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さる12月9日の『日本経済新聞』朝刊に、当社の投資信託販売に関する広告が載っていて、筆者が、写真入りで登場している。この広告で筆者が述べていることについて、補足説明しよう。 正直なところ、投資信託の広告に自分が出ることがあるとは思っていなかった。また、筆者は、日頃、現在の投資信託商品と販売のあり方に対して否定的な意見を述べることが多かったから、筆者を広告に使おうと考えた企画マンにとっても、これは勇気の要ることであったかも知れない。 筆者が、現在の日本の投資信託について厳しい見方をしているのは事実だ。不満の原因は、(1)投資家にとって高い手数料、(2)銀行をはじめとする販売会社の強引な投資信託販売、(3)親会社(証券会社など)に従属しがちで運用会社としての矜恃が感じられない投信会社の経営、といったものだ。 たとえば銀行の窓口で売っている投資信託の中で家族や友人に勧めてもいいと思えるようなファンドは、ただの一本もない、と言い切っていい。それなのに投資信託の広告に出るにあたっては、筆者としても、考えの整理が必要だった。 先ず、投資信託に対する筆者の立場をはっきりさせておくが、投資信託という金融商品そのものは、優れた仕組み(信託銀行による資産の管理保管、毎日の基準価額発表など)を持っており、これは、投資家が利用するにあたって「いいもの」だと思っている。筆者が批判的なのは「現在の日本の投資信託」の商品と販売に対してだ。 商品に対する最大の不満は、手数料の高さだが、期待も込めていえば、日本の投資信託の手数料は、これから修正される過程にあると思っている。主にネットを通じた販売における手数料の実質ディスカウントをきっかけとして、日本の投資信託の手数料は、先ず販売手数料から、最終的には信託報酬も含めて、実質的に下がっていくだろう。「実質的に」という意味は、商品自体が手数料を下げるかも知れないし、販売者が手数料の相当額のキャッシュバックなどで実質的な値下げを顧客に提供するかも知れない、といういずれかによって、手数料引き下げが起こるということだ。 以上のように考えると、現在多くのファンドに満足していないとしても、ネット証券の投信販売に貢献することには、プラスの面がありそうだと考えた。しかし、漫然と広告に登場するのは気が進まなかったので、「投信選びで大切な三つのポイント」と題して、投信に関して筆者の言いたいことを三つ載せてもらうことにした。三つのポイントは、順に、(1)複数の運用会社から選ぶ(2)コスト(手数料)を重視する(3)納得するまで絶対買わないである。それぞれについて、少し詳しく説明しよう。(1)複数の運用会社から選ぶ これは、あまり知られていないかもしれないが、重要なポイントだ。 個人の資産運用のプロセスの一般論を述べると、あるべき手順は、「家計の分析」→「資産配分計画の策定」→「商品選択」→「購入場所の選択」→ 「ポートフォリオのメンテナンス」ということになる。しかし、往々にしてこの手順は、先に購入窓口を決めてしまって(たとえば特定の銀行や証券会社に)、その後から、資産配分計画を決めて、商品を選ぶという形で崩れることがある。 こうした手順になると、特定の金融機関の扱い商品の中からだけ選ぶことになるので、日本株ファンドとか外国債券ファンドといった同一カテゴリーの中で、本当は他社の扱い商品に存在する、もっと好ましいファンド(多くの場合、手数料が安いファンド)を選ぶことができなくなってしまう。 大手の金融機関がしばしば標榜する「(金融の)ワンストップ・ショップ」とは、表向きは、金融関係の用事が全て一箇所で済む便利な店ということだが、その実質は、顧客が自社の扱い商品を他社の扱い商品と較べたりしないようにすることであったり、医療でいえばセカンド・オピニオンに相当するような他人の意見を聞くことから顧客を遠ざけることであったりする、顧客の囲い込みだ。 また、最終的に買える商品が限られていると、資産配分計画もその制約を受ける可能性があるし、また、窓口のセールス担当者の影響を強く受けすぎることも問題だ。特に、銀行の場合は、顧客の金融資産の大半に関して情報を持っていることが多く、顧客に対する立場が強すぎる傾向があるので、注意したい。顧客の側では、ある程度意識して距離を取って、たとえばファイナンシャル・プランナーなど他人の意見を聞いたり、自分で調べてみたりしてから、投信購入の意思決定をするべきだ。 