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黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
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火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
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薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
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火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
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PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
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FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
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薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
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火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
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F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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素材は、黒獅様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部暴力・残酷描写有りです、苦手な方はご注意ください。「ダガー、退くで!」「わかりましたよ!」ダガーは、そう言うと舌打ちして、シエルとエリザベスに背を向けて去っていった。「アラ、つまんないわね。」グレルがそう言って空を見上げると、東の空に太陽がまさに顔を出そうとしていた。(まずい!)「シエル、シエル!」「坊ちゃん!」セバスチャンがシエルの部屋に入ると、彼は窓から離れ、両手で顔を覆っていた。「坊ちゃん、しっかりして下さい!」セバスチャンは自分の上着をシエルに被せた。「大丈夫ですか!?」「セバス・・チャ・・」セバスチャンは太陽の光からシエルを守る為に彼の上に覆い被さったが、シエルはセバスチャンを突き飛ばした。「いつまでもひっつくな、気色悪い!」「坊ちゃん、太陽の光に当たっても平気なのですか?」「あぁ。奴らは?」「彼らは太陽が昇る前にここから去っていきました。彼らは太陽の光を浴びると死ぬそうです。」「そうか。じゃぁ何故、僕は死なないんだ?」「それは、わかりませんね。」シエルとセバスチャン、エリザベスは空き家から出て、街道を歩いた。「エリザベス様~!」「ポーラ、無事だったのね!」エリザベスはそう言うと、自分の侍女と抱き合った。「良かった、無事だったのね!」「エリザベス様もご無事で良かったです!」「お母様達は?」「皆さん、ご無事ですよ。」「良かった!」ポーラとエリザベスは、エリザベスの家族が居る南部へと向かう事になった。「シエル、元気でね!」