武術・剣術を教えた。歳三はモランが住むあばら屋には寄り付かなくなり、信達が居る本邸―屋敷に入り浸るようになった。幸せな日々は、長く続かなかった。精神を病み、妄想に取り憑かれたモランは、屋敷に火をつけ、炎の中で焼け死んだのだった。『王様、王様~!』彼女は最期まで、自分を捨てた王の事を想っていた。歳三は遠縁の親戚の元へと預けられた。そこで待っていたのは、生き地獄のような日々だった。毎日のように殴られ、罵倒されながらも、歳三は前を向いて生きて来た。「トシ、どうしたの?」「いや・・昔の事を、思い出していたんだ。」「トシ、あなたはあの人とは違う。もう自分を責めるのはやめて。あなたは、幸せになっていいのよ。」「ありがとう、姉上。」そう言った歳三は、涙を―生まれて初めて、涙を流した。同じ頃、はじめは妓楼で玄琴を奏でていた。「あら珍しい、いつも卜占にしか使わないのに。」「スヨンさん・・」「やっぱり、あの子が他の男の所に行ったのが寂しいんじゃないかって皆噂していたけれど、いつも鉄面皮だと思っていたのに、そんな顔をするなんてねぇ。」妓楼の妓生・スヨンは、そう言った後笑った。「わたしは、お嬢様の事が心配なのです。お嬢様はわたしの命を救って下さいました。」「そういえば、あんたと総司がどんな関係なのかまだ聞いていなかったね。この際だから、聞かせて貰えないかねぇ。」「わかりました。」はじめは静かに、総司と出会った時の事を話し始めた。はじめの家は、王に仕える両班の家だったが、はじめは、ある事が原因で家から追い出された。それは、はじめが“人ならざるもの”が見えるからだった。何の力を持たない子供のはじめは、路上生活を送っていたが、すぐに行き詰まり、妓楼の前で倒れて意識を失ってしまった。そんな彼を助けてくれたのが、総司だった。女児は妓楼で大切にされるが、男児は用心棒か使用人になるかのどちらにしかなかった。しかしはじめは、生まれ持った力のお陰で、妓楼で重宝された。その力のひとつが、占いだった。「へぇ、そんな事があったんだね。」「わたしにとって、お嬢様はわたしの生きる糧なのです。」はじめはそう言うと、玄琴を再び奏でた。日が暮れ、夜になると妓楼は活気に満ちていた。「あの子は、どうしたんだい?君の養女の・・」「あぁ、総司ならいい方の元へ身請けされましたよ。ペク大監様にはいつもよくして下さったのに、ご報告するのが遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。」「いや、いい。わたしは、あの子が幸せであれば、何も望まぬ。」「そうですか。」王宮では、世子が原因不明の病に倒れた。医師達が懸命に治療を施したが、世子の容態は悪化してゆくばかりだった。「どうすれば・・」「このままだと、王家は滅びてしまいます!」「王妃、落ち着け、わたしに考えがある・・」王は、そう言うと王妃の耳元に何かを囁いた。「トシ、遅かったわね。」「あぁ、少し仕事で色々とあってな。総司は?」「あの子なら、部屋で休んでいるわ。ねぇトシ、これからどうするの?」「俺は、あいつと・・」「歳三様、大変です!」歳三が信に総司との事を話そうとした時、部屋の中に土方家の使用人が入って来た。「どうした、何があった?」「そ、それが・・」「土方歳三様ですね?王様がお呼びです、至急王宮へおいで下さい。」「王宮へ?」歳三は、何だか嫌な予感がした。「王様、本気なのですか!?妓生の子を・・」「出自は卑しいが、あの者はわたしの血をひく息子だ。」にほんブログ村
2024年03月15日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「ん・・」 窓から射し込む朝日に照らされ、総司は紫がかった瞳を薄らと開いた。そして彼女は、自分が一糸まとわぬ姿である事に気づき、昨夜この部屋で自分が何をしていたのかを思い出した後、羞恥で頬を赤く染めた。ふと自分の胸元を見ると、そこには歳三からつけられた薔薇色の所有印が残されていた。「朝飯、持って来たぞ。」「きゃぁ~!」 歳三が部屋に入ると、総司は悲鳴を上げて慌てて自分の胸元を両腕で覆い隠した。「今更隠してどうすんだ、昨夜はあんなに恥ずかしい姿を俺に見せたのに。」「そ、そんな・・」「さっさと服を着ろよ。お前ぇが裸でいると、またお前ぇを襲いたくなっちまう。」歳三はそう言うと、ニヤリと笑いながら総司の裸体を舐めるように見た。「あの、わたしに背を向けて頂けませんか?」「ああ。」「服を着ている間、絶対に振り向かないでくださいね、絶対にですよ!」「解ったよ。」歳三は舌打ちしながら、自分の背後で慌てて総司が服を着ている音を聞いていた。「終わったか?」「はい、もういいですよ。」 歳三が振り向くと、そこには美しい一人の童妓の姿があった。彼女が纏っている韓服は、昨夜遅くに歳三が生地屋を叩き起こして一番上等なものをこの屋敷に持って来させ、歳三自身の手で誂(あつら)えたものだ。深緑のチョゴリと、白い蝶の刺繍が施された真紅のチマは、総司の紫がかった黒髪と瞳に映えてよく彼女に似合っていた。「あの、何処かおかしくありませんか?」「何処もおかしくねぇよ。とても綺麗だ。」「有難うございます・・」歳三に褒められ、嬉しそうに頬を赤く染めた総司は、そう言うと歳三の手をそっと握った。「朝飯を食ったら出掛けるぞ、お前ぇも来い。」「はい・・」 歳三と総司が屋敷の離れで朝食を取っている頃、母屋では歳三の仲間である近藤と原田、永倉と藤堂が朝食を取りながら雑談をしていた。「それにしても、土方さんはあの娘にベタ惚れだな。」「まぁ、あれほどの別嬪、何処を探しても見つからねぇよ。両班のお嬢様だって言われても、誰も疑わねえさ。」「そうだな。」「てめぇら、朝からうるせぇぞ。」 歳三がそんな事を言いながら総司と共に母屋に入ると、近藤達がじっと総司の方を見た。「何だ?」「やっぱり総司さんは綺麗だなぁ。あ~、俺もこんな可愛い娘さんを攫いたいわぁ!」「うるせぇよ、左之。近藤さん、俺はこいつと少し外に出て来るから、留守を頼むぜ。」「わかった。」 屋敷を出た歳三と総司は、朝市へと向かった。「欲しい物があったら遠慮なく言え、俺が買ってやる。」「そんな、いいです。」「惚れた女に贈り物をしたって、何も罰が当たらねぇよ。」「え?」総司が歳三の言葉を聞き返そうと彼の方を見ると、彼は耳まで顔を真っ赤に染めていた。にほんブログ村
