F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士 2
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う 2
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 8
天上の愛地上の恋 昼ドラ風時代パラレル二次創作小説:綾なして咲く華 2
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 0
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 0
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:最愛~僕を見つけて~ 1
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
FLESH&BLOOD×黒執事 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧の器 1
腐滅の刃 平安風ファンタジーパラレル二次創作小説:鬼の花嫁~紅ノ絲~ 1
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 5
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 0
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~ 1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 0
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 5
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 4
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 1
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
名探偵コナン×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 0
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1
「FLESH&BLOOD」二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。海斗がロンドン中心部、貧民街の中にある“善きサマリア人の病院”で看護婦として働き始めたのは、五年前の事だった。チューダー=スクールをから逃げるように姿を消した後、海斗はロンドンの貧民街へと向かった。そこには、海斗と和哉がチューダー=スクールに入学する前に世話になった下宿屋があった。「あら、どうしたんだい?その顔を見ると、何処か訳有りのようだね。」下宿屋“かもめ亭”の女将・エイプリルは、そう言うと海斗を建物の中へと入れた。「あんたがここに戻って来たのは、お腹の子の父親絡みで困っているからなんだろう?」「どうして・・」「わかったかって?あたしは貧民街で長い間看護婦として色んな女達を見て来たんだ。それにあんた、さっきからずっと下腹を撫でているじゃないか。」「俺・・」「丁度、あたしが働いている病院が人手不足でね。看護婦の働き口ならあるよ。」「ありがとうございます。」「きつい仕事だから、覚悟しておくんだね。」こうして海斗は、エイプリルの紹介で“善きサマリア人の病院”の看護婦として働く事になった。エイプリルが言った通り、看護婦の仕事はきつかった。一日中働き、家に帰ると海斗は泥のように眠った。「カイト、大丈夫かい?あんた顔色が悪いよ?」「少し、気分が悪くて・・」臨月を迎えた海斗は、仕事中に産気づいた。帝王切開で産まれたのは、ジェフリーと瓜二つの顔をした男児だった。海斗は息子をジェフリーと名付け、エイプリル達に助けて貰いながら必死に彼を育てた。「母さん、これ何?」「これは、お前の亡くなったお父さんから貰った大切な物なんだよ。」「ふぅん。」ジェフリーは、成長するにつれてどんどん父親に似てくるようになった。「それにしても、この五年もの間、あんたも良くやったね。」「そうですか?」「看護婦の仕事は重労働で休みなしだから、入って来ても辞める子が多くてねぇ。」