全4件 (4件中 1-4件目)
1

愛川晶『光る地獄蝶』 ~光文社文庫、2001年~ 栗村夏樹シリーズの長編第2弾です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 探偵事務所でバイトを始めたものの、すぐに事故で入院してしまった友人の真奈にかわり、栗村夏樹はその探偵事務所で働くこととなった。 博識ながらくせのある探偵、喜多見に最初に命じられた仕事は、一人の高校生、久住あずさの尾行だった。その中で、男たちに襲われそうになったあずさを助け、夏樹はあずさの信頼を得ることになる。ただし、夏樹は一つのうそをつき通すことになるが…。 一方、あずさの父が社長をつとめるマルヒサデパートでは、内部抗争が発生していた。喜多見は、反社長派の依頼を受け、捜査を進めていたが、その過程で何者かに殺害されてしまう。 さらに殺人事件は繰り返される。また、過去に、あずさの父が密室状況の中で死亡していたのは、自殺だったのか、他殺だったのか。そしてあずさの父が残した「遺書」の意味は。 いくつもの謎がからまりあうが、夏樹は真相解明に挑む。 ――― 本作も面白かったです。夏樹さんが探偵として、時にやましい気持ちにおそわれながらも奮闘するあたりはサスペンスフルでもあり、またくせのある探偵が犠牲者になるあたりから、物語が一気に加速していくのも読み応えがありました。 トリックとしては、過去の密室事件があり、その解明も面白いですが、むしろマルヒサデパートや久住家の人々のどろどろした人間関係や、夏樹さんとあずささんの奇妙な関係性の行方などを、興味深く読みました。 ・あ行の作家一覧へ
2018.09.29
コメント(0)
![]()
愛川晶『黄昏の罠』 ~光文社文庫、2000年~ 栗村夏樹シリーズの長編第1作です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 近所に住み、家族ぐるみのつきあいが続いている大学4年生の桂木亜沙美が、誘拐された。 失踪直前に彼女に出会っていた栗村夏樹は、祖師ヶ谷警察署の牧田刑事から、そのときの様子などを聞かれる。しかし、夏樹に心当たりもなく、また犯人からの追加の連絡も途絶えていた。 そんな中、身元不明の焼死体が発見された。しかし、歯の治療の状況から、亜沙美とは別人と判断される。 誘拐事件が解決されない中、亜沙美からの連絡が桂木にかかってくる。青森というキーワードに、青森の警察が捜査を進める中、亜沙美が失踪時に着ていた衣服が発見され…。 ――― 剣道が強く、ショートヘアで、声は低く、男性と間違えられがちの栗村夏樹さんが主人公です。剣道の強さとは裏腹に、どちらかといえば控えめな性格なのですが、亜沙美さんの手がかりが青森で発見されたと聞き、牧田刑事たちと同行するという行動力もあります。 亜沙美さんの誘拐犯はなぜ全く連絡をとってこないのか。また、本編の途中に挿入される、自分が殺したはずの「小夜子」そっくりの「満月」と「私」の出会いと奇妙な生活を描く手記は、何を意味するのか。などなど、気になる謎も多く、どんどん読み進めました。 まるでドラマを見ているかのように読めたのも印象的です。たとえば、牧田刑事と夏樹さんの試合の状況を描く部分や、青森で警察官が地元の方と言葉を交わすシーンなど、なんでもないのですが、とても映像的に入ってきました。(ふだん読書しているときは、あまり映像的に入ってくることは少ないので、印象的でした。) 真相が明かされる過程も鮮やかで、楽しく読めた1冊です。 このシリーズは三部作なので、続けて読んでいこうと思います。 ・あ行の作家一覧へ
2018.09.22
コメント(0)
![]()
二宮宏之・樺山紘一・福井憲彦編『叢書・歴史を拓く―『アナール』論文選2 家の歴史社会学(新版)』 ~藤原書店、2010年~ 以前紹介した『魔女とシャリバリ』に続く、『アナール』論文選第2巻です。 本書の構成は次のとおりです。 ――― 新版刊行に寄せて(福井憲彦) 解説 歴史の中の「家」(二宮宏之) I.家族と世帯への歴史的アプローチ(ピーター・ラスレット、林田伸一訳) II.18世紀オート=プロヴァンスにおける核家族と拡大家族(アラン・コロン、福井憲彦訳) III.人口動態分析と社会階層―アンシャン・レジーム期農村人口の自動調整システム解明の鍵―(ベルナール・ドルゥエ、林田伸一訳) IV.慣習法の体系―16世紀フランスにおける家族構造と相続慣行―(エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ、木下賢一訳) V.マコネー地方における12世紀の家系・貴族身分・騎士身分―再論(ジョルジュ・デュビー、下野義朗訳) VI.フランスにおける結婚儀礼―教会の慣習と民衆の慣習(16~18世紀)―(アンドレ・ビュルギエール、長谷川輝夫訳) VII.