F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 2
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 0
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 火月が身体の異変に気付いたのは、冬が終わろうとしている頃だった。 最近身体が妙にだるいし、その上食べ物の臭いを嗅ぐと吐き気に襲われるのだ。 そして、月のものが遅れている。(まさか・・) 火月は、そっと下腹部に手をやった。 そこには、微かな命の温もりがあった。 余り無理をしないようにしようと思いながらも、火月は生活を支える為、無理を重ねてしまい、倒れてしまった。「気が付いたか?」「翁主様・・」「身重だというのに、無理をするでない。」「その腹の子は、王様の子であろう?」「はい。」「案ずるな。王位はスノクが継ぐ事になった。」「ですが・・」「大妃様が先程、そうお決めになられたのだ。」「では、王様は・・」「火月、迎えに来たぞ。」 火月は、信じられない思いで有匡を見た。「王様・・」「もう、わたしは王ではない、お前を愛する一人の男だ。」「有匡様・・」 火月は、涙を流しながら有匡に抱きついた。「大妃様、本当によろしいのですか?」「何をだ?」「あんなに可愛がっていた兄上を手放すなど・・」「もうあの子は、親の庇護の下で生きる年頃ではない。好きにさせておけばいいのだ。」 そう言ったテファ大妃は、外の世界へと旅立っていった最愛の孫の事を想った。「王様、王様はどちらに!?」「もう、この国にはおらぬ。」「では何処に!?」「さぁな。」 クオク王妃は、血眼になって有匡と火月の姿を探した。 二人の姿は、船着場にあった。「王様!」「クオク・・」 そう言って自分の方へと振向いた有匡は、腰下までの長い髪をばっさりと切り落とし、西洋の服を纏っていた。「わたくしを捨てるのですか!?」「お前とは、もう終わったんだ。」 有匡はそう言ってクオクに背を向け、船へと乗り込んだ。「有匡様。」 クオクが呆然としていると、船の中から美しいロイヤル・ブルーのドレスを着た女―火月が現れた。「そんな、わたくしを捨てるおつもりなのですか、裏切り者~!」「クオク、わたしの事は忘れろ。」 クオクは船に乗り込もうとしたが、船は船着場から無情にも離れていった。「クオク、こんな所に居たのか。」「スノク様・・」「わたしが居る。」「帰りましょう。」 朝鮮を離れ、英国で暮らし始めた有匡と火月の元に新しい家族が来たのは、英国での生活が漸く安定し始めた頃の事だった。『元気な男の子と女の子の双子だよ、抱いておやり。』 有匡は、産婆からそれぞれ我が子達を腕に抱くと、喜びの余り涙を流した。「ありがとう、火月。本当に、ありがとう・・」「これから、忙しくなりますね。」「あぁ。」 有匡は、窓から吹いてくる心地良い春風を感じ、目を閉じた。(終)にほんブログ村
2020年11月27日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「王様が宮殿にいらっしゃらないとは、どういう事だ!」「それは、わたくし達にもわかりかねます・・」「ええい、この役立たず共め!」 クオク王妃はそう叫ぶと、膳をひっくり返した。「何の騒ぎだ?」「大妃様・・」「お前達、もう下がりなさい。」 女官達は王妃がひっくり返した膳を素早く片付けると、そそくさと部屋から出て行った。「そんなに怒ると、腹の子に障りますよ。」「王様は、わたくしの事を気遣って下さらない!わたくしは、あの方の妻なのに!」 王妃はそう叫んだ後、わっと泣き崩れた。「王妃様は、懐妊された事により気鬱の病に罹っておられるようです。」「気鬱の病だと?」「えぇ。出産されるまでの辛抱かと。」「そうか。」「大妃様、スノク様がお見えです。」「スノクが?」「はい、王妃様の事で・・」「通せ。」「失礼致します、大妃様。」 そう言って大妃の前に現れたのは、有匡の双子の弟・スノクだった。「王妃の事で、話がしたいようだな?」「はい。王妃様の御子の父親は・・」「お前だと、もう知っておる。お前は、どうしたいのだ?」「出来る事ならば、わたしがこの国の王になりたいと・・」「ならば、そうすれば良い。」「良いのですか?」「良いも何も、そなたは王に向いておる。そなたは、きっとこの国を良い国へと導いてくれる事であろう。」「ありがとうございます。」 スノクはそう言うと、深く頭を垂れた。「兄上は今どちらに?」「さぁな。」 今頃、愛しい女と共に眠っているのであろうな―大妃はそんな事を思いながら、盃を酒で満たした。 同じ頃、妓楼の部屋で結ばれた有匡と火月は、一つの布団にくるまって、眠っていた。 何だか、信じられない。 今まで会うどころか、擦れ違う事さえなかった人と恋に落ち、結ばれるなんて。「ん・・」 有匡が寝返りを打った後、火月に抱き着いてきた。「王様・・」「名前。」「え?」「こんな時には、名前で呼べ。」「有匡・・様・・」「そうだ、それでいい。」 有匡はそう言うと、火月に優しく微笑んだ。(何だろうな・・今、とても幸せ。) 幸福な気持ちに浸りながら、火月はそう思い、眠った。「では、また。」「あぁ。」 妓楼の前で有匡と別れた火月は、寒さに震えながら、妓楼の中へと戻っていった。にほんブログ村