2024年03月14日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。 興奮する妹を、甲子太郎は必死に宥めようとしたが、彼女の怒りは収まらなかった。(卑しい妓生の分際で、わたくしに逆らおうなんて生意気だわ!) 美妃の中で、総司に対する憎しみがますます募っていった。「お嬢様、歳三様がお呼びです。」「まぁ、歳三様がわたくしに会いに!?」「はい・・」 美妃は鏡の前で髪を梳くと、総司から奪ったテンギを髪に結んだ。「歳三様、いらっしゃるならいらっしゃると、前もって文を寄越して下されば・・」 息を弾ませながら美妃が歳三の待つ部屋へと入ると、彼は冷たい瞳で彼女を睨んでいた。「あの・・」「良くお似合いですね、それ。」 そう言って歳三が指したのは、美妃の美しい髪に結ばれているテンギだった。「あぁ、これは・・」「そのテンギは、あなたには似合わない。」「え・・」 歳三はそう言うなり、美妃の髪からテンギをむしり取った。「これは、元の持ち主に返します。」「いや、待ってください、お願い!」 美妃の叫びを無視し、歳三は彼女に背を向け、伊東家を後にした。 美妃は歳三から冷たく拒絶され、三日間寝込んだ。―ねぇ、聞いた?伊東家の・・―あの方には良い薬になったのではなくて? そんな事を言いながら両班の令嬢達が針を動かしていると、そこへ一人の少女が彼女達の居る部屋に入って来た。 彼女は艶やかな黒髪を真紅のテンギで結び、深緑のチョゴリに美しい刺繍が施された真紅のチマを纏った彼女の美しさに、暫しその場に居た者達は見惚れていた。「まぁ、綺麗な方・・」「何処の方かしら?」「見ない顔ねぇ。」 令嬢達がそんな事を囁き合っていると、部屋に一人の女性―歳三の姉・信が入って来た。「まぁ、あなたね。歳三のお嫁さんとなる方は?」「初めまして、総司と申します。」「素敵な韓服ね。誰かから贈られたのかしら?」「はい・・」「そう。」 信はそう言うと、総司に優しく微笑んだ。 総司は一針一針、心を込めて歳三の為に刺繍した。「何を作っているの?」「好きな方の為に、網巾(マゴン:鉢巻)を・・」「鳳凰の刺繍が見事ね。」(土方様、喜んで下さるといいな・・)「トシ、色々と大変だったな!」「まぁな。」「あれ、あの子は・・」「総司なら、姉貴が経営している刺繍塾に行かせた。」「そうか、なぁトシ、あの子ならお前を支えてくれるような気がするんだ。」「へぇ・・」「それは、どうかな?」 歳三はそう言うと、不敵な笑みを口元に浮かべた。「総司は、土方様のところでお世話になっているそうだよ。」「そうですか・・」「どうしたんだい、浮かない顔をして?」「いいえ。」「さてと、夜の準備でもしようかね。」 総司の養母は、そう言うと奥の部屋へと入っていった。「あら、こんな所に居たのね。ちょっとおつかいを頼まれてくれないかしら?」「・・わかりました。」 はじめが妓楼の下女に頼まれて市場で買い物をしていると、向こうから見知らぬ女と歩いている総司を見かけた。「お嬢様!」「あら、はじめさん。」「こちらの方は?」「こちらの方は、土方さんのお姉様の、信様です。」「はじめまして。」「どうも、はじめまして。わたしにはお嬢様の従者で妓楼の使用人をしている斎藤一と申します。」「はじめさん、ね。総司さんから聞いているわ。頼りになる相棒だと。」「そうですか・・」 はじめは、そう言うと俯いた。「信様、少しはじめとお話したい事があるので・・」「わかったわ。」 信はそう言うと、総司は背を向けて歩き出した。「女将から、行首(ヘンス)様からお嬢様があの男の元で世話になっている事を知りました。あの男とは、どうなさるおつもりなのですか?」「それは、どういう意味なの?」「わたしはいつでも、お嬢様の幸せを誰よりも願っております。ですが、あの男は駄目です。」「どうして?」「わたしは、人の死期が視えるのです。あの男は、近い内に死にます。」「そんな・・」「今ならまだ間に合います、お嬢様。どうか・・」「もし、そうだとしてもわたしは、あの人のお傍に居たいの。」「そうですか・・ならば、わたしはお嬢様の意思を尊重します。」「ありがとう、はじめ。」(お嬢様、わたしはお嬢様の幸せを誰よりも願っております。)「トシ、帰ったわよ。」「お帰りなさいませ、姉上。」「総司さんに、刺繍塾でお会いしたわ。彼女、あなたの事が好きみたいね?」「姉上、それは・・」「トシ、あなたは今まで辛い思いをしてきたけれど、あなたには、幸せになって欲しいのよ。」「姉上・・」「大丈夫、あなたなら幸せになれるわ。」 信はそう言うと、歳三に微笑んだ。「姉上・・俺は、幸せになるのが怖いのかもしれねぇ。」 歳三はそう言うと、静かに目を閉じ、幼かった頃の事を思い出していた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「若様、湯の準備が出来ました。」