「リジ―も、元気で。」南部へと向かう特急電車に乗る為、エリザベス達と駅で別れたセバスチャンとシエルは、避難民達でごった返すバスターミナルで、東部行きのバスを待っていた。「どうぞ。」「これは?」「近くの売店で買いました。あなた、昨日から何も食べていないのでしょう?」「ありがとう・・」シエルは、セバスチャンからスモークサーモンとクリームチーズのベーグルを受け取ると、かぶりつくようにそれを食べた。「おやおや、行儀が悪いですね。」「うるさい。」セバスチャンはシエルの口元をハンカチで拭うと、彼と共に東部行きのバスへと乗り込んだ。「ん・・」「東部に着くまで、ゆっくり休んで下さい。」避難民達が乗るバスとは違うバスに乗り込んだセバスチャンとシエルは、個室型の座席で疲れを癒していた。「ジェイド・・」「ふふ、強がっていても、まだお子様ですね。」セバスチャンはそう呟くと、眠るシエルの髪を撫でた。バスは夜通し走り続け、東部に到着したのは夜明け前の事だった。「これから、どうするんだ?」「まだ、決めていません。取り敢えず、休む場所を探しましょう。」「そうだな。」セバスチャンとシエルは、バスを降りて暫く東部の街を散策する事にした。「ホテルも決まりましたし、暫くこの街に滞在しましょう。」「あぁ。」逃亡生活を続けていた所為か、シエルはホテルのベッドに横になると泥のように眠ってしまった。「伯爵、久し振りだねぇ~」シエルが目を開けると、そこには自分を見つめる葬儀屋の姿があった。「どうして、ここがわかった?」「君の荷物に、GPSをつけていたのさぁ。小生にとって君は宝だからねぇ、あの悪魔に横取りされたくないんだ。」「失礼な方ですね。」セバスチャンはそう言うと、葬儀屋に向かってナイフを放ったが、それは壁に突き刺さった。「酷いねぇ、はるばるここまで来たっていうのに、お茶のひとつも出してくれないなんて酷いねぇ~」「セバスチャン・・」セバスチャンは渋面を浮かべた後、葬儀屋に紅茶を淹れた。「どうぞ。」「ティーパックでも、執事君が淹れた紅茶は美味しいね。」葬儀屋はそう言うと、黒いリュックサックからパウンドケーキを取り出した。「食べる?」「要らない。」「伯爵、そう言えばお兄さんが君に会いたがっていたよ。」「ジェイドが?」「あぁ。」葬儀屋はパウンドケーキを食べ終えると、シエルに一枚のメモを手渡した。「これ、小生の連絡先ね。いつでも電話してもいいよ。」「わかった。」「じゃぁねぇ~」葬儀屋は、嵐のように去っていった。「相変わらずおかしな奴だな・・」「ジェイド様っていうのは、あなたの双子のお兄様ですね?」「あぁ。」「会いたいですか、お兄様に?」「わからない・・」両親を亡くしてから、シエルはジェイドと二人で支え合いながら生きて来た。ジェイドと離れて時折恋しく思っているシエルだが、彼に会いたいかと言われたら、会いたいという即答は出来ない。何故なら―「坊ちゃん?」「済まない、ボーッとしていた。」「色々あって、疲れていたのでしょう。」セバスチャンがシエルの方を見ると、彼は溜息を吐いてベッドから起き上がった。「どちらへ?」「買い物だ。逃げるのに必死で、財布と携帯しか持って来ていないから・・」「坊ちゃんに何かあったら困りますから、わたしも行きますよ。」「・・好きにしろ。」初めて来る街だというのに、土地勘が無いセバスチャンは何故か大型複合商業施設の場所を地図無しで見つけた。「ここは、北部とは違って戦争中だとは思えない程平和だな。」ブランチを海沿いのカフェで取っていたシエルは、海岸で遊ぶ親子連れの姿を眺めた。毎日鬼と人間が殺し合いをし、焼夷弾の雨が降り注ぐ―それが、シエル達にとっての“日常”だった。だが、それ以外の“日常”の存在もあるのだという事に、シエルは今更気づいてしまった。学校へ行き、友人達と他愛のない話しをしたり、買い物を楽しんだり―そんな日常があるのだと。「坊ちゃん?」「ここにある光景が、“日常”になるまでどれ位の時間がかかるのだろうな?」「さぁ、それはわかりません。しかし、“希望”は必ずありますよ。」「そうか・・」「もう日が暮れますから、ホテルに戻りましょう。」