音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2023年11月25日
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カテゴリ: クラシック音楽


これは花巻市民限定で抽選で800名ということだったが、運よく当たった。
当初宮本大のチェロを聞けるということで応募したのだが、中身が濃くとても楽しめる演奏会だった。
普通の演奏会ではなくいろいろな趣向が工夫されていた。
一番のサプライズは賢治の愛用していたチェロを宮田が弾くという第4部。
賢治のチェロは賢治記念館に展示してあるそうだが、筆者は記憶がない。
古ぼけたチェロなのかなというイメージだったが、高そうな楽器ではないが
プログラムの裏に楽器の詳しい情報が載っていた。
賢治が1926年(大正15年)ころに購入したもので、鈴木製のチェロとしては最高級品(No.6)で、およそ170円だったそうだ。

明るい色で、艶々していて、筆者のチェロのイメージとはちょっと異なるが、音は結構よかった。
勿論名手が弾いているということもあるが、鋭さのない暖かな音色で、宮田さんは賢治の声を聴いているようだと仰っていた。
この楽器を弾いた第4部は昔の童謡などを中心に選曲されていた。
最初の賢治の無伴奏チェロのための「星めぐりの歌」は宮田さんの編曲で中間部にバッハの無伴奏チェロ組曲第1番の前奏曲が使われていて、格調高く仕上がっていた。
他の曲も格調高く清々しい演奏で賢治の記念公演にふさわしい出来だった。
最後のアンコール「故郷」もしみじみとした演奏だった。
第1部は花巻北高校と遠野高校の合同の女声合唱。
なんでも、部員が少なく令和3年から合同で活動してきたとのこと。
メンバーは2人ずつで、殆どがユニゾンだったが、素直な歌声が感銘深かった。
全て賢治の作詞作曲だが、「剣舞の歌」ではライトスティックを使った演出があり趣向が凝らされていた。
「月夜のでんしんばしら」のユーモアのある歌が楽しかった。

豪快に弾くというのが宮田のチェロに対する筆者の印象だったが、軽いプログラムということもあったのか、弱音重視の演奏だった。
チェロの弱音というとロストロポーヴィッチのチェロを思い出すが、宮田の場合は作為的ではないのが好ましかった。
最新作 「VOCE - フェイヴァリット・メロディー」 ​」にはないが、久石譲の映画音楽が2つ演奏されていたのが嬉しかった。
ピアノの西尾真美さんの伴奏は堅実ではあるが、高音の軽さが気になった。

絵本・音楽プロジェクト「セロ弾きのゴーシュ」というタイトルで、画家の 九十九伸一 氏のポップな絵画と動物たちの実写を合成したショートムービーを見ながらエレキ・チェロの演奏を楽しむというもの。
エレキ・チェロというと分からないがサイレント・チェロと言えば楽器をやっている人には容易に想像がつくだろう。
曲は九十九太一氏のエレキ・チェロにいろいろなエフェクトをつけた音楽。
CDは出ていなようだが配信やyoutubeで聞くことが出来る。
エスニック風な音楽だろうか。
物語は「セロ弾きのゴーシュ」に登場する三毛猫、カッコウ、野ネズミなどのにまつわる曲が映像とともに出てくる。
動物や虫の声なども交えたオリジナリティに富んだ音楽で、映像にもだいぶ助けられていると思ったが、この稿を書いているときにspotifyで流していたら、これがかなりの力作であることが分かった。
特に第1曲「インドの虎狩り」は前衛的な部分もあり、チェロの独奏曲としてかなり聴かせる音楽になっている。
第2曲「カッコウの音階」は何とカッコウの鳴き声とラップが共演するというもので、それが妙にしっくりくるのが笑える。
第3曲の「愉快な馬車屋」の原曲はオリジナル・デキシーランド・ジャズ・バンド(ODJB)の「Livery Stable Blues」(1917)で、当時の古いフィルムが写されていた。
馬のいななきや鼓の音も聞こえる和洋折衷的でユニークな音楽で楽しめる。
第4曲「星めぐりのラプソディー」は他取る通り「星めぐりの歌」をテーマとしたラプソディー。
鈴虫やフクロウの鳴き声が夜の情景を想像させる効果絶大だった。
素晴らしい組曲なのでご存じない方は是非下記リンクでお聴きいただきたい。



ということで、単なる音楽会に終わらない、賢治の人となりもうかがわせる没後90年にふさわしい演奏会だった。

宮沢賢治没後90年特別企画 「チェロでつづる宮沢賢治の世界」

第1部 合唱
宮沢賢治:
1.星めぐりの歌
2.耕母黄昏
3.剣舞の歌
4.月夜のでんしんばしら
第2部宮田大 チェロリサイタル
1.サン=サーンス:白鳥
2.ラフマニノフ:ヴォカリーズ
3.プッチーニ:オペラ「トゥーランドット」より”誰も寝てはならぬ"
4.カッチーニ:アヴェ・マリア
5.久石譲:「天井のラピュタ」より"君をのせて"
6.久石譲:「ハウルの動く城」より「人生のメリーゴーラウンド」
第3部 九十九太一(つくもたいち) 絵本・音楽プロジェクト「セロ弾きのゴー
シュ」
九十九太一:チェロ無伴奏組曲「GOSHU」
1.インドの虎狩り
2.カッコウの音階
3.ゆかいな馬車屋
4.星めぐりのラプソディー
30分
第4部 宮田大賢治のチェロを奏でる
1.宮沢賢治(宮田大編):星めぐりの歌
2.滝廉太郎:荒城の月
3.岡野貞一:もみじ
4.草川信:夕焼けこやけ
5.成田為三:浜辺の歌

アンコール:故郷

第1部 花巻北高等学校合唱部&遠野高等学校音楽部
第2部 宮田大(vc)、西尾真実
第3部 九十九太一(e-vc)
第4部 宮田大(vc)西尾真実(3-5)

2023年11月25日 花巻市文化会館大ホール4-16で鑑賞





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Last updated  2023年11月25日 21時44分03秒
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