「山崎、わざわざ知らせてくれて済まねぇな。」「いいえ。ではこれでわたしは失礼いたします。」 歳三は自分の胸に顔を埋めて泣いている総司に、風呂に入るように言った。「有難うございます。」一晩中裸同然の姿で木に縛り付けられた総司にとって、温かい湯は何よりの特効薬だった。「湯は熱くねえか?」「はい。土方様、わたしの為にわざわざお湯を焚いてくださって有難うございます。」「礼なんて言うな。それよりもお前ぇと美妃様は初対面だったのか?」「はい。でも美妃様は、わたしの方をご存知のようでした。」「そうか。総司、お前の妓楼にはお前がここに暫く居る事を連絡したから、俺の傍に居ろ。」「え、いいのですか?」歳三の言葉を聞いた総司は、思わず浴室から飛び出した。「惚れた女を傍に置きてぇと思うのは当たり前だろう?それよりも、そんな格好で俺の前に出るんじゃねぇ!」「あ、すいません。」歳三が耳まで顔を赤くしている事に気づいた総司は、そう言うと慌てて浴室の中へと引っ込んでいった。(ったく、あれじゃぁこの先が思いやられるぜ・・)歳三がそんな事を思いながら溜息を吐いていると、下男が何やら慌てた様子で彼の元へと駆け寄って来た。「歳三様、大変です!あの妓生を引き渡せと、伊東様がいらしております。」「美妃様の事は放っておけ。」「いえ、こちらへいらしたのはお嬢様ではなく、兄君の方なのです。」「何だと!?」 歳三が客間へと入ると、そこには少し苛立った様子で扇を開いたり閉じたりしている美妃の兄・伊東甲子太郎の姿があった。抜けるような白い肌に、目鼻立ちが整った美男子の甲子太郎だが、その眉間には深い皺が寄っていた。「長い間お待たせしてしまって申し訳ありません、伊東殿。」「土方殿、貴方が妹に無礼を働いた妓生を匿(かくま)っているという噂は本当なのか?」「滅相もございません。それよりも伊東殿、妹君がわたしの気を惹こうとして何故そのような嘘をお吐きになるのか、わたしにはわかりかねませんが・・」「何、君は妹が嘘吐きだと言うのかね!?」「伊東殿、わたしは事実確認をしているだけです。わたしが貴方の妹君に無礼を働いた妓生の話によると、先に彼女に無礼を働いたのは貴方の妹君だとか・・」「どうやら君と話し合う必要はないようだな、これで失礼する!」伊東はそう叫ぶと、そのまま荒々しく客間から出て行った。「何とか上手く誤魔化せたな・・」歳三は伊東が去った後、そう呟いて溜息を吐くと、彼が用意した総司の部屋へと向かった。「総司、居るか?」「はい。」部屋に入った歳三を、美しい韓服姿の総司が出迎えた。「あの、本当にこちらでお世話になっても宜しいのですか?わたしの事で、ご迷惑をおかけしてしまうかも・・」「そんな事、気にするな。」歳三はそう言うと、総司を抱き締めた。「まぁお兄様、わたしが嘘を吐いているとでもおっしゃるの?」「落ち着け、美妃・・」「嫌です、これが落ち着いてなどいられますか!」にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「嫌ぁ、誰か助けて!」「大人しくしな。」 伊東家の使用人達は、泣き叫ぶ総司を橋の近くの木に縛り付け、その場から去っていった。 きつく縛られた総司は自分を戒めている荒縄を解く事も出来ず、通行人の好奇の視線を浴びてただ泣く事しか出来なかった。(歳三様、助けて・・) 歳三は宮廷に出仕する為に、馬で橋の近くを通ると、そこには人だかりが出来ていた。「トシさん、大変です!」「どうした、何があったんだ?」「総司さんが・・総司さんが木に縛り付けられているんです!」「何だと!?」 馬から降りた歳三が総司の姿を探していると、突然総司の甲高い悲鳴が聞こえた。「へへ、こんな上玉に抜いて貰うなんてツイてるな。」「おいおい、抜け駆けは狡いぜ。」「心配するな、済んだらちゃんと順番にまわしてやるよ。」 数人の男達が下着姿の総司を取り囲み、下卑た笑みを浮かべながら自分の一物を取り出すと、リーダー格と思しき男が恐怖に震えている総司の下穿きを引き裂いた。「嫌ぁ、見ないで!」「妓生の癖に、綺麗じゃねぇか。こりゃぁ、楽しみ甲斐があるぜ。」男の手が総司の陰部に伸びようとした時、彼は頭を殴られ、その場で昏倒した。「あ、兄貴ぃ!」「誰だ、出て来い!」「・・てめぇら、俺の女に何をしていやがる?」ゆらりと男達の背後から歳三が姿を現し、彼は半裸で木に縛られている総司を見つけた。「命が惜しかったら、さっさとこの場から立ち去れ。」「ひ、ひぃぃ~!」男達は歳三の殺気に当てられ、気絶した男を引き摺りながらその場から立ち去った。「歳三様・・」「総司、大丈夫か?」歳三は総司の身体を戒めている縄を刀で切ると、彼女を横抱きにして帰宅した。「歳三様、その娘は・・」「橋の近くの木に縛られていた。何処かのならず者達に凌辱される前に助けたぜ。山崎、こいつに着替えを持ってこい。こんな姿じゃ彼女を妓楼に返せねぇ。」「承知いたしました。」山崎は歳三の腕に抱かれている半裸の総司を横目で見ると、部屋の襖を閉めた。「総司、誰がお前にあんな酷い事をした?」「わたしは何も知りません。」総司はそう言って誤魔化したが、歳三は彼女が嘘を吐いている事に気づいた。「総司、怒らねぇからちゃんと話せ。俺に嘘を吐くな。」「はい。昨日、伊東家の侍女に話したいことがあると家に連れて行かれたら、その家のお嬢様が使用人達に、わたしを橋の近くの木に縛り付けておけと命じたのです。」(美妃様がお前にそんな事をするとは・・余程俺に気があるらしいな。)