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イラン核合意(14)3週間後、6月18日に行われるイラン大統領選の立候補者7名が発表されました。護憲評議会の審査で、改革派や穏健派の有力候補者が、今回は全員候補者から外されました。これまでも改革派の有力候補、国民に人気のある候補は、殆ど立候補が否定されてきたのですが、穏健派の候補まで不適格にすることは出来ずに来たのです。今回の大統領選は、高齢のハメネイ最高指導者の引退を見据え、次期大統領には、ハメネイ師引退後の最高指導者に推し得る人物を確実に当選させたい。こういう思惑で立候補者篩にかけたように思われます。実は最高指導者のハメネイ師も、大統領から最高指導者に昇格しています。ロウハニ現大統領は、8年前の選挙時は、目立たない穏健派の候補に過ぎなかったのですが、改革派は勿論穏健派の有力候補も失格扱いされたことから、穏健派のみならず改革派支持の国民もまた、棄権して強行派の候補が続くのはかなわんからと、揃ってロウハニ師に投票しようという暗黙の流れが出来たのです。当時は核合意以前でしたが、アフマディネジャド超強硬派路線が、厳しい経済封鎖を呼んでイラン経済は破綻寸前に追い詰められ、強硬派にも不評を買っていたのです。その結果当時は無名のロウハニ師が圧勝する番狂わせが行われたのです。その後、オバマ政権が当時は英国も加わっていたEUと足並みを揃えて核合意を締結、イラン経済も復調した結果、4年前の大統領選でロウハニ師が大差で再選されたのですが、一方的にイスラエルの主張のみを支持するトランプ政権のために、これまた一方的に核合意からアメリカが離脱、まさに理不尽ともいえる経済制裁が科されたのでした。トランプ政権は、イランをテロ支援国家に指定し、イランと取引する各国の金融機関には、ドルの決済を認めないという大統領令を出したため、EUとしてもドル決済が出来なくては、米国との取引は勿論ユーロ決済の出来ない国との決済手段はドルしかなく、何より米国との取引も出来なくなるため、イランの窮状を和らげる手は打てなかったのです。そのためロウハニ政権は、国内の期待を一身に集めましたが、窮状打開に打つ手はなく、国内での人気も剥げ落ち、国内世論や護憲評議会に対する影響力を失っていました。そんな状況で、6月選挙では、強硬派が優勢の声が続き、改革派も自分たちの候補が失格となったら、今回は穏健派に投票するのではなく、改革派の立候補を認めなかった護憲評議気合に抗議して、投票ボイコットに訴えようと、選挙ボイコットを提唱しています。強硬派も内部にウルトラ強硬派(代表的人物がアフマディネジャド)、正統強硬派、穏健強硬派とあるのですが、今回は革命防衛隊の候補などを説得して、正統強硬派で司法府代表のライシ師に一本化して、圧勝の流れを作ったようです。問題は、決選投票に至らず(有効投票の過半数を制した候補がでない場合、上位2名の決選投票になります)、すんなりとライシ師が当選するかどうかにかかっています。ライシ師支持グループも、イラン経済の立て直しのために、米国の制裁を撤廃することが重要なことを理解していますから、ぎりぎりまで粘って、核合意に復帰知る事はやむを得ないと考えているようですから、選挙の結果で、米国と積み上げた核合意復帰プログラムが白紙に戻ることはなさそうです。
2021.05.30
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イラン核合意(13)イラン核合意は、今のところ細い糸で繋がっているが、米国との交渉がまとまらず、米国によるイラン制裁が続くなら、この細い糸は切れてしまうと記しました。その肝は、IAEAによる査察の可能性が繋がっていることにあります。イランとIAEAの暫定合意によると、IAEAはイランの核施設に監視カメラを設置して、市悦の動きを24時間監視できるようにしているのです。現在はその監視カメラの映像を見ることは出来ないのですが、映像は手を加えることなくイラン側が保管し、合意確認後にイラン側がIAEAに引き渡すことになっているのです。ここから、5月21日が期限だったイラントとIAEAとの暫定合意の期限の延長が焦点になったのですが、21日中にまとめることは出来ず、その後も起源を延長して協議を続け、24日の月曜日にイランとIAEAの双方が、暫定合意を6月24日の月曜日まで延長することで合意したと発表したのです。こうして25日から、EUを仲立ちにした米国とイランの間接協議が再開されました。最後に残された細部の詰めの作業が行われているようです。イランはギリギリまで、交渉を引き延ばし、米国側が譲れるぎりぎりまで粘り抜き、最後に妥協する方針をとっているように見えます。そうすることで、強硬派を説得しやすくなると考えているのでしょう。交渉を破談にして、制裁の解除が出来ないとなると、強硬派は完全に国民の支持を失ってしまいます。そうなっては、強硬派の政権は維持できなくなってしまう。それは避けたいのです。革命防衛隊のビジネスを守るためにも、経済制裁は解かなければならない。これは外せない一線なのです。合意は来月に延びるでしょうが、ぎりぎりのリミットで核合意の復活が発表されるように思います。ただし、ネタニヤフが底まで黙っているかは、未知数です。この点は要警戒です。
