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今日で2006年も終わりなのですね。不思議な感じです。 さて、それでは、今年読んだおすすめの10冊を紹介します。今年は、82冊の小説・ノンフィクションを読みました。順位をつけることを目的としていませんので、挙げる順番は読んだ順番です。・本多孝好『真夜中の五分前side A』『真夜中の五分前side B』 素敵な物語だったのを覚えています。…ですが、いま自分の感想を読み返すと、なんとなく思い出せる程度。読んだときの感動は覚えていますので、当時の感想通りにおすすめの一冊に挙げます。時計を五分遅らせていることについての女性の言葉は、今も印象に残っています。・川端康成『雪国』 すごく綺麗な物語でした。駒子さんが丁寧に日記をつける描写、ラストの家事の描写がとても印象に残っています。感想を読み返すと、たしかに、三味線の演奏のシーンも感動したのを覚えています。・嶽本野ばら『下妻物語-ヤンキーちゃんとロリータちゃん』 これは面白かったです。大笑いできましたし、イチコさんの真っ直ぐなところに感動したり。自分で感動して引用した部分を読んだだけで、そのあたりのシーンを思い出して涙ぐんできました。森羅万象田んぼというのも明言だと思いますし、ジャスコの偉大さなんかも忘れられません。良かったです(饒舌になってしまいました)。・若竹七海『心のなかの冷たい何か』 重かったです。ですが、とても印象に残っているので、挙げておきます。感想の記事は割と短かったですが(もう少し長く書いたかと思っていました)、読みながらいろいろ考えたことは覚えていますし、なにかしら心に残っています。・黒田清『会えて、よかった』 ノンフィクションから選ぶのは(おすすめの10冊の企画はまだ三度目ですが)はじめてのような。一編一編に考えさせられました。・加納朋子(文)/鈴木健(絵)『ななつのこものがたり』 これは、ファンだからというのもありますが、挙げておきます。温かい物語が素敵な絵本になって、さらに温かく感じて良かったです。そう、寝る前に、一編ずつ読んでいたのでした。素敵な読書体験でした。・筒井康隆『農協 月へ行く』 昨年、七瀬さんシリーズ三部作を読み、筒井さんの作品がとても面白い、と思ったものの、その後なかなか読めていませんでした。今年最初に読んだのが『くたばれPTA』で、相当テンションが上がったので、それから割と筒井さんの短編集を読むようになりました。『くたばれPTA』にしても本作にしても、選ぶのは完全に自分の好みなのですが、こちらを選びました。最近映画化された「日本以外全部沈没」が、本書に収録されているのも良かったですが、なにより表題作が面白いです。宇宙飛行士の浜口さんの台詞がたまりませんでした。最後に収録されている「村井長庵」は、読んでいて不快な気分にもなったのですが、どの短編も風刺がきつすぎるくらいに効いていて、とても面白かったです。・法月綸太郎『頼子のために』 『生首に聞いてみろ』がけっこう高い評価を受けていましたが、私にはそんなでもなかったです。この『頼子のために』は、なんというか、重たいには重たい話なのですが、こう、なんというか、凝縮されている感じがあります。たしかに、殺人事件自体は一件だけで、ミステリとしては派手ではないと思います。さしたるトリックもないですし。なのですが、一つの手記を手がかりに、矛盾点を暴いていく過程や、頼子あるいはその父親を取り巻く人間関係、暗鬱な気分になるラストなど、謎解きとしても読み物としても深いように感じています(こちらも饒舌になってしまいました)。・小路幸也『東京公園』 温かい物語でした。少し(?)成就の難しい恋があって、その切ない感じも良いですし、登場人物の全員が自分の抱えていることを綺麗に消化できているわけではないにしても、一つの家族が絆を深めることになります。同じ家に住むという意味や、文字通りの親族ということを考えると、一つどこか多くの家族が絆を深めていますね。感想を読み返して、ある登場人物が犯した罪を償っていく過程、そしてその償いを課し、彼が全てを果たしたとき、優しく受け入れてくれた家族のことを思い出して、あらためて感慨深い気持ちになりました。 ・筒井康隆『時をかける少女』 これは良かったです。私は、SFはそれほど読まない…というか、正直読まず嫌いなのですが、そんなことは関係なしに面白かったです。二番目に収録された「悪夢の正体」も良かったです。『農協 月へ行く』とはずいぶん雰囲気の違う作品集になっています。 今年は、この10冊を挙げておきましょう。 自分への特別賞(?)として、カミュの『異邦人』を読了したことを挙げておきたいと思います。数年来の挫折を克服したのでした。ーーー 今年も、お世話になりました。良いお年をお迎えください。 2007年も、よろしくお願いします。(一月はなかなか記事が書けないと思いますが…)
2006.12.31