歳三はそんな事を思いながら総司の方を見ると、彼女は歳三を怯えた目で見つめていた。「総司、どうした?」「わたし、凄く怖かったです。さっき貴方が助けに来てくれなかったら、わたしはあの男達にどんな目に遭わせられたのかと思うと・・」そう言って唇を震わせた総司は、歳三に抱きついた。「大丈夫だ、俺がお前ぇを守る。」歳三は自分の胸に顔を埋めて泣く総司の髪を、優しく梳いた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。妓楼を飛び出した総司は、息を切らしながら歳三との待ち合わせ場所へと向かっていた。 そんな彼女の姿を、物陰から美妃の侍女・ミニョクが見つめていた。「歳三様、何処にいらっしゃるの?」待ち合わせ場所に到着した総司は歳三の名を呼びながら彼の姿を探したが、彼は何処にも居なかった。(もしかして、行き違いになったのかしら?)総司がそんな事を思いながら歳三を待っていると、突然背後から彼女は誰かに肩を叩かれた。「貴方は、沖田総司様ですね?」「ええ、そうですけれど・・貴方はどなたですか?」 総司が振り向くと、そこには自分と同年代の少女が立っていた。「わたくしは伊東家の侍女をしております、ミニョクと申します。わたしの主が、総司様にお話ししたいことがあるというので、一緒にわたくしと来て頂けませんか?」「はい。」ミニョクの言葉を何も疑いもせず、総司は彼女と共に伊東家へと向かった。「こちらでお待ちください。」 伊東家に着いた総司は、ミニョクの主である美妃の部屋へと通された。そこは妓楼にある自分の部屋よりも豪華な調度品が飾られていた。 総司が緊張しながら美妃を待っていると、部屋の襖が開いて険しい表情を浮かべた美妃が部屋に入って来た。「お前ね、歳三様を惑わしている妓生というのは?」「一体何をおっしゃっているのですか?」「とぼけないで!わたくし今朝、貴方が歳三様と一緒に歩いているところを見たのよ!」美しい顔を怒りで歪ませながら美妃は総司に向かってそう叫ぶと、彼女の腕を乱暴に掴んで部屋の外から引きずり出した。「何をするのですか、やめてください!」「お黙り!」怒りで興奮している美妃の打擲(ちょうちゃく)が、容赦なく総司を襲った。(どうして、わたしがこんな目に・・)総司はミニョクに救いを求めようと彼女を見たが、彼女は気まずそうに総司から目を逸らした。「この娘の服を脱がしなさい。」「かしこまりました、お嬢様。」伊東家の下男達は、主の命令に従って総司が着ていた韓服を乱暴に脱がした。白い上下の肌着だけとなった総司は、羞恥と恐怖で震えた。「この娘を、橋の近くの木に縛っておきなさい。自分がどんな立場にいるか、身をもってこの娘に教えてやるのよ!」「やめて、離して!わたしに触らないで!」総司は自分を担ぎ上げようとする下男に対して必死に抵抗したが、男の腕力の前ではそれは無駄なものだった。 下男と争った拍子に、総司の髪に結ばれていたテンギが解けて地面に落ちた。総司が慌ててそれを拾おうとした時、彼女の手を美妃が思い切り踏みつけた。「汚らわしい妓生を早くここから連れ出して頂戴!」「はい、お嬢様!」「いや、助けて、誰か~!」総司を連れた下男たちが屋敷から出て行った後、美妃は地面に落ちていたテンギを拾い上げ、それを自分の髪に結んだ。「わたくしの方が、あの娘よりもこのテンギが似合うと思わなくて?」「ええ、お嬢様。」そう言ったミニョクの目は、何処か冷めていた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。 同じ頃、歳三の見合い相手である伊東美妃は、侍女のミニョクと共に朝市で買い物をしていた。「ねぇミニョク、あの飾り帯歳三様に似合うとは思わなくて?」「そうですね、お嬢様。」「あの方は美男子だから、どんなものでも似合うわね。あぁ、好きな方に贈り物を選ぶのがこんなに楽しいなんて思わなかったわ!」そう言って嬉々とした表情を浮かべながら歳三への贈り物を選んでいる美妃の隣で、ミニョクは内心深い溜息を吐いていた。 美人だが気位が高く、我儘(わがまま)な美妃は縁談があっても結局破談になることが一度や二度ではなかった。そんな美妃の心を捉えたのが、歳三だった。彼の家は歴史ある名家で、宮廷内の地位も高い。これを逃せば、美妃は一生独身だ。そうなれば、自分の負担がますます重くなってしまう。何とかして歳三と美妃を結婚させなければ―そんな事をミニョクが思っていると、美妃の顔が急に強張った。「どうかなさいましたか、お嬢様?」「何なのよ、あれは!」 怒りに震える手で美妃がそう言って指したのは、見知らぬ娘と仲睦まじい様子で朝市の中を歩いている歳三の姿だった。「わたくしの歳三様に馴れ馴れしく触れて・・許さないわ、あの娘!」「お嬢様、落ち着いてくださいませ。」「お黙り!」 美妃はヒステリックにそう叫ぶと、ミニョクの手を乱暴に振り払った。「ミニョク、あの娘の素性を調べて頂戴!」「はい、お嬢様。」怒り狂った美妃は、そのまま朝市にミニョクを置き去りにして帰宅してしまった。(面倒な事になるわね。)ミニョクはそう思いながら、慌てて美妃の後を追った。 一方、美妃に目を付けられた事などつゆ知らず、総司は妓楼の中にある自室で伽耶琴(カヤグム)を奏でていた。「お嬢様、失礼いたします。」「はじめさん、どうしたの?」「お嬢様に、お客様です。」「お客様、わたしに?」総司が自室から出ると、そこには切れ長の目をした一人の青年が中庭に立っていた。「総司様ですか?わたくしは土方家に仕える山崎と申す者です。主から、この文を預かって参りました。」「まぁ、有難う。今お茶をお出しするから、お部屋で待っていてくださいな。」