話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2021年05月17日
XML
PCR検査の結果は陰性でした。お騒がせしました。

以下のコラムは、4年近く前に書いたものです。時節柄、あまり適切でないかもしれませんが、過去の記事ということでご容赦ください。
*****************

この3年ぐらい山歩きに凝っていて、週末にかなりのハイペースで出かけている。概ね2週間に1回ぐらいのペースだろうか。行き先はもっぱら日帰り圏内の低山なので、どこまでいっても(登山ではなく)ハイキングの範疇である。最初のうちは下山時に膝が痛くなったり、転んでケガをしたり、翌日筋肉痛になったりしたが、回数を重ねるごとに、少しは体力やノウハウがついてきたのか、ある程度距離が長かったり標高差があったりしても問題なく歩けるようになってきた。
一方で、山歩きをするたび、いくばくかの寂しさを感じているのも事実だ。稀に家族がつきあってくれる以外、もっぱらソロで出かけているので、同好の士との交流が全くないのだ。一人で出かけるのは気軽でよいのだが、時には誰かと感動や苦労を共有したくなる。
その点が、これまで趣味の柱だったワインとの大きな違いだ。ワインにおいては、有料試飲やワイン会、いきつけのショップやレストランなど、コミュニケーションに事欠くことはなかった。
だったら、ワイン同様、ネットで同好の士を探したり、サークル活動に参加すればよいじゃないかという話になりそうだが、あまり気が進まないのは、山の中でよく出くわす傍若無人な老人たちの集団を見るたび、「ああはなりたくないよなぁ。」と思っているからだ。ん?これって考えてみれば、ワイン会で大きなグラス並べてグルグルとスワリングしている姿も、端からは同じような目で見られているということだろうか?

かつては暇さえあれば有料試飲やワイン会に出かけていた。

この点、三軒茶屋在住という地の利は大きかった。なんといっても、愛好家の聖地(のひとつ)、「東急渋谷本店」ワイン売り場の有料試飲カウンターが徒歩圏内なのだ。毎週末、カウンターでソムリエの方と雑談しながら、ロブマイヤーのグラスで厳選されたアイテムをテイスティングできるということで、一時は週末になるとここに入り浸っていたものだ。
90年代の後半には「エノテカ」広尾本店の有料試飲にもよく出かけていた。当時はボルドーの著名銘柄のビンテージ違いを一同に並べて比較する垂直試飲会が定期的に開催されていて、5大シャトーをはじめ、さまざまな銘柄の垂直試飲の会に参加することができた。会費はそれなりに嵩んだが、70~90年代前半の各ビンテージの個性が明確になって興味深かった。
「やまや」も当時勢いがあり、毎週末「ラトゥールの垂直試飲」とか「82年のボルドー水平試飲」などといったテーマで、驚くほど安い価格で銘醸ワインを試飲することができた。カウンターや椅子もなく完全な立ち飲みで、グラスもあまりほめられたものではなかったが、そんな環境でアンリ・ジャイエのリシュブールなどもテイスティングしたものだ。
こうした有料試飲はいろいろなワインを飲んでみたいという自分の欲求を満たしてくれたし、経験値の向上にも大きく寄与してくれたが、愛好家との交流という意味では、大きな広がりはなかった。転機となったのは、ネット繋がりのワイン会に参加するようになってからだ。

ひとくちにワイン会といっても言葉の定義は曖昧で、レストランやワインバーが主催するもの、ショップやインポーターが主催するもの、同好の士やサークルによるものなど、様々なバリエーションがある。ワインの供給方法も、幹事が一手に引き受けて調達するものや、コレクターが自慢のコレクションから放出するもの、参加者がそれぞれワインを持ち寄るもの(いわゆる持ち寄りワイン会)など様々だし、内容についても、単に食事とワインを楽しみましょうというライトなものから、吐器やテイスティングメモが用意された勉強会的なものまである。
 私が最初に参加したワイン会は、行きつけのワインレストランが主催するものだった。店主の解説を聞きながら、食事とワインが供されるというもので、参加者のほとんどはカップルやグループだった。それなりに楽しかったし勉強にもなったが、店主の独演会になりがちで、参加者同士の交流はほとんどなかった。
 ネットのコミュニティのワイン会に初めて参加したのは、西暦2000年のことだった。
インターネット上ではまだブログやSNSは登場しておらず、個人が解説しているワインサイトやそこに設けられた「掲示板」での交流がメインだった。「定期巡回」ルートの掲示板でワイン会を開催するという話を見つけて、参加させてもらうことにしたのだ。メンバーの中では私だけが初参加とあって、最初緊張したが、そこは愛好家同士、温かく迎えてもらえたし、コミュ障の私にしては珍しくすんなりと会話に入っていくことができた。当誌レビュワーの山地氏と出会ったのもこの時だった。
いったんネットのコミュニティに足を踏みいれると、その後は加速度的に交流の輪が広がっていった。山地さんの紹介で「ワインショップ平野弥」の勉強会にも足繁く通うようになった。こうして、上の子どもが生まれるまでの数年間、ほぼ毎週末ワイン会に参加する日々が続いた。
高価なワインや貴重なワインを自分で購入することを思えば、ワイン会はたしかにリーズナブルだが、毎週のように参加していれば、会費だけでも馬鹿にならない額になる。今思い返してもずいぶん散財したものだと思うが、同好の士との人脈を広げられたという意味では、私のワイン歴の中で大きな意味のある時期だった。