「あぁ。」二人が東部の街で暮らしている頃、北部では鬼と人間達との戦いが激化していた。そんな中、ジェイドと葬儀屋は高級ホテル内にあるレストランで、ケルヴィン男爵と会っていた。「漸く会えて嬉しいよ。」「僕もです。」「あぁ、夢みたいだ!」「おっと、そこまでにしてくれないかなぁ。」興奮の余り、涎を垂らしながらジェイドに近づこうとするケルヴィン男爵を、葬儀屋は手で制した。「ねぇ、君の弟は、この街に戻って来ると思う?」「戻って来ますよ。」「その根拠は?」「あの子は僕の、世界で一番大切な僕の弟ですから。」「双子の絆、ね・・」にほんブログ村
2023年10月23日
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※BGMと共にお楽しみください。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部暴力・残酷描写有りです、苦手な方はご注意ください。「坊ちゃん、起きて下さい。」「ん・・」 シエルが目を覚ますと、そこは見慣れぬベッドの上だった。「ここは?」「空き家の中ですよ。住民がこの家を捨てて間もない場所ですから、余り傷んでいなかったようですね。」「そうか・・」 シエルがそう言いながら起き上がろうとすると、激しい頭痛に襲われ、彼は呻いた。「まだ無理をなさってはいけませんよ、坊っちゃん。あなたはまだ、覚醒したばかりなのですから。」「“覚醒”?」「詳しい話は後にいたしましょう。坊ちゃんはゆっくりとお休みください。」「わかった・・」 シエルは、再び眠った。 同じ頃、葬儀屋はベッドの中で眠っている少年の髪を撫でた。「さぁ、後少しで君の弟に会えるよ。」 黒く長い爪で葬儀屋が少年の蒼銀色の髪を撫でると、彼はかすかに呻いた後、寝返りを打った。「おやおや、ご機嫌斜めのようだねぇ。」 クスクスと笑いながら、葬儀屋は彼を見つけた時の事を思い出していた。 跡形も無く破壊された校舎の瓦礫の下敷きとなった彼は、葬儀屋が見つけていなければあのまま息絶えていた筈だった。 だが、葬儀屋はその消えかかった命を再生し、彼をずっと魔物から守って来た。 彼もまた、彼の片割れと同じ、鬼の血が流れている。 彼らの血は希少価値が高く、力を欲する者や永遠の命を欲する者などが、彼らを狙っている。「大丈夫、小生が君を守ってあげるよ。」 だから、今はゆっくりとお休み。―シエル、シエル・・ ジェイドは、闇の中で弟の名を呼び続けていた。 しかし、何処にも弟の姿がない。―シエル! 伸ばしたジェイドの手の先に、弟のものではない誰かの手の感触がした。「やっと目覚めたのかい?」「お前は・・」「小生の事を憶えていてくれたのかい、嬉しいねぇ。」 葬儀屋は、そう言った後ジェイドに微笑んだ。「あの子は何処?無事なの?」「君の弟は無事だよ、安心おし。それよりも、お腹減っていないかい?小生が、君の為に作った料理を振る舞ってあげよう。」「ありがとう。」「君の弟にはいつか会わせてあげるから、その時まで栄養をつけておかないとね。」 葬儀屋は、そう言うとキッチンへと向かった。 一人暮らしに慣れてしまっていて、最低限の家事しかしていなかったので、二人分の食事を作るのには骨が折れたが、何とか作れた。「小生特製のボロネーゼパスタだよ。口に合うといいけれど。」「悪くないね。」 ジェイドはそう言うと、パスタを完食した。 セバスチャンがシエルと人里離れた空き家で暮らし始めてから、一週間が過ぎた。「セバスチャン・・」「良く寝ていましたね、坊っちゃん。」「喉が渇いた・・」「どうぞ。」「ありがとう。」 シエルはセバスチャンからミネラルウォーターのペットボトルを受け取ると、それを一口飲んだ。「セバスチャン、どうして僕はここに?」「それは・・」 セバスチャンが事の経緯を話そうとした時、シエルが突然悲鳴を上げ、顔を両手で覆った。 その雪のような白い肌が、赤く爛れている事に気づいたセバスチャンは、慌てて窓のカーテンを閉めた。(鬼は、日光が苦手だったか・・まだ、ここから出るのは早いですね。)