「いいえ、わたしはこれで失礼いたします。」山崎はそう言うと総司に向かって頭を下げ、妓楼を後にした。 自室に戻った総司は、歳三からの文を読むと、それを抱き締めた。そこには、“申の刻、橋の前で待っている”と書いてあった。「はじめさん、わたしちょっと出かけてくるわ。」「お嬢様、どちらへ?」にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。(もしかしてこの人、照れてる?) 総司がそんな事を思いながらじっと歳三の横顔を見ていると、彼は気まずそうに軽く咳払いして総司にそっぽを向いた。「誰かと思ったら、トシさんじゃないですか!」「おう、サンヒョク、元気にしてたか?」 歳三はそう言って自分に話しかけて来た青年を見ると、彼は歳三の隣に立っている総司の方を見ていた。「トシさん、そちらの方は・・」「ああ、こいつは俺の妻になる娘だ。手ぇ出すんじゃねぇぞ?」「へい!」歳三の口から“妻”という言葉を聞いた総司は、思わず頬を赤く染めた。「最近ここら辺はどうだ?儲かっているか?」「へぇ、お蔭様で。前は変な奴が多かったんですが、トシさんがあいつらを追っ払ってくれたお蔭で商売がやりやすくなりました。トシさん、飯がまだならうちの店へ寄ってやってください。お袋が喜びますんで。」「わかった、後で寄らせて貰う。総司、行くぞ。」「は、はい・・」総司はサンヒョクに軽く会釈すると、歳三と共に朝市の中を歩き出した。「何か欲しい物、あるか?」「いいえ・・この韓服(ハンボク)を下さっただけでも嬉しいです。」「あぁ、それは俺がお前ぇの為に誂えたもんだ。こう見えても、俺は針仕事が得意なんでな。」「大切に致します。」総司がそう歳三に礼を言うと、彼は照れ臭そうな表情を浮かべた。「お前の家はこの近くか?」「ええ。あそこに提灯が吊るされている門があるでしょう?あそこが、わたしの家です。」「そうか・・」 朱塗りの門の方を歳三が見ると、丁度中から一人の青年がそこから出て来た。彼は歳三と共に立っている総司の姿を見ると、慌てて総司を歳三から引き離した。「お嬢様、お怪我はありませんか?」「はじめさん、心配をかけてしまってごめんなさい。」「ご無事で良かったです、お嬢様。それよりも、あの男は・・」斎藤の視線が総司から歳三へと移った。「てめぇは、妓楼の番犬か?」「そういう貴様は何者だ?」「はじめさん、この人はわたしを助けてくれたのよ!お願いだから乱暴しないで!」 斎藤と歳三との間に険悪な空気が流れているのを敏感に感じ取った総司は、そう言うと慌てて二人の間に割って入った。「お嬢様・・」「土方さん、申し訳ないけれど帰って頂けるかしら?わたしが無事だと知ったら、みんな安心してくれるから。」「わかった。」歳三は名残惜しそうに総司の髪を一房掴んでそれに口づけると、彼女に背を向けて雑踏の中へと消えた。 彼の背中が次第に自分から遠ざかってゆくのを見た総司は、寂しさで胸がチクリと痛んだ。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。「何だぁ、もうイッちまったのか?」 頭上から歳三が自分を嘲るような言葉を吐きながら、そっと自分の秘所から顔を出すのを総司は感じた。「これだけの刺激だけですぐにイッちまうなんて、生娘は調教し甲斐があるな。」「嫌、ここからわたしを出して・・」 総司は涙に濡れた瞳を歳三に向けて哀願したが、歳三は首を横に振った。「言っただろう、てめぇに女の悦びを教えてやるって。」歳三はそう言うと、穿いていたパジ(ズボン)の紐を緩め、大きく反り返った己の陰茎を総司の秘所に宛がった。「嫌、嫌ぁ!」「暴れるな。」歳三は総司の細い腰を掴み、自分の陰茎で彼女の秘所へと入っていった。「ああ~!」 初めて男を受け入れた総司は、激痛に襲われて悲鳴を上げた。「畜生、きつく締め付けてきやがる・・おい、力を抜け。」「痛い、痛い、あぁ!」「ったく、仕方がねぇな・・」 歳三はそう言って舌打ちしながらも、総司を落ち着かせる為に彼女を自分の胸元へと抱き寄せた。 暫くすると、総司は歳三の心音を聞いて落ち着いたのか、彼女の強張っていた箇所が少し弛緩してきたように歳三は感じた。「動くぞ。」 歳三が総司の細い腰を掴み、彼女の身体を上下に揺らし始めると、彼女の口からは悲鳴とは別のものが聞こえた。 それと同時に、彼女の秘所からは絶え間なく蜜が溢れ出てきている。「気持ちいか?」歳三の問いに、総司は恥ずかしそうに白い頬を赤く染めながらも静かに頷いた。「声、聞かせろよ。」歳三はそう総司の耳元で囁いた後、腰を激しく振った。「あぁ、駄目、そんなに激しくしたら壊れちゃう!」「上等だ、二人でこのまま壊れるってのもいいな。」歳三がそんな冗談を言いながら動きを止めずにいると、それと呼応するかのように総司も腰を動かし始めた。「やれば出来るじゃねぇか?」「あぁ、また身体が変に・・」「俺もそろそろ限界だ。中に出してもいいな?」総司は歳三にしがみつき、彼の問いに静かに頷いた。 どくどくと、自分の中に歳三の欲望が迸るのを感じながら、総司は意識を失った。「トシ、入るぞ?」 近藤が歳三と総司の部屋に入ると、歳三は煙管を咥えながら彼の方を見た。 奥では、総司がすやすやと安らかな寝息を立てながら眠っていた。「勝っちゃん、俺がこんな生娘に夢中になっちまったのは、生まれて初めてだ。俺ぁ、女と寝るときは生娘とは寝ねぇと決めてたのに、このざまだ。」「トシ、この娘の素性が判ったぞ。都一番の妓楼“壬生楼”の養女だ。