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2005年06月01日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
例えば2005年6月1日午前9時から30分間の、ある日本人女性の一日を綴るとしても、すべて漏らさず書くということはできない。

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■A■
9:04「携帯電話がない」と発声する
9:05 ケイタイにイエ電からかけて鳴らし座布団の下から発見、充電器に立てる。
9:08 コーヒーをいれはじめる。くしゃみを2回する。
9:12 出がらしを捨てる際、誤って床にぶちまげてしまう。
9:13 とりあえずコーヒーを一口飲む。
9:14 拾い集めそこなった分を、掃除機で片付け、そのまま床掃除。

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このうち、記述に値する珍しい事柄を残し、ごく日常的によくあることはどうでもいいことなので、省略する。
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■B■
9時過ぎ「携帯電話がない」と騒ぐ
まもなく コーヒーをいれるが、出がらしを捨てようとして床にぶちまげてしまう。
しばらくしてコーヒーを飲む。
9時半、コーヒーを飲み終わる。
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特筆された事項は、それに至った経緯や背景を、省略された部分を考察して補いつつ記述されていく。
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某女、携帯電話を紛失したことに気づき、一瞬大騒ぎするのだが、どういうわけか、何事もなかったかのようにコーヒーをいれはじめる。
その直後、コーヒーの出がらしを床にぶちまげてしまうのだが、その出がらしを放置したまま、コーヒーを飲み始める。
一般的にコーヒーをいれる温度と、その日の気候を考慮すると、その出がらしが、ゆらゆらと湯気をたてて床一面に散らばっていたことは、某女本人が気づいていようがいまいが、疑いない事実である。
しかし、某女はこの時点で、携帯電話を紛失してしまった事実もすっかり忘れたまま、なおかつすぐさま床が汚れたことの処置もせず、何よりも淹れたてのコーヒーを飲むことを優先した。
この事実から、某女は、何をおいてもコーヒーを飲むことを重視しようとする価値観が伺える。その根拠として、たった一杯のコーヒーを15分以上かけて飲んでいたことが裏づけとなる。


この記述をベースに、別の人がまとめる。

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■D■
某女には、コーヒーをいれるときに、コーヒーの出がらしを床にぶちまげてしまうということがあったのだが、そんなときは、その出がらしを放置したまま、コーヒーを飲んでいたらしい。
出がらしが、ゆらゆらと湯気をたてて床一面に散らばっていても、某女本人は気づこうともせず、淹れたてのコーヒーをゆっくりと飲んでいた。
某女は、一杯のコーヒーを飲むことを何よりも優先させていたのである。
このほか、某女の性向を語るエピソードとして、携帯電話を紛失するといった重大事件がおきても、紛失してしまったことすら忘れるという記述が残されている。
この一例から、コーヒーに記憶力を減退する物質があるという根拠になるかもしれない。この検証のためには、他の事例もあげる必要があるが、残念ながら、紙幅の関係上、これ以上の論議はできないため、別稿に委ねたい。
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Aを読んだ人が、また別の記述をする。

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■E■
2005年6月1日の某女の朝について、先行研究がいくつかあるが、看過できない重大な事実をとりあげたい。
原典Aで、本論に関係する部分を抜粋する。
引用
9:08 コーヒーをいれはじめる。くしゃみを2回する。
9:12 出がらしを捨てる際、誤って床にぶちまげてしまう。
9:13 とりあえずコーヒーを一口飲む。
9:30 残りのコーヒーを一気に飲む。
注目すべき点は、9時8分に「くしゃみを2回」したということである。
某女のコーヒーを淹れる際に使用する機材は、ごく簡単な漏斗型のもので、濾紙をセットし、豆を2杯いれ、やかんで沸かした湯を、口のほそい別のポットにいれてから注ぐというものであるということが調査により判明した。右利きだったといわれる某女は、左手で漏斗を支え、右手でポットを持つという時点において、なにがしかの混乱が生じたものと思われる。そのきっかけとして、1回目のくしゃみがあり、2回目のくしゃみをした際、手元がくるったということが考えられる。
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さらにCDEを読んだ人が、考察を加える。

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■F■
「某女の朝」ついて、一連の先行研究よりまとめると、某女について特徴付けるものとして、
(1)携帯電話を紛失し、かつ紛失したことも忘れる
(2)コーヒーのでがらしを床にまいたままコーヒーを飲む
という2点の特異な行為に集約される。
このような某女に限られた特異な行為について、先行研究では「D:コーヒーの成分説」「E:くしゃみ説」などの因子によって考察している。
くしゃみ説にのっとれば、くしゃみと因果関係のつよいハウスダストに着目し、「茶葉の出がらしで掃き掃除」という古来からの埃を立てない掃除方法からの応用とも考えられるが、これは(2)個別の理由にはなっても(1)との包括的な説明にはならない。
先行研究Cには、気温との関連が示唆されている。Cを引用すると「携帯電話を紛失したことに気づき、一瞬大騒ぎするのだが、どういうわけか、何事もなかったかのようにコーヒーをいれはじめる」とあり、原因について特定はしていないが、行為(1)から(2)へ突如移った原因は、やはり気温である。この日の気温の変化について、現場より310メートル離れた地点の、屋内・屋外のそれぞれ3地点のデータを別表に掲げる。表よりわずか30分間にすべての地点で平均して1.82度も変化しているという寒暖の激しさが伺え、仮に某女が性向として、いわゆる「がさつ」なものであったとしても、2つの特異な行為について、この気温の影響は無視できない要因として関わってくるといえる。この原因はまた、くしゃみという行為も促すものであることはいうまでもない。以上より、「重大事を忘れて別の行為に移る」という異常事態が誘発されたことが、気温の急激な変化によって、もたらされたものであることが明らかになった。
末筆ながら、貴重な文献やデータを提供してくださったG氏、論の構成や用語の規定についてきめ細かく指導してくださったH氏、そして本稿の完成まで精神的に支えてくれた我が夫I氏に、この場を借りて感謝申し上げたい。
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誰にとっても正しい事実というものを記述するというのはそもそも無理なことである。
せめて原典を読め。
それでもわからないことだらけだけど。





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Last updated  2005年06月02日 10時32分15秒


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