「坊ちゃん、大丈夫ですか?」「セバスチャン、僕は、化物になってしまったのか?」「いいえ、あなたは人間ですよ、坊っちゃん。」 セバスチャンはそう言うと、シエルを抱き締めた。 やがて、シエルはセバスチャンの腕の中で眠ってしまった。(これは、少し厄介な事になりましたね。) セバスチャンが台所で夕食を作っていると、外から人の気配を感じて、思わず包丁を握り締めていた。「セバスチャン、どうした?」「坊ちゃん、わたしが“いい”と言うまで、部屋から出てはなりませんよ。」「おい、セバスチャ・・」 シエルを寝室に閉じ込めたセバスチャンは、台所から外へと出た。「久し振りやなぁ、ブラック。」「あなたは・・」「“あの時”は、ようやってくれたなぁ。」 セバスチャンが外に出ると、派手な髪を揺らしながら、一人の青年がセバスチャンに攻撃を仕掛けて来た。「ジョーカーさん、何故・・」「うちの名前憶えていてくれたんや、嬉しいなぁ。」 青年―ジョーカーはそう言うと、セバスチャンの喉元にナイフを突きつけた。「うちらがここに来たんは、スマイルを“お父様”に会わせる為どす。せやから、あんさんにはここで死んで貰いますえ!」「そうはいきませんよ!」 セバスチャンがジョーカーと激闘を繰り広げている頃、シエルは苛々とした様子でドアの隙間から廊下の様子を見ていた。(一体、何がどうなって・・) シエルがそんな事を考えていると、突然窓ガラスが何者かによって破られた。「よぉ、また会えたな、“スマイル”。」 闇の中から声が聞こえたかと思うと、ドアに数本のナイフが突き刺さった。「俺の事、忘れちまったのか?」「お前は、ダガー!」「憶えていてくれて、嬉しいぜ!」 シエルはダガーの攻撃をかわし、素早く跳躍して鋭い爪で彼の顔を切り裂いた。「おお、やるじゃん!随分会わない内に強くなったな、“スマイル”。」 顔の肉を深く抉った筈なのに、ダガーはそんな事を気にせず平然と笑っていた。「何その顔?鬼の血が流れているのは、お前だけじゃないんだぜ?」(まさか・・) シエルが攻撃を緩めた時、部屋に侵入して来た大男―ジャンボが彼の華奢な腰を掴んだ。 肋骨が激しく軋む音がして、シエルは悲鳴を上げた。「さてと、大人しく俺達と来て貰うぜ!」 シエルは激痛に呻きながら部屋へと出ようとしたが、身体が動かなかった。「坊ちゃん!」「おっと、余所見せんといて!」「くっ・・」 シエルの部屋の窓が破られている事に気づいたセバスチャンは家の中へ戻ろうとしたが、ジョーカーに阻まれた。「まだまだ夜はこれからどすえ!」 ジョーカーは、口端を上げて笑った。(不味いですね・・) このままでは、ジョーカー達を倒す前に自分達が彼らに倒されてしまう。 何とかしなくては―そんな事を思っていたセバスチャンは、遠くから何かが唸る男が聞こえて来る事に気づいた。「ハ~イ、セバスチャン!」「何や、けったいな兄ちゃんやなぁ。」「失礼しちゃう、あたしはれっきとした乙女よ!」 グレルはそう叫ぶと、ジョーカーに向かってチェンソーを振り回した。「良い男ね、あたしが真っ赤に染めてあげるわ!」「へぇ、面白そうやな!」 ジョーカーとセバスチャン達が戦っている時、シエルはダガーとジャンボを睨みつけながら、必死に爪を振り回していたが、それは虚しく空を切った。「いい加減諦めろって。」 ダガーがそう言って笑いながらシエルに近づこうとした時、彼の顔の近くに長剣の切っ先が光った。「危ねぇ・・」「リジ―・・」 夜風に揺れるブロンドのツインテールを見たシエルは、驚愕の表情を浮かべた。「シエル、あなたの事は、今度こそわたしが守ってみせる!」 かつて自分と袂を分かったエリザベスと再会したシエルは、唸り声を上げて蒼い炎をダガーに向けて放った。「クソ、油断した!」 ダガーは、焦げた髪を乱暴に梳くと、舌打ちした。にほんブログ村
2023年09月09日
