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"LOS DEBUTANTES" 監督・・・アンドレス・ヴァイスブルス出演・・・ネストル・カンティリャーナ、フアン・パブロ・ミランダ、アントネーリャ・リオス、アレハンドロ・トレホ、エドゥアルド・バリル、アニータ・アルバラード、他。 ・物語序盤・母親を亡くして、身寄りを失った若い兄弟シルビオとビクトルは、チリの田舎町から首都サンチアゴにやって来た。弟の17歳の誕生日祝いにと、シルビオはビクトルをストリップ・バーに連れてゆく。店の娼婦ソランジと初めてのセックスを体験するビクトルだが、彼が目を奪われたのはストリップダンスをしていた美女グラシアだった。一方シルビオは、店で起こった泥酔客のトラブルをスマートに解決し、店のオーナーでマフィアのボスでもあるドン・パスカルに気に入られる。ドンの下で働くようになったシルビオだったが、グラシアを巡って弟ビクトルと口論に。実はグラシアは、ドンの情婦だったのである。 腰砕けになりそうな好い加減な邦題が付いていますが、原題のスペイン語は"新人達"という意味です。この珍しいチリの映画、日本で公開されているのは、私の調べた限り僅か二ヶ所でした。でも実はこの作品、以前マスコミで取り上げられ、少し話題になった映画なのですよ。センセーショナルな事件だったので記憶されている方も多いと思いますが、青森県住宅供給会社巨額横領事件の被告の元妻/アニータ・アルバラードが脇役で出演し、スクリーンデビューを飾ったという作品なのです。こう聞くと、如何にも胡散臭い映画のようですが、アカデミー賞外国映画部門に、チリ作品代表として出品された正統派の映画です。と言いましても、映画の出来栄えにはかなり問題がありましたが…。荒筋で書いてしまうと、数行で終わってしまいそうな位、殆ど物語として中身が無い映画なのですよね。わりと短い時間内に起こった出来事を、各登場人物の視点から見た映像で、何度も繰り返し再現しています。大した事件も起こらないわりに、時間が何度も行ったり来たりして、遅々として進まないストーリーに苛々してしまいました。エロティックなシーンが多いですが、映画発展途上国のチリ映画という事もあってか、あまり生々しい描写はありません。それでも場面数だけは、やけに多いのですが…。これからエッチな事をするのかな、と思った瞬間に次の場面に移行するといった感じでした。映画のメインテーマは、主人公達の泥沼な青春と恋愛でしょうかね。ヒロインのダンサーがとても妖艶で魅力的な女性でした。マフィアのボスに隷属させられていて、逃げ場が無いという少し気の毒な立場なのですが。噂のアニータの出番は二回だけでした。初な少年の初体験の相手という役柄でしたが、贅肉が多目のダイナマイト・バディでした(笑)。珍しい映画を観る機会に恵まれたというだけで満足すべきでしょうか。他にはあまり評価すべき点が無かったので…笑。
Nov 30, 2004

"A KNIGHT'S TALE" 監督、脚本・・・ブライアン・ヘルゲランド出演・・・ヒース・レジャー、マーク・アディ、ルーファス・シーウェル、シャニン・ソサモン、ポール・ベタニー、アラン・テュディック、ローラ・フレイザー、クリストファー・カザノフ、他。・物語序盤・14世紀のヨーロッパ。平民のウィリアムは、馬上槍試合(ジュースティング)に出場しながら諸国を巡る騎士の従卒をしていた。しかし試合も優勝間近という所で、主人である騎士が死亡。何日も食事にあり付けていなかったウィリアムと二人の仲間は、優勝賞金がどうしても欲しかった。そこで騎士の練習相手をして、腕に覚えのあるウィリアムは、騎士のふりをして試合に出場し、運良く優勝を勝ち取る。喜び勇んで賞金を分け合う三人だったが、ふとウィリアムはこのまま騎士のふりをして、大きな試合に出れば、大金と名誉が手に入ると考え付く。仲間の反対を押し切って、手にした賞金をはたいて、武具一式を買い揃え、槍試合の練習に励むウィリアム。しかし試合に出られるのは、貴族のみであり、血筋を証明する書類の提出が必要だった。 原題は「ある騎士の物語」ですが、邦題にある通り、幕開け早々時代物にも関わらず、威勢のいい"ROCK YOU"が響き渡ります。でも違和感が無い所が面白いですね。このロックな歌の歌詞がピッタリな内容なのです。身分も財産も何も無い若者が、己の力と勇気を頼りに運命を切り開き伸し上がってゆく、痛快なサクセスストーリーです。と言っても、全然堅苦しくなく、ユーモアたっぷりの軽妙なタッチなので、肩肘張らずに娯楽として楽しめます。主役のヒース・レジャーと周りを固める仲間の脇役達のキャラクターが実に愉快で良いですね。最初は槍突きも見よう見まねで、全然上手くゆかずズッコケの連続です。そしていざ出場だと会場に赴こうとする途中で、素っ裸で一人てくてくと歩く男に遭遇。自称誇り高い憂歩らしいですが、単に身包み剥がれて文字通りの裸一貫となってしまった男です。話によると文筆家で、貴族証明書も偽造できるとか。早速仲間にして、馬上槍試合へ。中世の騎士物でよく見掛けますが、太くて長い槍を携え、向かい合って馬を駆り、全速力で一気に突き合うという試合です。命中して槍の矛先が砕けたらポイント、相手を落馬させると更にポイントというルールのようです。これだけをメインで取り上げた映画は無かったので、色々と勉強になりました(笑)。お約束ですが、ロマンスもあります。高嶺の花である身分違いの貴族の令嬢に、一目惚れをして夢中になる主人公ですが、個人的にはこのヒロインにあまり魅力を感じませんでした。単に美人だから惚れるというのは、なんだかなぁ…笑。綺麗な女に惹かれるのは男の性分ですから仕方ないですけど、キャラ的には、鍛冶屋の女性の方がずっと魅力的でしたよ。一応ブレーキ要素として、彼女は死に別れた夫が居るという注釈が付いていましたけどね。時代物なのですが、時折現代の音楽がBGMで流れてきて、それが上手く調和していたのが良かったですね。観ていて、こちらも熱くなれる作品でした。屈強な意志さえあれば、どんな逆境も乗り越えられるというのは、とてもストレートで安直なテーマですが、この映画では素直に賛同できますね。笑ってわくわくできて面白い映画でした。きっとロック・ユーのリズムを刻みたくなりますよ。ズンズンチャッ、ズンズンチャッ♪
Nov 29, 2004

"THE BIG BOUNCE" 監督・・・ジョージ・アーミテイジ 原作・・・エルモア・レナード 出演・・・オーウェン・ウィルソン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・シニーズ、サラ・フォスター、ベベ・ニューワース、チャーリー・シーン、他。・物語序盤・ハワイで暮らすジャックは、口の達者な図太い性格の持ち主。ジャックは仲間と共に、不動産会社を経営する大物レイ・リッチーが建設中のリゾート・ホテルの建築現場で働いていたが、上司をバットでノックアウトしてクビになる。リッチーの部下のボブは、ジャックにハワイから出て行けと脅しを掛けるが、何処吹く風のジャック。小遣い稼ぎにと、近くの別荘や邸宅に不法侵入しては、こそ泥を繰り返していた。そんな彼に判事ウォルターは、自分が経営するバンガローでの職を与える。ウォルターは好い加減に仕事をしながら、リッチーの愛人である金髪美女のナンシーをナンパしていた。ナンシーはジャックに、リッチーが隠し持っている20万ドルを横取りしようと計画を持ち掛けてくる。 これ、只今、劇場公開中の映画なのですよ(笑)。と、説明しないと判って頂けないほど、マイナーな映画なのですよね…。日本全国でもピンポイントでしか上映されていません。でもキャストは意外と豪華で驚くでしょう?内容はね…。これが困ったちゃんなんですよ(笑)。ジャンルとしては、クライム・サスペンスというべきなのでしょうが、致命的にバランスが悪いのです。折角、大金を盗むというメイン・エピソードがあるのに、それに行き着くまでの過程が長すぎます。殆どの時間を然して意味の無い、主人公とヒロインのふざけた日常を描く事に費やしてしまっているのですよね。その他、各登場人物の描写も弱くて、人間関係も説明不足です。いつになったら、20万ドルを盗む話になるのだろうと、観ている方はイライラ。大きな山ですから、当然緻密な作戦が展開されるのだろうと期待していますが、その気持ちも裏切られます…。本来原作には、登場人物達が騙し騙され、誰が誰と手を組んでいて、本当の味方は誰なのか、というシーソーゲームの面白みが存在したと思われるだけに、この脚本のお粗末さは痛い限りです。だらだらと無意味な話を続けた挙句、終盤になって、ラストスパートと言わんばかりに怒涛の展開…。はっきり言って、何が起こったのか全然理解できませんでした。意味が分からなければ、どんでん返しを食らった時のやられたという爽快感がありません。残ったのは「はぁ?!」という、憤りにも似た疑問符の山…。「大法螺」と漢字で書かれた船を見送りながら、すっかり私も置き去りにされてしまいました。ヒロインのサラ・フォスターのナイス・バディが見所でしょうか。しかしブロンドとブルネットでは、同一人物でも随分と印象が違うものですね。ブロンドの時は、本当にお色気むんむんのお姉ちゃんだったのに。あの結末は、ちょっと可哀想ですよね。
Nov 28, 2004

12/11より全国ロードショーです。監督・・・平山秀幸 原作・・・高村薫 出演・・・渡哲也、徳重聡、吉川晃司、國村隼、大杉漣、加藤晴彦、菅野美穂、岸部一徳、長塚京三、辰巳琢郎、斎藤千晃、他。 ・物語序盤・北部の貧しい家庭で暮らす物井清三の兄清二は、大手のビール製造会社日之出ビールに勤めていたが、解雇されて実家に舞い戻った。清二は解雇になった理由に納得が行かず、会社宛に苦情の手紙を送り付けた。それから二十年以上の月日が経過した。清三は小さな薬局を営み、時折老人介護施設で寝たきりの兄を見舞う平穏な日常を送っていた。趣味である競馬に通う事が、彼の唯一の娯楽。清三は競馬場に通う内に、数人の男達と顔見知りになり、親しく話す間柄になっていた。そんなある日、兄清二が老衰の為に、静かに息を引き取った。清三は日之出ビールの本社ビルを見上げながら、一つの決意をする。それは競馬場で知り合った仲間と共に、日之出ビールの社長・城山恭介を誘拐し、会社相手に金銭を要求する計画の実行だった。集まった五人の男達は"レディ・ジョーカー"と名乗り、大胆な犯行に及ぶ。 原作は未読です。ベストセラーだったのに、どんな内容なのかさえ知りませんでした。グリコ森永事件がモチーフの作品なのですね。モチーフというより、まんまグリコ森永事件です(笑)あの事件をリアルタイムで経験した人は、ある意味笑えると思います。映画の作風は非常に重厚で、脚本も丁寧に確り纏め上げていたと思います。原作の小説と比較すれば、当然省略している部分も多々あって、物足りないという意見はあると思いますが、この点はどの原作付き映画でも同じですから論点には挙げません。純粋に一本の映画として鑑賞して、かなり評価できる出来栄えだと感じました。粗が目立つ部分も然程ありませんでしたし、雰囲気も一貫していて、物語として成立しています。競馬仲間という以外、何の接点も無い、一見共通項すら無いような五人の男達。しかし彼等には一つの共通点が存在した。それは人生や社会に対して希望を持たず、諦めにも似た乾いた嘲りを抱いていた事。そんな男達が集結して、まるで自分達を踏み付けにして誇らしげに立っている企業に反旗を翻す。でもその動機は決して憤りではなく、何処か冷めている。だから本気で金が取りたかった訳でもない。ただ少しだけ、自分達の存在すら目に入らない連中に、自分達はここに確かに居るのだと思い知らせてやりたかった。それだけだったのかもしれない。被差別部落という単語は、久し振りに聞きましたね。道徳の授業以来です。未だにそんな差別が存在しているのでしょうか?まあ、会社の人事なんて裏でどんな後ろ暗い基準を設けているか怪しいものですが。刑事同士の対決から、その後ラストまでの展開が、少しツメが甘いと感じました。これは原作の筋書きがあるので仕方ないとは思いますが。でも全てを闇に葬る為には、彼には消えてもらうべきだったと。限られた時間内に手堅く纏めた秀作だと思いました。先に本を読むとがっかりするかもしれないので、映画を観てから原作を読む事をお勧めします。
Nov 27, 2004