2021.05.27
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イラン核合意(11)バイデン政権がトランプ政権が仕掛けたイラン中央銀行やイラン国営石油会社に対する制裁を解除するには、少なくともイランをテロ支援国家としてきたアメリカの立場を転換して、イランに対するテロ支援国家のレッテルを外す必要があります。それには、イラン国家や革命防衛隊によるテロ支援の実態が、現実に抑えられてきているとか、実際の武器や人材の提供にストップがかかった証明が必要になります。テロ支援の実態が僅かでも残る限り、解除することは不可能です。そして、イランを核合意のラインに連れ戻すためには、トランプ政権が強引に推し進めた対イラン制裁、とりわけイランとしての国家運営の生命線である原油輸出の自由を認める制裁の解除が、避けて通れないのです。漏れ聞こえてくる情報では、バイデン政権は、「米国とイランが核合意に復帰することが、米国の国家安全保障上も、他の問題より優先すべき事項である。」と主張して、核合意と矛盾する制裁を解除もしくは停止する措置を取るべきか否か、実施の方法を含めて、慎重に検討を重ねているように思われます。先週後半に休戦協定が発効したハマスとイスラエルの戦闘が、一時激化したことから、米国内の親イスラエル勢力の反イラン感情は一段と強まっており、この時期に「テロ支援」を理由にイランに科した制裁を解除することは、政治的に見て大変困難な問題になります。イラン核合意体制の下で、イランの核査察を担当するIAEA(国際原子力機関)は、イランとの暫定合意期限を5月21日としていた合意を、さらに延長する可能性に、肯定的なサインを出して、イランと米国の双方に、一層の努力を促しました。もう1点、ムスリム世界でイランと対峙してきたサウジアラビアは、親イランの姿勢を崩さなかったカタールに対する封じ込めを、クエート、UAE、オマーンなどと共に推進してきたのですが、カタールに対する攻撃をやめ、さらにイエメンのフフーシ派に対する攻撃も辞めて、イエメン内戦への介入政策を放棄し、イランとの和平を推進する姿勢を取りだしたことがあります。親イスラエル、反イランの外交姿勢をイスラエルとイランへの等距離外交にシフトすることで、王政の維持をイランに認めさせて、内政への介入をやめれば、イランはテロ支援を放棄する意思を示したとみなすことが出来ると、米国とイランの双方に話を持って行ってるように見えます。非常に細い糸を辿る空中綱渡りになりますが、成果を期待したいところです。
2021.05.25
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イラン核合意(11)イスラエルとハマスの戦闘は、停戦合意が守られ、落ち着きを取り戻しています。アメリカのバイデン政権は、エジプトによる調停工作を強力に支持して援護射撃をしていたことは事実ですが、それでも、国際主義を掲げて、自由と平和を尊ぶ国々とスクラムを組んで、強権主義の国々の覇権拡大の動きに対する防波堤の役割を果たしたいと、勢い込んで人権外交をスタートさせていたのに、アメリカを除く14か国が一致して、イスラエルに対する戦闘行為の停止を求める国連安保理決議の採択を目指したのに、アメリカ1国が最後まで反対を貫き、国連に寄らない停戦合意に最後まで拘ったことで、アメリカの人権外交が二重基準であることが、すっかりばれてしまい、世界中の国々にばれてしまったのです。何故か。米国では、共和党支持か民主党支持かを問わず、中東ではイスラエルを強力に支えることを支持する勢力が圧倒的に強いのです。つまりユダヤ人の金の力が、政財官を牛耳っているのです。この意向に逆らうことが出来ない。この事実が今回見事に明るみに出たのです。で、エジプトの調停による停戦合意の成立後、バイデン政権は栄誉挽回を目指して、イランとの核合意の再締結を目指しての会合の再開に踏み切りました。5月21日と設定した起源は、過ぎてしまったのですが、何とかイランの大統領選挙実施前の合意に今も拘っています。