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※BGMと共にお楽しみください。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部暴力・残酷描写有りです、苦手な方はご注意ください。―ねぇ、あの子にはいつ話すの? シエルが夜中、トイレに向かっている時、両親の寝室から話し声が聞こえて来た。―いつか、“その時”になったら話すさ。 あの時、両親が何を話しているのか、もうシエルが知る機会はなかった。 何故なら彼らは、自分達の前で処刑されてしまったからだ。 両親を殺され、シエルは双子の兄・ジェイドと共に肩を寄せ合いながら生きて来た。―シエル、お前には僕が、僕にはお前が居る。二人で一つ。僕達は、ずっと一緒だよ。 だがその兄は、自分を置いて逝ってしまった。(兄さん・・) シエルが目を開けると、彼は見慣れぬ部屋の中に居た。(ここは・・)「目が覚めたかい?」 部屋に入って来たのは、四十代位の女だった。「こんな器量良し、滅多にお目にかかれないからねぇ、良い買い物をしたよ。」 女の言葉を聞いたシエルは、ここが遊廓だという事に気づいた。「さてと、あんたは早く見世に出した方がいいね。」 女は下卑た笑みを浮かべると、シエルの腕を掴んでそのまま彼を無理矢理起き上がらせると、支度部屋へと放り込んだ。「お前達、この子を飾り立てておくれ。」「可愛い子だねぇ。」「この子には、厚化粧は必要ないねぇ。」 女達に揉みくちゃにされながら、薄化粧を施され着飾ったシエルが廓の見世に座ると、通りを歩いていた男達がどよめいた。―何だ、あの子は!?―まだ小さいのにあの色気、堪らねぇな。「女将さん、あの子どうします?」「いずれあの子は店の看板を背負って立つ子になるからね。大切に育てないとね。」 女将がそんな事を遣手婆と話していると、楼主が慌てたような顔をしながら、女将の部屋に入って来た。「おい大変だ、アラン様がいらしたぞ!」「本当かい!?」「嗚呼、何でも、あの子を身請けしたいとさ!」 突然の事で、シエルは訳のわからぬまま黒塗りの高級車に乗せられ、何処か気味の悪い屋敷へと連れて行かれた。「旦那様、例の子供を連れて参りました。」「そうか。」 使用人に屋敷の奥の部屋へと連れて行かれると、そこには黒髪に紅い瞳をした男の姿があった。「漸く見つけたぞ、シエル・・」 男―アランは、そう言うとシエルの頬を撫でた。 シエルは恐怖の余り、アランから一歩後ずさったが、彼は口端を上げて笑った。「そう恐れるな。お前とわたしは、同胞だ。」「同胞?」「そうか、お前には・・」 アランはそう言うと、前髪の下に隠されたシエルの右目を見た。「やはり、この紫の瞳・・」 アランはシエルを横抱きにすると、彼を寝室へと連れて行き、その華奢な身体をベッドの上に押し倒した。「いや、あぁっ!」 シエルの脳裏に、あの時の光景が浮かんで来た。 聖人の仮面を被った獣達に、穢され、そして・・“シエル。”「どうした?」 そう言ってシエルの顔を覗き込んだアランの首は吹き飛び、彼の鮮血が雨のようにシエルに滴り落ちた。「もしもし、誰かと思ったら、あなたでしたか・・」 セバスチャンはスマートフォンの向こうから聞こえて来る赤髪の死神の甘ったるい声に少しうんざりしていた。『嫌ねぇ、相変わらずつれないわぁ。でもそんな所がス・テ・キ。そういえば、あなたが捜していたガキ、見つかったわよ。』「何処ですか?」『え~と、確かアランっていう、変態野郎の所よ。』 死神―グレルからシエルの居場所を聞き出したセバスチャンがアラン邸へと向かうと、そこは紅蓮の炎に包まれていた。(一体、これは・・) セバスチャンが燃え盛る邸の中へと入ると、シエルは奥の部屋で倒れていた。「坊ちゃん、しっかりして下さい!」 セバスチャンが燃え盛る邸からシエルを救い出すと、安全な場所へと避難した。「あぁ、これは酷い・・」 シエルの背中に火傷がある事に気づいたセバスチャンがその場から離れようとした時、風の唸る音と共に大鎌の刃がセバスチャンを襲った。「伯爵を渡して貰うよ。」「誰かと思ったら、あなたでしたか、葬儀屋さん。今更坊ちゃんに何の用です?」「小生にとって、伯爵はファントムハイヴの血をひく唯一の者だからね。