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「人の悪い善人」は常に左右の手に道徳と法律を握って「人の善い悪人」を懲戒圧倒する。
2025年01月31日
働くに業のない労働者、業あるも働かない怠慢者、働いても働いても食えない人、働けば働くほど食えなくなる人、働きつつ自ら貧苦に甘んずる人、働かないで徒(いたずら)に運命を呪う人、筆舌あるものは過大に之を社会に訴える。無学のものは訴えることさえ知らずに唯(た)だ忍び泣くのみ。上を見よ九八七六五、下を見よ一二三四五、げに人間ほど不平等な境界があろうか。
2025年01月31日
「明日は雨だな」万人が皆悉(ことごと)く預言者なり。「大分懐(ふところ)が寒いな」、万人皆悉く推論者なり。「彼は弱点があるな」万人皆悉く読心者(どくしんしゃ)なり。万人皆悉く裁判官なり。警察官なり。而(しか)して万人皆悉く罪人なり。囚徒(しゅうと)なり。混雑の世界なり。
2025年01月31日
世人は殆(ほとん)ど阿諛(あゆ)に近きまでに勝利者を激賞する。それは必ずしも不当ではない。併(しか)し敗残者を遇するの道を全く忘却しているのは何故だ。正当に戦い正当に敗れ、若(も)しくは素直に反省し、素直に懺悔(ざんげ)するものに対して骨をシャぶるような冷酷さは何だ。
2025年01月30日
金があっても費(つか)うに道なく、物があっても何の用もなさない時代が来る。唯(ただ)信ずる人間と人間とだけ結び合って死んで行くばかりが事実として地上を彩る。
2025年01月30日
京阪電車は近く時間を短縮して三条天満間を五十分で走ることにするそうだ。途中停留して「急行の追い越す」のを待つ電車が殖(ふ)えることだろう。時代に遅れた普通電車のような人間は、短い支線に留って後から後からと賢明な「急行人」のために追い越されて行く。けれども都市より都市への賢明急行人のみで「社会交通」は全からずだ。追い越された余裕、追い越さしむる雅量(がりょう)それも尊い姿だ。「普通」があって初めて「沿線」は賑うのだ。平凡人があって初めて温良忠直の一路が光るのだ。
2025年01月30日
地上の真実は悉(ことごと)く「為(ため)」付きの人間によって踏みにじられている。国家の為、社会の為、世の為、人の為、親の為、子の為、家の為、皆自他を詐(いつわ)る声だ。正義、博愛、人道、みな「為屋」が使いふるしたドス黒い古看板だ。この「為屋」の為使用のために古往今来(こおうこんらい)幾多の国家、社会が殺されたであろうか。思うだにゾットする叫びだ。
2025年01月29日
冬終る垂れし暦は末日に
2025年01月29日
地上最大の危険人物は正直なる小心者だろう。他人を脅(おど)かして金品を貪(むさぼ)り、強盗に入って人を殺す程の勇気のないものが、生活難に苦しめられて生きていられなくなって最愛の妻や子と心中して果てるのだ。結果から観て「殺人犯」に疑いないが彼とは全く別人間だ。正直なるものは禍(わざわい)なるかな。臆病なるものは不幸なるかな。我等は実際に食えないで強盗化する人をも憐れむと同時に、更に食えなくて妻子を殺す正直者の前には何時も声を絞って泣かされる。
2025年01月29日
政治家が国を論ずる。教育家が道を説く。宗教家が経を読む。悉(ことごと)くそれが職業化している。書籍屋が木を製(こしら)える。小間物屋が人形を造る。畢竟それを買って金を得るのが目的だ。男の節操すら、情けなくも今は買物化してきた。腰弁と自動車通勤とを問わず、職業それ自体が既に商品化している。生活活動は直ちに価値づけられて人世に生きる目的と相背離(あいはいり)している。今の時節は男も女も身を売って食っているのだ。それが久しうして常習性となってしまったのだ。働くことそれ自体が生活中心となって目的と職業とがピタリと一致するまでに来なければ「思想善導」の根本意義に達せられない。
2025年01月28日