大統領選挙で、強硬派が政権に返り咲く可能性が高くなりつつあることを踏まえて、穏健派のロウハニ師の任期中に何としても核合意をまとめたいと考えているのです。そのため、核合意交渉が続けられているのですが、ここで大きな障害となっているのが、まさにトランプの罠なのです。バイデン政権は共和党及び民主党のイラン強硬派を意識して、イラン核合意と「矛盾する制裁は解除すると説明しています。核問題以外のテロや人権問題を理由として科された制裁は、解除の対象にしないと、今後も残す姿勢を示しています。しかし、イランにとって一番の問題は、核合意に含まれず、トランプ前大統領が、「テロ支援」や「人権侵害」を理由に、イラン中央銀行やイラン国営石油会社などにかけた多数の制裁にあるのです。中央銀行と石油会社に対する制裁が残っているなら、イランは原油の輸出が出来ず、イラン核合意によって、受けられるはずのメリットを享受できない状態が続いてしまうのです。それが分かっていながらバイデンチームは、核合意とは無関係に設定されたトランプ制裁を解除できずにいるのです。まさにトランプの罠なのです。 続く
2021.05.24
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イラン核合意(10)選挙のたびに、連立工作がうまくゆかず、解散総選挙が4回も繰り返されたイスラエルで、3月の4回目の総選挙で、第1党になったのは、ネタニヤフが党首に座り続けるリクードでした。イスラエルの総選挙は、完全比例代表制で、得票率.25%以上を獲得した政党に、全120の議席が、比例配分で割り当てられるのです。当然大統領は第1党の党首ネタニヤフに組閣を命じましたが、連立を呼び掛けた政党との交渉が成功せず、与えられた期限までに、ネタニヤフは合意を得ることが出来ず、またしても彼の組閣は失敗に終わりました。ここで大統領は第2党となった中道政党イェシュアティドのラビト党首に組閣を要請しました。ラピド氏は財務相の経験もあり、今回は他の中道政党やかつての政権政党である左派の労働党に加え、あわせて10議席を獲得した二つのアラブ系政党にも閣外協力を頼み、右派政党イエナミの党首ベネット氏にも反ネタニヤフの連合を呼びかけ、さらに首相と副首相を交互に交代で務めるという好条件を示して、原則的な同意を得、後は細部を詰めるだけになった段階に来ていたのです。ですから、今回の衝突が起きなければ、5月10日頃までに合意が成立し、反ネタニヤフ政権が誕生する瀬戸際まで行っていたのです。この合意を潰そうと焦ったネタニヤフは、昨日記した東エルサレムでの暴挙とそれに続く衝突によって、見事にこの動きを潰したのです。軍事衝突は、ユダヤ人とパレスティナ人の敵対感情を煽ります。平時であれば可能な政治的妥協も、軍事衝突という事態の下では、各党とも自らの支持基盤の感情を無視することはできません。ユダヤ人とパレスティナ系アラブ人の敵対感情に火がついてしまった以上、民族横断的な連合の形成は不可能となります。右派政党イエナミのベネット党首もラビト党首との連立協議の打ち切り発表しました。ラビト氏に組閣の為に与えられた日限は、6月5日となっていますが、右派が離れ、アラブ系政党との連立協議も続けられない状況ですあら、組閣は断念するしかないでしょう。逆にネタニヤフの立場からすると、右派系政党の支持が得やすくなったことが確かです。彼はラビト氏の組閣が不調に終わるのを待ち、その後に、大統領に対し、再度の組閣作業に入る許可をもらえば良いことになります。ネタニヤフ体制の継続の道筋が、見事に見えてきたようです。
2021.05.23
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イラン核合意(9)昨日エジプトの仲介で、イスラエルとハマスが停戦に合意したとの発表がありました。バイデン政権の面目丸つぶれでした。事実上ネタニヤフの完全勝利でした。ガザはシナイ半島と国境を接しています。ガザを自由にさせないために、イスラエルは国境沿いにフェンスをめぐらすだけの土地を確保して、ガザのパレスティナ人が自由にシナイ半島と往復出来ないようにしているのですが、エジプトの主権侵害はまずいので、管理はエジプトに任せています。エジプトはフェンスの出入りは認めていないのですが、ガザから数本のトンネルを掘って、フェンスの下を抜け、シナイ半島に出入りすることは認めています。この権利を薄なうことは出来ないので、ハマスもエジプトの本気の要請は無視できないのです。そのため、エジプトが「もう十分だろう。これ以上やると、国際社会が完全に敵に回るぞ。やめたらどうだ」とネタニヤフにささやき、「ウン、ハマスは当分我が国を攻撃できないだろう。いいよ」となって、イスラエルのOkをとり、続いてハマスを説得したというわけです。そうなんです。