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私は時々勉強会で、自分の給料の話をします。『私の給料は、新卒の職員の約六倍です』と。続けて『多いと思いますか?それとも少ないと思いますか?』とも聞きます。すると、面白いほど全員表情に考えが出てきます。入ってまだ日が浅い職員は『うらやましい』と考えています。しかし、管理職は全員『少ない』と考えます。 この違いはどこから来るのでしょうか? 答えは簡単です。管理職と私は『価値観を共有出来ている』が、新入職員とはまだ出来ていないからです。 もう五年程前、こんな事がありました。ある日、私は自分の机の上(当時は私専用の机がありました。今は全職員共有の机しかありません)に、某電気店の会員カードを置いておきました。 そのカードはたまたま黒のカードでした。それを見た職員が、『うちの理事長はブラックカードを持っている。自分だけ想像も出来ないほど沢山の給料を貰っているに違いない』と言い出したのです。その職員は本気で信じています。正直私は呆れてしまいました。一介のNPO法人の理事長が、本気でブラックカードを持てると信じている、その職員の視野の狭さに絶望も覚えました。 しかし、よく考えると、これは当然のことだと理解しました。人は、自分が体験していない事は、想像できません。想像できないから、出てくる発想は現実感のない、妄想になるのです。よく管理職が『うちの部下は全く俺の考えを理解してくれない』と言っていますが、これは大きな間違いです。 管理職の考えを、一朝一夕で部下に理解してもらおうと思っている管理職が大間抜けなのです。上司と部下では、キャリアも実力も負っている責任も全く違います。 例えて言うならば、小学校一年生に、高校三年生の高等数学の話をしても理解されないのと同じです。少なくとも新入職員とトップとはそれ以上に差があります。 この事を理解して以来、私は折に触れて、『トップの考え』を新入職員にも理解できるように伝えています。 例えば、毎週の勉強会や、二か月に一度開催される事業所別懇親会。半期に一度の政策勉強会や新入職員懇親会、理事長と飲み会等々。挙げだせばきりがありません。極めつけは、『理事長の鞄持ち』です。これは、内定者・入社三か月の新入職員、管理職に義務付けているイベントです。早朝から時には深夜まで、私と行動を共にし、私の仕事を『体験』する事です。私の仕事は毎日多忙を極めます。昼食も摂る時間はありませんし、日によっては椅子に座る時間すらありません。歩きながらでも仕事をします(ボイスメールという情報共有ツールを使用して)。 息つく暇は一切ありません。まさに分刻みのスケジュールです。時には、数千万円のお金が動く契約にも同席させますし、クレーム対応で謝罪している時にも一緒です。以前、銀行の融資担当の方とお話をする席にも、新入職員を同席させ大た事がありました。銀行の方に、『どこまで話して大丈夫ですか?』と聞かれたので、『何を話しても丈夫です』と答えました。相当驚かれたようで、『ほとんどの企業では、お金の事はトップシークレットなので、以前も社内で突っ込んだ話をし過ぎて、怒られた事があるのです』との事。 バウムは決算書はもちろんの事、月次の収支も全てオープンにしています。隠す事は一切ありません。前述の私の給料も、決算書の役員報酬の欄を見れば分かる、と公言しています。不思議な事に、隠すと色々妄想をしますが、隠さないと全く興味を示さないのがバウムの職員です(実際、確認した職員は過去一人もいません)。 このように、私に一日同行すると、ほとんどの職員はぐったりです。しかし、私にとっては、いつも通りの一日。これが週に六日間続くんだよ、と伝えると職員はこう考えます。 『絶対バウムの理事長にはなりたくない』と。管理職はこの鞄持ちを少なくとも四カ月に一度は行います。なので、管理職からすると、こんなに働くのであれば、もっと高い給料を貰ってくれなければ。そうじゃないと、自分の給料もこれ以上上がらない、と考えるのです。管理職は、この他にも月に一度の面談、毎週の幹部勉強会、月に一度のサシでの食事会や懇親会等があります。外から見れば、異常なほど共有する時間は長いです。 しかし、本来生まれも育ちも全く違う赤の他人同士が、価値観を揃えようと思うには、これくらいの努力は必要です。 世の管理職の皆さんも、自分の考えを部下に理解してもらいたければ、異常と思われるくらい時と場所を共有する事をお勧めします。 理事長 笹谷 寛道
2015.01.15
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