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東映フライヤーズが優勝した年はいつだったかな? その頃、私は何年生だったのかな? おっと、東映フライヤーズについての説明がまず必要でしょうね。1954年から1972年までパシフィックリーグに所属していたプロ野球チームの名前で、いまの日本ハムファイターズの前身ですね。ウィクペディアで調べると1962年(昭和37年)に水原茂監督の指揮の下、土橋正幸、尾崎行雄両エースを擁してパリーグで優勝し、日本シリーズでも阪神タイガースを破って日本一に輝いています。私が中学校2年生のときです。 この頃に活躍した同球団の野手陣は、毒島、青野、吉田(勝豊)、張本、山本(八郎)、西園寺、岩下、安藤等だったと記憶しています。 小学生の頃、大友柳太朗、市川右太衛門、中村錦之助たちが活躍する東映時代劇映画が大好きだった私は、野球も小学校時代はラジオで、中学校時代はテレビの野球中継でいつも東映フライヤーズを応援していました。同チームはパリーグで万年五位(万年最下位は近鉄バッファローズでした)でしたが、61年に巨人軍から水原茂を監督に迎え、62年に高校2年中退ルーキーの尾崎が加わり、内野の守備陣を青野、岩下で堅め、打撃陣は毒島、吉田、張本、山本たちで強化し、パリーグで南海フォークスと優勝を競うまでになりました。 その頃までは、中学生だった私は、家でテレビ中継を視聴するだけで我慢していましたが、東映フライヤーズがパリーグで優勝を競うようになりますと、母におねだりして森ノ宮球場に対近鉄戦、難波球場に対南海戦の野球観戦に出掛けたものです。 母は学校の教師でしたが、養命酒などをいつも愛飲しているような虚弱体質で、土曜日や日曜日は家でゆっくり休養したかったでしょうが、東映フライヤーズを熱心に応援する一人息子のためにプロ野球観戦のために大阪まで連れて行ってくれました。母はそれほど野球には関心が無かったようですが、球場観戦で「わっ、土橋投手だ、張本だ」と歓声を上げて喜ぶ息子の顔を見てきっと幸福感を味わっていたのでしょうね。それは私自身が後に人の親となって初めて気が付きいたことです。 私たち母子が森ノ宮球場に初めてプロ野球観戦に出掛けたとき、球場三塁側でネット越しに東映フライヤーズの選手たちを目の当たりにした母が、「身体が大きく顔が艶やか健康そうね」と感嘆していたのがとても印象的でした。 2回目のプロ野球観戦は、大阪難波球場でした。この球場は南海ホークスのホームグラウンドで、杉浦投手、野村捕手、広瀬野手たちが活躍していました。 しかし、東映フライヤーズが1962年秋にパリーグで優勝し、日本シリーズでも阪神タイガースを破って日本一に輝いてから、私の野球熱は急速に冷めていきました。 なお、宮部みゆきのミステリー作品『火車』の文中に、大阪人のスポーツウーマンの真智子先生が南海ホークスのダイエー買収後の大阪難波球場のことを紹介し、このミステリードラマで下記のような意外な役割を演じているのを紹介していることに驚きました。 「一九八八年に九月に、南海ホークスがダイエーに買収されて福岡に移ったでしょう。だから空いちゃったのよ、大阪球場が。取り壊しもされないまんま。いまでも残ってる。イベントの会場になったり中古車販売フェアの会場に使われたりしながらね。」
2018年05月27日
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宮部みゆきの『荒神』 地方の藩を舞台にした『孤宿の人』に続く長編時代小説『荒神』(朝日新聞出版、2014年8月)は、時代は元禄、相互にいがみ合う陸奥の小藩の香山藩と永津野藩の藩境にある山間の小村が一夜にして壊滅状態となるところから始まります。 小山のように大きな怪物が突如香山藩の仁谷村に出現し、荒れ狂って村を崩壊させた後、さらに隣りの永津野藩の名賀村を襲おうとするようです。竹林の中を枝をビュンビュン鳴らして押しやりながら大きな怪物は進んでいきます。読者は、まずこの小山のように大きいとされる怪物の全体像を把握したいと思いながらページを読み進めるでしょう。そしてこの長編小説の中程で、周りの様子に合わせて身体の色や艶を変化させ、身体は蝦蟇、脚は蜥蜴、尻尾は蛇のようで、全身を強靭な鱗で覆われた小山のような大きな化物が口から恐ろしい酸水を吐き出して荒れ狂う様子を見ることになります。 読者はつぎになぜこのような恐ろしい化物がこの地に突如出現したのか、またこの怪物の出現は香山藩と永津野藩の長年のいがみ合いとなにか関連があるのではないかと考え、またそのことからこの恐ろしい怪物を退治するために必要なヒントが得られるのではないかと推測するでしょう。 物語には、病により療養していた香山藩の小姓・直弥や怪物の被害を最初に受けた仁谷村の少年・蓑吉、永津野藩の専横な藩主側近で藩士を率いて怪物を退治しようとする曽谷弾正やその妹・朱音らが登場し、この怪物に立ち向かっていきます。 同じ地方の小藩ものでも、『孤宿の人』がシリアスな社会派時代ミステリーなのに対して、今回の『荒神』は小山のように大きな化物を登場させて、思い切り荒れ狂わせています。そんなフアンタジックな化物に生々しいリアル感を与えるところに作者の宮部みゆきの見事な筆力の冴えが発揮されています。
2018年03月11日
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今日(12月3日)の地元紙「南日本新聞」に小生が執筆した宮部みゆき『この世の春』(新潮社、2017年8月30日)についての書評がやっと掲載されました。 「やっと掲載されました」と書きましたのは、南日本新聞社の文化部の方が拙著『風が開いた書斎の窓』をご覧になって、拙著に宮部みゆき関連の拙文も掲載されていることに目をとめられ、メールで宮部みゆきの新刊『この世の春』を同紙の書評欄に書かれませんかとお誘いがあり、初めての商業新聞紙上への執筆ということもあり、三回も書き直しを依頼されたからです。 まず一度目の拙書評については、メールで粗筋紹介に余りにも偏り過ぎだ書評を書いてお送りしたことから、「ネタバレにならない程度に、踏み込んだ『宮部みゆき論』を展開してください」との返信メールをいただきました。 つぎに二度目の書評をメールをお送りし、そのとき同じ拙文をフェイスブックや拙ブログにそのまま載せましたので「今回、弊紙が依頼した書評は新聞紙面に掲載することを前提としたもので原稿料をお支払いして著作権も新聞社側に属する性格のものです。ですから、掲載前の公開はもちろん掲載後についても、使用許可の手続きなしに使うことは執筆者であってもできないものです」とのご注意をいただき、全く新たな書評文を書き直すことになりました。 それで三回目の書評文を書き直してメールでお送りし、やっと今回の同新聞紙上の掲載が実現したのです。いやはや新聞紙上への書評は初めての経験であり字数制限のこともあり四苦八苦させられました。南日本新聞紙上に載った拙文に関心のおありの方はどうか同紙12月3日号をお買いになってご覧下さいね。
2017年12月03日
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坂本(細田善彦)が野間京子(長谷川京子)を人質にして新たに起こしたバスジャック事件により、警察は杉村(小泉孝太郎)たちが羽田光昭(長塚京三)から慰謝料を受け取っていたことを知ります。元人質たちは再び事情聴取を受けることになります。 警察署で野間と杉村がすれ違った時、杉村は野間に清田弁護士(野間口徹)から嘘つき呼ばわりされたこに対してちゃんと弁明すべきだと伝え、さらになぜ人質にされたとき、名前を「杉村菜穂子」と偽ったのかと質問します。彼女の返事は「羨ましかったから」というものでした。 警察では、杉村たちがバスジャック犯人の羽田から受け取ったお金は、犯罪隠匿や偽証の代償として支払われたものでない限り返されるが、事件の詳細が判明するまで警察が一時預かるとします。しかし、元人質たちが犯人からお金を受け取っていたことが世間にも知られると、ネット上では「被害者面して、裏では大金をせしめていた」などと非難の声があがります。 そんなある日、久々に間野京子(長谷川京子)が広報室へ出勤すると、清田弁護士の「間野は真正のうそつきだ」との批判に対する弁明を行います、確かに夫と離婚するときトラブルとなり、ずっとストーカー紛いの嫌がらせを受け、清田弁護士に相談するようになったが、ある日、元夫はとっくに死亡しており、清田弁護士自身が夫の名前を騙って嫌がらせをしていたことが判明したとのことでした。しかし警察に訴えても弁護士相手では面倒だとまともに取り扱ってもらえないできたとのことでした。 その後日、森元常務(柴俊夫)の回顧録が完成し、レストランでお祝いをすることになった。園田編集長(室井滋)たち広報室一同を前に、妻・弥生(山口果林)との思い出を語る森は、妻が好きだった曲「テネシー・ワルツ」を口ずさみ、夫婦の歩みを感慨深く思い返すのでした。 そんなお祝いの翌日、井手(千葉哲也)から杉村に電話がかかってきました。何か慌てた様子の井手は、杉村に森の家へすぐ来てくれと言う。程なく、車で急行した杉村は、信じられない光景を目にすることになります。森元常務の奥さんが死んでおり、その傍に縊首した森の姿を見つけたのでした。森が奥さんを手に掛け、その後自殺したのでした。井手はそんな事実を隠蔽しようとし、さらに菜穂子と橋下橋本(高橋一生)との不倫関係を暴露する写真を見せようとします。
2014年09月16日
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羽田光昭(長塚京三)が起こしたバスジャック事件では被害者の一人だった坂本(細田善彦)が、事件が起きた同じ場所で同じ路線バスをバスジャックします。坂本が今回乗っ取ったバスには、森元常務(柴俊夫)の自宅から帰る間野(長谷川京子)が、偶然乗り合わせていました。前回の事件同様に、坂本は運転手に命じてバスを藤野化学の廃工場へ走らせると、そこで運転手を解放し、警察へ通報するよう指示します。なお、坂本から名前を問われた野間はなぜかそのとき「杉村菜穂子」と伝えています。 坂本と野間がバスジャックの犯人と人質という関係で語り合う中で、坂本が以前は人質だったこと、慰謝料として犯人から送られた金を受け取ったこと、などを問わず語りに伝えます。 その日、杉村(小泉孝太郎)を訪ねて、前野(清水富美加)が睡蓮へとやって来ました。今朝方、坂本の母親から電話があり、坂本とその友人が殴りあいの喧嘩となり、家を飛び出してしまったとのことでした。また、坂本家の庭には、多くのお札を燃やした跡があったというのです。 前野が杉村と睡蓮で坂本のことを話し合っているそのとき、グループ広報室に間野を訪ねて清田(野間口徹)という弁護士がやって来ました。間野から彼女の夫との離婚時にトラブルが生じ仕事を依頼されたという清田弁護士は、間野から弁護士費用のみならずそのときに貸した転居費用も全て踏み倒され、携帯等の連絡先も教えてもらえず困っているというのです。園田編集長(室井滋)が離婚した間野京子の元夫はすでに亡くなっていると聞いたがと清田に質問すると、いや現在も生きているが、そのことを教えたくなかったのだろうと言い、「間野京子は真正の嘘つきです」と言い切ります。 ほどなく、第2のバスジャック事件の現場へ、前回の事件を担当した山藤警部(金山一彦)が到着します。あのときの被害者だった坂本が事件を起こしていることに驚く山藤警部に、坂本からある要求が伝えられます。その要求とは、「御厨尚憲を連れて来い」というものでした。 坂本は、今回のバスジャック事件の要求を山藤警部に伝えた後、人質となった間野に対してバスジャック事件の人質の慰謝料として受け取った金の一部を使ってマルチ商法を開始し、大学の先輩や友達を誘ったことなどを問わず語りに伝えます。 そのころ、前野と別れた杉村がグループ広報室に戻り、弁護士の清田が伝えた間野京子の情報を聞かされ、さらに山藤警部から坂本がバスジャック事件を起こし、「御厨尚憲を連れて来い」と要求していることを伝えられます。御厨の現在の居場所がどこかほぼ予想が付いた杉村は睡蓮のマスターの水田大造(本田博太郎)に依頼して彼の運転で早川多恵(冨士眞奈美)が経営するコンビニ店に向かいます。彼女から御厨尚憲の遺体は羽田光昭(長塚京三)によって羽田家の墓に隠されているらしいと聞いた杉村は、早川多恵の息子の案内で墓地に辿り着き、そこに御厨尚憲らしき人物の遺体を発見し、バスジャック犯の坂本に伝えます。杉村の情報に納得した坂本は警察に投降しようとしますが、その直前に警察がバスに踏み込み、坂本の身柄は拘束されてしまいますが、人質の間野京子も無事に救出されます。
2014年09月11日
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早川多恵(冨士眞奈美)は、杉村(小泉孝太郎)、手島(ムロツヨシ)、前野(清水富美加)、坂本(細田善彦)たちを彼女が営むコンビニ店の近くの喫茶店に連れていき、彼女が親しげに「みっちゃん」と呼ぶバスジャック犯の暮木老人(長塚京三)の生い立ちを語り始めます。 「みっちゃん」の本名は「羽田光昭」と言い、早川多恵と同い年生まれの幼馴染みとして畑中村に育ったそうです。彼が10歳のとき、家が火災で喪失し、みっちゃんの家族は彼以外全員焼死してしまいます。噂によると、前年にみっちゃんの祖父が亡くなり、羽田家と祖父の弟との間に遺産相続争いが起こり、その弟(みっちゃんにとっては大叔父に当たります)は羽田家までやって来て暴力事件を引き起こしたために、みっちゃんの父が裁判に訴えたそうです。その直後に羽田家は放火されており、周囲の人々は大叔父に疑いを持ったとのことですが、なんとただ一人生き残ったみっちゃんは遺産争いを起こしたこの大叔父に引き取られることになります。大叔父に育てられたみっちゃんは、高校卒業後に東京で仕事を探すと村を出て行ったそうです。 少年時代は無口だったみっちゃんですが、東京に出てから訓練を重ねて雄弁な青年となり、32歳のとき早川多恵に「俺、先生になるよ」と報告したそうです。彼は勤務している会社で研修を受けて資格を取り、トレーナーになって人を教える立場になったそうです。そんなみっちゃんがチーフトレーナーとして責任を負ったある会社の研修会で参加した生徒を怪我をさせるという事故を起こしますが、そのとき同じ会社の2年先輩のトレーナーだった御厨尚憲が事をまるく収めてくれたため、みっちゃんにとって御厨と言う人物は恩人となったそうです。 その後、御厨とみっちゃんは自分たちでトレーナーの会社を興し、小羽雅次郎を担いで「日商フロンティア協会」を成功させ、得るものをすべて得てから身を退き、その後は御厨とみっちゃんの関係は切れていたそうです。そんなみっちゃんが旅行先で川で溺れかかり、火事で焼死した両親とお兄さんにあの世に渡る三途の川で再会するという臨死体験をしています。そのとき両親から戻って生き直せと言われたそうで、そんな臨死体験は彼にこれまでの生き方を悔い改めさせ、稼いだお金を児童養護施設や犯罪被害者支援団体に寄付するようになり、さらに日商フロンティア被害者の会に参加するなかで、被害者意識のみを持って加害者としての過ちを少しも持たない人物たちに激しい憤りを感じ、「彼らは自分たちが耕した畑に生えた悪い芽なんだ。なんとかしなくては」と思い、プレミア会員の葛原、高東、中藤の三人を罰するハイジャック事件を計画することにしたそうです。 早川多恵が語るこのみっちゃんの改心の話に激しく反発したのが坂本君でした。そんなの欺瞞だ、自らの詐欺行為を警察に出頭してあらいざらい自白すべきだ、日商フロンティアに何の関係もない僕たちを一方的に巻き込むようなバスジャック事件を引き起こして非常な迷惑を受けた、と早川多恵を睨み付けて自分の憤りをストレートにぶつけるのでした。 そのころ、杉村家の菜穂子(国仲涼子)に兄嫁の小夜子(安蘭けい)が訪ねてきて、今多会長(平幹二朗)が無事に北米の旅から帰国したとの橋本(高橋一生)からの連絡を伝え、そのままキッチンでの菜穂子のパイ作りを手伝い始めます。そのとき橋本自身から菜穂子の携帯に電話が掛かって来ました。そのときパイ作りで手が放せない菜穂子に代わり、小夜子が電話に出てしまうが、すぐに菜穂子に代わります。高橋は「いま電話すべきではなかったですね。切った方がいいですね」と言いながらも、「菜穂子さん、菜穂子さん」と思わずつぶやいてしまうのでした。 そんなある日、森元専務(柴俊夫)本人から回顧録続行の連絡を受けた広報室では、表紙などの見本を間野(長谷川京子)が一人で届けることになりますが、その帰り海風市のバス停で坂本と一緒になり、バスに同乗することになりますが……。
2014年09月05日
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菜穂子(国仲涼子)は友人亜子(堂珍敦子)のレストランのオープニングパティーで親しく話し合う杉村(小泉孝太郎)と間野京子(長谷川京子)の様子を見て、席を外したままパーティーには戻って来ませんでした。杉村は菜穂子のことを心配しますが、パーティの会場で彼女を探し出すことが出来ず、仕方なく一人で帰宅するしかありませんでした。 杉村は帰宅後一人で待っていた桃子(小林星蘭)を寝かしつけますが、ほどなく菜穂子も帰宅します。夜遅くまでどうしていたのかと問う杉村に、奈穂子は初めは「靴が足に合わなくて痛かったから新しい靴を買いに行った」と説明するが、杉村の不審は解けません。実際は、菜穂子は橋本(高橋一生)を携帯で呼び出し、月夜の海岸で二人だけで夜遅くまで過ごしていたのでした。 不審を募らせる杉村に奈穂子は急に泣き出し、私はあなたの足を引っぱる存在でしかない、あなたに仕事を辞めさせて私と結婚した時からずっとそうだったと言い出します。杉村はそんなことはない、自分はこれまで充分に幸せだったと彼女を懸命に慰めるしかありませんでた。 翌日、前野メイ(清水富美加)が杉村と手島(ムロツヨシ)を訪ねて睡蓮へやってくる。なんと、「あおぞら」の園田編集長(室井滋)宛てにられてきた小包の送り状に取扱店が「かみくらスーパー」で担当者は「小笠原」と記入されていることを知り、さらにその店は今は栃木県と群馬県の県道沿いのコンビニ店エニィタイムの「畑中前原県道二号店」になっていることが判明したと告げるのでした。前野メイはさらにその店に直接電話を掛け、「小笠原」とは同店の現在の女主人早川多恵(富士眞奈美)の旧姓であり、彼女が暮木(長塚京三)と繋がりがあるらしいと推測しますが、電話で早川は「ごめんなさい、どうぞお送りした荷物をそのままお納めください」と言って電話を切ってしまいます。それを聞いた杉村と手島は、坂本(細田善彦)にも声をかけ、4人でその人物を訪ねることを約束します。 そんなある日、井手(千葉哲也)が杉村をパワハラで労連へ訴えを起こし休職していたが、労連から職場改善の勧告が出され、井手はグループ広報室「あおぞら」から離れ、社長室付きという身分に就くことになります。そんな井手が久しぶりに広報室へとやってくると、話しがしたいと杉村を睡蓮へと呼び出します。そこで井手は、間野と親密になっている杉村に対して「あなたは間野が好きだ」が彼女のように「困ってます」と頼られる女に弱い。彼女は「杉村さんは私に気がある」と周りに言いふらしている。彼女のような女の裏の顔には気を付けるべきだと忠告します。 杉村は手島、前野、坂本と約束した日にコンビニのエニィタイム「畑中前原県道二号店」に出掛け、そこで同店の女主人となっている早川多恵から彼女が暮木老人と幼馴染であり、「みっちゃん」と呼んでいた彼からバスジャック後に人質たちに慰謝料を送ることを頼まれていたことを明かにする。杉村が暮木の実名は詐欺グループ「日商フロンティア協会」の代表の小羽雅次郎(仲雅美)が心酔していた御厨尚憲ではないかとの質問に、彼女はキッパリと否定し、「みっちゃん」の実名は羽田光昭と言い、御厨とは仲間だったが、二人で小羽雅次郎を担いで「日商フロンティア協会」を成功させ、得るものをすべて得てから身を退き、その後は御厨尚憲と「みっちゃん」の関係は切れていた、御厨尚憲とつるんでいたことを後悔していたと二人の関係を明らかにします。
2014年08月26日
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睡蓮に集まったバスジャック事件の被害者たちは、迫田(島かおり)の娘の美和子(安藤玉恵)から迫田が日商フロンティア協会の詐欺にあっていたことを知らされます。さらに迫田が詐欺で金を騙し取られたために母親をクラステ海風で介護の世話を受けられなくなったことを悲しんでいることを知った暮木(長塚京三)が詐欺被害金額の一部を取り戻してあげると言い、後日娘の美和子も迫田の家で暮木から電話でその約束を聞かされます。暮木の言い分では悪いのは詐欺グループの主犯たけけでなく、一緒に詐欺行為に加わって甘い汁を吸い ながら罪に問われることもなく、いまものうのうと暮らしている連中も同罪とのことです。 そして実際に迫田の家に現金700万円入りの小包が送られて来ました。迫田美和子は睡蓮に集まった元人質たちに、母の老後の生活のためにも、送られたお金を警察に届けてほしくないと懇願します。そんな美和子に対し、杉村(小泉孝太郎)たちは、警察には届けずお金をもらわざるを得ないという雰囲気になります。 後日、中小企業経営の田中(峰竜太)から杉村(小泉孝太郎)に元人質たちに集まってもらいたいとの連絡がありました。睡蓮に集まったみんなの前で田中は、自分に送られた現金を全て迫田の婆さんに渡すと言い、それを聞いたバス運転手の柴野(青山倫子)はバスジャック犯人は母子家庭の自分の運転するバスと知って犯行を行ったのだろうと受け止め、彼女に送られた慰謝料全額を自分たち母と娘のために受け取ることを決意したと言います。こうして元人質に送られた現金は警察には届けず、各人の判断に委ねられことになります。杉村も退職届を今多会長(平幹二朗)に渡すことを決意します。 その後、井手(千葉哲也)が杉村からパワハラを受けたという調停申請により、労連による杉村への聞き取り調査が始まりました。 そんなある日、間野(長谷川京子)の住んでいる部屋が何者かに荒らされてしまいます。その日、菜穂子(国仲涼子)が開店準備のために手伝っていた彼女の親友のレストランがオープンし、杉村夫妻はそのお祝いに出掛けます。そのレストランのオープン祝いの場で、杉村は菜穂子に辞表を出す決意と前に勤めていた出版社への復帰を打診とていること、さらに今多会長の家から出ないかと相談を持ち掛けます。そのとき菜穂子は人から呼ばれて席を外します。そのとき偶然杉村は野間京子(長谷川京子)と出会います。二人が親しげに語らっている様子を戻って来た菜穂子が見て、彼女は彼らに声を掛けることもなく疎外感を感じたのか、席を外したままパーティーには戻ってこなかった。そんな菜穂子は橋下(高橋一生)に思わず電話を掛けるのでした…。
2014年08月19日
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杉村(小泉孝太郎)は北見容子(かとうかずこ)からの連絡を受けて、足立(渋川清彦)と連れ立って北見の住宅へ向かいます。そこで、高越(水橋研二)を殺害した真犯人を知るという絵里子(入山法子)から、衝撃の事実を聞かされます。その真実とは!? 高越の子どもを身籠った絵里子は、足立から渡された北見氏の調査ファイルから高越の正体が詐欺師と知って彼とは別れる決意をし、子どもは自分一人で育てると主張する。絵里子の両親も詐欺行為によって自殺しており、絵里子は詐欺行為に対して激しい嫌悪感を持っていたのである。しかし、高越は騙される人間が馬鹿なんだと一笑に付し、ナイフを持ち出して高越との別れを主張する絵里子と言い争いになり、もみ合ううちに絵里子が誤って高越の胸を刺してしまいます。 このとき、高越はなんと絵里子を加害責任を隠蔽するために、胸にナイフを突き刺したまま新聞販売店にいる足立のところに出掛け、人々の前で「殺される」と派手に騒いぐことにより足立が加害者であるように偽装しようとします。真実を語り終えた絵里子は北見容子に付き添われて警察に出頭することを決意します。 杉村は自分の行った行為に苦しむ足立や絵里子の様子を見てつぎのように思います。「正しく生きたいと思う人間はその重荷に耐えきれなくなっていつか真実を語りたくなる。どんなペテロにも振り返って自分を見つめるイエスがいる。だから我々はウソに耐えられない。」 ところで、最近になって園田が職場復帰後、それを祝って広報誌「あおぞら」の編集部一同で中華料理店で飲み会を開いたき、手島(ムロツヨシ)が隣の席に座った園田編集長に慰謝料をどうしたかと質問し、園田は「慰謝料? 私結婚したことないからそんなのもらってないわよ」と頓珍漢な返事がしたことがありましたが、どうやら暮木から園田にも小包で現金が送り届けられていた様です。最近になって運送会社からの小包未配達の通知カードが何通も届いていることを知った園田は、杉村と一緒に運送会社に受取りに出かけ、やはり園田にもかみくらスーパーを発送元にして300万の現金が届いていることを知ります。 それで元人質たちは再び睡蓮に集まるます。そこには、柴野(青山倫子)の呼びかけにより、迫田(島かおり)の娘・美和子(安藤玉恵)の姿もありました。そしてその美和子の口から事件に関する新たな事実が語られます……。
2014年08月19日
