事例 『オーベルジュ・レリダン』 2006年のコラムより
~今回は、もう店は無くなってしまいましたが、本文にも登場しますマルク・ヴェラの伝説のレストランを
少し古い訪問ですが、当時のまま紹介しましょう。
ジュネーブから高速道を
30
分ほど南下したところにランスの隠れた避暑地アヌシー湖がある。その湖の北側に
三ツ星レストランオーベジュ・レリダンがある。
ここのオーナーシェフ マルク・ヴェラ(
Marc Veyrat
)は香草の魔術師として知られている。マルク・ヴェラ氏はいつもシルクハットをしている。


メインダイニングの扉を開ける農家の民家風の内装が広がる。そして、その横には売店があり、売店を通りぬけると、地下に通じる階段がある。着席する前だが、もう、ストーリーは始まっている。まず、麦穂がうまくディスプレイしてある。一段、一段、降りて行くとと水の音が聞こえる。そして、木の階段を降りきるとそこには、民家風の内装が広がる。石に木材、その下からシダが覗いている。
そして、湖を望む席は光の演出がされており、大きなガラスがひときわ目立っています。民家風でありながら大きなガラスと融合している。そして、いたるところに植物のぬくもりがある。
テーブルに、グラスが斜め一直線にセッティングされているのいがおもしろいなと思った。「うむ、これは期待できそう!」

まずはグラスシャンパンでのどを潤す。テタンジェ
85
年、シャルドネだけで作ったシャンパーニュ。

料理は、シンフォニーなるデギュスタシオンを注文。デギュスタシオンとは新婚旅行など一生に一回しか来店しないお客様に、自分の味を体験してもらうためのメニューである。
早速、アミューズが。しかし、このアミューズはちょっと違う。香りをかぐだけ!食べないアミューズなのだ。ローズマリーを主体とした香り、五感を刺激しようというのだろか・・・
私たちはサボアのワインを頼むことにした。プィイ・フィッセのデミとサボアの赤である。サボアのワインとて安いわけではない!これには驚く。(実際、その後に訪れたレジス・マルコンはなんと割安に感じたことか・・・)

続いて、パレットに乗ったアミューズが登場する。野草づくしだ。
この時は友フランソワ・クープランがマルク・ヴェラと協業していたとは知るよしもなかった。
特に印象的だったのが階段の内装で使っていたシダがスープにあしらってあることだ。そのスープは、なんとも不思議な味わいだ・・・

続いて、木のワゴンで演出されたパンのワゴンサービス。まさに「できたて」って雰囲気が漲っている。三ツ星レストランの演出は、パンのサービスまで違う。
トータルコーディネートの場合、部品ひとつ欠けてもだめなのだ。
すべてに一貫性がある。
続いて、「サービスだ」と陰干しのワインが提供される。
ということは、やはりフォアグラだろう。
フォアグラは二種同時対比で提供される。左は泡立てた玉子フランで、クリーム
の茶碗蒸しのような一品。がりっとくる岩塩はまさに脳ポイント。
少し塩味が強いが、陰干しのワインの甘味が和らげてくれる。
右がフォアグラのポワレである。このソースアニス風味の
ビネグレット・オイルだが、陰干しのワインと香りの微妙な対比ができる。

3皿目が野の恵み食べ比べだ。人参にはラズベリーのソース、アーティチョークには胡桃のソース、
トマトにはピスタチオのソースだ。味わいは、「????」(うむ、段々、難解な料理に入ってきている)わかったのは、対比、対比、対比・・・ということ。

4皿目は、パスタに見立てたパプリカのエスプーマ仕立てだ。パルメザンチーズのアクセントが濃厚だ。以前のチーズのパスタがこれになったと思われる。ここでテーブルに奇妙なカトラリーが置かれた。桑の形をしたフォークだ。


そして、ついに、注射器の料理、登場!レジス・マルコンにして、「料理に注射器など必要ない」と言わしめた料理が登場だ。卵の黄身に突き刺す。それをパンと、内側にがりがり砂糖の焼き菓子?につけて食べるというもの。これもやはり、対比だ!がりっとくる砂糖にこの酸味が確かにマッチしている。


ここで香草の魔術師登場!やはりハットは欠かせない。写真を撮りたいというと、快くオーケー!「はい、チーズ!」
「おい、おい、ちゃんとフラッシュ焚かないとダメだ!」と、ヴェラ氏。
彼は、自分の商品価値がわかっている。焚かなくて撮れる高性能デジカメだが、やむを得ず強制発光モードに設定変更し、「はい、ポーズ」何度も何度も、握手をしているヴェラ氏であった。

さて、料理はここから、ガラスを使った食器で提供されていくことになる。内装との融合を考えているのだろう!
すべて、この店オリジナルだ。まず、はけでソースを塗る淡水魚とパルジャーノ・レッジャーノのリゾットの団子だ。これは普通にうまい。


次の皿はスープに変身のチーズ(大久保命名)。
この、スープ皿素敵のひとこと!



それをスモークした松ボックリで食べるというしかけ。
チーズと松ぼっくりで、鰹節のような味と風味に変身!!

続いては、スモークした木の上に載せた鱒。皮がくるくると巻いてある。
その中に、野菜が入っているしかけだ。葉っぱのようなガラスの食器が鮮やか!そこに試験管に入った、酸味の効いたソースをかけてくれるという嗜好だ。


次も試験管の料理。
布に包んで蒸し焼きにしたパーチに、赤い茎の歯ごたえのあるハーブ添え。
まるで、実験室のようだ。

続いてがエクルビスのフォンデュスタイル(右)。ガラスの窪んだ皿に、ピンチョスをつけて食べるというもの。



次がオマール食べ比べ。三角形のガスの器に、甘さのグラデーションを対比して食べる。「う、あまー」と、滝沢さん。

口直しが、ホワイトチョコみたいな、バターに包まれたアーティチョーク。
「ひしゃくで一気にお召し上がり下さい!」
そしてきのこの香りのマッシュポテトが出て、
次が、また奇妙な瓶詰めにされた、
マンゴー・ジュースのようなソーダ。これをタンブラーに移して飲む!
もはや、????
そして、いよいよメインディッシュ。私は鶏のパイ包み焼き、香草風味、滝沢さんはカカオ風味の牛ヒレ。牛ヒレは、甘さを抑えたチョコレートをのせるとインパクトが出るしくみ。
こちらがが鶏。


こちらは滝沢さんの頼んだ牛。
そして圧巻は、デザート!エンドレスで出てくる。
昨年のクレムブリュレはヨーグルトに変身していた。

ティラミスの微妙な食べ比べです。ティラミスとコーヒーのムース対角線に二種類一緒に食べるとティラミスに変身するという仕掛けだ。

「何種類出るんだ、この野郎!」ととなりのおじいさんがうんざり顔で私に目線を送っている!
マルク・ベイラ劇場は驚きで幕を閉じた。
過去の連載より おいしさの構成要素 2026.05.21
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