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2005年10月23日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
むかーし、デパートのレンタルドレス屋でバイトしたことがある。


タグにレンタル期間が書き込まれてあるのだが、人気のものとそうでないものは一目瞭然。
「卒業式ですか?」
「ええ、まあ」
「お式、いつですか?」
「・・・ちょっと見ているだけなんで」
と言われて、放っておいて「これなんですけど」と言われても、貸せるものにあたることは少ない。
「18日~20日?これって21日、かりれますかー」

「メンテナンスに中2日いただいておりますので・・・」
と断る。クリーニングだろうとお客さんは理解するようだが、実際は消臭剤をふりかけて屋上で陰干しするのだ。嘘は言ってない。
だから本当は中1日あればなんとかなりそうなのだが、延長料金が厳しく設定されているのに忘れる人も中にはいるので、督促のために用心して設定しているのである。
地味目な服に、
「パールとかあわせられると、こんな感じで・・・」
とアクセサリーも添えてみせ、母娘連れだと、
「一生に一度の記念だしぃ」
と勝手にもりあがって借りてくれたりする。イミテーションのアクセサリーも、買ってもたいして変わらない額だろうに、なかなかのレンタル料を稼ぐ。手袋は伸びちゃうので、商品として買ってもらう。
ちょっとバブル時代っぽいのかな。

接客以外の仕事は包装である。
セロハンテープがくっつくと破れてしまう、あの白い薄い紙に包まれると、「なんということでしょう」(サザエさんの声で『劇的ビフォーアフター』風に)。古いはずのドレスが立派にみえるではありませんか。


以前、「ためしてガッテン」で箱の包み方をやってたとき、日本人は「キャラメル包み」の箱を渡されてもあまり反応を示さず、「デパート包み」だと瞳孔が開くってのがあった。(たしか外国人は反応は同じだった)
まるで関連性のない記号を状況と何度も特定されればつなぎあわせてしまう、パブロフの犬たち(英語ではdogsなので)である。

家に帰ったお客さん自身が、衣装を身に着ける前に、白い包装紙を破る行為によって、わくわくするような高級な衣装であるということを再認識するのだ。
ごみ減量の簡易包装だと叫ぼうと、薄紙は日本文化の中に条件反射ともなるくらい定着している。わざわざやってることに気づく客は少ないのだが、もしやらなければ「何か変だな」というひっかかりが生じるようなものである。ただ紙袋につっこんだだけでは、ユニクロやしまむらのような普段着になってしまい、「買わずに借りた」という後ろめたさを引き出すような危険性さえある。小手先の騙し行為みたいだが、しかし「非日常的な晴れがましいイベント」に臨む客の気分、お客さんの期待にあわせ、日本的に普通な状態にしただけである。
こんなことからも日本社会が、高級なものとそうでないもの、つまりハレとケを分け、儀式に影響されやすい文化を持っているということがよくわかる。


管理がめんどうくさいだろうし、出番も何度もないだろうから、買う人は滅多にいなかった。
外代(仕入値)は、実はレンタル料より安いのだが、一度も借りられることもない衣装もあるので、大もうけっていうわけでもなかったようだった。
「誰が着るんだ?」と思うような衣装も、選ぶ行為の上に成り立っている商売には必要な道具なんだと思った。

こんなことを久しぶりに思い出したのは、今朝、「レンタルドレス屋、知らない?」と言われたからだ。
学園祭の催し物で、チマチョゴリを着たい人がいるんだそうな。
検索すると、日本国内でも結構あった。東大門市場なら5000円くらいから買えるのだろうけど、地方の貸衣装屋も宅配使って貸し出すところがあるらしい。15000円からというところが多く、モノがどの程度なのかわからないが、5000円からというところもあった。コリアンタウンには、だいたいあるようだ。
レンタルなんて嘆かわしいというような趣旨の文を書いている人もあったが、着物を持っていない日本人も多いしな。仮に1枚くらいならあっても、季節や用途にあわせていろいろ・・となると着物趣味の人くらいしかいないだろう。インドやベトナムはともかく、21世紀の民族衣装事情ってのは、そんな感じのところが多いだろう。

夏服では寒いし、冬服では暑苦しい季節の今。
ドレスじゃなくて普通の洋服のレンタルってのがあったらいいのになぁ、と思う。何を着たらいいか考えるの、めんどくさいよ。
サイズと好きな色をクリックしたら、毎週2~3着のスーツが、鞄や靴やアクセサリーも組み合わせた箱で宅配されるってサービス、あったら利用したい。

しかし、商売として成り立たせるためには、季節モノだし、民族衣装と違ってサイズは段階がいっぱいあるし、流行の波は激しく翌年の使い回し率が低いし、そんな在庫抱えることを考えたら、1回1万円でもやっていけないだろう。でもって、借りるほうは月々4万円でも借りないわな。

半年ぶりに寝かせてあった服も、去年着ていた時点で「今年着たらやめよう」って言っていた古いものばっかり。春に捨てるという行為をしていなかったせいだよな。
4万円持って洋服買いに行ってこようかな。お金をたくさん持っていけば、屈辱感も減るかしら。ああつらい。
服なんて「よきにはからえ」が一番楽だ。
「妻が選んでいるので」というようなダンディな人が、実にうらやましい。
似合いもしないのに高ければ売りつけようと策略する売り子さんじゃない人、誰か選んでくれ。






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Last updated  2005年10月23日 11時37分38秒


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