2020年11月18日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「はぁ・・」 火月は、何度目かの溜息を吐いた。 その日は、王妃の親族達が王妃の懐妊祝いの宴を開いていた。「いやぁ、めでたい。」「これで我が家は安泰ですなぁ。」「腹の子が男であれば、なおいい。」「そうだな!」 廊下の向こうから時折聞こえてくる話し声に火月が聞き耳を立てていると、そこへ一人の妓生がやって来た。「そなた・・」「あ・・」「丁度良い、こちらへ来なさい。」 その妓生は、そう言って火月の手を取ると、ある部屋へと向かった。「あの・・」「娘は連れて来たのか?」「はい。」「入るが良い。」「失礼致します。」 妓生と共に部屋に入ると、そこにはスンア翁主の姿があった。「翁主様・・」「お前がここで女中として働いているとはな。」「わたくしに、何かご用でしょうか?」「そなた、随分やつれたな?」「はい・・色々とあったので。」「食べなさい。」「おそれながら、わたしは・・」「施しは受けぬと?勘違いするでない、わたしはそなたを憐れんでやっているのではない。」「では、どういうおつもりで?」「兄上が、隣の部屋に居られる。」「え?」「火月・・」「王様、何故・・」「そなたに、会いたくて堪らずに来たのだ。」 有匡はそう言うと、火月を抱き締めた。「やつれたな・・それに、痩せた。」「色々と、ありましたから・・」「そなた、王宮へ来ないか?」「わたくしはもう両班ではありませぬ。」「そなた、何か勘違いしておるようだな?」「勘違いで、ございますか?」「王妃が身籠っているのは、わたしの子ではない。」「では、どなたの・・」「わたしの、双子の弟だ。」「双子の弟、でございますか?」「母は、わたしと双子の弟、そして妹を産んだ後、英国へ逃げた。」 有匡は一旦言葉を切ると、溜息を吐いた。「それよりも、お前はいつまでこんな惨めな生活を送るつもりなのだ?」「それは、わかりません。」「そうか・・」「王様!?」 突然有匡から抱き締められ、火月は驚きの余り目を丸くした。「火月、そなたを今から抱く。」「いけません、王様・・」「逃げるな、火月。わたしはそなたに心底惚れている。」「王様・・」「わたしから逃げる事は、許さん。」 有匡に唇を塞がれ、火月は彼を受け入れた。「王様、愛しています・・」「わたしもだ・・」 月光が、愛し合う二人の姿を優しく照らした。にほんブログ村
2020年11月13日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「それは、確かなのか?」「えぇ。」「兄上、その女が言っている事は確かです。」 王妃の背後から、スンア翁主が音もなくまるで影のように現れた。「そなた、いつの間に・・」「王様・・いいえ、兄上。」 スンア翁主は、澄んだ蒼い瞳で有匡を見つめた。「あの娘と共に逃げて下さい。」「何を馬鹿な事を!」「今からハン大監を解放しなさい、そうすればあなたの命は助けて差し上げます。」「そなた、血迷ったのか!?」「血迷うておられるのはあなたの方でしょう、王妃様?」「ひぃ・・」 背後から首筋に刃物を突き付けられ、クオク王妃は悲鳴を上げた。「もう良い、その辺にしておけ!」「いいえ、そうはいきませぬ。」「誰か、誰か来てくれ!」「人払いさせましたのでどんなに叫んでも誰も来ませんよ。」 淡々とした口調でスンア翁主は持っていた懐剣でクオク王妃の手首を少し切り裂いた。「きゃぁぁっ!」「情けない、他人を痛めつけるのはお好きな癖に、自分が傷つくのはお嫌なのですね。」「嫌、嫌ぁ・・」「これ以上痛い思いをしたくなければ、ハン大監を解放なさい。」「わかったわ!」 こうして、ハン大監は七日振りに火月と再会した。「お父様!」「火月、無事だったか。」「えぇ。でも、お母様とチュヨンは・・ごめんなさい。」「謝るな。命があっただけでも良いと思わなければ・・」「はい。」 火月はそう言うと、父の腕に抱かれながら涙を流した。「火月、これからどうするんだ?」「それはまだ、考えておりません。」「そうか。まぁ、生きていれば何とかなる。」「そうですね。」 ハン大監は、そんな事を話しながら王宮から出て行った。「あの二人、大丈夫かしら?」「何とかなるだろう。」「そうだといいのですが・・」 スンア翁主は、そう言うと溜息を吐いた。「ハン大監は、解放されたのか。」「はい。ですが、彼らは罪人の烙印を押されて生きていけるのか・・」「それは、彼らにしかわからぬ。」「えぇ・・」 王宮から出たはいいものの、火月とハン大監は全ての財産を没収され、生活は困窮を極めた。 髪飾りや自分がそれまで着ていた絹の韓服などを売って生活費の足しにしていたが、その金はすぐになくなってしまった。「はぁ・・」 父は拷問の後遺症の所為で働けず、火月は妓楼で女中として働いていた。 冬の水仕事の所為で、火月の白魚のような手はたちまちひび割れ、傷だらけとなった。(頑張らないと・・)にほんブログ村
2020年11月03日