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今多コンツェルンの広報誌「あおぞら」の編集長の園田(室井滋)もバスジャック事件の精神的ショックから立ち直り職場に復帰します。園田の職場復帰を祝って広報誌「あおぞら」の編集部一同は野本(犬飼貴文)が手配した中華料理店で賑やかに飲み会を開きます。 このとき手島(ムロツヨシ)が隣の席に座った園田編集長に慰謝料をどうしたかと質問していまが、園田は「慰謝料? 私結婚したことないからそんなのもらってないわよ」と頓珍漢な返事がしています。どうやら暮木から園田には現金が小包でまだ届いていないようです。 解散間近に間野(長谷川京子)が杉村(小泉孝太郎)にそっと「この後、2人だけで少し……」と伝えます。間野と杉村は中華店近くの喫茶店に立ち寄り、間野は杉村に井手(千葉哲也)から職場でセクハラまがいの行為を受けて困っていることを伝えます。井手が間野を仕事にかこつけて自宅に呼んだりするような行為をしていると知った杉村は、井手にそのことを職場で問題にすると約束します。 そのころ、杉村家では娘の桃子(小林星蘭)が急に熱を出し、菜穂子(国仲涼子)は杉村に何度も電話で連絡しますが、杉村は中華料理店での飲み会の最中から携帯の電源を切っていたために連絡を取ることができず、菜穂子は仕方なく自分の運転で桃子を病院へ連れて行こうと玄関を出ますが、そのときたまたま今多嘉親(平幹二朗)の屋敷に来ていた橋本(高橋一生)が菜穂子たちを見つけ、二人を病院まで送ってくれます。そんなことを知らぬ杉村は夜晩くに帰宅しますが、幸い桃子も元気に菜穂子と一緒にすでに帰宅していました。 後日、杉村は亡くなった北見(大杉漣)の息子の司(松本岳)の家を訪れます。北見の墓地で偶然会った足立(渋川清彦)が高越勝巳(水橋研二)を殺害した容疑で指名手配されることをテレビで知ったからです。北見の息子の住む公営住宅には北見の妻の容子(かとうかずこ)もおり、足立には前科があり、就職もままならずホームレスをしていたこと、高越勝巳という人物から声をかけられ住宅ローン詐欺の片棒を担がされたこと、北見は高越のことを調べる約束をし、足立の再就職に力を貸す約束をしたこと、北見が死んだあとで足立が再度やって来たので北見が調べてファイルにまとめた高越による詐欺行為の調査報告書を渡したことなどを知らされます。 広報誌「あおぞら」では今多嘉親(平幹二朗)の会長命令を受けてバスジャック事件調査は編集部の杉村、手島(ムロツヨシ)、椎名(岡本玲)、野本がこの事件のことを一緒に調べ始めます。杉村は、三悪人がかかわった詐欺グループ「日商フロンティア協会」の代表の小羽雅次郎(仲雅美)が英会話教材販売の仕事を始めたころの同僚だったという猿田(桜木健一)に会い、彼から小羽がコンサルタントとしてすっかり心酔しいろいろ教えを受けていたという人物の存在を知ります。杉村はそのコンサルタントこそ暮木老人(長塚京三)ではないかと思い、猿田に暮木の写真を見せますが記憶にないとのことでした。後日、猿田からそのコンサルタントから貰ったという名刺をメールで送信してもらいますが、その名刺には「御厨尚憲」という名前が印刷されていました。 桃子のピアノ発表会当日、杉村は発表会場に参加しますが、菜穂子から「携帯の電源切った?」と聞かれて取り出した携帯電話に北見の妻からのメールが受信されていることに気が付きます。慌てて会場ロビーから北見の妻へ電話をすると、高越の内縁の妻の井村絵里子(入山法子)が北見の家にやってくるとのこと。このことを知った杉村は、そのことが気になり、桃子のピアノ演奏も上の空、演奏終了後すぐに「人の命ら関わる大切なことがある」と菜穂子に言い残してピアノ発表会場から立ち去ります。杉村は、足立にはホームレス経験があり、水・トイレ・供え物などがある墓地に隠れているのではないかと推測し、北見の眠る墓地に直行し、そこで足立を見つけます。 杉村は足立を信じると言い、「人に騙された人間はみんな人を騙すようになるが、あなたは違う。罪を心から悔い改めており、ペテロという人物が自分の誤りを死ぬほど責めて後に聖人とあがめ立てられたように、心から悔い改めたらその罪は許されるだろう」とし、北見の家に殺された高越の奥さんが来るので、真実を直接自分の口で伝えるべくであると説得します。 説得された足立は北見の家で高越の妻に自分はやっていないと告げますが、なんと高越の妻は足立が犯人でないことは分かっていると言い切り、杉村の犯人が分っているのかとの問いにうなずくのでした。 ところで、今回の第5話のラスト近くに、桃子のピアノ発表会終了後、彼女が歩道橋の下を歩いている私服姿の橋下を偶然見つけ、そのことを伝えられた菜穂子が歩道橋の上から歩道を歩く橋下に大きな声で「橋下さん」と呼びかける場面が出てきます。菜穂子から声をかけられた橋下は歩道橋上の菜穂子のもとに向かいます。そのときテレビの画像には歩道橋の階段を数段も飛び越しながら弾むように駆け上がる橋本の全身像とその足の歩みがくっきりと映し出されます。いつもはクールな橋下のこの時の心理を意識的に表現しようとしたのでしょう。そして桃子のピアノ発表についての質問に「とてもお上手でしたよ。感動しました」と感想を述べます。うーん、杉村が桃子がピアノ発表会のときに足立のことを考えて気もそぞろでいたり、桃子のピアノ演奏終了直後に会場を飛び出していったか姿と比較してなんという違いでしょうか。このテレビドラマのその後の杉村夫妻と橋下の関係を予測させるような意味深な場面でしたね。
2014年08月05日
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杉村(小泉孝太郎)は、バスジャック事件の慰謝料として送られてきた現金をすぐに警察に届けることはせず、現金が入れられた宅配便の送り状を手掛かりに、人質仲間たちと一緒に手分けして送り主やお金の出所などを出来る範囲で調査し、またバスジャック犯が言っていた「三人の悪人」すなわち高東憲子、中藤ふみ江、葛原昭のことを調べることにします。 杉村はまた、本来なら警察にすぐに届けなければならぬ差出人不明の現金を警察に黙って隠し持っていることから、勤務している今多コンツェルンに迷惑を掛けるかもしれぬと判断し、義父であり今多コンツェルンの会長でもある今多嘉親(平幹二朗)に退職願を持って会いに行きます。 杉村から人質たちに慰謝料が送られてきたことを聞いた今多嘉親は、杉村の判断でそれを処理すること、退職願もタイミングを見計らって自分の判断でどうするか決めるように言い渡します。また妻の菜穂子(国仲涼子)には慰謝料等のことを全て伝えるように厳命します。 今多嘉親は、杉村からさらに園田編集長(室井滋)がバスハイジャック事件のときに犯人に対して「あたし、あなたのような人、知っているんです」「嫌いだから、すぐ分かるんです、あなたの同類」と言い放ったことや、人質の中でも彼女がもっとも強いダメージを受け、いまも自宅のマンションに閉じこもったきりでいると聞かされ、自分にも責任があると言い出し、園田が新入社員時代に体験した壮絶な過去について語り始めます。 1960年代から70年代の高度経済成長期、自己啓発セミナーと称する社員教育や幹部教育が大流行で、今多嘉親もフェノミナ人材開発研究所というトレー二ングセンターに新入社員の園田たちを預けます。このフェノミナ人材開発研究所のトレーナは研修者の疑問や反論を一切許さず、特に激しく抵抗する園田を反省室という監禁室に閉じ込め、自殺未遂事件を引き起こします。 このような自己啓発セミナーのトレナーたちの一部が後に金の地金購入契約のようなぺーパーカンパニーをでっちあげ、多数の被害者を生み出します。園田が精神的被害にあったフェノミナ人材開発研究所のトレーナもそのような詐欺グループの一人として自殺していることを今多嘉親は後に警察から知らされたそうです。 今多嘉親の推測によると、バスジャック事件を引き起こした暮木一光(長塚京三)もそのようなトレーナ崩れの詐欺グループの仲間だったのではないかと言うのです。 またサブストーリとして広報誌「あおぞら」に左遷された井手正男(千葉哲也)が今多嘉親の右腕として今多コンツェルンの発展に尽くして今は引退している森信宏(柴俊夫)を担ぎ出そうと画策する動きや、詐欺師の高越勝巳(水橋研二)の被害者の足立則生(渋川晴彦)が高越の内縁の妻の井村絵里子(入山法子)に高越の正体を伝えようとする姿も描かれています。
2014年07月29日
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バスジャック事件から数日後、杉村(小泉孝太郎)の許に3百万の現金が入った小包が届きます。バスジャック犯の暮木老人(長塚京三)が人質たちに慰謝料を支払うと言っていましたが、その「慰謝料」かもしれません。その直後、田中(峰竜太)からも5百万が届いたとの連絡がありました。二人は話し合い、まずはバスジャックの被害者に集まってもらい、みんなにも届いたであろう現金についてどうするか相談することにします。 翌日、睡蓮に杉村、田中、坂本(細田善彦)、前野(清水富美加)、柴野(青山倫子)、手島(ムロツヨシ)が集まります。みんなそれぞれ数百万単位の現金を受け取っていました。経営が厳しい工場を抱える田中は、バスジャックで被害にあっているから「当然もらう権利がある」と主張しますが、他のメンバーは犯人から送られた現金を警察に黙って取得することに躊躇します。 そこで杉村は、送られた現金をすぐには警察に届けず、現金が入れられた宅配便の送り状を手掛かりに、送り主やお金の出所などを出来る範囲で手分けして調べようと提案します。それで坂本と前野の若い二人は宅配便の送り状から宅配業者のことを調べ、杉村と手島はバスジャック犯が言っていた「三人の悪人」すなわち高東憲子、中藤ふみ江、葛原昭のことを調べることにします。 杉村はバスジャック犯が言っていた住所を頼りに、「三人の悪人」の一人、高東憲子のことをまず調べ始めます。しかし高東憲子はすでに引っ越していました。周辺住民の口は堅く、何も語ろうとしません。それでも近所の播磨屋という屋号の酒屋の女主人(中尾ミエ)に声をかけられ、バスジャック事件後に実名を晒された高東憲子は週刊誌等の記者たちに追われるように引っ越していったと伝えてくれます。さらに翌日再度手土産持参で播磨屋を訪れたとき、播磨屋では旦那(久保酎吉)も店頭に出てきて、夫婦で高東憲子が「日商フロンティア協会」が起こした詐欺事件の被害者でもあり加害者でもあること、播磨屋夫婦にリゾートホテルの会員権購入をうるさく勧誘したことなどを詳しく教えてくれます。 杉村はさらに暮木老人から「三人の悪人」の一人として名前を挙げられた中藤ふみ江のことも調べますが、現在の住人の話によると半年前にどこかに引っ越したとのことでした。また手島の情報によると、「三人の悪人」の一人である葛原昭はバスジャック事件前に自殺していました。どうもバスジャック犯はそんなことを知ったうえで「三人の悪人」の実名を世間に晒そうとしたようです。暮木老人がバスジャック事件を起こして「三人の悪人」の名前を世間に晒そうとした真の意図はどこにあったのでしょうか。
2014年07月21日
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今夜(7月14日)、TBS系のテレビドラマ「ペテロの葬列」第2回目が放映されました。 犯人の老人(長塚京三)自らが所持していた拳銃による自死とともにバスハイジャック事件は終了しましたが、事件後に杉村(小泉孝太郎)たちは病院に搬送され、病室で山藤警部(金山一彦)と今内警部補(西村元貴)から事情聴取を受けることになります。杉村は、犯人の老人について何か思い当たることはないかと訊かれたとき、取材に一緒に出掛けて事件に遭遇した編集長の園田(室井滋)が、普段はどんなことにも動じることのない彼女なのに、バス内で非常に取り乱し、犯人に「あたし、あなたのような人、知っているんです」「嫌いだから、すぐ分かるんです、あなたの同類」と言い放ったことを思い出します。 そして翌朝、山藤警部らは人質となっていた杉村らを警察署の一室に集めて事情聴取を行いますが、そこには園田編集長の姿はありませんでした。彼女は今回の事情聴取を断固拒否したとのこと。その後、園田編集長は今多コンツェルングループの広報誌「あおぞら」にも休暇を取って姿を見せません。 バスハイジャック事件はマスコミで大きく報道され、まもなく犯人の老人の実名が暮木一光ということが判明します。またネット上には暮木老人が呼びだそうとした「3人の悪人」の高東憲子、中藤ふみ江、葛原昭の名前も暴かれてしまいます。 広報誌「あおぞら」では、園田編集長が事件後に長期休暇を取ったため、臨時で社員を補充することが必要となり、それを杉村から聞いた妻の菜穂子(国仲涼子)が実父で今多コンツェルン会長でもある今多嘉親(平幹二朗)に自分のエステシャンをしていた間野京子(長谷川京子)を準社員に採用するよう頼み込みます。 「あおぞら」で働くようになった間野京子ですが、後日、杉村は菜穂子の身辺警護役の橋本(高橋一生)から、今多嘉親が興信所に間野京子の身上調査を行わせたところ、彼女の前歴が全く分からなかったことを聞かされます。しかし、杉村が間野京子に森信宏(柴俊夫)の家で取材したテープを起こすことを頼んだところ、翌日すぐにそれを上手に文章化して来ます。間野京子は森のこなど何も知らないというので、杉村は大変驚ろきます。また話によると彼女も杉村と同郷の山梨生まれで、杉村の実家と同様に勝沼で葡萄を栽培しているとのことで、杉村はすぐに彼女に信頼と親しみを感じてしまいますが....。 このテレビドラマの第1話の冒頭にレンブラントが描いた「聖ペテロの否認」という絵画が映し出されますが、第2話には喫茶「睡蓮」に飾られたジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「いかさま師」の模造品が映し出され、同絵画中の怪しげな目をした女性と野間京子の映像とが重ねられて終わり、視聴者は自然と野間京子の正体に強い疑念を持つことになります。
2014年07月15日
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今週月曜日からTBS系のテレビドラマとして始まった「ペテロの葬列」の題名にはどのような意味がこめられているのでしょうか。ドラマの第1回目の冒頭に前回のテレビドラマ「名もなき毒」の回想シーンが始まり、その2年後のこととして義父の今多嘉親(平幹二朗)の豪壮な邸宅内の離れに引っ越した杉村一家の幸せそうな食事風景が映し出され、それに続けて17世紀のオランダ絵画の巨匠レンブラントの「聖ペテロの否認」と題された絵画が浮かび上がり、杉村三郎を演じている小泉孝太郎のつぎのようなこの絵に対する解説が聞こえてきます。 そのとき彼らはイエスを捕えて大祭司の家の中に連れてきた。ある下女がペテロをじっと見つめてこう言った。「この人もイエスといました」。しかしペテロは否定して、「女よ、私はあの人を知らない」と言った。雄鶏(おんどり)が鳴いた。イエスは振り向いてペテロをご覧になった。「今日、雄鶏がなく前におなたは私を三度否認するでしょう」と言われたイエスの言葉をペテロは思い浮かべた。そして外に出てペテロは激しく泣いた。 そして妻の杉村菜穂子役を演じている国仲涼子が「ペテロは、罪を犯したことを悔い改めて、その後自ら逆さ磔(はりつけ)の刑に処せられたのよ」との言葉に、杉村が「悔い改めた者の象徴か」と付け足しています。おそらく今回のテレビドラマ「ペテロの葬列」は、冒頭に映し出されたこのレンブラントの絵画「聖ペテロの否認」とその絵に添えられた杉村の「悔い改めた者の象徴か」との言葉の意味が次第に分かって来るのだと思います。
2014年07月11日
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私が購読している地元紙「南日本新聞」に宮部みゆきの連載小説「ペテロの葬列」が2011年から2012年5月3日まで約1年半連載されました。なお他の千葉日報、福島民友、北國新聞、日本海新聞、大阪日日新聞、岩手日報、東愛知新聞、荘内日報、信州日報、北羽新報、苫小牧民報、静岡新聞、佐賀新聞、上毛新聞等にも連載されていたようです。 この連載小説が一冊の単行本にまとめられ、集英社から『ペテロの葬列』と題されて2013年12月20日から発売されましたが、さらに今日2014年7月7日からTBS系でテレビドラマ化されることになりました。 ↓ http://www.tbs.co.jp/petero2014/ 主要なキャストは前回のテレビドラマ「名もなき毒」(2013年7月より放映)と同様に主人公の杉村三郎を小泉孝太郎、妻の杉村菜穂子に国仲涼子、彼女の父親で今多コンツェルン会長の今多嘉親に平幹二朗、杉村が勤務する今多コンツェルングループの広報誌「あおぞら」のメンバーとして編集長の園田瑛子を室井滋、編集員の手島雄一郎をムロツヨシ、喫茶「睡蓮」のマスターの水田大造を本田博太郎か演じています。 今回テレビドラマ第一話は、杉村が今多コンツェルングループの広報誌「あおぞら」の園田、手島と一緒に千葉市のある町での取材の帰りにバスジャックに遭遇するところから始まります。彼らは今多嘉親の右腕として今多コンツェルンの発展に尽くして今は引退している森信宏(柴俊夫)の自宅に取材に出掛け、その帰りに佐藤一郎と名乗る謎の老人(長塚京三)が引き起こしたバスジャックの人質となってしまったのです。 このバスには、広報誌「あおぞら」の三人以外にバス運転手の柴野和子(青山倫子)と乗客の老婦人・迫田とよ子(島かおり)、中小企業経営者の田中雄一郎(峰竜太)、若い女性の前野メイ(清水富美加)、青年の坂本啓(細田善彦)、そしてバスジャック犯の合計8人が乗り合わせており、バスジャック犯は乗客を人質にして3人の「悪人」を呼び出すことを警察に要求します。バスジャック犯はこの「三人の悪人」のことを「世の中の一部の人たちにとって大事な人です」とも言い、その「3人の悪人」の氏名と住所を警察に伝えます。彼らの氏名は高東憲子、中藤ふみ江、葛原昭でした。 今回のドラマはこのバスに乗り合わせた8人の人物たちの間で繰り広げられる緊迫した心理劇が巧みに描かれていました。しかし、犯人が人質には後で慰謝料を払うから望みの額を言ってもらいたいと言い出したこともあり、雰囲気は次第に和らぎ始め、人質の間に笑い声さえ生じるようになります。人質たちはいつのまにか犯人の思うがままに操られていたのです。 このバスジャック事件そのものは、「3人の悪人」中の誰一人顔を見せることなく、警察が突入直後に犯人の自死によってあっけなく解決してしまいます。でも視聴者には勿論たくさんの謎が残されますね。
2014年07月07日
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宮部みゆきの『桜ほうさら』(PHP研究所、2013年3月)を原作とする時代劇ドラマ「桜ほうさら」が今年(2014年)1月1日にNHK総合で放映されました。私は、これまでに視聴した宮部みゆきの小説を原作とするテレビドラマはほとんど全てと言っていいほど先に原作を読んでから映像化された作品を視て来たのですが、今回のNHK時代劇ドラマ「桜ほうさら」は原作を未読のまま今年の正月に視聴しました。なお、このテレビドラマのあらすじは、NHKの同番組の公式サイトにはつぎのように紹介されていました。「賄賂を受け取ったという、身に覚えの無い罪を着せられ切腹した父の汚名をすすぐため、江戸深川で長屋暮らしを始めた若侍・古橋笙之介(玉木宏)。/田舎者のお人好しで、からきし剣の弱い笙之介が、個性は強いが情に厚い江戸の人々に助けられながら、父とまったく同じ筆跡の偽文書を作った犯人捜しに、江戸の町を奔走する。/笙之介は、桜の化身とも言うべき謎の女性・和香(貫地谷しほり)と出逢い解決の糸口をもらう・・・」 このNHK時代劇ドラマは、脚本は大森美香、演出は片岡敬司で放映時間がコマーシャルなしで88分というもので、江戸深川辺りの風景がとても丁寧に描かれており、長屋暮らしの貧乏浪人で気弱な古橋笙之介(玉木宏)と顔にあざがあるためにひっそりと家に籠って生きて来た和香(貫地谷しほり)との純愛ドラマとしてもしみじみとした情感があり、さらに江戸時代を舞台にした時代劇ミステリードラマとしても非常な意外性があり、ドラマの展開に自然と引き込まれて視続けておりました。 なおミステリードラマとしての意外性と言えば、出演者で強く印象に残ったのが風間杜夫が演じた押込御免郎と北大路欣也が演じた搗根藩の江戸留守居役の坂崎重秀であり、また笙之介の兄の古橋勝之助を演じた橋本さとしでした。 押込御免郎は飲んだくれの貧しい読み物作家ですが、よほど悲惨な体験をしたのか世間の救いようのない醜い悪事ばかりを赤裸々に描いています。彼は自分の書いた読み物を深川で書物問屋をしている村田屋治兵衛(六角精児)に持ち込みますが、村田屋はそのままでは酷過ぎて売り物にならないと判断して長屋暮らしをしている古橋笙之介(玉木宏)に手直しを頼みますが、そんなことから古橋笙之介と押込御免郎という世間に対する見方が全く異なる二人が知り合いになります。しかし古橋笙之介と押込御免郎との間には両人とも知らなかった意外な関係があったのです・・・。 北大路欣也が演じた坂崎重秀は、搗根(とうがね)藩の江戸留守居役ですが、笙之介の父親の古橋宗左右衛門(桂文珍)が身に覚えのない賄賂の罪で切腹した事件の再調査のため、笙之介を江戸に呼びます。しかしこの人物が古橋宗左右衛門の賄賂事件の再調査をその子の笙之介に命じた意図には隠された意外な目的があったのです・・・。 橋本さとしが演じた笙之介の兄の古橋勝之介は、搗根藩の道場の師範代をしていた剣の達人で、「搗根の麒麟児(きりんじ)」と呼ばれた人物ですが、搗根藩の小納戸役という小身身分の古橋宗左右衛門を父親としたことに出世の限界を非常に感じており、ギラギラとするような自負心と出世欲の持ち主ですが、父親の賄賂事件に意外な関わりを持っていたのです・・・。 このような人物たちの織りなすミステリアスな関係がとても興味深い時代劇テレビドラマでした。
2014年01月03日
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宮部みゆきの『誰か Somebody』と『名もなき毒』を原作とするTBS系「名もなき毒」が7月8日から9月16日まで毎週月曜日午後8時に放映されました。 前にこの時間帯に放映された宮部作品を原作とする「パーフェクト・ブルー」が今一つだったこともあり、今回の「名もなき毒」もあまり期待せずに見始めたのですが、どうしてどうして、これまで見た彼女の作品を原作化したテレビドラマとしてはNHKの「茂七の事件簿」シリーズに匹敵する優れた出来栄えだったと思います。 主役を演じた杉村三郎役の小泉孝太郎が原作のイメージにピッタリの好演技でしたし、 梶田聡美(深田恭子)、梨子(南沢奈央)姉妹のなんとも複雑な人間関係もよく描かれていました。原田いずみ役の江口のりこの狂いぶりは凄過ぎるくらいリアルでした。また地味ですが貧しくて孤独な青年役を演じた君嶋麻耶の幸少ない姿にも強い印象を与えられました。それから今多コンツェルングループの広報室編集長の園田瑛子(室井滋)や喫茶店睡蓮マスターの水田(本田博太郎)等も脇を固めて好演していました。 全ての人間の心の奥深くに存在する「名もなき毒」を描いた宮部みゆきの原作を今回のテレビドラマは見事に映像化し、視聴者の心の奥底にずしりと重いものを残したと思います。視聴率としてはあまり高いものではなかったようですが、このテレビドラマの放映時間帯が月曜午後8時ということを考えればそれも仕方がないと思います、いや、それよりよくもこの時間帯にこのような作品を放映したものだとテレビ局の判断に驚ろかされ感心させられました。 なお、宮部みゆきの原作『名もなき毒』については、拙サイト「私の宮部みゆき論」に「『名もなき毒』に見る身体に潜む毒」と題してアップしています。
2013年09月17日
