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浦賀和宏『十五年目の復讐』 ~幻冬舎文庫、2018年~ 前回紹介した『Mの女』と対をなす作品。続編に相当する話もありますが、『Mの女』を関係者の別の観点から描いた話もあります。4話が収録されています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「第一話 スミレ色の手紙」ストレス発散に、自分が不快に思った人に対して、嫌がらせの手紙を送っていた主婦だが、隣人に手紙を送った後、その隣人が首を吊って死んでいるのが見つかった。真偽は不明なまま不倫を告発する手紙を送ったが、それがきっかけだったのかと慌てる主婦だが、隣人にはタケルというストーカーがいたことを隣人の友人、白石唯から聞く。そして白石の言葉で、自分がファンのミステリ作家、西野冴子に助言を求める手紙を書くこととなる。 「第二話 生まれなかった子供たち」西野冴子のいとこの男の妻が、階段から落ちてしまい、おなかの中の子どもは助からなかった。彼女は、誰かに突き落とされたような気がするという。男は、妻とバーベキューに行ったとき、タケルという男が妻と話していたことを思い出し、彼を疑い始める。一方、なぜかバーベキューの場にやってきた、不倫相手の白石唯の言動にも不安を覚え始める。 「第三話 月の裏文明委員会」編集者の男は、担当している作家、浦田和男が『地球平面委員会』の続編として概要を作ってきた『月の裏文明委員会』を読み、衝撃を受ける。男が不倫していた女が、シングルマザーとして男のそばに引っ越してくるというその内容は、そのまま編集者にあてはまる状況だった。浦田は、ファンの女性が案を出してくれたというのだが…。 「第四話 十五年目の復讐」桑原銀次郎は、西野冴子が逮捕された事件について、西野は冤罪ではないかとにらんでいた。関係者にインタビューをし、その裏付けを進めていくが…。 ――― もともと、電子書籍で「メタモルフォーゼの女」シリーズとして発表されていた3作に、最後の「第四話」を書き下ろしで追加した作品集です。 第三話までが『Mの女』のサイドストーリーで、結末が第四話で描かれます。第三話までも、一話ずつ、意外な真相も示されています。 桑原銀次郎さんも大活躍ですね。 ・あ行の作家一覧へ
2020.02.29
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浦賀和宏『Mの女』 ~幻冬舎文庫、2017年~ 桑原銀次郎シリーズ(?)の長編小説です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― ミステリ作家の西野冴子は、友人の亜美とよく会うようになる。しかし、亜美にタケルという恋人ができ、その軽薄な様子を不審に感じ始める。 そんな中、冴子に一通のファンレターが届く。タケルという名の男にストーカーをされた隣人が自殺したというのだ。手紙に描かれたタケルの描写は、冴子が知るタケルと同じだった。 手紙を送ってきたファンと会い、調べを進めるうちに、今度は白石唯という女性から、一冊の本が送られる。泉堂莉菜『鈴木家殺人事件の真実』というその本には、タケルの過去が描かれているようだった。冴子は、タケルの周辺で起こる多くの死の謎をさぐっていくが…。 ――― これは、思いがけない結末に至ります。ただ、本作だけだとどうももやもやしたものが残ります。 本書の読了後、この続編というかサイドストーリーというか、本書の登場人物たちによる別に視点から描かれた連作短編集『十五年目の復讐』を読み始めました。そこには、本書のいくつかのシーンが描かれており、お互いに補完しあう作品のように思われます。『十五年目の復讐』も読み終えるのが楽しみです。 ・あ行の作家一覧へ
2020.02.26