今回はイスラエルのというよりネタニヤフの完勝。ハマスの完敗、バイデン政権の国際的信用の失墜で停戦に至りました。戦闘の前半の山場で、イスラエルは国境沿いに完全武装の地上軍を終結し、ガザへの地上軍の侵攻があるかのようなニュースをマスコミを通じて流しました。しかし、地上軍は進出せず、国境に留まったままでした。練達の戦場取材に慣れたフリーの記者は、地上軍侵攻はない。彼らには戦場に赴く緊張感が欠けていると報道していたのですが、ハマスも見事に騙されました。実はこれはネタニヤフの見事な陽動作戦でした。各所に散らばっているハマスの精鋭部隊を一挙に殲滅するために、フェイクニュースを流して、彼らを地下壕の数カ所の集会場に集まるよう罠を仕掛けたのです。地上軍の侵攻を恐れたハマスは、地下に集まりました。頃はみはからったネタニヤフは、集中的にガザ北部の主要な地下壕(トンネル)150か所を空爆したのです。バンカー・バスターという米軍がイラクのフセイン政権攻撃のために開発した地下壕叩きの特殊爆弾が使われたのです。ガザの大型建築が崩れ落ちる映像が流れましたが、炎上せずに崩れた建物は、建物の支えになっていた地下壕が崩され、支えを失って崩れたことを示しているのです。同じように武器庫もやられたでしょうから、ハマス支持の若者たちも、次の機会を待つしかないと説得されたのでしょう。停戦合意にはこんな背景があります。パレスティナ人、そしてイスラエル内のアラブ系住民の間に、ユダヤ人憎しの感情と怨念は、より強く蓄積されたでしょうから、イスラエルにとっての状況の改善は一時の事にすぎません。 ただ、ネタニヤフは、失職と投獄の危機を乗り切ったことは間違いないでしょう。この点は明日記します。
2021.05.22
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イラン核合意(8)イスラエルとパレスティナの今回の衝突を、丹念に調べてみると、今回の衝突の直接の原因は、4月13日の事件に辿り着きます。この日は、イスラム教徒にとって大切な宗教行事であるラマダン(断食月)の始まりの日でした。それがたまたまイスラエルの戦死した兵士を追悼するユダヤ教の行事と重なってしまったのです。この行事のため、イスラエル大統領(名誉職のため首相のような実権はないのですが、節目節目で演説するのは大事な仕事なのです)が大事な演説をするので、イスラエル政府はエルサレムで最も重要なイスラム寺院であるアル・アクサ・モスクに対して、イスラム教の祈りの声をスピーカーで流すのをやめるようにと要請したのです。当然、モスク側にとって到底受け入れられることではありません。ラマダンの初日は、毎年の暦によって、日は移るのですが、暦では分かっていますから、勝手に日を重ねたのはそちらの方だというわけです。ですから、当然断りました。すると、イスラエル警察は、この日モスクの電源を遮断して、スピーカーの音声が流れないよう遮断してしまったのです。その上、アル・アクサ・モスクの北西にある旧市街の主要な入り口であるダマスカス門前の広場を封鎖したのです。この広場はラマダン期間の夜は、パレスティナ人の若者が大勢集まってお祝いする習慣が続いていた場所でしたから、締め出された若者は、当然のように抗議の声をあげたのです。こうして、パレスティナ人の若者の抗議活動が活発になり、それに対抗するユダヤ人の極右グループによるパレスティナ人への襲撃が活発化するなど、緊張が高まったのです。そこへ、旧市街のパレスティナ人居住区で、ユダヤ人の入植者が滞った借金の保全にと所有権を奪った建物から、パレスティナ人の住民を強引に立ち退かせようとする裁判の判決が近づくなどが重なり、そんな状況の中、5月7日金曜日(イスラム教徒にとって金曜日は、キリスト教徒の日曜日にあたります)夜、イスラエル警察がアル・アクサ・モスクに突入して、催涙ガスや閃光弾を投げ込み、ゴム弾を発射してパレスティナ人を強制的に排除したのです。3日後の10日、イスラエル警察は再度モスクに強制捜査に入り、300名以上のパレスティナ人が負傷したのです。イスラム教徒の宗教心が最も高まるラマダンの期間を狙って、彼らが最も神聖視するモスクに、武装警察が3回も土足で突入して、神聖な場所を汚したのです。当然こうした一連の行動は、イスラエルがトランプ前大統領のお墨付きを掲げて、東エルサレムのユダヤ化を(トランプ以前の歴代政権は、東エルサレムはをパレスティナとイスラエルの共通の聖地として、共存の場としていました)強引に進めようとしているという印象を、パレスティナ人に植え付けました。ネタニヤフがゴーサインを出したパレスティナ叩きの第一幕はこうして本格化したのです。ガザのハマスは、ヨルダン川西岸のパレスティナ自治区の仲間たちを支援するために、この10日夜、ロケット弾をエルサレムやイスラエル南部に打ち込んだのです。待っていたネタニヤフ暫定首相は、直ちに空爆で反撃、21世紀に入って、最大規模の軍事衝突となったのです。この衝突は、ネタニヤフの政治生命を回復させる格好の切り札になったのですが、以下また続けます。