まだ水揚げは済ませていないが、舞も楽器も出来る将来有望な童妓(トンギ:水揚げ前の妓生の事)だそうだ。」「そいつを傷物にしちまったんだから、その責任はちゃんと取るぜ、勝っちゃん。」「トシがそこまでその娘に入れ込むのは珍しいな?」「自分でもわからねぇよ。だが、俺ぁずっとこの娘を探していたような気がしてならねぇんだ。」 歳三はそう言って立ち上がると、眠っている総司の艶やかな黒髪を一房掴むと、それに優しく口づけた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。「着いたぜ。」 歳三がそう言って総司を馬から降ろすと、彼女はチマの裾を摘んで彼から逃げようとした。だが、歳三は彼女の腕を掴んで自分の方へと引き戻した。「まだ俺から逃げようって言うのか?」「嫌、離して!」歳三に捕えられた総司は激しく抵抗したが、大の男相手に華奢な少女が腕力では敵う筈がなかった。「わたしを殺すつもりなの?」「お前ぇみてぇな良い娘、殺したら損だ。殺すよりももっといい方法を考えた。」歳三の言葉を聞いた総司は、これから彼に何をされるのだろうかと思いながら恐怖に怯えた。「俺と一緒に来い。」 歳三と共に総司が向かったのは、パク氏の邸と変わらぬ造りの建物だった。「ここは何処?」「ここは俺達の家だ。」二人が建物の中に入ると、そこには黒衣を纏った数人の男達が居た。「おおトシ、漸く帰って来たな!余りにも帰りが遅いから、捕盗庁(ポドチョン:警察)に捕まえられたのかと思っていたぞ!」 男達の中から顔が大きい男が歳三達の前に現れると、そう言って笑いながら歳三の肩を叩いた。「俺がそんなへまをするかよ、勝っちゃん。それよりもパクの野郎の邸から、いい娘を攫ってきたぜ。」歳三はそう言うと、男の前に総司を押し出した。「ほぉ、可愛らしい娘じゃないか。娘さん、名は?」「総司と申します・・あの、貴方がたが最近都を騒がしているという“壬生狼”なのですか?」「ああ。だが俺達は金持ちから金銀財宝を奪い取るだけで、殺しはしない。無駄な殺生はしないという掟の下、俺達は義賊として生きているからな。」「そうなのですか・・それを聞いて安心いたしました。」(この人達、根っからの悪人ではないかもしれないわ。) そんな事を総司が思った時、突然歳三が彼女を横抱きにした。「勝っちゃん、俺ぁこいつを部屋に連れて行くぜ。」「嫌ぁ、離して~!」「トシ、余りその娘さんに乱暴な事をするなよ!」 “勝っちゃん”は、そう言って歳三と総司に手を振り、仲間と共に酒を飲み始めた。 歳三は総司を自室へと連れて行くと、用意されていた褥の上に彼女を寝かせた。「わたしを犯して殺すのでしょう、この人でなし!」「俺ぁ星の数ほど女を抱いて来たが、生娘を犯して殺すほどの馬鹿じゃねぇ。お前ぇに女としての悦びを教えてやるよ。」歳三はそう言って総司に微笑むと、彼女が着ているチマの胸紐を解き、彼女の豊満な胸を露わにした。「嫌ぁ、見ないでぇ・・」総司の首筋を強く吸い上げた歳三は、彼女の乳首と乳房を舌で愛撫した。はじめは嫌がっていた総司だったが、歳三に胸を舌で愛撫される内に、身体の奥がジンジンと痺れるような感覚に襲われていった。「胸だけで感じていやがるのか。こんなに濡らしやがって。」歳三は手をそっと総司の秘所へと伸ばすと、そこは熱く濡れていた。彼女のチマを捲りあげ、彼女の両足を割った歳三は、その秘所に顔を埋めた。「あぁぁ~!」 悲鳴とも歓声ともわからぬ総司の声が、部屋の中に響いた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「いや、離して!」「暴れるな、痛い思いをするのはお前ぇだぞ。」訳も判らぬまま総司はパク氏の邸から歳三に拉致され、彼と共に馬で何処かへ連れて行かれた。「わたしを何処へ連れて行くつもりなの?」「悪ぃが、それは教えられねぇ。」歳三は馬の尻に鞭をくれてやりながら、暴れる総司を睨んだ。「これ以上暴れるつもりなら、お前をこのまま地面に落としてやろうか?」「やめて・・」「じゃぁ大人しくしていろ。」歳三がそう言って総司を再度睨むと、彼女は俯いてすすり泣いた。(わたし、これからどうなってしまうの?この男に乱暴された上に殺されてしまうのかしら?)総司がそんな事を思っていると、突然背後から馬の蹄の音が聞こえた。「お嬢様を離せ、この獣め!」「ふん、初対面の人間に対して礼儀がなってねぇな!」 馬上で斎藤と歳三は剣を交え始めた。「はじめさん、やめて!」「お嬢様、今助けます!」「おっと、よそ見をする余裕があるのかい、兄さんよ!」歳三はそう言うと、斎藤が乗っている馬の足にパク邸から拝借した銀の箸を突き刺した。馬は悲鳴を上げ、斎藤は地面に転がったまま動かなくなった。「いや、はじめさん、はじめさん~!」総司の悲痛な叫び声は、虚しく闇の中へと消えた。(お嬢様・・)闇の中へと消えてゆく総司に向かって斎藤は手を伸ばしたが、彼はやがて意識を失った。 一方、総司が義賊“壬生狼”に宴席から拉致されたと知り、チュンスクは半狂乱になりながら使用人総出で彼女の捜索を命じた。「女将さん、お客様がお見えです。」「今夜は誰にも会いたくないと言っておくれ!」「それが・・」「やあチュンスク、元気そうで何よりだ。」チュンスクがイライラしながら部屋の中を右往左往していると、そこへ一人の男が現れた。「まぁ、ぺク大監(テガン:大臣)、お久しぶりでございます。今夜はどのようなご用件でいらっしゃられたのですか?」「大した用ではない。お前の娘・・確か総司と言ったか?彼女に会いたいと思ってな。」「申し訳ありませんが大監様、総司は今ここにはおりません。」「そうか、それは残念だな。