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長野のお土産屋で『蜂の子』を売っているのを見つけました。若い頃、伊那に出張した折、天竜川沿いの飲み屋で『下手物?』に挑戦した記憶があります。熊のサイコロステーキ、ウミガメの刺身、鹿刺し、イナゴの佃煮、ザザムシ、そして蜂の子でした。牛や豚の肉食をあまりしなかった時代の人間の主な動物性タンパク質の摂取源は、海があるところでは魚介類であり、海のないところでは蜂の子やイナゴなどの昆虫たちときまっていたようです。 『蜂の子』を捕るには、夏から秋にかけて、目印の真綿に餌である蛙、川魚、イカ、エビなどをつけて、それを蜂に銜えさせ、目印の白い真綿を目安に、野山で蜂を追いかけたり、蜂の飛んでいる姿を目を皿のようにして追いかけたり、トランシーバーで連絡し合い、その巣を探し当て、老いも若きも男達が夢中になって、地蜂の巣を発見するのです。地蜂の巣を発見すると、入り口で杉の葉等を燃やし煙を立て、蜂の対人攻撃性を鎮めてから、蜂の巣を掘り出すのです。
経験と努力にもとづく蜂追いと蜂の巣いっぱいに詰まった幼虫やさなぎ、成虫を何時間もかけて、つぶさないようにピンセットでそーっとむく(取り出す)作業は非常に楽しいものであり、砂糖・醤油・酒で煮込んだ蜂の子の味は、病みつきになる最高の食べ物であるようです。同時に、遠い祖先から受け継いでいる多様な食習慣があるということは、信州の食文化の豊かさを証明しており、誇るべきものだとは思いましたが、さすがに買って食べてみる決断までは出来ずに帰ってきました。