60ばーばの手習い帳

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September 2, 2019
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​​星 ​姉…シ、あね 妹…マイ、いもうと​

芦屋


 谷崎潤一郎『細雪』は、昭和11年から16年の、大阪の旧家に生まれた四姉妹の
日常生活を綴ります。上流家庭の、お上品なお嬢様…ではない等身大の素顔が
見られるのが、面白い小説です。

 旧家といっても商売を辞め、昔の勢いがなくなった「蒔田」家は長女の鶴子が
婿を取って「本家」になっています。二女の幸子も婿を取りましたが、三女の雪子
は三十過ぎてもまだ縁談がまとまりません。四女の「こいさん」妙子は自由奔放に
行動します。

 雪子が見合いをしては破談になる繰り返しを中心に、話が進みます。この、縁談
にかける姉妹の姿勢が変わっていく課程がまた現実的で面白いのです。


 初めは降るほどにあった縁談も、雪子の年齢が上がると共に、少なくなって
きます。鶴子は、再婚でも、子持ちでもいいじゃないかと言いだし、反対する者も
ありません。それでも断る側だったのが、断られるようになります。

 雪子は、陰気で病弱に見えるらしいのです。それはそうでしょう。しゃべらないし、明るい表情を見せるわけでもないんですから。
 一対一になったとき「はあ」しか言わない雪子に、馬鹿にされているような気が
すると、断ってきた見合い相手の気持ちがよくわかります。
 結婚する気があるなら、自分でももっと努力しろよ、と言いたくなります。

 見合いに同行する幸子がまた曲者なのです。仲介する人に「お姉さんは十も十五
も老けて見えるように」地味にしてください、と言われても、わたしは派手な着物
しか似合わない、とばかりに、自分が目立ってしまいます。

 幸子は、姉妹の中で雪子が一番の美人、と持ち上げますが、客観的に見ると、
寂しげな醤油顔の雪子より、華やかな西洋風の顔立ちの幸子の方が、目立つに
決まっています。質問には、雪子の代わりに自分が答えてしまうし。また、その
受け答えがうまいのです。一生懸命さが逆効果に。
 「お姉さんは陽気で近代的だけれど、妹さんは内気で陰気に見える」と言われて、本心では優越感を押さえがたい、とほくそえむ幸子です。

 でも、姉妹4人が、お互い違う価値観を持ちながら、かばい合う気持ちがわかる
からこそ、気持ちよく読めます。


世間の束縛を跳ね返すように生きるのが妙子。駆け落ち騒ぎを起こし、その相手
を貢君にして、二股かけ、最後はでき婚と怒濤の人生を送ります。今なら、恋人に
ブランド物を貢がせるとか、でき婚など珍しいことではありませんが、戦前の話
ですから、周囲は大騒ぎです。

 でも、周囲に任せるような姿勢を見せながら、プライドが高くてこじらせる雪子
よりは、ストレートで好感が持てます。

 最後は奇蹟のように、雪子と華族の庶子との縁談がまとまりますが、雪子が婚姻
のため東京へ向かう汽車の中で「下痢が止まらない」で話は終わります。
 この終わり方は衝撃的でした。かの有名な谷崎潤一郎の代表作の結末がこれ
ですか、とびっくりでした。


 谷崎潤一郎は、発表することの出来なかった戦争中に『細雪』を書き続けまし
た。時代と共に滅び行く文化が、ここにはあります。その文化を享受して、四姉妹
は生き生きと生活しています。気取ることも遠慮することもなく。
 彼女たちのリアルな日常があるから、時代が下っても「面白い」のでしょう。


              参照元:谷崎潤一郎『細雪』上・中・下巻 新潮文庫​





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Last updated  September 2, 2019 12:00:33 AM
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