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周木律『大聖堂の殺人』 ~講談社文庫、2019年~ 堂シリーズ第7弾にして、シリーズ最終作。解説含めて約620頁と、ボリュームのある一冊です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 宮司百合子のもとに届いた、数学界の天皇とも呼ばれる藤衛からの手紙。それは、24年前に彼女の親族も犠牲になった大聖堂への招待状だった。 善知鳥神とともに大聖堂のある島を訪れるが、その他の客がそろった時点で地震がおき、ヘリポートは崩壊し、島に閉じこめられたような状態になってしまう。 そして訪れた大聖堂は、客室のある塔と、空洞の塔が重なり合ったような、奇妙な作りだった。それは、24年前の事件で崩壊した大聖堂の再現だった。 招待者の藤衛は、大聖堂に現れない。彼は、百合子たちが訪れた翌日に襟裳岬で講義し、百合子たちは相互対話が可能な大聖堂のモニター越しに、その講義を聞くこととなるという。 講義の最中、次々と事件が起こる。数学者たちが、撲殺、焼死、刺殺、凍死と、不可解な死を遂げる。24年前同様、遠く離れた場所にいる藤しか犯人はいないと思われるが、はたして事件の真相とは。 ――― 最終巻ということもあり、提示される謎のスケールが桁違いです。犯人は誰か、はほぼ特定されているので、ひたすら「いかに不可能犯罪がなされたか」の解明が焦点となります。問題点が明確になり、追いやすいですね。 謎解きの面白さはもちろんですが、終章が特に好みでした。解説が担当編集者さんということもありますが、周木さんはもちろん、編集者さんも含めて、このシリーズを大切にされているのが伝わってくる物語でした。 良い読書体験でした。 ・さ行の作家一覧へ
2020.02.23
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周木律『鏡面堂の殺人』 ~講談社文庫、2018年~ 堂シリーズ第6弾。前作『教会堂の殺人』まではノベルス版で刊行後文庫化されましたが、本作と最終作(第7弾の『大聖堂の殺人』)は文庫書き下ろしとなっています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 『教会堂の殺人』後、絶望におそわれ、無気力に暮らしていた宮司百合子は、善知鳥神からの電話を受け、鏡面堂を訪れる。 鏡のドームの中に、∞の形にいくつかの部屋が配された、それは奇妙な建物だった。 百合子はそこで、一冊の手記を読むよう、神に促される。そこには、過去に鏡面堂で起こった殺人事件の記録が書かれていた。 * ふだんは一週間に一度、設計者の沼四郎が訪れる程度の鏡面堂に、沼が5人の客を招待する。数学者、建築学者、物理学者、料理人、そして数学界の天皇と呼ばれる藤衛の5人だった。管理人のわたし、そして沼も含めた7人が、その日、堂で過ごした。 翌朝。密室状況の小部屋の中で、矢じりのないボーガンの矢で、一人の男が刺されて死んでいた。また、料理人もおそらくアイスピックのようなもので刺殺されていたが、凶器はどこからも発見されなかった。 ――― 誰が、なぜ、どのように犯行を行ったのか。正当派のミステリでありながら、百合子さんたちのこれまでの経緯や、いろいろな感情も織り交ぜられた物語となっています。 十和田先生がますますなんかこう、心配になってきます。(次回最終作ではどうなってしまうのでしょうか。) ・さ行の作家一覧へ
2020.02.19
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麻耶雄嵩『化石少女』 ~徳間文庫、2017年~ 麻耶雄嵩さんの、ノンシリーズの連作短編集です。 舞台は、坊ちゃんお嬢さんが通う私立ペルム学園。古生物部の部長神舞まりあさんは、化石への情熱はすごいのですが、テストでは赤点続きです。まりあさんと幼なじみの桑島彰さんは、彼女のお守りとして、ペルム学園に入学し、古生物部に入ることとなります。 古生物部は2人だけで、過疎部問題に直面していました。それまでの生徒会はまりあさんと派閥が同じなので大丈夫でしたが、今期の会長はそれまでの派閥とは反対の立場で、一定の成果をあげないと古生物部を廃部にするといいます。 そんな状況の中、ペルム学園でいくつもの事件が起こり、まりあさんが推理しては、彰さんがダメ出ししていくという、斬新なスタイルです。千街晶之さんの優れた解説にもあるように、ダメ出しされたまま物語が次に進んでしまうので、なんとも据わりの悪い感覚になります。 それでは、収録されている6つの事件について、簡単に内容紹介を。 ――― 「古生物部、推理する」生徒会に過疎部問題の話をされた後、しぶしぶ勧誘活動にと部室を出た彰は、シーラカンスをかぶった男が疾走しているのを目撃する。その後、新聞部の生徒が殺されているのが発見される。古生物部のシーラカンスを盗んだ犯人の目的は? 「真実の壁」部室棟に体育館の壁が接近しているため、壁には部室内のいろんな情景が影で映し出され、「真実の壁」と呼ばれていた。