2021.05.20
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イラン核合意(7)大変残念な事なのですが、今のところネタニヤフの賭けは、見事に当たったように見えます。国連安全保障理事会が、イスラエルとパレスティナ(ハマス)に即時停戦を求める決議を採択し、声明として発表することに、米国一国が反対して、声明が発表できなかったのです。安保理の議長は理事国(常任理事国5か国、非常任理事国10か国の計15か国)が順番に1ヶ月交代で務めるのですが、今月は中国の当番で、王毅外相が務めました。彼は議長の記者会見の席上、「14か国は合意したが、最後の1か国が14か国の説得に最後まで応じず残念なことになった」と、名指しこそしませんでしたが、おれがアメリカを指していることは、そこまでのバイデン大統領のイスラエル擁護ととれる一連の発言からも明らかでした。これはバイデン外交にとっては、大きな痛手であり、マイナスでした。彼と彼のチームは、トランプ流の孤立主義を廃し、国際協調路線に戻る事、欧州、、アジア・太平洋、そして中南米やアフリカの国々とも連携し、国際社会と共に歩むと宣言して、諸国と連携して、中国の膨張主義、覇権主義を強くけん制することを目指すという方針を表明していました。 それなのに安保理が中国やロシアを含めて協調路線で、パレスティナ市民へのイスラエルの滅茶苦茶な空爆をやめさせようとする動きに、異を唱えざるを得なかったのですバイデンと彼のチームの国際主義路線にとって、大きなマイナスでした。これオバマ政権だったらどうだったでしょう。オバマ氏はネタニヤフに非常に厳しかったですから、おそらく国内から強い批判が出てもイスラエル非難に踏み切ったでしょう。国内の反発を嫌ったバイデン氏は、見事にネタニヤフに一本取られたのです。ネタニヤフはほくそ笑んでいるでしょうね。さて、バイデンチーム、どう巻き返しを図るのでしょう。しばし注目です。
2021.05.18
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イラン核合意 (6)ネタニヤフの狂気イスラエルがパレスティナのガザに軍を侵攻させ、戦争状態になってきました。1昨年から何度選挙をやっても、多数派を形成する勢力が出来ず、とっくに人気を過ぎているネタニヤフが暫定の首相の座に座っています。彼は検察に訴追されており、首相の座を降りると、直ちに収監されます。彼は何としても収監をさけたいのです。幸い、彼が組閣に失敗しても、第2党、第3党の党首も組閣できず、その間首相に留まっているネタニヤフは、1昨年から既に4回議会を解散して、総選挙に持ち込んでいますが、ずっと同じことを繰り返しているのです。先日行われた4回目の選挙でも、ネタニヤフが党首を務めるリクードが、過半数にはかなり遠いのですが、一応議第1党となり、大統領から組閣を命じられたのです。しかし、リクードと連立を組むことを承知した政党は少なく、彼は組閣に失敗しました。そこで大統領は、第2党の党首に組閣を命じました。今まではここでも組閣に失敗し、再選挙になっていたのですが、今回は様子が違って、組閣が成功しそうになったのです。そこで慌てたのがネタニヤフです。組閣が成立しては困るので、非常事態を創り出し、強い指導者を演じることが出来る自分の人気の回復を図り、再度組閣の大命を受けようと画策したのです。彼は東エルサレムでのムスリムの祝祭行事に警備の名目で、武器を携行した多数の警官を派遣して、ムスリムの集会を規制させたのです。つまり喧嘩を売ったのですね。激昂したパレスティナ人は見事に挑発に乗せられ、これが激しい蜂起に繋がりました。ガザを実効支配するハマスが支援に乗り出し、それにイスラエル軍が過剰報復を繰り返し、遂に地上軍の派遣にまで至りました。まさにネタニヤフの筋書き通りです。彼はほくそ笑んでいるでしょう。戦闘となれば、イスラエルでは首相への、特に強い指導者を演出できる指導者への支持は高まります。ネタニヤフが再度の挑戦で内閣を組織できる可能性が強まったのです。困ったのはバイデン政権です。米国内にはイスラエル支持者が多く、あからさまにネタニヤフを非難することなどできません。ネタニヤフに圧力をかけることが出来ないのです。バイデン大統領もイスラエルのガザ空爆に理解を示した上で、早期収拾を働きかけることしかできません。米国のバイデンチームがイスラエルとパレスティナの双方に、自重を促し、人命を尊重して互いに一歩譲り交渉のテーブルに着くことを進めていますが、なおしばらくネタニヤフは、知らん顔をして攻撃を続けるでしょう。イスラエル国内に住む、パレスティナ人への攻撃も憂慮されています。ネタニヤフは、パレスティナの窮状を見かねて、イランがパレスティナ支援に乗り出すのを待ち、その証拠を掴むことで、イラン核合意に関する交渉を中断に追い込むことを、もう一つの狙いとしているのです。果たして、このネタニヤフの罠を、米国、イランそして両者の仲介役を買って出ているEUは、ンり超えることが出来るのでしょうか? ちょっと心配な状況です。
