inti-solのブログ

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2023.06.24
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テーマ: ニュース(100302)
不明潜水艇、設計資料の一部には「既に危険信号」 専門家


業界の専門家の一部からは、オーシャンゲートの運航について、リスクがあることで知られているとの声も上がっている。
米デューク大学で生物医学工学を専攻するレイチェル・ランス氏は「ここは元々、潜水艇の設計について周知されている大半のことを受け付けない会社だった」と指摘。オーシャンゲートの設計資料の一部からは、「既に重大な危険信号が発せられており、この業界で働いた経験を持つ人々にはそれが伝わっていた」と述べた。同氏は水中で生存する際の生理的要求について研究した実績を持つ。
同社は一般向けのマーケティングで、潜在的な顧客の冒険心に訴えかけるのと同時に、そうした冒険が安全なものだと納得させようともしている。そこでは科学者や冒険家らが同社の技術革新を称賛しているという内容が紹介される。~
タイタンに乗り込んでいたラッシュCEOも昨年、潜水艇に使用する部品をキャンプ用品店で購入したことを認めていた。また複数のオンライン動画で、従来の潜水艇と異なるタイタンの設計について説明。素材に炭素繊維を含めることで浮力を高めていると語っていた。同CEOによれば、有人の潜水艇に炭素繊維を使用した例は過去にないという。~
別のインタビューでストックトン氏は、以下のような安全性を否定しているともとれる発言をしている。
「ある点において、安全性は純粋に無駄でしかない」「とにかく安全でいたいなら、ベッドから出るなということだ。車にも乗らず、何もしなければいい」

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危険を最小限にするために最大限の努力を払い、それでも残る危険性を十分に認識したうえで、あえてその危険に自ら挑む行為を一般的に「冒険」と呼びます。ただ単に危険な行為を行うのは、「無謀」でしかなく、更に命の危険が非常に高ければ「自殺」になります。ましてや自分自身の命だけを危険にさらすならまだしも、業として他人からお金を受け取ってそのような行為を行うのは、犯罪的となります。

沈没したタイタニック号の見物ツアーに使われた潜水艇は、どうやら4000mの深海に反復して潜るだけの安全性を備えてはいない代物だったようです。1回2回の潜航なら、どうにか耐えられたのでしょうが、事故の時点で営業としての潜航は14回目だったようです。それ以外にも試験潜航は行われているでしょうから、全部で潜航は20回くらいでしょうか。耐圧容器の疲労が蓄積して、こで潰れた、ということなのでしょう。

潜航震度がせいぜい400~500mの軍用の潜水艦ならともかく、何千メートルの深度まで潜る潜水艇の耐圧容器は、基本的に球形とされます。しかし、この潜水艇は円筒形の耐圧殻だったそうです。その材質は金属ではなく、炭素繊維強化プラスチックということです。一般に炭素繊維は鉄より強度が高いとは言われますが、引用記事によれば有人潜水艇に炭素繊維が使われたことは過去にない、ということで、実績のない材料で作った潜水艇でいきなり旅客営業は明らかに無謀です。

かつて、1985年に起きた日航123便墜落事故は、高度7300mほどで修理ミスのあった圧力隔壁が破壊されたことが墜落原因になりました。高度7300mの気圧はだいたい0.4気圧くらいです。一方、旅客機の機内は0.8気圧程度に保たれています。内外の気圧差は0.4気圧程度ということになります。その程度の気圧差でも圧力隔壁が破裂すると、噴き出した空気によって垂直尾翼の大半が吹き飛び、操縦系統が破壊されました。
一方海の底は、深度10mで1気圧ずつ水圧が上がります。深度4000mなら400気圧、ということになります。けた違いの圧力で、しかも飛行機の場合は外に対しての膨張する力、潜水艦の場合は内側に対する押しつぶす力です。
そのことから考えて、飛行機で実績がある材料でも、潜水艇に使えるかどうかは別問題というしかありません。

また、これまでの営業でも頻繁にトラブルが発生していたことが報じられており、いつ壊れるか分からない代物が、たまたま今回壊れた、ということになるようです。
しかし、この事態に最大の責任を負うと思われるCEOは乗客とともに4000mの海底に沈んでしまいました。刑事責任を追及できる人物が生きて残っているのかどうかは分かりません。

結局、乗客からしてみれば、25万ドルという高額の料金を払って知らずに鉄の棺桶に乗せられ、海の藻屑にさせられた、という最悪すぎる事態になってしまったわけです。自分で危険性を把握したうえで、25万ドルを投じて命を懸ける、なら納得のしようもありますが、知らずに棺桶に乗せられたわけですからね。

幸か不幸か、私は25万ドルもお金を持っていないので、こんな自殺ツアーに参加したくてもできないわけですが、類似の事例がほかにないとは言い切れません。結局、冒険は自分の力と判断でやるべきだ、ということに尽きるでしょう。冒頭に書いたように、それが「冒険」なのか「無謀」なのか、自分自身では判断できないような場所に、お金を払って他人に連れて行ってもらうのは、避けた方がよい、ということかなと思います。





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最終更新日  2023.06.26 19:31:54
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