この点、手前味噌気味になるが、当社も含めてネット証券で投信を選ぶと、系列が異なる多くの運用会社のファンドを比較して投資対象を選ぶことができて好ましい。(2)コスト(手数料)を重視する たとえば通常の、積極運用型(株式にほぼ100%常時投資するファンド)の日本株のファンドを選ぶとして、投資家の側でできることとしては何があるか。 世の中では、たとえば投資信託の入門書を読むと、「いいファンド」を選ぶために、過去の運用成績を見たり、シャープ・レシオを計算したり、投信評価会社のレーティングを参照したりすることが紹介されているが、はっきり言って、これらは運用成績のいいファンドを「事前に」選ぶという点に関して、全く役に立たない。「少ししか役に立たない」のではなく「全く役に立たない」のだ。 特に、過去の運用パフォーマンスは、3年調べようと、5年調べようと、これからのパフォーマンスには関係がない点には注意したい。 この点は、投信の運用会社も販売会社も触れたがらない「運用業界の不都合な真実」なのだ。この事実を顧客が知ってしまうと、合理的な人なら、なかなかアクティブ・ファンドを買ってくれなくなるだろうし、手数料の安いファンドしか買わなくなるだろう。また、「いいファンドは事前に選べない」ことがおおっぴらに有名になると、投信の販売会社やファイナンシャル・プランナーなどの商売にも差し障りがあるかも知れない。 ここで投資家の立場に立って真実を直視すると、結局、同類のファンド間の比較にあって、投資家ができるのは「確実なマイナスのリターン」である投信の手数料を比較することくらいしかない、ということなのだ。そして、この点は、同じファンドを買う場合の販売会社間の比較についても同様なことがいえる。 投信の手数料には、大きく分けて、販売手数料と信託報酬がある。運用が本来長期に亘ることを考えると、目立ちにくいが、信託報酬の影響は大きいので、信託報酬に大いに注目して欲しい。率直に言って、たとえば外債ファンドで1%を超え、国内株式ファンドでも1.5%くらいになることが少なくない日本の投信の信託報酬は、投資家にとって過大だと筆者は思っている。また、残念なことに投信手数料の価格破壊はまだ始まったばかりなので、信託報酬には十分手が着けられていない。今後の引き下げと実質的な価格破壊に期待したいが、当面、ファンドを選ぶに当たっては最重要と言っていい注目点だ。 なお、信託財産留保額を、手数料コストに含める人がいるが、これは、ファンドから先に抜ける人が、自分の資産の売買コスト相当分を、ファンドに残る人に残していく、投資家(投信の場合、正確には「受益者」という)同士のやりとりなので、解約する場合には考慮しておく必要があるが、ファンドの評価の際には、他のコストと同列に評価すべきものではない。 投資信託の信託報酬がどの程度であるべきかは、難しい問題で、個人によって考え方の差があるが、投資信託を運用している会社と同じ運用会社の投資顧問による運用手数料率が一つの目処になるだろう(典型的な料率は、100億円超200億円未満の金額に対しては0.1575%、300億円超は0.126%など。端数には消費税が影響している)。現状では、信託報酬の半分程度が運用会社の取り分だが、それでも、年率1.5%といった信託報酬では、運用会社は投資顧問運用契約の数倍の手数料を取っている。現在、日本の運用業界では「一物一価の法則」が全く成立していない。投信の手数料には明らかに引き下げの余地があり、そのための競争環境の形成が、現在ネット証券に求められている役割だろう。(3)納得するまで絶対買わない 広告で「買わない」というのは、珍しい言い方だが、これは、文字通り、言葉通りに、そのまま受け取ってもらっていい。投資する対象について完全に分かるまで買わないというのは、金融的な意思決定全般に亘って重要な心得だ。世間でよく見られる、投資での大損や、詐欺に引っ掛かったというケースの大半がこのポイントを守ることで回避できる。 完全に分かる、ということの内容には、(1)その商品の持っているリスクについて全てが分かる、(2)その商品のコスト(手数料、売り手の取り分)について分かる、(3)同様の商品との優劣について分かる、の三点が含まれていると考えるといいだろう。これらを理解しておかないと、金融商品の購入で「損をする」(不利な物を買うのも損に含める)し、もちろん「後悔する」可能性も高まるだろう。 