君には渡したくないのさ。」「そうですか。」 セバスチャンは近くの大木の根元にシエルをもたれかかるように寝かせた後、葬儀屋に向かってフォークとナイフを投げつけた。「小生とまた殺り合うつもりかい?ならばまた見せておくれよ、君のシネマティック・レコードを!」 セバスチャンと葬儀屋が死闘を繰り広げていると、黒い軍服を着た男達が彼らを取り囲んだ。「おやおや、誰だい君達は?」「我々は、この町の治安警察だ。アラン大佐殺害事件の容疑者・シエル=ファントムハイヴの身柄を拘束しに来た。」「坊ちゃんは、渡しませんよ。」「おやおや、余所見をしていいのかい?」「くっ!」 セバスチャンは寸での所で葬儀屋の攻撃を避けたが、軍服姿の男達がシエルを拘束しようとしている事に気づいたが、遅かった。「うああぁっ!」「何をしている、相手は子供一人だぞ!」 男達の中でリーダーと思しき男がそう叫んだが、その直後彼の首は虚空の彼方に吹き飛んでいった。(一体、何が・・)「余所見をしている余裕があるのかい?」「それはこちらの台詞ですよ!」 セバスチャンが葬儀屋の大鎌の懐に入ると、間髪入れずに蹴りを彼に喰らわせようとしたが、葬儀屋に投げ飛ばされた。「まったく、君にはがっかりだよ。伯爵を失ってから、弱くなったねぇ。」 セバスチャンは肋骨を折られ、荒い息を吐きながら葬儀屋に応戦しようとしたが、その時何かの影がセバスチャンの上に覆い被さった。「坊ちゃん・・」 月光に照らされたそれは、シエルだった。 蒼銀色の髪を振り乱し、シエルは血走った紫と蒼の瞳でセバスチャンを睨みつけ、獣のように唸った。「坊ちゃん、お止め下さい!」 セバスチャンはそうシエルに呼び掛けたが、シエルにその声は届いていない。 だがー「坊ちゃん?」 シエルは大粒の涙を流し、その涙がセバスチャンの頬を濡らしていた。「坊ちゃん・・」「あぁ、伯爵、小生よりも執事君の方を選ぶんだね。それなら仕方ない。」 葬儀屋は自分に向かって唸っているシエルの鳩尾を殴って気絶させると、彼の髪を優しく梳いた。「また会おう、伯爵。」―ねぇ、あの子にはいつ話すの?あの子が・・ セバスチャンは自分とシエルしか居なくなった雪原を、シエルを抱いて静かに歩き始めた。「これからは、ずっと一緒ですよ、坊っちゃん。」 暖炉で薪が爆ぜる音を聞きながら一人の男が部下の報告を聞いていた。「そうか、あの子が・・」「どうなさいますか、お父様?」「見つけたら殺さないで、ここへ連れて来て。」(漸く君に会える・・シエル。) あの、冷たく手が届かなかった蒼い月を、漸く手に入れられるのだ。―シエルが、鬼の血をひいている事に。(“あの時”は失敗したけれど、今度こそ君を手に入れるよ。) 男―ケルヴィン男爵は口端を上げて笑った。にほんブログ村
2023年08月23日
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※BGMと共にお楽しみください。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部暴力・残酷描写有りです、苦手な方はご注意ください。 1918年12月25日。(今日は、クリスマスか・・) シエル=ファントムハイヴは、そんな事を思いながらベッドの上で物思いに耽っていた。毎年この季節になると、クリスマスをエリザベスと双子の兄・ジェイドと、二人の間に生まれた子供達と共に祝ったものだった。だが、それはもう、色褪せた華やかな思い出の一部に過ぎない。ジェイドはソンムの戦いで死に、エリザベスと子供達は彼の後を追うようにスペイン風邪に罹って亡くなった。(これが・・僕が望んだ結末か・・) 両親を惨殺され、ジェイドを悪魔崇拝の生贄にされたあの日から、シエルは復讐の為に多くの命を奪って来た。 その復讐を果たした今、己の魂を喰らう筈の悪魔も、何処かへと去ってしまった。(自業自得だな。) シエルは激しく咳込み、口元を覆っていた手が真紅に染まっている事に気づいた。(もう、僕は・・) シエルがそう思いながら目を閉じると、誰かが寝室に入って来る気配がした。 