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TBSテレビ系で12月17日(月)放送の「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第11話はこの連続テレビドラマの最終話でした。前回のラスト近く、企業の危機管理コンサルタントを請け負っている植田涼子(古手川祐子)と彼女にダーティな仕事を任せている会社幹部の幸田(団時朗)は、蓮見探偵事務所に潜り込ませていた君塚奈々(平山あや)の行動が探偵事務所のメンバーに察知されたと知って蓮見糸子(高橋春織)を誘拐し、探偵事務所の所長の蓮見杏子(財前直見)に電話を掛けて指定の場所に佳代子(瀧本美織)と一緒に来るよう連絡してきます。二人は老犬マサと一緒に指定された倉庫に行きますが、そこで縛られた糸子を発見します。さらに床に縛られて転がされている結城雅之(山崎銀之丞)の姿も目にします。そこに植田涼子と彼女の手下たちが姿を現し、さらに植田涼子の側には君塚奈々もいるのでした。事実を隠蔽するために蓮見親子のみならず結城雅之までも焼き殺そうとする植田涼子にマサが果敢に飛びつきますが、拳銃で撃たれてしまいます。さらに植田涼子は君塚奈々に拳銃を渡して彼女に蓮見親子を殺させようとするのでした……。 倉庫の緊迫した状況で結城雅之が「こいつらは純粋な子供たちを実験道具にしていた」と叫びますが、植田涼子の手下に撃ち殺されてしまいます。さらに植田涼子から蓮見親子を銃殺するよう迫られて躊躇する君塚奈々に、蓮見杏子が「奈々の父親は植田涼子によって無実の罪を着せられて自殺しており、困窮した奈々を仲間に引き込んだのだ」と植田涼子の手口を暴露します。そのため奈々は植田涼子に銃を向けますが、植田涼子の手下たちに撃たれてしまいます。そんなときにBAR「ラ・シーナ」のマスター椎名悠介(寺脇康文)が蓮見親子を救うために諸岡進也(中川大志)と一緒に駆けつけて乱闘になり、さらに刑事の刑事の藤永(渡辺哲)と宮本(水上剣星)も加勢し、植田涼子たちを逮捕してしまいます。銃撃されて傷ついた老犬マサが倉庫から抜け出し、倉庫のシートの一部分の「アサクラ物」を口に咥えてBAR「ラ・シーナ」に戻って来たので、蓮見親子の居場所が分かったのです。 植田涼子たちは逮捕後も蓮見浩一郎(船越英一郎)殺害については口を割りません。またベテラン刑事の藤永も厳しく追求することをしません。それで加代子たちは仕方なく自分たちで「パーフェクトブルー」という謎の言葉が関わっている蓮見浩一郎殺害を調べて行くことにします。加代子たちは調査を継続する中で、パーフェクトブルーとは朝倉製薬という大手薬品会社が新種のドーピング剤で、諸岡克彦たちが少年野球時代に知らないで人体実験に使われていたことを知ります。 さらに加代子たちは今回の事件に隠された悲劇的な真実を知ることになります。結城雅之からドーピング剤による人体実験のことを知らされ脅迫された諸岡克彦(野村周平)が警察に真実を伝えようとしたため、ドーピング問題が絡んだスキンダルとして息子の名声が台無しになることを恐れた克彦の両親の諸岡三郎(近藤芳正)と久子(菊池麻衣子)が反対し、階段でもみ合って克彦が階下に落ち、打ち所が悪くて死んでしまうのですが、人体実験の真実をあくまでも隠蔽したい克彦の両親はとんでもない方法で隠蔽工作を実行していたのでした。 なお、朝倉製薬によるドーピング剤による人体実験の犯罪は植田涼子が固く口を閉ざしているため、物証もないままもみ消されようとします。しかし、蓮見浩一郎が後の証拠としてそのドーピング剤の入った容器を綿で作った骨のオモチャの中に隠していました。なんとその骨のオモチャを老犬マサが口に咥えて佳代子に差し出し、彼女が見つけ出したので朝倉製薬による犯罪事件の全貌も発覚するのでした。 今回の最終回は慌ただしく謎の全貌を解き明かし、事件解決させており、老犬マサの活躍もあまりにも出来すぎており、いささかミステリーとしての謎解きの面白さに欠けていたように思われ残念でした。 なお、私は宮部みゆきのこの『パーフェクト・ブルー』という小説について、拙サイト「やまももの部屋」に「宮部みゆき『パーフェクト・ブルー』に見る大胆な試み」と題してつぎのようなことを書いています。「犬を語り手に設定し、製薬会社の新薬開発競争や入学者獲得をめぐる私立高校間の競争を殺人事件と絡めて展開させるなど、とても野心的なミステリー作品だとは思ったのですが、それまで読んだ宮部作品の中で一番低い評価を与えざるを得ませんでした。特に、メインの諸岡克彦殺害事件に関して、『犯人』の隠蔽工作の方法にどうしても納得がいきませんでした。あの『犯人』にはあんな無惨なことや卑劣なことができるはずがないと思ったのです。意外な『犯人』が語る告白内容に対して、何とも言えぬ後味の悪さを感じてしまいました。」 今回のテレビドラマは原作に対してかなり自由に手直しを加えていますが、諸岡克彦殺害事件こそ一番に大胆で大幅な手直しをしてほしかったですね。 なお、拙サイト「映像化された宮部みゆき作品」に「TBS系テレビドラマ 宮部みゆき『パーフェクト・ブルー』を一つにまとめてアップしましたので、興味がございましたらご覧下さい。
2012年12月17日
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TBSテレビ系で12月10日(月)放送の「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第10話では、BAR「ラ・シーナ」で働いている諸岡進也(中川大志)に父親の諸岡三郎(近藤芳正)から「山瀬浩(黒木辰哉)に会いに行った克彦(野村周平)から妙な電話があった。『まだ終わっていなかった。助けてくれ』との連絡があってから以降ずっと行方が分からない」との電話が入ります。 諸岡進也と加代子(瀧本美織)が、もしかしてと以前打者人形焼却事件のあった倉庫に駆けつけると、そこには打者人形ではなく諸岡克彦のまだ炎を上げている遺体がありました。病院に駆けつけた諸岡克彦の母親の諸岡久子(菊池麻衣子)は、克彦の死を告げられて錯乱し、弟の進也の姿を見て、「なんであなたが死ななかったの」と残酷な言葉を彼に投げつけるのでした。 進也と加代子は刑事の藤永(渡辺哲)と宮本(水上剣星)から、死因はおそらく頭部への打撲で、撲殺された後に倉庫へと運ばれ火を付けられていると聞きます。このことを聞いた進也は、犯人は山瀬浩に間違いないと思い、彼の部屋に駆けつけますが、そこには「あいつを殺して俺も死にます」との遺書を残して風呂場で死んでいる山瀬浩の遺体がありました。 警察では、諸岡克彦殺害事件の犯人は山瀬浩と断定しますが、山瀬の母親の佳子(安藤麻吹)が蓮見探偵社を訪れ、「息子は諸岡克彦への恐喝事件をとても後悔していた。克彦くんからコーチを頼まれてとても張り切っていた。そんな息子が克彦くんを殺すはずがない。息子の疑いを晴らして欲しい」と調査を依頼してきます。こんな山瀬の母親の依頼に対し、探偵事務所所長の蓮見杏子(財前直見)は「結果はどうなるか分かりませんが、その調査を引き受けましょう」と言います。 蓮見杏子は、死んだ克彦と山瀬の2人がかつて属していた少年野球チームのメンバーだった宗田淳一(坂口湧久)の母親の宗田八重子(奥貫薫)からその少年野球チームの練習の様子を写したDVDの映像を見せてもらいます。その映像には、練習の合間にグランドキーパーの結城雅之(山崎銀之丞)が配った飲み物を仲良く飲んでいる克彦、山瀬、そして淳一の姿が写っていました。「パーフェクトブルー」という言葉はこの結城雅之が淳一の焼香のときに口に出した言葉だそうです。なお、宗田八重子の話によると、淳一は突然食事が喉に通らなくなり、手足が痺れ、病院で肝臓疾患と診断されて急死したとのことでした。そう言えば、山瀬浩も全く同様の症状で苦しみ、高校野球部を退部しています。 また蓮見杏子は、宗田八重子の息子の淳一が肝臓疾患として治療を受けていた川澄病院について杏子の夫の浩一郎(船越英一郎)が医療ミスと関係があるかもしれないと調べていたことも知ります。蓮見杏子は「パーフェクトブルー」という謎の言葉はこの少年野球チームのDVDに重要な手掛かりがあるかもしれないと判断し、それを宗田八重子から借りることにします。 ところが蓮見杏子が宗田八重子から借りたこのDVDが盗まれてしまいます。「ラ・シーナ」のマスター椎名悠介(寺脇康文)は、このDVDのことを知っている人物は蓮見探偵事務所にいるに違いないと推理し、盗聴装置を見つけ出し、君塚奈々(平山あや)が杏子たちの様子を誰かに伝えていることを突き止めます。探偵事務所のメンバーに追求され、君塚奈々は植田涼子(古手川祐子)という人物から頼まれて蓮見杏子の動きを報告していることを自白します。 君塚奈々の父親は会社の金を横領し、彼女の両親は多額の借金を抱えて自殺し、一人残された奈々は借金に困窮して植田涼子に雇われることになったとのことです。 しかし、君塚奈々の行動が探偵事務所で察知されたと知った植田涼子と会社幹部の幸田(団時朗)は蓮見糸子を誘拐し、杏子に電話を掛けて指定の場所に佳代子と一緒に来るよう伝えます……。 マスター椎名悠介の話によると、植田涼子は危機管理コンサルタントをしているそうですが、会社幹部の幸田の依頼を受けて会社の秘密を守るためにかなり危ない仕事を行っているようで、佳代子の父親の蓮見浩一郎を自殺に見せかけて殺害もしているようです。そんな彼女は「パーフェクトブルー」という謎の言葉を知っているようです。来週がこのドラマの最終回のようですが、「パーフェクトブルー」という言葉に隠された謎の全貌が明らかになることと思われます。
2012年12月11日
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TBSテレビ系で12月3日(月)放送の「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第9話は、フェアプレイの精神が尊ばれるはずの高校野球で、手段を選ばぬ醜い工作が行なわれている様子が描かれています。 鶴和高校の投球練習用打者人形が盗まれ燃やされる事件が起こります。その直後、BAR「ラ・シーナ」のアルバイト・諸岡進也(中川大志)の母の諸岡久子(菊池麻衣子)が、蓮見探偵事務所に調査依頼に来ます。彼女の話によると、進也の兄の克彦(野村周平)は鶴和高校のエースなんですが、彼に「甲子園に出るな。おまえが炎に焼かれることになる」との脅迫文が送られてきたとのことです。諸岡久子としては、こんな脅迫事件が警察に知られるとスキャンダルとして騒がれ、甲子園の出場停止を言い渡されてしまう可能性もあるのではないかと非常に心配し、極秘に打者人形焼却事件の犯人を探して欲しいというのです。 諸岡久子が蓮見探偵事務所に調査依頼に訪れた同時期に、BAR「ラ・シーナ」でアルバイトをしていた諸岡進也が失踪していました。それで加代子(瀧本美織)たちは「ラ・シーナ」のマスター椎名悠介(寺脇康文)から諸岡家の複雑な家庭事情を聞くことになります。諸岡家の兄の克彦は野球の優れた投手として親からも期待されているのに、特にこれといった才能のない弟の進也への親の関心は薄く、そんなことから非行に走ったこともあったというのです。 加代子たちが打者人形焼却事件の犯人を探しているとき、妹の糸子(高橋春織)から進也が克彦から金を受け取っている姿を目撃したという情報を得ます。さらに加代子が克彦が通う鶴和高校で調査中に、なんと進也らしき人物が野球部の部室近くで見咎められ、逃げ出す姿を加代子自身が目撃します。諸岡進也が兄の野球活動を妬んだり恐喝したりしているのでしょうか……。 しかし、加代子は進也から意外な事実を聞かされます。球練習用打者人形を盗んで焼却し、諸岡克彦を脅迫していた人物は、3ヵ月前に鶴和高校野球部を退部し高校も中退していた山瀬浩(黒木辰哉)という克彦の親友だというのです。彼も投手として甲子園を目指していましたが、交通事故による手足の痺れから鶴和高校を去っており、妬みからでしょうか、親友の諸岡克彦に対する卑劣な脅迫行為を始めたのだと言うのです。しかし山瀬浩の病んだ心を利用してスキャンダル事件を引き起こそうとする黒幕がいるようです。 私は、今回の鶴和高校で起こった事件が「パーフェクトブルー」の謎と直接関連があるのかと大いに期待して見ていたのですが、それは違ったようでした。しかし、この事件の解決後、蓮見杏子(財前直見)が「ラ・シーナ」のマスター椎名悠介と宗田八重子(奥貫薫)の家を訪れ、8年前に夫の蓮見浩一郎(なんと船越船越英一郎)が新聞記者として宗田八重子の息子の淳一が肝臓疾患のために川澄病院で治療を受けた時に不審死したことについて取材に来ていたことを伝えられます。そして「パーフェクトブルー」という言葉をフリーライターの結城雅之という人物が淳一のために焼香に来たときに口に出していたことも教えてくれます。この結城雅之という人物は淳一たちが使っていた野球場のグランドキーパーをしてくれたそうです。さらに淳一が加わっていた少年野球チームには諸岡克彦や彼の同級生の山瀬浩たちがいたことも知ることになります。このドラマは後2回で終りを迎えるようですが、「パーフェクトブルー」の謎の全貌がいよいよ解明されそうですね。
2012年12月03日
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TBSテレビ系で11月26日(月)放送の「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第8話では、蓮見探偵事務所に調査依頼に訪れたのはブライダルプランニング会社「フォーブライダル」を経営する麻生亜紀恵(横山めぐみ)でした。彼女の調査依頼内容は、夫の麻生保(堀部圭亮)が1年ほど前に更年期障害と診断され、勤めていた森末会計事務所を依願退職し、家事を手伝っていたのが、夫婦の些細な言い争いから保が彼の印を押した離婚届を残して失踪してしまったので、彼を探し出してほしいと言うのです。 加代子(瀧本美織)は麻生保が勤めていた会計事務所の所長の森末幸司(中丸新将)から話を聞くことにしますが、保は病気のために仕事のミスが多くなり、自ら退職願を出したとのことです。保が最後に宿泊していたホテルには2週間分の料金を支払っており、荷物は置いたままになっていました。加代子は妻の麻生亜紀恵にも同席してもらって残された鞄を調べると、亜紀恵の戸籍謄本と離婚届が入っていました。しかし、離婚届は既に家にも残されていたため、何故2通なのかという疑問が残ります。 加代子たちが失踪した麻生保を探し出そうと調査を開始しますが、その保が車の中で睡眠薬と練炭を使って自殺した姿が発見されます。加代子には、麻生保が2週間何をしており、またどうして亜紀恵の戸籍謄本と2通目の離婚届けを持っていたのかについて強い疑問が残りました。それで彼女はさらに調査を継続しますが、その過程で保が亡くなる直前に亜紀恵が幼い頃に失踪した彼女の母親の消息を調べていたことも知ります。 自殺の件を調べていた刑事の藤永(渡辺哲)と宮本(水上剣星)は、亜紀恵の会社が3千万円の融資を銀行から断られていたということと、会社が受け取り先となった7千万円の保険が保に掛けられていたことを知ります。保の死は亜紀恵による練炭自殺を装った保険金詐欺事件なのでしょうか。また西園寺ホテルの不正会計についてを調べていた未知子(根岸季衣)と瑠璃子(麻生かほ里)は、同ホテルで酒井大輔(累央)という人物が亜紀恵の会社の三沢紀子(中島ひろ子)に接触して不正を行っている事実も察知し、さらに麻生保らしき人物が三沢紀子と口論をしていてたという情報も得て来ました。保の自殺事件の背後に複雑な謎が秘められているようです……。 ところで、蓮見杏子(財前直見)は、彼女が出演している番組宛てに宗田八重子からメールが届いていることを知らされます。以前、探偵事務所に手紙を出したが返事がなかったので番組に直接メールしたという内容でした。杏子はすぐに宗田八重子にケータイで連絡を取り、会うための時間と場所を相談しています。その様子を君塚奈々(平山あや)も目撃しており、杏子が探偵事務所から外出する姿を見たとき奈々はすぐに誰かに連絡を取っています。今回のドラマのラストでは、おそらく宗田八重子に会うために街を歩いている蓮見杏子の姿が映し出され、なんと杏子の後ろをBARラ・シーナのマスター椎名悠介(寺脇康文)が追跡しています。そして杏子が青信号になった交差点を渡ろうとした時、猛スピードで走って来た2台の自動車に危うく惹かれそうになります。しかし、その危機を助けたのはマスターでした。君塚奈々やマスターの悠介はそれぞれどのような意図から杏子の動きを追っているのでしょうか。
2012年11月27日
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TBSテレビ系で11月19日(月)に放送された「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第7話には児童虐待問題が出て来ます。 蓮見探偵事務所へ児童相談所の相談員の前川靖子(田島令子)がバイク事故で死亡した水沢夏美(いせゆみこ)のことで調査依頼に訪れます。前川靖子の話によると、水沢夏美は、玲奈(山田奈々香)の誕生後、すぐに離婚しアルコール中毒状態のなかで仕事もせずに娘の玲奈を虐待していたので、前川靖子たち児童相談所は玲奈を母親の水沢夏美から引き離し、施設で一時保護することにしました。そんなときに水沢夏美はバイク事故で死亡したのです。 水沢夏美の死亡事故の加害者は中山雄一(鶴見辰吾)という人物で、彼の自供によると夏美が信号を無視して突然飛び出し、バイクの前に立ちはだかったとのことです。しかし、児童相談所の相談員の前川靖子には夏美が自殺しようとしたとは考えられません。 玲奈に対する児童虐待を深く反省した水沢夏美は酒を断ち、パートの仕事にも就いて玲奈と暮らせるようになるために必死だったというのです。そんな夏美は娘の誕生日を目前に控えプレゼントのマフラーを編んでいる途中だったそうです。事故のあった夜、夏美は何をしていたのか? このままではひき逃げ犯の自供通り、自殺と判断されても不思議でない為、前川靖子としては真実を知りたいと、加代子(瀧本美織)たちに調査を依頼したのです。 加代子は刑事の藤永(渡辺哲)、宮本(水上剣星)に事故の件を相談すると、特別の取り計らいで事故の遺留品を見せてもらえることになります。その遺留品のなかに黄色に黒の斑点が浮き出た陶器の欠片やいま修理中という壊れたICレコーダーもありました。 自首した中山雄一はこれまで逮捕歴もない真面目なサラリーマンですが、探偵事務所の三浦美智子(根岸季衣)が新たにもたらした情報によると、中山の息子の康夫(大和田健介)が親子共にバイク好きで、事故を起こした父親のバイクに乗ることもあったことと、大手のASUKAモータースに就職が内定してていたことに加え、腕にケガしていることも突き止めて来ました。 加代子たちは、父親の中山雄一がASUKAモータースに就職が決まった息子の康夫のために、身代わりで自首したのでは?という見解を強め、改めて調査に乗り出すことになります。しかし、遺留品の陶器の欠片と修復されたICレコーダーに録音されていた声から意外な事実が判明します……。 さて、今回のドラマのラストでは、蓮見杏子(財前直見)が「パーフェクトブルー」という謎の言葉の意味を知ろうと接触していたテレビ局のプロデューサーの鹿沼暁(吉家章人)が何者かによって殺されたようです。しかし、報道では自殺したとのこと。いよいよ「パーフェクトブルー」の謎の全貌が本格的に解明されていきそうですね。
2012年11月19日
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TBSテレビ系で11月12日(月)に放送された「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第6話には結婚詐欺グループが出て来ます。 蓮見探偵事務所の調査員の一人である長嶋桃子(白鳥久美子)が探偵事務所のみんなに彼女が商社マンの甲斐英樹(松尾敏伸)からプロポーズされたことを発表します。桃子の話によると「M企画」というイベント会社が主宰するカップリングパーティーで彼女は甲斐英樹と知り合ったとのことです。 桃子の話から「M企画」のことが話題になっていたとき、葉山江利子(風祭ゆき)がなんとその「M企画」の社員の玉井恵介(細田よしひこ)の調査依頼に蓮見探偵事務所を訪れます。葉山江利子は娘の夕紀(MEGUMI)の結婚相手がM企画」の社員である玉井恵介(細田よしひこ)という人物だが、どういう人物だか分からないので身元調査をしてもらいたいと言うのです。 この「M企画」には結婚詐欺疑惑の悪い噂もあるようです。それで蓮見加代子(瀧本美織)は長嶋桃子と一緒に「M企画」のカップリングパーティーに参加して潜入調査を行います。ところがこのパーティー会場で加代子たちは刑事の藤永環(渡辺哲)と宮本俊一(水上剣星)に出くわします。「M企画」の社員の西宮一真(大口兼悟)が遺体で発見されたため、報告と事情聴取に来たとのことです。 そんなとき、葉山夕紀が探偵事務所を訪れ、意外な事実を伝えます。彼女の話によると、結婚相手の玉井恵介は7年前に葉山家の長男であった健次郎(明石鉄平)を殺した加害者であることを正直に伝えていると言うのです。泥酔した健次郎が路上で玉井恵介と揉み合いになり、玉井が健次郎を振り払ったとき打ちどころが悪くて健次郎を死なせてしまったと言うのです。 「M企画」で殺人事件が起こった後、「M企画」の関係者全員が姿を隠してしまい、同じく玉井恵介から夕紀への連絡も途絶えます。「M企画」で起こった殺人事件に葉山夕紀の結婚相手の玉井恵介は関わりがあるのでしょうか。西宮一真の遺体からは玉井恵介の指紋が多数検出させているとのことです……。 ところで、加代子が「M企画」について調査をしている過程で、若い刑事の宮本俊一(水上剣星)が彼女の眼の前でベテラン刑事の藤永環(渡辺哲)に「あなたも7年前の事件を引きずっているではありませんか。君のお父さんはただの自殺ではないのではないかと…」と口をすべらせており、今回のドラマのラストでは蓮見探偵事務所を訪れた刑事の藤永に糸子が「お願いかあります。もし何かお父さんのことで分かったことがあればお知らせください」と深々と頭を下げています。そして藤永刑事は蓮見家の仏壇の前で拝みながら「どうか許してくれ」とつぶやきます。加代子の父の蓮見浩一郎は「パーフェクトブルー」という謎の言葉を残して自殺したことになっていますが、本当に自殺だったのでしょうか。また刑事の藤永は蓮見浩一郎の死亡事件とどのような関係があったのでしょうか。「パーフェクトブルー」の謎の全容を早く知りたいですね。
2012年11月12日
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TBSテレビ系で11月5日(月)に放送された「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第5話は宮部みゆきの連作短編集『心とろかすような マサの事件簿』の第1話「心とろかすような」を原作にしています。 蓮見探偵事務所の所長をしている蓮見杏子(財前直見)は、脚本家の御園雅人(菅原大吉)が書いたテレビドラマにすっかり魅せられていました。今夜も、その御園雅人が脚本を書いたテレビドラマに男(伊吹吾郎)が傷だらけの少女に「しばらくの辛抱だよ、俺が父親の代わりになるから…」と、いいながら車のトランクへと隠す場面が映し出されていました。ところのその夜、このドラマとそっくりよく似た話が杏子の次女の糸子(高橋春織)の身に起こります。 糸子が高校の文化祭に展示する絵を描くために遅くなると言っていたのですが、いつまでたっても帰ってきません。高校に連絡すると夜の10時頃には出ているというのですが、糸子の携帯には繋がりません。杏子たちはBAR「ラ・シーナ」にいるのではないかと店を訪ねてみましたが、マスターの椎名悠介(寺脇康文)も知らないといいます。深夜になってやっと憔悴した感じの糸子が諸岡進也(中川大志)に抱きかかえられるようにして店へ帰って来ます。 糸子に事情を聞くと、帰る途中、車のトランクに隠れてる少女(熊田胡々)を見かけ、危ないから注意しようとしたら何者かにスタンガンらしきもので襲われ、倒れていたところを進也に助けられたというのです。 まるで先ほど杏子たちが観ていた御園雅人のテレビドラマからパクったような話です。ですから杏子のみならず姉の加代子(瀧本美織)も心から信じる気にはなれません。 ところが翌日になって、蓮見探偵事務所に脚本家の御園雅人の妻の御園明子(杉田かおる)が夫の浮気調査を依頼しにやってきます。御園雅人が書いたドラマのストーリーは、妻に捨てられた夫が、家庭内暴力に苦しむ少女と出会い、擬似親子愛を深めて、自分の人生を捧げるという内容。まるで妻へのあてつけの様な内容の脚本に加え、「このドラマが私の全て」と雑誌の取材でも語っているのです。妻の明子との間には子供も生まれず、夫婦は別居状態にあり、さらに夫の御園雅人の携帯電話には「みずえ」という知らない女の着信履歴があり、多額の貯金を下ろしていることから、妻の明子は夫の御園雅人には女がいて貢いでいるのだろうと疑惑を持ったのです。 しかし、この明子も専業主婦でありながら家事はせず、ハウスキーピング会社に頼りきりで外食ばかりのようです。既に離婚話も持ち上がっているため、どうせ別れるなら慰謝料を多くとるために浮気の証拠は揃えておきたいというのが依頼の動機でした。そこで蓮見探偵事務所では、加代子が明子から依頼された調査を担当することになります。また杏子は、糸子がスタンガンらしきもので襲われた事件の真相を究明しょうとする糸子と諸岡進也の調査をベテランのミミさんこと三浦美智子(根岸季衣)にバックアップするよう依頼します。 糸子たちは、少女が隠れていた車の持ち主の植草篤(モロ師岡)をつきとめ、その行動を追います。そんなとき、スクープ雑誌の編集者の松井千鶴(笠木泉)か殺害され、容疑を掛けられた脚本家の御園雅人が謎の自殺を遂げてしまいます。そして、御園明子が蓮見探偵事務所に現れ、夫が死んだので全財産は自分のものになるからもう浮気調査の必要は無いと言って依頼が取り下げてしまいます。 しかし、殺された松井千鶴が御園雅人に対するスクープ記事用に撮った写真の中に、後でデータファイルから抹消された写真に糸子がスタンガン事件のときに車のトランクの中にいた少女と御園雅人とが一緒に写っているものがあることから、加代子はその少女が白鳥みずえ(熊田胡々)であり、糸子のスタンガン事件のとき、この白鳥みずえが隠れていた車の持ち主の植草篤もこの少女と関わりがあることを割り出します……。 ところで、今回も探偵事務所の調査員の君塚奈々(平山あや)が怪しい行動を示しますよ。彼女は前に蓮見探偵事務所に届いた差出人「宗田八重子」の蓮見杏子宛の手紙を勝手に自分の引き出しに入れ、後でメールの指示に従ってそれを破棄したはずだったのですが、実際には宗田八重子の手紙をコピーしていたようで、こっそりと後で読んだりしています。その文中には「私の息子淳一の」とか「蓮見浩一郎さんという新聞記者……」といった文字が見られます。
