成定 竜一~高速バス新時代~
2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
しばらく更新をさぼっている間に、ご報告すべきことがいっぱい。まず、監修を担当しているバス乗務員専門の求人サイト『バスドライバーnavi(どらなび)』が主催する「バス営業所見学ツアー」の第二回は、7月11日(土)に実施され参加者(バス乗務員を目指す皆さん)からも好評をいただいた。今回は、高速バス専業(それも移行組)のO.T.Bの東京車庫と、既存乗合の代表格である東急トランセの弦巻営業所にお邪魔した。高速車と路線車の運転席を座り比べたり、営業所の施設を見学したり。ご協力いただいた2社の皆さんも、それぞれの会社の個性あふれるプログラムでお迎えいただいた。感謝。もっとも、真っ黄色の「ORION BUS」2台口が、トランセの弦巻営業所に乗りつけたシーンが個人的にはクライマックスだったかな。本当はツアーについて詳しくご紹介したかったが、そうする前に、またもや高速バスの残念な事故が発生した。転落横転と聞いて、10年前の磐越道など過去の横転事故がフラッシュバックし一気に目が覚めた。そしてやはり当日のお昼頃からメディアの取材が入り始めた。何度かお話ししたことがあるが、3年前の関越道の事故の際、報道から火が付いて国会に飛び火し、その対応に苦労した思い出があるので、今回も難しい状況ながら取材には積極的に対応することで、なるだけ事実を伝えてもらうようお手伝いすべき、と判断。SNSなどでは、よく「メディアはわかっていない」などと訳知り顔でコメントする人がいるが、わかっていないのは当然。社会部の記者や情報番組のディレクターが、バスの法令や業界用語を細かく知っている方がおかしい。それでも彼らは時間と競争しながら、当日の夕刊や翌朝の生放送に向け取材し記事や番組を作るしかないのだ。だからこそ、私たち取材を受ける立場に、なるだけわかりやすく、伝えやすいように説明する力が試される。なるほどなあ、と象徴的だったことがある。まず、ある情報番組のディレクターさんからこんな質問が飛んできた。「他のバス会社からの情報では、WILLERのシフトはかなりキツイらしいですね」。世の中にラクチンな仕事など存在しないよねという話はこの際置くとして、同社(あるいはその委託先)のシフトが極端にキツイかというと、他社(いろんなレベルの事業者)と比べ、客観的に見てそうとは思えない。しいて言えば、夜行の比率が大きいが、そこは好き嫌いの問題でもある。そこで「具体的にどうキツイか聞きましたか」と尋ねると、「基本が三日勤務らしいですね」という。しかし、夜行高速バスの乗務員は三日勤務が普通。で、彼はこう続けた。「私たちもよく徹夜しますけど、二日連続の徹夜は相当キツイですよ」。なるほど。まず、そうやって自分に置き換えて考えるという発想には極めて好感。取材する側も読者視聴者の側も、言葉の表面づらだけに引きずられて一方的に決めつける傾向にある中、自分に当てはめてみる手法を持つ担当者は好ましい。しかも内容がリアルだ。テレビ関係のお仕事が時々回ってくるようになって、あらためて彼らの大変さを理解した。逆に、そこまで聞き出せば「それは違うんですよ」と説明できる。テレビのスタッフが「ニテツ」に追い込まれる時は、本当に時間を惜しんで取材と編集に追われている。わずかな仮眠も職場のデスクだったりする。一方、バスに詳しい方ならわかるはずだが、夜行高速バスの乗務員は、8時間以上、きちんとした仮眠施設(ともに法令で定められている)で休息が義務付けられている。「夜勤」ではあるが、「ニテツ」でなない。「WILLERは三日勤務」というのは嘘ではないし、真摯な担当者だから自分の境遇と重ねてキツそうだと理解はしたわけだが、そのまま報道されると、それは飛躍と言わざるを得ない。そういうコミュニケーションを重ねて正しく伝えてもらうのが、私たちの役割だ(一銭にもならないけど)。今回は当事者(特に委託者)が目立つ会社だから、ウェブ上などでは色んな発言が目立つ。しかし、メディアはどうしても世の中を二つ(例えば白と黒)にすぱっと割りたがる。構図がシンプルな方が伝えやすいからだ。関越道の際のように、メディアが白か黒しかないような伝え方をし(例えば「事故運転手は前日も徹夜」)、それを真に受けた政治家のセンセイ方が大騒ぎを始めれば、もうその時点では既存も移行組も貸切専業も関係なくなって、実態と合わない無用な規制の網が業界全体にかけられることになる。だから、なるだけ正しく伝えてもらうことが、まず重要なのだ。いくつかの媒体、番組の取材にご協力した中、スタジオで解説の役が回ってきたのが15日(水)のTBS系『ひるおび!』。ちょうど国会の安保法案の採決のタイミングと重なり、コーナーの開始時刻が二転三転、尺(コーナーの長さ)も刻々と秒単位で変わっていく中での生放送。フロアから次々と示されるカンペで残り時間を確認しながらトークをその場で組み上げていくMCの恵俊彰さんの頭の回転に感心しながらも、こちらは質問になんとかお答えするのに必死。幸か不幸か大事故の度に呼んでいただけるので(同番組だけで3回目)スタジオ生にも慣れたかと少し自信が付いていただけに、ほとほと疲れた生放送になった。もう一つ象徴的なのが、用語の扱い。今回、当初の警察(所轄)の発表が「観光バスが横転事故」というものだったらしく、各媒体が第一報から「観光バス」と伝えている。さらに始発がテーマパークで、当事者(受託者)が観光(貸切)バス事業者だったこともあり、誰も「あれは高速バスだ」と訂正しないままになった。そもそも、業界関係者以外は、警察でも記者でも「観光」「貸切」「高速」「夜行」「深夜」バスがそれぞれどういう位置づけでどういう意味なのかなど知りはしない。とはいえ今回の事故を「観光バスの事故」というのは、私たちから見ると無理がある。何度か修正をお願いしたが、けっきょく覆らないままだった。この件自体は、用語が違っていたからと言って大きな実害があるわけではないが、これもまた、「最初の伝えられ方が最も重要」という教訓の一つとして記憶しておこうと思う。当事者(委託者、受託者双方)においては、怪我をなさった乗客への対応や再発防止策の策定など、まだまだなすべきことが満載のはずだ。ただ、昨日昼からは取材依頼もピタッと止まっており、スポークスパーソン的存在としての私の立場だけから言えば、実態とかけ離れた報道になったり、それを元に業界全体への無用な非難が高まったりするような事態は避けることができ、ホッと一息と感じている。お怪我をなさった皆様のご快復をお祈りするとともに、今後、このような対応を求められる事態が再び発生しないことを心から願っている。
2015.07.16
コメント(1)