"ANGER MANAGEMENT" 監督・・・ピーター・シーガル出演・・・アダム・サンドラー、ジャック・ニコルソン、マリサ・トメイ、ジョン・タートゥーロ、リン・シグペン、アレン・コヴァート、他。・物語序盤・現代のニューヨーク。青年デイヴ・バズニックは気弱だが善良な青年。恋人リンダとも幸せな時間を過ごしていた。しかしある日、飛行機の中で隣に座っていた非常識な男のせいで、乗務員への暴行容疑を掛けられてしまう。後日、裁判へ出廷させられたデイヴは、不本意にも判事から怒り抑制セラピー(anger management)を受けるよう判決を言い渡された。仕方なくセラピストの診療所を訪れるデイヴ。そこにいた医師は、なんと機内の迷惑男バディ・ライデルだった。 馬鹿げたセラピーを受けた後、ライデルはデイヴに、怒りの抑制パートナーとして、すぐにキレる暴力男チャックを押し付けてきた。 主演のアダム・サンドラー、私は初めて認識した方で調べてみましたら、元々はスタンダップ・コメディ出身のコメディアンなのですね。あまり押しの強い強烈なタイプには見えませんでした。どちらかと言えば、お人好しっぽいお兄さん。引いて笑わせるタイプのコメディアンなのでしょうか。その分、灰汁の強いジャック・ニコルソンとの組み合わせが成功していましたね。相変わらず強烈なオジサン役をやらせたら右に出る役者は居ないというインパクトでした。ストーリー展開としては、序盤から何故~?!と同情したくなるほど、主人公が不運です。怒りっぽいどころか、引っ込み思案で思っている事も口に出来ない弱腰の青年なのに、暴力男のレッテルを貼られてしまいます。そして義務付けられたセラピーは変人の集まりで、それを率いる精神科医が常軌を逸したアブナイ人物。泥沼に嵌まってゆく主人公の不幸ぶりが面白いです。そして主人公デイヴが、徐々に実は本当に怒りっぽい男ではないかと思わせてゆく微妙な演出も上手いですね。彼は自分を抑制する事で、知らずに怒りを自分の内に溜め込んでしまっていたのです。私も彼と同じタイプなので、このセラピーで己を解放すべきかも(笑)映画全体の評価としては、まあまあでしょうかね。中盤から失速して少し飽きてきたのと、落とし方が個人的に納得いかないというか。折角暴走する精神科医が面白かったのに、結局ラブ・コメになってしまうのかな、という失望感はありました。多数の有名人が、カメオ出演しているのも見所の一つです。私はアメリカの著名人に疎いので、あまり判らなかったのですが、映画中に実名を出してくれる人も居るので、その辺は確認できました。
Nov 26, 2004

"ENEMY OF THE STATE" 監督・・・トニー・スコット出演・・・ウィル・スミス、ジーン・ハックマン、ジョン・ヴォイト、リサ・ボネ、レジーナ・キング、バリー・ペッパー、ガブリエル・バーン、ジェイソン・リー、他。・物語序盤・NSA(国家安全保障局)のレイノルズは、国民のプライバシーを監視する法案に反対する議長を抹殺する。しかし野鳥を趣味で撮影していた人物に、その現場を録画されてしまう。その男はテープを売ろうとしたが、レイノルズに勘付かれて逃亡の途中で事故死してしまった。しかしその途中で大学時代の友人である弁護士のディーンの荷物の中に、テープのデータを複製したディスクを忍ばせていた。会った際に名刺を渡してた為に、今度はディーンがレイノルズの標的になる羽目に。自分が何かを持っている事も知らないまま、ディーンは突然思いも寄らぬ危機に晒されるが…。 ごく普通に面白かったですよ。でもどうしても気になったのが、結局主人公は、アメリカの敵になったのではなくて、単に一人のNSA局員の敵になっただけではないかという点。もっと政治的な大問題が原因なら、すんなり納得できたのですが、個人の失脚問題の為に、あそこまで大勢の人間が疑いも無く協力する辺りは説得力が無いですね。一応名目は訓練という事になっていましたが、それにしてはやり過ぎで、皆が盲目的に標的を追い掛けるのが不自然で。更に殺人まで犯していますし。娯楽映画だから、勢いさえあれば、ディテールには拘らなくて良いという事なのでしょうか。ただエンターティメントとしてのみ観ると、最初から最後まで、テンポも良く、時折コミカルなシーンも交えたりして、上出来な部類だと思いました。中盤、追い掛けっこに少々飽きてきた辺りで、上手くジーン・ハックマンを持ち出してきましたね。防戦一方だった主人公が、強い味方を得て、反撃に転じます。敵の脅威であったディスクが無くなってからの脚本の流れも、次々に新手のスパイスを加えてゆくような感覚で小気味良かったです。ラストの場面などは、観ている側もどうなる事かとハラハラしました。冒頭に仕掛けておいた布石が活かされて、なるほどと感心しましたね。細かい事に目を瞑れば、かなり楽しめるジェットコースター・アクション・ムービーだと思います。ただメインとなるべきテーマの、国家によるプライバシーの侵害の脅威については、追跡劇ばかりに目が行って、あまり伝わってこなかったのが残念です。
Nov 25, 2004

秩父事件について監督・・・神山征二郎 出演・・・緒形直人、藤谷美紀、杉本哲太、原田大二郎、山本圭、田中好子、林隆三、他。 ・物語序盤・大正7年、北海道野付牛町に住む一家。25年も添い遂げ、子宝にも恵まれたが、実は夫妻は未入籍のままだった。娘の嫁入りも近く、妻ミキは籍を入れてほしいと頼む。それに応えるように、年老いた男は長年籍を入れられなかった訳を話し始めた。男は自分は死刑となるべき身で、長年偽名を使い続けていたと打ち明ける。彼の本名は井上伝蔵といい、"秩父事件"の首謀者の一人だった。時は遡り、明治16年。秩父郡下吉田村。村人は蚕を育て生糸を売って生計を立てていた。しかし生糸の値段は暴落し、村人は借金に負われ、中には縊死する者も…。生糸商家・丸井を営む井上伝蔵は、そんな村人の窮状に心を痛めていた。一方社会では、自由民権運動が盛んになり、逼迫し行き場のない怒りを胸に、村人達は我先にと自由党に参加してゆく。秩父事件の経緯を史実に基づいて詳細に映像化した作品です。学校の日本史の時間に習ったとは思いますが、先ずは軽く「秩父事件」についておさらいします。・秩父事件の経緯・明治17(1884)年10月31日~11月9日秩父困民党党員を中心に、秩父地方及び埼玉・群馬・長野の民衆数千人が、負債の延期、税の減額を求めて蜂起。各地を転戦し、最終的には長野県南佐久で敗北、壊滅する。死者の数は民衆30人近く(?)、警官3名。後の裁判により、7名が死刑に処せられ、400人余りが処罰を受けた。エンドロールに文化庁の文字が出てくる位で、映画としてはとても真面目に丁寧に、近代史の中の事件について描いていました。史実を綿密に調査し、出来得る限り事実に即した形で事件を再現しようとした制作者サイドの思いが伺われます。ただそれだけに、映画として面白いかと問われると、答えに窮してしまうのですよね。時系列通りに経過してゆく事件を眺めていると、歴史の傍観者にでもなった気分です。とにかく、こういう事件があったという事実を知らしめる役割。そして人々がどんな思いで武装蜂起していったかを知る為の契機にはなるでしょう。歴史的背景は事前少し予習しておいた方が良いでしょうね。地名や人名などがテロップで出ますが、多いので実際覚えきれません。自由民権運動についても学校で習った程度の知識は持っていた方が良いです。彼等の行動の背景に、この運動の思想が色濃く影響を与えているので。表面的には豊かと言われている今の日本人には実感が出来ないかもしれませんが、切羽詰って行き場を失った時、人間は武器を持って立ち上がるしかないのです。今でも世界のあちこちで、戦いに身を投じている人々がいると思うと、この事件も他人事ではありませんでした。日本に再び、こんな時代が来ない事を祈りつつ。
Nov 24, 2004

"IGBY GOES DOWN" 監督、脚本・・・バー・スティアーズ 出演・・・キーラン・カルキン、クレア・デインズ、ジェフ・ゴールドブラム、ジャレッド・ハリス、アマンダ・ピート、ライアン・フィリップ、ビル・プルマン、スーザン・サランドン、ロリー・カルキン、他。・物語序盤・17歳のイグビーは、裕福な家庭に育った少年。しかし父親はストレス性の精神疾患で仕事を辞めて入院中。兄オリバーは優等生でコロンビア大学に通っているが、イグビーは反発を繰り返して高校を退学させられる。激怒した母親のミミは、彼を士官学校に入学させた。しかし結局そこも長続きせず、イグビーは彼の名付け親であるDHの居るニューヨークへと出奔する。DHの愛人でアーティストのレイチェルのアパートに転がり込んだイグビーは、パーティーで出会ったスーキーと恋に落ちるが…。 嫌いな雰囲気ではないですよ。ただ原題にあるように、気分的に"GO DOWN"させられます。観終わっても、結局最後までロクな事が起こらなかったなぁという感じで(笑)オープニングから、その予感はします。本当に冒頭なのでネタバレしますが、兄弟が母親を安楽死(?)させていますから。何故そういう事態に陥ったかは、おいおい映画を観る内に判ってきます。とにかく楽しい事は起こりません。色々な意味で主人公のダメダメな青春を映像化した作品なので。別に頭が悪い訳ではないのですが、全てに不貞腐れ反抗的になっている少年です。兄貴が家庭環境にもめげずにスマートに生きているので、余計に負の力が働いてしまっているのですね。個人的に痛い所を突かれて、胸がズキンとしたのですが、幸い映画のトーン自体は決して重くはありません。不幸せな事も、わりと冗談めかして描写してあります。ストーリーは少年の少し荒廃した日常を淡々と描いていて、起承転結のような明確な区切りはありません。起伏が無いと退屈してしまうタイプの方は敬遠された方が無難でしょう。演技面では、若手俳優も頑張っていますが、ベテランの存在感は大きいですね。スーザン・サランドンは見事に死んでくれますし。精神分裂症のお父さん(ビル・ブルマン)も、出番は少ないのに、鮮烈な印象を残してくれました。そして微妙な位置に居るリッチな名付け親(ジェフ・ゴールドブラム)も。蛇足ですが、キーラン・カルキンの子供時代を、実の弟のロリーが演じています。最初観た時、素で「凄く似た子役だなぁ。」と思ってしまいました。兄弟だったのですね…笑。ラストまで観て、落ち込んだのか爽やかだったのか、自分の中でも複雑でした。多分、どちらも正しい感想だと思います。青春は一筋縄ではいきませんね。
Nov 23, 2004