あの子に似合う簪や韓服を土産に持って来たというのに。」ぺク大監はそう言うと、従者から韓服が入った包みを受け取り、部屋の床に韓服を広げた。 それは、鮮やかなクリーム色のチマ(スカート)と、花の刺繍が施された水色のチョゴリ(上着)だった。「まぁ、綺麗・・」「あの子の白い肌に映えると思ってね。」嬉しそうに優しく韓服を撫でるペク大監は、娘を溺愛する父親のような顔をしていた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。歳三達が狙う家の主・パク氏は、まさか彼らが自分の家を襲撃しに来るとは夢にも思わずに、呑気に妓生達を邸に呼んでは宴を開いていた。「パク様、このような事をなさって大丈夫なのですか?今夜、壬生狼がこちらを襲うという噂を聞きましてよ?」「あんなもの、出鱈目に決まっているだろう!わしは壬生狼など来ても恐れずに戦うぞ!」そう言って豪快に笑いながら酒を呷ったパク氏は、一人の妓生に目を留めた。 艶やかな黒髪を赤いテンギで結わえているその妓生は、パク氏の視線に気づくと恥ずかしそうな様子で俯いた。「おい、あの子は誰だ?」「あぁ、あの子は総司といって、宴に出るのは今夜が初めてなので緊張しているのですよ。」「そうか。そこの娘、こちらへ来い!」「はい・・」 パク氏に呼ばれ、総司が彼の隣に腰を下ろすと、彼は総司を自分の方へと抱き寄せた。「そんなに緊張せずともよい。お前のような初心な女は調教のし甲斐がある。」「おやめください・・」総司はそう言ってパク氏に抗議したが、彼の手は総司が着ているチョゴリの胸紐へと伸びていった。「おやめくださいまし、パク様。その子はまだ生娘なのですよ。」「そうか、ならばわしがお前の初めての男であっても不満はあるまい?」「いやっ!」総司がパク氏の言葉を聞いて恐怖で美しい顔を強張らせたとき、突然外が騒がしくなった。「何事だ!?」「旦那様、壬生狼が、壬生狼が・・」 部屋に入って来た使用人がそう言って蒼褪めた顔を主に向けると、彼の額から刃が生えてきた。「ひぃぃ!」目の前で使用人が惨殺され、先程の威勢のよさはどこへやら、パク氏は恐怖のあまり失禁しその場にへたり込んでしまった。「随分と俺達を馬鹿にしていたようだが、大したこたぁねぇなぁ。」妓生達が悲鳴を上げながら部屋から逃げてゆく中、一人の男が部屋に入って来た。 顔は黒い薄布で覆われて見えないが、月光を受けて美しく輝く黒髪と、それを飾る真紅のテンギに総司は見覚えがあった。「助けてくれ、命だけは・・」「俺達が欲しいのはてめぇがしこたま貯め込んでいる金銀財宝だ。あと、その汚い手をその娘から退かしやがれ。」「わ、わかった!」パク氏は総司を突き飛ばすと、這うようにして部屋から逃げていった。「怪我はねぇか?」「はい・・」 使用人の返り血を全身に浴びた総司は、自分を見つめる黒衣の男と前に会った事があるような気がした。「お前ぇ・・あの時の・・」 歳三は、目の前に居る妓生―あの時助けた娘がパク氏の邸に居る事に驚いていた。「何故、お前がここに居る?」「それは、わたしが妓生だからです。」「そうか。丁度いい、今から俺はお前ぇを攫ってゆく。お前ぇのようないい女、何処を探したって見つからねぇからな。金銀財宝より価値がありそうだ。」歳三はそう言って口端を歪めて笑うと、総司の腕を掴んで彼女の華奢な身体を横抱きにするとパク邸を後にした。「いや、離してください!」「怪我をしたくねぇのなら、暴れるな。」歳三は自分の耳元で喚く総司を黙らせる為、彼女の唇を塞いだ。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。同じ頃、総司の“命の恩人”である男―土方歳三は、仏頂面を浮かべながら漢陽(ハニャン)市内にある料亭の一室で見合いをしていた。 その相手は、歳三の実家と同じ両班に属する伊東家の令嬢・美妃(ミヒ)であった。 “名は体を表す”という言葉通り、美妃は絶世とはいわないが、類稀な美貌の持ち主であり、詩や書画を嗜む娘で、宮廷から時折世子(セジャ:皇太子)から求婚の文が届くという。 だがそんな噂がありながらも、美妃は婚期を逃してしまい、同年代の娘達が誰かの妻となり子を産んで母となっている中、彼女は自分が独身であるという事に焦りを感じていた。 そんな中、歳三との縁談が舞い込み、美妃は彼に一目会って彼を自分の人生の伴侶にすると決めたのであった。「歳三様は、まだ独身でいらっしゃいますの?」「ええ。俺ぁ当分結婚は考えておりません。」「まぁ、それではわたくしが貴方様の妻となる可能性は高いという訳ですわね?」 美妃はそう言ってチョゴリの袖口で口元を覆って笑うと、歳三を見た。「すいません、急用を思い出したのでこれで失礼いたします。」 歳三は美妃に背を向けて料亭を後にすると、外で待機していた山崎が彼の方に駆け寄って来た。「歳三様、もう宜しいのですか?」「ああ。山崎、輿は帰らせろ。俺は馬で帰る。」「解りました。歳三様、この辺りでは夜盗が出没しているという噂を聞きました。どうかお気をつけてお帰り下さい。」「ああ。」 山崎に見送られ、馬で料亭を後にした歳三は、そのまま人気のない竹林の中へと向かった。 暗闇の中を歳三が馬を走らせていると、突然彼の前に汚らしい身なりをした数人の男達が取り囲んだ。「命が惜しくば、有り金を置いていきな!」「悪ぃが、それは聞けねぇなぁ。」「何だと!?」歳三は馬上で男達に向かって薄笑いを浮かべると、腰に帯びていた刀を抜いた。「てめぇ・・」「闇に紛れて悪さをしている夜盗ってのは、てめぇらか。」