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※BGMと共にお楽しみください。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。“お嬢様” 何処からか、チェヨンの声が聞こえて来た。 その声を聞いて、火月は彼女がまだ生きているのだと思い、チマの裾を両手で摘みながら、必死に暗い森の中を走った。―チェヨン、お父様、お母様、何処なの!? やがて彼女は闇に包まれ、何も見えなくなった。「火月、しっかりしろ!」「王‥様・・?」 火月が目を開けると、そこには自分を心配そうに見つめている有匡の姿があった。「わたし、わたしは・・」「今は休め。話はそれからだ。」 有匡がそう言って部屋から出ると、火月のくぐもった泣き声が聞こえて来た。 テファ大妃は、その泣き声を聞きながら苦痛に顔を歪めた。「何と惨い事をしたものだ!ハン大監(テガン)だけではなく、その妻と下女まで手に掛けるとは!」「大妃様、ハン家を襲った者達の正体は判りましたか?」「恐らく、クオク王妃側の者達の仕業であろう。」「ハン大監は捕盗庁(ポドチョン)に身柄を拘束されているとか・・出来る事なら、火月と会わせてやりたい・・」「その前に、ハン大監が拷問に耐えれば良いのだが・・」 テファ大妃は、そう言った後眉間に皺を寄せた。 同じ頃、ハン大監は捕盗庁で凄惨な拷問に耐えていた。「素直に白状せよ、王妃様に呪詛をかけたのはお前だな!」「わたしは何も存じ上げませぬ。呪詛など、そんな・・」「とぼけるな!」 捕盗庁の役人は、そう叫ぶとハン大監の前で左右に交差させている木の棒に彼の体重を掛けた。 ハン大監は、痛みの余り気絶してしまった。「ハン大監は、まだ吐かぬのか?」「はい。」「王妃様、これはいくら何でもやり過ぎではありませぬか?一族郎党皆殺しにしただけでも罪深いというのに・・」「お黙り!」「王妃様、王様がお見えです。」「まぁ王様、あなた様がこちらにお越しになられるなんてお珍しい。」「今すぐハン大監を解放しろ!」「それは出来ませぬ。ハン大監はわたくしに呪詛を・・」「それはそなたのでっちあげであろう!ここまでする理由は何だ!?」「あの娘を側室に迎えるのはお止め下さい、王様!」「何故だ、何故お前はあの娘を憎み、彼女の家族を殺した!?」「あの娘は・・王室に災いを齎(もたら)します!何故ならば、あの娘は・・」 王妃の言葉を聞いた有匡は、己の耳を疑った。「あの娘は、王様の縁者なのです。」 外では、雷鳴が轟いていた。にほんブログ村
2020年08月22日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。(母上が・・あの女が生きているだと!?) 王宮を揺るがした上に姿を消したスウリヤが生きている事を知ったスンア翁主は、すぐさま使いを王宮へと向かわせた。「王様、スンア翁主の使いの者が・・」「スンア翁主から?通せ。」「はい。」「王様、大変な事になりました。」 スンア翁主からの文を読んだ有匡は、その文を被の中へと投げ入れた。「スンア様は、何と・・」「すぐにスンア翁主にこれを贈れ。よいか、必ず渡すのだぞ。」「かしこまりました。」 王宮に嵐が起きる事などつゆ知らず、火月は王宮入りへの支度で慌ただしい日々を過ごしていた。「疲れが取れないわ・・」「まぁ、いけません、お嬢様。そのような所で寝そべっては!」 チェヨンが部屋の床に寝そべっている火月を見て彼女をそう咎めた時、外から悲鳴が聞こえた。「今のは、一体・・」「火月、そこに居るの!?」「はい、お母様!一体何があったのですか!」「早く荷物をまとめなさい!」 状況が全く把握出来ない中、火月は急いでチェヨンと荷物をまとめると部屋の外へと出た。 するとそこには、黒衣の男達に取り囲まれている父の姿があった。「父上!」「火月、早く逃げろ!」「ですが・・わたしは大丈夫だ、早く逃げろ!」「お嬢様、早く・・」 火月は父に背を向け、後ろ髪をひかれる思いで、その場から去った。「母上、あの者達は一体・・」「あの者達は、お前の命を狙っているのです。」「何故、そのような・・」「火月、あなたはこれからチェヨンと共に王宮へ行って、王様に助けを・・」そう言ったユン氏の胸に、刺客が放った矢が深々と突き刺さり、火月は思わず悲鳴を上げた。「お母様!」「お嬢様、お早く!」「生き延びなさい、火月・・お前だけでも。」ユン氏はそう言った後、息絶えた。「居たぞ、あそこだ!」「逃がすな、殺せ!」 火月とチェヨンは必死に刺客から逃げて王宮へと向かったが、その途中でチェヨンは転んでしまった。「チェヨン、大丈夫?」「お嬢様・・」 チェヨンを助け起こそうとした火月は、刺客が彼女の喉元を切り裂くのを見て悲鳴を上げた。「死ねぇ!」 刺客が火月の頭上に剣を振り翳した時、彼の胸に矢が突き刺さった。「火月、無事か!?」「王様・・」 チェヨンの返り血を全身に浴びた火月は、有匡に抱きついた後、安堵の余り気を失ってしまった。にほんブログ村
2020年06月27日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。有匡と艶夜―スンア翁主(オンジュ)を産んだ母親は、妓生であったが、元は両班の名家の娘だった。 彼女の実家は、前王の信頼の厚い重臣であったが、政敵の謀略に巻き込まれ、没落した。 両班の身分から奴婢となった有匡達の祖母は、昔の栄華を取り戻す為に、娘を妓楼へと売った。 妓生となった彼女の娘は、その美貌と伽耶琴の名手として名を馳せ、王の寵愛を得た。 しかし、彼女の出自を知っている王の母は、断固として彼女を受け入れようとはしなかった。「王様、あの娘は逆賊の娘です。この母の目が黒い内は、あの娘を絶対に王宮入りさせませぬ!」「母上・・」 やがて、王の側室となった有匡の母は王妃を差し置いて有匡を妊娠した。 その事で、有匡の祖母をはじめとする親族達の欲望に火がついた。「スウリヤ、必ず男の子を産みなさい!」 スウリヤは有匡を産み、王妃はスウリヤの親族達によって廃妃へと追いやられた。「これで、後は家を再興させるだけだわ!」 しかし、有匡の祖母は欲をかいた事が仇となり、前王の母・大妃によって謀反人として捕らえられ、一族諸共斬首の刑に処された。 スウリヤは、幼い有匡を大妃に託し、王宮から姿を消した。「スウリヤ様は、今どちらに・・」「それはわたしも、大妃様も知らぬ。しかし、母上はきっと何処かで生きていると、わたしは信じている。」「そうですか・・」「火月よ、お前が王宮入りする事によってあらぬ噂をばら撒く者が現れるだろう。だが、、そのような者と決して同じ土俵の上に立つな、わかったな?」「はい、王様。肝に銘じます。」「そなたの義姉の事は、残念に思う。」「お悔やみのお言葉、ありがとうございます。」「では、また会おう。」 有匡はそう言って火月に微笑むと、王宮へと戻っていった。「火月、これからお前に色々と仕込まねばなりませんね。」「わかりました、お母様。」 火月が王宮入りの支度に慌しくしている中、スンナ翁主の元に一人の男がやって来た。「そなた、何者だ?」「わたくしは文観と申す者。わたくしは翁主様にある事をお伝えしたくて、こちらに参りました。」「わたしに、伝えたい事だと?」「少し、お耳を貸して頂けないでしょうか?」「わかった。」 謎の男からある衝撃的な事実を知らされたスンア翁主は、驚きの余り目を丸くした。「それは確かなの?」「はい。」「そうか、下がってよい。」にほんブログ村
2020年04月04日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「ねぇ、聞いた?王様の新しい側室のこと?」「えぇ、勿論!」「何でも、王妃様直々の命で側室になられた方だとか・・」「どんな方なのかしら?もしかしたら、絶世の美女なのかしら?」「そうかもしれないわね、あんたには無理そうだから!」「何よそれ、酷い!」「そなた達、口よりも手を動かしなさい!」 尚衣院の女官達がそんな事を言い合いながら仕事をしていると、すかさず彼女達の元に提調尚宮(チェゴサングン)がやって来た。「あら、そういえば火月は?」「さぁ・・でもお姉さんがあんな事になってしまったから、暫く喪に服すとか言っていたわね。」「あの子のお姉さんは、実は病死じゃなくて自殺だったのでしょう?」「さぁ・・」「さ、仕事しましょ、仕事!」 同僚達が仕事に励んでいる頃、火月は自宅にある自室で何度目かの溜息を吐いていた。「お嬢様、これからどうなさいますか?」「そんな事は今考えられないわ。」「王妃様はどうしてお嬢様にあんな事を?」「わたしに聞かれても、わからないわ。」「そうですわね。」 チェヨンがそう言って溜息を吐いた後、外が急に騒がしくなった。「一体何が起きたのかしら?」「さぁ・・」 火月がそう言って首を傾げた後、ユン氏が突然部屋に入って来た。「火月、すぐに母屋へ来なさい!」「お母様、一体何があったのですか!?」「話は後でするわ!さぁ、わたしと来なさい!」 母・ユン氏に連れられて火月が彼女と共に母屋へ向かうと、そこには王の姿があった。「王、王様・・」「そなたに会いに来たのだ。」王はそう言うと、火月に向かって優しく微笑んだ。「王様、わたくしは・・」「王妃が言った事は、余り気にせずともよい。」王―有匡(ありまさ)はそう言うと、ユン氏に人払いを命じた。「そなたはわたしが周囲の者達から何と言われておるのか、知っておろう?」「はぁ・・」「お前も既に知っている事だろうが、わたしとスンア翁主(オンジュ)が血の繋がった兄妹だという事は・・」「えぇ、知りませんでした!」「そうか・・わたしの祖母―つまり母方の祖母にあたる方が、大妃(テビ)様に対して謀反を企てた事があった。」「それで、どうなったのですか?」「大妃様は祖母とその一族を、斬首の刑に処した。母方の祖母が大妃様に謀反を企てた理由は、わたしだったのだ。」「それは、一体どういう事なのですか?」「そなたにだけ、真実を話そう・・」 有匡は少し目を閉じた後、静かに母方の祖母が何故謀反を企てたのかを話し始めた。にほんブログ村