2021.05.16
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イラン核合意 (5)回り道になりますが、ここでイランの選挙制度を一瞥しておくことにします。イランでは、最高権力はイスラム法学者(いわゆるイスラム聖職者です)が持ちます。終身の最高指導者がそのトップです。行政権の行使を任される大統領はナンバー2の地位になり、彩桜指導者の承認を得て、10人の副大統領と、20数人の閣僚を任命します。宣戦布告と講和の大権は最高指導者が握ります。議会は一院制です。議員も大統領も選挙で選ばれますが、選挙権は15歳以上の男女に平等に与えられています。議員は人口に応じて選挙区ごとに定員が割り当てられますが、有権者は各選挙区の定員に応じて、定員分全員を選ぶところが独特です。例えば首都のテヘランでは、30人が定員なので30名を選ぶ必要があります。被選挙権は30歳なので、30歳以上であれば誰でも立候補できます。立候補受付期間に届け出れば立候補できますが、届け出期間の締め切り後に、最高指導者が任命した12人からなる監督者評議会の資格審査に合格する必要があります。評議会メンバーは聖職者6名に社会的名士6名の12名ですが、12名の殆どが保守派のため、改革派として知られた人物は、国家体制に有害な主張をする者として、立候補を認められないケースが多いのです。で改革派はゼロになるかというと、そうでもなくあまり影響力のない改革派のメンバーを数人だけ認めて、公平に審査している振りをするのです。さらに手が込んでいるのは、保守強硬派の候補についても、著名人の立候補を認めずに、改革派だけを排除しているわけではないとする手の込んだ芝居をすることもあります。現在のロウハニ大統領の前の大統領として2期8年務めた強硬派のアフマディネジャド氏が、2017年選挙に(1期4年休んだので、立候補資格はあったのです。連続3選は禁じられていますが、再登板は可能です)立候補しようとしたとき、彼の立候補は、評議会の満場一致で拒否されたのです。改革派の候補と共に、保守強硬派も排除したのですね。さて、昨年国会議員選挙が行われたのですが、評議会は保守強硬派の候補の審査を早くに終え、改革派や穏健派の候補の審査を長引かせて、なかなか発表しなかったのです。テヘランのような大都市をはじめ、人口の多い都市部の定員は多くなります。しかも例えばテヘランをとると、30名の定員に対し、千名近くが立候補し、800名近くが立候補を認められるのです。市民が名前を知っている候補は精々5~6人だそうですから、保守強硬派、保守穏健派、中道派、改革派が夫々、このメンバーに投票してくれという、30名のリストを有権者に配るのです。この用紙は投票所に持ち込むことが可能なので、市民は意中の派の用紙を持って投票に行くのです。昨年の選挙では、評議会の作為によって、強硬派のリストだけが早くに出回りましたから、圧倒的に保守強硬派が有利となり、選挙で圧勝したのです。その流れの延長線上に6月の大統領選がやってきます。 続く
2021.05.14
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イラン核合意(4)EUを仲介役としたアメリカとイランの交渉は、断続的に現在も続いています。4月30日に第3回の協議が足踏み状態で終了した後、5月4日にブリンケン米国務長官は、「我々はイランが本当に核合意に戻るために必要な決断を下すことが出来るかどうか見極める必要がある」と述べ、合意実現のためのボールはイラン側にあるとの見方を示しました。これは、イラン側の代表団のトップであるザリーフ外相に最終的な決断を下す権限がなく、会議の場で煮詰まったことを持ち帰り、最高指導者ハメネイ師の裁可を得なければならないことを理解しているからです。ブリンケン長官の発言の裏を読むと、米側は何段階に分けたかは知る由もありませんが、先ず第1段階でこれこれ、イラン側の対応が進めば第2段階でこれこれと、夫々の段階で解除できる制裁を具体的にイラン側に提示し終えており、後はイラン側の決断にかかっていることを示しています。