月光が竹林の中を照らし、男達は歳三に襲ったことを後悔した。だが、もう遅かった。「トシ、もう始末しちまったのか?」「遅ぇよ、勝っちゃん。」歳三がそう言って親友の方を見ると、彼は溜息を吐いた。「トシは俺達が着く前に仕事を片付けるのが早いなぁ。」「最近稽古をしていないで身体が鈍っちまって仕方がなかったから、いい運動になったぜ。」「暴れるのはほどほどにしておけよ、トシ。」「うるせぇ、解ってらぁ。」 歳三は親友に憎まれ口を叩くと、料亭で着ていた色鮮やかなパジ=チョゴリから、漆黒のそれに着替えた。「さぁ、“仕事”の時間だぜ、勝っちゃん。」「ああ。」 土方歳三は二つの顔を持つ。 昼は宮廷に仕える両班の息子としての顔、そして夜は都を騒がす義賊「壬生狼」としての顔だ。「今夜俺達が狙うのは、蔵に金を貯めこんでいる奴だ。」そう言って笑った歳三の漆黒の長い髪に結ばれた真紅のテンギが、夜風を受けて花のように揺れた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。 その日、王宮で珠のような美しい王女が生を享けた。「王妃様、おめでとうございます!」「まぁ、何て可愛らしい子。お前の名前は―ですよ。」 母親はそう言うと、生まれたばかりの娘の頭を撫でた。 王女は、王宮で何不自由ない生活を送り、母から深い愛情を受けて育った。だが、そんな幸せはある日突然壊されてしまった。「この子を連れて逃げて!この子が生き延びる為なら、わたくしは死んでもいいわ!」「なりません、王妃様!」燃え盛る宮殿の中で、王妃は侍女に王女を託し、そのまま息絶えた。王女を託されたが、追っ手に追われて深手を負った侍女は、王妃の形見である簪を王女の産着の中に入れると、妓楼の前に王女を置いて息絶えた。 王女の泣き声を聞いた妓楼の主は、王女を自分の娘として引き取り、彼女に「総司」という名を授けた。 王女―総司は本当の名と出自を忘れ、養父母から深い愛情を注がれながら美しく成長していった。「総司、ちょっとお使いを頼まれてくれないかい?」「はい、母様。」「暗くなる前に帰って来るんだよ、いいね!」 養母からお使いを頼まれ、帰宅を急ぐ総司の前に、いかにも柄が悪そうな数人の男達が立ちはだかった。「こりゃぁいい顔をしているじゃねぇか。」「これなら高く売れそうだ。」「おい嬢ちゃん、こっちに来な。」「嫌だ、離して!」 男達に腕を掴まれ、総司は抵抗したが、男の腕力に幼子が敵う筈がなかった。総司が男達に誘拐されそうになった時、何処からともなく飛んできた矢が、男が被っていた帽子に深々と突き刺さった。「チッ、外したか。今度は外さねぇぜ。」「畜生、逃げろ!」 男達が逃げ去った後、総司の前に一人の男が現れた。上等な絹の服を着て、漆黒の髪を束ねている男は、切れ長の鋭い目で総司を見つめた。「嬢ちゃん、怪我はねぇか?」「は、はい・・」「気を付けて帰んな。」 男はそう言って背負っていた袋の中から赤いテンギ(髪飾り)を取り出すと、それを総司の美しい髪に結んだ。「あの、助けて頂いて、有難うございました!」 総司が男に礼を言った時、そこには誰も居なかった。これが、恋人達の運命の出逢いだった。「総司、お帰り。」「ただいま、母様。」「随分と遅かったね、何かあったのかい?」「何でもないわ。」「そうかい、それは良かった。」総司の養母・チュンスクはそう言うと、彼女の髪に見慣れぬテンギが飾られていることに気づいた。「あんた、そのテンギはどうしたんだい?」「命の恩人に貰ったの。」「そうかい。」 チュンスクは、美しく刺繍されたテンギが一目で高級品である事に気づいた。「風呂が沸いているから、冷めない内に入りな。」「はい。」 妓楼の外れにある浴室に入り、総司が着ていた服を脱ぐと、彼女の染みひとつない、雪のような白い肌が露わになった。 温かい湯に浸かりながら、総司はあの男から貰ったテンギを髪から外してそれを眺めた。細部に渡って美しい刺繍が施されているそれは、自分のような妓生(キーセン)の娘の髪ではなく、両班(リャンバン)の娘のそれを飾るのに相応しい高級品だと総司は気づいた。(あの人とまた会えるかしら?) そんな事を思いながら、総司は髪を櫛で梳き始めた。「おい、押すなよ!」「お前が押したんだろう!」「しっ、大きな声を出すなって、見つかるだろう!」 総司の入浴を塀の上から覗いていた数人の両班の子息達が小声でそんな事を話し合っていると、そこへ妓楼の用心棒・斎藤が通りかかった。「お前達、そこで何をしている?」「げっ、見つかった!」「早く降りろ!」彼らは慌てて塀から降りようとしたが、バランスを崩して地面に倒れてしまった。「どうしたのはじめさん、何かあったの?」「不埒な輩が、またお嬢様のお風呂を覗いていたので声を掛けたら、奴ら一目散に逃げていきました。まったく、腹立たしい限りです。」「そんなに怒らなくてもいいじゃない。」「お嬢様、服を着てください!」斎藤は総司が裸である事に気づき、慌てて彼女の身体を布で覆った。「ごめんなさい、うっかりしてしまったわ。」「まだ先ほどの輩が妓楼の辺りをうろついているかもしれませんよ?とにかく、油断は禁物です。」「本当にごめんなさい。」 そう言って笑った総司の背中には、醜い火傷の痕があった。 それを見た斎藤は、苦痛に満ちた表情を浮かべた。「はじめさん?」「いいえ、何でもありません、お嬢様。」「今夜のはじめさん、何だか変よ?」(わたしを変にさせたのは、貴方です、お嬢様。)にほんブログ村
2023年05月21日
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