だが、目蓋が重くて開けられない。「坊ちゃん、お迎えに上がりましたよ。」 バリトンの美しい声。 その声を聞いただけで、誰なのかわかる。「遅いぞ・・セバスチャン・・」 黒衣に身を包んだ悪魔は、まだ温もりが残る主の唇を塞いだ。「お休みなさい、坊っちゃん・・」 そう言った悪魔の瞳は、涙に濡れていた。 シエルの魂は天へと昇り、輪廻の輪の中へと入った。 彼の魂を喰らわなかった悪魔も、また・・ 世界は残酷で美しい―何処の誰かが、そんな事を言っていたのをシエルは思い出していた。 輪廻の歯車の先に舞っていたのは、鬼と悪魔が支配する世界だった。 シエル達が生きていた時代よりも、この世界はありとあらゆる災厄に包まれている。 感染症、自然破壊、そして戦争。 今日も、何処かで人が死んでゆく。 シエルは、今日も無事に朝を迎えられたことに感謝した。 薄暗い部屋から出たシエルは、自転車で学校へと向かった。「シエル、おはよう。」「兄さん・・」 教室に入ると、シエルは双子の兄・ジェイドに肩を叩かれた。「今日も、“何も”なかったね。」「うん。」 ジェイドと机を並べながら、シエルは時折胸を焦がすような妙な感覚に襲われた。「シエル、どうしたの、顔色悪いよ?」「何でもない・・」 シエルはそう言ってジェイドに笑ったが、彼は少し納得いかないような顔をしていた。 一時間目の授業は体育で、水泳の授業だった。 プールではしゃぐ兄と同級生達の姿をプールサイドのベンチに座って見ながら、シエルはいつの間にか眠ってしまった。―坊ちゃん。 何処からか、自分を呼ぶ声がして目を開けると、自分の前には一人の青年が立っていた。―もうすぐ、会えますね・・「シエル、起きて!」「ごめん、寝ちゃってた・・」「最近、訓練続きで疲れていたから、仕方無いよ。」 ジェイドはそう言って励ますと、シエルに微笑んだ。 放課後のHRが終わり、二人が教室から出ようとした時、窓ガラスが小刻みに揺れた。(何だ?)「みんな、窓から離れろ!」 担任教師の声がした直後、轟音が校舎を揺らした。「先・・生?」 シエルは担任教師が居た方を見たが、彼は瓦礫に潰されていた。「シエル、絶対に僕の手を離さないで!」 悲鳴と怒号に満ちる中、シエルとジェイドは只管走っていた。(一体、何が・・) 廊下には、逃げている最中に炎に巻かれ焼死した者や、ガラス片が突き刺さって死んだ者の遺体が転がっていた。 漸くシエルがジェイド共に校舎の中から出ると、校庭には軍隊のトラックが停まっており、少女達が次々とトラックにまるで家畜のように乗せられていた。「兄さん・・」「大丈夫、僕がついているから・・」「おい、あいつらはどうする?」「殺すには惜しいな。」「あぁ・・」 トラックの近くでシエルとジェイドの方を見て彼らを品定めしていた兵士達は、二人を人身売買用のトラックに乗せた。「嫌だ、兄さん!」「シエル、シエル!」 兵士達から逃れようと暴れる二人だったが、それは虚しい抵抗だった。「へへ、暴れるなよ!」「これから色々と可愛がって貰えるんだから・・」 シエルは兵士達の隙を見てジェイドと逃げようとしたが、その時轟音と炎が彼らを襲った。 シエルは、自分の隣に居た筈の兄の姿が無い事に気づいた。 ジェイドは、爆風に飛ばされ、瓦礫の下敷きになっていた。「兄さん・・」「シエル、お前だけは逃げて・・」 シエルは、何とかジェイドから瓦礫をどかそうとしたが、それはビクともしなかった。「シエル・・」「嫌だ、一緒に逃げるんだ!」 シエルはジェイドの手を握っていたが、その手が徐々に冷たくなっている事に気づいた。「嫌だ、嫌だっ!」 シエルは、冷たくなった兄の手を握り締めながら、いつの間にか泣き疲れて眠ってしまった。 やがて冷たい雨が、シエルの華奢な身体を打った。「シエル、やっと見つけましたよ・・わたしだけの、愛しい坊ちゃん。」 その声は、何処か懐かしいものだった。にほんブログ村
2023年08月19日
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