2012年11月05日
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TBSテレビ系で10月29日(月)に放送された「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第4話は宮部みゆきの連作短編集『心とろかすような マサの事件簿』の第3話「白い騎士は歌う」を原作にしています。 今回のドラマには「ホワイトナイト」という言葉が殺人事件と関わる重要な謎の言葉として出て来ます。英語のwhite knightを日本語に直訳すると「白い騎士」「白馬の騎士」という意味がありますね。なんだかとてもロマンチックな意味が込められているような気がします。妻に「白馬の騎士」という言葉を聞いたことがあるかと訊きましたら、私が婚約前に彼女に「私は白馬の騎士ではありませんが……」なんてことを書いたラブレターを送っていたことをちゃんと覚えていましたよ(嗚呼、恥ずかしい)。 しかし、gooの国語辞典で「ホワイトナイト」という言葉を調べてみると、「【white knight】 敵対的買収を仕掛けられた会社が、自社に友好的な関係をもつ他の会社に買収してもらうことを依頼する場合に、そのような友好的な会社をいう。助けに現れる『白馬の騎士』にたとえたもの」とありました。そう言えば、2005年に起きた堀江貴文社長のライブドアによるニッポン放送買収問題では、ソフトバンクの孫正義氏がフジテレビの「ホワイトナイト」の役割を果たすのかといった表現でマスコミが大騒ぎしていたこともありましたね。 さて、蓮見探偵事務所に今回は宇野友恵(早織)という若い女性が調査依頼に訪れます。友恵の兄は、なんと最近起こった美術品販売会社「相沢アンティーク」の相沢一郎社長(清水昭博)殺害と同社からの1千万円強奪の容疑で指名手配を受けている同社員の宇野俊彦(葛山信吾)でした。そして友恵は、兄の宇野俊彦の殺人事件後の行方と彼がなぜ最近お金を必要とするようになったのか、その理由を蓮見探偵事務所に調べてほしいと言うのです。 なお、友恵は10年前に家庭内トラブルで兄の俊彦が引き止めるのも聞かず道路へと飛び出したために交通事故に遭い、足が不自由になっており、そのために俊彦は自責の念にかられており、決まりかけていた友恵の婚約も彼女の足が不自由だということを理由に破談になっており、そのことを俊彦は非常に悔しがっていたそうです。 友恵の話によると、俊彦はとても真面目な人間ですが、最近になって家賃を滞納したり借金取りが頻繁に彼のマンションにやって来て騒いだりしており、金を必要としていたことだけは確かなようです。蓮見加代子(瀧本美織)は、妹の友恵が兄の行方を心配し、また彼がなぜ金を必要としていたのか、その理由を突き止めたいという妹の心からの真摯な願いにほだされてその調査依頼を受けことにします。 調査を開始した蓮見加代子は、事件の起こった美術品販売会社「相沢アンティーク」で俊彦と一緒に働いていた田川(鹿内大嗣)という若い男から、俊彦が以前「俺はホワイトナイトなんだ」と言っていたという話を聞き出します。彼女はそのことをいつも貴重な助言役を果たしてくれるBARラ・シーナのマスター椎名悠介(寺脇康文)に伝えますと、「ホワイトナイト」には「企業買収から守ろうとする」意味もあるのではないかと言い出します。俊彦は企業買収にからんでお金が必要になったのでしょうか。「ホワイトナイト」という言葉は、事件の謎を解くどころかかえってますます謎を深めてしまいそうです。 しかし、佳代子は「ホワイトナイト」という言葉を意外な物の中から見つけ出します。それは俊彦が引き払ったマンションから妹の友恵宛に送られてきた荷物に入っていた英文の「鏡の国のアリス」の文中にありました。蓮見探偵事務所の調査員の江島瑠璃子(麻生かほ里)がこの本の愛読者で、佳代子に「ホワイトナイト」とは主人公の「アリスを守る紳士的な騎士」のことだと教えてくれました。また、この英文の「鏡の国のアリス」は俊彦が三國洋書店で購入したもののようです。 三國洋書店を訪れた佳代子は、この書店の店主から「鏡の国のアリス」を購入した人物が手に「千鳥精神神経センター」の封筒を携えていたことから、同病院の患者へのプレゼントとして買ったものだと推測していたことを知ります。そして千鳥精神神経センターの入院患者のなかに佳代子は俊彦と関係のある二人の人物がいることを突き止めます。一人は伊東あけみ(志保)という薬物中毒の家出少女であり、もう一人は美術品販売会社「相沢アンティーク」で経理を担当する古株の秋末次郎(利重剛)の息子の雅史(戸谷公人)でした。殺人事件の謎は急速に解明に向かっていきます……。 ところで、このテレビドラマの設定では、加代子の父の蓮見浩一郎は「パーフェクトブルー」という謎の言葉を残して自殺したことになっていますが、この言葉の意味を調べている蓮見杏子(財前直見)が接触しているテレビ局のプロデューサーの鹿沼暁(吉家章人)という人物が何かこの言葉の謎を知っているようです。それから今回も探偵事務所の調査員の君塚奈々(平山あや)が蓮見杏子の様子を窺うために盗聴装置を仕掛け、誰かに向けてパソコンのメールに「パーフェクトブルーについて蓮見杏子は何もつかんでいません」と打ち込んだりしていました。
2012年10月29日
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蓮見探偵事務所に紺野ひかり(水谷妃里)という若い女性が調査依頼に訪れます。彼女は結婚式を間近に控えて戸籍を調べたときに、彼女が実の母親だと思っていた紺野千尋(手塚理美)の養女であることを知り、蓮見探偵事務所に「自分を産んでくれた母親を探して欲しい、結婚する前にどんな人なのかを知っておきたい」と依頼に訪れたのです。そのとき、彼女は育ての母の千尋が高校生の時に一緒に並んで写っている産みの母と思われる真島啓子(愛華みれ)の写真も資料として持ち込んで来ました。しかし、実の母親がひかりを手放した理由は分からないといいます。 ひかりから依頼を受けた蓮見加代子(瀧本美織)は三浦美智子(根岸季衣)と2人で調査を開始しますが、その過程で育ての母の千尋がボイスチェンジャーで声を変えた人物から「泥棒の報い。金を払え!」と脅迫電話を受けたり、「裏切り者 金を払え」と書かれた手紙が送られて来たことを知ります。また、自称フリージャーナリストでゆすり行為などをしている芹沢保(近江谷太朗)が千尋とひかりの周囲を探っていることも、彼と接触している女性タクシードライバーが真島啓子という名前で依頼人のひかりの産みの母と思われる人物と同名であることも判明します。まさか二人でひかりの育ての母である母の千尋を脅迫しているなんてことがあるのでしょうか。 今回の調査で佳代子と組んで調査を進めていた三浦美智子が彼女に新たな情報を伝えます。それによりますと24年前に千尋の友人の真島啓子は吉岡という人物と結婚しており、臨月を迎えた啓子が夫の暴力に耐えきれずに刺殺し、獄中で女の子を出産したこと、その子すなわちひかりを親友の千尋が養女として引き取っていたことが分かります。しかし、いま頃になって誰がなぜ千尋を脅迫し始めたのでしょうか。 加代子たちは脅迫事件の謎を解明しようと考え、千尋の高校時代の同級生でいま食事処を経営している中島和美(歌川椎子)に当時の話を訊こうとしますが、なぜか和美は頑なに口を開こうとはしません。そんなとき加代子たちは、千尋とひかりの周辺を探っていた芹沢保が転落死し、そのことで千尋が警察で事情聴取を受けていることを知ります。 さらに千尋が蓮見探偵事務所にやって来て、ひかりが実の母親のことで事務所に調査を依頼しているようだが、実の母親はすでに亡くなっているようにひかりに伝えてもらいたいと要請します。千尋がその理由として、ひかりが実の母親の殺人事件を知るだけでなく、いま実の母が「ゆすりをやっていると知ったら」悲しむだろうと言うのです。脅迫犯人と思っていた芹沢保が転落死した後にも、千尋に対する脅迫は続いており、そのことから千尋は脅迫犯人は真島啓子以外にいないと思い込んでいるようです。では本当に千尋のこんな推測は正しいのでしょうか……。 ところで、蓮見探偵事務所調査員のメンバーの一人に君塚奈々(平山あや) がいますが、このTBSのドラマの公式サイトのキャスト紹介によりますと「通称・ナナさん。/冷静で物静かな女性。語学に長け状況分析力に優れている。/なぜか唯一マサが懐いていない」とのことです。しかし、平山あやという女優の従来のキャラクターとはあまりマッチしていない役柄だなと私は思っていました。そうしましたら、今夜のドラマの中で彼女の意外な側面が映し出されました。蓮見探偵事務所に届いた差出人「宗田八重子」の蓮見杏子宛の手紙を彼女が勝手に自分の引き出しに入れたのです。さらにラストでは、彼女が街頭でケータイに送信されてきたメールを立ち読みし、そのメールの指示に従って先ほどの差出人名「宗田八重子」の蓮見杏子宛の手紙を破ってゴミ箱に捨てているのです。どうも彼女には何か隠された秘密の側面があるようですよ。 なお「宗田八重子」という名前は、このテレビドラマの原作である『パーフェクト・ブルー』に登場する女性の名前で、名門高校野球部のエースだった諸岡克彦(諸岡進也の兄)と同一野球部の部員だった宗田淳一の母親として出てきます。おそらくこのテレビドラマの設定では、加代子の父の蓮見浩一郎が「パーフェクトブルー」という謎の言葉を残して自殺したことになっていますが、その「パーフェクト・ブルー」という謎の言葉と関係のある人物として後半に出てくるものと思われます。
2012年10月22日
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TBSテレビ系で10月15日(月)に放送された「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」第2話は宮部みゆきの連作短編集『心とろかすような』の第4話「マサ、留守番する」を原作にしています。 蓮見加代子(瀧本美織)がジャーマンシェパードのマサ(声:船越英一郎)をいつも散歩させる水上公園で、真夜中にホームレス風の男がゴルフクラブで殴打され、転んだ拍子に打ち所が悪く死んでしまいます。翌朝、加代子はマサといつものように水上公園を散歩していて、そのホームレス風男性の殺害事件に対する警察の現場検証に遭遇します。ところが、マサは加代子を殺人現場とは異なる別の木陰に引っ張っていきます。なんとそこには刃物を使って殺された黒猫の無残な死体が転がっていました。加代子は、殺人事件の現場検証に立ち会っていた刑事の藤永(渡辺哲)と宮本(水上剣星)に現場の近くで猫が殺されていることを伝えますが、二人は全く取り合おうとしません。 そんな中、蓮見探偵事務所に生駒澄子(吉田幸矢)が「家出した息子の穣太郎を探して欲しい」と依頼にやって来ます。話をよく聞くと穣太郎とは澄子が息子のように可愛がっているペットの猫のことのようです。加代子は澄子が持っていた穣太郎(黒猫)の写真を見て、水上公園で死体となって横たわっていた猫だとすぐ気づきます。澄子の強い要望もあり、蓮見探偵事務所としては黒猫殺害の犯人を見つけ出す調査依頼を受けることになります。 蓮見探偵事務所のメンバーが調査を進める中で、夜中にいつも出歩いては乱暴を働いているいる中学2年生の藤堂公久(平岡拓真)の名前が上がり、張り込んで彼の行動を探ることになります。ところが意外なことに、テレビなどの報道で先日の水上公園で殺害されたホームレス風男性の正体がこの藤堂公久の父親である藤堂治夫(住田隆)で、息子の藤堂公久が殺人容疑で警察の取り調べを受けていることを知ります。藤堂公久に嫌疑が掛けられたのは、殺人事件が起こった場所の近くで同時刻に彼の姿を同級生の前島智之(根岸泰樹)が目撃したと証言したからです。加代子は、目撃者の前島智之に直接会ってそのときの事情を聞こうとしますが、偶然に通りかかった智之の父親の文成(山崎一)に邪魔をされてしまいます……。 なお、今回のドラマでは猫が被害に遭っていますが、原作の「マサ、留守番する」ではウサギが殺されたり行方不明になったりしいます。また、原作ではジャーマンシェパードのマサは他のイヌと会話できるだけでなく、カラスとも会話することができ、そのことが原作をとても楽しいものにしているのですが、テレビドラマにはマサのそんな「特技」も全然活かされておらず非常に残念です。 それから、前回から気になっていたのですが、蓮見探偵事務所は経営者兼所長の蓮実杏子(財前直見)の下に蓮見加代子(瀧本美織)、三浦美智子(根岸季衣)、君塚奈々(平山あや)、長嶋桃子(白鳥久美子)、江島瑠璃子(麻生かほ里)の5人もの調査員を抱えており、元警察犬のマサ(声:船越英一郎)もいるというとても人犬(?)豊富な探偵事務所なんですが、これだけの人犬費を支払えるくらいに探偵事務所は繁盛しているのでしょうか。余計なお世話ですがちよっと心配になりますね。それから女性だけの探偵事務所という設定なのになぜかそのことが活かされず、イマイチ華やかさや賑やかさに欠けているのも残念です。
2012年10月15日
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TBSテレビ系で10月8日(月)から放送される「宮部みゆきミステリー 『パーフェクト・ブルー』」は宮部みゆきの長編小説『パーフェクトブルー』と連作短編集『心とろかすような マサの事件簿』(東京創元社、97.11.28)所収の第2話「てのひらの森の下で」を原作にしています。 このテレビドラマのプロローグは、響く絶叫、瞳に写る炎、その炎を見つめる若い女性の姿が映し出され、そこに「やがて俺たちはこの悪夢のような事件に心を引き裂かれていく」とのナレーションが入ります。 蓮見杏子(財前直見)が経営する「蓮見探偵事務所」は、女性による女性のための探偵事務所ですが、蓮見加代子(瀧本美織)は同事務所の調査員として母親の杏子を手伝っています。蓮見家の飼い犬で元警察犬だったジャーマンシェパードのマサ(声:船越英一郎)は蓮見探偵事務所の用心棒的役割を果たしています。蓮見探偵事務所の調査員としては、さらに三浦美智子(根岸季衣)、君塚奈々(平山あや)、長嶋桃子(白鳥久美子)、江島瑠璃子(麻生かほ里)がいます。また、BARラ・シーナのマスター椎名悠介(寺脇康文)は優れた洞察力の持主で、その力で蓮見探偵事務所のよき助言者役を果たしてくれます。 なお、加代子の父の蓮見浩一郎は「パーフェクトブルー」という謎の言葉を残して自殺しており、父親の自殺を目撃した妹の蓮見糸子(高橋春織)はそれが原因で今も心を閉ざしているようです。 ある日、蓮見探偵事務所に藤実咲子(星野真理)がストーカーの調査と警護の依頼で訪れます。対応した加代子は、咲子が視線を感じるという毎朝のジョギングにマサを伴って同行しますが、途中で血まみれの「死体」を発見します。加代子がその男性の脈を確認すると「無い」ので、警察に携帯で通報しようとしますが、何故か「圏外」と表示されます。そのため、加代子は現場にマサを残し、咲子と一緒に警察に通報するために公衆電話を探しに行きます。通報を終えて二人が戻ってみると、死体は消え、マサが倒れていました。 後日、加代子と咲子は警察から呼び出しを受けます。井波孝(窪田正孝)という男が「多額の借金で暴力団から追われている兄の洋(大沢健)を救うため、自分が血まみれの『死体』役を演じ、兄が死んだように偽装した」と言うのです。「死体」の近くに兄の運転免許証も置いておき、そのような「死体」偽装計画によって暴力団は兄の追跡を諦めるだろうと考えたというのです。さらに、この「死体」偽装事件の時に現場で「死体」を見守っていたマサを井波孝が殴って気絶させ、それから逃走したとのことです。このように井波孝の「自白」はとても奇妙なものなのですが、藤実咲子は「死体」が確かに井波孝だと証言するのです。しかし、加代子はどうも腑に落ちません……。 「死体偽装事件」には何か裏があるのではないかと佳代子たち蓮見探偵事務所のメンバーは捜査を続けますが、そんなときにBARラ・シーナのマスターの椎名悠介がすごい情報を入手して来ます。「死体偽装事件」が起こったほぼ同じ時刻にディスカウントショップ「両国屋」で裏金として隠していた五千万円が強奪されており、「死体偽装事件」はその強奪事件への井波孝たちの関与を隠蔽するためのアリバイ工作ではないかと言うのです。 今回のドラマは蓮見探偵事務所のメンバーと同事務所の強力な助っ人振りを発揮するラ・シーナのマスター椎名悠介の紹介に追われ、ミステリアスで複雑な事件の内容も慌ただしく手早く纏めた感じで、宮部みゆき作品ならではのハートウォーミングな味わいに欠け、ドラマとしての魅力がもう一つ不足していましたし、原作「てのひらの森の下で」より血腥いものになっていたのがとても残念でした。 また、今回のドラマの原作は1997年11月刊行の『心とろかすような マサの事件簿』所収の第2話「てのひらの森の下で」で、その頃には携帯電話など普及しておらず、犯罪トリックに通信機能抑止装置なんて面倒なものを使用する必要もありませんでした。通信装置の進歩は今回のドラマの井波孝による犯罪トリックを一層嘘っぽいものにしていましたね。
2012年10月08日
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昨夜(5月28日)、TBS系で宮部みゆきのミステリー&サスペンス作品『レベル7』(新潮社、90.09.25)を原作とするテレビドラマ「レベル7」が放映されました。 この宮部みゆきの原作『レベル7』の新潮社版の装画には、顔がのっぺらぼうな人物が階段の途中で座り込んで思案している様子を描いたマーク・コスタビの絵が使われています。すでにこの宮部みゆきの原作を読まれた方には装画の意味がすぐお分かりになったと思います。『レベル7』には、過去の記憶を喪失した二人の男女が登場します。彼らは、自分の住所・氏名や年齢・職業或いは身分、さらには肉親・親類縁者等の全てのことを憶えていないのです。本人にとってもそうですが、読者にとってもこの二人の記憶喪失者はのっぺらぼうな存在として物語に登場して来るわけですね。 この原作の面白さの一つは、そんなのっぺらぼうな人物の身元が究明されていく過程にありますね。では、二人の記憶喪失者の身元が明らかになっていく中で彼らののっぺらぼうな顔に目鼻や口などか描かれるようになったでしょうか。おそらく読者にとっては、彼らは最後の最後までのっぺらぼうだったのではないでしょうか。そして、のっぺらぼうなのはこの二人だけではありません。悪役を演じる人物たちもまた見事にのっぺらぼうなんです。いや、のっぺらぼうな顔に「ボス」とか「不良息子」といった役柄を書いた紙がぺたっと貼り付けられていると表現した方がいいかもしれません。 『レベル7』は、宮部みゆきが作家としてデビュー(1987年に短編「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞)してからまだ3年にも満たない時期に出版された初期の作品で、『パーフェクト・ブルー』、『魔術はささやく』、『我らが隣人の犯罪』の次に出版されていますが、私などは登場人物の造形面において大いに不満を感じたものです。しかし、作者自身はそんなことは百も承知で執筆しているのかもしれません。 おそらく宮部みゆきは、二人の記憶喪失者の身元探しとそのなかで明らかになってくる驚くべき事実の解明過程の面白さを読者にミステリアスでスリリングなエンターティンメントとして提供したかったのであり、そのために様々な謎を複雑に絡み合わせ、またそれらを解明していくための伏線を効果的に張り巡らせることになによりも力を注いだのだと思います。 では、昨夜のテレビドラマは、原作を映像化するに当たってどのような工夫を凝らしたのでしょうか。原作同様に記憶を喪失した男女が出て来ますが、まさか彼らの顔がのっぺらぼうというわけにはいかず、男性は玉木宏が演じ、女性は杏が演じています。二人の男女は全く知らない部屋で目覚め、彼らの手首には「LEVEL7」という刺青が刻まれていました。自分自身と相手の正体が分からないまま、彼らは血染めのタオルに包まれた拳銃と分厚い札束を目の当たりにして驚愕し、さらにテレビのニュースで老婆が殺害されたことを知って、「もしかして自分たちがこの殺人事件の犯人では」と疑心暗鬼となってしまい、警察に正直に届け出ることも出来なくなってしまい、相互に相手のことを信じられないまま闇雲に逃走を開始します。このドラマの出だしの部分は、まさに道に迷って当てもなく暗闇を彷徨うような二人の男女の気持ちに視聴者も共感し、ぐいぐいと画面に引き込まれたことと思います、 しかし、逃走中の二人が複数の男に襲撃され、男(玉木宏)がナイフで傷を負ったとき、三枝という名前の杖を突いた謎の男(伊原剛志)に助けられ、島村病院の医師(白井晃)の治療を受けるところから、三枝が島村と組んで記憶喪失の二人をどこかに巧みに誘導しようとしてるらしいことが分かって来ます。 この記憶喪失の男女の逃走劇と同時並行的に描かれるのが真行寺舞(瀧本美織)による失踪した祖母探しの話です。舞は父親の真行寺義男(田中哲司)と一緒に祖母の文子(長内美那子)を探して奔走しますが、その数少ない手かがりが文子の失踪前に残した「レベル7に行ったら幸せになれる」という言葉でした。そして祖母の友人で老衰で亡くなった女性の遺族から、文子の友人が「幸せになれる場所」のことを話していたと知らされます。この文子の友人は認知症になりかけていたとのことです。そんな情報を得た真行寺舞に祖母から「レベル7に行ったら戻れない」との電話がかかって来て、すぐ切れてしまいます。祖母探しを懸命に続行した真行寺舞と父親は文子が潟戸友愛病院に居るらしいことが分かって来ます。 記憶喪失の二人も三枝の巧みな誘導に導かれて自分たちが記憶喪失にされた謎が潟戸友愛病院にあるらしいと知り、、「自分を取り戻すための闘い」に潟戸友愛病院に出掛けます。ところがなんと同病院の院長室で彼らを待っていたのは三枝でした。さらに院長の村下猛蔵(竜雷太)も現われ、二人は三枝や村下から驚くべき事実を知らされます。 二人が村下猛蔵によって記憶喪失にされた謎はミステリーのネタばれになるので述べませんが、このテレビドラマは宮部みゆきの原作とは異なり高齢化社会の問題と主人公たちが関わった事件とが関連していることだけは最後に書き加えておきたいと思います。 村下猛蔵の説明に拠ると、日本がもうすぐ高齢化社会を迎えることになり、増大する高齢者に対して若者の負担はどんどん増して行くので、彼はこの問題を解決するために新薬を開発したと言うのです。この新薬を高齢者に投与すると老衰が加速され、高齢者はすぐ死亡するので、高齢者の介護者による介護の手間が大幅に省かれるというのです。確かに高齢化社会を解決する「画期的な新薬」には間違いありませんが、なんとまた非人道的な解決方法でしょうか。村下猛蔵の口からこんな嫌な話を聞かされて、純粋にミステリー&サスペンスを楽しもうと思っていた私は気分が悪くなってしまいました。幾ら宮部みゆきの原作を現代社会にマッチしたものに作り変える工夫を行ったと言っても、このような作り変えはないだろうと思ったのですが、みな様はどのように感じられましたか。 なお、このテレビドラマ「レベル7」については拙サイト「映像化された宮部みゆき作品」の「第四夜 レベル7」に転載しましたので興味がございましたらご覧ください。
2012年05月29日
