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今日のまとめ 米銀による中国の銀行株処分は余り気にしなくて良い中国の金融セクターは近年ずいぶん進歩した懸念は急速な信用拡大、簿外取引、不動産価格下落などストレステストには合格LGFPの実態は把握しにくい 相次ぐ米銀による中国の銀行株の売却 このところ米国の金融機関がいままで持ち合ってきた中国の大手銀行の株式を処分するという発表が相次いでいます。 「中国の銀行に何か悪い事があるのかな?」 そんな風に怪訝に思っている読者も居る事でしょう。 結論を言えばそれらの株式売却は中国の銀行に問題があるというよりも、株式を手放す米国の金融機関の側に問題があります。 欧州周辺国のソブリン債が売られている相場環境で、万が一の時のためリスク資産を減らし、中核的自己資本比率を引き上げる必要に迫られた金融機関が必要に迫られて株式の持ち合いの処分の決断を下したというわけです。 このタイミングでちょうど国際通貨基金(IMF)が先日、中国の金融システムの安定性に関する報告書を提出しました。 良い機会ですのでそこで論じられている事の要点をかいつまんで紹介したいと思います。 進歩した中国の金融セクター 国際通貨基金のレポートは先ず中国の金融セクターが近年、その機構面や透明性の面でかなり改善したことを歓迎しています。 従って今後欧州などで金融危機が仮に起きた場合でも、中国の銀行セクターは相対的にしっかりした対応が出来るだろうとしています。 懸念点 それを断った上で国際通貨基金は四つの懸念点を指摘しています。 近年の急速な信用拡大で銀行の資産の質が低下したこと簿外取引の横行と縁故金融の流行不動産価格の下落リスク経済成長に伴ういびつさの発生 下は近年の人民元建ての融資成長率を示すグラフです。 上記のリスクを踏まえ、国際通貨基金は中国の17の銀行に関してストレステストを実施しましたが、その結果は合格でした。 住宅ローン市場 中国の銀行セクター全体の総資産は75兆人民元で、そのうち住宅ローンが占める割合は12.7%です。近年、住宅ローンの残高は下のグラフのように伸びてきました。 一般に中国では預金金利が比較的低くても銀行は預金を集めるのに苦労しません。そこで銀行に集まった余資は不動産セクターなどへの過剰投資に回りやすいです。 また資本市場が比較的未熟なため直接金融(=社債の発行など)による企業の資金調達の選択肢は限られています。 これは普段から企業が高い貯蓄をキープするインセンティブとなります。またその際の運用先として規制の緩い非伝統的な高利回り商品に手を出し、それらの商品の流行が資産バブルを助長している面があります。 中国の地方政府は政府所有の土地を担保にLGFP(Local government Financing Platform)と呼ばれる簿外取引を利用し不動産開発を行います。このため公的部門が負っている真の負債の実態は把握が難しくなっています。
2011年11月18日

今日のまとめ輸出は09年11月以来最低の伸び率だった輸入には異変は感じられない素材の輸入にはブレーキが踏まれた形跡がある中国人民銀行が利下げ転換する環境は整ったソフトランディングできるかどうかはわからない貿易統計中国の10月の輸出は前年比+15.9%の1,575億ドルでした。コンセンサス予想は+16.5%でした。因みに9月の輸出は前年比+17.1%でしたので輸出のペースは減速したことになります。実際、春節の特殊要因が働いた今年2月を除けば今回は2009年11月以来で最も低い伸び率でした。一方、10月の輸入は前年比+28.7%の1,405億ドルでした。因みに9月は+20.9%でした。中国はいわゆる加工輸出型経済です。つまり沢山の素材や原料を輸入し、それを国内で加工、組み立てした後、再輸出するわけです。この関係で輸入額は将来の輸出額の先行指標となります。今回、輸出が2009年11月以来の低い伸びだったことで中国経済に対する悲観論が台頭していますが、上の2番目のグラフで見ると赤で示した輸入の前年比変化率は異変をシグナルしていません。素材の荷動きには要注意それを断った上で輸入の内訳には或る程度注意を払う必要があると思います。一例として鉄鉱石は9月の6,060万トンから10月は4,990万トンへと減少しています。10月は粗鋼生産高も鈍化しました。中国政府の不動産セクターの過熱防止政策が効いてきている可能性があります。金利政策の方向転換は間近水曜日に発表された物価統計と今回の貿易統計を総合して判断すると中国がいよいよ利下げに転じる条件が揃ったと思われます。中央銀行が引締めサイクルから利下げに転じる瞬間は株式市場にとってはチャンスであると同時にリスクも大きいです。これはどうしてかと言えば未だこの時点では経済がソフトランディングするか、それともハードランディングするか判らないからです。一般に不動産セクターの活況によって牽引された好景気(=今回の中国もそれに相当します)が減速しはじめた場合、ソフトランディングを演出することは容易ではありません。以上のことを頭に入れて、余り強気の相場観や極端に悲観的な相場観に凝り固まらず、丹念に経済データをモニターし、必要であれば柔軟に投資戦略を変える心の余裕が必要な局面だと思います。
2011年11月11日