「俺には、守らなければならない存在が居るので・・」「ジェフリーは、元気に育ってくれて良かったよ。あの子の父親には、会ったのかい?」「いいえ。」「どんな事情があるにせよ、親子の縁は切れないからね。」「ええ・・」「さてと、あんたはもう帰りな。後はあたしがやっておくからさ。」エイプリルと病院の前で別れ、海斗が息子の待つ家へと帰ると、家の前には立派な四頭立ての馬車が停まっていた。「カイト。」「ナイジェル・・どうして、ここがわかったの?」「キットに頼んで、お前の消息を探って貰った。あいつは教師をしている傍ら、探偵もしているんだ。」「そう。」海斗はナイジェルを自分の家の中へと招き入れた。「大したものはないけど・・」「こんな所に、お前は住んでいるのか?」「あなたは、何をしに来たの?」「ジェフリーに頼まれて、お前達を迎えに来た。だから・・」「どうして、ジェフリーは・・」「あいつは、お前を必要としている。」ジェフリー=ロックフォードは、母の棺が地中深くに埋められている様子を、静かに眺めていた。「ジェフリー、あの子との婚約を破棄するなんて、何を考えているの!?」「俺は、誰とも結婚しない。」エセルは怒り狂ってジェフリーに掴みかかろうとしたが、その前に彼女は胸を押さえてそのまま倒れて動かなくなった。エセルは、心臓発作で亡くなった。「驚きましたわ、数日前はあんなにお元気でいらしていたのに・・」「一体何があったのかしら?」エセルの葬儀に参列した人々は、そんな事を言いながら時折喪主を務めているジェフリーを見た。「ジェフリー様・・」「暫く、一人にさせてくれ。」「はい・・」ジェフリーは、エセルの書斎に入ると、彼女が生前つけていた日記に目を通した。そこには、海斗の消息を彼女が捜していたが、結局見つからなかった事が書かれていた。(母さんが、カイトを捜していた・・)「坊ちゃま、お客様がいらっしゃいました。」「客?」「はい、グラハム様とおっしゃる方で・・」「わかった、すぐ行く。」ナイジェルが待つ客間にジェフリーが入ると、そこにはナイジェルとキットの姿があった。「二人共、どうしたんだ?」「よぉ、ジェフリー。お前さん、カイトを捜しているんだろう?」「どうして、そんな事を・・」「知っているかって?俺は探偵業もしていてね。お前さんのお袋さんにカイト捜しを頼まれたんだ。」「だが、日記にはカイトが見つからなかったと・・」「嘘を吐いたのさ。カイトは今、イースト=エンドに居る。」「それで?」「聞いて驚くなよ。カイトには、五歳になる坊主が居る。お前さんに似たやんちゃな子だ。」「だから、あいつは・・」「これからどうするのかは、お前さんの自由だ。それじゃぁ、俺はこれで失礼するぜ。次の劇の脚本を書かなきゃいけないんでね。」キットはそう言ってナイジェルとジェフリーに向かって手を振ると、客間から出て行った。「そう。じゃぁ、俺とこの子は一生あなたには会わないとジェフリーに伝えておいて。」「カイト・・」ナイジェルは何か言いたそうな顔をしていたが、何も言わずに去っていった。「母さん、あの人誰?」「あの人は、母さんの昔の知り合いだよ。」(ジェフリーとの縁は、とっくに切れていた筈なのに・・)ジェフリーを寝かしつけた後、海斗は首に提げているペリドットの指輪を暫く眺めた。数日後、ナイジェルは再び海斗達の家にやって来た。「また来て、何の用?」」「カイト。」「ジェフリー、どうして・・」「お前を迎えに来た。」ジェフリーはそう言うと、海斗を抱きしめた。有無を言わさず、彼は海斗とジェフリーを馬車で自分の屋敷へと連れて行った。「俺達をどうするつもりなの?」「それは、これから考える。」海斗達が馬車から降りると、屋敷の中から一頭のグレイハウンドが出て来た。「こらジョン、お座り!」ジェフリーの声を聞いたグレイハウンドは、その場に座り込んだ。にほんブログ村
2022年10月30日
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※BGMと共にお楽しみください。「FLESH&BLOOD」二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。ポツリ、と冷たいものが頬を濡らしていると気づいた時、海斗とジェフリーは土砂降りの中に居た。「降って来たな。」「あそこに厩舎があるよ。」二人は雨宿りの為、厩舎へと向かった。「あぁもう、ズボンまで濡れちゃった。」海斗がそう言いながら濡れた服を脱いでいると、ジェフリーが背後から彼女に抱きついて来た。「どうしたの、急に?」「したくなった。」