"THE ORDER" 監督・・・ブライアン・ヘルゲランド出演・・・ヒース・レジャー、シャニン・ソサモン、ベンノ・フユルマン、マーク・アディ、ピーター・ウェラー、フランチェスコ・カルネルッティ、他。・物語序盤・アレックスはキリスト教会内で悪魔祓いを行う少数派のグループ・カロリーヌ派に属する若き司祭である。ある時、グループのリーダーであり、アレックスの恩師でもあったドミニクが謎の死を遂げたと、ドリスコル枢機卿が彼の元を訪れる。ドミニクは異端として破門されており、その死も自殺と断定された為、キリスト教徒として埋葬される事も許されなかったが、アレックスは彼の死に疑惑を持っていた。そして彼は真相を究明する為に、同じくカロリーヌ派の司祭トマスと共にローマへと向かう。調査を続けるアレックスは、事件の鍵を握る男イーデンに遭遇する。彼は教会から異端とされている“sin eater(罪食い)”であった。“罪食い”とは、破門された人々の罪を食べ、彼らを天国へと導く不老不死の存在という。 一昔、いや二昔前までは、ホラー映画というとオカルト物が主流でした。ホラー=オカルトのような図式が自然と成り立っていて、この境界線が曖昧だったと思います。その後、オカルト系のホラーは鳴りを潜めて、ホラーと言えばスプラッタのようなショッキングな映像と音響のある映画となってゆきました。この映画はとても正統なオカルティズムに則って作られたオカルト・ホラー映画です。という事で、ホラー=ショッキング・ムービーと思い込んで鑑賞すると裏切られます。ついでに「悪霊喰い」という邦題は明らかに誤りでしょう。食べられるのは異端者の罪であって、悪霊ではありません。個人的にはとても面白かったですよ。神様=キリストで、十字架さえあればあらゆる悪魔を追い払えると、無邪気に信じ込んでいた子供時代を彷彿とさせてくれるような堂々としたキリスト教的世界。その揺ぎ無い世界観に郷愁すら覚えました。物語の構成も確りしていて、一本の映画としても好感が持てましたね。また、題材である「罪食い」という特殊な存在も興味深いです。全てを赦す筈の懺悔すら認められず、キリスト教(カトリック)世界そのものから見捨てられた人々の罪を請負って救いを与える存在。こういう人が居てくれると思うと、破門寸前の私などは何だか救われた気分になりますわ(笑)。ただ「罪」を表現したビジュアル面を評価するかというと微妙です。クラゲのようなイカのような物体は一体…。確かに誰にでも判りやすい表現ではあるかもしれませんが、神秘的であるべき「罪」の表現に適切かどうかは疑問の残る所ですね。宗教的な色合いが強い作品ですが、サスペンスや娯楽としても十分楽しめる一品だと思います。ある程度カトリックに関する知識は前提としていますが。
Nov 22, 2004

"ADAPTATION." 監督・・・スパイク・ジョーンズ 原作・・・スーザン・オーリアン『蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界』(早川書房刊) 脚本・・・チャーリー・カウフマン、(ドナルド・カウフマン) 出演・・・ニコラス・ケイジ、メリル・ストリープ、クリス・クーパー、ティルダ・スウィントン、ブライアン・コックス、マギー・ギレンホール、他。・物語序盤・「マルコヴィッチの穴」がヒットして脚光を浴びた脚本家チャーリー・カウフマン。しかし本人は悲観的で、自分に対して全く自信を持てない男だった。ガールフレンドのアメリアとも、もう一歩が踏み出せずに、親密になれない。そんな彼に次の仕事の依頼が舞い込む。スーザン・オーリアンがフロリダで蘭を不法採集した栽培家ジョン・ラロシュを描いたノンフィクションの映画化だった。早速脚本の執筆に取り掛かるチャーリーだが、全く捗らず悶々とした日々を送る。一方、彼と同居している双子の弟ドナルドは、チャーリーとは正反対の楽天的な性格。彼は脚本家になろうと思い立って、気楽な気分で養成セミナーに通い始める。 ドナルドはチャーリーのスランプを他所に、サイコキラー物の脚本を楽しそうに執筆していた。 オープニングから真っ暗な画面に、ダメ男の独白が流れます。まるで私の独り言のようだと、すぐに主人公に共感(笑)。彼はチャーリー・カウフマン。奇想天外な筋書きでヒットした「マルコヴィッチの穴」の脚本を書いた人物です。自分に自信が無くて、いつも周りの顔色ばかり伺っている。恋愛も全くダメ。ここぞという時に、思っている事と逆の行動を取ってしまう。自称、ハゲでデブらしいが、そんなに悲観する程でもないのにね。それが証拠に、チャーリーの双子の弟ドナルドは、全く同じ容姿でも、人生を謳歌している。(チャーリーは実在の人物ですが、ドナルドはクレジットにも名前が挙がっていますが架空の人です。)双子役を演じているニコラス・ケイジがユーモラスですね。確かにハゲ気味ですし、お腹の肉も緩みがち…。本当にカウフマンて、こんな人なのかなぁと思ってしまいます。この点に限らずですが、虚構と現実の境界線が判らず、観ている者を煙に巻いてしまう映画ですね。知らず知らずの内に、彼が仕掛けたトリックの中に嵌まり込んでいる自分に気付くでしょう。とにかくジャンルの分類に困る作品です。「マルコヴィッチの穴」もこの点では難しい映画でしたが、またそれとは違った新しい世界ですね。カウフマンが映画化しようとしている作品は、蘭の花を採取する男の話なのですが、ノンフィクションで盛り上がりも何も無い作品のようなのです。この原作者役にメリル・ストリープが当たっていますが、原作者本人はこの描かれ方で了承したのでしょうか(笑)?物語は終盤に突入して、思いも寄らぬ展開になってきます。でもそれも彼が執筆している脚本なのか、それとも現実なのか。一見騙しの要素など無いように見せ掛けて、実は物語全体に渡って巧妙に仕掛けられた罠がある…、そんな映画でしょうか。と言っても、サスペンスではありません。わりとコミカルなテイストで楽しめます。だってニコラス・ケイジが双子で堂々と画面に二人出てくるんですもの、笑わずにはいられませんわ(笑)。そして終盤には良いお話を持ってきて、確り観客をしんみりさせ、ラストには幸せな気分にさせます。実に巧みな脚本家ですね。
Nov 21, 2004

"SECRET WINDOW" 監督・・・デヴィッド・コープ原作・・・スティーヴン・キング Stephen King 『秘密の窓、秘密の庭』(文春文庫刊『ランゴリアーズ』所収) 出演・・・ジョニー・デップ、ジョン・タートゥーロ、マリア・ベロ、ティモシー・ハットン、チャールズ・ダットン、他。 ・物語序盤・ 今から半年前。著名な作家モート・レニーはモーテルの一室に、興奮した様子で踏み入った。そこには妻のエイミーと愛人のテッドが居た。二人の姿に激昂するモート。そして現在…。モートは湖畔に建つ別荘で一人暮らしをしながら、執筆活動を続けていた。エイミーとは離婚調停中である。そんな彼の元に、突然見知らぬ男が訪ねてくる。ジョン・シューターと名乗った男は、モートが自分の小説を盗作したと言い放つ。身に覚えの無い言い掛かりであり、全く取り合わなかいモートだが、シューターはその後執拗に彼に付き纏い始めた…。 巷の評判は決して良くはないのですが、個人的には最後まで楽しめましたよ。確かにネタ的にどうかと問われれば、これでもかと使い古されたものです。真相も途中まで観ていると、凡その察しは付くでしょう。でもこの映画でも何度となく言われているように、作品の善し悪しは結末で決まるのです。犯人の推測は付いても、どう締め括るかという点で、最後まで見飽きさせない魅力を持っていたと思いますね。初めから終わりまで、ジョニー・デップの一人芝居と言える位に、画面一杯にジョニーを鑑賞できる作品です。彼のファンなら、ただそれだけで満腹になれる筈(笑)。離婚調停中の作家という役柄なので、服装は締まりがなく、生活も不規則で、はっきり言って、普通のおじさんなら見るのも厭なくらい醜悪な姿なのでしょうが、そこは腐っても鯛、ボロでもジョニーという事で、だらしなくてもカッコいい訳です。少なくとも大衆映画で「カリブの海賊」をやっていた彼よりも、こういうこじんまりした映画に出ている彼の方が、私は好きなんですよね。そういう点でも好感が持てたかな。ジョニーにはいつまでも拘りの俳優でいてほしいから。スティーブン・キング原作の映画は、大風呂敷を広げすぎて終盤に破綻する傾向がありますが、これは元が短編だった事もあって、お話として纏まっていました。斬新さなどを求めると失望するかもしれませんが、サスペンスとしてはそこそこ面白かったと思います。
Nov 20, 2004

"TUBE" 監督・・・ペク・ウナク 出演・・・キム・ソックン、パク・サンミン、ぺ・ドゥナ、 ソン・ビョンホ、チョン・ジュン、キ・ジュボン、クォン・オジュン、他。・物語序盤・ 韓国の金浦国際空港で政府要人が狙撃される事件が起こった。ソウル警察のチャン刑事は現場に急行したものの、犯人グループと銃撃戦の末に逃亡されてしまう。一味のリーダーは、元国家機密諜報員のギテクという人物。彼は部隊の消滅と共に、政府の隠蔽工作の為に追放され、家族まで抹殺されていた。ギテクは政府への激しい復讐心に燃えていた。一方チャンもまたギテクに対しては、深い因縁を持っていた。彼は以前任務中に、ギテクによって恋人を射殺されるという経験をしていたのである。チャンはギテク一味の行方を追っていたが、そんな最中、一味は新たな事件を起こした。彼等は地下鉄を乗っ取り、時限爆弾を仕掛けたのである。 韓国版「スピード」ですね。爆走する地下鉄に仕掛けられた爆弾。地下鉄を占拠する元国家の秘密組織のメンバーであるテロリストと、首謀者に恋人を殺された刑事との対決。というのがメインなのですが…。鑑賞した後で残ったのは、もやもやした気分でした。一番の問題点は、説明不足にあります。登場人物達の説明や相関関係が明確にされないまま、ストーリーだけが勝手に進行してゆくので、観ている側は置いていかれた状態になってしまいます。きっと後で何か解説があるのだろうと期待しながら観ていたら、結局最後まで何も語られません…。アクション映画で色々謎めいていると、すかっとした気分になれませんね。主役の刑事と女スリとの関係は、一体何だったのでしょうか?対照的な立場に位置する二人が、何故親密なのか、その点は描写しないと、ラストのシーンでの悲しみの根拠がありません。韓国映画って、これに限らずですが、何処か観念的ですよね。取り敢えず、面白そうなパーツだけ持ち寄って繋げて盛り上げておく。しかしパーツ間の関連や背景は実は考えられていない…というような。一つの筋書きとして説得力を持つ為には、雰囲気だけで押し切るのはパワー不足。やはり全ての要素の関連に、納得のゆく説明がないと一級作品にランクアップするのは苦しいですね。他には、序盤の空港での銃撃戦に、リアリティーが欠如していた点も、物語の最初から観客を興醒めさせてしまう原因ではないでしょうか。無茶苦茶な数の弾を乱射しているのに、全く命中しないというのは、コメディでも観ている気分で苦笑してしまいます。この辺のテロリスト達の作戦自体にも現実味がないですね。普通、あの数の警官に囲まれては逃げられません。地下鉄の駅の爆破シーンは、よく出来ていました。他にも映像的には、なかなかお金が掛かっていて、評価できる点が多いのですよ。ただもっと根幹の部分に問題点が多くて、全体的な評価が下がってしまいました。一体どのくらいの時間走り続けていたのか分かりませんが、地下鉄の線路って、そんなに長くないでしょう。爆弾の説明についても、もう少し親切にしてくれると分かりやすかったのですが。大真面目に作られているわりに、ツッコミ所が多々ある作品でした。ヒロインのルックスは可愛いのですが。人生は複雑ではない。一つの甘い思い出があれば良い。という独白は良かった。あと、ラストの歌の歌詞も切なくて良いですね。
Nov 19, 2004