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昨夜(5月21日)、TBS系で宮部みゆきのミステリー作品『長い長い殺人』(光文社、92.09.15)を原作とするテレビドラマが放映されました。 この宮部みゆきの原作の特質の一つは、財布を視点人物(視点品物?)にしていることであり、財布にその持ち主の心理やその人の周囲に起きる状況を語らせるという叙述形式にあります。例えば 第5章に当たる『目撃者の財布」では、語り手は19才のバスガイドのマコちゃん(佐藤雅子)の財布なんですが、この財布も持ち主と似て気のよい女の子タイプで、自分のことを「あたし」と言い、東京で一人ぼっちで生きているマコちゃんの「味方」として彼女の身をいつも案じ、「若い娘の足元をすくう風が吹く世間から彼女を守る、ささやかな砦(とりで)」となって彼女を守ろうと思っています。なんという健気な財布さんでしょう。そんな「あたし」は、マコちゃんについて、財布ならではの視点からつぎのような描写をおこなったりします。「そう、あたしは彼女のお財布。給料日の前に、心細そうにあたしを覗き込む彼女の目の色を知っています。デパートやブティックで、欲しいスーツやブラウスの値札を確かめてから、洗面所でそっとあたしの中身を数えるときの彼女の、やわらかい指の感触を知っています。そのあと彼女がその指を折って、あとの生活を考えたらどこまでお金を使うことができるか計算してる、その小さい声も聞いています。」 財布ならではの視点から、マコちゃんの若い女の子らしいおしゃれへの切ない願望と、しかし衝動買いはしない堅実な性格とが見事に表現されており、ここに財布を語り手にした効果の一つがよく発揮されているように思いました。いつも持ち主と一緒にいる財布だからこそ、持ち主の行動をつぶさに知ることができるだけでなく、その内面に寄り添って細やかに持ち主の想いを観察することができるんですね。 では、昨夜のテレビ番組『長い長い殺人」は、原作の財布に語らせるという特質を上手く映像化できたでしょうか。第1章「刑事の財布」、第2章「少年の財布」、第3章「探偵の財布」、第4章「目撃者の財布」、第5章「旧友の財布」、第6章「証人の財布」、第7章「再び探偵の財布」、第8章「犯人の財布」、第9章「再び刑事の財布」としているように、主要登場人物の所有する財布によって各章が区分され、各章毎にそれらの財布がナレーションを担っていますが、しかし原作通りに各章のナレーターが財布でならなければならない必然性が特にあるように思われず、その点では映像化に成功したとはお世辞にも言えないようです。 宮部みゆきのこの原作のもう一つの特質は、金銭目的の保険金殺人と思われた事件の裏に犯人たちの意外な心理が浮かび上がってくるところにあります。すなわち、私立探偵の河野がつぎのように吐き捨てるように言っている現代社会に特有な病んだ心理が犯罪の裏に隠されているのです。 「彼らもまた、ただの目立ちたがり屋なんだ。それだけのことさ。しかし、ちょっと頭が良かろうと、美人であろうと、その程度のことじや、一億数千万人の人間がひしめいているこの国で、みんなからチャホヤしてもらえる存在になることなど、まず不可能だ。(中略)彼らの目的は、金じゃない。目的は、今の彼らのような立場をつかむことだった。日本中から注目され、ただの背景、ただの通行人、ただの有象無象から抜け出して有名人になることーただそれだけだ。」 ここに浮き彫りにされた心理は、宮部みゆきがこの作品の9年後に発表した傑作『模倣犯』(小学館、01.04.20)の連続殺人犯のそれと通底しているものと言えるでしょう。 昨夜のテレビドラマ「長い長い殺人」はそんな犯人たちの心理は巧みに描き出すことができたようです。原作と同様に、テレビドラマでも4つの殺人事件が起こります。そして、それらの事件が塚田和彦(谷原章介)と森元法子(伊藤裕子)とによる保険金目的の相互交換殺人事件ではないかという疑惑が浮上し、その結果、塚田と法子は一躍マスコミの寵児となってしまいます。状況証拠からは二人は限りなく黒いんですが、物的証拠はなく、そんななかでマスコミは塚田と法子とをカメラで追って連日空騒ぎを繰り返します。 そんななかで、第7章「再び探偵の財布」になって、マスコミの寵児となった塚田と法子の姿を妬んだ予備校生の青沼亮(田中幸太朗)が私立探偵の河野康平(仲村トオル)に電話で自分が真犯人だと伝えて来ます。彼は、テレビに映し出される塚田と法子を見ると「ムカつくんだよな」と言い、自分が「四人を殺(や)ったんだよ」、マスコミにそのことを伝えても信じないが、「河野さんから世間の馬鹿どもに伝えてもらいたい。ぼくという偉大な存在がいるってことを」と言います。探偵の河野はこの心を病んでいるらしい予備校生の自分が真犯人だとする言葉は信じませんが、ただ今回の塚田と法子とが関係したと思われる事件の裏に、この予備校生のような病んだ心を持った人物が実行犯として存在しているのではないかと推理します。 第8章「犯人の財布」では、探偵の河野が刑事の響武史(長塚京三)と寺島裕之(金子賢)にそのことを伝え、今回の犯罪が金銭目的にあるのではなく、「彼らの目的は、金じゃない。彼らの目的は日本中から注目され、ただの背景、ただの通行人、ただの有象無象から抜け出して有名人になること」であり、そんな思いを持った人物が共犯者として存在する可能性を悟らせます。それで、予備校生をおよがせることにし、また予備校生の自分が真犯人だとする電話の声をテレビを通じて流します。 このことに実際の殺人犯の三木一也(窪塚俊介)は激怒します。三木一也も心を病んだ人物でした。彼は一流企業に入ったのにすぐ辞めており、2回受けた司法試験に失敗して屈辱感を味わい、「自分こそ尊敬され、崇められ、凡人とは違う存在」であると世間から認められたいとの思いを犯罪行為を行うことで満足させるようになっていたのです。そんな三木一也の病んだ心理を上手に利用したのが塚田和彦でしたが、三木一也は塚田和彦が止めるのも聞かず予備校生を殺害しようと尾行を開始し……。 第8章「犯人の財布」に登場する田中幸太朗が演じる予備校生の青沼亮の心を病んだ姿が強烈でした。彼の登場により、このミステリードラマの特質である、金銭目的ではなくただ有名になりたい、自己顕示欲を満足させたいという現代社会ならではの犯罪の本質を鮮明に描き出すことに成功したように思います。
2012年05月22日
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昨夜(5月14日)、TBS系で宮部みゆきの『スナーク狩り』(光文社、92.06.10)を原作とするテレビドラマが放映されました。 ところで、題名の「スナーク狩り」の意味なんですが、宮部みゆきの原作の「付記1」に国分範子が関沼慶子に出した手紙が紹介されており、そこに作者の主張が明確に述べられています。「そうそう、『スナーク狩り』というお話を知っていますか? これも修治さんから聞いたんです。ルイス・キャロルという人の書いた、とてもおかしな長い詩のようなものなんですけど、スナークというのは、そのなかに出てくる、正体のはっきりしない怪物の名前なんです。/そして、それを捕まえた人は、その瞬間に、消えてなくなってしまうんです。ちょうど、影を殺したら、自分も死んでしまったという、あの恐い小説みたいに。」 今回のテレビドラマでも、関沼慶子(田中麗奈)がルイス・キャロルの散文詩に出てくるスナークという怪物のことを佐倉修治(伊藤淳史)に語っていますが、当初は何らかの理由から退治せねばならぬと思っていたのが、いつのまにか「ただ殺すことだけに夢中になり」、殺意に身も心をすっかり支配されてしまう心理を述べています。関沼慶子も一度はそんな心理に取り憑かれたことがあるのです。彼女は結婚まで約束した国分慎介(水上剣星)からまるでボロクズのように捨てられ、抑えきれない激しい怒りに耐え切れず、この男の結婚式場にライフルを持って入り込んでいます。彼女は、ライフルの銃身に錘(おもり)を詰め込み、結婚式場で自分を裏切った男に銃口を向けて引き金を引くことによって自爆し、自分の抑えきれぬ恨みを晴らそうと考えたのですが、男の妹の国分範子(夏菜)の必死の説得でその計画を思いとどまります。 ところが、結婚式場からライフルを自分の住むマンションに持ち帰った関沼慶子は、織口邦男(柄本明)からそのライフルを奪われてしまいます。この織口邦男は、彼の妻と娘を大島義彦(與真司郎)に惨殺されていたのですが、犯人の大島義彦は裁判で自らが心神喪失状態で罪を犯したと無罪を主張し、いまは金沢市の木田クリニックで入院治療を受けているのでした。それで、織口邦男は同クリニックまで行って、大島義彦自身の口から犯罪を行ったその本心を直接訊こうと考えたのです。織口邦男の計画では、まず慶子からライフルを奪い、この銃を大島義彦に突きつけて本心を訊き出し、返答次第によっては「死刑」に処するつもりでいたのです。 このサスペンスドラマは、慶子の銃と車を奪って金沢に向かう織口邦男と、彼の行為を阻止しようと追い始めた佐倉修治と関沼慶子、さらにトラック運転手の神谷尚之(宮川大輔)や刑事の桶川勝男(寺島進)、黒沢美香(菊池亜希子)が絡んでスピーディに展開していきます。本来、心優しい人物である織口邦男が、慶子から銃を奪って犯人の大島義彦から本心を訊き出そうとする計画を実行していく中でどんどんと犯人に対する憎悪と殺意が増し、顔つきまでもがスナークに心を奪われた凶悪な怪物に変身していく姿を柄本明が見事に演じていました。
2012年05月15日
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今夜(5月7日)、TBS系で宮部みゆきの作品『理由』を 原作とするテレビドラマ「理由」が放映されました。 内容はほぼ原作どおりですが、高層マンションで起こった四人の人物の殺害事件を捜査するベテラン刑事の吉田達夫(寺尾聰)と離婚した元妻の小西貴子(麻生祐未)、娘の美穂(香里奈)の崩壊家族のエピソードも新たに加えることにより、このテレビドラマで家族の脆さと絆というテーマをより鮮明に打ち出そうと試みたようです。 殺人事件のあった高層マンションの2025号室の住人は、住民台帳によると小糸信治(堀部圭亮)とその妻と息子ということになっているのですが、吉田たちの捜査が進む中で実際にこの部屋で殺害された三人は小糸信治が雇った占有屋の砂川信夫(岩松了)たちということが分かって来ます。小糸信治が2025号室購入のためのローンが払い切れず、この部屋が競売にかけられたのに、占有屋を雇ってこの部屋を不法占拠しようとしたのです。そしてさらにドラマの後半には、この部屋から墜落死した人物も八代裕二(速水もこみち)という男で、占有屋の砂川信夫たちと組んで2025号室で偽装家族を演じて暮らしていたことが判明します。砂川たち占有屋はみんな家族や社会からドロップアウトした連中だったのです。 原作同様に、住宅ローン破綻者の小糸信治や彼が雇った占有屋の砂川信夫たちの話には、脆い家族の結びつきが描かれています。また、競売にかけられた2025号室を新たに購入しようとして事件に巻き込まれ逃走する石田直澄(杉本哲太)も、侘しい借家住まいをしていることを娘の由香利(橋本愛)から「こんな家に住んでいて恥ずかしい」「なんの財産ももらえない」「こんな家から出て行くわ」と言われて傷つき、無理をして身分不相応な高級マンションの一室を購入しようとします。しかし、石田直澄の場合は、彼が殺人事件に巻き込まれることによりかえって家族の結びつきは強まった様です。石田直澄には火事で一瞬にして家族を失った悲しい過去があり、それだけに現在の自分の家族たちとの絆を守ろうとする思いが人一倍強いのですが、そのことを義母の石田キヌ江(江波杏子)が刑事たちに涙ながらに語る場面がありましたが、江波杏子の演技によって強く胸に迫るものがありました。 また八代裕二(速水もこみち)を愛し、彼の行った殺人事件に巻き込まれた宝井綾子(吹石一恵)も、この事件によって家族の暖かい支えを強く感じるようになります。ところで、速水もこみちが演じた八代裕二という人物は、宮部みゆきの原作では、スイッチを切ればそのまますっと消えてしまうような希薄な存在として描かれています。彼はきっとその不幸な過去の生い立ちから他人に対して心をしっかりと閉ざて生きるようになったのでしょう。しかし、今回のテレビドラマで速水もこみちが演じた八代裕二は、クールな悪人のふりはしているが存在感たっぷりの生身の人間として描かれており、そのために凶悪な殺人行為をなぜ行ったのか、その理由をつい詮索したくなりますね。 おっと、書き忘れるところでしたが、簡易宿泊施設の片倉ハウスを経営する片倉義文という中年オヤジを沢村一樹が演じていましたが、この意外なキャスティングは悪くはなく、彼の人情味ある石田直澄への対応や、娘の信子(荒川ちか)との親密な親子関係がドラマにぬくもりを与えていました。 テレビドラマを私なりに要約していて、このドラマが家族の脆さと絆を描いていることが明確になりましたが、ただ漠然と視聴して自然とそのことが鮮明になるというものではありませんでしたし、また原作に描かれていた高層マンション内部の薄ら寒さを感じさせる人間関係の希薄さはほとんど描かれていませんでした。良心的な作りのドラマだとは思いますが、もう一つ強いインパクトに欠けていたような気がしました。
2012年05月07日
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宮部みゆきが「ペテロの葬列」と題した小説を下記の新聞に1年半連載していましたが、私の購読している「南日本新聞」では今日(5月3日)ついに546回目で終了いたしました。千葉日報、福島民友、北國新聞、南日本新聞、日本海新聞、大阪日日新聞、岩手日報、東愛知新聞、荘内日報、信州日報、北羽新報、苫小牧民報、静岡新聞、佐賀新聞、上毛新聞 この「ペテロの葬列」の主人公は企業内広報紙の記者兼編集者の杉村三郎で、彼が事件の謎を解く現代ミステリー『誰か』(実業之日本社、03.11.25)や『名もなき毒』(幻冬舎、06.08.25)の続編として書かれたものです。今回の新聞連載小説では主人公の杉村がバスジャックに遭遇します。この事件そのものはすぐに解決しますが、杉村は事件の主犯がどうしてバスジャックを起こしたのかを調べる中で、「日本の社会に地下水脈のようにはびこる悪徳商法にかかわってしまう人々」(『南日本新聞」2012年5月3日付けの「連載『ペテロの葬列』を終えて 宮部みゆきさんに聞く」より)の存在を知ることになります。 『南日本新聞」2012年5月3日に載った「連載『ペテロの葬列』を終えて 宮部みゆきさんに聞く」で作者の宮部みゆきはつぎのように述べています。「『火車』(カード破産を扱った代表作のひとつ)で、この手の金融問題に詳しい宇都宮健児弁護士に話しを聞いた時、悪質商法は日本という国が豊かになっていく中で脈々と続いてきた裏面史だと教えてもらいました。お金は切実なものだけれど、だからこそ富への執着がある限り、事件はなくならない」 「小説ならこの問題が個人のところに降りてきた時にどうなるかを書こうと思いました」「バスジャックの人質になり慰謝料を提示されて、即座にいらないと言える杉村は、お金に無頓着でいられる恵まれた立場。そのことに後ろめたさを背負っていますが、自覚はしてこなかった。よりよく生きようという意思から結局、夫婦は別れてしまうのだけれど、どのように別れるか、子どももいるからと悩みました」「でも、杉村と桃子との間に『指輪物語』を入れようと決めて、すっきりしました。読み聞かせや映画になった物語を親子で共有すれば、その物語に託して父親の不在を『パパは長い旅に出る』ととらえてもらうことができる。いずれ桃子が成長したら、杉村はどんな旅をしてきたかを語ることもできるだろうと思うんです」 そうなんです、この小説のラスト近くでは、杉村三郎は今多コンツェルン会長の娘の菜穂子と別れることになります。最終回の546回目は「道は遠い。だが、旅の目的はわかっている。私のは、どっちだ」という文章で終わっています。「滅びの山」とは、『指輪物語』に登場する9人の指輪仲間がこの山を目指して旅をしており、宮部みゆきは「滅びの山」という言葉を使って杉村にとっての旅の最終目的地という意味を表現しているようですね。 さて、宮部みゆきと言えば、 TBS系で5月7日(月)から彼女が1987年に短編「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞して作家デビューしてから今年で25周年になることを記念して、彼女の数多くの作品から4作品を選んで4週連続で放送するそうです。第一夜『理由』(寺尾聰、速水もこみち、吹石一恵、香里奈、杉本哲太、沢村一樹出演)、第二夜『スナーク狩り』(伊藤淳史、田中麗奈、宮川大輔、夏菜、寺島進、柄本明出演)、第三夜『長い長い殺人』(長塚京三、仲村トオル、谷原章介出演)、第四夜『レベル7』(玉木宏、杏、瀧本美織、伊原剛志出演)とのこと、宮部みゆきファンとしては見逃せないですね。
2012年05月03日
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連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」は、2012年1月9日から同年3月19日までTBS系で計11話が放映されました。私は、宮部みゆき作品の大ファンなのですが、彼女の連作短編集『ステップファザー・ステップ』(講談社、93.03.25)も大好きな作品の一つで、拙サイト「我らが隣人の宮部さん」にも「宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』に見る少年の形象」というコメントを載せています。 この連作短編集は全7篇で構成されています。小説の主人公である「俺」は、廃業した柳瀬という元弁護士の事務所で表向きは調査員をしていますが、実際には柳瀬から情報を得て窃盗を行っている35才のプロの泥棒という設定です。そんな「俺」が東京郊外の今出新町という新興住宅地の一軒の家に泥棒に入ろうとしたとき、落雷で屋根から落ちて気絶してしまい、隣の家に住む宗野家の直(ただし)と哲(さとし)という中学一年生の一卵性双生児たちに「拾われ」て介抱されるところから物語が始まります。 この双子の兄弟は、彼ら自身が「父さんは、会社で自分の秘書をしていた女の人と」「母さんは、この家を建ててくれた工務店の社長」とそれぞれ駆け落ちしてしまったと言っているように、両親から見捨てられた遺棄児童たちだったのですが、彼らは自分たちが遺棄児童だと世間が知ったら施設に入れられてしまうことを恐れ、屋根から落ちて来た泥棒の「俺」と交渉し、「僕たち、あなたの指紋をとっちゃった」「ねぇ、前科あるんでしょう? まずいよね?」「またムショに入るの、イヤじゃない」と子どものくせに恐喝まがい、いや恐喝そのものだと思いますが、「俺」を脅かして彼らが必要なときだけ父親のふりをし、また彼らのために生活費も入れる疑似の父親(ステップファザー)となることを約束させてしまいます。 原作は「俺」がそんな双子の兄弟のステップファザーをしながら泥棒家業を続け、何度もピンチに遭遇した双子の兄弟たちを救う過程でつぎつぎと事件の謎を解いていく名探偵の役割をも演じる奇想天外なユーモアミステリー小説です。また、最初は双子の兄弟から強いられて仕方なく疑似の父親役を演じていた「俺」が、双子の兄弟の危機を救うなかで次第に彼ら兄弟に対する情愛を深めていくという一種の変形ファミリー小説でもあります。 それで、連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」を2012年1月9日の第1話からずっと試聴していたのですが、だんだんと原作とは随分違うなと感じるようになり、どんどんストレスがたまって行きました。と言っても、原作では双子の兄弟はそれぞれ異なる学校に通う双子の中学生という設定なのに、テレビドラマでは双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)は同じ小学校に通う小学4年生ということになっているからではありませんよ。 また、原作では「俺」が双子の兄弟たちから生活費を入れることを約束させられており、さらに「俺」の泥棒の手伝いをして得たお金の一部を分け前としてもらったりしていますが、ドラマの双子の兄弟たちは親が残した通帳から生活をしているという設定に変え、さらにご丁寧に双子の兄弟たちを柳瀬豪造(伊東四朗)の法律事務所まで行かせて、「俺」(上川隆也)との間に「不法行為は一切禁止」という条項まで入っている「ステップファザー契約」を結んでいます。これは原作の本来の奇想天外な設定の面白さを損なう「改悪」ではないかと不満を感じさせられましたが、それはまだ我慢のできる範囲です。その他、いろいろ原作に対して手直しがありますが、それは小説を映像化するときには当然のことだと思っています。 では、私はこのテレビドラマのどんなところに原作と「違うな」と感じ、ストレスをためて行ったのでしょうか。その理由がはっきりと分かったのは、このテレビドラマの第10話を見ていたときです。この第10話には、有村美月(石井萌々果)という少女が出て来ます。彼女の父親の有村洋一(柏原収史)が窃盗行為を行い、家族を捨てて逃亡したために彼女の家族が苦境に陥り、母親は心労で死んでしまい、独り残された彼女は養護施設に入った後、いまは喫茶店の主人夫婦の養女となっているという設定です。そんな彼女が久しぶりに父親と再会したとき、初めはよそよそしく接していた彼女が、淋しく去っていく父親を追いかけて店を飛び出し、父親の背中に「お父さん!!」と声を掛け、振り向いた父親に向かって「お父さんの馬鹿!!」と叫び、そして「お父さんが泥棒などするから、お母さんは死んでしまったのよ。お母さんのことをほおっておくから、お母さんは死んでしまったのよ。独りぼっちで淋しかった」とこれまで心の奥底にずっと仕舞いこんでいた思いを父親にぶつけます。この場面、有村の娘の美月を演じた石井萌々果の演技が素晴らしく、この連続テレビドラマではこれまでほとんど涙を流したこともなかった私ですが、自然に涙がジワーッと滲み出て来ました。 そして、この美月を演じた子役の石井萌々果の素晴らしい演技に感心しながら、つい宗野家の双子の兄弟と比較してしまいました。美月のドラマ前半での心の哀しみをじっと抑えて明るくふるまう姿があって、後半で彼女が父親に胸に秘めていたその哀しい思いをぶつけるから、視聴者たちは自然と涙を誘われたのではないでしょうか。では、このテレビドラマで肝心の双子の兄弟はどのように描かれていたのでしょうか。 宮部みゆきの原作『ステップファザー・ステップ』という連作短編集の一番の魅力は、双子の兄弟のたちが両親から見捨てられた遺棄児童にもかかわらず、心の哀しみをおくびにも出さずに明るく振る舞っているその姿にあると思います。彼らのそんな健気(けなげ)な姿がなんとも愛(いと)おしく、渋々代理親父をやっていた泥棒の「俺」が次第に彼らに「父性愛」(?)を強く感じていくように、読者の私も「俺」のそんな気持ちに強く共感していきます。 ところが連続テレビドラ「ステップファザー・ステップ」計11話を全て見終わっての感想は、ドラマの最終話のラストの方で「俺」(上川隆也)が双子の兄弟たちに、彼らの本物の父親が帰って来るのだから「ニセモノの居場所はない」「いつかは別れることになるのは分かっていただろう」「契約で仕方なくパパをやっていたが、面倒くさいんだよ」と言って彼らに別れを告げ、泣いて別れたがらない彼らに「泣くな! 男だろう!! 面倒くさかったがおまえたちと会えてよかった。楽しかった」と言っていますが、この言葉をもじるなら、「宮部みゆきの原作が好きだから仕方なく見ていたが、連続して見るのが面倒くさかったよ。このテレビドラマを見てあんまり楽しくなかった」と捨て台詞を残して立ち去りたい思いに駆られましたよ。 温厚な私(ホンマかいな?)にしては随分ひどい捨て台詞を言ったものだと思いますが、テレビドラマの双子の兄弟に健気さ、愛おしさなど微塵も感じられず、下に列挙したような彼らの言動の連続になんとも我慢がならなかったのですから、仕方がありません。 第1話では、双子の兄弟は学校で盗まれた校長先生(萬田久子)のカバンを隠し持っていることを「俺」に告げず、彼がそのことを知っても事実を正直に語りません。第2話では、湖で発見された白骨死体のことを双子の兄弟は失踪した両親ではないかと不安になり気にしているのに、「俺」が白骨死体の身元捜査を開始すると「余計なことはしないでくれ」と強く言い張り、ついには柳瀬の弁護士事務所を訪れて「ステップファザー契約」の解約をしてしまいます。 第3話では、空き巣にネックレスを盗まれたことを「俺」に隠し、彼らだけで泥棒探しを始めますし、また彼らが泥棒から本当に取り返したかったモノも「俺」にずっと隠していました。第4話では、迷い犬を自分たちの家で飼うことに決めた双子の兄弟は、「俺」に飼う許可を求めますが、「俺」が自分たちの秘密の関係が灘尾礼子先生(小西真奈美)にばれた以上はもう自分は彼ら兄弟とは関係がないと突っぱねたとき、彼らも「俺」に「もうパパじゃないんだから僕たちが好きなようにしていいんだね」と言ってこの犬を勝手に飼い始めます。 第5話では、双子の兄弟の直が「お父さんやお母さんは僕たちを捨てんだから、もう帰って来ないよ」と言い、彼らが描いた両親の絵を「もう僕たちのことを忘れてしまっているよ」と言いながら破り捨てようとしたとき、灘尾礼子先生は、「違う! 忘れてなんかいない!! 先生も忘れたことがない!!!」と叫び、礼子先生にも子どもがいるが、夫と離婚したとき彼女は無職だったので、裁判所が子どもの親権を別れた夫に与え、泣く泣く彼女は子どもと別れた事実を兄弟に伝えます。それに対し、なんと直は礼子先生に対して「先生も捨てたんだ! 子どもがどんなに悲しいか考えなかったの!! 出て行って!!!」と激しくなじり、両親の絵を破り捨てています。夜を徹して看護してくれた先生になんという言いぐさでしょうか。原作のなかでは、兄弟たちは心の哀しみをおくびにも出さずに明るく振っているのに、原作とは全く異なる存在としか言えませんね。 第9話では、双子の兄弟たちは灘尾礼子先生宛に彼女の子どもの久島航太(横山幸汰) からの嘘の手紙を書き、後で礼子先生に子どもに会えたかと質問したりしています。そして双子の兄弟たちの手紙が嘘の手紙だとバレると、「いいじゃないか。先生も喜んでくれたし。それに会えたし」なんて反論しています。それに対し「俺」は、「会えなかったのだ!! 人の心を弄(もてあそ)んで、最低のことをしたんだぞ!!!」と激しく叱っていますが、私も「俺」の言葉に大きくうなずきましたよ。双子の兄弟が礼子先生の子どもの状況なんか何も分からない癖に「会いたいに決まっている」と勝手に判断して嘘の手紙を書くその無神経さにただただ怒りを覚えるだけでした。 第10話では、有村洋一(柏原収史)が喫茶店で実の娘の美月(石井萌々果)のよそよそしい態度に接し、独り淋しく店を出たとき、それを見ていた双子の兄弟は美月に「このままでいいの」「ずっと探していたんだよ」「もう会えないかもしれないよ」と言って、彼女の思いを父親に正直に伝えるように強く促します。結果オーライとは言え、彼らの行為には可愛げがありません。少女の哀しい境遇を実際に知りもしないで、そんな余計な口出しをするもんじゃないと腹が立ってきました。脚本にも問題があるのでしょうが、テレビ版の双子の兄弟たちの言動に非常な違和感を覚えたるのは私だけなんでしょうか。 このような双子の兄弟の生意気で小憎らしい言動を見ていて、彼らに対する同情と共感が深まるどころか強い反発を覚えてしまいました。だから最終話を見終わって、「このテレビドラマを見てあんまり楽しくなかった」とつい捨て台詞を言ってしまったのです。このテレビドラマにたずさわった人たちには随分ひどいコメントだと思いますが、ごめんなさいね。
