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乾くるみ『クラリネット症候群』~徳間文庫、2008年~ 2001年徳間デュアル文庫から刊行された「マリオネット症候群」と表題作の2編の中編が収録されています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ―――「マリオネット症候群」ある夜、突然自分の意志とは関係なしに目覚め、動き始めた私―御子柴里美。どうも、男の人が乗り移っているとしか思えない状況になった。私がどんなに思っても、自分を動かす人物には届かず。はたして、誰が、なぜ乗り移ったのか。そして、御子柴家の抱える過去とは…。 「クラリネット症候群」憧れの先輩に聞かせるため、養父が大切にしているクラリネットを持ち出し、河原で演奏していると、先輩が聞きに来てくれて、僕―犬育翔太は心が躍る。しかし、過去に自分をいじめていた不良たちにからまれ、クラリネットが壊れてしまう。その直後から、僕はドからシまでの言葉が聞こえなくなってしまい…。そして、失踪した養父と、残された謎の暗号の真相とは。――― 大森望さんによる解説が秀逸です。大森さんも書かれているように、乾さんの作品には作風の違いが大きく、なかなかなじみにくい作品もありますが、本書と、同じく徳間文庫から刊行されている『蒼林堂古書店へようこそ』はとっつきやすい作品です。 さて、ミステリ風に内容紹介を書きましたが、どちらもSF的要素と、はちゃめちゃな要素とがあり、これまた大森さんの言葉をお借りすれば「ドタバタギャグっぽいトーンとあり得ない展開」です。けれども、特に表題作の暗号解読はよく作られていて、ミステリとしてのクオリティもしっかり高いです。 読みやすく、楽しい1冊です。(2020.06.22読了) ・あ行の作家一覧へ
2020.09.27
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米澤穂信『巴里マカロンの謎』 ~創元推理文庫、2020年~ <小市民>を目指す小鳩常悟郎さんと小佐内ゆきさんが活躍するシリーズ第4弾。今回は短編集です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「巴里[パリ]マカロンの謎」1年生の2学期。ぼくは、小佐内さんに誘われ、有名パティシエ古城正臣が故郷名古屋に新たにオープンした店を訪れる。そこの名物マカロンを頼んだ2人だが、小佐内さんのお皿には、セットの定数の3つではなく、4つのマカロンが載っていた。そして、1つのマカロンの中には、指輪が入っていて…。 「紐育[ニューヨーク]チーズケーキの謎」10月。ぼくは小佐内さんに誘われ、マカロン事件で知り合った古城秋桜が通う中学校の学園祭に訪れた。秋桜さんのいる出店でニューヨークチーズケーキを食べたあと、小佐内さんたちと別行動をとることになったぼくは、小佐内さんと秋桜さんが一緒に、校庭のボンファイヤー(キャンプファイヤーみたいな)に近づいていくのを見ていた。そこで事件が発生。一人の男子が猛ダッシュで二人に近づき、小佐内さんと激突、マカロンが飛び散った。あとから追ってきた数人の男子は、男子生徒が持っていたというCDを探していたが、現場付近にはCDが見あたらず、小佐内さんと連れて行ってしまう。 「伯林[ベルリン]あげぱんの謎」年末頃。新聞部を訪れたぼくは、堂島健吾に相談を持ちかけられる。新聞部の1年生で、ベルリンのあげぱんを食べた。ロシアンルーレットのように、1つだけマスタードが入っているあげぱんをまぜ、誰にあたるかを遊ぶゲームがあるということで、そのゲームに挑戦したという。しかし、参加していた全員が、誰もマスタード入りは当たらなかったと言い、企画者と反対者のあいだで険悪なムードが起きているという。 「花府[フィレンツェ]シュークリームの謎」年明け。ぼくは、小佐内さんに誘われ、甘味を食べていた。そこに、古城秋桜さんから小佐内さんに電話があり、すぐに助けてほしいとのこと。彼女のもとを訪れると、同級生が飲酒を伴うパーティーに参加して停学させられたが、自分は参加していないのに参加したことにされ、秋桜さんも停学させられたという。誰が、なぜ秋桜さんが会場にいたと言い、さらには偽の証拠まで作り上げたのか。 ――― どれも面白かったですが、特に印象に残っているのは「紐育チーズケーキの謎」と「伯林あげぱんの謎」です。前者はキャンプファイヤーや小佐内さんがぶつかられたり連れ去られたりと、印象的なシーンが多く、また真相やその後のやりとりも興味深かったです。後者は、ほぼ小佐内さんが登場せず、小鳩さんが活躍しますが、真相解明にあたって色々実験したりと、こちらも面白かったです。 (2020.06.12読了) ・や・ら・わ行の作家一覧へ
2020.09.20
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米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件(上・下)』 ~創元推理文庫、2009年~ <小市民>を目指す小鳩常悟郎さんと小佐内ゆきさんが活躍するシリーズ第3弾。今回は上下巻にわたる、シリーズ最長の作品です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 小佐内さんとの互恵関係を解消した僕は、何者かに手紙で呼び出された。相手は、クラスメートだが、名前は把握していなかった。そんな彼女は、僕と小佐内さんの関係解消を知っていて、僕と付き合って欲しいという。そこでつきあいが始まり、小市民的な充実を目指すことになるが、どうしても謎解きをしてしまう。たとえば、彼女のお兄さんが留守のときに、何者かが部屋に侵入したが、盗まれたものは何もなかった、という話を聞かされ、うっかり真相にたどりついてしまう。 * 新聞部の一年生、瓜野は、学内新聞に学外のネタも載せ、もっと多くの生徒に読んで欲しいと思っていた。夏休みにあった生徒拉致事件をネタにしようとするが、小佐内さんが部長と関わり、そのネタはだめだという。しかし、最近起こり始めた連続放火事件の発端が、学校に関わる場所だったことを知り、連続放火事件を追いかけることを決意する。友人の助言も受けながら、事件の法則性を見いだした瓜野は、新聞で次の事件の予告を試みる。予告が的中すると、学内新聞の人気がどんどん高くなっていった。そして瓜野はついに、犯人をつかまえることを目標とし始める。 またその頃、瓜野は、ふとした小佐内さんの表情から彼女のことを気にし始め、ある出来事をきっかけに付き合うことになる。 ――― というんで、二つの恋(?)と連続放火事件などの謎解きを軸に、物語は進みます。 前作で、小佐内さんが怖かったという印象は覚えていましたが、やっぱり本作でも小佐内さんは怖いです。 小鳩さんも、小市民として振る舞おうとしますが、どうもうまくいきません。 とまれ、小鳩さんと小佐内さん、それぞれの思惑が交錯しながら、犯人を明らかにするあたりは圧巻です。 辻真先さんの解説にもありますが、(放火事件はあるとはいえ)どちらかといえば「日常の謎」をテーマにした作品でありながら、上下巻の長編というのはたしかに珍しく、それでいてとても楽しめる作品でした。 (2020.06.04読了) ・や行の作家一覧へ
2020.09.12
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