北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地
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中国の輸入検疫検査で重金属が含まれと発表されたSK-IIの問題を、多くの日本メディアがそうであるように、中国による日本バッシングの一環だと片付けてしまうのは、容易いことです。でも、SK-IIはアメリカのP&G社のサブ・ブランドですし、中国での発売元はP&G社の中国法人(宝潔公司)ですし、返品の手続きのことで上海市民が抗議に押し寄せ、破壊行為に及んだのも、P&G社のオフィスです。しかも9月25日になって、香港でのテレビ報道を紹介する形で「SK-IIに続き、4大ブランドの化粧品にも検出されてはならない物質が」という記事が新華網に掲載されました。Clinique、Lancome、Christian Dior、EsteeLauderです。このうち、EsteeLauderは日本で製造されているようですが、一般の中国人にとっては欧米ブランドと言う認識でしょう。9月26日にはSK-II騒動の火付け役でもあった人民日報が弁明じみた記事を掲載しました((新華網への転載記事)。輸入製品の品質管理における品質検査部門の成果を自画自賛する内容で、「外国ブランドの"国民を越える待遇"時代は終結した。」と。文字通り解釈するなら、ということになります。これまでは中国国産品の品質は怪しかったのでチェックを厳しくしてきたけど....ということなのか、これまでは外国ブランドの品質管理はしっかりしていたけど....ということなのか、そこまでは読み取れませんが、いずれにしても中国における品質検査の"ダブル・スタンダード"を認めるような内容であることは確かです。ただ、最近の中国における品質問題は、日本を狙い撃ちしているとか、外国ブランドを狙い撃ちしている、と言う被害者意識だけでは片付かないのではないでしょうか。中国国産ブランドだって批難に曝されることがあるのです。9月26日には、天津市工商行政管理局の検査で、国民的ブランドである"[女圭]哈哈(Wa Ha Ha = 実際はフランスのダノンの資本が入っています)"や"農夫山泉"を含む5種類の機能性飲料が成分表示などに問題があるとして"ブラックリスト"入りしたことが報道されています(SOHU:解放網からの転載記事 / 深セン新聞網からの転載記事)。この"ブラックリスト"の中には、日本の"ポカリスエット"も掲げられてしまっているのですが、これをまた「日本バッシング」とか「外国ブランド排斥の動き」などと言って済ませることはできないでしょう....。原因や背景はともあれ、こうした問題に曝された場合、日本的な考え方では対応が難しいと思います。日本のような"防波堤"が存在しないからです。まず第1にメディア。日本の場合、大型広告主であればあるほどメディアは企業にやさしく対応します。たくさん広告費を払ってくれる企業の不祥事はあまり大きく取り上げられません。ところが中国では、大型広告主であっても油断できないのです。広告費の力で記事を抑えることは難しいと考えたほうが良いでしょう。日本とはメディアの構造が違います。全国紙(中央紙)がスルーしても、どこかの地方紙が取り上げるでしょう。テレビ局も同じです。企業の不祥事は一般人にとっては興味深いネタですから、どこかの地方テレビ局や新聞などで話題になると、瞬く間にニュースサイトや新聞などに転載されてしまいます。ニュースサイトはたくさんありますから、広告で抑えようなどと考えるのは無理でしょう。視聴率や発行部数やアクセス数を稼ぐことが、いまの中国の多くのメディアが目指していることです。第2に流通・販売網。日本であれば、メーカー側が非を認め自主的に販売を中止するか、消費者側の不満が相当高まら無い限り、販売店が勝手に問題商品を撤去するようなことは少ないと思います。問題が発覚するとメーカーの営業担当が販売店を回って、「困難な状況ですがよろしくお願いします」などと頭を下げて挨拶すれば、長い付き合いとか温情とやらで、なんとか繋がったりするものです。ところが中国では、問題が報道されると、事の真偽を確認する前に、販売店の独自の判断で販売を中止するケースが多いのです。そして第3は消費者です。メディアも販売網も防波堤にならないのは、消費者意識が日本とは異なるからです。元来品質の悪い商品に囲まれて成長してきた消費者ですから、多くの人たちは品質には敏感です。そして少しでも問題があると徹底的に抗議します。少しくらいいいやとか今回だけだろうから大目にみよう、みたいな日本人的思考にはならない人たちが大半だと思ったほうが良いでしょう。品質に問題がある商品を売っていたとなると販売店も攻撃されますから、敏感です。真っ先に崩壊するのは販売網だと考えたほうが良いかもしれません。また著名ブランドであればあるほど、成功しているとか儲かっているようなイメージを持たれています。でも(日本もそうですが)、自分が成功したり儲かっている(と思っている)消費者などごく少数ですから、著名ブランドの問題が発覚すると、ヤッカミも手伝って、そうした話題に興味が集まりますから、メディアはこの手のネタを取り上げたがるのです。そもそも品質管理を徹底して問題を起こさなければ良いのでしょうが、品質問題"発祥の地"は、中央・地方の国家商工行政管理局やその傘下の品質監督検査機関の"お役所"です。ここをコントロールすることは、メディアや流通・販売網や消費者をコントロールすること以上に困難なわけです。こうしたリスクを念頭に入れながら、メディア、流通・販売網、消費者とのリレーションシップを考慮しながら、コツコツと防波堤を築いていき、二次的被害を最小限に食い止める準備をしておくことが大切なのではないでしょうか。
2006.09.26
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