迦陵頻伽─ことだまのこゑ─

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2025.10.09
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カテゴリ: 浮世見聞記
三越劇場で、前進座の「笑いごとではありませぬ!」を觀る。



“歌舞伎”と銘打たない前進座の芝居を觀るのはいつ以来やら、今回の新劇物は第二次大戰と云ふ時局下、五十三席の艶噺を“禁演落語”として自ら封印し、軍部が要求する“國策落語”をもって大本營に協力しながらも翻弄される、或る噺家一門と周辺の人々を描いた元前進座女優の脚本を、文學座代表が演出した作品云々、キナ臭い時世下に庶民娯樂を代表する落語がいかに戰争利用されたのか、なかなか興味を覺えたものだが、「落語とは?」についての説明的な長臺詞や、大本營の訓令を丸讀みするなど退屈な場面が頻出し、期待外れ。

そもそも出演者が誰一人としてその役の人物“らしく”見えず、舞臺役者特有の演技臭ばかりが強烈なあの見當外れな役づくりは、一体何なのだらうか。

出征して戰地で深い“傷”を負ひ帰還した若い噺家は、單なる令和現在(イマドキ)の若いイケメン兄チャンにしか見えず、前座の弟弟子は國策落語を口演する場面が資料的に目を惹いただけで輕妙な人物像は噺家のそれとは異質で、この二人の師匠は黙ってゐたら舞臺にゐることを忘れてしまふほどの存在感のなさ!

開口一番の日替はりゲストに出演した古今亭文菊がきっちり「權助提灯」を聴かせて、それだけが劇中における本物だっただけに、その後で出て来た噺家役たちの拙さを却って際立たせてしまったのは皮肉だ。


(※撮影可のカーテンコールにて)

國策落語を強要する三枚目がかった演藝好きの少将だか少尉だかは、あとで肺病のドサ回り女形役者の二役で出演、白粉化粧をした姿(なり)で狂亂する演技のはうが、軍服を着てゐなければ全くさうは見えない少将だか少尉だかよりも、よっぽど本役に見える。

“聲”だけの出演で、あとは共演者の演技で存在が示される犬の壽限無が隠れた主役であるのが作品のミソであることはわかったが、共演者たちが以上な力量不足ためにせっかくのサゲも際立ず、これではもう、笑ふしかありませぬ!





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最終更新日  2025.11.17 10:13:49
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