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「御 簾
(みす)を隔てて高座を 覗
く」ということわざがあります。簾越しではよく見えず、もどかしい気持ちが伝わります。高座は、身分が高い人の貴賓席、天皇や将軍が謁見する上座。
「靴を隔てて痒きを 掻
く(隔靴 掻
痒)」と同じく、物事が思うようにいかず、もどかしいことを言います。「二階から目薬」ということわざもありますね。
☆ 覗
…シ、うかが(う)、のぞ(く)…隙間からのぞくようにして、うかがい見る
☆ 搔
…ソウ、か(く)…爪でひっかく。騒ぐ。
☆ 簾
…レン、す、すだれ
御簾
*垂 簾
聴政…皇帝が幼く直接政治が行えないとき、代理で皇太后などが政治を行うこと。「垂簾」は簾を下ろすこと、「聴政」は政治を行うこと。
皇太后などの立場の女性は、多くの男性臣下と直接会うことがよしとされなかったので、御簾越しのやりとりになったのです。
源氏物語の若菜・上の巻に、柏木が女三宮を垣間見てしまう場面が書かれます。
それまで光源氏の屋敷では紫の上が正妻扱いでしたが、身分高い女三宮の降嫁によって、女三宮が正室の地位を占めます。女三宮は幼い人でした。
六条邸では蹴鞠が催され、女三宮も御簾の中からご覧になっていました。この時代の高貴な人妻は御簾の中にあって、男性に直接姿を見せてはいけなかったのです。
たまたま唐猫が御簾を跳ね上げ、女三宮の姿は、彼女の降嫁を望んでいた柏木に見られてしまいます。柏木は思慕を募らせ、やがて柏木と女三宮は過ちを犯すことになります。
かつて、源氏も藤壺の宮を相手に同じ過ちを犯してしまいました。幼い頃は母代わりの宮と自由に会うことができましたが、成長して一人前の男子になると御簾越しでしか会えません。なのに源氏も無理に御簾の中に入ってしまいました。
御簾は、越えてはいけない一線だったのです。
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