11/27より全国ロードショーです。"SKY CAPTAIN AND THE WORLD OF TOMORROW" 監督/脚本・・・ケリー・コンラン出演・・・ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリー、ジョヴァンニ・リビシ、マイケル・ガンボン、バイ・リン、他。・物語序盤・1939年の万国博覧会が催されるニューヨーク。そこは巨大な飛行船が摩天楼上空を飛ぶ別世界。近頃街では、著名な科学者が次々に消息不明になるという不穏な事件が頻発していた。この事件を追っていたNYクロニクルの敏腕女性記者ポリー。そんな折、ニューヨーク市街に、突如巨大なロボット軍団が襲来する。大スクープとばかりに、写真を撮るポリーだが、危機一髪の所で、かつての恋人スカイキャプテンことジョー・サリバンに命を救われた。その後、ポリーの元に謎の男が接触してくる。彼は科学者連続失踪事件とロボット軍団の襲来の陰に、トーテンコフ博士という人物が居る事を示唆して姿を消した。 最初から最後まで、実に面白かったです。SF・CG、私の大好きなジャンルに大好きな映像。エンドロールまでワクワクし通しでした。非常に不思議な世界です。年代としては20世紀前半と過去なのですが、しっかりSFしてます。もしも過去にこんな事件が起こったら、世界はこんな危機に陥っていたという想定の元に作られたパラレル・ワールドものですね。靄が掛かったような、レトロな雰囲気を醸し出している映像も魅力的でした。撮影では大きなセットは作らず、俳優達をブルースクリーンの前で演技させ、後からCGで背景を合成したそうです。でも機械的な映像ではなくて、情緒やシックな印象を受けるものでしたので、一般のCGムービーが苦手な方でも違った印象で楽しめると思います。ストーリーとしては、パラレルワールド物の強みである「何でもアリ」の要素を存分に発揮していました。「トゥームレイダー」でもあり、「ジュラシック・パーク」でもあり、「マトリックス」でもあり、「キャシャーン」でもあるというような、あらゆる美味しい素材をてんこ盛りにしたような作品です。そして素晴らしい事に、このごちゃ混ぜが確り調和してお互いに邪魔し合っていません。正直、最初にロボット軍団の行進を観た時は、「キャシャーン」みたいに破綻したらどうしようと懸念しておりましたが(笑)グウィネス・パルトローがいつもと違って、特ダネ命の元気印、でもちょっと天然入ってる記者を演じて笑わせてくれます。作品全体にバランスよく、笑いのエッセンスが散りばめられていて、コミカル・アドベンチャー物としても合格です。アンジェリーナ・ジョリーはクールなイケてるお姉さん役なのですが、出番は意外と少ないのですよね。でもでしゃばらずに確りと存在感をアピールしていました。勿論、主役のスカイキャプテン、ジュード・ロウも素敵ですよ。この方って、どんな風変わりな役をやらせても厭味なくハマるので好きですね。コンラン監督は、この映画が初監督作品となる新人さんです。この作品の原型は、彼が自分のパソコンで、空想を映像化していた短編映像だったそうです。その名残でしょうか、オタク魂というか、彼の趣味の世界が炸裂・爆走している感じですね。あまりクールな目で静観せずに、楽しい妄想の世界に迷い込みましょう。
Nov 18, 2004

"AMISTAD" 監督・・・スティーヴン・スピルバーグ出演・・・マシュー・マコノヒー、アンソニー・ホプキンス、ジャイモン・フンスー、モーガン・フリーマン、ナイジェル・ホーソーン、アンナ・パキン、他。・物語序盤・1939年。キューバ沖。 数十名の黒人奴隷を載せて航行中のスペイン船アミスタッド号で、囚われていた黒人達が反乱を起こし、乗組員達を殺害した。彼等は母国アフリカを目指したが、結局二ヵ月後に、アメリカ沿岸で警備艇に捕獲される。黒人達は捕らえられ、全員投獄された。スペイン政府は女王の名の下に、所有物として船と奴隷の返還を要求。当初、単純な検案の筈だった事件は、内外の政治的な問題に絡み、大きく取り沙汰されるようになる。黒人側の弁護士ボールドウィンは、自慢の弁舌を奮い、裁判を有利に進めようとするが…。 アミスタッド号の名前は聞き及んでいたが、詳しい経緯については全く無知な状態で鑑賞。まだ奴隷制度が合法とされていた時代である。と同時に、各国で奴隷制度は非人道的であると、反対運動が起こり始め、非常に微妙な時期でもあった。この作品の争点にもなるが、この時点で既に、アフリカから黒人達を拉致して奴隷として売買する事は、協定違反となっていた。更に問題を複雑にする点が、反乱事件が起こったのが公海上であり、開廷地は第三国のアメリカという問題である。こうして当初、単なる殺人事件もしくは財産の所有権争いと思われていた事件は、アメリカ、スペイン、イギリス間の国家的問題に発展し、更にアメリカ内部では、奴隷制度の賛否を通じて北部と南部との衝突の火種ともなる大問題となった。作品は非常に重厚な雰囲気で、丁寧な作りとなっており好感が持てた。奴隷制度という大きな問題を扱う中で、黒人一人一人を一己の人間として見詰めるという始点が良かったと思う。とかく政治的な大事の前では、一個人の人格など無視されがちであるが、法廷に立つ黒人達には、それぞれの無視してはならない人生の物語がある。この点を思い起こさせてくれた事を評価したい。奴隷制反対の立場を取った元大統領役のアンソニー・ホプキンスの演説は感動的なものだった。黒人ならずとも奴隷制度は何処にでもあるという点を根拠にする奴隷制度支持者に対し、アメリカの独立宣言の精神を思い出せと告げる。アメリカこそ、かつてイギリスの隷属国として、自由を奪われ不当に収益を奪われてきた歴史を持つ国だったのである。全ての人間は平等だと、イギリスに対して独立を宣言したアメリカが、同じ人間である黒人達を家畜のように扱う事は、独立宣言の精神に反していないのか。非常に重いテーマの映画であったが、色々と考えさせられ、勉強になったと思う。スピルバーグは軽めの娯楽映画から、今作や「シンドラーのリスト」のような重厚な歴史作品まで、様々な作品を作っているが、実際の所、どの路線が一番好きなのだろうか?個人的には大作でない軽妙な小品も好きだが。
Nov 17, 2004

http://www.ku-o-n.net/top/index.html久し振りにゲーム話をします。いっぱい買い込んでいるわりに、最近全然ゲームをしていなかったのですが。「九怨 KUON」をプレイ中です。舞台は平安時代の京の都のとあるお屋敷。その屋敷に呼ばれたまま帰宅しない神社の神主である父親を探して、二人の娘が屋敷を訪ねてくる所から物語は始まります。しかしその屋敷には何やら得体の知れない禍々しい空気が…。来る早々姉と逸れてしまった妹・浮月は、一人怪しげな邸内を不安な面持ちで捜索する事に。ホラー・アクション・アドベンチャーです。おどろおどろしい空気が結構面白いです。邸内には魑魅魍魎の類がうようよしております。陰陽師関係なので、符や式神などを使って攻撃する事が可能です。勿論、手持ちの武器での直接攻撃もできます。怪物を撃退しつつ、謎を解きながら勧めて行く、バイオハザード系ですね。とりあえず、邸内は血塗れ死体だらけなので、赤い三角マーク付きゲームです。セーブ・ポイントでセーブするのに、アイテムを一つ消費するのが面倒臭いかな。いつ死ぬか分からないので、無制限にセーブできると助かるのですが。アクションレベルは三段階に選択可能なので、私のようなヌルゲーマーでも安心の設計です。主人公が着物を着ている女性なので、派手なアクションはできませんが、平安時代の情緒は感じられます。特筆すべき斬新なシステムなどはありませんが、そこそこ上手く作られているのではないでしょうか。ホラー好きの方に。
Nov 16, 2004

"PLACES IN THE HEART" 監督・・・ロバート・ベントン出演・・・サリー・フィールド、リンゼイ・クローズ、エド・ハリス、ダニー・グローヴァー、ジョン・マルコヴィッチ、エイミー・マディガン、テリー・オクィン、他。 ・物語序盤・1930年代のアメリカ、テキサス州。保安官の夫を持つエドナは、二人の子供達にも恵まれ、幸せな家庭生活を送っていた。しかしある日、酔った黒人の発砲により、夫は呆気なく他界してしまう。悲しみに浸る暇もなく、収入源を失ったエドナの元には、銀行から借金の取立てがやって来る。家と農地を売却し、子供達を親戚の家に預けるよう迫る銀行家に、途方に暮れるエドナ。そんな彼女の元に、失業中で物乞いに現れた黒人が現れ、放置してある農地で綿花を栽培すれば良いと進言する。窮地に立たされたエドナは、銀行家の強引な申し出を拒絶し、その黒人を雇って綿花栽培に乗り出す。 最近、意図せずに、黒人差別絡みの作品ばかりが続いています。全体的には良い雰囲気の映画なのですが、序盤から白人を泥酔状態で誤って発砲して殺害してしまった黒人が、当然のように残虐な方法で殺されるシーンがあって、とても複雑な気分になりました。あれが逆の立場で、死んだのが黒人ならば、加害者の白人は酩酊状態のという事で、無罪か執行猶予程度で放免だったのでしょうね。黒人を縛って車で引きずり回し、それを当然の報いと思っている白人達が怖かったです。物語は核になるのが、未亡人となった女性と、綿花作りの名人の黒人、そして未亡人の家に下宿する事になった盲目の男性なのですが、未亡人の姉の家庭の話が冒頭から唐突に出てきて、人間関係で戸惑ってしまいました。姉の家庭内の揉め事のエピソードは、思い切って無くしてしまい、未亡人エドナとその周囲の物語に集中した方が良かったのではないかと思いました。大好きなエド・ハリスなのですがね…。でも話を変に複雑にしてしまうだけで、かと言って心に残るエピソードでも無かったので、やはり余分という印象でした。マルコビッチはこれがスクリーン・デビュー作なのですね。そうは思えない存在感でした。主人公は苦労を共にする内に、黒人への偏見を捨てられたようですが、結局悲しい現実は悲しいままそこに残っていて、観終わってもすっきり爽快な気分にはなれませんでした。悪い作品ではなかったのですが、もう一歩のインパクトには欠けていた感じです。
Nov 15, 2004