今日のまとめ物価統計はインフレの鎮静化を示している鉱工業生産は経済の減速を示唆している小売売上高も予想を下回った金利サイクルの転換に注目物価統計中国の10月の消費者物価指数は前年比+5.5%でした。これはコンセンサス予想の+5.5%と一致しました。因みに9月は+6.1%でした。消費者物価指数の上昇ペースが鈍化するのは3カ月連続です。一方、生産者物価指数は+5.0%でした。これはコンセンサス予想の+5.8%を大きく下回りました。因みに9月は+6.5%でした。生産者物価指数の上昇ペースも3カ月連続しての下落となりました。上のグラフからもわかるように中国の物価は明らかにピークアウトしつつあります。鉱工業生産中国の10月の鉱工業生産は前年比+13.2%でした。これはコンセンサス予想の+13.4%を下回っています。因みに9月は+13.8%でした。今回の数字は2010年10月以来の弱い数字でした。小売売上高中国の10月の小売売上高は前年比+17.2%でした。コンセンサス予想は+17.6%でした。因みに9月は+17.7%でした。利下げへの環境が整いつつある以上の数字はいずれも中国経済が減速していることを示唆するものです。このため現在の中国の利上げ局面はそろそろ終焉が近いと考えられます。それを確かめるためにも近く発表される貿易統計に注目したいと思います。
2011年11月10日

今日のまとめ新興国も先進国も似たようなパフォーマンスになっている投資家の層が厚くなった事、投資商品が増えたことなどが影響国の信用力の面でも格差が縮まった先進国の景気循環要因により影響を受けるようになる世界の株式市場の似通ったパフォーマンス下のグラフは世界の主な株価指数の年初来のパフォーマンスです。ここには新興国、先進国の両方が含まれていますが、大体どの国も同じようなパフォーマンスであることがわかります。普通、世界の株式市場のパフォーマンスにはもっとバラツキが出るのが自然なのですが、このところの相場はどのマーケットも大体、同じような値動きでこれといった特徴がありません。これは単なる偶然かも知れませんし、中・長期的な趨勢としてその傾向が強まっているのかも知れません。BRICsに代表される新興国を投資対象として組み入れる投資家は着実に増えているし、それらの市場の流動性は昔とは比べ物にならないほど改善しています。さらに個別の国のETF(上場型投資信託)や地域型ETF等、株価指数を簡単に取引できる金融商品も沢山登場しました。それらの要因が世界のマーケットが似たり寄ったりの価格形成になる事を助長したのかも知れません。理由はどうであれ、折角、新興国に投資することでユニークな投資成果を得ることを狙った投資家としてはギリシャ問題などの、本来新興国とは余り関係ない相場の材料に振り回される相場展開に少なからずガッカリしたのではないかと思います。 国の信用力という面でも格差が縮まったギリシャ危機に代表される欧州財政問題はヨーロッパの先進国の国としての信用力がかなり低下してきた事を改めて投資家に思い知らせました。昔はソブリン(=国が発行体となる投資対象の意味)・リスクと言えばもっぱら新興国を巡る問題を指しました。ところが過去10年ほどの間に新興国は見違えるほど国としての信用力をUPし、今では先進国と立場が逆転したかのような観すらあります。先日、ブラジルが10億ドルにのぼる30年債を発行しました。当初5億ドルだけ調達する予定だったのですが前人気がとても高く、急遽発行サイズを倍増したのです。落札利回りは4.694%でした。イタリアの30年債の利回りが7%につっかけている事を考えれば私のような古くから新興国を見ている人間にしてみれば「世の中、ずいぶん変わったな」という感慨を禁じ得ません。つまり新興国と先進国の株価形成が似たり寄ったりになってしまうもう一つの理由は信用力の面で新興国が格段に進歩を遂げたことも関係しているのです。景気循環的なリスクは増大製造業がアメリカなどの先進国から新興国へ移転することで新興国と先進国との間での貿易額はどんどん増えています。このことは新興国の経済活動が昔より緊密に先進国の経済活動に組み込まれることを意味します。これまでは新興国が先進国の生産者からシェアを奪う事で高い成長を実現できていたわけですが、アメリカの産業の空洞化がここまで完成してくると、もはやシェアを奪うことでの成長は望めなくなります。それは今後先進国の景気循環的リスクに新興国がより大きく晒される事を暗示しています。「先進国が不景気でも新興国は独自に成長できる」と言うのがいわゆるデカップリングの議論ですがここ2年ほどの相場を振り返ってみるとデカップリングの発想から新興国への投資判断を下したら大失敗の結果に終わっていたと思います。
2011年11月07日
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