少なくとも5月7日に始まった第4回目の交渉で、そこまでの提示を終えたものと思われます。仲介役となったEUの外交官によると、米側は石油やガス、金融セクターなどイラン経済の主要分野に対する制裁解除など、イラン側が渇望してやまなかった分野の制裁解除を第1段階で実現することを提案し、テロや人権に関する分野についても提案しているようです。従ってボールは、イラン最高指導者ハメネイ師の決断にかかっています。ハメネイ師がゴーサインを出せば決着するわけです。ところがここで、6月の大統領選が引っ掛かるのです。早めにOKしてしまうと、穏健派や改革派の候補に追い風が吹いてしまう。ここは、のらりくらり時間を稼いで、米側から更なる譲歩を引き出し、それを保守・強硬派の手柄にすることが望ましいなどと考え、平気で先延ばしすることも考えられるのです。問題は、トランプの対イラン経済制裁で傷んだイラン経済が、制裁が解除されずになおしばらく続くとすると、それに耐えうるか否かなのです。そして、妥協に批判的な国内の反対派・強硬派をどう扱うかも問題となります。ボールはイラン側に渡っているようです。 続く
2021.05.12
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イラン核合意(3)EUを仲立ちにした間接的な接触の中で、バイデン政権の中東担当チームは、イランが核合意を完全に順守することが制裁解除の条件だとする従来の方針では、交渉を前に勧めることが出来ないことを悟ります。そして、そのまま物別れにしてしまっては、対イランの今にも切れてしまいそうなほそーい糸を、あの手この手を使って何とかつなぎとめていてくれたEU加盟国のメンツも、完全に潰してしまうこと、そしてそれはバイデン政権にとっても大きなマイナスとなることを理解します。そしてもう一つ米国にとって重要なことは、6月で引退するロウハニ大統領の後任を選ぶ、イラン大統領選挙が6月に迫っている事実です。トランプの経済制裁を押し返せず、経済とりわけ失業に対するセーフティネットの構築に失敗したロウハニ大統領の経済失政に対する批判は強く、そこにコロナ対応のまずさが加わって、ロウハニ師に対する支持は、我らが菅首相や韓国の文大統領以上に低くなっています。その結果、昨年の議会選は、改革派の候補が立候補を拒否されたこともあって、若者の投票率が低く、結局低投票率が決め手となって、保守派の圧勝に終わったのです。ということは、6月の大統領選までに、核合意について一定の成果を上げ、前大統領のアフマディネジャドのような保守強硬派でなく、少なくとも保守穏健派の候補に勝たせないことには、核合意への最終的な復帰は望めなくなってしまいます。 それは何としても避けたいのが米国の本音です。こうして、現在の状況は、イランのザリーフ外相の方が、有利な立場に立ったと言えます。ザリーフの交渉力が強まったというわけです。 こういう状況の中で、米国チームは、制裁解除の条件を緩め、核合意の完全順守を事前に求めるのではなく、合意の順守についての「明確さ」を求めることで由としたのです。米側の譲歩を引き出したことで、ザリーフの政治力が強まり、次期大統領選へ出馬されると面倒だと考えた革命防衛隊の一部や保守強硬派が、ザリーフの追い落としを狙って彼の音声を暴露したという推論が成り立つ根拠がここにあります。イランを孤立無援状態に置きたいイスラエルと保守強硬派のどちらにも、ザリーフ追い落としに強いシナジーがあることは事実なのです。 続 く
2021.05.11
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イラン核合意 (2)実は、米国の核合意への復帰と、米国の離脱と理不尽な制裁によって、経済的に困窮に陥り、医薬品の不足にも悩まされるようになったイラン(実はイランに同情的な国は結構あるのですが、米国の制裁を無視してイランとの経済関係を維持すると、ドルでの取引を凍結されて、その国の金融機関が頓死させられてしまうので、やむを得ず米国に従うしかないのです。日本もそうでした)の核合意の範囲をゆっくりと逸脱することで、EUや英国に圧力をかけてきたイランとの間接交渉が、舞台裏でかなり進んでいるようなのです。バイデン政権は、オバマ政権でイラン核合意交渉を担当した、イラン側とのパイプを持つメンバーを、対イラン交渉役に就け、交渉に応じるサインを送り続けてきました。ただ、イランは原則を重視します。紀元前のペルシャ帝国の時代から、高い文明を誇ってきたのですから、この点では迷うことなく、一方的に核合意から抜け出したアメリカが、トランプ時代に実施した対イラン封鎖を廃止するのが、交渉の前提であるとしてきました。イランが頑なにこの姿勢を貫くなら、交渉の余地がありません。それではイランも困るのです。イランにとって何よりも貿易関係の回復が欲しいのです。経済封鎖の解除がポイントです。ですから、国内向けメンツとして、アメリカが譲歩したから交渉の席に着いたと言えるなら、交渉の席に着くだろう。こうなります。些細な事でも良いから、米国の譲歩を勝ち取ったと言える成果が欲しい。この事情をEU経由で受け取った美国は、今までの頑なな態度を捨て、態度を軟化させたのです。それはどのようになされたのか? 続きます。
