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緑川聖司『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』~ポプラ文庫ピュアフル、2013年~ 図書館と本が大好きな小学5年生、茅野しおりさんが活躍するシリーズ第2弾です。 本編5話、エピローグ(紹介は省略)、そして番外編が収録された、連作短編集です。それでは、簡単に内容紹介と感想を。―――「第一話 移動するドッグフードの謎」ある日は図書館の外に置かれていたドッグフードが、図書館の中に置かれるようになっていった。なぜ図書館の中にドッグフードが置かれるのか?「第二話 課題図書」図書館で知り合った女性が、姪のために本を探しているという。わたしの課題図書が読みたい、というその言葉の意味とは?「第三話 幻の本」図書館近くの喫茶店「らんぷ亭」で話をしていたしおりと美弥子たちは、昔読んだ物語を探しているというおばあさんに出会う。物語を探すしおりたちは、意外なところでその物語を見つけ、戸惑ってしまうこととなる。「第四話 空飛ぶ絵本」講演会の帰り道、友人に声をかけたしおりだが、その友人は泣いていて、その日からしおりと話さなくなってしまった。彼女に何があったのか?また、風邪をひいた日に、母がほんの数分でしおりが読みたがっていた本を手にしてきた理由とは?「第五話 消えたツリーの雪」図書館ロビーに飾っていたツリーから、なぜ飾り付けの雪が消えてしまったのか?「番外編 九冊は多すぎる」「九冊は多すぎる…」。電話でそう言っていた男の言葉の意味とは?――― 第1巻に引き続き、こちらもとても楽しめました。 特に気に入ったのは第二話と第三話です。第二話は、娘への接し方(本について)を気をつけなければと自省させられる作品。第三話は、素敵な運命を感じる話です。
2016.07.30
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高田崇史『QED~flumen~ホームズの真実』~講談社ノベルス、2013年~ QEDシリーズ外伝にあたる物語と、シリーズ完結記念で部数限定で作成されたパーフェクトブック(の白黒版)の2編が収録された、嬉しい1冊です。 まずは、簡単にflumenの内容紹介と感想を。――― 知人でシャーロキアンの緑川友紀子に誘われ、崇と奈々は大学教授で有名なシャーロキアンの瀬室が開催する展覧会を訪れた。 貴重なコレクションを楽しむのもつかの間、一同は再び事件に巻き込まれる。会場となった建物の裏手にあたる崖の下に、メンバーの女性が落下していたのだ。しかも女性は、綺麗な紫色のスミレを手にしていた…。 メンバーの中の微妙な人間関係もはらむ中、殺人未遂事件として捜査が進められる。 そして崇が語る、紫式部『源氏物語』の真相とは…。――― ホームズの真相については、奈々さんと同様、虚構と現実の区別がよくつかなくなってきました。物語に登場するシャーロキアンの方々ほどどころか、ホームズものは、短編集も長編も半分ずつくらいしか読んだことがないので、なかなかイメージがわきにくい部分もありました。 ただ、『源氏物語』や紫式部に関する説はたいへん興味深く読みました。学問(領域)の壁、というのは、たとえば西洋中世学会ではそれらを取っ払ってしまい、学際的な研究を目指そうという風潮もありますが、まだ根強いものなのでしょうか。 ホームズや『源氏物語』の解釈をふまえてのエピローグは、味わい深いものがあります。 そして、併録されたパーフェクトブックも素敵です。個人的には、事件年表と特別書き下ろしの短編が嬉しいです。 と、これで現在刊行されているQEDシリーズ全てを、一気に読み通しました。とにかく、素敵なシリーズだと思います。 個人的には、「カンナ」シリーズも途中までしか読んでいませんし、さらに新シリーズにいたっては全く読んでいないので、今後読んでいく楽しみがふくらみます。 そしてまたいつの日か、なんらかのかたちでQEDシリーズの新作(番外編?)に出会えることがあれば、と思います。 シリーズ通して、良い読書体験でした。
2016.07.23
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高田崇史『QED 伊勢の曙光』~講談社ノベルス、2011年~QEDシリーズ第17弾にして、シリーズ完結編です。(現時点では、本書の後に『QED~flumen~ホームズの真実』が刊行されています) それでは、簡単に内容紹介と感想を。――― 伊勢の小さな神社の神職と、村人数名が、秘宝といわれるあわびの真珠を「伊勢の秘宝展」に出展するために上京していた。しかし、秘宝の展示前に、神職が何者かに殺害される。ホテルのベランダから落とされそうになり、手すりにつかまっていたところ、親指を切断されたらしい状況だった…。 この事件を追う小松原に、三重県の知り合いから連絡が入り、桑原崇を事件の捜査に協力させるよう依頼があった。桑原自身も伊勢に興味をもっており、奈々とともに三重県に向かう。途中、小松原から会うよう言われていた人物は、あまりにも意外な人物で…。 天照大神とは何者なのか。伊勢神宮にまつわる膨大な歴史の謎の真相は?――― これは名作。17巻に及ぶシリーズ完結編にふさわしい、すばらしい物語でした。 伊勢神宮にまつわる2ダース以上もの謎が列挙され、次第にそれらに解答が与えられていく。最後に、全ての謎をきれいに説明する解答が提示されるあたり、見事でした。 今回は、かつてないほどに崇さんや奈々さんに命の危険が及びます。そこからいかに逃れるのか、手に汗握ります。 そして……。とにかく良かったです。 本当に素敵なシリーズです。
2016.07.16
