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もう40年以上前の話である。映画好きのぼくは毎週金曜日になると、会社帰りに東京都内にある名画座に通っていた。高田馬場の「パール座」「早稲田松竹」、飯田橋にある「佳作座」「ギンレイホール」、渋谷全線座、池袋名画座、八重洲名画座などなどで、確かどこも大体2本立て500円だったと思う。 これが当時ぼくの唯一の楽しみだったのだが、あるとき静岡県の各駅停車しか止まらない町に転勤となってしまった。もちろんその町の周辺には映画館などあるわけもない。列車に1時間も乗れば映画館のある大きな街へ行けないこともないのだが、2本立て500円の名画座などあるわけもなく、せいぜいピンク映画館かロードショウ館しかなかった。 ただやはり映画好きの同僚が、最近隣町にレンタルビデオ店が開店したと教えてくれた。それでさっそく車で30分かけて隣町のレンタルビデオ店へ向かう。そこは5~6人も入れば満員になるほど小さい店である。 そこで今まで観たことのなかったB級ホラー映画をレンタルしたのだが、なんと1泊で1800円も支払う破目になってしまった。東京では500円前後と聞いていたのだが、このド田舎では競合相手がいないためか、とんでもない料金設定になっていたのだ。それでも懲りずにその後も数回通った記憶がある。今思い出すと、ほんとに馬鹿な男であった。 3年後に本社に呼び戻され東京にUターンしたわけだが、その頃は既にレンタルビデオの全盛期となり、レンタル料も1泊300円程度に落ち着いていた。だがその影響で名画座がどんどん閉鎖してしまい。ついには「早稲田松竹」と「ギンレイホール」を残すのみとなってしまったのである。 一方のレンタルビデオ店は雨後の筍の如く乱立し、住まいから徒歩で行ける範囲で3軒も軒を連ねているではないか。ぼくはその中の1軒で特別会員登録し、1万円で一年間借り放題プランに参加することにした。だから休日は朝から晩までビデオ三昧で、家族から総スカンを食ってしまった。なんとその年は年間400本以上は観たかもしれない。またまたここでも、ぼくの「馬鹿」が暴発したのである。 それから暫くして課長に抜擢された頃になると、もうビデオどころではなく毎日深夜まで仕事漬けの毎日が続いた。ビデオ鑑賞が復活したのは、50歳を超えて岩手に転勤したときである。本社と違ってそこでの仕事はのんびりしていたし、単身赴任の退屈しのぎにプレイステーションを購入しゲームとビデオ三昧にまみれてしまった。 その頃になるともうビデオテープではなく、映像が美麗で場所を取らないDVDが主流になりつつあった。そしていずれビデオテープは姿を消しDVD一色に染まるのだが、レンタルDVD店とは呼ばず相変わらずレンタルビデオ店と呼んでいたものである。 その後DVDからブルーレイに移行するのだが、なかなかブルーレイに統一されないまま、いつの間にかレンタルビデオ自体が下火になって行く。その理由は「ビデオオンデマンド(VOD)」と呼ばれるインターネットの有料動画配信市場が急速に拡大したためである。 具体的には「アマゾンプライム」「U-NEXT」「Netflix」「Hulu」「DAZN」などがあり、最近ではTVのリモコンに直通ボタンが設定されている。例えば「Hulu」に加入すれば、月1,026円でドラマ、アニメ、映画、バラエティなど人気作品がいつでも見放題となるのだ。とにかく安いし、レンタルビデオ店まで足を運ぶ必要もないし、貸し出し中ということもないし、スマホやPCで移動中でも鑑賞できる。これでは誰もレンタルビデオ店になど行かなくなるはずである。 そして当たり前のように、レンタルビデオ最大手TUTAYAの各店舗が相次いで閉店ラッシュを引き起こしている。それでも自宅近くにあったDORAMAは、閑古鳥が鳴きながらも頑張っていた。 ところが先日久し振りにDORAMAを訪れたら、なんと建物全体が工事用のシートで覆われているではないか。近づいてみると閉店の張り紙が目についた。この店には30年以上通ったので、工事シートと張り紙を見たときは、心の中が寂寞感で真っ黒に塗りつぶされてしまった。いつかこの日が来ると思ってはいたのだが、ぼく自身が2年近く顔を出さなくなったくらいだから当然の成り行きとも言えよう。 かつてTVとビデオの普及で名画座がつぶれ、そしていまインターネットとオンデマンドの拡大によりレンタルビデオ店が消えて行く。まさに歴史は螺旋状に繰り返してゆくのであろうか。「サヨナラ、レンタルビデオ……」。作:五林寺隆下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2024.02.27
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初対面 生きてるんだね動いてる母の顔してつぶやく娘我が指をギューと握る初孫よ心ときめく新たな世界作:成風下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2024.02.23