監督・・・実相寺昭雄 原作・・・荒俣宏 出演・・・石田純一、原田美枝子、姿晴香、山本清美、佐野史郎、勝新太郎、寺泉憲、寺田農、中村嘉葎雄、宍戸錠、桂三枝、西村晃、大滝秀治、高橋幸治、平幹二朗、峰岸徹、嶋田久作・物語序盤・明治45年の東京。実業家・渋沢栄一は土御門家の陰陽師・平井保昌や物理学者・寺田寅彦らに協力を求め、「東京改造計画」という大規模な計画を進めていた。それは帝都・東京を軍事的にだけでなく霊的にも守護しようとするものだった。しかし、謎の魔人・加藤保憲がその計画の前に立ちふさがっていた。加藤は1000年前関東に独立国を築こうとして失敗し、謀反人として討伐された平将門の霊を呼び醒まし、東京を壊滅させようと企んでいた。加藤が目を付けたのは、将門の末裔・辰宮由佳理という若い娘だった。由佳理の兄・洋一郎や親友の鳴滝純一は、土御門家の力を借りて彼女を護ろうとするが敵わず、由佳理は加藤の手に落ちてしまった…。 公開当時、かなり話題になっていましたよね。でも実は私は初見でした。大まかな感想としては二つ。一つは、原作のエピソードを省略し過ぎて、何も知らない人が観て、どの程度まで理解できるのだろうかという疑問。もう一つは、GCがまだ無かった頃なので、特撮には流石に古さを感じるが、その他は現在の邦画と比べて見劣りするものではないという驚き。前者は、開始早々、前半の山場の一つである土御門家対加藤の対決が出てきた事に先ず仰天。いきなり皆して祈祷しているし…。そこに至る経緯について、何の説明も無しですか?そして重要なファクターである、実の妹・由佳理に対する洋一郎の歪んだ恋情というものが、一切描かれていない点も問題があったと思う。それでいきなりラストに、「お父様!」では原作を知らない人には理解不能ではなかろうか。エロティシズムは一切排除というコンセプトのようだったので、あのような形になったと考えられるが、それにしても不親切過ぎる。明治末期から昭和初期に掛けての町並みなど、セットについては、今の映画と比べても全く引けを取らない。大作という事で、随分と力を入れて作られた事が想像できる。キャストについても、有名俳優のオンパレードで、とにかくお金が掛かっている。特撮はCGの発達していない頃の作品の為、コマ撮りを採用しているので、ぎこちない動きをしているが、当時としては精一杯の技術だったと思う。総じて、当時の技術の限りを尽くして制作された渾身の一作だったのだろう。ただ前述したように、脚本に問題があり、判りづらい面も多い。波乱万丈の原作を二時間程度の時間に収める事に無理があると言ってしまえばそれまでだが、ストーリーとして成立しきっていない点は惜しまれる。出演者については、当時も怪優と評された嶋田久作が異彩を放っている。まさに魔人と呼ぶに相応しい容貌と声質である。対する巫女役の原田美枝子は、清楚な中にも強さを秘めた凛々しさが引き立っていた。その他では、意外にも風水師役の桂三枝が、自然体でなかなかはまり役だったのが拾い物だったと思う。西村晃が自分の父親役を演じた事も話題になった。今の技術でリメイクしてほしいと言いたい所だが、あまり変わり映えしない結果になりそうな所が、邦画の侘しい現状だろう。
Nov 14, 2004

"GLORY" 監督・・・エドワード・ズウィック 出演・・・マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマン、ケイリー・エルウィズ、ジミー・ケネディ、他。・物語序盤・南北戦争の真っ只中のアメリカ。若き北軍の指揮官ショー大尉は、史上初めて結成される黒人部隊の指揮を執るよう命令を受けた。大佐に昇進した彼は、戸惑いながらも、黒人達の指導を開始した。部隊は第54連隊と命名されたが、その実情は軍隊や実戦など何も知らない素人集団。行進の仕方すら覚束無い彼等に、ショーは親友の副官と共に厳格な態度で接する。やがて銃の扱いにも慣れてきた隊員達だったが、現実は厳しかった。黒人の解放を謳っている北軍の中にも、黒人差別は明らかに存在していたのである。彼等は黒人だというだけで、他の兵士よりも給料が安く、また後方の雑役ばかりを押し付けられていた。 米史上初の黒人部隊の結成から、フォート・ワグナーの戦いで彼らが壊滅的打撃を受けるまでを、ショー大佐の家族宛の手紙を元に忠実に描いた作品。今や押しも押されぬ一流俳優となったデンゼル・ワシントンが、アカデミー助演男優賞を獲得した近代史ものです。彼は飽く迄、黒人部隊の一隊員という役柄で助演なのですが、大物の片鱗は見せていましたね。その他、モーガン・フリーマンも部隊を纏める兵士役で好演していました。南北戦争に関する映画は多いと思いますが、こういう黒人だけの部隊が存在した事は、この映画を観るまで全く知りませんでした。歴史物は知識の供給源として、意義がありますよね。鑑賞した事が切っ掛けで、色々と調べ物をしたりして、知識が増えてゆきます。この映画は史実に基づいて、堅実に丁寧に作られた近代戦記の佳作だと思いますね。黒人差別と一言で言ってしまえば簡単ですが、根が深くて難しい問題ですね。南北戦争期と言えば、まだ黒人が差別されて当たり前という時代です。単なる労働力としてしか見做されず、教育も受けていない者達が殆どという状態で、全くの零から軍隊として許容できる水準まで部隊を鍛錬したショー大佐達の苦労には、並々ならぬものがあったでしょうね。部隊の行方は、非常に悲劇的な方向へ向かいますが、映画としては悲壮な印象は残りませんでした。むしろ誇り高く先陣を切って戦いに臨んだ部隊という感じで、感動的ですらありました。今現在に至るまでの長い人種差別問題ですが、先人達の苦労が黒人達の地位向上に繋がっていると思えば、深く考えさせられるものがありますね。
Nov 13, 2004

12/4より順次全国各地でロードショー。監督・・・志村錠児 原作・・・ユン・インワン、ヤン・ギョンイル(画) 声の出演・・・藤原啓治、小林沙苗、宮本充、朴路美、中尾隆聖、日高のり子、岸尾大輔、福島潤、早水リサ、他。・物語序盤・果てしない砂漠を一人の若い男が今にも倒れそうに歩いている。彼の名は文秀(ムンス)。いにしえの国・ジュシンで、秘密裡に各地を周り、不正を働く役人達を糾弾する特殊官吏・暗行御史である。しかし今やジュシンは滅亡し、暗行御史の立場も後ろ盾を失った状態。彼は祖国ジュシンを滅ぼした男を捜し求めて、各地を放浪していた。砂漠でムンスを救ったのは、暗行御史の試験に落第して帰郷する若者夢龍(モンリョン)だった。彼は故郷で為政者・弁(ビョン)に、家族を殺され、愛する恋人の春香(チュンヒャン)を奪われるという経験をしていた。無念を晴らす為、暗行御史になりたいと言う彼だったが、不運にも砂漠に出る人食いの獣達によって犠牲となってしまう。難を逃れた文秀は、行き掛り上、死んだ若者の故郷を訪れる事に。 「アメンオサのお出ましだぁ~!」という事で、月刊サンデーGXにおいて人気連載中のコミック「新暗行御史」(原作/伊仁・画/完梁慶一)がアニメ映画となりました。実は私、単行本の表紙程度しか知らずに観たので、軽く作品の紹介を致します。原作は韓国産の漫画です。古い時代に実在した、暗行御史(アメンオサ)という、地方官僚の不正を調査摘発する特殊官吏をモチーフにして描かれたファンタジー・アクションです。主人公ムンスはこのアメンオサという役人でしたが、その拠点である国家自体が滅んでしまい、その元凶となった人物を探して各地を旅しているという男。その旅に同行するのが、山道(サンド)と呼ばれる護衛。アメンオサは家庭を持つ事が禁じられており、サンドと共に、地方都市を秘密裡に視察して回ったという事です。この作品では、剣術に長けた美しい女性・春香がこれにあたります。「春香伝」という伝承も、この作品のモチーフになっているとの事でした。といったような作品で、日本で言うなら、水戸黄門でしょうかね。いよいよという場面になると印籠を出して、悪者一味を成敗して、正義の鉄槌を下すというタイプの物語です。今回の映画化では、原作の一話・二話が映像化されたとの事です。確かに人物紹介にあたる一部と別の物語の二部構成という印象でしたね。原作に無知の状態で鑑賞しましたが、丁寧な人物や世界観の説明があるので、無理なく理解できました。ただ固有名詞は韓国語なので、なかなか覚え辛いものがありますが。主人公ムンスのキャラクターは、二枚目半くらいで、憎めない悪たれといった感じです。対するサンドの方は、寡黙で従順な女性。はっきり言って、ムンスは口ばかりで結構弱いので笑えます。アメンオサの証である紋章を出すと、彼の親衛隊のような玄幽兵士(ファントム・ソルジャー)がわらわらと登場して、敵と戦ってくれるのですが、彼等とサンドが居ないと、普通の弱っちいお兄ちゃんなんですよね。冷静に見てしまうと滑稽だったり…(笑)。アニメのクオリティーとしては、作画レベルも安定していて、安心して観られるレベルでした。時代背景としては、韓国の王朝時代くらいの感覚なのですが、実質的には無国籍で時代もあってないようなものなので、「十二国記」でも観ているような感覚もありました。アクション重視の「十二国記」かな。ああいう系統のファンタジーがお好きな方にお勧めしておきます。普通に面白かったですよ。
Nov 12, 2004

"HOUSE OF SAND AND FOG" 監督/脚本・・・ヴァディム・パールマン 原作・・・アンドレ・デビュース三世『砂と霧の家』(DHC刊) 出演・・・ジェニファー・コネリー、ベン・キングズレー、ロン・エルダード、ショーレー・アグダシュルー、フランシス・フィッシャー、キム・ディケンズ、他。 ・物語序盤・キャシーは美しい景色が臨める海辺のコテージに暮らす女性。そこは亡き父親が遺してくれた思い出深い家だった。彼女は数ヶ月前に結婚生活が破綻し、精神的に不安定なまま独り暮らしを続けていたが、遠くに暮らす家族には、その事実を伏せていた。一方、イランで権力者だったベラーニ元大佐は、亡命を余儀なくされ、アメリカに移住してきた人物だった。彼は散財して、長女の為に豪華な結婚式を挙げてやったものの、家計の内情は逼迫していた。屈辱的な肉体労働をして家計を支えていたベラーニは、家族には何も告げぬまま、上流階級の体面を保っていた。彼が最近注目しているのは、競売物件の家だった。それはまさにキャシーが現在暮らしている家。彼女は所得税を滞納していた為、郡によって自宅が競売に掛けられてしまったのである。ベラーニは全財産をはたいて、破格の安値でこの家を競り落とした。 ここまで救いの無い話も珍しいくらい、誰も幸せになりません。前売り券には、「砂と霧の家」特製号泣ハンカチーフ(笑!)が付いて販売されておりましたが、涙が出るというようなお話ではないです。泣ける前に打ちのめされるので…。精神的に凹んでいる時には、観ない方が良いかも…です(笑)人間、幸せな時は口も軽く、何でも気軽に話せますが、生活のリズムが崩れ、転落の道を歩み始めると、途端に重く口を閉ざすものです。現状を家族や周囲に吐き出してしまえれば楽にもなれましょうが、体面や自尊心を必死に守り続けます。それが唯一、自分自身の尊厳やアイデンティティーを維持できる方法であるので。同時に自分を窮地に追い込む道でもあります。ここに登場する人々もそういう人達です。結婚生活が破綻し、無職の状態で、精神的に打ちのめされたまま自宅に引き篭もっているキャシー。しかし彼女の身を案ずる母親や成功者の兄には、全てが順調であるような素振りを見せています。一方、亡命者のベラーニ大佐も、肉体労働やコンビニの店員など、かつて権勢を誇った頃の生活とは程遠い汚辱に塗れた日々を送らざるを得ない状況ですが、家族の前では威厳のある紳士としての自分を保っています。この二人の気持ちが手に取るように分かって、痛々しくて観ていられませんでしたね。愛する父親が長い年月を掛けて漸く手に入れ、自分に遺してくれた我が家。キャシーにとっては、単なる「家」ではなく、彼女の思い出、人生そのものを象徴するもの。そしてこの家を買ったベラーニ大佐にとっては、全財産を費やして購入した、自分と家族の今後の死活に関わる重要な財産。双方、相手の立場に同情はできても、妥協はできない状況です。とにかく全てが痛々しいです。何か一つでも状況が違っていたら、こんな悲劇にはならなかったのに。そう思わずにはいられませんでしたね。そして問題を一層複雑な形に追いやってしまうのが、キャシーと恋仲になる郡保安官の存在。正直、彼さえ余計な入れ知恵や手助けをしなければ、最も悲惨な結末は回避できた筈なのですが…。悲劇的な人間ドラマに呑み込まれ、惹き付けられる作品です。佳作だと思いますが、前述のように救いは全くありませんので、その点は覚悟の上でご鑑賞下さい。
Nov 11, 2004