生徒会の面々が古生物部に来てもめているとき、停電が発生。一瞬停電が解除されたとき、真実の壁には、殺人を行うような影が映し出される。直後、外には生徒が落ちていて、死んでいるのが確認された。 「移行殺人」叡電部に入らないかと、さして親しくもない同級生、八瀬に誘われた彰だが、叡電部の部長たちは、彰が古生物部に入っていると知り急に及び腰に。後日、叡電部で事件が起こる。八瀬が文化祭のために作っていた叡電の模型が壊され、八瀬自身も何者かに殴られて殺された。怪しい人物が、叡電部あたりを通っていたのが目撃されていた。 「自動車墓場」石川県まで化石掘りの合宿のため訪れたまりあたちだが、同じ宿に生徒会も泊まっていると知り、一気に険悪なムードに。翌朝、化石掘りに出かけたまりあと彰だが、道中に不審な車を発見。帰り道、車の中で何者かが死んでいた。それは、ニュースに出ていた、京都で事件を起こした犯人のようで…。 「幽霊クラブ」廃屋のような旧クラブ棟が解体されることになり、一つの問題が持ち上がる。旧クラブ棟でこっそりクラブ活動をしている幽霊クラブをどうするかという問題だった。前生徒会メンバーが、現メンバーに、幽霊クラブを黙認するのか、事故になっては危ないから実態を把握すべきと声をあげる。生徒会メンバーで「ガサ入れ」をしている最中、言い出した生徒が屋上から落下して死亡した。 「赤と黒」古生物部に新入部員!?と喜ぶのもつかの間、彼は生徒会のメンバーとも顔見知りのようで、とつぜん挙動不審になる。そんな中、密室状況の体育館内の倉庫から、新入部員の死体が発見される。 ――― これは面白かったです。物語の概要は冒頭に書きましたが、探偵が赤点続きということで、探偵にダメ出しばかりする助手という設定が秀逸。個々の物語にも(一応の)解決があるので、もちろん謎解きミステリとしても楽しめます。 エピローグではなんともいえない気持ちになりました。 ・ま行の作家一覧へ
2020.02.16
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瀬那和章『雪には雪のなりたい白さがある』 ~創元推理文庫、2018年~ 公園をテーマにした連作短編集です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「雨上がりに傘を差すように」横浜に憧れ、横浜の大学に進学した果歩だが、自分のセンスなどに引け目を感じ、友人もつくらない生活を送っていた。ある雨の日、港の見える丘公園で一人の老人と出会い、傘を貸してあげる。その後も、雨の日だけ、公園で老人に色々な悩みを聞いてもらっていた。ある日、老人から、一つの頼み事をされる。行き先での果歩の何気ない一言で、老人は態度を豹変させるのだが…。 「体温計は嘘をつかない」別れた妻・真帆に、5歳になった息子を見せるため、俺は5年ぶりに思い出の公園(あけぼの子どもの森公園。現在、トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園)を訪れた。二人の話題は、やがて離婚のきっかけとなったあの日のことになり…。 「メタセコイアを探してください」佐藤葉助は、バードウォッチングのため、毎日のように石神井公園に通っていた。その公園では、今は活動を休止している、若者に絶大な人気を誇る女性シンガー・相沢ミアも、犬を連れて散歩していた。かつて、彼女の言葉で救われ、彼女に声をかけたいと思う葉助だが、なかなか声がかけられない。そんな彼に、「秋の妖精」を名乗る中学三年生が声をかけてきた。ミアと話すきっかけを与えてくれるというのだが…。 「雪には雪のなりたい白さがある」中学生の頃の恋人・英治とは、彼が家庭の都合で海外に引っ越すこととなった際に別れることとなった。しかし、その際の彼の約束に、瑞希はすがっていた。数年ぶりの同窓会で英治とは会えなかったが、彼の近況を知り、瑞希は一つの覚悟をすることとなる。 「あの日みた大空を忘れない」瑞希との思い出の場所、所沢航空記念公園を訪れた英治は、偶然出会った同窓生から、彼女の近況を聞くこととなる。悩んでいた英治も、ここでひとつの決断をすることとなる。 ――― 瀬那さんの作品を読むのは初めてですが、背表紙を眺めていて素敵なタイトルにひかれ、表紙をみてイラストも好みで、裏表紙の内容紹介はほぼ見ないまま、迷わず購入しました。 創元推理文庫から刊行されていますが、いわゆる謎解きに主眼はありません。あえていえば、主人公たちが解くのは、自分自身の思いなのだと思います。 どれも好みの物語で、本書に出会えて良かったです。 ・さ行の作家一覧へ