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~はぐれ鹿 山里追われ迷い道 群れてなくとも生きていけるさ~ 日暮れの山里にはピィーピィーと鹿のなく声が聞こえてくる。鳴き声にも、いろんな響きがある。甲高い鳴き声は仲間を探しているのか、縄張り争いをするときにはフィーと鳴き、周りを警戒しているときには短くキャンと鳴くと云う。 母鹿が子鹿を呼ぶ際にはメェ~という優しい鳴き声だが、うるさいのは雄鹿が雌鹿に訴えるギャオオ~という叫び声のような鳴き声である。 よいしょ、では、鹿さんに挨拶してこようか、鹿道と云われ、鹿は山から降りてきて同じ道を通って川の水を飲みに来る。 雨上がりの朝にはシカの足跡が点々と道路についているし、川砂にも鹿の足跡が残されている。だから、あの場所に行けばだいたい鹿さんに遭遇できるのだった。いたいた、目が光って群れているのですぐに鹿だとわかる。~鹿さん、こんにちは、いやこんばんわ~てくてくてくてく~老鹿が佇む川辺 水流れ ふと見上げたる褪せた夕焼け~ 鹿は黒くて大きな瞳に綺麗な鹿の子模様の体をし、穏やかな性格なので、好かれているが山里では厄介な嫌われ者なのだ。鹿は草食動物なので木の葉っぱや草、木の実などを食べるのだが、生えたばかりの柔らかい新芽や柔らかい葉が好物なので、畑の作物を食べてしまうし、植林した若木は鹿に食べられたり、角を研いだりするので樹皮がぼろぼろにされてしまうのだ。 そのため、畑も果樹木も鹿害から守るため柵で囲わなければならないのだ。いかにも凶暴そうな猪よりも被害甚大なのだ。奈良の公園では鹿煎餅で人間に懐いていて可愛いが、山間部の鹿は警戒心がつよくて、頭を撫ぜさせてはくれない。 都会の人が、~あっ、鹿だ!可愛い、~と思うのと、山間部で暮らしている人の間には鹿に対する思いにはずいぶんずれがあるのだ。 鹿の方も大変なのだ。天敵の狼がいなくなって安心して子孫を増やしたが、この頃では、鹿の命を狙うのは人間様なのだ。鳥獣駆除のGPSをつけた狩猟犬を山に放ち、鹿を追わせる。逃げ惑う鹿はやはり鹿道を通って逃げようとする。その鹿道では鉄砲を構えた猟師が待ち受けている。 パァァン ! また鹿が撃たれただろうか、、 山裾に親子の鹿、じっとこちらを見て警戒しているのか、動かない。スマホで、写真を撮ろうと近づくと身を翻して逃げた。だが、親鹿は山の方へ、小鹿は山裾の方へ逃げた。ピィーピィーと甲高い親鹿の鳴声が暫く山里に響いていた。ピィーピィーと悲し気な小鹿の鳴き声がこだました。 子探しの邪魔をしてはいけないと思い、その場を開けた。迷子になった小鹿ちゃんごめんなさいね、もう大丈夫、お母さんが呼んでるよ、早く、お母さん鹿の方へ行きなさい。ピィーピィーという鹿の鳴き声がピタッとやんだ。よかった、ほっとした夕暮れ散歩だった。~ 夕里に鹿が悲し気ピィーピィーと かあさんどこだ さ迷う小鹿~作:朽木一空下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2024.02.19
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片隅で拗ねているよな汚れ雪梅の香が漂う陽だまり子等の声作:五林寺隆下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2024.02.15
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~どっこいしょ 寒晴れ漫歩 厚着して~ 山里はぐっと冷え込み、町中とは温度が三度は低いが、寒散歩は欠かさない。昨年から、山里では熊の出現が目撃されるようになり熊よけの鈴を腰にぶら下げて散歩するのだが、ガサガサっと、枯れ葉が風に揺れただけでも不気味な気持ちにさせられるのだ。熊のせいだろうか、山道を散歩する人はめっきり減り、常連の散歩人も見かけなくなった。 そもそも、山里は野生動物が先住民なのだから、驚いたり、迷惑がったり、まして駆除なんてのは人間の傲慢さなのだろう。山里の散歩道ではいろんな動物に出くわすのである。穴熊は狸寝入りをし、薄目を開けて動かずにいる。その目が何とも可愛らしい。 鹿にはよく出くわす、夕方から夜にかけて、山から降りてきて、草を食べたり、川に降りて水を飲んでいる。同じ鹿でもカモシカは鹿のように見た目はきれいではないが、おとなしくて、人間を見てもびくびくしていない。陽当たりのいい斜面でゆっくりと草を食べていることが多い。 鹿は鉄砲で撃たれるが、カモシカは天然記念物なので猟師が撃たないせいかもしれない。去年の夏には猿の群団もやってきて、家庭菜園はどこの家も全滅であった。 猿に道で出くわして、にらまれると、とても猿にそこをどけ!などと威張れるわけではなく、人間の方が後ずさりして、猿が移動するのを眺めているしかないのだった。丸いつぶらな瞳と目の周りが黒く愛嬌のある顔立ちの鼬(いたち)だが、鼬の最後っ屁といわれるくらいの悪臭被害にはまいっていると、爺さんが愚痴をこぼしていた。呟いていた。 鼻筋に白いラインがあるハクビシン(白鼻芯)は尻尾が長く短足だが、動きは素早く、木や壁をよじ登り電線を軽々と渡っていくのを見かける。