"SIGNS" 監督/脚本・・・M・ナイト・シャマラン 出演・・・メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス、ロリー・カルキン、アビゲイル・ブレスリン、M・ナイト・シャマラン、チェリー・ジョーンズ、他。・物語序盤・最愛の妻を不幸な交通事故で失って以来、牧師のグラハム・ヘスは信仰を捨て、牧師も辞めてしまった。今では農業を営み、2人の子供達モーガンとボー、そして兄を心配して引っ越してきた弟のメリルの4人で、それなりに平穏な暮らしをしていた。だがある日、農場のトウモロコシ畑に巨大なミステリー・サークルが出現する。当初は近所に住む不良達の悪戯だと思っていたグラハム等だが、それ以降、奇怪な出来事が続発するようになる。また幼い娘ボーは不思議な予知能力を持っており、不吉な夢を見ると怯え始めた。グラハムは怪奇現象の謎を解き明かそうとするが…。 駄作、駄作と巷で評判だったので、これまで怖くて手が出ませんでした(笑)結論だけ端的に申しますと、とても面白かったです。ただ先に、謎の宇宙人が登場する映画だという点だけは、予備知識として押えていた方が良いでしょうね。ここで引っ掛かってしまうと、何故宇宙人なんだ?あいつらは結局何なんだ?という問い掛けをしなくてはならなくなりますので。私が観る限り、この作品は信仰を失い、自分の生きる道筋を見失ってしまった男の、転落から再起までの物語だと思いました。宇宙人という突飛な存在は、彼の再起を促す為の一つのアイテムと考えた方が良いでしょう。愛する妻を不意の事故で奪われ、それまで信じてきた神の存在も否定するようになった牧師。そしてそんな彼を心配する子供達と優しい弟。ミステリーサークルやUFO、宇宙人などが登場して、おどろおどろしい部分もあったのですが、根底には神への信仰が強く感じられる穏やかな作品でしたね。日常に起こる事は、それぞれが関連の無い単なる偶然なのか。良い事が起これば、それは単に運が良かっただけなのか。それとも全ての事象は、見えない糸で繋がっていて、次に起こる出来事の予兆として現れるのか…?神は全てを照覧し、人々にサインを出している。映画のラストでは、それまでの事象が全て繋がり、神の存在を感じられる結末となっていました。こう言ってしまうと、宗教臭い映画のように思われるかもしれませんが、普通のちょっと不思議系のドラマとして楽しめます。宇宙人が何かとか、そういう疑問はこの際、忘れてしまいましょうね(笑)。個人的にはわりと好きな一本でした。
Nov 10, 2004

監督・・・崔洋一 原作・・・梁石日『血と骨』(幻冬舎文庫刊) 出演・・・ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、田畑智子、オダギリジョー、松重豊、中村優子、唯野未歩子、濱田マリ、寺島進、・物語序盤・1923年。出稼ぎの朝鮮人労働者を乗せた船が、済州島から大阪へ向かっていた。異国で一旗挙げようと野心に燃える若者金俊平も、その中の一人である。彼は逞しく、凶暴な性格で、朝鮮人街でも有名な男となっていった。彼は女性関係も派手で、李英姫という子連れの女性と深い仲になって結婚する。その後、二人の子に恵まれたが、家庭的な父親からは程遠い存在だった。彼はある日、蒲鉾工場を作ると言い出し、大家の許可も得ないまま、家を解体し始める。そこで弟分の高信義らと共に、事業を始めた俊平は、経済的には成功するが、家族にとっては脅威でしかなかった。 梁石日が自らの父親をモデルに著わした同名ベストセラー小説を映画化。とにかく圧倒されてしまいました。人間の持つ凄まじいパワーというか、生々しさというか。主人公もそうですが、周囲の人々のそれぞれの人間ドラマも濃すぎて、圧倒されたという表現が一番しっくりきます。崔監督は主人公役には、たけしさんしか居ないと思っていたそうですが、映画を観て納得しました。このキャラクターは、たけしさん以外には有り得ないですね。役作りの為、トレーニングをかなり積まれたとの事ですが、凶暴な男が板に付いていました。映画の中では、無茶苦茶な乱暴者なのですが、無骨ながら微妙に人情味のある部分も表現して、上手く嫌われないキャラクターを作り上げていましたね。でも実際に彼が身内だったら、心の休まる暇が無いでしょう。早く死んでくれと願うと思います(笑)。進行役の金俊平の息子が、いつも第三者的な立場で描かれていたのが印象的でした。揉め事の中心には飛び込まず、少し距離を置いた所で、人間のどろどろした愛憎劇を観察しているような青年だったのではないでしょうか。彼のお姉さんの身の上は、本当にお気の毒でしたね。生まれてから死ぬまで、一度も良い事が無かったような人生で、何の為に生まれてきたのだろうかと…。時代背景と民族問題もとても強く心に残りました。時代に翻弄されながら、それぞれが必死に足掻きながら生きているという感じで。新天地を求めて、祖国の朝鮮半島から大阪へ渡ってきた彼等が、戦争という大きな波に飲み込まれ、その後ある者はまた理想を追い求めて北朝鮮に旅立ち、ある者は朝鮮民族としてのアイデンティティーを維持しながら、異国の地で骨を埋める覚悟をする。それぞれの人間ドラマが凝縮されていて、なかなかの力作だと思いました。個人的には、金俊平の二人目の愛人役を演じた濱田マリさんのエッチシーンに仰天でした。彼女の平素のキャラクターからは、濡れ場が想像できなかったもので(笑)でもがめつく逞しいなにわ女を熱演していましたね。鈴木京香さんは、年を取った時は本当に老女のように見えて、演技力のある女優さんだなぁと改めて感心しました。役柄としては、愛人を囲った夫と向かい同士の家に住み、ずっと睨み合いをしているという、これまた人間の凄まじさを感じる役どころでしたが。原作の小説は、それぞれのエピソードがもっと詳細に書かれていると思うので、更に圧倒的な人間ドラマが読めるでしょうね。映画では、この辺りかなりはしょっているなと思えるシーンも多かったので。でも約二時間に無理なく収まっていたと思いますよ。映画は秀作だと思いますが、家庭内暴力の経験などがおありの方は、自分に重なってしまって気が滅入るかもしれません。私はちょっと厭な事を思い出しました…笑。精神的に気楽な状態の方に、お勧めしておきたいと思います。
Nov 9, 2004

監督・・・根岸吉太郎 原作・・・高樹のぶ子『透光の樹』(文藝春秋刊) 出演・・・秋吉久美子、永島敏行、高橋昌也、吉行和子、寺田農、戸田恵子、他。 ・物語序盤・昭和63年。テレビ番組の制作会社を経営する今井郷は、仕事の接待で金沢を訪れた。彼はそのついでに、25年前に取材した刀鍛冶・山崎火峯の住む鶴来町に立ち寄る。当時まだ新米だった今井は、山崎の娘の千桐に淡い恋心を抱いていた。懐かしい記憶を辿って、かつての思い出の町にやってきた今井の前に、千桐らしい女性が現れる。刀鍛冶の父親は引退して、現在は痴呆が進み、寝たきりの状態だった。離婚して娘を育てている千桐一家の家計は苦しく、借金の返済にも窮している様子だった。今井はそんな彼女に、金銭面の援助を申し出る。その交換条件は千桐の体。千桐は今井に自分を買ってくれるよう頼むのだった…。 当日は秋吉久美子さんが舞台挨拶に来ていました。黒いドレスにピンクの柄の布を巻き付けて、綺麗なのか微妙な服装でした。スタイルは良いのですが、背中を丸めて歩く姿勢はいただけないなぁ。元祖プッツン女優という事で、噛み合わない司会者との会話に、その片鱗を見せておりました(笑)「あの~、あの~」って言葉、短い時間で百回は発したかも。普段実物を見たら、画面で見るより素敵と思えるのですが、彼女の場合は画面の中の方が綺麗でした。(ごめんなさい…汗)肝心の映画なのですが、本当に舞台挨拶がメインイベントだったような内容でした(笑)鑑賞して暫く経って、静かに心の中で反芻してみて、思い出せるのはエロシーンだけですねぇ…。大人の純愛と銘打って作られた作品ですが、大人の立場から言わせて頂いて、あのレベルで純愛という形容を使ってほしくないです。とにかく冒頭から感じたのは、エロ小説特有の嘘臭さでした。数年前にヒットした「失楽園」に通ずるものを感じましたね。あれも嘘っぽいエロスとしか、私には映らなかったのですが、この作品も有り得ないと思える言動や行動がてんこ盛り。幾つになっても、人を愛する心はあります。誰かに恋焦がれる気持ち、大いに結構。でもそれを安っぽいエロスと穿き違えないでほしいですね。大体二時間の内に、五回もファックを見せる必要性はありましたか?大人の恋愛を描きたいのなら、裸の絡み合いよりも、心の絡み合いを見せるべきではないですか?全てがインチキ臭くて興醒め。ついでに音楽のセンスも、二時間ドラマのようなチープさで、悲しくなってきましたね。あと腹が立ったのが、癌患者の描写の仕方。今井が癌の診断を受けた時、真っ先に言った台詞が、「切除したらセックスできなくなる」でした。そしてその後も「セックスできる内に、できるだけセックスしよう。」バカもここまでくると頭にきます。本当に癌で闘病生活を送っている患者さんや、ご家族の方に対して、少しは配慮したらどうですか?不治の病に冒され、既に末期と診断されているのに、思い当たるのがセックスだけなんて、先ず有り得ないでしょう。どれだけ痛くて苦しいか…。にも拘らず、最後まで永島敏行は恰幅のいい体格で、セックス三昧…。観ている方が情けなくて悲しくなってきました。全体的に安っぽいAVを見せられているようで、溜め息と欠伸しか出ませんでした。どうしてもっと互いの心を掘り下げて描かなかったのでしょうか。「大人」と銘打つのなら、大人としての思考や行動を示してもらいたかったです。お互いに家族も居るのに、何の葛藤も無しにセックスだけしたいというのでは、無考えな子供のファックじゃないですか。苦しいけれど狂おしいほど恋しいという、身を切られるような切なさが微塵も表現できなかった点は痛すぎます。ついでに性描写も中途半端というか、胡散臭かったです。秋吉のセックスでの感じ方が作り過ぎで不自然。まだ何も触っていないのに、「ああっん♪」はないだろっ(爆)なんだかなぁ…。疲れましたね。
Nov 8, 2004