 ワイン会に参加するメリットはいろいろとある。日ごろ飲むことのできない高価なワインや貴重なワインを飲むことができること、一度にいろいろなアイテムを飲むことができること、(会によっては)「垂直」「水平」など網羅的体系的にワインを飲むことができること、日ごろ飲みつけないようなジャンルのワインを飲むことができることetc.同好の士との交流を深めたり、人脈を広げられることは言うまでもない。さまざまな知識や雑学、業界動向などを仕入れられるし、文章や口頭説明ではピンとこない知覚を共有できるということも大きい。たとえば、「ブショネ」についていくらネット上で説明を読んでも、同じグラスの香りを嗅ぎながら、「これがブショネだよ。」と説明される機会が無いままだと、いつまでたってもブショネの確実な判断は下しにくいものだ。


一本のワインを数人、多いときには10人以上で分けるので、どうしても一人あたりの飲む量は限られる。時の経過とともに刻々と表情を変える熟成ワインなどにおいては(たとえば会の前半に出てくる熟成白ワインなど)、本当の実力を発揮する前に飲み干してしまうことも少なくない。
酒量が多くなりがちなことも人によってはしんどい点だ。
私が参加していた持ち寄りのワイン会では、ひとり一本持参するのが常だったが、二本持参してくれる人がいたり、差し入れがあったりして、たいてい酒量はひとり一本以上、時には一本半や二本近くになることもあった。そもそもテイスティングという観点からすれば、吐器を用いて吐き出さない限り、二杯目以降の精度は大幅に低下するわけだが、ワイン会というのはえてして「テイスティング会+飲み会」的な性格のものなので、吐き出しながら飲むのはあまり一般的でないし、正直「もったいない」(勉強会的などであればその限りではない)。日頃の酒量がボトル半分程度の私にとっては、会の後半の記憶が半ば飛んでしまったりするのは日常茶飯事だった。
 参加者間でワインのコンディションに関する考え方や許容度に隔たりがある場合も悲劇の元だ。ボトルの提供者がワインのコンディションに無頓着だったりすると、出されるワインのコンディションがどれも今ひとつ(と感じる)などという笑えない状況も起こりえる。といって、判別できるかできないか程度のブショネや熱劣化をとらまえて、鬼の首をとったように「ブショネだ!」「熱劣化だ!」と騒ぐのも誉められた行為ではないだろう。
 メンバーの中に著しく非常識な輩や酒癖の悪い輩がいたりすると、それだけで楽しい会がぶちこわしになるケースも起こりえる。会の最初から終わりまで終始自慢話を聞かされたり、セクハラ行為を連発するような御仁も過去にいた。そういうリスクを避けるために、ワイン会の募集方法がクローズドになったり、紹介制になったりするのは致し方ないことなのだろう。


あらためてブログをチェックしてみると、かれこれ1年以上、ワイン会や有料試飲に出かけていないことに気づいた。理由はシンプルで、50歳を過ぎて私自身の酒量がさらに減ってきたことにつきる。会の途中で完全に「寝落ち」してしまったり、帰りに電車を寝過ごしてしまったり、夜中に頭痛で苦しんだりということが続くうちに、参加すること自体がすっかり億劫になってしまった。だったら一杯当たりの酒量を減らすなどコントロールすればよいじゃないかとの反論を受けそうだが、自分をストイックに律してまで参加しようというモチベーションが湧いてこないのだ。有料試飲の場合、新リリースのグランクリュなどがラインアップされていても、自分にはもはや縁がない話だというのも足が遠のいている原因だ。