2020年03月14日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「火月、短い間によくこれまでに見事な品を仕上げてくれたな、礼を言うぞ。」「有り難きお言葉、光栄にございます、大妃(テビ)様。」 宴の痕、火月は大妃の部屋に呼び出され、彼女から褒美の品を受け取った。「火月よ、お前の望みは何でも叶えてやりたい。そなたとわたしが会った事は、天からの宿命だとは思えぬ。」「恐れ多きお言葉にございます、大妃様。」 火月がそう言って俯いていた顔をゆくりと上げると、テファ大妃は妖しい笑みを口元に湛(たた)えていた。「大妃様?」「そなたは、王様の事をどう思っておる?」 思いがけぬ質問に、火月は動揺して何も答える事が出来なかった。「大妃様、そのような質問をしては火月が困ってしまうではありませんか。」 部屋の入口から凛とした声が聞こえたかと思うと、サラサラと衣擦れの音を立てながらスンア翁主(オンジュ)がやって来た。「スンア、何の用だ?」「大妃様、先程わたくしの部屋に、このような文が投げ込まれました。」そう言ってスンナ翁主が大妃に手渡した文には、大妃とスンア翁主を批判する内容が書かれていた。「その文は、一体誰が・・」「これと同じような文が、市場にも貼られています。」「何だと、それはまことか!?」「はい。」「一刻も早く、この文を書いた者を探し出せ!」大妃はそう叫ぶと、胸を押さえて蹲(うずくま)った。「大妃様!?」「誰か、薬師を呼べ!」大妃が突然倒れ、王宮内は騒然となった。「大妃様がお倒れになったなんて、これからどうなるのかしら?」「王妃様のご親族が黙っておられないわよ、絶対に。」「そうね・・」尚衣院の女官達がそんな事を話していると、提調尚宮(チェゴサングン)が彼女達の前に現れた。「そなた達、口ではなく手を動かしなさい!」「申し訳ありません!」 火月が黙々と大妃の靴に刺繍を刺していると、そこへ突然クオク王妃がやって来た。「王妃様、突然こちらにいらっしゃるなど、一体どうなさったのですか?」 突然の来訪に慌てふためく提調尚宮を尻目に、クオク王妃は真っ直ぐ火月の元へと向かった。「そなたに、話しがあって来たのだ。」「は、はい・・」 クオク王妃の部屋へと彼女と共に入った火月は、クオク王妃が自分に向ける厳しい視線に気づいた。「火月、そなた王様の側室にならないか?」「王妃様?」「今すぐ、ここで決めろ。」にほんブログ村f
2020年02月08日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 モランと火月達に名付けられた白鼠は、よく食べよく寝た。「なんだかこの子を見ていると、仕事の疲れが取れるわ。」「わたしもです、お嬢様。」「最近、大妃様の衣装に花の刺繍を毎晩遅くまで刺しているから、目が疲れて堪らないわ。」「もうすぐですね、大妃様の祝いの宴。」「えぇ、もうひと頑張りしないとね。」「目の疲れに効く薬湯をどうぞ、お嬢様。」「ありがとう、頂くわ。」 チェヨンが部屋から出た後、彼女はチュヨンに呼び出されていた事を思い出し、彼女の部屋へと向かった。「チュヨンお嬢様、チェヨンです。」「入って。」「失礼致します。」 チェヨンがチュヨンの部屋に入ると、彼女は幽鬼のように蒼褪めていた。「チュヨンお嬢様、どうされたのですか?どこかお身体が・・」「ねぇチェヨン、今から言う事は誰にも話さないと約束してくれる?」「はい、チュヨンお嬢様。」 チュヨンは、三ヶ月前、己の身に起きた事をチェヨンに話した。 掌学院の女官として宴に出た時、チュヨンは泥酔した男に乱暴され、望まぬ妊娠をしたのだった。「お願い、火月には何も話さないで。」 それから数日後、チュヨンは家族に宛てた遺書を残し、護身用の刃物で頸動脈を切り裂き自害した。「あぁ、何て事でしょう・・」「お可哀想に、あんな酷い目に遭わなければ、チュヨン様は寿衣(スゥイ)ではなく、花嫁衣裳を纏っていらしたのに・・」 使用人達がそう話すのを偶然にも聞いてしまった火月は、その時義姉の身に何が起きたのかを知った。「許さない・・必ずわたしが姉様の仇を討ってやる!」 火月はそう呟いた後、チュヨンが遺した髪飾りを握り締めながら嗚咽した。「火月お嬢様、失礼致します。」「チェヨン、どうしたの?」 泣き腫らした目で火月がチェヨンを見ると、彼女も泣き腫らした目で火月を見ていた。「チュヨンお嬢様が、これを・・」 震える手でチェヨンが火月に手渡したのは、生前チュヨンが残した、火月に宛てた遺書だった。“火月、突然こんな形でこの世を去ってしまってごめんなさい。どうかわたしの仇を討とうなんて考えないで。わたしは、あなたの幸せだけを願っているわ。お父様とお母様を頼んだわよ。”「姉様・・」 悲しみの中、火月は大妃の古希を祝う宴に出席した。「大妃様の衣装を見ろ・・」「何と見事な刺繍だろう・・」「あの大妃様の隣に居る金髪の女官が作ったものだそうだ。」「ハン大監の養女か。何でも、王様に気に入られておるとか。」「・・ほう、それは良い事を聞いたな。」ある男はそう言うと、口端を歪めて笑った。にほんブログ村
2020年01月05日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「お嬢様、お夜食をお持ちし・・きゃああ~!」 主の部屋に夜食を運びに来たチェヨンは、火月の胸の上に乗っている白鼠(しろねずみ)を見て悲鳴を上げた。「チェヨン、この子は大丈夫よ。」「そ、そうですか?」「ほら、わたしがつついてもこの子ぐっすりと寝ているわ。」「野鼠にしては太ってはいませんか?」 チェヨンはそう言いながら、主の胸の上で眠っている白鼠の丸くなった腹を見た。「きっと何処かで飼われていたのでしょう。」「猫ならわかりますが、鼠を飼うなんて、その人はとんだ変わり者ですわね。」「そうね。」 火月とチェヨンがそう言って笑い合っている頃、王宮ではある騒ぎが起こっていた。 王が溺愛している白鼠・ドンベク(椿)が王宮から消えてしまったのだ。 