2012年03月21日
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今夜(3月19日)の「ステップファザー・ステップ」(第11話)はついに最終回を迎え、そのタイトルは「衝撃と号泣のラスト16分!!」でした。 双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)が暮らしている宗野家で「俺」(上川隆也)は双子の兄弟の父親である宗野正雄(東根作寿英)の部屋から暮志木(くらしき)市にある小原(こはら)美術館の入場券を見つけます。「俺」は、絵画とはあまり関係のなさそうな宗野がこの美術館の入場券を持っていることに不審を抱きます。もしかしたらこの美術館と失踪した宗野正雄との間に何らかの関係があるのかもしれません。 柳瀬豪造(伊東四朗)の話によると、この美術館は岡山にある倉敷の大原美術館を真似して暮志木市長の小原(山田剛明)が市役所の一部を改造して作ったものだそうで、同美術館に陳列されている「名画」も一作品を除いて全て贋作ばかりだそうで、ただスペインの画家のセバスチャンの「陽光の下の狂気」という作品だけが唯一本物とのことです。 この暮志木(くらしき)にある小原(こはら)美術館のことは、宮部みゆきの原作『ステップファザー・ステップ』の第2話「トラブル・トラベラー」に出て来ます。原作は、群馬と栃木の県境にある暮志木(くらしき)町の小原(こはら)美術館についてつぎのように紹介しています。 暮志木町の小原町長が「ふるさと創生」(1988年から1989年にかけて当時の竹下内閣が全国の市区町村に地域振興のために資金1億円を交付した政策)の1億円を使って有名な観光地の倉敷をまるごとコピーして町興しを行おうと計画し、町長の姓に因んで小原美術館も建てたとのことで、この美術館にも1枚の絵を除いて全て複製が飾られるという徹底したコピー精神を発揮しています。ただ、16世紀のスペインの画家のセバスチャンの「陽光の下の狂気」のみが同美術館にある唯一の本物とのことです。 さて、今夜のテレビドラマ最終話では、失踪した宗野正雄の足跡を暮志木市の小原美術館から辿れるのではないかと「俺」は考えて同美術館を訪れます。同美術館で「俺」は贋作創りの名人の「画聖=ピカソ」(平泉成)とすれ違います。さらに暮志木の市役所の地下に「俺」は潜入し、そこで作業服姿で電源装置を操作している宗野に遭遇しますが、宗野は「俺」に声を掛けられて慌てて逃げ出します。 そのとき、美術館内に銃声が響き渡り、「俺」は驚いて逃げ出す見学者とともに外に出るのですが、そこで直(渋谷龍生)に声を掛けられ、「哲がまだ館内にいる」と伝えられます。双子の兄弟は「俺」を尾行してこの美術館にやって来ていたのですが、事件が起こったとき哲は逃げ遅れたのです。 市長執務室に立て篭った覆面の三人組は、市長秘書の溝口(小沢真珠)を人質にし、市長の身柄を要求しますが、警察の突入部隊が執務室に入ったときには犯人たちはみんな逃げ出しており、執務室内には人質として縛られていた溝口たち四人の市役所職員の姿しかありませんでした。 この奇妙な事件が起こったとき、哲は市役所の地下内にいて、犯人たちが電源設備を切ろうとして失敗したとき、「計画がまるつぶれだ」と叫んでいるのを偶然耳にしています。「俺」は後でそのことを哲から伝えられ、それがヒントとなって今回の事件が秘書の溝口たちが闇の組織と組んで、市長襲撃を装って美術館内のセキュリティ装置の電源を切ってセバスチャンの「陽光の下の狂気」を盗んで贋作とすり替えようとしたものだと推理します。 再び暮志木の市役所に潜入した「俺」は、実際そこに名画の贋作(「画聖=ピカソ」が本物とすり替えるために作成したもの)があることを発見し、市長執務室で秘書の溝口に彼女たちが計画した犯罪の内容を明らかにするとともに、証人として「画聖=ピカソ」を登場させます。ピカソは彼女に「あきらめろ、正直に話せ」と迫り、もう隠しきれないと観念した溝口は、「町のためだと市長の下らない美術館作りに付きあったが、もうこんな馬鹿馬鹿しいことをやるのに疲れたので、退職金代わりに名画を盗もうと思った」と白状します。 さらに秘書の溝口は、宗野正雄も今回の事件に関係していること、それは記者としての彼が闇の組織への潜入取材のためのものであること、そんな宗野が故意にセキュリティ装置の電源を落とすことに失敗したため、闇の組織の連中に拉致されおり、セバスチャンの本物の「陽光の下の狂気」を彼らに渡さないと殺されることを伝えます。それで「俺」は再び本職の泥棒となって暮志木の美術館内に潜入し、本物の名画と贋作とを入れ替えることに成功し、盗んだ本物の名画を闇の組織のメンバーに手渡し、宗野正雄は無事に解放されます。 双子の兄弟たちとの「不法行為は一切禁止」という「ステップファザー契約」を破った「俺」は、兄弟たちに本物の父親が帰って来るのだから「ニセモノの居場所はない」「いつかは別れることになるのは分かっていただろう」「契約で仕方なくパパをやっていたが、面倒くさいんだよ」と言って彼らに別れを告げます。兄弟は「もっとパパと一緒にいたい」「パパはパパだよ」と泣いて別れたがらないのに対し、「俺」はさらに「泣くな! 男だろう!! 面倒くさかったがおまえたちと会えてよかった。楽しかった」という言葉を残して立ち去ります。 ところが、なんと双子の兄弟の本物の父親である宗野正雄は、「兄弟たちに迷惑を掛けるといけないから」と言って彼らの顔も見ずにまたどこかに失踪してしまいました。それで自動的に「俺」と双子の兄弟たちの「ステップファザー契約」はさらに継続ということで、「俺」は学校の保護者会に再び顔を見せるのでありましたとさ、おしまい。 この全11話の連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」について、後日、一つの文章にまとめたいと思っています(かなり辛口の批評になりそうですよ)。
2012年03月19日
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今夜(3月12日)の「ステップファザー・ステップ」第10話のタイトルは「消えたダイヤと家族失踪の謎」でした。 柳瀬豪造(伊東四朗)の事務所に、名前が佐藤でIT企業の社長をしているという男(柏原収史)が訪ねて来ます。この男は、切れ端に置時計が写っている写真を示し、時計を探してくれたら報酬として二百万円を渡すと言うので、「俺」(上川隆也)は調査を開始します。そのことを知った双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)もその調査の助手をしたいと言い出します。親が残した生活費が少なくなって来たため、自分たちで生活費が稼ぎたかったのです。 「俺」たちの調査の結果、置時計の捜査を依頼した男が名乗った「佐藤」は偽名で、正体は3年前にダイヤモンドを盗んで逃亡中の有村洋一ということが判明します。では、なぜ有村は置時計を探しているのでしょうか。「俺」は、その置時計に盗んだダイヤモンドが隠されているのではないかと最初は推測しますが、半分に破れた右半分に置時計が写っているこの写真の中に撮影日時が「09 11 15」と記されていることから、この写真の左半分には11月15日の成人式の日に撮られた家族の姿が写っているのではないかと推理し、新たに有村の家族について調査を開始します。その調査の結果、この有村の妻は夫の強盗事件で心労が重なってすでに亡くなっているが、一人残され施設に入っていた娘の美月(石井萌々果)は「花水木」という喫茶店を営む夫婦の養女となっていること、そしてその喫茶店に問題の置時計も置いてあること等が判明します。 そんな事実を知った「俺」は、有村を柳瀬の法律事務所に呼び出し、探していたのは置時計ではなく家族なんだろうと彼の真意をただし、また有村の妻は死亡しているが娘は喫茶店の主人夫婦の養女となっていることを伝えます。有村は「俺」に「娘に会わせてくれ」と懇願しますが、「俺」は有村に「あんたは家族を捨てたんだ! 勝手なことをぬかすな!!」と言って彼の願いを断固断ります。 しかし、そのことを双子の兄弟に話したとき、彼らは有村の娘は「たった一人しかいないお父さんだから、きっと会いたいと思っている」だろうと言い、有村に合わせてやるべきだと主張します。それで「俺」は有村に娘が「花水木」という喫茶店に居ることを教えますが、絶対に自分が父親だとは言うなと厳命します。 有村は「花水木」に客として訪れますが、そのとき喫茶店で手伝いをしていた娘の美月は、彼に「お一人ですか」、「お好きな席にどうぞ」「ご注文は?」とあくまでも店のウェイトレスとしてよそよそしく接し、有村の「コーヒー」との言葉に「かしこまりました」と返事するだけでした。たまりかねた有村は注文したコーヒーも飲まずに独り淋しく店を出て行きます。 それを見ていた双子の兄弟が美月に「このままでいいの」「ずっと探していたんだよ」「もう会えないかもしれないよ」と言って、彼女の思いを父親に正直に伝えるように促します。じっと心の思いをこらえていた美月は店を飛び出し、有村の背中に「お父さん!!」と声を掛け、振り向いた彼に向かって「お父さんの馬鹿!!」と叫び、そして「お父さんが泥棒などするから、お母さんは死んでしまったのよ。お母さんのことをほおっておくから、お母さんは死んでしまったのよ。独りぼっちで淋しかった」とこれまで心の奥底に仕舞いこんでいた思いを父親にぶつけ、有村も「美月にずっと会いたがったのだ」と言って親子はひしと抱き合います。 この場面、有村の娘の美月を演じた石井萌々果の演技が素晴らしく、このドラマではこれまでほとんど涙を流したこともなかった私ですがジワーッと涙が滲み出て来ました。 この子役の石井萌々果の素晴らしい演技に感心しながら、つい宗野家の双子の兄弟を比較してしまいました。前回もこの双子の兄弟は、礼子先生に彼女の子どもの「コウタ」くんからの嘘の手紙を書いたりしています。今回も美月ちゃんに父親の有村に気持ちを伝えるように強く促していますが、結果オーライとは言え、彼らの行為には可愛げがありません。私の妻なんか「そんな余計な口出しをするもんじゃないわ」と怒っていました。脚本にも問題があるのでしょうが、テレビ版の双子の兄弟たちの言動にいつも違和感を覚え続けているのは私だけなんでしょうか。 ところで、この連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」も来週でいよいよ終了しますね。今回の第10話の最初に双子の兄弟の父親である宗野正雄(東根作寿英)が子どもたちと模型の飛行機を作って楽しんだ日のことを思い出す場面が出て来ますし、ドラマの中頃には宗野家の前に佇んでいるところを脇坂信之助(渡辺いっけ)とその妻の芳江(須藤理彩)に誰何されて慌てて逃げ出しており、ドラマの最後には宗野家に電話を掛け、誰も出てこないので留守番電話に何も言葉を残さずそのまま切っています。さて、この父親と双子の兄弟は最終回で再会を果たすのでしょうか、「俺」と双子の兄弟との関係はどうなるのでしょうか、とっても気になるところです。 なお、宮部みゆきの原作『ステップファザー・ステップ』の最終話「ミルキー・ウエイ」のラストでは、「俺」が双子の兄弟と東京ドームで日本ハム対西武戦を観戦した翌日の午後、兄弟を今出新町の家に送っていったときのことをつぎのように書いています。 玄関の鍵を開けてなかに入ると、直ほまっさきにあちこちの窓を開けて空気を入れ替え、哲は留守番電話のメッセージを再生した。「――もしもし、父さんだよ」 低音の声が、そう言った。俺たち三人、てんでにその場に棒立ちになって、そのメッセージに聞き入った。「元気にしてるかい? 様子を知りたくてかけてみた。また電話するよ」 少しためらい、間があいた。かすかにクラシック音楽が聞こえている。電話から流れ出てくるその声は、初めて耳にするものだった。これまで聞いたどんな男の声とも違っていた。「そのうち、一度帰りたいと思っている。そのうち……きっと、そのうちに。じやあ、元気でいるんだよ」 そこで、メッセージは切れていた。 両手を身体の脇に垂らして、哲は電話機を見つめている。カーテンに手をかけたまま、直もつっ立っている。 やがて、おずおずと、哲が言った。「お父さんは」 同じようにおずおずと、直が続けた。「父さんの声を」「初めて」「聞いたんだね?」 俺はうなずいた。「うん、そうだ」 俺には見えない不思議なパイプラインを通して、双子は心を通わせたらしい。そこで合意に達したらしい。そろって、にっこり笑った。「ねえ」「今夜は」「庭でバーベキューをしようよ」「星がきれいだからさ」「そりやいいなあ」と、俺も言った。 その夜のバーベキューほ大成功だった。いい匂いにつられて、近所の連中が何人か立ち寄った。犬もちらほらやってきた。 梅雨明けの夏本番、晴れた夜空に、俺たちの頭の上を横切るようにして、天の川が流れている。この降るような星の眺めは、今出新町の唯一の取り柄だ。 双子の父さんは、いつかきっと、一度は帰ると言っていた。その言葉に嘘はないだろう。母親だって、同じようにして戻ってくるかもしれない。だが、それはいつになる? いつのことだ? そんなことは、誰にもわかりやしない。明日のことを思い煩うことなかれ、だ。 天の川の流れつくところが何処かなんて、いったい誰に知ることができる? 運命も、未来の出来事もそれと同じようなものだ。行くべきところに行き着く。だからそれまでは、流れのままに気楽にしていこう。 それで充分、俺たちは幸せなのだから。
2012年03月12日
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今夜(3月5日)の「ステップファザー・ステップ」第9話のタイトルは「嘘の手紙と偽の壷…波乱最終章」でした。この連続テレビドラマは今月3月19日でいよいよ終わりになるようですね。また今回のタイトルにある「偽の壺」とは、贋作名人で「画聖=ピカソ」(平泉成が演じています)と称される人物が作ったニセモノの壺のことで、それを巡っての騒動が今回のドラマのメインでした。 なお、 宮部みゆきの原作『ステップファザー・ステップ』では、その第2話「トラブル・トラベラー」に初めて通称「画聖」と呼ばれる人物が登場します。彼の外見は「長身痩躯、顎の辺りまで届く長髪。これでもう少し身なりがよければ、美術評論家を詐称しても通りそうな知的な雰囲気の持ち主」なんですが、この人物の本当の「専門」は置き引きです。しかし、模写に関して卓越した技量を持っていることから「画聖」とあだ名されており、趣味が千円札や一万円札を本物そっくりに模写することで、置き引きでブツをいただく代わりに自分が描いた「作品」イコール偽札を残して自己顕示欲を満足させているような人物です。原作で最初に登場した第2話では趣味の偽札作りだけでなく名画の贋作でも金儲けをしていますが、さらに原作の最終話の第7話「ミルキー・ウエイ」にも登場して来て、宗野家の双子の兄弟が誘拐されたとき、「俺」の依頼を受けて身代金として渡す見せ金と犯人を驚かせる張りぼての生首を作って兄弟救出のために重要な役割を演じています。 さて今回のテレビドラマ「ステップファザー・ステップ」第9話では、怪盗キングの「俺」(上川隆也)が盗んだ名品の壺を弁護士の柳瀬の親父(伊東四朗)が資産家の佐伯(大鷹明良)という資産家に売りますが、佐伯から「金の用意が出来ない」と返品されます。それで柳瀬はその壺を別の暴力団風の人物に売ったのですが、壺を購入した男はそれを鑑定に出し、それが贋作だと判明したと怒り出し、柳瀬の親父に本物を持ってこないと命はないぞと脅かします。 柳瀬の親父は、「俺」が双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)たちと「ステップファザー契約」を結んで「不法行為は一切禁止」ということになっているので、怪盗キングのニセモノとして郷田和男(マギー)を雇って佐伯の家から本物の壺を取り返そうとします。しかし佐伯の家に盗みに入ったニセ怪盗キングの郷田は厳重なセキュリティー対策が施されていたため、けたたましく鳴り響く防犯ベルに驚いて何も盗まずに逃げ出します。ただ柳瀬の親父が郷田に渡したトランプのキングのカードだけを残したので、新聞等は「怪盗キングが初めて盗みに失敗 防犯ベルに慌てて逃げ出す」と大々的に報じます。「俺」はニセ怪盗キングの無様な失敗にプライドを傷つけられ、ニセ怪盗キングの正体を暴こうと行動を開始し、柳瀬の親父が郷田を怪盗キングのニセモノとして雇っていることを知りますが、そのことを柳瀬の親父に問い詰めると、もう「俺」のように「稼ぎのない泥棒など、置いておく必要はない」と言い出し、法律事務所から追い出そうとします。 柳瀬の親父の心ない言葉を真に受けてすっかり落ち込んだ「俺」ですが、数日後に再び柳瀬の事務所を訪れたとき、柳瀬の姿は見えず、段ボールの箱の中に隠れていたニセキングを見付けます。郷田は、柳瀬が暴力団風の男たちに連れ去られたこと、この柳瀬誘拐には資産家の佐伯の家にある壺が絡んでいるらしいことを「俺」に伝えます。そして彼らから明日の7時までに壺を持って来ないと柳瀬の命はないとの電話が入ります。柳瀬は「俺」にとっては「18才のときに拾って育ててくれた大切な恩人」です。それで「俺」は双子の兄弟たちに柳瀬救出のために自分が泥棒に戻ることを伝えます。そのとき、双子の兄弟たちは「泥棒してもいいからまた戻って来て」「待ってるからね」と「俺」に懇願しています。 壺の贋作には「画聖=ピカソ」が関連しているのではないかと「俺」は推測し、彼から壺の贋作の経緯を訊き出します。それによると、柳瀬から本物の壺を預かった佐伯が「ピカソ」に頼んで贋作の壺を作り、その贋作を柳瀬に「金が用意できなかった」との理由で「返却」していたのです。それで「俺」は「ピカソ」にもう一つ壺の贋作を依頼し、佐伯の家にある本物の壺を盗み出して柳瀬を救出するための作戦を開始します。すなわち、双子の兄弟の約束を守って、彼自身は佐伯の家に泥棒に入らず、家の外から盗みに入った偽キングの郷田を巧みに指示して本物の壺を盗み出させ、代わりにそこに「ピカソ」が作った贋作を置かせます。偽キングの郷田を使って盗み出させた「本物」の壺は元の持ち主に返そうと思ったからです。そして「俺」は「ピカソ」が作ったもう一つの贋作の壺を暴力団風の男たちに渡して柳瀬を解放することに成功します。 今回の贋作騒動は、どうも「ピカソ」が裏で仕組んで大儲けをしたようで、彼の見事な手口にみんな振り回されたようですね。佐伯が「ピカソ」に頼んで作ってもらった贋作の壺を「ピカソ」自身が鑑定家を装ってニセモノと判定したことから暴力団風の男たちによる柳瀬の誘拐事件が起こり、新たな贋作の依頼が持ち込まれたのですからね。 ところで、今回のタイトルには「偽の壺」以外にもう一つ「嘘の手紙」という言葉が入っていましたね。宗野家の双子の兄弟たちが礼子先生の子どもの「コウタ」くんからの嘘の手紙を書き、後で礼子先生に子どもに会えたかと質問したとき、礼子先生は会ってもいないのに「会えたよ。とても嬉しかった」と嘘をつきます。そして双子の兄弟たちの手紙がバレて彼らが「俺」に激しく叱られたとき、「いいじゃないか。先生も喜んでくれたし。それに会えたし」なんて反論します。それに対して俺」は、「会えなかったのだ!! 人の心を弄(もてあそ)んで、最低のことをしたんだぞ!!!」と激しく叱っています。このとき私も「俺」の言葉に大きくうなずきましたよ。双子の兄弟たちには礼子先生の子どもの状況なんか何も分からない癖に「会いたいに決まっている」と勝手に判断して嘘の手紙をかく無神経さにただただ怒りを覚えるだけでした。しかし、礼子先生は「その手紙が嘘だと分かっていました。でも優しい嘘ってあると思うんです。思いやりのこもった嘘って」と「俺」に言い、子どもたちを叱ることを止めさせています。 そして柳瀬の親父が「俺」に「稼ぎのない泥棒など、置いておく必要はない」と言った言葉もまた「優しい嘘」だったのですね。柳瀬の親父としては、「俺」に双子の兄弟との約束(もう二度と泥棒を行わない)を守ってパパを続けてもらいたいと思ってそんな心にもない嘘を言ったのですね。
2012年03月05日
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今夜(2月27日)のテレビドラマ「ステップファザー・ステップ」第8話も前回の第7話と同様に宮部みゆきの原作に基づいています。原作『ステップファザー・ステップ』の第6話「ハンド・クーラー」では、双子の兄弟が杉花粉症に罹って耳鼻咽喉科に通うようになり、そこで知り合った城が崎みやびという12歳のの女の子から彼女の家で起こっている奇妙な出来事を伝えられます。それは、最近になって1日おきに山形新聞の朝刊が玄関先に投げ込まれるようになったというのです。それからしばらくして、みやびちゃんの父親で銀行に勤務している人物が大怪我を負い、みやびちゃんのお母さんは奇妙な新聞投函事件と関連があるのではないかと非常な恐怖を覚えます。双子の兄弟の依頼を受けて「俺」はこの事件の謎を解くために調査を開始します……。 今夜のテレビドラマでは、新聞が投げ込まれる先は宗野家の双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)の隣人である刑事の脇坂信之助(渡辺いっけい)の家です。毎日のように投げ込まれる新聞にはマジックで「忘れるなよ」という言葉が大書されていますが、新聞の種類は様々で投函される時間帯も記事の内容もバラバラなため共通点があるようにも思われません。脇坂刑事の妻の芳江(須藤理彩)は夫に犯人の正体を突き止めるように迫りますが、全く埒が明かず事実究明は進みません。それで脇坂刑事の娘の早苗(山岡愛姫)が心配して宗野家の双子の兄弟たちや灘尾礼子先生(小西真奈美)に相談を持ちこみ、「俺」(上川隆也)も成り行き上この謎の解明に乗り出すことになります。 まず「俺」は、投げ込まれた新聞のなかに「日本独楽研究会新聞」があったことがヒントとなり、投函された各種新聞の出版元が全て狛江市であることに気がつきますがその先の謎が解明できません。そんななかで脇坂家の娘の早苗が落とした体操着袋までが新聞と一緒に投げ込まれ、イライラを募らせていた芳江は夫の脇坂刑事に対する不満をついに爆発させ、脇坂信之助に離婚を切り出します。脇坂家の両親の離婚の危機に娘の早苗は心を痛め、双子の兄弟たちにそのことを伝えますが、それを偶然耳にした礼子先生は柳瀬豪造(伊東四朗)の法律事務所を訪れて「俺」に謎の解明をあらためて依頼します。 「俺」は投函された各種新聞の出版元が全て狛江市で、その郵便番号「201-01-0107」に謎が隠れているのではないかと推測し、犯人は2010年1月7日に起こった事件を脇坂刑事に思い起こさせようとしているのではないかと推理します。確かに、その日に怪盗キング(正体は「俺」ですね)が明智物産から脱税のために隠していた金塊2億円を盗み出しています。さらに明智物産関係者に探りを入れた秋山ナオ(平山あや)から、明智物産の警備主任の田島浩一(石井正則)がその事件のために解雇され、怪盗キングの窃盗行為を非常に恨んでいることを伝えられます。 「俺」は自分が起こした金塊窃盗事件のために田島のような善人の人生が狂わされている事実を知ってショックを受け、自分のような人間が双子の兄弟のステップファザーを続ける資格はないと考え、礼子先生に双子たちの世話を自分の代わりにしてほしいと頼みます。この「俺」の依頼に礼子先生は、「あなたはあの子たちに真剣に向き合おうとしています。だから心が痛むのです」と言い、新聞投げ込み事件は「あなたのせいで起こったのですから、あなたが止める責任もあります」と諭します。 解雇された田島は、現在はタクシーの運転手をしており、そんな彼を「俺」は尾行し、彼が脇坂家に新聞を投げ込もうとする現場を押さえ、そのような行為をする理由を質します。田島の自白によると、怪盗キングのために田島たちの家族の人生が狂わされてしまったのに、脇坂刑事が本気で怪盗キングを捕まえようとはしていないように思われ、脇坂刑事に明智物産から金塊が盗まれた日を思い起こさせようと考え、今回のような謎の新聞投げ込み事件を始めたとのことです……。 原作では投げこまれる山形新聞の所在地の郵便番号に新聞投げ込み事件の裏に隠された秘密がありましたが、今回のテレビドラマも原作同様に郵便番号にメッセージが秘められていたのですね。 ところで今回のドラマでは、「俺」が泥棒家業をして来た自分のような人間が双子の兄弟たちのステップファザーを続けていいのか疑問を持ちますが、そんな「俺」に自信を持たせるために礼子先生が双子たちの作文を渡しています。その作文には「パパは僕たちが困っているとき一緒に困ってくれます。面倒くせえと言いながら、いつも一緒になって笑ってくれ、いつも一緒に泣いてくれます。そんなパパを僕たちは大好きです」と書いてありましたよ。
