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2012.04.22
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4月22日、日本航空の成田-ボストン直行便が就航した。ボーイング最新型787機による運行である。


定刻より早めに着いてビーチでスタンバっていると、霧の中から約5分おきに次々と飛行機が現れ、着陸する。夫がウェブサイトで確認したところでは、定刻より30分遅れとのことだったので気長に待っていたのだが、その遅れた時間きっかりに姿を現したのがアメリカン航空機だった。
あれ、そういえば、アメリカン航空とのコードシェアだよね。コードシェアってことは、アメリカン航空機で来るってことだったの?いや、あれだけJAL便、JAL便って宣伝しておいて、そんなハズないよ。あともう少し待ってみようよ。

といった夫とのやりとりの後、また、霧の中からライトが見えてきた。

あれかな?あれかな?

とうとう、白くて、思っていたよりも、ずんぐりとした大きな機体が現れた。おなじみの赤い鶴丸マーク。もちろん、ジャンボほどではないが、それまで着陸した数々の飛行機よりもかなり大きい。
あ、あれだよ!来たよ!来た!来た!JALが来た!
言うがままに連れて来られて、あまり趣旨の分かっていなかったであろう子供たちも、親2人の喜びようにつられて大はしゃぎ。


その時の気持ちを大げさに表現すれば、無人島で遭難してしまって、自分の国の救援機がやって来たような気分だった。

多分それは、30年以上前に暮らしたパリでの記憶と重なっているのだと思う。

その頃の世界は、ファックスも電子メールもインターネットもなく、通信手段はせいぜい国際電話ぐらいで、それも料金は高いわ接続は悪いわで、自分の話した声が相手側に反響するのが聞こえるほどだった。だから、日本の親戚と電話で話すのはお正月ぐらいだった。外国は遠かった。日本は遠かった。

そんなわけで、日本の飛行機というのは、その外国と祖国をつないでくれる、数少ない、大事な象徴だった。それが、私の中では、あの赤い鶴丸マークとつながっているのである。あの飛行機に乗れば、日本に連れて行ってもらえるという安心感、とでも言うのだろうか。

着陸の時は良い写真が撮れなかったこともあり、よし、離陸の時は何とかカメラに納めるぞ、と意気込んで、今度はボストンから成田に帰る姿も見届けようと思い、またビーチに行くと、何やら大きなブルーのテントを発見。

試しに中を除いてみると、アメリカ人が何人か座っていた。三脚付きのビデオカメラも持ち込んで、なんだかすごい本格的。飛行機を見に来たのか、と聞いてみたら、その通りで、日本航空機を見に来たのだと。着陸の時はボストンの反対側の港から見届けたのだとか。まだ20代そこそこと思われる、なかなかハンサムですらりとした短髪の若い男性で、日本に縁があるのか、それとも、飛行機が好きなのかと聞いたら、飛行機、しかもボーイング機が大好きなのだと言う。その両親と、お姉さんとそのご主人と、家族総出で(家族をもろとも巻き込んで?)この日のためにやって来たらしい。

このボーイングおたく君のマニアックぶりと言ったらすごい。霧の中からボーイング機が姿を現しただけで、あ、あれは777だ、737だとか型を全て言い当てる。うちのアレックスがろくに文字も読めないのに、トーマスシリーズの列車を全部見分けられるのよりすごい。

しかも、このおたく君、おそらく管制塔の交信状況が聞ける無線機まで持っている。JAL機は出発が1時間ほど遅れることが分かって、その間にピザを買いに行った家族に「今、離陸許可が出たから、早く戻って来ないと間に合わないよ」なんて、ほんとに心配そうだ。

ちなみに、飛行機のことは”He”と言っていた。飛行機は、SheじゃなくてHeなのか。まあ、船は大きくてゆったりしていて、いかにもSheって感じだけど、すいすいふらふら飛んでっちゃうのは、やっぱりHeなのかな?
JAL機は滑走路の一番端の方までゆっくりと移動し、すーっと速度を上げ、いつの間にかふわりと飛んで、瞬く間に霧の中へと消えて行った。ピザ屋から戻ってきて何とか間に合った家族達も、その優雅で美しい姿に物も言わず、しばし見とれていた。

直行便の料金は確かに高くて、すんなりと買えるわけでもないし(笑)、これから先、日本にちょくちょく里帰りできるというわけでもないのだが、利用するしないにかかわらず、その選択肢があるという事実は、それがなかったことに比べたらもう格段の違いである。







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最終更新日  2014.10.15 11:53:41
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