"DIVINE SECRETS OF THE YA-YA SISTERHOOD" 監督・・・カーリー・クーリ原作・・・レベッカ・ウェルズ『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』早川書房刊 出演・・・サンドラ・ブロック、エレン・バースティン、フィオヌラ・フラナガン、ジェームズ・ガーナー、チェリー・ジョーンズ、アシュレイ・ジャッド、他。 ・物語序盤・ ルイジアナ州で生まれ育った4人の少女達、ヴィヴィ、ティーンシー、ニーシー、キャロは、秘密の儀式を行い、"ヤァヤァ・シスターズ"として永久の友情を誓い合った。それから50年余りの月日が流れた。ヴィヴィの娘シッダは、ニューヨークで劇作家として活躍していた。彼女は雑誌のインタビューを受け、幼い頃の家族の思い出を話した。しかしいざ掲載された雑誌を読むと、ヴィヴィは娘に暴力を振るう虐待癖のある母親と悪い面ばかりがクローズアップされていた。慌てたシッダだが、時既に遅し。雑誌を読んだヴィヴィはショックを受け、シッダに絶縁を言い渡す。親子の危機に立ち上がったのが、ヤァヤァ・シスターズの残り三人。彼女等はシッダを薬で眠らせて、強引にルイジアナへと連れ帰り、親子の仲を修復させようと作戦を実行する。これほど密接な関係を保ちつつ、50年以上も続く友情が現実的かは別として、活力溢れるおばちゃま達の温かさを羨ましいと思ったのは事実です。人間はとかく自分中心に物事を判断しがちですよね。自分を基点として、相手の位置を決定する。つまりこの人は母親、この人は夫、この人は娘など。けれども当然の事ながら、その相手にも自己があり、その人の人生があります。そんな当たり前だけれど、普段はついつい忘れがちになっている事を思い起こさせてくれる作品でした。娘にとって、母親は常に母親。その評価基準は、如何に母親として振舞ったかです。ヴィヴィの娘シッダも、そんな一人の娘。子供の頃、精神不安定でヒステリーを起こしたり、時には暴力を振るったり、家出をしたりしていた母親を、親として愛しつつも何処かで蟠りを感じています。でもそんな彼女が、母親の親友達によって、ヴィヴィという女性の視点から彼女の人生を垣間見せられる事で、少しずつ頑なだった彼女の心も解けてきます。恋をして、夢を見て、幸せな人生を思い描いていた一人の若き女性。そしてそんな理想の人生を諦め、妥協という失望と苛立ちの毎日の中で、精神を病んでいった女性…。ヴィヴィの人生を一人の女として振り返る事で、シッダ自身も自分の中に燻っていた潜在的な結婚への恐怖を克服してゆきます。残念なのは、母親が精神的に追い詰められていった辺りの描写が弱くて、今ひとつ彼女の狂気に共感できなかった点ですね。アシュレイ・ジャッドは魅力的でしたけど、特にヒステリックにも映らず、普通の母親に見えました。時々当り散らしたりするのは、何処の母親でも有り勝ちですし…笑。女性中心の映画ですが、夫婦間の葛藤も、もう一歩踏み込んで描いてくれたら、一層心に響いたと思います。ラストでヴィヴィが自分が夢見ていたものは、娘シッダの中に実現していると言うシーンでは目頭が熱くなりました。彼女が幸福と心の平安を得られた事は、観ている私にも喜びでした。
Nov 7, 2004

監督・・・山田洋次 原作・・・藤沢周平『隠し剣鬼ノ爪』『雪明かり』 出演・・・永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦、田畑智子、高島礼子、田中邦衛、倍賞千恵子、小林稔侍、緒形拳、他。 ・物語序盤・江戸幕末、東北の小藩・海坂藩の下級武士、片桐宗蔵は同僚で妹の許婚である島田左門と共に、江戸に向かう出世頭の狭間を見送っていた。宗蔵自身は、以前父親が切腹して果てたのを機に、碌も減らされ、後々出世の見込みも無い貧乏侍。妹の志乃は心優しい左門に無事に娶られ、幸福な日々を過ごしていたが、宗蔵は嫁の来手もない様子。そんなある日、宗蔵は以前奉公していた女中きえと、町中で偶然出会う。彼女は小間物屋に嫁いでいたが、かつて宗蔵の知っていたような陽気さは失われ、窶れ果てた様子だった。それから数ヵ月後、志乃からきえが病で臥せっていると聞いた宗蔵は、見舞いに行った先で、あまりの待遇の悪さに立腹し、強引にきえを自宅に連れ帰るのだった。 なかなか味わいのある佳作時代劇でしたよ。「たそがれ清兵衛」のスタッフが再結集という触れ込みでしたが、今回も良い雰囲気に仕上げてくれました。しかし筋書きが、かなり「たそがれ清兵衛」と被っています…。主人公が不承不承、罪人を斬りに出向かされるという展開は全く一緒。しかしその辺の問題点を除けば、楽しめる作品でした。登場するのが偶像化された畏まった武士ではなくて、普通の働くおじさん達である点が良いですね。武士としての気概は持ちつつも、何処にでも居るサラリーマンなのですよね。お昼休みに皆でお弁当を食べていたり、世間話をしたりと、ごく普通の日常をさり気なく描いてくれた所が好感触でした。永瀬正敏が人の良い真っ直ぐな気性のお侍を好演していたと思います。恋愛も身分の差が邪魔をして、お互いに言葉にも表せないもどかしさがあるのですが、そのもどかしさが実に自然で温かいものを感じました。映画なのに、この二人上手くゆけばいいのになぁ、と真剣に願ってしまったり(笑)。松たか子は、欲を言えば、病人役の時にもう少し窶れてほしかったですね。いくら台詞で窶れたと言われても、あんなに艶やかなお顔をされていると実感が湧きませんよ…。せめてメイクだけでも、もっと青白い病人顔にしてくれたら。プロ根性を見せてほしかった。タイトルの隠し剣鬼の爪の意味は、最後になって漸く分かります。これの事だったのかと、一人深々と納得。仕事人みたいだったけど、結構カッコ良かったぞ(笑)味わいのあるゆったりとしたムードの時代劇のお好きな方に。アクションは求めないで下さい。飽く迄メインは叙情です。
Nov 6, 2004

"BATTLEFIELD EARTH" 監督・・・ロジャー・クリスチャン原作・・・L・ロン・ハバード 出演・・・ジョン・トラヴォルタ、バリー・ペッパー、フォレスト・ウィッテカー、キム・コーツ、リチャード・タイソン、他。 ・物語序盤・地球は、突如襲来したサイクロ人による攻撃によって、破壊され征服されてしまった。それから千年の時が流れた。僅かに生き残った人類の子孫は、廃墟となった都市から離れ、山奥でサイクロ人の目を逃れて、原始人のような生活を続けていた。年長の者達は、街に出没する怪物の事を説き、若者が山から離れる事に警戒していた。しかしサイクロ人を知らない若者達は、山奥では飢えてしまうと反論、彼等の一人であるジョニーは、反対を押し切って山を後にした。暫くしてジョニーが目にしたのは、遥か昔に滅び去った人類の都市の残骸だった。そこへ奴隷として捕獲する為、人間狩りをしているサイクロ人が現れ、ジョニーは掴まってしまう。サイクロ人は人間を労働力として、地球の資源を採掘しているのだった。 以前から有名な駄作の一つとして名高く、一体どんな恐ろしい作品なのかと興味津々の一本でした。観た感想から言うと、それほど声高に駄作という程、何かが突出している作品とは思えませんでした。個人的には、良い意味でも悪い意味でも、あまり印象に残らない映画で肩透かしでしたねぇ…。ただ駄作と言われていた意味は何となく分かりました。最近で言うなら、「リディック」系でしょうか。お金はかなり掛けているのに、中身やストーリーの面白さが伴わなかった一本と言えば良いのかな。設定的には「猿の惑星」っぽいですね。遥か昔に異星人に征服されて、自ら築いた文明も科学も忘れ、原始人のような生活をしている人類が、侵略者に労働力として酷使されている。征服者と人類の側の両面から物語を描いてみせる手法も、「猿の惑星」と被ります。ただ今回は、共通言語は存在しないので、サイクロ人はサイクロ語で話しているという設定ですが。彼等だけで会話している時は、サイクロ語で話しているという設定の上で英語になってます。この辺の切り替えは上手くできていました。見所は終盤の戦闘シーンですね。巨大スクリーンで観たら、さぞかし美しかっただろうと思われる迫力ある映像でした。日進月歩の映像技術ですが、今の時点で言っても、ハイレベルな映像だったと思いますね。ただ、どのシーンも、これが「バトルフィールドアース」だ!、という独特の場面が無くて、何処かで観たようなSF映画の二番煎じという印象だったのが惜しいですね。一番のツッコミ所としては、お猿さん同然だった筈の人類が、終盤の戦闘ではいきなり統率の取れた軍隊並に戦っていた所でしょうか。確か知恵を授かったのは、主人公だけの筈だったような…。銃の使い方も分からない奴等が、いきなり戦闘機に乗るなよ…笑。ビジュアル的には、空気がガスで汚染されているという設定の為に鼻に付けているチューブが面白かったです。なんか超ロング鼻毛みたいで(笑)。ジョン・トラボルタは灰汁のある司令官役を、被り物で熱演していましたよ。ラジー賞ですか。トホホ。でもラジー賞はそもそも話題になったおバカ映画に贈る賞なので、大らかな気持ちで受賞すればいいですよね。少なくとも私は彼の演技に好感を持ちましたし、トラボルタがSFという事で関心が持てました。お金は掛けたものの、普通のB級SF映画になってしまいました、という辺りが真相の映画みたいです。
Nov 5, 2004

"INTACTO" 監督/脚本・・・フアン・カルロス・フレスナディージョ出演・・・レオナルド・スバラグリア、ユウセビオ・ポンセラ、マックス・フォン・シドー、モニカ・ロペス、アントニオ・デチェント、他。 ・物語序盤・サムはカジノを運営する大富豪。幼い頃、大地震で生き埋めになった所をサムに救い出され、強運の持ち主として育てられたフェデリコは、彼のカジノで働いていた。彼の仕事は風変わりなものであった。勝ち続けている運の良い客の体に触れ、その人物からツキを奪い取るのである。しかしサムに従属するのを嫌って歯向かったフェデリコは、サムに能力を奪われて、彼の元から離れる事に。それから七年の月日が流れた。ある日、旅客機が墜落し、たった一人の男トマスだけが奇跡的に助かった。しかし彼は強盗犯として警察から手配されている身であった。刑事であるサラは彼を監視していたが、そこへ保険会社の社員となったフェデリコが現れた。彼はトマスに、自分に従ってゲームをするのなら、ここから助け出してやろうと持ち掛ける。 なんとも不思議な映画でした。予備知識なしで臨んだので、最初の内は全く何の映画か分からず…。と言うより、かなり中盤まで、何が描かれているのかさっぱり掴めませんでした(笑)。とにかく、この設定の奇抜さに脱帽しましたね。普段お目に掛からない能力と、これまた馴染みの無いゲーム。彼等のしている事や世界観を理解するまで、多分みなさん暫く時間を要する事でしょう。最強の運を持つ者として君臨する男の持つ王座を目指して、強運自慢の者達が戦い続けるお話です。ゲーム自体はどれも至ってシンプル。虫が誰の頭に留まるかとか、サイコロで目が大きい人が勝ちとか。伸るか反るかの運試しゲーム。勝利者は対戦者の持つ運も全て吸収して己の物とする事が可能です。こうして書いていて気付きましたが、子供達が遊んでいるカードゲームと同じルールですよね。 勝てば相手の賭けたカードを全部取れるという。この映画、面白いのかどうか、かなり判断に苦しみます。奇想天外という点では最後まで風変わりなお話で引き付けられます。でも笑いなどという娯楽的要素は一切ありません。毛色の違った作品を観たい方にはお勧めしますが、かなり癖のある映画である事は間違いないでしょう。私の気に入ったゲームは、目隠しをして森の中を全速力で走るもの。自分の強運を信じていなければ、絶対に走れませんよね…笑。怖すぎます。しかし"運"とは一体何なのでしょうね?多分どの世界にも、これを現す単語があると思います。でも誰もそれを目で見た者は居ないし、それが現実に存在する事を証明した者すら居ないでしょう。でも確かに、ツイている時ってありますよね。何とは示せないけれど、それを確かに自分でも感じられる。つくづく不思議なものですねぇ。
Nov 4, 2004