2020.02.12
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青崎有吾『図書館の殺人』 ~創元推理文庫、2018年~ 風ヶ丘高校の部室に住み着いている裏染天馬さんが活躍するシリーズ第4弾(長編としては第3作)です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 早番で図書館に出勤した那須は、本をしまい忘れたと同時に出勤してきた同僚の上橋に出会う。二人が図書館に入ると、閉めたはずのドアが開いているなどの異変があり、また上橋が置いていた本もなくなっていた。二人が2階の確認に行くと、よく図書館を利用していた青年が、血を流して死んでいた。彼のそばには、「く」と読める、血で書かれたメッセージがあり、また、本の表紙のキャラクターにも、血で○が付けられていた。 * 裏染天馬は、警察からの要請で、アドバイザーとして事件の捜査に関わることになる。 また、被害者の男性は、天馬の同学年の図書委員、城峰有紗のいとこだった。天馬は有紗にも状況を確認しながら、真相に迫っていく。 ――― これは面白かったです。 ミステリ好きの刑事、白戸さんの部下、梅頭刑事が初登場です。歯に衣着せぬ物言いや、独特の男性のタイプなど、楽しいキャラクターです。 『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』と続けて読んだこともあり、針宮さんの変化や、裏染さんへのとある協力も楽しく読みました。 袴田柚乃さんと友人たちのすれ違いトークも絶妙で、シリアスなシーンと笑えるシーンのバランスがよく、飽きることなく読み進められます。 さて、事件の方は、ダイイングメッセージはあるものの、死者が何を伝えようとしたかは分かりようがないという裏染さんの発言もあり(これは全く同感)、残された手がかりから丹念に真相にたどり着く過程にわくわくしながら読みました。 これは面白かったです。 ・あ行の作家一覧へ
2020.02.08
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青崎有吾『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』 ~創元推理文庫、2017年~ 学校の部室に住み着く駄目人間・裏染天馬さんが活躍するシリーズ第3弾。今回は日常の謎をテーマにした短編集で、5つの短編に加えておまけも収録されています。 時期的には、第一弾『体育館の殺人』直後から、最新刊にあたる長編第3作(作品としては第4弾)の『図書館の殺人』発生中までの物語になります。 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。 ――― 「もう一色選べる丼」食器を返却しなければ持ち出し禁止―食堂から厳しいお達しがでたにもかかわらず、食堂近くの雑草だらけの地面に、半分近く食べ残しのあるどんぶりが置かれていた。怒り狂う食堂のスタッフだが、犯人を見つけたら食券がもらえると聞き、裏染は推理を始める。果たしてわずかな手がかりから犯人を探せるのか。 「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」袴田柚乃が兄とともに神社でのお祭りに参加したところ、裏染兄妹たちと遭遇。屋台で買い物した彼らは、なぜか五十円玉でおつりを渡された。参加している屋台の多くが、主催者の一人の言葉によって、五十円玉でおつりを出しているという。はたして、その目的とは。 「針宮理恵子のサードインパクト」問題児と見られている針宮に、一学年下の彼氏ができた。吹奏楽部に所属している彼だが、買い物に行かされたり、その間に部室にカギがかけられたりと、どうもいじめられているように見える。怒りに燃える針宮だが…。 「天使たちの残暑見舞い」演劇部に残されていた卒業生のノートに、奇妙な出来事が書かれていた。教室の窓際に、二人の女子生徒が抱き合っていた。10分ほどの後、誰も教室から出ていないはずなのに、その教室をもう一度見てみると今度は誰もいなかった。はて、彼が見たのはなんだのか。 「その花瓶にご注意を」規律が厳しい緋天学園で、カラフルな花瓶が割れるという事件が起こった。近くにいた裏染鏡華と仙堂姫毬は、しかし割れる音を聞いていない。