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夫の墓参を兼ねて田舎に行って来た。仕事と日々の雑用に追われる街騒を離れての4泊5日は、主人の姉の家にお世話になった。沢山のご馳走で迎えてくださり、羽黒山、蔵王での紅葉狩りと滞在中の温かい思いやりの数々は、泪の出るほどうれしく命の洗濯をさせていただいた思い。東京に住み忙しく暮らし、日々のざわめきにすっかり馴れてしまうと、こんな生活が自分には一番合っているのだと勘違いをしてしまうのだけれど、静かな生活の中に本当の幸せがいっぱいあることを改めて噛み締めた。何処までもつづく田園風景を見ながら、こよなく自然を愛し「この地に眠りたい」と言って、本当に自然に帰ってしまった主人のことを思い出していた。東京に戻る当日「トトロの木」を見に連れていって貰った。山形県鮭川村指定天然記念物であるそれは、本来は「小杉の大杉」というのだそうだが、ほんにトトロにそっくり。樹の根元には小さな祠があって、巨木信仰のなごりが実感できる。散策の折りに拾った栗を大切に東京に持ち帰り供えながら、楽しく過ごした5日間の報告をした。「辛いことがあると必ずうれしいことがあるよね!生きるってまるでシーソー見たい!」思わず遺影にそう語りかけていた。 笑み栗や夫(つま)亡きあとに姉を得て 姉崎蕗子
2007年10月27日
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「なにやってんだよー。そんなもんで鼻かむやつがあるか!バカ!」、「あらあら、また始まったの!怒っちゃ駄目っていったでしょ」看護記録を途中にして談話室に行って声を掛けた。彼女はつい最近97歳になったというのにしっかりしている。トイ面の彼女は86歳、前掛けで口や鼻の辺りをなぜているだけで鼻をかんでいる訳ではないのだけれど。「わかんねえのかよーバカ!」とまたきつく言う。入浴日の後で気分は良さそうなものなのに、どうも機嫌が悪いらしい。「しょうがないわね、場所を変えましょうね」車椅子ごと交換して別のテーブルの方へ移動する。怒られた彼女はいっこうに平気、ぼんやりと相手を見ているだけ。他の患者さん達は笑うでもびっくりするでも無くテレビを見て(?)いたり、じっとしていたり、スプーンをいじっていたり。やがて配膳になるとみんな食べるのに夢中。黙々と自分のことだけ、きちんと食べられる人から、目を離せば半分も食べこぼしてしまう人まで、いろいろ。そうこうしている内に「ダメ!」別のデーブルから大きな声がする。目を移すと、自分の分が食べ終わった患者さんが隣のお膳へ手を伸ばしヨーグルトを引っ張っていく。「あらら、自分の食べたでしょ」と戻す。何の悪気もなく眼の前の分が終わって、手が届けば食べるものだと思っているだけなんだけれど…。「ごちそうさまね。もうお部屋へかえりましょ」手分けして各病室へ戻すのだが、食後必ずきちんと食器が片付いているお膳がデーブルに一つだけある。97歳の彼女は女手一つで長いこと八百屋さんをやっていたという。人も使っていたようだ。子供を育て、仕事をし、曲がったことが嫌いでしっかりと生きてきたのであろうか。夜中に毛布のカバーの紐を飽きること無く締め直し、シーツの皺を伸ばしている。歳を重ねてこんなにしっかりしているなんて、すごいと思う。認知症になると本当の性格が出るっていうけど、やっぱり本当かも。 朝顔の青がもっとも聞き上手 山根延子(ザ・俳句歳時記)所収
2007年10月04日
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