アルタクセルクセスの王宮址遺跡

アルタクセルクセスの王宮址遺跡

2005年07月27日
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カテゴリ: 映画
 今日は暑い一日だった。そのせいか夜は激しい雷雨になった。


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 見に行こうと思っていた映画「トニー滝谷」が今日で終わってしまうというので(まだ上映開始から2週間なのだが)、急遽見に行くことにした。
 この映画の原作は村上春樹の同名短編小説で(「レキシントンの幽霊」所収)、僕は読んだ事が無い。村上作品はそこそこ読んでいるのでその大体の傾向は知っているつもりだが、彼の作品を映画にするのはなかなか難しいのではないかと思っていたので(彼自身は確か早稲田の映画学科出身なのだが)、市川準監督(この人もよく知らないけど)がどういう風に映画化するのかは興味があった。
 ドイツでは村上春樹は当代もっとも知名度の高い日本の作家なので(ドイツの一部評論家は「ノーベル文学賞に一番近い人物」と評している)、また音楽がこれまた日本人として世界的に知名度の高い坂本龍一だったので、客はそこそこ入っていた。当然ながら学生ばかりだった。

トニー滝谷
レキシントンの幽霊

(あらすじ)(ネタバレ注意)
 トニー滝谷(イッセー尾形)の「トニー」は本名である。彼の父親(尾形二役)はサックス奏者で、親しい米軍将校に名付けてもらったのだという。母は彼の誕生後すぐに亡くなり、演奏旅行で転々とする父親の都合で、彼は孤独な少年時代を送る。「孤独」は彼にとって通常であり、当たり前のことだった。彼は美大に進み、イラストレーターになる。その絵は専ら無機質な機械を対象にしている。
 そんな彼は仕事で知り合った英子(宮沢りえ)と恋に落ちる。15歳も年下、しかも彼氏のいる英子だったが、二人は結婚する。トニーは生まれて初めて孤独でない生活を知る。

 結局英子は死ぬ。トニーに残されたのは彼女が残した膨大な衣服。彼女が着ているときは生き生きとした生の象徴だったその衣服は、今ではただのモノでしかない。トニーは英子に体格がうりふたつのひさこ(宮沢二役)を秘書として雇って亡き妻の衣服を着てもらい衣服に生を与えようとするが、衣服を前に泣き崩れるひさこの姿を見て思い止まり、衣服を古着屋に全て処分してもらう。こうして亡き妻のことは忘れた。
 やがて父も亡くなる。彼はトニーにサックスと古いレコードを残した。トニーはそれも処分する。彼には父や英子を偲ぶものは何も残っていない。彼は生まれて初めて自分が孤独になったと感じる。彼の手はひさこの電話番号を廻している・・・。

 村上作品というと主人公の独白というスタイルが多いが、この映画もナレーション(西島秀俊)が多用されている。そしてナレーションと台詞がかぶったりする。そして、とにかく静かな映画だ。音は坂本龍一の静かなBGMと登場人物の台詞がほとんど(BGMがあったり監督名が出ている時点でNGとはいえ、なんとなくラルス・フォン・トリアーらの「ドグマ95」を思わせる)。そして説明調で展開が急な割に、ゆっくりとしたテンポで語られている不思議な映画。何より主要な登場人物はイッセー尾形と宮沢りえのみで、二人芝居もしくは一人芝居を思わせる。この映画のキャスティングは一人芝居で知られるイッセー尾形以外には考えられなかっただろう。どちらかというと映像で語ろうとする方向である(岩井俊二と同じ?)。
 見ていたドイツ人たちは見終わった後「なるほど」というような感想をもったようだが、この映画はあまり大向こうには受けないだろうな。村上作品の雰囲気はよく出せているように思うけど、彼の主題である個人の「喪失感」「孤独感」を前面に出したせいかあまりに「分かり易い」映画になっている(「アンダーグラウンド」以降、彼の関心は個人の総体である社会に向いているようだが)。要するに無駄を極力殺ぎ落とした映画ということだろう。僕自身は少々「なんだこれ」と感じる面もあったのだが。

 それにしても宮沢りえ細いね。棒切れみたいだ。激痩せ騒動(えらい昔だが)の頃とあまり変わってないんじゃないかとさえ思えた。デビューの頃はころころして可愛かったのにねえ(そりゃ今だって綺麗とは思うけどさ)。女優としては格段に成長しているんだろうけど、ドイツでごっつい姉ちゃんを見慣れているせいか、僕には女性というより中性な感じがしたくらいだった。
 英子の買い物依存症というのは分からない。僕は衣服にあまり頓着無しないほうだし。この映画を一緒に見に行ったUさん(女性)は「あれは分からんでもない」と言っていたが。僕が買い物しまくるのは本ばかり(しかも専門書)で、僕が死んだら図書館とはいかないまでも大変な量の本が残るんだろうな。しかも洋書の専門書が多いので始末に困るかも知れない。万一のことがあれば、日本語の本はここの図書館に、洋書は日本での母校の図書館に寄贈しようかと思ったこともある。





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最終更新日  2009年05月26日 17時53分52秒
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