激しい雨が厩舎を打ち付ける中、ジェフリーと海斗は時を忘れて愛し合った。全てが終わった後、海斗はジェフリーの胸に顔を埋めて眠った。 雨が止み、二人が学園へと戻ると、二人の姿を見つけた和哉が、彼らの方へと駆けていった。「海斗、今まで何処に行っていたの!」「ごめん、遠乗りに行っていたら雨に降られちゃって・・」「濡れた服を着替えないと、風邪をひくよ。」「う、うん・・」和哉はジェフリーを睨みつけると、海斗の手を掴んで彼から引き離した。「海斗、君はもう、あいつとは一緒にならない方がいい。」「何でそんな事言うの?和哉、変だよ。」「僕を変にさせたのは、君だ!」苛立ちの余り、和哉は海斗を寮の部屋に連れて行くと、そう叫んで部屋の壁を殴った。「和哉・・」「どうして、僕じゃないの?僕はずっと君の傍に居たのに・・それなのに!」「和哉、ごめん。でも、俺はジェフリーの事が好きなんだ。」「彼と一生添い遂げられると思っているの?現実を見てよ!」「わかっているよ、そんな事!」海斗と和哉が口論していると、ラウルが部屋に入って来た。「お取込中、失礼するよ。ノックもせずにごめんね。」ラウルはそう言うと、和哉と海斗を見た。「はい、これ。」ラウルは、海斗に謎の液体が入った硝子壜を手渡した。「避妊薬だよ。まぁ、効果はわからないけれど。」口元に薄笑いを浮かべながら、ラウルはそう言うと部屋から出て行った。「和哉、彼は・・」「君の事を、彼に話したよ。」「どうして?」「君を守る為さ。ねぇ海斗、お願いだからジェフリーと別れて!このままだと、君は不幸になる!」「俺が不幸になるか、ならないかは、俺自身が決める。」「わかった。僕はもう、何も言わないよ。」和哉は、そう言うとそのまま海斗に背を向け、去っていった。それが、彼と袂を分かった瞬間だった。「カイト、カズヤに何か言われたのか?」「あなたと、別れろって・・」「俺は、お前と別れたくない。」「俺も、出来る事ならあなたと一緒に居たい・・死が、俺達を分かつまで。」この狭い学園という名の檻の中では、自分とジェフリーは自由でいられる。だが現実が甘くないという事を、二人共知っていた。「ジェフリー、少し話がある。」「どうした?お前がそんな顔をするなんて珍しいな、ナイジェル。」「放課後、俺の部屋に来い。」「わかった。」「あの赤毛も連れて来い。」「あぁ。」放課後、海斗がジェフリーと共に監督生専用の部屋へと向かうと、ナイジェルは三人分の紅茶とショートブレッドを用意して二人を待っていた。「ナイジェル、どうしたんだ?そんなに怖い顔をして?」「さっき、あんたのお袋さんから俺宛に手紙が届いたぞ、ジェフリー。」「あの人が、お前に手紙を?」「あぁ・・あんたの婚約者の、ジョセフィーヌが・・」「ジェフリー、婚約者が居るの?」「海斗・・」海斗は、ジェフリーに婚約者が居る事を初めて知り、怒りと驚きが綯い交ぜになった表情を浮かべた。「俺を、騙したの?」「騙したんじゃない、言えなかったんだ!」ナイジェルの部屋から飛び出した海斗を慌てて追い掛けたジェフリーが海斗の腕を掴んで自分の方へと振り向かせると、彼女は泣いていた。「カイト・・」「お願い、ジェフリー。俺の事はもう諦めて。」「そんな事が出来ないのは、お前も解っている筈だ!」「そうだよ!でもそうしないといけないんだ、あなたと俺は、住んでいる世界が違うから。」クリスマスが近づくにつれ、何処か浮足立った様子の生徒達とは対照的に、海斗は陰鬱な想いを抱えながら過ごしていた。もうすぐクリスマス休暇が来て、ジェフリーは家に帰るのだ―両親と、婚約者が待つ家に。「カイト、起きてくれ。」「うん・・」ジェフリーに揺り起こされ、海斗が呻きながらベッドから起き上がると、ジェフリーは外出着の上に外套を羽織っていた。「何処かへ出掛けるの?」「あぁ。お前も一緒にロンドンに来い。」「うん。」ジェフリーに着替えを手伝って貰い、夜着からドレスへと着替えた海斗は、彼とロンドンで素敵な休日を過ごした。「少し寄りたい所がある。」そう言ってジェフリーが海斗を連れて行ったのは、高級宝石店だった。「ロックフォード様、ようこそいらっしゃいました。」ジェフリーが海斗と共に店の中へと入ると、奥から店主と思しき男が出て来た。「注文した品を見たいんだが・・」「こちらへどうぞ。」二人は、奥にある個室へと案内された。「どうぞ。」店主が恭しい仕草でジェフリーに手渡したのは、一組のペアリングだった。ベルベットの箱を開けると、中からペリドットの指輪が現れ、海斗は驚きの余り素っ頓狂な声を上げた。「良かった、ぴったりだ。」「こんなの、貰えないよ・・」「お前の為に作ったんだ。お願いだから受け取ってくれ。」「ありがとう、大切にする。」夢のように素敵な、魔法のような時間は、瞬く間に過ぎていった。クリスマス休暇が終わり、ジェフリーが家から学園へと戻ると、海斗は姿を消していた。“捜さないでください”海斗のベッドの上には、ジェフリーに宛てた一通の手紙が置かれていた。ジェフリーは血眼となって海斗を捜したが、その消息はわからなかった。それから、五年の月日が経った。ロンドン中心部にある病院で、一人の看護婦が忙しく働いていた。「カイト、シーツを新しいのと替えてきな!」「はい!」にほんブログ村