2012年02月27日
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今夜(2月20日)の「ステップファザー・ステップ」第7話では、「俺」(上川隆也)が宗野家の双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)のクラス対抗持久走大会のためのトレーニングに付き合うようになり、次の日も一緒に練習することを約束して別れます。翌日、「俺」が兄弟との約束を守って宗野家を訪れ、家の中に入ると見知らぬ男(別所哲也)が出て来ます。慌てた「俺」はその男に「宗野様のお宅ですか」「お子さんはいらっしゃいますか」と矢継ぎ早に質問しますが、その男は「はい」と返事し「双子の子どもがおります」「直と哲の父親です」と言うのです。そう言えば、前回の第6話のラストの方では、宗野家の家の前に紙袋が置かれており、その中には「お母さんより」と書かれた誕生祝いのカードとマフラーが入っていましたね。では今回、宗野家の双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)の実のお父さんが帰って来たのでしょうか。 この連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」の大半は宮部みゆきの原作にはないオリジナルストーリーで作られていますが、ただしテレビドラマ第1話の前半部分は原作の第1話「ステップファザー・ステップ」、テレビドラマ第2話は原作の第4話「ヘルター・スケルター」に基づいて作られており、今回の第7話も久しぶりに原作の最終話「ミルキー・ウエイ」に基づいているようです。 原作の最終話「ミルキー・ウエイ」では、「俺」が久しぶりに双子の兄弟に会うために今出新町の宗野家に出かけますが、玄関で四十半ばの「どちらかと言えば小柄だが、がっちりとした体格の男」と出会うことになります。「俺」がとっさに道を尋ねるふりをして「宗野家さんのお宅ですよね?」と訊いたとき、相手が「はあ、そうですが」と返事をし、「俺」がさらにこの家には双子の兄弟がいるかと質問を続けると、それに対しても「ええ、そうですよ。直と哲。私の息子です」と答えます。そのため「俺」はこの人物をてっきり双子の父親と思い込んでしまい、その場から逃げ出すように立ち去り、柳瀬の親父の事務所にそのまま飛び込み、「午後いっぱいを、俺はずっとゾンビみたいになって」過ごすことになります。しかし実際には、この男は双子の哲を誘拐していた一味の一人で、双子のもう一人の直はなんと別のグループに誘拐されていたことが分かります。それで「俺」は……。 そんな原作を私はすでに読んでいたので、テレビドラマに出てくる見知らぬ男も双子の実の父親ではないだろうとすぐ推測できました。しかしドラマの「俺」も原作と同様に双子たちの家に実の父親が帰って来たと思い込み、すごすごと宗野家から引き返し、自棄酒(やけざけ)を飲んだ後、柳瀬豪造(伊東四朗)の弁護士法律事務所に傷心した姿を現わし、柳瀬の親父や秋山ナオ(平山あや)に自分が子どもたちから「お役御免になった」ことを伝えます。しかし、部屋で独りになったとき「代用品でも換わりの利く部品でもないんだ」と寂しくつぶやくのでした。 ところが翌朝、灘尾礼子先生(小西真奈美)から双子が誘拐されたことを伝えられ、「俺」は柳瀬、秋山ナオ(平山あや)と一緒に宗野家に慌てて出掛け、留守番電話に犯人からの「宗野正雄、お前の子どもをあずかっている」とのメッセージが残されていることを知ります。さらに誘拐犯人から電話が掛って来て、「身代金2千万円を用意しろ」と時間と場所を指定します。「俺」は柳瀬の親父から2千万円を用意してもらい、指定の場所に行きますが、犯人に身代金だけを奪われ、双子の兄弟は取り戻せません。ただ、身代金を入れたバッグにGPS機能のある機械を忍ばせていたので、犯人から「一人だけ帰れ」と解放された哲をすぐ見つけ出すことが出来ました。しかし、直は連れ去られたままです。 「俺」は、誘拐犯人が新聞社に勤めていた宗野正雄の顔を知っているらしいこと、双子の兄弟の一人をまだ解放しないことから、その誘拐目的が金だけではなく本物の宗野正雄に恨みを抱いている人間ではないかと推測し、柳瀬の親父に犯人の正体を突き止めてくれと依頼します。その結果、双子の兄弟の実の父親がある食品会社の産地偽装を暴き、そのために食品会社が倒産して幹部の一人が自殺しており、同じ会社でパートナーを組んでいた男に佐久間という人物がいることも判明します。「俺」は誘拐犯人がこの佐久間に違いないと判断し、さらに彼が直を監禁している場所の目星をつけます……。 今回の誘拐犯人役を演じたのは別所哲也ですが、彼が係わった食品偽装事件は上っ面をなぞっただけの感じということもあり、彼がなぜ自分の会社の食品偽装を暴露した新聞記者を逆恨みしてその記者の殺害を企図し、記者の子どもを誘拐してまでそのことを実行しようと考えるようになったのかがよく分からず、何よりも彼が子どもを実際に殺害するような凶悪犯人にはとても見えず、おそらく視聴者の多くがこの誘拐事件の成り行きを安心して視聴していたと思います。そのためか、最近涙腺が緩みっぱなしの私ですが、「俺」と双子の兄弟の再会場面にも、また対抗持久走大会の競争場面にも涙は出ず、用意していたハンカチが使われることはありませんでした。 今回の誘拐ドラマは、原作と同じようにド素人による単純な金銭目的の誘拐事件ということにし、徹底したドタバタ喜劇にしてしまった方がよかったのではないでしょうか。
2012年02月20日
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今夜(2月13日)の「ステップファザー・ステップ」第6話は、秋山ナオ(平山あや)が重要な役割を演じ、その蓮っ葉な言動の裏に隠された彼女の悲しい過去が浮き彫りにされます。 この秋山ナオの表の顔は柳瀬法律事務所の秘書兼事務員なのですが、実際は女詐欺師です。今回も鮫山(岡田義徳)という男に色仕掛けで詐欺行為を働いていましたが、うっかり手帳などを忘れたことから彼女の正体がバレてしまいます。彼女が詐欺師だと知った鮫山は逆上し、見付けたナオにナイフをちらつかせ、「地獄の底まで追いつめてやる」と脅かします。このときはパトロール中の警官に見つかり、鮫山は逃走します。 鮫山に脅かされたナオは、怖くなって宗野家の双子の兄弟(渋谷龍生、樹生)の家に逃げ込みます。ちょうどそのとき、「俺」(上川隆也)と礼子先生(小西真奈美)は双子の兄弟のためにサプライズ誕生会を計画していました。しかし、弁護士の柳瀬豪造(伊東四朗)から「俺」に「鮫山がナオの正体を知って追いかけている」と危険を知らせる電話連絡があり、双子の家で傍若無人に振舞っている彼女に「俺」は「兄弟たちを巻き込むな」と言います。その言葉にカッとなったナオは「俺」や礼子先生を罵倒するのみならず双子の兄弟にも「ニセモノの親に祝われて嬉しいの」「親なんて平気で子どものことなんか忘れるのよ」なんてことまで言い出し、兄弟の家を出て行こうとします。 そのとき、ナオの忘れた手帳から宗野家に逃げ込んでいる彼女を見付けた鮫山が現われ、ナオを双子の兄弟の家の子供部屋に連れ込んで「俺はお前を愛している。旦那と別れて俺と一緒になれ」と言って、そうでないと家に火を点けるぞと脅かします。鮫山はナオと一緒にいる「俺」の姿を見て、「俺」がナオの夫だと勘違いしたのです。 この後、刑事の脇坂信之助(渡辺いっけ)とその妻の芳江(須藤理彩)をも巻き込んでのドタバタ喜劇が展開しますが、このナオと鮫山の追い掛けゴッコを通じて、ナオが体験した少女時代の誕生日の悲しい過去が紹介され、なぜ彼女が双子の兄弟たちの誕生祝いにひねくれた態度を取ったのかが分かってきます。そんなナオですが、子供部屋のクローゼットに隠れていた双子の兄弟が彼女を守ろうと鮫山にとびかかり、「俺」が子どもたちともみ合っている鮫山を取り押さた後、「せっかくの誕生日を台無しにしてごめんね」と素直に子どもたちに謝っています。 この連続ドラマ「ステップファザー・ステップ」に登場する主要人物たちはみんな悲しい子ども時代の思い出を胸に抱えているのですね。おそらく、今後はナオも宗野家の双子の兄弟の秘密を守るために積極的な役割を果たすようになるのではないでしょうか。
2012年02月13日
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今夜(2月6日)のTBS系連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」第5回目は、灘尾礼子先生(小西真奈美)が泥棒の「俺」(上川隆也)と宗野の双子の兄弟の直と哲(渋谷龍生、樹生)とが疑似家族を演じていることを知って、しばしば宗野家を訪れて兄弟の世話を始めたことから、近所で「俺」と礼子先生とが不倫関係にあるのではないかという噂が立ち始めます。そんな噂が広まっていることを知った「俺」は、双子の兄弟に礼子先生に頼って迷惑を掛けるようなことをするな、先生を巻き込まないようにしろ注意します。しかし、小学校に「不倫教師をいますぐ追い出せ」と書かれた怪文書が「俺」と礼子先生が一緒に写っている写真と一緒に届けられます。 そんなとき、双子の兄弟の直(ただし)が高熱を出して寝込んでしまい、哲(さとし)は「俺」に電話をして助けを求めますが、「俺」は子どもの看病の仕方が全く分からず戸惑うばかりです。そんな「俺」の様子を見た哲は、仕方なく礼子先生にも電話で連絡をします。電話で直の病気を知った礼子先生は、不倫疑惑をものともせずに宗野家に駆けつけ、親身になって直の看病をします。 礼子先生の夜を徹しての看護の結果、直の熱も下がり、翌朝になって礼子先生と「俺」が宗野家から出てきたところを近所に住む刑事の脇坂信之助(渡辺いっけ)とその の妻の芳江(須藤理彩)に見つけられ、彼らから不倫疑惑を問い質されます。そのとき、脇坂刑事は親切心から「俺」に学校に怪文書と写真が届いていることをそっと知らせて注意を促します。そんな事実があることを初めて知った「俺」は、学校に忍び込み、怪文書と写真を探し出してコピーに取り、それを送った人物の正体を突き止めようとします……。 一方、元気になった直は「もうこれ以上先生に迷惑をかけられない」と哲に言い出し、「お父さんやお母さんは僕たちを捨てんだから、もう帰って来ないよ」とも言って、両親が自分たち兄弟を見捨てて「家出」した事実を世間に明らかにしょうと主張し、また彼らが描いた両親の絵を「もう僕たちのことを忘れてしまっているよ」と言いながら破り捨てようとします。こんな様子を見ていた礼子先生は、「違う! 忘れてなんかいない!! 先生も忘れたことがない!!!」と叫び、礼子先生にも子どもがいるが、夫と離婚したとき彼女は無職だったので、裁判所が子どもの親権を別れた夫に与え、泣く泣く彼女は子どもと別れた事実を兄弟に伝えます。それに対し、直は礼子先生が自分たちを見捨てて「家出」した母親のように思え、「先生も捨てたんだ! 子どもがどんなに悲しいか考えなかったの!! 出て行って!!!」と激しくなじり、両親の絵を破り捨ててしまいます。 今回、礼子先生の悲しい過去も明らかになり、また「俺」も彼の父親が幼い頃に失踪し、母親も病死したことを礼子先生に伝えています。こんな悲しい過去を持つ二人が協力して遺棄児童の双子の兄弟の疑似親的な役割を果たしていくことになるのですね。 なお、今回の第5回目で礼子先生が離婚した相手は、久島ビル管理取締役社長の久島啓一(眞島秀和)という人物で、礼子との間に生まれた男の子を引き取って、再婚した女性と一緒に暮らしているようです。 それから、利益ばかりを追及している金にガメツイ悪徳弁護士とばかり思われていた柳瀬豪造(伊東四朗)ですが、意外にも今回はその弁護士の肩書きを活用して礼子と「俺」の不倫疑惑を「晴らす」素晴らしいヒーローの役割を果たし、思わず拍手してしまいましたよ。 それは礼子先生と「俺」とが学校で二人の不倫疑惑を追及されたときのことです。「俺」が「自分の浮気が原因で妻が怒って家を出て行った。自分の不倫の相手は礼子先生ではない。礼子先生は後に残された双子の兄弟たちを気遣って家に来てくれているだけです」と弁明するのですが、疑惑を追及する同僚の教師たちが「そのことを奥さんに確認したい」と言い出します。 そのときに柳瀬の親父が弁護士として颯爽と登場し、「私は奥さんから離婚処理を頼まれている。礼子先生が夫とのあらぬ噂で迷惑を掛けられていると耳にするが、そのことを代わりに謝って来てほしいと頼まれました」と言い、「あまり二人の関係を疑って不倫だと騒ぎ立てるようでしたら名誉棄損で訴えますよ」と逆に同僚の教師たちを脅かします。こうして二人は不倫関係にないことが校内のみならず今出新町全体にも広く伝わり(例の主婦の強力なネットワークを通じてだと思いますが)、礼子先生は堂々と宗野家に出入りし双子の兄弟の面倒が見られることになります。
2012年02月06日
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私は、興味を持って視聴したテレビドラマに原作があると、その原作を購入してテレビドラマと比較することがよくあります。文章で表現された原作がテレビドラマのために映像化されるのですから、原作の登場人物のキャラクターや人間関係、活躍する舞台、さらにはストーリー等が程度の差はあれいろいろ異なるのは当たり前のことですが、ドラマ制作側が原作をどのような意図でどう手直ししたのかを考察することはなかなか楽しいことです。 2012年1月9日からTBS系の連続テレビドラマとしてスタートした「ステップファザー・ステップ」も私の大好きな宮部みゆき作品の小説『ステップファザー・ステップ』(講談社、93.03.25)を原作としたもので、全7篇で構成されている連続短編集です。小説の主人公である「俺」は、廃業した柳瀬という元弁護士の事務所で表向きは調査員をしていますが、実際には柳瀬から情報を得て窃盗を行っている35才のプロの泥棒という設定です。そんな「俺」が東京郊外の今出新町という新興住宅地の一軒の家に泥棒に入ろうとしたとき、落雷で屋根から落ちて気絶してしまい、隣の家に住む宗野家の直(ただし)と哲(さとし)という中学一年生の一卵性双生児たちに「拾われ」て介抱されるところから物語が始まります。 この双子の兄弟は、彼ら自身が「父さんは、会社で自分の秘書をしていた女の人と」「母さんは、この家を建ててくれた工務店の社長」とそれぞれ駆け落ちしてしまったと言っているように、両親から見捨てられた遺棄児童たちだったのですが、彼らは自分たちが遺棄児童だと世間が知ったら施設に入れられてしまうことを恐れ、屋根から落ちて来た泥棒の「俺」と交渉し、「僕たち、あなたの指紋をとっちゃった」「ねぇ、前科あるんでしょう? まずいよね?」「またムショに入るの、イヤじゃない」と子どものくせに恐喝まがい、いや恐喝そのものだと思いますが、「俺」を脅かして彼らが必要なときだけ父親のふりをし、また彼らのために生活費も入れる疑似の父親(ステップファザー)となることを約束させてしまいます。なお、宗野家の家族がこの今出新町に来てまだ半年ちょっとなので、双子の兄弟としては「俺」が彼らの家に住み込んで父親のふりをしても近所の人たちから特に不審に思われることはないとだろうと判断しての擬似親父作りです。なんと彼らはしたたかで賢くてコワーイお子さんたちでしょうか。 原作は「俺」がそんな双子の兄弟のステップファザーをしながら泥棒家業を続け、何度もピンチに遭遇した双子の兄弟たちを救う過程でつぎつぎと事件の謎を解いていく名探偵の役割をも演じる奇想天外なユーモアミステリー小説です。また、最初は双子の兄弟から強いられて仕方なく疑似の父親役を演じていた「俺」が、双子の兄弟の危機を救うなかで次第に彼ら兄弟に対する情愛を深めていくという一種の変形ファミリー小説でもあります。 テレビドラマでは、主人公の怪盗キングは上川隆也が演じ、幼い頃から弁護士の柳瀬豪造(伊東四朗)の法律事務所に住んで怪盗に仕立て上げられ、表向きは法律事務所で情報員として雇われていますが、その実態は柳瀬から不正蓄財の情報を得て悪人たちから金品を巻き上げている義賊という設定です。 そんな「俺」が原作同様に宗野家の直と哲(渋谷龍生・樹生)の双子の兄弟のステップファザーをやらされることになるのですが、原作では双子の兄弟は「俺」を脅かして無理やりステップファザーにするときに、彼らのために生活費を入れることも約束させており、さらに「俺」の泥棒の手伝いをして得たお金の一部を分け前としてもらったりしています。しかし、これは子どもたちも見るドラマとして教育上よくないと判断したのか、ドラマの双子の兄弟たちは親が残した通帳から生活をしているという設定に変え、さらにご丁寧に双子の兄弟たちを柳瀬の法律事務所まで行かせて、「俺」との間に「不法行為は一切禁止」という条項まで入っている「ステップファザー契約」を結んでいます。 うーん、なんとも公序良俗に反さない実にご立派な「改正」だと感心させられますが、宮部みゆき作品のファンとしては原作の本来の奇想天外な設定の面白さを大いに損なう「改悪」ではないかと大いに不満を感じました。 また原作では、兄弟それぞれ異なる中学校に通う双子の中学生という設定ですが、ドラマでは同じ小学校に通う小学4年生ということにしています。双子の通う学校を一つにすることによりドラマ制作の経費も節約され、内容的にも単純化されて分かりやすくなると考えたのでしょう。また双子の兄弟たちを小学生にしたのは、最近の中学生は成長が早く、原作の双子の兄弟のような可愛らしさを映像で表現するのが難しいと判断したからかもしれませんね。また、彼らの実の父親の職業も会社員(大手の不動産会社の営業部長)から新聞記者に設定変更されていますが、これは主人公の「俺」が平日でも自由に宗野家周辺を歩き回って近くで起こった事件の調査をしても不自然に思われないようにするための変更だと推測されます。 テレビドラマ化に当たっての重要な変更点はそれだけではありません。原作では主要な登場人物として登場してくるのは、「俺」に双子の兄弟と柳瀬の親父と男ばかりですが、ドラマでは双子の通う学校の担任教師の灘尾礼子先生役を小西真奈美が演じ、柳瀬法律事務所の表の顔は秘書兼事務員で実際は女詐欺師という秋山ナオ役を平山あやが演じ、双子の兄弟が住む宗野家の近所の住人で「怪盗キング」を追う刑事の脇坂信之助(渡辺いっけ) の妻の芳江を須藤理彩が演じており、これら女優陣がドラマに彩どりを与えています。 この灘尾礼子先生は原作にも登場し、「俺」がこの先生にすっかり魅せられ、「早いところ双子たちの両親を見付けだし、連れ戻し、疑似親父の役割から解放されたいものだと思った。生徒の父親という立場では、担任の先生を口説くわけにはいかないからだ」と思ったりしています。しかしこの先生はテレビドラマのように双子の兄弟たちに過剰に干渉したりはしません。ところがテレビドラマでは、礼子先生による宗野家の兄弟への過干渉ぶりに、「俺」のみならず視聴者もかなりうっとおしく感じたようですが、前回の第4話のラストで「俺」が礼子先生に自分が泥棒で双子の兄弟の直と哲のパパを演じていることを正直に伝えたとき、彼女は「俺」に「兄弟たちにはいまのあなたが必要なのです。あなたたちを引き裂くのは間違っていると思いました。あなたを許さないけど、あなたたちの関係を認めます」と言っています。今後、礼子先生も「俺」と双子の兄弟が作る疑似家族を協力して守ってくれることでしょう。いよいよこれから小西真奈美の本領が発揮されそうで楽しみです。 なお灘尾礼子先生の場合は、あくまでも脇役ではありますが原作にも出てくる人物なのに対し、表の顔は秘書兼事務員で実際は女詐欺師という秋山ナオ、刑事の脇坂信之助とその妻たちはテレビドラマ用に新たに作りだされたキャラクターです。しかし、主人公たちの脇を固めるこれらの人物たちの存在が、このコメディタッチのドラマの魅力を増幅させているように思われます。特に須藤理彩が演じる刑事の妻が主婦の強力なネットワークを通じて「俺」にいろいろ貴重な情報を提供してくれますが、これはいかにもありそうなことで、この部分をいつも大笑いしながら楽しんでいます。 以上のことは原作とテレビドラマの主要な登場人物についての比較でしたが、物語のストーリー展開にも大きな違いがあります。原作では、最初は双子の兄弟から強いられて仕方なく疑似の父親役を演じていた「俺」が、双子の兄弟の危機を救うなかで次第に彼ら兄弟に対する情愛を深めていく過程が一直線に描かれていますが、テレビドラマでは「俺」と双子の兄弟たちとの信頼関係に危機を生じさせており、そのことによってドラマ展開に起伏を持たせていることです。 第1話では、双子の兄弟は学校で盗まれた校長先生のカバンを隠し持っていることを「俺」に告げず、彼がそのことを知っても事実を正直に語りません。第2話では、湖で発見された白骨死体のことを双子の兄弟は失踪した両親ではないかと不安になり気にしているのに、「俺」が白骨死体の身元捜査を開始すると「余計なことはしないでくれ」と強く言い張り、ついには柳瀬の弁護士事務所を訪れて「ステップファザー契約」の解約してしまいます。第3話では、空き巣にネックレスを盗まれたことを「俺」に隠し、彼らだけで泥棒探しを始めますし、また彼らが泥棒から本当に取り返したかったモノも「俺」にずっと隠していました。第4話では、迷い犬を自分たちの家で飼うことに決めた双子の兄弟は、「俺」に飼う許可を求めますが、「俺」が自分たちの秘密の関係が礼子先生にばれた以上はもう自分は彼ら兄弟とは関係がないと突っぱねたとき、彼らも「俺」に「もうパパじゃないんだから僕たちが好きなようにしていいんだね」と言ってこの犬を勝手に飼い始めます。 このようなドラマ展開によって物語に起伏を持たせているのですが、そのために「俺」の彼ら双子の兄弟に対する思いも複雑に揺れ動きます。視点人物的存在である「俺」がそうなんですから、視聴者の双子の兄弟に対する思いもまた当然それに連動して揺れ動き、双子の兄弟に対する同情と共感もなかなか深まりにくいように感じられました。 宮部みゆきの原作『ステップファザー・ステップ』は、泥棒が双子の遺棄児童の疑似親になるという奇想天外なユーモアミステリー小説であり、その泥棒と双子との情愛がしだいに深まっていくという一種の変形ファミリー小説なんですから、その原作の本来の面白さを生かしてテレビドラマももっとぶっ飛んで大いに泣いて笑わせる単純明快なものにしてほしいと思いました。
2012年02月02日
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今夜(1月30日)の連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」は第4話目ですが、灘尾礼子先生(小西真奈美)が宗野家を訪れて来て、「俺」(上川隆也)が双子の兄弟の直(渋谷龍生)と哲(渋谷樹生)の実際の父親ではないと思われる証拠を並べ立てて激しい調子で「俺」に詰め寄ります。 礼子先生の主張する証拠とは、(1)「俺」が泥棒騒ぎのあった家からこっそり抜け出す姿を見たこと、(2)宗野家に残る「宗野正雄」と紙に書かれた双子の父親の文字と「俺」が前に書いて礼子先生に示した文字とが全く異なること、(3)礼子先生が学校で撮影した「俺」の写真を宗野正雄の勤務先の人に見せたところ、「誰ですか」と不審がられたこと、以上の事実でした。 それでこれ以上隠し通すことは無理と判断した「俺」は、自分が双子の兄弟とは赤の他人であり、泥棒であると白状し、双子の兄弟たちも両親がそれぞれ駆け落ちしたので「俺」に父親代わりをしてもらっていることを明らかにします。礼子先生は「赤の他人の泥棒が父親になるなんて許されない」と携帯電話で警察に通報しようとするので、「俺」は自分がここから出ていくと言って宗野家から立ち去ります。礼子先生は双子の兄弟たちに「君たちのことはを然るべき所に連絡します」と言いますが、双子の兄弟は「僕たちはここに居たいんだ」「僕たちの気持ちはどうでもいいの」「養護施設などに行きたくない。惨めだから」と礼子先生を激しくなじります。 双子の兄弟の置かれている実情と彼らの気持ちを知った礼子先生は、彼らを今後どう取り扱えばいいのか迷い始めます。そんなとき、双子の兄弟は通学途中で首輪にラッキーという文字が入っている迷い犬を拾います。この犬を自分たちの家で飼うことに決めた双子の兄弟は、弁護士の柳瀬(伊東四朗)の事務所を訪れ、「俺」に飼う許可を求めます。しかし、「俺」は事実がばれた以上はもう自分は彼ら兄弟とは関係がないと突っぱね、双子の兄弟も「もうパパじゃないんだから僕たちが好きなようにしていいんだね」と言ってこの犬を飼い始めます。 前回までと同じ「俺」と双子の兄弟の心のすれ違いがまた始まるのかと思いましたら、迷い犬のラッキーが双子の兄弟の家から逃げ出したことから、急速に「俺」と双子の兄弟、さらには礼子先生の関係が親密なものに変化していきます。ラッキーを探して道に迷った双子の兄弟を心配した「俺」と礼子先生は二人で彼らを探しまわり始めますが、その途中、「俺」は礼子先生に「どうしてあいつら兄弟は誰も頼ろうとしないのか分かるか。それはあいつらが父親や母親が帰って来る場所を守ろうとしているからだ」と語り、「父親が泥棒というのはよくない。あいつらに必要なのは本当の親だ。俺は自首するから、代わりにあいつらの面倒を見てくれ」と頼みます。 結局、「俺」と礼子先生は双子の兄弟とラッキーを探し出し、「俺」はラッキーがくわえていた木片からこの犬の元の飼い主を探し出します。そこで分かったことは、このラッキーの本来の飼い主は山本さんなんですが、海外に出掛けたとき、この犬を笹本さんに預け、帰国後にまた山本さんが連れ戻したのですが、ラッキーは笹本さんを慕って山本さんの家から逃げ出したとのことです。元の飼い主の山本さんは「やはり愛情を持って育ててくれる人が飼い主です」と笹本さんにラッキーを託します。 この様子を一緒に見ていた礼子先生は、「俺」につぎのように言います。「あなたはロクデナシの泥棒です。でも自首するのは駄目です。それは止めてください。兄弟たちにはいまのあなたが必要なのです。あなたたちを引き裂くのは間違っていると思いました。あなたを許さないけど、あなたたちの関係を認めます」。 今夜の礼子先生はなかなか素敵でしたよ。またこのような終わり方もいささか「出来すぎ」だとは思いますが、それでもやはり納得しましたし、これまでで一番よかったように思いました。