投資信託の場合、「これから運用成績が良いファンド」は誰も見分けることができないのだから、他人のお薦めを聞くことに意味はない。あくまでも、自分で個々のファンドについて理解して、自分で決めることだ。 金融商品のセールスを受ける際には、「よく分からないけれども、早く決めないと悪いから、決めてしまおう」というような心境に陥りそうになることが大きな危険だ。他人のペースではなく、あくまでも自分のペースで、検討し、決定する方がいい。 この点、ネットで検討する方が自分のペースを守れるので、好都合だ。あえて、広告的な意図を説明すると、間接的に「投信はネット証券で買った方がいい」と言っているということだし、もちろん、実体が伴わなければいけないが、これから当社の「投信スーパーステーション」が、その意思決定の役に立つようになるとも言っているわけだ。 ビジネス的に、投資信託という商品が対面営業でなければ売れないものなのか、ネットでも問題なく売れるものなのかは、今後を見なければ分からない面がある。現在は、不慣れな顧客に銀行などの対面の営業マンが投信を売ることで、投信市場が拡大している。投資信託はなかなか自発的に買いたいと思うようなものではないから、営業マンが売らないとダメなのだ、ということが場合によっては、ビジネス的にあり得るかも知れないと思う。 しかし、株式についても、ネット証券登場の初期には、営業マンが個々の銘柄について説明しないと投資家が売買してくれないのではないか、というような意見があった。しかし、圧倒的なコスト(手数料)のちがいと、自分のペースで取引することのメリットに投資家が気付いたことで、ネットを通じた株式売買は大いに普及した。 投資信託についても、同様のことが起こるのではないか(付け加えると、生命保険についても同様だと思う)少なくとも、投資家は、コストを節約して投資する方がいいのではないか、というのが、投信の広告に出た筆者の期待であり、考えである。
2007年12月21日
■偶然の併走? 株価指数と長期金利(10年物国債利回り)を毎日見ていると、数字の上三つがごく近い関係を保ちながら上下していて面白い。たとえば、26日月曜日は日経平均終値が15135円で長期金利が1.480%だから「151」と「148」、この一週間前の19日は日経平均が15042円で長期金利は1.465%で「150」と「146」といった調子で、ここのところ長期金利の側がやや下にあるが、今年に入ってからかなり長い期間両者は併走している。ここしばらくは共に下落傾向にあったので、長期金利が株価を「リードしている」かのように見えた。 あらためて考えると、両者の数字が揃うべき理論的根拠はない。ただ、現在、両者の上下動がほぼ揃っているのは、両方のマーケットの参加者が共に相手側のマーケットの動向を参照しながら投資環境を解釈しているからということもあるが、大もとでは両者が共に「景気」を見て動いているからだろう。■株価と長期金利、それぞれの決まり方 株式の理論価格については、(1)景気拡大が企業の利益成長につながるのでプラスだが、(2)金利の上昇は、債券と株式の関係を株式に不利にするし、企業の借入資金のコストが高くなるのでマイナスに働く、という大きく二つ関係があるのだが、目下の日本の株価に対しては、景気、それも米国の景気の影響が圧倒的だ。 トヨタ自動車に代表される日本の好業績企業の業績が海外での稼ぎに負うところが大きいことや、日本の株価に影響を与える海外の投資家の行動が特に米国の株価に左右されやすいということが背景にある。また、日本の金利がまだゼロ金利時代の水準を引きずっていて、金利物の金融商品と株式との比較が敏感に働きにくい状態になっていることもあるのかも知れない。 一方長期金利は、(1)大まかには予想される名目GDPの成長率くらいの水準で決まる、(2)将来の短期金利の予想から決まる、といった決まり方をすると考えておけばいいだろう。もう一つつけ加えると、時には(3)海外の長短の金利に影響されることがある、というのが一応の基本知識だ。 「名目のGDP」だから、物価が上昇すると見られると上昇するし、実質の経済が成長するという見通しに対しても長期金利は上昇する。 従って、円高は、物価の下落につながるし成長率それ自体に対してマイナスなので、長期金利の下落要因になる。■長期金利と財政再建の関係 なお、名目GDPと長期国債利回りのどちらが高いのが「普通」なのかは、財政再建の問題と絡んで専門家の間で熱い議論の対象になっている。 