結婚の民衆儀礼における婚礼業説の象徴機能(ニコル・ベルモン、長谷川輝夫訳) コメント 江戸時代の歴史民勢学から(速水融) 文献目録 地図、 扉図版出典一覧 ――― 二宮宏之先生の「解説」は、本書のテーマに関する研究史を「歴史人口学」のアプローチと「歴史人類学」のアプローチの大きく二つの観点から整理するとともに、本書所収の7論文をそうした研究史の中に位置づけながら簡潔に説明しており、非常に優れた解説となっています。 第一論文は、家族史研究のための方法論を提示します。核家族、多核世帯、共住集団など、多様な世帯の構造を分類表で整理している点で有用です。 第二論文は、核家族と拡大家族、両親との同居といった状況について、父親が死亡している場合の比率を示すなどしながら、生活形態の選択にあたって、経済的動機よりも社会心理学的な動機が重要であったことを示します。 第三論文は、人口変動について、ラブルウル(富農)とジュルナリエ(貧農)の間に差があったことを、丹念に分析します。 第四論文は、遺産相続の方法について、A.先取権(子供の一人が遺産分割の前にあらかじめ自分のために先取しておく)、B.平等主義(相続以前に特権を子供に与えていた場合であっても遺産相続の際に特権をいったん持ち戻し平等に分割する)、C.中間的方法(生前に特権を与えた子からは相続権を除外、又は特権を持ったままにするか遺産相続の際に持ち戻すかを選択できる)の3種類の慣習法を分類し、それぞれの性格があてはまる地域の社会的状況を分析し、地域ごとの特性とそれぞれの慣習法がうまくあっていたことを説得的に示しています。これは、特に興味深く読んだ論文の一つです。 第五論文は、10-11世紀の貴族家系の家系図を出来る限り復元し、彼らの「貴族」意識と「騎士」意識や、相続慣行のあり方を分析します。 第六論文、第七論文は、結婚儀礼の具体的な様相を分析しています。 以上、簡単なメモとなりましたが、このあたりで。・西洋史関連(邦語文献)一覧へ
2018.09.15
コメント(2)
![]()
二階堂黎人『名探偵の肖像』 ~講談社ノベルス、1999年~ 二階堂さんによる、ルパンものなどのパスティーシュ作品やノンシリーズの短編、ディクスン・カー論などが収録された、バラエティに富んだ作品集です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「ルパンの慈善」女子修道院に伝わる燭台をちょうだいすると、修道院に手紙が届く。差出人の名前はルパンだった。予告されていた日の夜、ガニマール警部たちは、燭台が保管された部屋が密室状態になったのを確かめた上で、部屋に続く扉の前を厳重に警備していた。しかし、ルパンが現れる騒ぎの後、燭台は密室から消えており、ルパンも姿を消してしまっていた。 「風邪の証言」莫大な財産をもつ小説家が殺害された。動機をもつ3人の甥たちのうち、犯人である可能性があるのは1人だけ。しかし男は、殺害の時間にアリバイをもつという証拠である写真を提示する。果たして巧妙なアリバイトリックの真相は。 「ネクロポリスの男」1年に1度だけ覚醒させられ、活動ができる男は、ロボットに娼婦を召喚させる。娼婦は男に、この牢獄から助け出してあげると助言するが…。 「素人カースケの世紀の対決」古今東西のミステリを集めた高級《読書ラン》でデートしていた学生のカースケは、悪名高い評論家が来店し、不愉快な話をしているのを聞き、評論家を挑発する。二人は、ミステリの一節だけを見て作品名を当てる勝負をすることとなる。 「赤死荘の殺人」殺人予告の手紙を受け、赤死荘を訪れたマスターズ警部たちだが、手紙に書かれていたとおり、建物に入ったはずの3人のうち、1人はいなくなっており、1人は倒れ、血まみれで立っていたのはマスターズもよく知る男だった。不可解状況の中で起きた事件の相談を、メリヴェール卿に持ち込むが…。 「対談 地上最大のカー問答」芦辺拓さんとの、ディクスン・カーについての議論。 「随筆 ジョン・ディクスン・カーの全作品を論じる」 ――― 1999年に買って読んでいたようなので、もう20年ぶりくらいの再読となります。どの作品も楽しく読みました。「ルパンの慈善」は密室の解明もルパンの動きもスマートで良いです。「風邪の証言」は、被害者の名前が木湯環馬(きゆかんば)、甥たちの名前が青井久利(きゅうり)、奈須(なす)、根木(ねぎ)と遊び心が楽しいです。「ネクロポリスの男」はSF作品ですが、好きな世界観で面白かったです。カースケさんのはいろんなミステリの蘊蓄にあふれ、また軽やかな文体でもあり、最初に読んだときから印象に残っていますし、また好きな作品です。今回も楽しめました。「赤死荘」も不可能状況の真相が好みです。カーについての対談も随筆も興味深く、あらためてカーの作品に当たってみたくなりました。・な行の作家一覧へ
2018.09.01
コメント(0)
全4件 (4件中 1-4件目)
1

![]()