「殿下、どうかお許しください・・」 そう掠れた声で己の額を地面に擦り付けんばかりにひれ伏している飼育係の男を、有匡は軽く足蹴にした。「其方の見苦しい言い訳など聞きたくなどない、下がれ。」「ひ、ひぃ!」 男は慌てて王宮殿から去った。「すぐにドンべク様の絵を都中に貼るのだ!見つけた者には褒美を取らせよ!」 内侍府長官・チェ=ヨンスクはそう言うと、都一腕の良い絵師にドンべクの“似顔絵”を描かせた。翌朝、賑わった市場の看板に、ある物が掲げられた。「この白鼠を見つけたら、褒賞金二百両だとさ!」「王様も随分と酔狂な事をなさるんだね。」そう言いながら民が見上げているのは、昨夜火月とチェヨンが会った白鼠の似顔絵だった。「可愛いわね、この子。鼠と呼ぶのは可哀想だから、名前を付けてあげましょう。」「何という名前をつけるんですか、お嬢様?」「モラン(牡丹)というのはどうかしら?この子にピッタリじゃない?」「素敵ですわ、お嬢様。モラン、良かったわね。」そうチェヨンが白鼠に話し掛けると、白鼠は嬉しそうにチュウと鳴いた。にほんブログ村
2019年12月27日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 スンア翁主が尚衣院から去った後、火月は提調尚宮(チェゴサングン)に呼ばれた。「其方はまだ尚衣院へ来てまだ日が浅い故、わたしが其方を指導してやろう。」「有難き幸せにございます、提調尚宮様。」「余り時間がない故、其方にわたしの技術のすべてを叩き込んでやる。」 その日から、火月は寝食を忘れ、提調尚宮の教えを身につけていった。「火月、大丈夫?最近眠れていないんじゃないの?」「大丈夫よ、姉様。顔を洗えば眠気が吹き飛ぶから。」「駄目よ、少し休みなさい!」 義姉・チュヨンからそう言われ、火月は針仕事の手を止めて自室で休むことにした。 同じ頃、母屋では、火月の養父・ハン大監が酒を飲んでいた。「火月は大妃様から良くしていただいているそうじゃないか。王様にも気に入られたようだし、もしかしたら火月は王様の側室になるかもしれないな。」「あなたは呑気でいいですね。火月の顔が最近やつれている事などご存じないからそのような事が言えるのですわ。」「何がそんなに気に食わないんだ?」「火月は働き過ぎです。宮中に上がってまだ二日も経たぬというのに。」「だがな、火月が大妃様の衣装を作る事など、滅多にない機会だぞ!」「あなたは出世の事ばかり考えていらっしゃるのね!娘達の事はどうでも良いのですか!」 そう言うとハン大監の妻・ユン氏はチマの裾を乱しながら部屋から出て行ってしまった。 「全く、あんなに怒る事はないだろうに。」 ハン大監は溜息を吐いてそう呟いた後、酒を呷った。 すっかり寝入ってしまった火月が目を覚ますと、何かの影が素早く横切ったのを彼女は見た。 その影は、白くて丸々と太ったネズミだった。 ネズミは火月を見つめると、小さな手を火月の胸の上に置いた。にほんブログ村
2019年11月01日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「あ~、疲れたぁ。」 商衣院での勤めを終え、帰宅した火月はそう言うなり自室の床に寝転がった。「お帰りなさいませ、お嬢様。お仕事初日はどうでしたか?」「色々と疲れてしまったわ。宮中は人間関係が複雑なのね。」「まぁ、色々と派閥がありますからね。大妃様派と王妃様派で分かれていますし、その事で宮中全体がピリピリしているのですよ。」「あなた意外に宮中の情報通なのね、チェヨン。」「わたしも毎日宮中に出入りしているので、嫌でも宮中の噂は耳に入ってきますよ。」「そうなの。ねぇ、スンア翁主様と王妃様は何故犬猿の仲なのかしら?」「さぁ、詳しい事はわたしも存じ上げません。」「宮中の噂話についてはもう考えたくないわ。今は疲れて寝たいの。」「お休みなさいませ、お嬢様。」「お休み、チェヨン。」 翌日、火月が商衣院へ出勤すると、そこには何故かスンア翁主の姿があった。「火月、そなたを待っていた。」「翁主様、わたくしに何か御用ですか?」「近々、大妃様の古希を祝う宴が開かれる。その為に大妃様がお召しになる衣装を其方に作って欲しい。」「わ、わたくしがですか!?」「わたしは其方を信頼しておる。」「有難く、そのお役目を引き受けさせて頂きます。」そう言って翁主に頭を下げた火月の身体は、緊張で震えていた。にほんブログ村
2019年10月23日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「まぁ王妃様、ご機嫌麗しゅう。」 スンアは笑顔を浮かべながら、クオク王妃に挨拶したが、王妃は不快そうに鼻を鳴らした。「王妃、其方がこちらに来るなど珍しい。王様に何かあったのですか?」「大妃様、王様の動物好きは異常です!猫を部屋で買うのはおかしくはありませんが、鼠まで寝所に持ち込み、添い寝するなど、想像するだけでもおぞましい!」「王様は貴女と共寝するよりも、動物と共寝する方が良いのですよ。」「翁主、おやめなさい。」「まぁ、わたくしには魅力がないと?」「そのような事は言っておりませんわ。」「さぁ、どうだか。」 スンアと王妃との間に、見えない火花が散っていた。「あの、わたくしはこれで失礼致します。」 