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チケットを買った時、3時間の上映時間はちょっと長いな…と思っていたのに、もう少し続いて欲しい、と思うところでこの映画は終わった。うっとりするような映像美の中で、すっと感情が抜け落ちたような言葉たちが淡々とつながれて行く。その言葉の連続に少しずつ、本当に少しずつ感情が追いついていき、気持ちと思いが込められていく。この言葉につながる言葉はなんだろう…こう言われたら、僕ならどう返すだろう…3時間ずっと、僕は自問を繰り返し、自分の感性を試していた。だけど、ほとんどの問いに答えは何も思い浮かばなくて、たまに思い浮かんでも、スクリーンに流れる言葉とはほど遠かった。世間並みの予想など一切寄せ付けない言葉の連続に、僕はすっかり魅了された。ラスト近くになって、西島秀俊が三浦透子に吐露した言葉が自分のイメージに少し近かった時、その事がひどく残念に思えたくらい、自分の感性をはるかに超える世界に酔っていた。静かに感動できる映画が僕は大好きで、ドライブ・マイ・カーは期待のど真ん中に来てくれた。面白かった、とか、感動した、とか、いい映画だったね、では終わらない、おそらくずっと心のどこかに残り続ける作品だと思う。全ての出演者が素晴らしい演技を見せる中、パク・ユリムさんの心がこもった演技には、とりわけ惹きつけられた。
February 11, 2022
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上映が始まると、大海原が映画館の大画面一杯に広がった。冷たそうな深い色をしたアメリカ東海岸の海。小さな漁村に暮らす家族はこの海で漁をして暮らしている。美しい、美しい…もう、映画の出だしから僕の頭の中はアメリカに飛んだ。僕は25歳まで日本から外に出たことがなくて、そのくせやたらと外国に憧れていた学生時代、たまに映画館で観る洋画が僕の外国体験だった。今思うと。映画館の暗闇で自分の居場所を見失って、大音量で頭がぐらんぐらんになって、二十歳前後の僕はいともあっさりと映画の中に吸い込まれていって、十分外国に行った気分になっていた。そして今回、エンドロールまで2時間は、あっという間のアメリカ旅行だった。感想を書いているつもりなので、ある程度ストーリーも書き残したいところだけど、見終わった今の気分を僕の筆力で表現し切ることは、かなり不可能な気がしている。タイトルのCodaはChildren of Deaf Adultsの略で、聴覚がない親を持つ、聴覚がある子供という意味だそうです。漁村に暮らす一家は、そういう境遇なのだけど、この映画は教育的なメッセージがにじみ出てくるようなものでは全くなくて、分類すればコメディドラマになるかもしれない。下ネタも多いのでPG12に指定されてしまってもいる。笑いというか失笑というか苦笑いというか、そう言う場面を楽しみながら、僕は感動で涙していた。例えば、映画から一切の音が消えた1〜2分の間に映し出された両親の嬉しそうな表情。ステージ上から家族を見つけ、耳の聞こえない家族に聴かせるように歌い上げる娘の笑顔。どれもみんな素敵でした。本当に素敵でした。
February 2, 2022
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