2022年09月25日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。 「どうした、ジェフリー、一体何が・・」海斗の悲鳴を聞きつけてジェフリーの部屋へと向かったナイジェルは、そこで全裸の親友の姿を見た後、こう叫んだ。「服を着ろ!」数分後、ジェフリーと海斗は廊下に立たされ、ナイジェルの尋問を受けていた。「一体どういう状況で、二人共裸でベッドの中に居たんだ?」「えっと、それは・・」「年頃の二人がベッドの中でする事と言えば、ひとつしかないだろう?」「こんな時にふざけている場合か!」監督生のナイジェルに睨まれ、海斗は思わず目を伏せた。「お前が、日本から来た編入生か?」「は、はい・・」「ナイジェル、カイトを責めないでくれ。俺があんなパーティーに出たばっかりに・・」「パーティーだと?」「後で話すから、ナイジェル、俺達に風呂に入る時間をくれないか?」「わかった。」「ありがとう。」部屋に戻った海斗とジェフリーは、そのまま浴室へと向かった。「昨夜、何があったの?」「俺達は裸だったが、俺はお前に一切触れていない。」「じゃぁ、あなたは見たの、俺の裸を?」「・・あぁ。」「それなのに、あなたの言葉を信じろって?」「カイト・・」「触んなって・・んん!」海斗は自分の肩を抱いたジェフリーの手を払い除けようとしたが、その前に彼に押さえつけられ、唇を塞がれた。ジェフリーの手が、次第に熱を帯び始めた海斗の下半身に触れた。「ひっ・・」「声を出すな。」海斗の固く閉じられた蕾の周辺をジェフリーが指で愛撫すると、そこから透明な蜜が滴り落ちた。「こんなに濡れて・・」「あっ、それは・・」「力を抜け。」ジェフリーは、海斗を浴室の壁に立たせると、後ろから彼を勢いよく貫いた。膣肉が切れる音と共に、海斗の太腿に鮮血が滴り落ちた。海斗は苦痛に顔を歪めたが、彼の意思とは反比例してジェフリーのものを締め付けた。耳元で、ジェフリーが荒い息を吐いていた。「顔見せて、お願い・・」海斗がそう言うと、ジェフリーは彼の身体を反転させ、その唇を貪った。「こんなの、俺じゃない・・」「大丈夫だ。」「あっ、やだぁっ!」突然繋がったままジェフリーに身体を抱えられ、海斗は悲鳴を上げた。「わかるか・・お前の良い所に当たっているぞ。」「ゴリゴリされるの、嫌ぁ・・」「俺ももう限界だ!」ジェフリーの動きが激しくなり、彼は呻いて欲望を海斗の中に吐き出した。「はぁぁ・・」脳髄を焼き切られるかのような甘い痺れに犯され、海斗は意識を手放した。ジェフリーが海斗の身体を清めると、海斗の蕾から欲望の残滓が滴り落ちた。それを見た瞬間、ジェフリーは海斗の上に覆い被さった。「愛している、カイト・・」ジェフリーの声は、虚空に消えた。「カイト、昨夜もジェフリーと盛り上がったのか?」「え?」「ほらよ。」演劇の授業で、海斗はキットからそう言われ、彼から手鏡を渡され、首から胸にかけてキスマークが点々とついている事に気づいた。「もう、最悪!」「化粧で隠してやるから、心配するな。」「ねぇキット、いつ気づいたの・・俺の身体の事。」「最初からさ。まぁ、そんなに悲観する事ないさ。」キットはそう言うと、海斗のウェストをコルセットで締めた。「何で俺はいつも女役なんだよ。たまにはジェフリーがドレスを着たっていいだろう!」「おいおい、冗談を言うのは止してくれ。女役は華奢な子の方が似合うんだ。」「え~、ジェフリーだったら華やかなドレスの方が似合うと思うよ。エリザベス一世のドレスなんて、俺が着たらギャグじゃん!」「そうかぁ、そう言う事なら今度の劇の配役を変えようかな。迫力ある女王の役は、お前さんには似合わないな。」「何それ、酷い~!」海斗はそう言って頬を膨らませると、丁度教室にジェフリーが入って来た。「二人共、何の話をしているんだ?」「いやぁ、今度の劇でお前さんに女王の役をやって欲しいと思ってな。」「俺が女役か、面白そうだ。」ジェフリーはそう言うと、笑った。「ジェフリー、サー・ロードが呼んでいる。」「わかった。」教室に入って来たナイジェルは、海斗をジロリと睨んだ。(え、何?俺何か悪い事した?)