"SIMONE" 監督・・・アンドリュー・ニコル出演・・・アル・パチーノ、レイチェル・ロバーツ、ウィノナ・ライダー、 キャサリン・キーナー、エヴァン・レイチェル・ウッド、イライアス・コティーズ、他。・物語序盤・落ち目の映画監督ヴィクター・タランスキー。手掛けた作品が立て続けに大コケして、再起を賭けて挑んだ新作でも主演女優が降板、遂に映画会社との契約も切られてしまう。そんな窮状の彼の前に、ハンク・アレノという男が現れる。彼は究極のCG女優を作り出したので、ヴィクターと協力して映画を作ろうと持ち掛けた。しかしヴィクターは特撮は苦手だと、彼の申し出を断る。それから暫く後、ヴィクターの元にハンクの弁護士が現れ、病死したハンクからの遺品だと、パソコンソフトを手渡して去ってゆく。それはハンクが話していた究極の女優創造ソフト“シミュレーション1”だった。危機に瀕していたヴィクターは、このソフトを使って作られたシモーヌという完璧な女優で、未完成の作品を仕上げる事に。 とてもキュートな映画でした。実在しない女優シモーヌを、あの手この手で人間に見せ掛けようとするタランスキー監督が可愛い。しかしタランスキーって…笑。何処かで聞いたような。アル・パチーノと言えば、貫禄の有るマフィアのドンか、渋くて陰のある草臥れたおじさんという印象なのですが、この映画ではとにかく可愛いです。命を持たないCGであるシモーヌとの会話も、全て自作自演。機械相手に一人で延々と喋り続けるアル・パチーノって、なんともユーモラスです。ところでシモーヌって、SIM.ONE=シュミレーション・ワンの略なのですね。なるほどと感心しました。英語って面白いなぁ。しかし元々、「俺はパソコンなんて全然ダメ」とハイテク機器類には滅法弱い典型的なオジサンだった筈の監督が、見よう見まねで、難しいソフトを使いこなせるなんて、ちょっと無理がありませんかね?まあ、コメディだから、細かいツッコミは不要かと思いますけど(笑)。あんな素晴らしいソフトが開発されたら、本当に俳優は全員廃業ですね。何れ可能になると思いますが、未来の映画界はどうなっているのでしょう。想像すると興味が尽きませんね。物語は中盤まではコメディータッチで、終盤は少ししんみりした展開になります。監督が自ら作り出した女優に振り回され、最初に望んでいた方向とは違う方へ事態が歪んでゆく。そして彼の下した決断とは?この辺は予想の範囲を超えないものでしたが、その後の展開は少しビックリしました。最後まで、一体どうなるのだろうと飽きないコメディでしたね。幸せな気分になれるオススメの一本です。ちなみにエンドロールの後に、もうワンシーンありますので、最後まで観て下さいね。
Nov 3, 2004

"TURN LEFT, TURN RIGHT""向左走、向右走" 監督・・・ジョニー・トゥ、ワイ・カーファイ原作・・・ジミー・リャオ『Separate Ways 君のいる場所』(小学館刊) 出演・・・金城武、ジジ・リョン、エドムンド・チェン、テリー・クワン、他。 ・物語序盤・優秀だが仕事に恵まれない無名の貧しいバイオリニストのジョン。彼と同じアパートの別棟で、隣同士に住んでいるイヴは翻訳家。彼女は「恋」という詩を翻訳し、出版したいと願っていたが、現実は厳しく大嫌いなホラー小説の翻訳に追われていた。二人は隣人同士で、何度も街で擦れ違っているが、お互いの存在には全く気付いていなかった。そんなある日、二人が偶然公園の噴水の縁に居た時、イヴの翻訳原稿が風に飛ばされて水浸しになるというアクシデントが起こる。ジョンは親切にも池に入って、彼女の原稿を拾ってあげた。それが縁で言葉を交わした二人は、何と十三年前に互いに憧れていた者同士である事を発見した。二人は思い出話に花を咲かせた後、突然の雨に遭い、名前も告げぬまま電話番号を交換し合って足早に別れた。しかし雨に濡れたメモの文字は滲み、お互いを結ぶ唯一の糸は途切れてしまうのだった…。 ジャンルはラヴ・コメに分類されるのでしょうね。実の所、予告編を観た感じ、もう少しハートフルで感情移入できるほのぼのした佳作だと思い込んでいました。でも個人的には、ちょっと失望でしたね。金城武の演じるバイオリニストの青年は魅力的で好感が持てるんですよ。問題はジジ・リョン演じる翻訳家の女性。慌て者でおっちょこちょいなキャラクターなのですが、これが作り過ぎ…。ドジも愛嬌がある程度なら可愛いと思えるのですが、あまり度が過ぎるとわざとらしくてあざとさすら感じてしまいます。もう少し控え目にしてくれたら、嫌悪感を感じずに済んだのに。出だしで登場人物に反感を持ってしまった為、結局終盤まで物語に共感できませんでした。ストーリーとしては可愛らしいと言えば可愛らしいのですが。でもやっぱり色んな面で作り過ぎです。大体最初に会った時に、長時間話をしていて、互いの名前すら聞いていないなんて、どう考えても不自然。偶然の悪戯で、近くに居ながら、どうしても会う事ができない二人は、香港版「君の名は」でしょうかね(古っ!)。観ている方がイライラしてしまうんですよ。救いとしては、二人の再会を邪魔しようとする、互いの恋敵の存在がそれなりに笑える事。食堂の店員の女性の一途さは、結構可愛かったけどなぁ。でも愛していない相手からの情熱は、相手にとっては迷惑であり脅威でしかないのですよね…。それを正面きって言葉にされてしまうと、ちょっと寂しい気もしました。結局、恋愛においては、惚れた方が負けなのよね(笑)ラスト近くで、漸く留守電で互いの声を聞けた二人が、夜の街を必死に相手を探し回るシーンでは、漸く少し感情移入できました。でもラストの強引な展開は…。これ、運悪く時事ネタに被ったんですよね。だから素直に良かったねと喜べなかったのです。特に新潟地方の方は、観ない方が良いと思います(苦笑)神戸の方も、厭な思い出が蘇りますので。音楽の旋律は優しくて綺麗で、心が安らぐものでした。特にメインテーマが好きでしたね。私がすんなり感情移入できなかった原因の一つとして、実は映画以外の要因がありました。それは後ろのオバちゃん…。一々、笑うんですよ…。声を出して笑うような所じゃないのに。そして一々コメントを吐く。「あらぁ、大変」とか「いや、またそんな事して」とか。殺意が芽生えましたね、ハイ。「黙れ、殴るぞ、マジで…。(ぷるぷる)」そんな悪条件があった為、映画の評価が下がってしまったのが、とても残念です。本来はもっと楽しめる作品かもしれませんので、皆様、悪く取らないで下さいね。
Nov 2, 2004

"BELLY OF THE BEAST" 監督・・・チン・シウトン出演・・・スティーヴン・セガール、バイロン・マン、モニカ・ロー、トム・ウー、ヴィンセント・リオッタ、サラ・マルクル・レイン、パトリック・ロビンソン、他。・物語序盤・10年前のタイで、CIA捜査官ジェイク・ホッパーと相棒のスンティは、街中で発砲騒ぎを起こし、スンティは誤って民間人の女性を射殺してしまった。 そして時は流れて現在。タイに友人等と観光旅行に出掛けていたジェイクの娘ジェシカが、上院議員の娘サラと共に、テロリストのグループに拉致されるという事件が起こった。組織は仲間を解放しなければ、人質を殺すという内容のテープを送り付けてきた。それを知ったジェイクは、単身タイに乗り込み、愛娘を救出しようとする。調査を進めてゆく内に、事件には大掛かりな背後がある事が次第に判明してゆくのだった…。 "沈黙シリーズ"についての解説日本では一般に"沈黙シリーズ"と呼ばれているセガール主演作品ですが、私はこれまで、同主人公が登場する作品だと勘違いしておりました。邦題を「沈黙の云々」と付けているだけで、各作品は全く別個のものなのです。(「沈黙の戦艦」と「暴走特急」だけはシリーズ物)ついでに蛇足ながら、"セガール"という日本語表記って変じゃないですか?綴りから言うと、"シーガル"の方がより原語に近いような。個人的に、セガール作品もジャッキー作品と同様に、私が敬遠する部類なのですよね。どれも同じという印象が強くて。それもシリーズ物だと誤解した要因の一つですが。私が唯一観たのは「暴走特急」なのですが、ここに主人公の姪というのが登場します。今回の「沈黙の聖戦」では主人公の娘が登場するので、ここでまた私は二人の少女を同一人物と勘違いした訳です。確か姪もカンフーの使い手だった筈なのに、今回は矢鱈弱いなぁと思っていました。おマヌケな勘違いですね。しかしそれくらい、物語や設定が似ているという事なのですよ。ファン以外の一般客が勘違いしても無理はないでしょう。前置きが長くなりましたね。さてさて、映画の感想です。いやぁ、久し振りにトンデモ大駄作に遭遇しました。個人的にツッコミ所満載のB級アクション映画は好きな方なのですよ。でもこれはそれを超越してC級の域に達していました。ツッコミ所満載というか、全てが変です。今時、こんな映画が撮影されて、確り公開されるのですねぇ。その事に先ず驚き。ストーリーは滅茶苦茶だし、登場人物は入り乱れて判りづらい。絶対こんなタイは有り得ないという、お約束のインチキ・アジアが舞台です。スティーブン・セガールについでですが、高齢なのは考慮致しますが、アクション俳優なら、もう少し肉体をシェイプして下さい。弛みきったぽっちゃり顔は、はっきり言って無様です。そしてアクションも全くキレがない。カメラワークで何とか誤魔化そうとしていますが、パワーもスピードも感じないパンチやキックで、敵が吹っ飛んでゆくシーンなどはむしろ滑稽です。そしてなんとお約束のベッドシーンまであります…。ここでも一切彼は服を脱ぎません。体が緩みきって脱ぎたくても脱げないのだなぁと、悲哀を感じましたね。引き締まった肉体美は、敵役の将軍でも鑑賞して楽しみましょう。彼の方が明らかに強そうなのですが…。ツッコミ所は列挙すると切りがないのですが、少しだけ。銃撃戦で主人公が、小型の銃で凄い数の弾丸を撃ちまくります。四次元ポケットに繋がっているのか、お前の銃は(爆)。それに誘拐された女の子二人(連れの男の子二人は早々に殺害…。)、いつまでも水着姿なんですよね。シャツくらい着せてあげて下さいよ~。お色気サービスなのかもしれませんけど、一応大事な人質なんだから…。極めつけはラストの謎の僧侶対、正義の僧侶軍団の念力合戦。主人公とガチンコ勝負している将軍が言い放ちます。「俺に勝てても、呪いには勝てまい。フッ。」呪いって何だよ~?!(爆)これは普通のアクション映画じゃなかったのか?もう理解不能です…。一人だけとても印象に残った女性が居ました。敵役の腕の立つ謎の女性です。ルックスも他のタイ女性と違っていて、結構好みの美女だなぁと思っていました。以下ネタバレの一言。読みたい人は反転させてね。なんとオカマだったなんて…。流石オカマ大国タイだ。爆死…。誰かスティーブン・セガールに救いの手を。彼もそろそろアクション俳優を卒業して、人間ドラマを演じられる演技派に転向してほしいものです。こんな状況では、日本に捨ててきた元妻子も泣いているぞ~。
Nov 1, 2004
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