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久々の更新です。 2004年、2005年と続けているので、今年も12月30日に一年間を総括するとします。 今年は…なんとなく記事には書いていませんでしたが、8ヶ月ほど就職活動をしていました。来年度からは社会人…のはずです。特に内定者の集まりなどがないので、実感がないのでした。 その中で、新聞を読むようになりました。これは、プラスだったかなぁと思っています。もっとも、不快なニュースがあまりにも多いので、新聞やニュースを見ることなく、仕事や研究に没頭するのも一つのあり方だとは今でも思いますが。 就職活動の後は、ひたすら修士論文の準備です。昨年の総括では、勉強は研究室でしてめりはりをつけるようにした、と書きました。今年も、12月初頭頃まではそうだったのですが、その後は資料を自宅に持ち帰って作業を進めています。作業をするときに、ばーっと資料を広げるので、こたつ机のある自室の方がやりやすいのでした。もっとも、自室の資料では間に合わない調べごとをしたいときなど、研究室(あるいは大学)がいいなぁと思ったりもするのですが、そこは一長一短ということで割り切るしかありません(苦笑) そのため、うすうす予感はしていましたが、ほとんど趣味の読書の時間をとらなくなりました。今月は加納朋子さんの短編集を読んだだけです(記事も、加納さんの本を買った記事と、その感想しか書いてませんね)。最近は、梶井基次郎さんの短編集『檸檬』を、一日10ページほど読み進めています。筒井康隆さんの短編集を買って読んだり、もちろん未読の本を読んだりしたいのですが、もうしばらく禁欲的な生活を続けることになります。 本の関連でいえば、今月は、西尾維新さんの『化物語(下)』と、島田荘司さんの『最後の一球』も買いました。島田さんのは、御手洗シリーズでは今までにない装丁ですね(笑)。スポーツものは苦手なのですが、はてさて。野球を題材にしているらしい御手洗シリーズで、ある程度免疫ができるでしょうか。 明日も、例年通り、今年読んだおすすめの10冊を紹介したいと思っています。 …年末年始という感慨が全くない生活を送っていますが、明後日には2007年なのですね。本当にあっという間です。
2006.12.30
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加納朋子『モノレールねこ』~文藝春秋、2006年~ 加納朋子さんの新刊です。8編の短編が収録されています。 以下、いつものように内容紹介と感想を。「モノレールねこ」 ふてぶてしく不細工で太ったねこが、僕の家によくやって来るようになった。お母さんに言われて、お父さんと一緒に遠くまで捨てに行ったが、なんとねこは戻ってきた。ねこには、今までなかった首輪がついていた。ぼくは、誰がこのねこを飼っているのかと思い、名案を思いつく。首輪に、メモを書いた紙を挟んだのだ。その後、僕と「タカキ」の、ねこを通じた文通が始まるが、悲しい形で文通が途切れてしまう。 ほのぼのと読み進めていたところを、がつんと突き落とされるような感じでした。太っていたねこが、僕たちがエサをあげることでますます太ってしまい、悲しい結末を迎えます。僕の悲しみ、自責の念がどれだけ大きかったことでしょう。しかし、物語のラストには、やはり救いがありました。「パズルの中の犬」 フリーマーケットで購入した、真っ白のパズル。作っていくうちに、明らかにそこに犬がいることが分かってきた。私は、ふと思い立ち、おばと連絡をとる。おばの家で見せてもらったアルバムには、パズルに現れた犬が写った写真もあった…。 この話では、「私」とお母さんの関係に胸がずきずきしました。というか、そのお母さんの態度に対してのいらだちというか。幻想的な雰囲気をもつ作品でした。「マイ・フーリッシュ・アンクル」 中学生の私は一人で留守番、家族は海外旅行。私が部活の合宿に参加していると、先生から驚くべき連絡が届く。家族が、旅行先で全員死亡したという。それから、私は、全く生活能力のないおじと暮らすことになった。だらだらと過ごすおじが、二学期がはじまると急に家事をはじめるが、しない方がマシのような出来で…。おじにいらだちを感じながら、それでも日々は過ぎていく。 このおじさんのだらしなさには、たしかにいらだちを感じますが、この短編集の中でとても印象に残っている話の一つでもあります。このおじさんというのは、「私」の父の弟にあたる人なのですが、そのお母さん(つまり、私にとってのお祖母さん)が倒れてから、こんな風になってしまったといいます。そんな、母親が倒れたらだらしなくなるというなら、私のお父さんだってそうなるはずじゃない、と憤る「私」ですが、おじさんがそうなった理由が分かったときは、どこか心が和らぎます。もちろん、馬鹿には変わりないと思いますが…。この馬鹿なおじさんだからこそ、家族の死を乗り越えていくのも、ひどく重いことではなくなったのかな、という気もします。「シンデレラのお城」 一人で暮らすのは楽だけど、周りの目が厳しくなったと感じる私は、居酒屋で知り合ったミノさんに偽装結婚の相談を持ちかける。ミノさんは、よかったら僕が相手になると言う。とんとん拍子に話は進み、二人は「結婚」した。