金色のバッジをつけたナイジェルは、灰青色の瞳で海斗を睨んだ後、キットを見て驚愕の表情を浮かべた。「何故お前がここに居る?」「そんなに驚く事は無いだろう?俺はこの学園で演劇の教師をしているんだ。それよりも、カイトをそんなに睨まないでやってくれ。」「こいつが来てから、ジェフリーがますますだらしなくなっているんだ!」「おいおい、親友をこの坊やに奪われたからって、嫉妬するなよ~」「嫉妬なんてしていない!」ナイジェルはそう叫ぶと、教室から出て行った。「気にするな。」「ねぇ、キットはナイジェルの事を知っているの?」「まぁな。ナイジェルは色々と複雑な家庭で育ってな。ジェフリーと同じだ。ジェフリーは、あのロックフォード伯爵家の嫡子だから、色々と抱えているものがあるんだろうな。」「そう・・」この狭い学園の中でも、海斗は自分を見つめる生徒達の目が冷たい事に気づいた。その理由が、海斗が貴族ではないからだ。日本に居た時、海斗は自分達が華族である事に少し誇りを持っていた。しかし、英国の貴族社会の縮図であるチューダー=スクールで過ごす内に、英国では海斗はただの平民なのだと思い知った。(俺とジェフリーは、この学園の中では幸せな気持ちでいられるんだ・・)海斗が沈んだ気持ちを抱えながら厩舎へと向かうと、そこには先客が居た。「カイト、どうしたんだ?そんな暗い顔をして?」「ううん、何でもない。」深紅のジャケットに白いズボン、そして黒い鍔付きの帽子を被った、乗馬服姿のジェフリーは、惚れ惚れとする程美しい。「遠乗りなんて、久し振り。」「そうだな。」二人が遠乗りをして暫く経った頃、快晴だった天気が怪しくなり、次第に曇天となった。にほんブログ村
2022年09月05日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 ジェフリーの母・エセルは、吐き捨てるような口調で言うと、冷たい目で海斗を睨んだ。「行こう、カイト。こんな奴をお前に会わせるんじゃなかった。」「待ちなさい、ジェフリー!」 ジェフリーはエセルに背を向け、海斗の手を掴んで大広間から出て行った。「痛いよ、ジェフリー!どうしたの、急にあんな・・」「あの女はレイシストだ。あの女にとってアジア人は、使用人程度にしか思っていないんだろう。」 ジェフリーはそう言うと、漸く海斗の手を離した。 暗闇に包まれた薔薇園には、海斗とジェフリー以外、誰も居なかった。「さっきは、いきなり外に連れ出してしまって済まなかった、カイト。あの女と同じ空気を吸いたくなかったから、あんな事を・・」「俺も、ババア・・母さんとは仲が悪いんだ。母さんだけじゃない、家に居ても俺は全然安らげない。」「だから、ここへ来たのか?」「それもあるけれど、俺は、東郷家の跡取りだから・・」「色々と複雑な事情を抱えているんだな。」 ジェフリーはそう言うと、前髪を鬱陶し気に掻き上げた。「俺の国は、十年前内戦をしていたんだ。その内戦で、沢山の人が亡くなった。俺の親戚も、その内戦で・・」「思い出したくないのなら、言わなくてもいい。」「ううん、この際だから話すよ。」 海斗には、実の姉のように仲良くしていた遠縁の従姉が居た。 彼女は戊辰戦争の際、家族と故郷―会津へと帰っていった。 新政府軍が会津に攻めて来た時、彼女は家族と共に自刃した。「俺、その人の夢を時々見るんだ。その人に一緒に逃げようって言ったら、その人は、“わたしも後で行くから、大丈夫”だって・・でも、その人は・・」「辛かっただろう。」「俺、何で彼女が死ななきゃならなかったのか、今でもわからないんだ。どうしてあんな戦が起きたのか・・」 そう言った海斗の手は、小刻みに震えていた。「もう戻ろう、主役の俺達が風邪をひいて劇に出られなくなったら、大変だ。」「そうだね。」 ジェフリーと海斗が仲良く連れ立って薔薇園から去っていくのを、和哉は木陰から恨めしそうな顔で見ていた。「え、ミュージカル!?」 芸術祭当日、海斗とジェフリーはチューダー=スクールの卒業生で、著名な劇作家、クリストファー・マーロウことキットから思わぬ提案を―というサプライズをされ、驚いた。「そうだ。花の都パリ、赤い風車で繰り広げられる、美しく切ない愛の物語だ。」「キット、いきなりそんな事を言われてもな・・」「大丈夫だ、プロの演出家と役者、舞踏家を呼んである。」「そういう問題じゃないよ・・」「とにかく、今からやれば本番までまだ間に合う!」 こうして、ジェフリーと海斗はプロの演出家達から厳しい指導を受けた。 その結果、ミュージカルと劇は大成功した。 芸術祭が終わった日の夜、チューダー=スクールの大広間で舞踏会が開かれた。