2012年01月30日
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今夜(1月23日)のテレビドラマ「ステップファザー・ステップ」(TBS系)第3話は、「俺」(上川隆也)が宗野家の双子の兄弟の直(渋谷龍生)、哲(渋谷樹生)と一緒に買い物に出掛けた隙に宗野家が空き巣に荒らされます。しかし、通帳などは無事で特に大切なものは盗まれたようではありません。「俺」は兄弟に空き巣のことを誰にもしゃべるなとな言いつけます。しかし、実際には双子の母親のネックレスが盗まれていました。そのことを兄弟はなぜか「俺」に隠し、兄弟だけで犯人捜しを開始します。 そんな犯人探しの最中に直が怪我をしてしまい病院に入院します。直が怪我をしたことを知った灘尾礼子先生(小西真奈美)は病院に駆けつけ、兄弟から彼らの母親のネックレスが盗まれたことを知り、「俺」に空き巣の事実を隠していたことをなじります。その結果、「俺」は宗野家で兄弟の母親のネックレスが盗まれたこと、また兄弟たちがそのネックレスを探しているらしいことを知り、ネックレスを盗んだ犯人捜しを開始します。犯人を突き止め、その人物からネックレスを取り返した「俺」は、双子の兄弟にそのネックレスを渡そうとしますが、双子たちは意外なことに全く喜ばず、「パパに泥棒なんかしてほしくない」と言います。実は兄弟が空き巣から取り返したかったものは別のものだったのです。 ところで、灘尾礼子先生の宗野家の双子の兄弟への過剰な干渉は前回以上にエスカレートし、兄弟の家を訪れて手料理を作ったり、兄弟の母親探しをすると宣言したり、さらに彼らの父親(「俺」のことですね)に不審を感じて勤務先の新聞社を訪れ、「俺」が本当の兄弟の父親でないことをついに知ります。 私の妻など、この灘尾礼子先生の宗野家の兄弟への過干渉ぶりにかなり反発を感じたようで、「他の保護者たちが問題にするんじゃない」とつぶやいていましたが、私も同じように感じました。おそらく、灘尾礼子先生は何かの理由で先生の実の子どもと別れさせられ、その実の子どもへの満たされない愛情を宗野家の兄弟に代わりに注いでいるのだと思われますが、それでもあまりドラマとして説得的ではなく、視聴者の共感を得られていないように思いました。 さらに、私はこれまで計3回に渡ってこの連続テレビドラマを視聴して来ましたが、このドラマの致命的ともいえる問題点を確認させられました。それは、双子の兄弟が愛おしい存在と感じられないということです。両親がそれぞれ愛人と一緒に家出してしまい、彼らは遺棄児童になってしまったという設定です。そのような設定だけでも視聴者の同情と共感が得られるはずなんですが、どうもそのような感情が湧いて来ないのです。なぜなんでしょうか。 第1話では、双子の兄弟は学校で盗まれた校長先生のカバンを隠し持っていることを「俺」に告げず、彼がそのことを知っても事実を正直に語りません。第2話では、湖で発見された白骨死体のことを双子の兄弟は失踪した両親ではないかと不安になり気にしているのに、「俺」が白骨死体の身元捜査を開始すると「余計なことはしないでくれ」と強く言い張り、ついには柳瀬の弁護士事務所を訪れて「ステップファザー契約」の解約してしまいます。今回の第3話でも空き巣にネックレスを盗まれたことを「俺」に隠し、彼らだけで泥棒探しを始めますし、また彼らが泥棒から本当は何を取り返したかったかも「俺」にずっと隠していました。双子の兄弟は一貫して「俺」に素直に事実を話さず、彼の協力を求めようとはしないのです。 これでは、主人公の「俺」は双子の兄弟たちが遺棄児童であることを周囲の人々から隠すだけの偽装パパの役割を無理やり彼らから押し付けられた存在でしかなく、「俺」に彼ら双子の兄弟に対する愛情が自然と湧いて来るはずがありません。視点人物的存在である「俺」がそうなんですから、視聴者の双子の兄弟に対する思いもまた当然それに連動し、双子の兄弟に対する同情と共感が深まって行くはずがありません。 次回は、遺棄児童の双子の兄弟に加えて捨て犬も登場し、子どもと動物というドラマとしては最強の組み合わせになるようですが、これで離れかかっている視聴者をぐいっと取り戻せるのでしょうか、いささか心配です。
2012年01月23日
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今夜(1月16日)、宮部みゆきの『ステップファザー・ステップ』を原作とするテレビドラマ「ステップファザー・ステップ」(TBS系)の第2話が放映されました。 双子の兄弟の宗野直(渋谷龍生)、哲(渋谷樹生)が弁護士の柳瀬(伊東四朗)に「俺」(上川隆也)との「ステップファザー契約」を結びたいと依頼、双子の兄弟の両親のどちらかが戻ってくるまで父親になるという契約を半ば強制的に結ばされてしまいます。この契約には「不法行為は一切禁止」という条項も入っていました。「俺」が双子の兄弟に催促されて近所の今出湖に遊びに行くと、湖では警察が現場検証をしていました。「俺」は双子の住む家の隣人である脇坂刑事(渡辺いっけい)から訊き出したところ、「湖に白骨化した男女の遺体を乗せた車が沈んでいた」とのこと。 双子は、この白骨化した男女の遺体が自分の両親ではないかと不安になります。「俺」も当然その可能性があると考え、彼自身も遺体の身元を調べ始めます。 ところが双子の兄弟は白骨死体の身元を調べ始めた「俺」に対し、「自分たちの両親は生きている」「必ず帰ってくる」「調べてくれるな」「余計なことはしないでくれ」と強く言い張り、ついには柳瀬の弁護士事務所を訪れて「ステップファザー契約」の解約してしまいます。そんな双子たちに「俺」は疑惑を感じ……。 今回の第2話は、宮部みゆきの原作の第4話「ヘルター・スケルター」に相当しますが、今夜のテレビドラマと違って小西真奈美演じる灘尾礼子先生はそんなに出て来ません。原作では灘尾礼子先生は第3話「ワンナイトスタンド」に初めて登場してきますが、そこでは灘尾礼子先生のことを「俺」の目を通してつぎのように描いています。「二十五、六歳というところだろうか。小柄で、どっちかと言えばぽっちゃりしたタイプである。だが脚はすっきりと細いし、足首なんて、ほんとに華奢だ。首のまわりにふっくらとまつわりつくようにカールした髪は、枝毛など一本もないのだろう、そっけない蛍光灯の明かりの下でも、見事に輝いていた。 そういうことになると、俺にとっては、担任教師としての彼女の力量など、どっちでもいいことになってしまった。どのみち、哲も直も、学校の教師が多少上等だろうが品下ろうが、委細関係なく図々しく成長していく子供たちだから、いちいち気にしてやることはないのである。」 なお、原作のネタばれになってしまいますが、ここに描かれた灘尾礼子先生は本物ではなく、一卵性ハムソーセージ、おっと間違いました、一卵性双生児の妹だったんですが、でも一卵性ですから彼女の容姿紹介として使ってもウィンナー(「いいんじゃない」の駄洒落です)ってケッコ―、いい加減ですね。 私は、灘尾礼子先生役の小西真奈美をNHK「サラリーマンNEO」で初めて見たのですが、とてもコミカルな演技が巧みな素敵な女優さんという印象を持ちました。しかし、今回のドラマでは熱血女性教師という役を演じていますが、もう一つ小西真奈美の本来の魅力が発揮されていない感じで、「俺」と同様に双子の兄弟の家庭事情に過剰に首を突っ込むうっとおしい存在としか感じられません。彼女はインターネットのサイトの自己紹介によると鹿児島県出水市出身とのことですが、彼女の魅力をこのドラマでも大いに発揮してもらいたいものです。
2012年01月16日
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今夜(2012年1月9日)から宮部みゆきの小説『ステップファザー・ステップ』を原作とする連続テレビドラマ「ステップファザー・ステップ」がTBS系で始まりました。主人公の怪盗キングは上川隆也が演じ、ひょんなことから宗野直・哲(渋谷龍生・樹生)の双子の小学4年生のステップファザー(まま父、継父)をやらされることになるというコメディタッチのホームドラマ風ミステリー作品です。 主人公が双子の兄弟のステップファザーになった経緯については、拙サイト「私の宮部みゆき論」に原作の原文を下記のようにそのまま引用して紹介しています。 長い話なのでかいつまんで説明すると、俺はこの直と哲という一卵性双生児の擬似親父(ステップファザー)という立場にあるわけなのだが、それは好んでしたことではなく、要するにこの油断のならないお子さんたちに弱みを握られていまして、しょうがないから渋々生活費を渡してやり、彼らが親父の存在を必要とするときは出かけていって並んで笑っているというだけのことで、そういう弱い立場に置かれているものだから、夢にうなされたりしているわけなのである。で、このお子さんたちがなぜ擬似親父を必要としているかと言えば、それは、本当の両親がてんでに家出していなくなってしまっているからで、いなくなった両親はどこかでそれぞれ元気に暮らしているらしいのだけれど、反省して帰ってくるという様子は今のところまったくなく、現世の不倫な関係を清算するべく(彼らはそれぞれ愛人と駈け落ちしているのだ)どこかで心中して子供に詫びるという根性もないようで、今のところはまだ死体も発見されていない。ところが残されたこの双子さんたちは誰にもちょっかいをかけられずに兄弟二人で暮らしたいと思っているようで、したがって、生活費を稼いでくれて必要なときだけいてくれる親父が欲しいなあと思っていたわけで、そこに飛んで火に人る夏の虫のように俺が彼らの隣家の屋根から落ちたりしたものだから、彼らは俺を拾ってうちに持ち帰り、ねちねち看病して生かしてくれた挙げ句に前述のようなヒレッな取引を申し出てきたと、こういうわけである。わからない人は前の話を続んでください。毎度説明するのは面倒でしょうかない。 第1話は、怪盗キングが雇い主で弁護士の柳瀬豪造(伊東四朗)の依頼を受け、インチキなダイエット食品で大儲けをした井口雅子の家からダイヤモンドを盗もうと高台から偵察しているとき、誤って足を滑らせ、双子の兄弟の住む家に落ち込んで気を失ってしまうところから始まります。今夜のドラマはこのこの井口雅子の家ですでに起こっていた犯罪事件と、さらに双子の兄弟の通う小学校での校長先生(萬田久子)のカバンが盗まれて双子の兄弟が疑われる事件とが連続して引き起こります。 テレビドラマでは、原作の双子の中学生という設定を小学4年生に変更し、11才の双子の子役の渋谷龍生・樹生が演じ、担任の熱血女性教師の灘尾礼子役を小西真奈美が、「怪盗キング」を追う刑事・脇坂信之助役を渡辺いっけいが演じています。原作はユーモラスで軽快なタッチがとても楽しい連作短編なのですが、テレビドラマでは俳優陣のチームワークはまだまだこれからといった感じで、いささかドラマの涙と笑いに作為性が感じられます。なお、この連続ドラマは去年の12月に最終回を迎えた長寿ドラマ「水戸黄門」同様にご都合主義のハッピーエンドドラマに仕上がっており、さすが「水戸黄門」の後枠番組だなと変なところに感心させられました。
2012年01月09日
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私は宮部みゆき作品が大好きなんですが、彼女の作品はこれまで映画やテレビでいろいろ映像化されてきました。私はそれら映像化された作品について、拙サイト「やまももの部屋」の「映像化された宮部みゆき作品」のページに紹介しています。 さて、今日はテレビ朝日系で宮部みゆきの代表作『火車』』(双葉社、92.07.15)を原作とするテレビドラマ「火車」が放映されました。原作は、日本のバブル崩壊直後の1992年における消費者信用の多重債務が生み出す悲劇を題材にしたもので、物語は強盗事件で足を撃たれて求職中の本間俊介刑事が亡妻の従兄弟の息子である栗坂和也から彼の婚約者の関根彰子という女性が失踪したので、彼女を探してほしいと依頼されることから始まります。そして、本間は関根彰子追跡の調査の過程で彼女の驚くへき事実を突きとめることになります......。 では、今夜のテレビドラマ「火車」(森下直脚本、橋本一監督)はどのようなストーリー展開を繰り広げたのでしょうか。今朝の鹿児島の地元紙「南日本新聞」のテレビ番組欄には「サスペンス特別企画 火車~宮部みゆき作・東京~伊勢~大阪...死体なき連続殺人の謎に挑む! 名前も顔も捨て1000キロを逃げる美女!! " このミステリーがすごい!" 過去20年間のNo.1小説完全映像化!」との惹句が踊っていましたよ。 このテレビドラマは、原作同様にバブル崩壊直後の1992年の東京が舞台で、捜査一課の刑事の本間俊介(上川隆也)が逃走する男を追跡した時に銃撃されて足を負傷する場面から始まります。負傷して休職扱いとなった本間が暮らすアパートに、彼の亡き妻の従弟の息子で銀行員の栗坂和也(渡辺大)が訪れて来て、彼の婚約者の関根彰子を探して欲しいと頼みます。栗坂和也の話によりますと、彼は関根彰子が銀行のブラックリストに載っていることを婚約後に知り、そのことを彼女に追求したところ、その直後に姿を消してしまったとのことです。栗坂和也が本間に見せた関根彰子という女性の写真には一人の美女(佐々木希)が写っていました。 調査を開始した本間は、彰子が失踪直前まで勤務していた事務所で彼女が提出した履歴書を手に入れ、それに基づいて調べを進めますが、そこに書かれている職歴は全くのデタラメナなものであることが判明します。本間は関根彰子が自己破産した経歴があることから、その自己破産の手続きを担当した弁護士の溝口悟郎(笹野高史)の事務所も訪れますが、そこで栗坂和也の婚約者と自己破産の手続きをした関根彰子(田畑智子)とが全く別人であるという驚きの事実をさらに知ることになります...。 ドラマは、捜査一課の同僚の刑事である碇貞夫(寺脇康文)の協力も得ながら本間が関根彰子の追跡調査を継続していきますが、その過程から栗坂和也の婚約者の「関根彰子」が本物の関根彰子の戸籍を手に入れながら、二人の女性は皮肉なことにどちらも消費者信用の多重債務の犠牲者であり、彼女たちは「共食いしたも同然だった」ことが判ってきます。ドラマは、原作同様にカード地獄の恐ろしさを浮き彫りにしていきます。 ありきたりの2時間ミステリードラマでは、よくラストで犯人が犯行の動機やアリバイ作りの手口などを長々と語る場面がありますが、この「火車」だけはドラマ化にあたってニセの関根彰子すなわち新城喬子にあれこれ喋ってらいたくないと強く願っていましたが、ほぼ原作通りに最後に姿を現すだけで終わらせており、これにはホッとさせられました。今回のドラマでも、ラストに彼女が登場する以前に彼女の悲しい過去とその犯罪行為の全貌がすでに明らかにされていましたね。 このドラマは、CM入りの2時間少しの限られた時間にも関わらず、私が予想していたより原作の基本ストーリーを忠実に追っており、またサイドストーリーもそこに登場する人物たちを丁寧に描いており、なかなか真面目で良心的な作品に仕上がっていると思いました。 例えば、原作では、本間が関根彰子が失踪直前に勤務していた今井事務機を訪れたとき、女性事務員のみっちゃんがこの事務所の社長から、妻の従兄弟の息子は「はとこ」というのかと質問されて、懸命に辞書を調べる場面がありましたが、そんな作品としての「遊び」の部分も、今回のテレビドラマても挿入されており、今井社長(金田明夫)に頼まれてみっちゃん(上間美緒)が「妻の従兄弟の息子」に関する意味を辞書を引きながら一生懸命に「調査」していましたよ。 本間を演じる上川隆也のいささかくたびれた感じの子持ちの中年男ぶりがとてもよかったですし、彼と同僚の刑事の碇貞夫役の寺脇康文の久しぶりに見る「相棒」ぶりも二人の息がよく合っていて大いに楽しませてもらいました。 本間の息子で、父一人子一人の寂しい日常を過ごしている智(山崎竜太郎)も、聞き分けのとてもいい子だけにじっと何かに堪えて我慢している寂しい姿には大いに共感させられました。 今回のドラマで、本間が息子の智くんのことを気にかけながら、実際には関根彰子追跡調査のために外出することが多く、父親としての役割を果たせていないことを痛感し、智くんを連れて伊勢まで関根彰子のことを調べに出かける場面があります。この場面について、一緒に視聴していた私の妻が「子どもを調査に連れて行くなんて可哀そうね」と言ったのですが、普段は我が妻のとても素直なイエスマンである私が、なんと即座に「いや、智くんはとても嬉しかったと思うよ」と珍しく異論を唱えました。 そして、私の母が高校の教師をしていたとき、子どもの私を連れて大阪で生徒の就職のための企業廻りをしたときの思い出を語り、そのとき母とずっと一緒にいられたことがとても嬉しくて楽しかったことを伝えました。なんだか智くんの寂しげな姿が昔の私と重なり、またまた母と過ごした昔の日々を思い出して涙ぐむ今日この頃のやまももでありました。
2011年11月05日
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りりもんさん、お元気ですか、やまももです。 拙ブログの掲示板にりりもんさんの懐かしいお名前を見て大喜びしましたよ。りりもんさんも宮部みゆきの『楽園』を読まれ、「本当にご無沙汰でしたが、あの『模倣犯』で熱くなった気持ちが蘇り、思わずカキコミさせていただきました」とのことですが、本当にお久しぶりです。調べてみましたら、りりもんさんが拙ホームページ「私の宮部みゆき論」の掲示板にムック『僕たちの好きな宮部みゆき』についてのコメントを下さったのが2003年9月11日のことでしたから、それからもう4年たちますね。りりもんさんの二人のお嬢さんも大きくなられ、上のお嬢さんは12歳とのこと、来年の春には中学生になられるんですね。 宮部みゆきの『楽園』を読まれ、「茜と誠子の母親の気持ち、娘への想い…(うちも姉妹なのです)/もう、後半は読んでいて本当に辛くなりました」と書いておられますから、やはり私のような男の子の父親とは切実感が随分違うのでしょうね。お暇なときに、二人の娘を持つ母親ならではの詳しいご感想をあらためて寄せていただけたら有難いと思います。 それから、「宮部作品はもちろん読み続けています。/大好きなドリーム・バスターもますます面白くなってきましたね」とも書いておられますね。そういえば、2002年2月15日には『ドリームバスター』の第一巻についてのコメントを「我らが隣人の宮部さん」に掲載させてもらっていますね。この『ドリームバスター』は全5巻の予定ですから、来年には完結編が出されるでしょうね。そのときには私もこのシリーズについての感想を書きたいと思っていますが、りりもんさんもぜひご感想をお願いしますね。 またこれからもこのブログをよろしくお願いいたします。
2007年09月10日
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月野さん、コメント欄への書き込みに感謝します。 ところで、月野さんはご自身のブログで「楽園は模倣犯よりも”毒”は少ないです。/そういう意味では、今回は随分楽に読めたのだと思います」と書いておられますね。毒が少ないといえば、『楽園』の土井崎茜と『名もなき毒』の原田いずみとを比較すると、土井崎茜が小説中に発する毒素は原田いずみのそれよりずっと薄いように思えるのですが、そのことを考える上で興味深い発言が雑誌『本の話』8月号に載っていました。 宮部みゆきは雑誌『本の話』8月号で、「連載時期がかぶると、二作で表裏一体になるものを書く傾向があるようです。犯人を書かずに周りの人物だけを書いた『理由』と、犯人像をクローズアップした『模倣犯』がそうでした。『楽園』は、昨年出した『名もなき毒』と表、裏になっています。『名もなき毒』も問題行動を起こす女性の話で、いったんは彼女から逃げ出した家族は、それでも親子だから彼女を引き受ける努力をしていきますが、『楽園』の家族は、茜に対してまったく違う決断をします」と語っています。 それで『名もなき毒』と『楽園』の新聞連載時期を調べてみたのですが、『名もなき毒』は北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞に2005年3月1日から同年12月31日まで連載(河北新報には1ヶ月後れて4月1日から連載)され、『楽園』は産経新聞に2005年7月1日から翌年~2006年8月13日まで連載されています。2つの作品は2005年7月から半年間連載が重なっていたのですね。 宮部みゆきは、このことが物語のなかに登場する「問題行動を起こす女性」とその家族との関係の描き方の違いを生み出したと語っていますが、それ以外の部分にもまた程度の差はあれいろいろな影響を与えており、『楽園』の土井崎茜と『名もなき毒』の原田いずみの描き方の違いにも関連があるのかもしれませんね。
2007年09月06日
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月野さん、こんばんは、やまももです。 月野さんがご自身のブログ「月野のひとりごと」にお書きになった宮部みゆきの『楽園』についてのご感想をとても興味深く拝見し、また大いに共感いたしましたので、拙ホームページ「やまももの部屋」の「我らが隣人の宮部さん」のページへの転載をお願いしましたところ、快くご承諾くださり本当にありがとうございました。それで早速につぎのところに転載させてもらいました。なお、もし転載に当たりましてなにか問題がございましたらいつでもお申し出ください。 ↓ 「我らが隣人の宮部さん」の『楽園』関連のページ http://homepage1.nifty.com/yamamomo/sub5b.htm#rakuen 月野さんは、とてもソフトで分かりやすい文章で『楽園』についての読後感や『模倣犯』との比較、さらには読むときのご自身の視点等について書いておられ、とても面白く拝読させてもらいました。 それで、『楽園』を読まれての第一印象として、「あ~、宮部さんだぁ、という感じ。/本当に、表現が緻密で、まるで、自分が主人公と共に同じように事件を体験しているような気分になる」とされながらも、『模倣犯』と比較するとそれほど重くなく、「楽園は模倣犯よりも”毒”は少ないです。/そういう意味では、今回は随分楽に読めたのだと思います」と書いておられますが、私も全く同じような感想を持ちました。 家族内に起きた殺人事件が扱われているのに、読後感としてはそんなに陰惨で深刻な感じは残らなかったですね。「作者本人にも、それだけの歳月が流れているのですから、あまりにも生々しい表現はしないようにしておられるのかもしれませんね」と書いておられますが、確かに作者は意識的にそのような書き方をしたように思います。そのためでしょうか、殺人事件のあった土井崎家の人々は、父親A、母親B、悪い姉のC、良い妹のDとしての役割を演じる顔のないのっぺらぼうのような感じがしました。 また、「今回の話は、親子関係、に焦点が当てられた事件だったので、わたし自身もいろいろ感じるものがありました。 /だんだん自分が、若者(子ども)側ではなく、親世代の感覚で物を見てしまって来ているということが・・・かなしむべきものなのか・・・やはり、歳を感じてしまいますね。。。」とも書いておられますね。私も自然と等少年の母親である萩谷敏子と同じ親の世代の立場からドラマ世界を眺め、またそこに入り込んで大いに共感したものでした。勿論、それは私自身が二人の子どもの父親であることとも関連があるとは思いますが、やはり萩谷敏子という中年女性を描く作者の卓越した筆力が彼女への共感を生み出しているのでしょうね。 そして、「最後の結末が、救いの無い終わりではなく、とりあえずは全てが解決して終わっているので、それも良かった。結末に救いがないと、やっぱり、読了感が重くなりますしね。 /何もかもハッピーエンドがいいとは言いませんが、感情移入した主人公が不幸のどん底で終わるというのは・・・やはり精神衛生上もよろしくないでしょう。。。」との感想も述べておられますが、本当に「最後の結末」には胸にぐっと来るものがあり、読者を大いに救ってくれましたね。 これをご縁にこれからもよろしくお願いいたします。
2007年09月05日
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