まず、国家財政が破綻するか否かを判断する条件の一つに「国債利回りが名目成長率を下回っていれば国の債務は無限に発散しない」という内容の「ドーマーの条件」と呼ばれるものがある。税収がほぼ名目GDPに比例して増えるとすると、政府債務の残高に対する金利が名目GDP成長率を下回っているなら、政府債務の累積額の名目GDPに対する比率は、一定の倍率で頭打ちになるはずだという数学的な条件だ。もっとも、理論上は確かにそうなのだが、政府債務がGDPの何十倍かの比率で天井を打つような場合も含まれていて、これが政治的に容認されるのかどうかは定かでないといった条件だ。これを満たさない状態になると、財政再建が急を要することについての反対論は急減する筈だ。 また、名目GDPと長期金利の関係は、当面の財政の見通しがどうなるかに大きく影響する。たとえば小泉内閣以来の公約である2011年度のプライマリー・バランス黒字化といった状況が達成できるかどうかが、両者に左右される。与党内でも意見の分かれる、消費税などでの増税を急ぐべきとする意見と名目成長率を高めることが先だという意見のどちらを取るべきかを判断する場合に、前提条件として両者の関係をどう考えるかは問題になる。 この問題を、筆者なりに大雑把に考えてみる。 まず、世の中の「資本」全体の成長率(即ち利益率)とGDPの成長率に一方的な偏りがあると資本ばかりが成長したり資本が相対的に細ってしまったりするから、両者が長期的におおむね等しくなければならないということはいえそうだ。もちろんこれは、超長期的なバランスであって、いつでも達成されるというようなものではないのだが、一応はこう考えていいだろう。 さて、一国の経済の資本の調達には、短期のものもあれば長期のものもあるし、株式によるものもあれば国債以外のリスクのある債券によるもある。この中で、長期国債がどの程度のポジションを占めるかによって結論は異なるのではなかろうか。先進各国の現実のデータを見ると、時期により、国によって長期国債の利回りは名目GDPを上回ったり、下回ったりしていて、データから自信を持って結論を出すことは難しい。 ただし、信用リスクは国債が最も低いことを考えると、長期債利回りの方が「低くてもおかしくない」というくらいのことは言えると思う。経済財政諮問会議などで、「長期債利回りの方が高いのが当たり前だ」というような意見もあったように記憶しているが、これは、少なくとも「当たり前」とまでは言えない事柄だろう。■個人投資家にとっての日米長期金利 ただし、ドーマーの条件の成立は、国家財政にとってはいいことでも、もっぱら国債レベルのリスクしか取らない個人は、資産運用によって財産の長期的な価値を十全に保つことが難しいことを意味するので、喜んでばかりいられる話ではない。 もっとも、一投資家としては、長期国債の利回りが名目GDPの先行きの見通しに反応していることを意識して日々の市場変動を理解していれば、ほぼそれで十分なので、いささか政治的な背景を持った上記の議論にこだわる必要はない。再び大まかなことをいえば、条件の変化や偏りは金利の変動によって調節されるはずでもある。 基本的に「長期金利は将来の名目GDPの動向を見ているのだ」と考えると、少し心配なのは、米国の長期金利がここしばらくの間低下の足を早めていることだ。サブプライム問題が表面化する前には一時は5%に迫る4%台後半の利回りがあったのに、11月26日には3.85%まで低下している。 この長期金利の水準は、米国の物価上昇率が2%台後半であることを考えると、向こう数年の実質成長率の平均がせいぜい1%そこそこの見通しと整合的だということだろうし、FRBによる政策金利の利下げも0.25%単位ならあと3回くらいは(合計で0.75%)遠からず行われる、というような状況を米国国債の投資家は見ているように思える。そういった状況は率直に言って、日本株の投資家にとって、なかなか厳しいものだと言えるだろう。 いずれにせよ、長期金利、つまり長期国債の利回りは、安全に長期運用できる利子率の目処だし、景気の見通しに反応する経済の体温計のようなものだ。 長期金利は、日本のものはもちろん、できれば米国のものもよく見ておきたい。
2007年12月07日
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