迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.05.14
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カテゴリ: 浮世見聞記
川崎市多摩區生田緑地内の川崎市 岡本太郎美術館で、「岡本太郎と太陽の塔 万国博に賭けたもの」展を觀る。 



昭和四十五年(1970年)に大阪で開催された日本萬國博覧會の象徴として、現在も千里丘陵の跡地の公園に建つ「太陽の塔」、その誕生までの軌跡を1920年代の巴里在住時代にまで遡った企画展、のやうだが、そもそも岡本太郎はこの建築物について生前なにも語ってゐないため、その真意がどこにあったのか、實のところ不明とされてゐる。



よってこの企画展でも具体的な解釈も解説もなされてゐないのは當然で、私が今年二月に現地で萬博當時を可能な限り復元した内部を見物した際の印象とを重ね合はせて、



結局は自分のなかだけの世界觀や価値觀を、前衞作家らしい抽象的なシロモノを通して見せつけたにすぎず、そしてほとんどが“祭り見物”くらゐの感覺で来場したであらう當時の一般大衆に、それら主張が理解出来たとも到底思へず、ただ萬國博覧會と云ふ「人類の進歩」──“未来の姿”を見せる非日常空間にのまれたおかげで、なんとなく「スゴイ……!」と思はせたにすぎなかったのではないか……。



私はEXPO'70に興味があるのであり、べつに岡本太郎に興味があるわけではない──

と云ふことがわかったことを収穫に、會場をあとにする。




園内に隣接する川崎市立日本民家園にも立ち寄り、江戸末期に勢州志摩の漁村に建てられてこちらへ移築保存されてゐる、「船越の舞薹」を見物する。



いはゆる地芝居を演じてゐた舞薹らしく、花道や盆(廻り舞薹)のほか、“出語り”と云ふ格子の嵌まった出窓のある本格的なつくりで、かういふところでも手猿樂をやりたいなァ、思ふ。



やはり家屋は古くても人が住んでナンボ、人の生活があるから家も活きるわけで、生活から切り離された家は空家と同じで私には歴史的な魅力が感じられず、ほかは流して歩く。







囲炉裏を囲む年配男性たちの姿も古民家の風情によく溶け込んで繪になる眺めだったが、そのうちの一人がふと手に取ったスマホを、もう一人が「それはiPhoneなの?」と急に現代名詞を口にし、場の雰囲氣との落差につひ吹き出しさうになった。

やがて二人の會話は、

「ところでAIってなんだ?」

「さぁ、何だらうな……。みんな便利だ、便利だ、って云ふけど」

時代は令和であってどこか令和でないやうな、そんな時空の捻れに迷ひ込んだ不思議で樂しい時間に遭遇す。




民家園本館の展示室ではかつての多摩川流域の生活文化を當時の古民具で紹介した企画展「おばあさんは川へせんたくに」をやってゐて、かつて大切な交通路だった渡船も紹介されてゐた。


(※案内パンフレットより)

多摩川の中下流にいくつもあった渡し舟のうち、昭和四十六年に撮影された枯水時は橋渡しだった「菅(すげ)の渡し」の冩真に、「このあたりは“ゆすり” “かたり” “ちかん”が出没するから要注意」とはっきり書かれた立て看板の冩ってゐるのが、當時の土地柄を窺へる貴重な資料と、別なところに価値を見出す。





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最終更新日  2025.05.29 07:45:28
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