冷たく「アタリマエ」だと一蹴し去れば世の中の万事万端悉(ことごと)くアタリマエならぬはない。温かく感謝して通れば同じく万事万端悉く感謝に満ちている。
2025年01月28日
社会は盛んに放蕩援護、堕落補助の機関を完備しながら、更に一方その正しき実行者を捕え汚名を冠して之を排斥せんとす。畢竟罪の奨励か、善の防止か、今の「良民」たる難いかな。
2025年01月28日
公園の遊具に声や春待ちぬ
2025年01月27日
最初の嘘は親が教え、次の嘘は教師が教え、第三の嘘は宗教家が教えるのだ。斯(か)くて今の社会は「完成した嘘つきばかりだ」。寧(むし)ろ社会そのものからして嘘で組織されている。
2025年01月27日
げにや一桃腐(いっとうくさ)りて百桃損(そん)ずるは世の中の常相、一疋(いつひつ)の馬が狂えば千疋が狂うとかや。一兵卒の落伍は即(すなわ)ち全隊の大行進を妨げる。社会の全員は皆悉(ことごと)く一桃、一馬、一兵卒だ。
2025年01月27日
正直なる小心者が、ある動機によって誇大の夢を見はじめたる時は、妙に大事件の発端を開く。
2025年01月26日
もし周囲の人より蛇蝎(だかつ)の如く憎まれんと欲せば常に「正当」を語るにあり。正当を語るは自ら生存の天地を縮むるものなり。
2025年01月25日
春近しごみ捨て終わり歩む道
2025年01月25日
斯(こ)う見渡せば、老も若も皆それ相応に悩みの影を孕(はら)んでいる。傍に他人の居ない時、独り静かに道を歩む時、彼等は絶えず何事かに思い悩んでいる。げに娑婆は苦の土なりだ。ただ小児(しょうに)と白痴(はくち)のみ仏に近いだけだ。
2025年01月24日
皆が皆、総崩れの姿だ。全く世の中がこんなにまで廃頽期(はいたいき)に入っているのだろうか。この際少しでも物を持ったもの、少しでも名の知られたもの、皆やられるのだ。食えないものから見れば一日食っているだけでも恵まれた身の上だ。けれども働くに業がないからって働いて辛く一日を食っているものまでを搾取すれば世の中は「共斃れ(ともだおれ)」だ。共斃れか、共斃れよ。それが総崩れの社会相なるものか。毛髪の一本まで滲(にじ)み入る寒さだ。
2025年01月24日
親子の間にすら空隙(くうげき)あれかしと祈りて一滴の冷水を投げて陰に悦ぶのが現代人の淋しい心理だ。他人の上を称賛すれば忽ち一座が白ける。猛烈に毒づけば皆が喜んで合槌(あいづち)打つ。薔薇は劍(つるぎ)を持った儘(まま)に咲き、毒だみは針を含んで繁る。あるがままの人生とは云え、思えば温かい春風さえ呪われる日のある。
2025年01月24日
人 生 日 録 時 代
2025年01月23日
蓑(みの)を着て火事場へ飛込むものを愚人中の愚人として世は笑う。而も現代は切実にこの愚人を要求しているのだ。
2025年01月22日
没落階層の弱点に食い入って行く高利貸、生活不安から一躍の夢を見る相場師、前者を結核性とすれば後者は卒中性だ。二者とも時代が生んだ奇形児だろう。
2025年01月22日
今の時代は「理性を越える」動作を必要とする。つまらぬ理性にからまれて手足の自由すら働かせ得ないインテリの徒は、滔々(とうとう)として没落だ。
2025年01月21日
何んなに尖端的な新題目を捕えて「大会」などを開いても、主催××寺と来たらテンで青年が寄ってこないのは何うしたもんか。
2025年01月21日
蝋梅や畑の中の一本木
2025年01月21日
時計が五ツも掛っている。それが指針は皆別々に異っている。これでは全然一個の時計もないのと同じだ。若(も)し一個であったなら、たとい五分や十分間違っていても無条件に肯定するであろう。数多ければ統一つかず、絶対唯一なれば自ら迷いを悟らない。何となく現世相の風刺のようだ。
2025年01月21日
他人から時間を問われて自ら懐中時計の止まっているのに気付く。今の時代人は問うものも正確を持たず、問わるるものも既に狂っているのだ。
2025年01月20日