はたして、誰がどのように花瓶を割ったのか。 「おまけ 世界一居心地の悪いサウナ」一人の少年が、サウナにいると、最も会いたくない人物と出会ってしまう。 ――― これは面白かったです。冒頭の「もう一色選べる丼」は、わずか30分の間に、残されたどんぶりとトレイというわずかな手がかりから、犯人像と動機まで解明され、わくわくしながら読みました。 第二話の表題作も見事。五十円玉については創元推理文庫から競作も出ていて(これは若月七海さん提出のリドルストーリーに推理作家たちが解決を提示するというもので、青崎さんは書いていませんが)、そちらも気になっていましたが、本作は「なぜおつりが五十円玉なのか」という謎。謎の提示も解決も面白いです。競作の方もいずれ挑戦してみたくなります。 第三話も好みでしたし、第四話の密室からの消失も面白いです。 第五話は、裏染天馬さんではなく、妹の裏染鏡華さんが仙堂姫毬さん(あの仙堂警部の娘さん)とともに事件を解決します。 と、どの話も楽しく読みました。裏染シリーズの、長編の手に汗握る解決編も大好きですが、短編集もとても面白いです。 ・あ行の作家一覧へ
2020.02.05
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G・K・チェスタトン(中村保男訳)『ブラウン神父の醜聞』 ~創元推理文庫、1982年(新版2017年)~ ブラウン神父シリーズ第5作にして最終巻です。9編の短編が収録されています。 簡単に、それぞれの内容紹介と感想を。 ――― 「ブラウン神父の醜聞」スキャンダルに巻き込まれた女性が夫婦で滞在しているホテルを訪れた記者は、女性をめぐり争う男二人の姿を目にする。 「手早いやつ」改装中のホテルのバーに、禁酒主義者が現れ演説を行う。変わり者で通っていた男が暴言を吐き、禁酒主義者は怒り狂うが、かえって変わり者は笑う始末。その後、変わり者の男は、禁酒主義者が持っていた刃物で刺されて死んでいた。 「古書の呪い」それを開いた人間は消えてしまうという伝承を持つ古書を見て欲しいと頼まれた教授のもとを、依頼人が訪れた。教授の秘書の男がその古書を開き、秘書は消えてしまったという。そして、依頼人も自ら古書を開き姿を消す。 「緑の人」航海を終え帰還した海軍提督を迎えに出た秘書だが、提督のうしろを離れて一人の男が追い、剣をふるう姿を目撃した。その夜、提督は死体となって発見される。 「《ブルー》氏の追跡」桟橋の門が閉まってから、中の小屋で話したい…と依頼人から手紙を受け取り、小屋を訪れた探偵だが、小屋に閉じこめられてしまう。そして、依頼人と別の男が追い掛け合い、ついには銃殺事件が起こるのを間近に見た。 「共産主義者の犯罪」新たな講座を設ける話が出ている大学で、多くの教授たちから煙たがられている共産主義者の教授がいた。彼らが会議を終えた後、その大学を視察に訪れていた二人の男が、ベンチで硬直して死んでいるのが発見される。 「ピンの意味」ブラウン神父が暮らすアパートのそばで、ビルの建設が進められていた。労働者たちがストライキを起こそうという動きがある中、強気でいた経営者の一人が殺されたらしいと、神父に相談がもちかけられる。 「とけない問題」ある朝、たくさんの電話がかかってきた後、ブラウン神父はフランボウに連れられて、貴重な聖遺物箱が奪われるのを防ぐために修道院に向かった。途中、ホテルで二人は女性に呼び止められる。彼女の祖父が、木に吊されて死んでいた。足跡や、老人が刺されていることなど、奇妙な点がたくさん見受けられたが、解決せずに立ち去ろうとした神父の真意とは。 「村の吸血鬼」1年前、閉鎖的な村で一人の役者が殺された。現場近くで暮らし始めたその後家や、村の聖職者の息子の不品行など、村ではいろんな噂が絶えなかった。しかし、1年前の事件の死因が見直され始め…。 ――― 特に好みなのは「古書の呪い」と「村の吸血鬼」です。真相が明らかになるときの、ぞわっとする感覚がたまりません。 本書は、シリーズ最終巻ということもあり、訳者の中村保男さんによるあとがきも付されています。ブラウン神父シリーズを中心に、チェスタトンの思想を読み解こうとする試みで、こちらも興味深いです。 ずっと気になっていたシリーズなので、この度全作読むことができて良かったです。良い読書体験でした。 ・海外の作家一覧へ
2020.02.02
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