山里散歩していると、種々雑多な逞しい先住民に出合うのだった。 てくてくてくてく 山道を歩けば、山のように積まれた狸の「ため糞」に出うこともある、山道に転がっている黒豆のようなふんは鹿の糞だ。朝の街道では狸が車に惹かれ、まだ生温かい屍骸を見かけることもある。畑道では猪が大暴れした痕跡が残っている。 猪は夜瓜坊(子供の猪)を連れて夜間に地面を荒らしまわる、土の中のミミズやカエル蛇などを探して食べるのだそうだ。大きな穴ぼこが空き、道はでこばこになり、土手は崩されて歩きにくい。 散歩道の脇にある崩れかけ草木に埋もれた空き家は小動物の巣窟になっている。見たことはないが、毎夜、婆さんが麻袋を引きずりながらやってきて残飯などの餌をあげているという。せめてもの 先住民に対する思いやりなのかな?ピーヒョロロ、トンビが悠々と空を舞っていた。作:朽木一空下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2024.02.09
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私は夏が大嫌いだ。べとつく肌、寝苦しい夜、そして暑苦しい蝉の鳴き声。温暖化の影響か、年々猛暑日が多くなっている。そのうえあの原発事故以来、夏になると勤務先の大学でも節電が始まって、エアコンの温度は37度以下には下げられないのだ。暑さが超苦手な私は気が狂いそうで、もうこれ以上は耐えられない。それで私は数年前から講義が終わると研究室に閉じこもり、必死になって「あるもの」を研究開発し続けた。そしてそれが本日やっと完成したわけである。 その「あるもの」とはこの「タイムマシン」のことだ。ただタイムマシンといっても未来に行くだけであり、過去には戻れない。よくSF映画などで、長期間宇宙を航行するために、乗員たちの人体を低温状態に保ち、時間経過による搭乗員の老化を防ぐ装置をみかけるだろう。そう、つまり俗にいう「コールドスリープ装置」を完成させたのである。 ところで、この装置を開発するにあたって問題となったのは、長期間同じ姿勢のまま睡眠を行うと、床ずれを起こして皮膚が壊死するということ。また単純に人体を冷凍した場合には、水分凍結時に起こる体積膨張により細胞を破壊してしまうため、生きたままの人間を冷凍保存できるかどうかなどの大問題があった。 しかしそれらの問題点を全てクリアし、数種の動物実験もことごとく成功させた。これを学会で発表したら、きっとノーベル賞まちがいなしだろう。だが私がこの片道タイムマシンを創ったのは、ノーベル賞が欲しいからではない。下手に公表すれば、人間の使用は制限されて、実用化されるまでにはかなりの年月が必要となるはずである。私は今すぐにでもこのマシンに乗り込みたい。そしてこのくそ暑い夏を跳び超えたいだけなのだ。 こうして私は人類初のタイムマシン搭乗者となった。そして夏休み中、この研究室にあるタイムマシンの中で眠り続けていた。そして涼しくなり始める9月下旬頃に目覚めるのである。まさにこれこそコールドスリープそのものじゃないか。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 このタイムマシンが完成してから、すでに10年経っていた。私は毎年夏休みになると研究室にあるタイムマシンで、コールドスリープして真夏をスキップし続けていた。だからここ10年は蝉の声を聞いたことがない。そしてコールドスリープ期間中は肉体の消耗がないため、10年間で8年程度しか年を取らないのである。我ながら実に爽快で有用なマシンを創ったものだ。こんな便利な物は誰にも使わせたくない。絶対に公表なんかするものか。 そして今年もコールドスリープをするために、研究室までやって来たところである。この研究室は、夏休みの間は誰も使わないが、念のため内側から鍵をかけている。そしていつもどおりスリープ期間を夏休み一杯の70日間に設定し、マシンの中に横たわって扉を閉めた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 眩しい日の光が差し込んできた。70日間が経過して、マシンの扉が自動的に開いたのだろう。これで今年も暑い夏はスキップすることが出来た。ところが研究室の中はもの凄く埃っぽく、あたりは気味の悪いほど静まり返っているし異常に蒸し暑いのだ。なんだか様子が変である。外に出ようと研究室の扉の鍵を回したがガチガチに錆びていて動かない。仕方がないので、道具箱の中にあったバールで、思い切り扉の鍵をこじ開けた。 やっとの思いで大学の構内に出たが、人っ子一人見当たらない。急いで街にも出てみたが、不思議なことに人も車も全く見つけられないのだ。ただ街中が草や木に被われている。そしてあの暑苦しい蝉の声だけが街中に響き渡っているではないか。 ここはどこなのだ。そして一体今はいつなのだ!。 作:五林寺隆下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2024.02.05
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