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2026.06.26
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カテゴリ: 報徳
報徳論



国に盛衰あり。
その衰時に在りては、土地荒蕪し、人民貧苦、飢寒の憂いを免れず。
そもそも国家安寧の道は、荒蕪を開き、五穀を生じ、下民の衣食住を、優給(豊かに給す)ならしむるにあり。
下民優給たる時は国の本固し、本固ければ、永く国家の憂いなし。
今人は衰廃を挙げ、諸民を安んぜんとするの志ありといえども、この業や多額の費用を得るにあらざればあたわず。
然るに衰国財に乏しく、今日の国用なお足らず、何の余裕ありてか、これを行わんやと、いたずらにこれを憂うるのみ。
ああ、これ国土開け米金財宝万器万物全備の今日に当たりて、衰廃を目するがゆえに、財にあらざれば挙ぐるあたわずとなすなり。
けだし開闢より以来土地開けて、然る後、米金財宝生ず、米金財宝ありて、土地開けたるにあらず、順に至るものを逆に見て、衰廃を挙げんとせば、術尽きていかともするあたわず。
そもそも上古、国の未だ開けざる時に当たりて、茫々たる原野にして、一物だも存せず、一金の得べきなく、一粟の得べきなし。
諸民草根を掘り木実を拾い、口腹を養い、木葉を連ね身にまとい、岩をうがちて雨露を障じ、終身飽かず暖かならず、鳥獣と群を同じうして、一日の安居なく、一刻の楽しみなし。
神聖このありさまを深く憐れみたまい、生養すべきものを選み、稼穡の道を授けその実りを得て、これを来歳に譲り、年々順次開墾し、原野変じて耕田となり、限りなきの米粟を生じ、民始めて穀食につき、命を保つを得たり。
ここにおいて、衣を織り寒暑をしのぎ、居室を作り穴居に替え、衣食住備わり、然して後、随って万器万物金銀財宝に至るまで、漸くに備わり、遂に山の麓より海浜の末に至るまで、土地開け百貨繁殖し、何一つ備わらざるなき豊穣繁栄の国土となりしも、その初め神聖万民のために稼穡の道を授け、譲りの道をもって、開かせたまいしに由れり。
我が国に生るるもの深く顧み感戴し、頃刻もこの高恩を忘るべけんや。
かくのごとく原野を開き、万物を生じ、兆民を安んじたまうといえども、その始め異国の米金を借りて、興したまえるにあらず。
然るに今金銀財宝米穀器物充足せし豊穣安栄の幸いを我が物とし、広大無量の国恩を忘れ、奢侈に長じ、譲道の貴きを捨て、私心の欲するままに進退す。
故に遊惰に流れ、業を廃し、土地荒蕪し、生財日々に乏しく、用費日々に増倍す、あに衰廃せざるを得んや。それ田畝一たび荒れば、必ず上古の芦原に帰す。
土地は上古に帰せり。
これを起こさんとするものは、数千歳の後に生ぜし金銀を目当となし、金銀なければ開墾するあたわずという。
その思慮のたがえる、なお南国に帰るものを、北国に索(もと)むがごとし、万慮を尽くすといえども、また何の益かあらん。
これ今の世に生れて古えの道に顧みざるがゆえなり。
もしはた金銀をもって荒蕪を開き、民を安んぜんとするか。
荒地1反歩(たんぶ)を開くに1両金を用いれば、1町10金、10町100金、100町1,000金、1,000町10,000金、10,000町100,000金、100,000町を開くに1000,000金を得ざれば、開くあたわず。
土地のみを開きて、耕耘の民なければ益なし。
ゆえに農民一家を建て、かつ衣食住農具を与うるに、その価(あたい)20金又は30金にあらざれば、一家を保ち稼穡の力を尽くすを得ず。
一家30金、10家300金、100家3,000金、1,000家30,000金、10,000家300,000金、それ衰国貢税減じ、期年の入財国用の半ばにも足らず。
この時に当たって、荒蕪を開き、下民を安んずるの用費、100金だも得がたし。
いわんや数千万金においてをや。
これ今の世、有智のものといえども、手を空しうして嘆息するゆえんなり。
然して我は衆人の求むる所に異なり、南方に帰るものを索めんとすれば、南方にゆく。
北方に帰るものを索めんとすれば、北方にゆく。
これゆえにゆくとして求め得ざるなし。
今土地の荒蕪は、すなわち上古に帰るなり。
これを開かんとすれば、必ず上古神聖、豊葦原を開かせたまいし時に帰り、茫々たる原野に、我一人生れ出でたる心をもって、千辛万苦の労を積み、一鍬より始め十百千万、順をもって開墾し、その実りを譲って、もって開墾の用費となすべし。
何ぞ後世の金銀を待たんや。
いわんや衰邑衰国の土地といえども、上古一円の原野に比すれば、万世万物の優(ゆた)かなる、もとより論なし。
然らば、今の世に当たり、たとえ万苦をなめ、開墾撫恤の業を行うといえども、上古に比すれば、その難易知るべきのみ。
ああ我が国開闢以来の大道を棄て、後世の財宝に迷い、万器万宝の本源たる土地を荒し、いたずらに衰貧を憂うるは、譬えば井戸を塞ぎて、水を求むるがごとし。
けだし水の井戸を掘るにあらず。
井戸を掘れば水の出づるなり。
然らばすなわち金銀をまたずして廃撫を開くこと、何の難きかこれあらん。





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最終更新日  2026.06.26 11:00:08


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