KUROうさぎの『コンサートを聴いて』
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鑑賞日:2007年10月8日(月・祝)15:00開演入場料:¥11,000 F席3階(14列35番)主催:(財)日本舞台芸術振興会他キヤノン70周年記念オペラベルリン国立歌劇場来日公演R.ワーグナー作曲オペラ「トリスタンとイゾルテ」全3幕字幕付原語上演会場:神奈川県民大ホール指揮:ダニエル・バレンボイム管弦楽:ベルリン・シュターツカペレ合唱:ベルリン国立歌劇場合唱団 演出:ハリー・クプファー美術:ハンス・シャヴァノフ衣裳:ブキ・シフ照明:フランツ・ペーター・ダヴィッド合唱監督:エバハルト・フリードリッヒ 出演トリスタン(騎士、マルケ王の甥):クリスティアン・フランツマルケ王:ルネ・パペイゾルデ(アイルランドの王女):ワルトラウト・マイヤークルヴェナル(トリスタンの従僕):ロマン・トレケルメロート(マルケ王の家臣):ライナー・ゴールドベルクブランゲーネ(イゾルデの侍女):ミシェル・デ・ヤング牧童:フロリアン・ホフマン船乗り:パヴォル・ブレスリク 感想秋になりオペラシーズン真っ盛りだが、合唱出演の演奏会やその練習のためオペラをなかなか聴きに行けずに1ヶ月ぶりのオペラ鑑賞となった。最安値席チケットは今年1月の発売日初日にネットで奇跡的に入手。本場ドイツの歌劇場の演奏はどれほど違うのかを確かめに、いつもの県民ホール3階最奥席の天井桟敷へ出かけた。同劇場音楽監督でもある指揮者ダニエル・バレンボイムが入場し演奏開始。指揮台には白いハンカチのみ置かれ楽譜は無し。3000円叩いたプログラムには今回の「トリスタンとイゾルテ」が1999年までで62回指揮と書かれており正しく十八番の演目とのこと。同劇場音楽監督就任後にワーグナーの全10作のオペラ新制作を手がけ、バイロイト音楽祭でも度々指揮してていることからワーグナーはお得意なのでしょう。まずは前奏曲からその分厚い音量にいきなり圧倒された。確かにワーグナーなので管弦楽員は多めだがいつもの県民ホールのオケピットの広さで、同じ会場、同じ席なのに、これまで聴いてきた他のコンサートとは全く違った音の厚さに驚かされた。幕が上がり舞台の上には羽の生えた女神が突っ伏した上半身の巨大な像が置かれ、舞台奥には半円状の低い塀と石の様なものが置かれているのみ。3幕とも全て同じで、その像が回転することと照明の変化のみで1幕の船上、2幕のマルケ王の館、3幕のトリスタンの城を表現するシンプルなもの。衣装も時代不詳なもので特徴は無し。ところが1幕イゾルテとブランゲーネ、トリスタンとクルヴェナルの歌から、後半に直接イゾルテとトリスタンが歌い合うようになると音楽は盛り上がり、最後に死薬(実は愛の妙薬)を飲む場面では最高潮に。指揮者、歌い手、管弦楽がそろって素晴らしければ、下手な演出は全く不要。ワーグナーの音楽だけで各役の心情が溢れるように伝わってくる。圧巻は2幕のイゾルテとトリスタンが密会し愛を語り合う場面。二人だけで1時間以上に渡り延々と両者の心内を歌い合うのだが、次々と代わるワーグナーの音楽に酔いしれ、思わず引き込まれて聴き入ってしまった。午後3時から始まり35分2回の休憩を挟み終了は8時40分までの長丁場。ワーグナー作品のこれまでの若干退屈なイメージから、きっと途中で寝るだろうと思っていたが、全く眠ることなく最後まで聴き入り、あっと言う間に終わってしまった印象。当方は「欧州は素晴らしく日本のオペラなんて聴けたものでない」とはけして思わず、日本には日本人に合った、日本人が造るべきオペラもあると考えている。今回どうして日本のオペラとこれほど違うのか考えたが、やはり『歴史が違う』と言わざるを得ない。今回の同劇場の演奏には、指揮者や出演者だけを欧州から日本へ連れてきてもけして表現出来ない、265年の同劇場自身の歴史の重みを感じた。カーテンコールで楽団全員が舞台に上がったのも当然と思われ、満席の客席からは途切れない拍手が延々と続いた。最初から最後までステーキをお腹一杯食べさせられた印象で音楽の満腹感一杯(実は空腹)で帰路についた。End
2007.10.08
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