inti-solのブログ

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2022.10.26
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テーマ: ニュース(100302)
新幹線延伸の陰で北海道物流の大動脈が存続危機 在来線が赤字見込みで協議難航


貨物列車はペットボトルや宅配便、書籍など道民の生活に欠かせない物資を運んでくる一方、道内から集まるタマネギやジャガイモ、食料工業品を本州に向けて送り出している。
札幌ドーム10個分に相当するこの広大な物流拠点が「無用の長物」になるかもしれない。札幌発着の貨物列車は、北海道の「玄関口」である道南のJR函館線を通り、本州と行き来する。要所である函館-長万部間の路線が、廃線の瀬戸際にある。
物流の大動脈が危機に直面するのは、貨物が走る旅客線の存廃問題がからんでいる。
北海道新幹線が2030年度末に札幌まで延びる予定だ。延伸区間と並行して走る函館線は、函館-小樽間がJR北海道から分離され、存廃は北海道と沿線市町の協議にゆだねられている。
今年3月、長万部-小樽間の廃線・バス転換が固まった。残る函館-長万部間は協議が続く。
「はこだてライナーは存続をお願いしたい」。函館市長が発言すると、近隣の北斗市長や七飯町長も同調した。新幹線の新函館北斗駅と函館駅間を結ぶライナーは、観光が売り物の函館圏にとっては生命線だ。
しかし、他の区間の存続を望む声は沿線から聞こえてこない。地元自治体が及び腰になるのは、沿線人口は減る一方で、新幹線が開業すれば観光客の利用も見こめなくなるからだ。
北海道の試算によると、函館-長万部間を第三セクター方式で維持した場合、開業後30年間の累計赤字は816億円に達する。沿線からは「住民に多大な負担を強いることはできない」と、「バス転換やむなし」という声が強まっている。(要旨)

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記事は、おそらく途中までしか掲載されていないようです。
結局、JR北海道は新幹線が開業したら並行在来線である函館本線は(採算が見込める小樽-札幌間を除き)手放すし、大赤字が見込まれるので沿線自治体も第3セクターで引き受ける気がない、ということです。

通称山線と呼ばれる函館本線の長万部-札幌間は、遠い昔、確か大学生の時に各駅停車で通ったことがあります。気動車の単行だったか2両編成だったかは記憶がありませんが、通学の高校生で超満員だった記憶があります。前日、各駅停車で上野から青森まで行き、当時あった青函連絡船の深夜便で北海道に渡りました。夜を徹して列車と船に乗っていたので、寝不足で途中かなり寝ていた記憶がありますが、所々おぼろげな記憶では、かなり景色がきれいだったように思います。
この区間の廃止についても、鉄道ファン(元)としては、思うところは色々ありますが、そこは言っても仕方がないので、今回の記事では取り上げません。

問題は函館-長万部間です。ここは、現在は函館-札幌間の特急「北斗」が1日11往復走る大幹線ですが、北海道新幹線が札幌まで延伸すると、旅客需要が激減することは明白で、一気にローカル線となってしまいます。
が、旅客需要が激減しても、貨物需要はそうではありません。新幹線は貨物列車が走らないからです。函館本線を走る貨物列車は1日21往復と、特急「北斗」より本数が多いのです。かつ、これらの貨物列車はすべて本州からの直通便です。
札幌貨物ターミナル駅のコンテナ輸送量が全国で東京貨物ターミナル駅に次いで第2位というところから見ても、JR貨物にとっては北海道路線は最重要路線の一つであることは明らかです。東北本線、羽越線-信越線-北陸本線を走る貨物列車も、北海道と東京、大阪を結ぶものが相当ありますから、それらを失うことはJR貨物にとっては死活問題でしょう。

一方、日本全国の貨物輸送から見ると、鉄道輸送のシェアは1%しかありません。しかし、鉄道輸送の特性上、近距離、少量の輸送は不得手であり、長距離、大量の輸送に適しています。そのため、北海道-本州間の輸送に占める鉄道のシェアは約1割であり、中でも 本州への農産物の輸送に占めるシェアは3割程度

鉄道の貨物輸送は既にシェアを落とすだけ落としており、それでも存続している貨物輸送には、それなりの理由と必然性があります。青函トンネルは鉄道専用です。つまり現状では貨物列車は本州まで直通できるけれど、トラック輸送は途中で船を使わなければならないわけです。だから、北海道本州間のトラック輸送は船の輸送力の上限にも左右されます。もちろん、天候にも左右されます。鉄道もどんな悪天候でも走れるわけではありませんが、船に比べれば運航率は高いですから。
それに、物流業界は常に人手不足です。北海道もその例外ではありません。前述のとおり農産品の輸送では鉄道のシェアがかなり高いのですが、農産品は手荷役作業を伴うため、一部地域で輸送の受託制限が始まっている、本州の主要港から先のトラック輸送が断られる状況が現れ始めている、 という指摘があります
したがって、函館本線の貨物輸送を廃止してそれをトラック輸送に切り替え、というのも簡単なことではありません。

ここまで考えれば、函館本線の函館-長万部間は新幹線札幌延伸後も、貨物用としては必要不可欠であることは明白です。にも拘わらず、誰も存続を言い出さないという異常事態です。
要するに、誰も赤字を被りたくない(かぶれる額ではない)のです。沿線自治体もそうですし、貨物列車を運行するJR貨物もそうです。
JR貨物が路線の譲渡を受けて、自ら函館本線を維持、運営する、というは現実的には不可能です。何故なら、現状JR貨物が貨物列車運行のためにJR旅客各社に払っている線路使用料は、経営がギリギリのJR貨物を救済するため、国策で格安に設定されているからです。アボイダブルコストと言って、JR貨物の列車が走ることによって線路保守等の費用が増加する、その増加した差額分だけを支払うことになっています。それでJR貨物は何とか経営を維持しています。自社で全長130km以上の長大な路線を自社で保有してしまうと、アボイダブルコストでJR北海道に払っている線路使用料よりはるかに高額の費用が掛かります。JR貨物にはとてもその額を負担できないのです。
もちろん、沿線の市町村が自力で鉄道を維持できるはずもなく、またJR北海道自体も厳しい経営状態であり、大赤字の函館本線を維持し続けることができません。

結局、必要なのに誰も費用を出せない、ということで、函館本線廃止へ、という最悪の方向に向かいつつある状況のようです。
本州との物流網の維持は沿線市町村だけの問題であるはずがなく、むしろ札幌をはじめとした沿線以外の市町村の問題です。ならば、それは全北海道の問題であって、道が中心になるべき(経営基盤としても、都道府県でなければその負担に耐えられないのは明白ですし)と思われますが、現在の北海道知事にその確固たる意志があるようには見えません。

結局、新幹線の作りすぎ、というところに問題があったように思います。新幹線が本当に必要な路線は既に作られているわけです。衰退しつつある今の日本で、既存の新幹線ほどの需要がない路線に新しい新幹線の路線を建設しようとするところから、色々な無理が生じています。長崎新幹線の佐賀県通過をめぐる迷走も同根の問題でしょう。






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最終更新日  2022.10.26 19:00:08
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