誰かは新聞紙と時計のない国に行って住みたいと云った。ことほど左様に現代人は時々刻々の刺激に疲れているのだ。この刺激より逃れんとする心、それはすなわち、より以上に刺激を求むる心と一致する。
2025年01月20日
忠義したくも戦争なくば忠義されず、孝行したくも貧苦ならずば孝行されず、病教育に呪われたる現代は、半熟の忠臣孝子の中毒に悩まされつつあり。
2025年01月19日
大寒や珈琲あつく冷ましをり
2025年01月19日
九歳の少女に、世の中に何が一番大切だと問いしに、お母さんと錦魚(きんぎょ)、それからお金とリボンと答えぬ。現代の趣味生命を代表したる寸言か。
2025年01月19日
某(ぼう)小学生、厳めしき校長に向かって、「先生何でも嘘を云わぬ方が善いのですか」と念を押して問えりと。これ現代不可解の大疑問である。
2025年01月18日
車にて街の景色や日脚のぶ
2025年01月18日
白ならば純白、黒ならば全黒ならざるべからず、灰色の中に一生を終るは失敗の最も大なるものなり。さあれ現代はまさしく灰色式なり。
2025年01月18日
今の世に「悪」という字はある有用を意味する。悪人とは有為の人物を呼ぶの名称とまでなって来た。
2025年01月17日
今日のような混沌たる時節に、メッタに人の陰口なんかに乗せられたら大変だ。ああ云っても斯(こ)うだ。斯う云ってもああだと、厳密にその言葉の裏までを批判する眼を有(たも)たないものは迚(とて)も現代には処せられない
2025年01月17日
頭が狂う。それが寧(むし)ろ近代人の常相ではないのか知ら。厳密に調べ来って誰か一人、頭の狂いを見ないものがある。狂ってる頭を試験するものが亦(また)狂った頭の人だ。
2025年01月17日
読書子の心眼は「ハア此処がカットされているなナ」と直覚する程に鋭く紙背(しはい)を謝る。率直に物が云えない時節だ。人の言葉の裏を読むと真実が解る。
2025年01月16日
大空へ冬ばら満ちるごとしかな
2025年01月15日
唯(た)だ 大勢に着眼せよ。そして私情をなげうって結合せよ。区々(くく)たる小分裂は、直ちに大勢の進運を防ぐることを警戒せよ。堂々として朗かに、明るく正道を歩め、而(しか)して一直線に前進せよ。彼の雑然たる奮勢方の崩れ行く音を聴かずや。時代なる哉。
2025年01月15日
船で旅行すると一番呑気になるのは周囲関係と絶縁されるからだ。モット切り詰めて云えば電話が掛って来る煩瑣(はんさ)から逃れるからだ。電話はそれほど現代人の神経を尖らし苦しめているのだ。
2025年01月14日
現代は実に晴れがましい世界だ。何一ツとして隠蔽(いんぺい)して置けない。人間の持つ尻の毛一本まで堂々と明るみに曝(さら)されて行かねばならぬ。そして森厳なる、併(しか)しながら血もあり涙もある寛容なる大衆批判の下に公明々の生活に浸らねばならぬ。傷いたものは傷いたままに謙(へりくだ)って歩み、躓(つまづ)いたものは躓いたままに謹んで働くのだ。
2025年01月13日
かがみては冬草愛し触れた手や
2025年01月12日
武士道は如何に生くべきかの為めに如何に死すべきかを教えた。精神家は如何に食うべきかの為めに如何に飢(う)ゆべきかを教えた。文化が進めば人の皮膚が美しくなり、時代が転ずれば人の魂が鈍化する。
2025年01月12日
別れる、離れる、それは云うべくして容易でない。夫婦が別れる、親子が離れる、それは難中至難だが、唯だ独り「「時代離れ」だけは最も易い。油断すればすぐ「時代から離れる」。一たん別れたら最後、モウ再び引戻しが難い。ことほど左様に時代は男らしい男だ。振り捨てられたら冷かに一顧も與へてくれない
2025年01月11日
酒飲まず新年会の宴かな
2025年01月11日
寒林の動画もあるや鳥が立つ
2025年01月09日
人 生 日 録・時 代
2025年01月08日
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