「お前は舞踏会には出ないのか?」「平民の俺が出るのはおかしいでしょう?それに・・」「あの女の事は気にするな。」 ジェフリーはそう言うと、海斗の唇を塞いだ。「ジェフリー?」「俺はお前の恋人だ。」「それは、ラウルの目を誤魔化す為の・・」「嘘が、真実になった。俺は、お前の事を愛している、カイト。」 そう言ったジェフリーの蒼い瞳に見つめられ、海斗は驚きの余り言葉を失った。「コルセットの付け方なんて、何処で習ったの?」「まぁ、好奇心で、な。」 ジェフリーはそう言うと、海斗のウェストをコルセットで締め付けた。「苦しい・・ドレスなんて、着たくないや。」「俺は、お前のドレス姿が好きだ。」「俺ばっかり嫌な思いをするのは嫌だ。今度はあなたがドレスを着て。」「それは笑えない冗談だな。」 ジェフリーはそう言うと、海斗のドレス姿を見て溜息を吐いた。「さてと、行こうか?」「うん。」 ジェフリーと共に大広間に入った海斗は、自分達が見られている事に気づいた。 ジェフリーの知人でキットが所属する劇団の衣装係の手によって変身した海斗は、赤毛のかつらをつけ、美しいペールブルーのドレスを着ていた。「俺、おかしくないかな?」「いいや。お前が美し過ぎてみんな見惚れているんだろう。」「だといいけど。」 海斗はそう言うと、ジェフリーと共にダンスを踊った。「ワルツが踊れるのか?」「馬鹿にしているの?ここへ来る前に習ったの。」「そうか。」 海斗とジェフリーがダンスを踊っている姿を、和哉は嫉妬を滲ませた目で見つめていた。「可哀想に、大好きな友人はどんどん悪い男に惹かれていく。」「僕の事は、放っておいてください。」「今夜、ここへおいで。」 ラウルは和哉の燕尾服の胸ポケットに、一枚のカードを入れた。「ジェフリー、俺もう部屋に戻るね。」「俺も一緒に行く。」「おや二人共、お揃いのようで。」「俺達に何の用だ、トレド?」「そんなに怖い顔をしないでおくれ。君達をわたし主催のパーティーに招待するよ。」 舞踏会の後、海斗とジェフリーはラウル主催のパーティーに出席した。「今宵は、内に秘めた欲望を曝け出す日だ、さぁ、楽しもうじゃないか!」 海斗はラウルに手渡されたシャンパンを飲んだ後、急に身体が熱くなった。(何、これ・・) 周りを見ると、皆裸になって乱れていた。「カイト・・」「ジェフリー、早くここから出ないと・・」「暫くは無理だ。」 ジェフリーはそう言うと、海斗に抱き着いた。 その時、何か硬いものが海斗の腰に当たった。(え・・)「ジェフリー、んんっ!」 海斗は急にジェフリーに唇を塞がれた。「カイト・・」 ジェフリーに抵抗しようとしたが、身体に力が入らない。 頭がクラクラして、海斗はその場で気を失ってしまった。「ん・・」 海斗が目を覚ますと、そこはデヴォン寮の、自分の部屋だった。 頭痛がして顔を顰めながら海斗がベッドから起き上がろうとした時、誰かに腰を掴まれてベッドに引き戻された。(誰?) 海斗がベッドの方を見ると、そこには全裸のジェフリーの姿があった。(何で、ジェフリー裸なの?) 暫くして、海斗は自分も裸である事に気づき、悲鳴を上げた。にほんブログ村
2022年09月03日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「何だ、そんなに驚く事か?」「俺に触るな!」 海斗はそう言うと、部屋から飛び出した。(最悪だ、好きでもない奴からキスをされて・・) 誰も居ない中庭で海斗は溜息を吐きながら芝生の上に寝転がった。(俺、これからどうすんの?同室の奴を他の人に変えて貰うように、先生に頼んでみようかなぁ?) 教頭のエリザベスにそんな事を頼んだら、きっと事情を説明しなければならなくなる。(やめておこう。) 自分の身体の秘密を守る為には、あのいけすかない奴とは関わらないようにしよう。 そう決めた海斗だったが、ジェフリーは何かと海斗に絡んで来た。「なぁ、まだ昨日の事を怒っているのか?ほら、これで機嫌を直してくれ。」 朝食の席で、ジェフリーはそう言うと海斗の口にクッキーを放り込んだ。「美味しい・・」「だろう?俺が作ったんだ。」「へぇ・・そんな事で、あんたにほだされたりしないからな。」「そうか。それじゃぁ俺はお前がなびいてくれるまで頑張ることにするよ。」「無駄な努力はしない方がいいよ。」 海斗は冷たい口調でジェフリーにそう言うと、食堂から出て行った。「前途多難だな、ジェフリー。」「あぁ、だが狩りは楽しくないとな。」「余りやり過ぎるなよ。」 ナイジェルはそう言うと、溜息を吐いた。「海斗、大丈夫?」「大丈夫じゃない!も~聞いてよ和哉、同室の奴がさ・・」 ラテン語の授業の前に、海斗は和哉にジェフリーの事を愚痴った。