 とはいえ、ワイン会や有料試飲に行かなくなったことで、昨今のワイン関連や業界の動向に疎くなってきていることも実感している。正直、私のワインの知識や常識は10年前ぐらいで止まってしまったままだ。この先の私のワインライフは、日々の晩酌を淡々と続けていくのが中心になりそうだが、4人~5人ぐらいの気のおけない仲間で、おいしい料理を食べながら集まった人数を少し欠けるぐらいの控えめな本数を開けるような会があれば、たまには出かけてみたいとは思う。あるいはまたワインスクールなどに通ってみるのもよいかもなどと漠然と思っている今日この頃である。

*************
・・コロナ禍で飲食業もみなさんもさぞご苦労されていることと思います。感染云々を気にせず、ワインを楽しめる日が早く戻ってきてほしいものですが、コロナが収束しても、衛生観念についてはコロナ前と同じというわけにはいかないかもしれませんね。「とも洗い」とか、さすがにもうできないかも・。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021年05月17日 21時23分06秒
コメント(2) | コメントを書く
[ワインコラム3(RWGコラム拾遺集)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Comments

shuz1127 @ Re[1]:家族でトゥールダルジャン(09/25) Henryさんへ こんにちは。グランメゾンに…
Henry@ Re:家族でトゥールダルジャン(09/25) 大変貴重な現地レポートありがとうござい…
shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…
shuz1127 @ Re[1]:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) maki5417さんへ コメントありがとうござ…
maki5417 @ Re:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) スパゲッティーは、材料費が安くお店にと…
shuz1127 @ Re[1]:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) Henryさんへ なんと、そうだったんですか…
Henry@ Re:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) アスリート食堂は、昨年8月に親会社(バル…

Category

カテゴリ未分類

(7)

お知らせ・リンク集

(21)

ワイン新着情報

(458)

ワインコラム

(342)

ワインコラム2(話飲徒然草拾遺集)

(74)

ワインコラム3(RWGコラム拾遺集)

(28)

都内近郊散策

(225)

こんな店に行った

(301)

B級グルメ・カフェ

(244)

健康

(198)

エッセイ

(69)

ひとりごと・備忘録

(523)

カミサン推薦ネタ

(28)

語学・資格・学び直し

(82)

山歩き・ハイキング

(122)

アクアリウム・ガーデニング

(337)

育児・教育

(88)

PCネット時計カメラ

(122)

音楽・オーディオ

(69)

リフォーム引越し

(49)

こんなワイン買った

(128)

ボルドー

(95)

ブルゴーニュ・ジュブレシャンベルタン

(90)

ブルゴーニュ・モレサンドニ

(40)

ブルゴーニュ・シャンボールミュジニー

(45)

ブルゴーニュ・ヴォーヌロマネ・ヴジョ

(56)

ブルゴーニュ・NSG

(58)

ブルゴーニュ・その他コートドニュイ

(63)

ブルゴーニュ・コルトン・ポマール・ヴォルネイ

(30)

ブルゴーニュ・ボーヌ周辺

(56)

ブル・ピュリニー・シャサーニュ・ムルソー

(21)

ブルゴーニュ・その他コートドボーヌ

(26)

ブルゴーニュ・裾モノイッキ飲み!

(217)

ブルゴーニュ・その他地域

(34)

ボジョレー再発見プロジェクト

(32)

シャンパーニュ

(194)

ロワール・アルザス・ローヌ

(53)

その他フランス

(15)

イタリア

(76)

スペイン・ポルトガル

(36)

ニュージーランド・オーストラリア

(49)

USA

(40)

安泡道場(シャンパーニュ以外)

(37)

その他地域・甘口など

(37)

日本ワイン

(56)

ワイン会・有料試飲

(173)

Favorite Blog

長谷 FUKUIHARA cla… New! mache2007さん

ジャン・ポール・エ… New! hirozeauxさん

これで売れろってい… New! ささだあきらさん

ベルトー・ジェルベ… yonemuさん

メルシャン椀子ワイ… busuka-sanさん

月一会 実南 ミユウミリウさん

DE10-1118 工9393レ… musigny0209さん

ワイン&ジョギング … Char@diaryさん
道草日記  旅・釣… 道草.さん
鴨がワインしょって… うまいーちさん

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: