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June 8, 2026
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カテゴリ: 詩とやまと歌と

雨は愛のやうなものだ
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と犀星の『雨の詩』は始まります。ですが、この詩は決して雨や愛の賛歌ではありません。
雨はいつもありのままの姿を
あれらの寂しい降りやうを
そのまま人の心にうつしてゐた

 詩の続きには「寂しい降りやう」「悲しさうに少しつかれて」という表現が出てきます。
 人が寂しさを感じるときとは、人とのつながりが希薄になる時、また自分の存在価値がわからなくなる時です。
 雨は愛のようなものと言いながら「愛」が降るときも寂しく、あるいは悲しくなるというのは、どうしてでしょう。


 室生犀星は石川県金沢市の生まれで、「犀星」は犀川の西→「せい」の読みを取って「星」の字を当てたペンネームです。
 犀星は私生児であり、生後すぐに養子に出されました。高等小学校になじめず、中退して裁判所の雑用係として就職しました。寂しい日々の中、俳句との出会いが犀星の人生を変えました。

 俳句、詩、短歌を作るようになってから、上京して、生涯の友となる萩原朔太郎とともに詩作に励みましたが、生活苦から金沢に戻ることになりました。
 家庭をもってから再び上京した犀星は、有名な「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の詩の言葉通り、後半生を東京で生活しました。


 犀星は『愛の詩集』の序詩で「自分は愛のあるところを目指して行くだらう。/悩まされ駆り立てられても/やはりその永久を指して進むだらう。」と言います。そして、自分の詩の根源にあるのは「苦悶」であるとも。

『雨の詩』を含む『愛あるところに』の一連は、まだ詩が世間に認められていなかった暗黒の時代に書かれました。やがて愛を得ることを確信する「わたし」は「永い間語るであろう/どんなに永い間寂しかったといふことを」と語ります。

 自身の心の中に降り募った寂しさを眺めて、犀星は今までの苦悶を言葉にしました。永遠に得られなかった母という存在、自分の生い立ち、女性に望む母性、生活のための労働たり得ない詩を書く苦悩。 
 その苦悶を土台に詩を書くことを続けることを選んだのでした。

 雨は地道に働く人々の上に降り注いでいます。寂しい降りようをそのままの姿で人の心に映します。雨は詩です。苦悶しつつ犀星が求める愛の詩です。

     引用および参照元:室生犀星『抒情小曲集・愛の詩集』講談社文芸文庫から 『雨の詩』











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Last updated  June 8, 2026 12:00:13 AM
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