「そうなんだ、大変だね。」「お前と同室の奴はどんな奴?」「まだわからない、かな。」「そう。」 ラテン語の授業が終わり、海斗達は音楽の授業を受ける事になった。「うちにあるピアノよりデカいなぁ・・」『君達かい、東洋の島国から来たという子達は?』 急に背後から気取った声が聞こえて海斗が振り向くと、そこには淡褐色の髪をなびかせた少年が、金色に輝く瞳で海斗を見ていた。『君、名前は?』『人に名前を聞く前に、自分から名乗るのが礼儀だろう?』『驚いた、君スペイン語が話せるの?』 少年―ラウル=デ=トレドは、そう言うと大声で笑った。『じゃぁ、ここで一曲、弾いてみせてよ。』 ラウルは何処か、“お前みたいな人間が、ピアノを弾ける訳がないだろう”というような顔をしていた。 その顔を見た海斗の負けん気に火がついた。 彼はピアノの前に座ると、ショパンの『幻想即興曲』を弾き始めた。「美しい音色が聞こえたかと思ったら、君だったのか。」 音楽教師・ウィリアムは、そう言うと海斗を見た。「すいません、勝手に触ってしまって・・」「いやぁ、君の見事な演奏に思わず聞き惚れてしまったよ。」「あ、ありがとうございます!」 その日の夜、海斗は下腹に鈍痛が走って起き上がると、シーツが経血で濡れている事に気づいた。(あ~あ・・) 汚れたシーツをベッドから剥ぎ取った海斗は、それを持って洗濯室へと向かった。 そこには、誰も居なかった。 洗濯石鹸でシーツを揉み洗いしながら、海斗は深い溜息を吐いた。(こんなの、あっても何の得もないのに・・) 男でも、女でもない身体。 友恵は、海斗を“娘”として育てようとしたが、海斗は激しくそれを拒んだ。 女として生きる事―それは長い髪とドレスで着飾り、噂話や刺繍に精を出す日々を送る―そう、友恵のように。(俺は、こんな事で自分の人生を諦めたくない。) 海斗がそんな事を思いながらシーツを洗い終えようとしていると、背後に誰かの視線を感じて振り向くと、そこには誰も居なかった。「そう・・あの子がねぇ・・」「ラウル様、いかが致しましょう?」「こんな面白そうな話、このわたしが放っておくと思う?」 そう言ったラウルは、淡褐色の瞳をキラリと光らせた。 翌朝、海斗が食堂へと向かうと、生徒達が彼に好奇の視線を送って来た。(何だ?)「カイト、ここ空いているぞ。」「う、うん・・」「おやおや二人共、お熱いねぇ。」 ラウルは取り巻き達を引き連れて、海斗とジェフリーが居るテーブルに座った。「一体何の話だ?」「とぼけるのはおよしよ。昨夜、君の恋人が血で汚れたシーツを洗っているのを見た子が居るのさ。」 ラウルが言いたい事が、ジェフリーはわかったような気がした。「あぁ、昨夜の事か。前戯も無しにいきなり突っ込んで、痛い思いをさせちまってな。」「そう。」 顔を赤くして俯いている海斗の様子を見たラウルは、それで満足したのか、取り巻き達を引き連れて食堂から出て行った。「何であんな事言ったんだよ!」「あぁ言わないと、ゴシップ好きのあいつが納得する訳がないだろう。」「俺はあんたの事が嫌いなのに、今の話だとまるで俺とあんたが・・」「恋人同士みたいに見えるんだったら、その振りから始めてみないか?」「イカレてるよ、あんた!」「良く言われる。」 ジェフリーはそう言うと、悪戯っぽい笑みを浮かべた。 和哉と海斗がチューダー=スクールに留学してから一月が経ち、学園は芸術を愛する季節を迎えた。「え、俺がジュリエット?」「うん、カイトしか居ないと思って!」「ロミオ役は誰なの?」「ジェフリーだよ。恋人達にはぴったりな劇だろ!」「それはそうだけれど・・」 ひょんな事からジェフリーと恋人同士の振りをする事になった海斗は、“ロミオとジュリエット”で、ジュリエットを演じる事になった。「衣装合わせしよう!」「え、ちょっと待って!」 海斗はあっという間に同級生達によってジュリエットに変身させられた。「うわぁ、似合う!」「本当だ~!」「お前達、一体何を騒いで・・」 ジェフリーが教室に入ると、そこには赤毛のジュリエットが居た。「そんなに見ないでよ、恥ずかしい・・」「どう、ジェフリー?」「最高の劇になりそうだな。」 チューダー=スクールの芸術祭を見に、生徒の家族が学園にやって来た。 大広間で、海斗は初めてジェフリーの両親に会った。「初めまして・・」「あなたが、ジェフリーの新しい恋人なの?よりによって、東洋人なんて!」にほんブログ村
2022年09月01日