火月はそう言うと、チマの裾を摘まんでその場から去った。「火月、遅かったわね。一体何があったの?」「それがね・・」 火月が同僚の女官に、王妃と翁主がやり合っていた事を話すと、彼女は溜息を吐いた。「スンア翁主様と王妃様は犬猿の仲なのよ。」「まぁ、どうして?」「色々と複雑なご関係なのよ、お二人は。」「そうなの・・」「そこの二人、私語は慎みなさい!」 上司である提調尚宮(チェゴサングン)から叱られ、火月達は慌てて自分達の仕事へと戻った。「あの火月とかいう新入り女官、気に入りましたわ。」「翁主、人嫌いであるお前が初対面の相手を気に掛けるなど珍しいこと。」「好きで人嫌いになったわけではありませんわ、お祖母様。あの女官、確かハン大監末娘だそうですね?この前の宴で伽耶琴を披露していたので、てっきり掌楽院の女官になったと思いましたのに、意外でしたわ。」 スンア翁主は、髪に挿した簪を弄りながら、口端を上げて笑った。「何かよからぬ事を企んでいるのではないのだろうね、翁主?」「そういえば、もうすぐお祖母様の古希を祝う宴が開かれますわね。あの女官にお祖母様の衣装を縫わせてみてはいかが?」「あの女官を宮中から追い出そうというのですか?」「いいえ、あの者の実力を知りたいのです。」「好きになさい。」 大妃と翁主がそんな話をしている頃、王は女官の膝枕を愛でながら微睡んでいた。「まぁ王様、このようなお姿を誰かに見られでもしたらどうします?」「見られてもよい。」「まぁ、悪いお方・・」にほんブログ村
2019年10月18日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「久しいな、スンア。」「その名でわたくしを呼ばないで下さいませ、大妃(テビ)様。その名はあの忌まわしい女がわたくしに与えたもの。」「チャン氏は義理とはいえ、其方の育ての母には変わりない。」「あの女を一度も母だと思った事はございませぬ。」 これ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、大妃は翁主(オンジュ)に近況を尋ねた。「妓楼では皆お前に良くしてくれているか?」「えぇ、窮屈な王宮での生活よりも、妓楼での生活の方がわたくしの性に合っています。それよりも、兄上はご息災でいらっしゃいますか?」「あの方は相変わらずです。人に心を閉ざし、動物にだけ心を開く。」「それは仕方のない事ですわ、大妃様。あのような事があった後に人を信じろと言う方が・・」「口を慎みなさい、翁主。」「あの事をこれからも隠し通せるとでも?あの女がした事は・・」 その時、部屋の外で大きな物音が聞こえ、大妃とスンアが扉を開けると、一人の女官が呆然とした様子でそこに立ち尽くしていた。「其方、何者だ!」 「も、申し訳ございませぬ!決して、立ち聞きしていた訳では・・」「其方、見ない顔だな?名を何と申す?」「火月と申します。大妃様、わたくしはこれで失礼いたします。」「おや珍しい、貴女が王宮にいらっしゃるなんて。」 火月の背後から現れたクオク王妃は、そう言ってスンアを睨んだ。にほんブログ村
2019年10月15日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次創作小説です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「王妃よ、王の御前ですよ、控えなさい。」 突然声を荒げた王妃をそうテファ大妃は窘めたが、興奮した王妃はおもむろに目の前に置いてあった料理の膳を薙ぎ払った。 この宴の為に一流の料理人が贅を尽くした料理が、一瞬して床に散らばり無となる瞬間を火月は黙って見ているしかなかった。「気分が優れないのでこれで失礼いたします。」「王妃様、お待ちください!」 王妃が突然宴席を退出し、暫く周囲は騒然となった。「大妃様、その者は?」 呆然としている火月の前に、髪を結わず、夜着姿の王が現れた。「この者はハン大監の娘で、明日から尚衣院の女官となる火月です。」「火月と申します。」 そう王に挨拶した火月は、夜風にたなびく王の艶やかな黒髪に見惚れてしまった。「顔を上げよ。」「はい・・」 火月がゆっくりと顔を上げると、王の切れ長の黒曜石の双眸が、彼女の白皙の美貌を捉えていた。「美しい色の瞳をしているな。赤はわたしが一等好きな色だ。」 王はそれだけ言うと、宴席から去った。「火月、もう下がって良いぞ。」「はい、大妃様。失礼致します。」 大妃に一礼し宴席から去った火月は、チェヨンの顔を一目見るなり、その場にへたり込んでしまった。「お嬢様、大丈夫ですか?」「大丈夫な訳ないでしょう、すごく緊張したんだから!」「お嬢様、暗くなる前に帰りましょう。」「えぇ、わかったわ。」 火月とチェヨンが家路に着こうとしていた頃、都一の妓楼・蝶夢楼の一室では、一人の妓生(キーセン)が玄琴(コムンゴ)を奏でていた。「スンア翁主(オンジュ)、大妃様がお呼びです。」「その名で私を呼ぶな。」※翁主(オンジュ):王の側室が生んだ王女の呼び名※妓生(キーセン):朝鮮王朝時代、歌や舞、書画などで宴席に花を添えた芸者のこと。朝鮮王朝時代には、両班・中民・賤民という厳格な身分制度が存在し、妓生は賤民に位置する。にほんブログ村