2021.05.10
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イラン核合意 (1)日本でも騒がれましたので、ご存知の方も多いと思いますが、イランのザリーフ外相(核合意交渉のイラン側責任者)が2月に録音したインタビュー音声が流出して、その生々しい発言が大きな波紋を拡げました。内容は、昨年暗殺されたソレイマニ司令官や革命防衛隊自身が、イランの外交活動に干渉してること、シリアでのロシアとの軍事協力を、核合意交渉より優先していることなど、「おいおい良いのかい、こんなことまで言っちゃって」という内容を含んでいました。報じたのは、イギリスに本拠を置く、イランの反体制派系のメディア「イラン・インターナショナル」で、イラン外務省が政府内部の記録用に録音していたザリーフ外相のインタビュー記録の一部をSNSで流したのです。イラン外務省は、この音声データは盗まれたものであるとして、内部捜査を続けており、イラン内務省も訴えを受け、捜査を開始しています。現実にイラン革命防衛隊がイランの外交政策に介入していたことは、実際には誰もが知っている事実に過ぎないのですが、政府内部の対立を表ざたにしたこと、防衛隊の英雄で人気の高いソレイマニ司令官を批判したことなどに、保守強硬派はザリーフ批判を強め、その解任か辞任を求めています。政府部内の気密性の高い録音盤を盗み出しているのですから、当然政府内の事情に通じている人物によるものに違いないのですが、それがイラン内部でロウハニ大統領やザリーフ外相ら穏健派に一泡吹かせたい保守強行派によるものか、核合意の再開を避けたいイスラエルらによるものとも、或いは米国内の核合意反対派によるとも、そのいずれもがいかにもありそうなだけに何とも言えないところです。では実際に、EU諸国が仲介に入っているイランと米国との交渉はどこまで進んでいるのでしょうか? この点を考えてみることにしましょう。 明日に続く
2021.05.09
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中国をどう見る習近平の中国が、しきりに尖閣諸島や台湾にちょっかいを出しています。この中国の膨張主義をどう見るか。過度の強気が常軌を逸しているように見えます。この点について、宮本雄二元中国大使が、洒落たことをお話になっていることに最近気が付きましたので、ご紹介します。1,日本やアメリカなどは、コロナのせいで5%や10%のマイナス成長があっても、それで社会は揺るが ない。ところが中国ではそうはいかない。必ず脆弱性が現れる。 …… 確かに、これだけ政治のヘマが続いても、日本社会は壊れておらず、それなりの品位を 保っていますね。しして心のどこかで、いつか元に戻れる日が来ることを願っていますね。2,習近平の権力のピークは、任期の延長を決議した2017~18年頃だった。政治はどこの国でも同じ。 権力が集中したら必ず反作用がある。現在では太子党(権力者の2世、3世の組織)も、どんどん離れ つつある。 …… こう考えると、昨今の無茶な行動は、ああ、あせって虚勢を張っているんだなと、理解でき る。武漢の状況も、SNSでちゃんと発信されていて、いくら消しても無駄だったとも話していま した。なるほどと納得できました。3,1990年に香港基本法が出来た時点で、香港は外国勢力と関係を持つことを禁止する立法を作成すべ し、と規定されている(英国の香港返還は97年ですから、返還7年前にその後に備えた準備は出来て いたのですね。それが、今になっても作成されないから、遂に北京が自分で国家安全法案を作成する 羽目になってしまった。北京も香港も人材がいないから、妥協が出来ない。このままでは、香港の法 体系が信用されなくなる。香港の経済的繁栄は失われるだろう。 …… 北京政府は、上海が香港の代わりを務められると考えているようだが、そうはならな い。香港の繁栄を失った痛手、近く身に染みることになるでしょう。
2021.05.04
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