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「FLESH&BLOOD」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「海斗、大丈夫?」「うん・・」 横浜港で家族に別れを告げ、長い船旅を経て辿り着いたキング・クロス駅で、森崎和哉は蒼褪めている親友・東郷海斗を近くの椅子に座らせた。「まだ、船酔いが・・」「違う。月のものが来ただけ。」「そう。」 海斗は、男女両方の性を持って生まれて来た。 その事を知っているのは、海斗の両親と、森崎家、そして東郷家の使用人達だけだった。「大丈夫、立てる?」「何とか・・」 海斗は下腹の鈍痛に顔を顰めながらも、和哉と共にこれから自分達が通う寄宿学校(パブリック・スクール)行きの汽車へと乗り込んだ。「和哉君、海斗の事を頼むわね。」「はい、小母様。」 英国へと発つ前、和哉は海斗の母・友恵からそう言われ、海斗を託された。 和哉と海斗は、親同士が決めた許婚同士だった。 二人が初めて会った時、日本は、“御一新”の後の混乱に満ちた時期だった。 東郷家と森崎家は元幕臣だったが、共に明治政府の高官となり、洋介と公志はそれぞれ自分の息子達を官費留学生として英国へと送った。「海斗、目的地に着くまで、眠っていいよ。」「わかった、そうする・・」 海斗は座席の上に腰を下ろすと、そのまま目を閉じた。“逃げなさい。”「でも、あなたは・・」“大丈夫、わたしは後から合流します。だから、早く行きなさい。” そう言った白装束姿の女性は、海斗に優しく微笑んで、屋敷の中へと消えていった。「海斗、起きて!」「ん・・」 海斗が目を開けると、汽車は目的地に停まっていた。「もう、生理痛は治まったの?」「うん、寝ていたら良くなった。」「そう。」 和哉と海斗が汽車から降りようとした時、海斗は一人の少年とぶつかった。「ごめんなさい・・」「こっちこそ、済まない。怪我は無いか?」「はい・・」 海斗の目に最初に飛び込んで来たのは、美しく鮮やかな長い金髪だった。 そして次に飛び込んで来たのは、漆黒の燕尾服の上からでもわかる均整の取れた筋肉で、最後に飛び込んで来たのは、宝石のような美しい蒼い瞳だった。「どうした?そんなに俺に惚れたのか?」 そう言った少年は海斗の顎をおもむろに掴んで上を向かせ、その唇を塞いだ。「何するんだ、この変態!」 海斗はファースト・キスを目の前に立っている少年に奪われ、激昂する余り、彼の頬を平手打ちした。 小気味の良い乾いた音が客車内に鳴り響き、その場に居た者達は何事かと海斗と少年を見ていた。「おやおや、威勢の良い挨拶だな。」 少年はそう言うと、口端を上げて笑った。「和哉、行こう!」「海斗、待って!」 汽車から降りた海斗の背中を、少年は見送った。「ジェフリー!」「ナイジェル。」「新学期早々、騒ぎを起こしたのか?監督生の俺がどんな思いであんたの尻拭いをしていると思っている!」「そうカッカッしなさんな、ナイジェル。俺はただ、赤毛の可愛い坊やにキスしただけだ。」 金髪碧眼の少年―ジェフリー=ロックフォードは、そう言って親友のナイジェル=グラハムを見て笑った。「うわぁ・・」 一方、汽車から降りて、駅から馬車に乗り寄宿学校に到着した和哉と海斗は、広大で壮大な校舎を前にして感嘆の声を上げた。「あなた達が日本から来た留学生ね?こちらへどうぞ。」 チューダー=スクール教頭・エリザベスは、二人を校内へと案内した。「カズヤ=モリサキ、あなたはヴィクトリア寮に、カイト=トーゴ―、あなたはデヴォン寮へ・・」「あの、同室ではないのですか?」「何か問題でも?」「いいえ・・」 丸眼鏡越しにエリザベスにから睨まれ、二人は何も言えなかった。「海斗、本当に独りで大丈夫?」「うん・・」 今まで和哉と一緒だったので、初めて海斗は彼と離れ離れになり、初めて独りになる不安を抱えながらデヴォン寮の部屋へと向かった。「ジェフリー、新しいルームメイトですよ、仲良くするように。」「あんた、あの時の・・」「よぅ、赤毛のじゃじゃ馬さん。これからよろしくな。」(最悪・・) よりにもよって、自分のファースト・キスを奪った相手と同室になるなんて、海斗の運は尽きたようだった。「お前、その髪は地毛なのか?」「うん。」「細いな、ちゃんと食べているのか?」「ちょっと、どこ触って・・」 ジェフリーは海斗の細い腰を触りながら、彼が胸に包帯のようなものを巻いている事に気づいた。「包帯なんて巻いて、怪我でもしているのか?」 ジェフリーがそれに触れようとすると、海斗はまるで火傷をしたかのように彼から勢いよく飛びのいた。にほんブログ村
2022年08月31日
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