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2013.09.07
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カテゴリ: 読書案内
【司馬遼太郎/『国盗り物語』第一巻 斎藤道三 前編】
20130907

◆時代の変革、歴史の動く瞬間を垣間見る!

これまで数々の歴史小説を手に取り、そのつど胸をときめかせて来たものだけれど、『国盗り物語』以上に夢中になったものがあっただろうか?
もちろん、吉川英治の『三国志』も子母沢寛の『勝海舟』もおもしろかった。だが、いかんせん長い。
『国盗り物語』は全四巻となっていて、一・二巻は斎藤道三、三・四巻は織田信長を取り巻く物語となっている。
歴史上の人物のあらましを知るには適切な長さとなっていて、読者を飽きさせない。さらには、時代の変革に伴うエネルギーがそこかしこから感じられるのだ。主要人物たちを突き動かす変革への情熱がほとばしり、歴史の動く瞬間を垣間見るような錯覚さえする。

驚いたのは、著者である司馬遼太郎がこの小説を書いた時の年齢だ。何と、今の私と同じ42歳とな?!
42歳にしてこれだけの表現力、洞察力を持ち合わせ、緻密な調査を繰り返し大作を書き上げた司馬遼太郎という人は、あるいは超人ではなかろうかと、度肝を抜いてしまった。
様々な作家が戦国武将の武勇伝をおもしろおかしく書きつらねているけれど、司馬遼太郎の斎藤道三ほど人間臭く、それでいて生き生きと情熱的に描かれたものはないだろう。それはもうとびっきりのキャラクターに仕上げられていて、読んだそばから斎藤道三のファンになってしまうほどだ。
その魅力あふれる斎藤道三が、娘婿となる織田信長と出会い、やがてはその意志を信長によって引き継がれていくまでが一・二巻で描かれている。

話はこうだ。

だが大志を抱いていたから、転んでもタダでは起きない。
まずは経済的基盤を固めるために、油問屋の奈良屋へ婿入りを果たす。
奈良屋の身代であるお万阿は、庄九郎にとことん惚れ抜いていることもあり、また物分りの良い女であるから、庄九郎の大胆不敵な天下取りの野望に大いに賛同する。
その後、奈良屋は山崎屋と名を変え、これまで以上に大繁盛する。
経済的な基盤が出来上がると、次に庄九郎はどの国を制するかについて考えた。
庄九郎が着眼したのは、美濃である。
美濃は名家であるはずの土岐家が腐敗しきっていることで、庄九郎のつけ入る隙を与えた。
また、「美濃を制する者は、天下を制する」とも思っていた。
そうと決めると庄九郎の行動力は素早い。
まず山崎屋の商売を全てお万阿に一任し、自身は身一つで美濃に下った。
美濃には常在寺という大寺があり、そこの住職は庄九郎にとって妙覚寺時代の学友であったのだ。

日護上人にしても、京での噂話や、修行時代の思い出話も語り合いたい。
何より、上人は大の世話好きであったから、それに甘えて庄九郎は常在寺に長期滞在を決め込んだ。
その後、日護上人の兄である長井利隆の紹介を経て、本丸でもある土岐頼芸に接近するのだった。

このように、『国盗り物語』のおもしろいのは、ムサいホームレス上がりの男が、それまでに培った知識、教養、交友、経済力の全てをフル活用し、着実にステップ・アップしていくところだ。
これほどまでに生きることに貪欲だと、呆れるというより、むしろ圧倒されてしまうのだから不思議だ。

斎藤道三は、乱世を生き抜く知恵と勇気を持った人物として、第一巻ではしめくくられている。
嗚呼、ページをめくる指先がもどかしい。
斎藤道三の豪傑ぶりは、二巻へとつづく。

『国盗り物語』第一巻 斎藤道三 前編

20130124aisatsu


☆次回(読書案内No.90)は司馬遼太郎の「『国盗り物語』第一巻 斎藤道三 後編」を予定しています。


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最終更新日  2013.09.07 06:06:31
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