2019年10月09日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次創作小説です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 王は、雪で白く染まった宮殿の中庭を散策していると、何処からか美しい伽耶琴(カヤグム)の音色が聞こえて来ることに気づいた。 その音色に惹かれ、王が宴席へと姿を現すと、テファ大妃(テビ)の隣に座っていたクオク王妃が安堵の表情を浮かべていた。 王妃は、王の視線が自分ではなく、伽耶琴を奏でている娘に向けられている事に気づいた。「王妃、どうしたのです?」「媽媽(マーマ)・・」 王妃の様子が少しおかしい事に気づいたテファ大妃は、近くに控えていた女官の耳元に何かを囁いた。 無事演奏を終えた火月は、テファ大妃に向かって、養母・スアから教えられた宮廷式のお辞儀をした。「顔を上げなさい。」「はい、大妃様。」 火月が恐る恐る俯いていた顔を上げると、大妃は彼女に優しく微笑んでいた。「素晴らしい演奏であったぞ。」「有難きお言葉にございます、大妃様。」「わたしも伽耶琴を嗜んでいるが、其方ほどの名手は見た事がない。」「光栄に思います、大妃様。」「其方、名は何という?」「火月と申します、大妃様。」「火月よ、其方は明日から尚衣院(サンイウォン)の女官となれ。」「はい・・」 突然の大妃からの命令に火月は戸惑いを隠せなかったが、この場では彼女の命令に従うのが賢明であると思ったので、大妃の言葉にそう答えた後、再び大妃に向かって一礼した。「大妃様、そのような事を勝手に決められては困ります!」 大妃の隣に座っていたクオク王妃の棘が含まれた声が、火月の耳朶に突き刺さった。 火月は視線の端でちらりとおろおろとした様子で自分を見つめるチェヨンの姿に気づき、彼女の元へと戻りたかったのだが、足が急に萎えてしまったかのようにその場から動くことが出来なかった。「宮中の女官を決めるのは王妃であるわたくしの仕事です!」「王妃よ、この者を尚衣院へ入れると決めたのはこのわたくしです。」「ですが、納得がいきませぬ、大妃様!」 火月を中央に挟んで、互いに譲らぬ様子の大妃と王妃の姿に、周りの両班達は暫し酒を飲む手を止めて事の成り行きを静かに見守っていた。※尚衣院(サンイウォン):王の衣装などを作る部署。にほんブログ村
2019年10月08日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。その日は、稀に見る大雪が降り、都中が一面白く染まった。王が住まう宮殿では、今日も雪見の宴と称し、多くの両班達が酒を飲み、美味を貪り、妓生達の鮮やかな舞に酔いしれた。だが、その宴の席には、主役である王の姿はなかった。「王様はまた宴においでになられぬのか?」「はい、媽媽。王様は今宵も体調を崩されているとか・・」「困ったものだわ。こう宴においでになられぬのでは、臣下への示しがつきません。」テファ大妃はそう言って大きな溜息を吐くと、宴席へと戻った。「王様、宴にお出にならなくてもよいのですか?」「宴は好かぬ。あの女は今頃苛々としている事だろう。」「まぁ、悪いお人。」王にしなだれかかりながら、女官はそう言ってクスクスと笑った。「もうさがれ。」「わかりましたわ。」女官は少し不満そうな顔をした後、王の寝所から去った。白粉臭い女の代わりに彼の膝上に乗って来たのは、白と茶のまだら模様の毛を持った猫だった。「人よりも、お前達の方がわたしは好きだ。お前達は決して嘘を吐かないからな。」王の言葉に答えるかのように、猫は愛らしい声で鳴いた。「お嬢様、大丈夫ですか?」「わたしが大丈夫に見える、チェヨン?」先程から緊張で、伽耶琴を落とさないように火月は手の震えを止めようとしていた。今宵の宴で、彼女はテファ大妃の前で伽耶琴を演奏することになっていた。どうしてそうなってしまったのかというと、時は宴の日の朝に遡る―「お父様、今何とおっしゃいましたか?」「今宵の宴で、お前は大妃様の前で伽耶琴(カヤグム)を披露するのだ。」「突然そうおっしゃられても・・心の準備が出来ておりません!」「これは決まった事なのだ、火月。」父親はそういうと火月の部屋から出て行った。「お嬢様、これからどうなさいますか?」「まだ宴まで時間があるから、練習するしかないでしょう!」宴が始まる時間まで、火月は伽耶琴の練習に励んだ。「お嬢様、頑張ってください!」「ええ、行ってくるわ。」侍女のチェヨンに励まされ、火月はチマの裾を捌きながら宴席の中央に座った。「あの娘は?」「彼女はハン大監(テガム)の娘・火月です、大妃様。」「ほう、美しい娘だ。わが国には見ぬ瞳と髪の色をしているな。」「えぇ、噂によると彼女は捨て子だったそうで・・」「ますますあの娘に興味が湧いた。」そう言った大妃は、静かに伽耶琴を膝上に置いた火月を見つめた。火月が伽耶琴を爪弾くと、それまで酒を飲み騒いでいた両班達が、まるで水を打ったかのように静まり返った。「殿下(チョナ)、どちらへ?」「少し外へ散歩に行く。」火月の伽耶琴の音色に誘われるかのように、王はそう言って寝所から外へと出た。にほんブログ村
2019年10月05日
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