inti-solのブログ

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2010.11.14
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カテゴリ: 環境問題
昨日の記事は、何がどうなったのか、なんと1日で3200アクセスもありました。我がブログ始まって以来、史上空前のアクセス数でした。
さて、昨日の記事は、週刊ポストの記事に対する批判でしたが、いくつか補足説明の必要な部分もありますので、この問題について続きを書いてみたいと思います。

まず、この記事の火元である武田邦彦のブログを読んでみました。
・・・・・・凄いことが書いてあります。

「生物多様性」の何が悪いのか? 1 生物種の数は?

COP10の支援団体によると、「現在、地球上に3000万種ほどの生物がいるが、毎年、4万種の生物が絶滅している」と言っている.
ここで、まず第一のCOP10の「いい加減さ」だ。地球上に3000万種という生物種の数は多すぎるだろう。つまり、生物が元気なためには生物の種類があるていど少なく、「より進化した生物」が出現するぐらいの余裕があるのが良い.
その意味では、恐竜絶滅直後より主の数が多い方が良いけれど、1000万種ぐらいが適当だろう.そうなると2000万種を減らさなければならないから、現在の毎年4万種の絶滅で、500年かかる。
だから今、多様性を保とうなどとする必要は無い。
むしろ、これから500年の間に、「生物種の数と環境」の研究を進めておけばよい。というのは、生物学で「この地球に何万種の生物がいる状態が一番良い」ということがまだ出されていないからだ。

たとえば、年間4万種が絶滅しても、新たに5万種が誕生すれば、差し引き1万種の増加になる.(以下略)
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これが、曲がりなりにも「科学者」と称する人間のいうことなのか、私にはとても信じられません。武田邦彦の主張が滅茶苦茶なのは今に始まった話ではありませんけれど、これは特に酷い理屈です。
3000万種は多すぎるから1000万種が適当って、いったいどういう根拠に基づいた計算なのか。生物種というのは、人間の理屈や都合に基づいて生きているわけではありません。人間が無理矢理培養して3000万種を作り上げたというなら話は別ですが、自然状態の中で現に3000万種の生物が存在するなら、それは自然の摂理に基づいてそうなっているのです。それを「2000万種減らさなければならない」って、いつから武田邦彦は自然界の創造主になったのでしょうか。

もちろん、生物学というのは「この地球上に何万種の生物がいる状態が一番良い」かを決める学問ではありません。500年経とうが1000年経とうが、そんなことを決める権利も能力も、我々人類にはない。なぜなら、我々人類は現在のこの地球環境の元で誕生し、進化し、発展してきたからです。人間が生物多様性を決めるのではなく、生物多様性が人間という存在を産みだしたのです。良いとか悪いとかの問題ではなく、人間という存在の前提条件と言って良い。その前提条件を、人間の短慮で「この方がよい」などと改変して良いわけがないのです。

というか、もし仮に創造主がいて、本当に「生物が元気なために」は生物の種類を2000万種くらい減らした方が良いと思ったとしたら、その減らすべき2000万種の筆頭には、どう考えても我々人類が入っているでしょう。他の生物の「元気」を奪っている最たる存在が、ヒトであることは明らかでしょう。

たとえば、インドネシア・ボルネオ島のキナパル山国立公園には、わずか12平方キロの面積に5000種近い植物の分布が確認されています。日本は37万平方キロで6000種ですから、いかに生物の多様性に富んでいるか分かります。しかし、その日本だって、 以前の記事で指摘した ように、熱帯雨林には及ばないけれど、温帯域の中では抜群の生物多様性と独自性を保っています。
このような生物多様性は守らなければならないと私などは思うのですが、武田邦彦流の考えだと、キナバル山に5000種の植物は多すぎるから、3000種くらい減らした方がよい、日本に6000種も多すぎるから4000種くらい減らした方がよい、ということになるんでしょうか。

ところで、昨日の記事にも書きましたが、3000万種という種類数はあくまでも科学者の推計であって、実際に発見されている種類数ではありません。実際に発見されている生物の種類数は、約175万種(※)と言われています。つまり、発見されている種類数の17倍もの未発見の生物種がいるだろう、ということです。当然、学者によってその推計には幅があり、中には1億種くらいいるのではないかという人もいます。

※ 発見されている175万種の内訳は、昆虫が95万種(つまり、確認されている全生物種の半分以上が昆虫、かつ40万種くらいは甲虫類)、哺乳類は6000種、鳥類8600種、魚類3万種、維管束植物(コケと藻を除く、いわゆる植物)27万種、菌類(キノコ・カビの仲間のこと)約8万種などとなっています。



なお、「種」というのは生物分類の基本単位ですが、過去の生物については、種のレベルまで同定できず、属のレベルまでしか同定できないことがほとんどです。たとえば、ステゴザウルスとか、トリケラトプス、アロサウスル等々恐竜の名前を耳にしたことのある人は多いと思いますが、あれは、ほとんどの場合は恐竜の「種」ではなく「属」の名前です。
何故属までしか同定できないかというと、化石試料からではそこまでしか分からないからです。
たとえば、ウマ・シマウマ・ロバという動物がいます。これらはいずれも種の名前で、いずれもウマ属(エクウス属)という同じ属に分類される近い仲間です。近い仲間とはいえ、生きている馬とシマウマを見間違え人はあまりいないでしょう。ところが、化石(骨)になってしまったら、馬とシマウマを区別するのは、ほとんど不可能に近いのです。骨には縞模様がありませんからね。

一応現在は3000万種、白亜期末の大絶滅直後は600万種という前提は正しいものとして計算します。昨日の記事では、1000回転つまりこの6500万年間に1000回新しい生物種の誕生(種分化)と絶滅が繰り返されたとすると、延べ240億種が生まれた計算となり、1年あたりに割り返すと400種弱になる(当然毎年4万種が絶滅するのに対して遙かに少ない)と書きました。
しかし、よく検討してみると、1000回転はいささか過大計算です。6500万年間に1000回転とすると、一つの生物種の、種としての寿命は平均わずか65000年になってしまうからです。

ホッキョクグマは、10万年ほど前にヒグマから枝分かれしたのですが、野生でも両者の混血が発生しており、どうやらまだ完全な別種にまではなっていなかったようです。10万年前に枝分かれしてもそうなのですから、6万5000年じゃ新しい生物種が産まれるにも足りない時間です。
そう考えると、絶滅の繰り返しの回転数は、この6500万年間でせいぜい200回転か300回転ではないかと思われます。300回転ということは、一つの生物種の寿命が平均20万年余になります。そうすると、この間に生まれた生物種の合計は72億種、1年平均の新種誕生は110種ということになります。
これだって、仮定に仮定を重ねて作った推計値ですが、年平均400種弱という先の推計よりは、事実に近いだろうと思われます。どちらにしても、年4万種という絶滅スピードに対しては新種の誕生は遙かに少ないことは間違いありません。武田邦彦の言う、「年に4万種絶滅しても新たに5万種誕生すれば差し引き1万種の増加」なんて話は、まったく事実に基づかない妄想と言うしかありません。





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最終更新日  2010.11.14 09:32:49
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