しかし、ミノさんは、死に別れた妻、<瑞樹>と一緒だった。他の人には見えないけれど、ミノさんには見えるのである。私も、次第に<瑞樹>の存在を受け入れる。「三人」の、少し不思議な共同生活がはじまった。 このお話も、幻想的な感じです。<瑞樹>さんにできた赤ちゃんの名前から、「私」が思い出す過去には少し怖い感じもします。最近読んだ、筒井さんの短編を連想していました。そして、ラストは切ないです。「私」が考えるように、少し歪で、しかし美しい物語だったと思います。「セイムタイム・ネクストイヤー」 娘が、幼くして死んだ。娘の誕生日に、家族三人で泊まったホテルに部屋をとった私。まさか、という思いもあったが、私はホテルで、娘に会った。その後、ホテルのバーのバーテンは、このホテルでは、死者に会うことができるという、と話してくれた。私は、毎年同じ日にホテルに部屋をとり、娘に誕生日プレゼントを渡すようになる。 一年に一度だけ、死んだ娘に会える。その日のためだけに生きていく…。そういう母親の話です。「フロントの男」とバーテンダー。この二人が、とても素敵でした。ラストでのフロントの男の、そして二人の男性の言葉が良いです。「ちょうちょう」 有名ラーメン店を営業するおじに、二号店を任された俺。スタッフは、おじさんの片腕と言われた上田さんに、おじさんの親戚の蘭子さん、そしてバイトの恵さん、俺の四人。当初は多くの客があったが、不良二人とのいさかいがあってから、一気に客足が遠のいてしまう。きっかけは、インターネットでの中傷記事だった。 店長の「俺」には、いろいろとつらいことが一気に襲ってきます。それでも、スタッフに支えられながら、なんとか店を続けていく。そこで重要な役割を果たすのが、第一印象の悪い蘭子さんというのは、意外なような、それでいて自然のような。こちらも、ラストの描写が綺麗です。「ポトスの樹」 俺の父親は、最低の男だった。俺のおやつやおかずを食べるなんて小さなことから、俺の貯金や給食費に手を出したり…。俺はがんばって大学を出て就職して、親元を離れた。しかし、親が死ぬまでにも、親と顔をあわさざるをえないときがくる。結婚である。俺は、恋人に父親の話をしてきており、あわせるつもりもなかったが、彼女はどうしても俺の父親に会いたいという。そこで、俺は思い出したくもない話をする。父親と二人で釣りに出かけたとき、父親は溺れた俺を見殺しにしたのだった。 …実際には、俺はなんとか川から上がることができたのだけれど。「マイ・フーリッシュ・アンクル」と同じくらい心に残る物語です。考えてみれば、どちらにもどうしようもない男が出てくるという点で、似ていますね…。溺れた息子を見殺しにした父親にも、しかし過去があります。その話を聞いて、「俺」の心のひっかかりがすっととれたとき。私などは、ものすごく考えてしまいました。自分の命の重さ。他人の―家族の命の重さ。あまりにも重いのだと思います。きれい事を言わない主人公の父親は、その過去も考えると、筋が通っているとも思います。これでもう少し、普段もまともな人だったら、同じ見殺しにしていても印象が変わる気がするのですが、そこは、この性格だから、良い物語になっているのかもしれません。 この物語も、ラストの一行がとても素敵でした。「バルタン最期の日」 フータという少年につられてしまったザリガニの俺は、その日からフータの家の、家族の一員となった。快適な住居を得るまでには、一日かかったのだけれど…。家族に元気にふるまう「お父さん」が、俺に泣き言を言ったり。急に「脱皮」した「お母さん」に、「お父さん」とフータが戸惑ったり。もどかしく思いながら、俺は見守っていた。やがて「お父さん」は、家族旅行に行こうか、と提案する。決して裕福ではない一家が旅行に出た夜、泥棒がやってきた。 ザリガニの一人称です。割と楽しい性格のようで、文章も面白かったです。 家の外での苦しみを吐き出さないお父さんとフータ。二人の苦しみに気付きながら、何も言えず、無理に明るくふるまうお母さん。ザリガニのバルタンと一緒に、もどかしい気持ちになりながら読み進めます。そんな家族が、少しでも前向きになろうと出かけた夜。家に侵入しようとする泥棒に対してバルタンが考えることは、涙なしには読めませんでした。素敵な物語でした。ーーー 最近は家で作業を進めているのですが、やたらと疲れがたまってきていたので、以前のように一気に数時間の読書時間を作ることはできませんが、少しずつ短編を読み進めていました。疲れたときに加納さんの短編を読む。その後の作業もがんばる気持ちになれる、素敵な時間でした。やっぱり読書はいいなぁ、としみじみ思います。…あと一ヶ月くらい、今までのように読書することは難しそうですが。 そして、加納さんの小説は面白くて安心できるなぁとあらためて感じました。上の紹介の通り、ミステリではありません。いわゆる日常の謎ミステリで活躍されている加納さんですが、もともとが優しくて温かい物語を書かれる方ですし、ミステリの要素がなくても、やはり、面白かったです。
2006.12.21
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