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尾形希和子『教会の怪物たち―ロマネスクの図像学―』~講談社選書メチエ、2013年~ 沖縄県立芸術大学の教授で、中世ロマネスク図像学に関する研究を進めていらっしゃる尾形先生の単著です。 ヨーロッパの教会にあふれる、ガーゴイルなどの怪物は、はたしてどのような機能をもっていたのか。またその図像的な起源や意味はなんなのか。そういった怪物にまつわる疑問に対する答えを提示することを、本書は目的としています。 本書の構成は次のとおりです。―――はじめに第一章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ第二章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物第三章 怪物的民族と地図第四章 「自然の力」の具現化としての怪物第五章 世俗世界を表す蔓草―ピープルド・スクロール―第六章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ第七章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆(シンクレティズム)―ドラゴンとセイレーン―結び 怪物的中世註あとがき主要参考文献図版出典一覧索引――― 第1章は、怪物研究の少なさと先行研究の問題点を指摘し、そして今後の研究方法の展望を提示する、本書の出発点となる論点を示します。特に、1つの図像は1つだけの意味を持つのではなく、それを観る対象によって意味は変わりえたのではないかという指摘、そして「歴史人類学的研究」の重要性の提示が興味深かったです。 怪物といえば、悪魔とか、否定的なイメージが浮かびますが、肯定的な意味を持つ怪物もいたことが、第2章で示されます。たとえばユニコーンには両義的な面がありますが、その角には解毒作用があると考えられたように、肯定的に捉えられる動物(怪物)です。 地理的知識と怪物の関連を論じた第3章が、個人的にはとても興味深かったです。異国の地に住む人々が、たとえば大きな一本足であるとか、おなかに顔があるとか、そのような怪物として描かれます。その原因として、ギリシャ・ローマ時代の記述や噂・伝聞に基づいて記録が書かれたことや、言葉の音の類似からイメージされたことなどが挙げられると指摘されています。「たとえば、大きな一本足で飛び跳ねるように歩き、寝転がってその一本足を高く上げて灼熱の太陽から日陰を作って休息するという『スキアポデス』は、陰を表すギリシャ語スキアと足を表すポドという言葉から成り立っているが、これはもともとスキアポドという音に似た外国語の民族名を聞いたギリシャ人が、音から類推されるような怪物を想像し作り出したのだろうというのだ」(125-126頁)。 第4章は、自然の力を示す怪物として、セイレーンやワイルドマン(森の奥深くに住むといわれた全身が毛に覆われた人間)、オケアノスなど、そして風と怪物の関係などを論じます。 第5章は、蔓草がおりなす渦巻きが作り出す空間の中に動物、怪物、人間などがおかれた図像=ピープルド・スクロールを対象として、蔓草がもつ象徴性などを論じます。 第6章も悪徳と怪物の関連という興味深いテーマを扱い、いろんな事例を紹介しています。 第7章は、分量的にも本書で最も長く、ドラゴンとセイレーンという2つの怪物を取り上げ、その図像の変遷や意味などを分析します。 註があったりなかったり(たとえば、先述のスキアポデスの記述については、どの文献に言われているかという註がありません)で、気になる記述についての根拠にすぐにたどり着けるわけではないですが、選書という形式上、この感想はないものねだりにすぎないかもしれません。 イタリア留学時代のエピソードなどエッセイ風の記述もあったりして、とても楽しく読みやすい一冊です。 以前紹介した金沢百枝『ロマネスク美術革命』でも、本書がひかれています。個人的には、ロマネスク美術に関する本を近い時期に2冊読めて、よりイメージがつかみやすかったです。
2016.07.13
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高田崇史『QED 出雲神伝説』~講談社ノベルス、2009年~ QEDシリーズ第16弾です。 簡単に内容紹介と感想を。ーーー 奈良のリゾートマンション「八雲」で、奇妙な事件が起こった。 マンションの一室で、その部屋の借り主(野川)と交際していた八刀良子が、首を切られて殺されていた。ところが、現場は密室状況だったにもかかわらず、部屋の中には、良子以外の人物はいなかった。そして壁に残された奇妙な紋様―。 同じ紋様が、一週間前のひき逃げ事件の現場にも残されていた。警部の雉岡は、事件につながりがあるとみて捜査を進めていく。その中で、関係者たちが、「出雲神流」について調べているという共通点が浮かび上がってくる。 * 棚旗奈々は、学会の旅行で京都を訪れることになった。そのことを聞いた小松崎は、さっそく桑原崇にも連絡をとり、日程を整える。小松崎は奈良で起こった事件を追っていたが、そこにからんでくるのが出雲の謎。そして今回の崇は、出雲の謎だけでなく、事件にも強い関心を示すのだった。ーーー 今回は、「出雲神流」という、伝説の忍びの一族もからんできます。 事件の方もですが、やはり歴史上の謎の解明を興味深く読みました。そしてシリーズを通して、当時の朝廷がいかに姑息なことをしていたか、ということを感じて残念な気持ちになります。国を統一する中では、そうした手段もやむをえなかったかもしれませんが…。もっとも、私はじっくり日本史を勉強しているわけではなく、あくまで高田さんのシリーズを通じてこのような理解にふれているだけですが、説得力は非常に強いと思います。 本書には付録(?)として、短編「QED~flumen~出雲大遷宮」も収録されています。こちらは、歴史上の謎もさることながら、崇さんと小松崎さんの素敵な関係に胸をうたれる物語でした。(2009.11.18掲載の記事をほぼ再掲)
2016.07.02
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