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あらためて「舞いあがれ!」の最終回。柏木や倫子たちは、なぜか東大阪の「ノーサイド」に集合していました。これは大きな謎とされています。◇ひとつの可能性として、国際線のパイロットである柏木が、たまたま関西空港に降りる機会に合わせて、他のメンバーが大阪に集まったとも考えられます。しかし、《かささぎ》の初フライトの現地ならともかく、リモート視聴ならどこででも見れるのだし、航空学校の同窓生にとっては、東大阪なんて縁もゆかりもない場所なのだし、しかも、舞はそこにいないのだから、彼女の兄の義父の喫茶店に集まっても仕方ありません。…ってことで、もしスピンオフが作られるとすれば、そこらへんの謎も明かされるんだろうと思います。ただ、わたしには、もうひとつの仮説もあります。◇舞が五島に着陸するとき、「まもなく1つめの目的地に到着します」と言ったので、わたしはつい、「やっぱり次の目的地は宇宙なのかしら?!」などと考えたのだけど、…よくよく考えてみると、次の目的地はたぶん離陸した最初の海岸であり、そこからさらに、東大阪まで飛ぶんじゃないかと思うのですよね。そうでもなければ、柏木たちがノーサイドに集まる理由は見当たらない。つまり、ノーサイドに集まった面々は、そこから小学校のグラウンドあたりに全員で移動し、舞や貴司や歩の乗った《かささぎ》の着陸を待つのでは?◇実際、《かささぎ》は、「五島列島~本土で就航した」とはいうけれど、その本土ってのがどこなのかは明示されていません。離陸したポイントも、なんとなく長崎の海岸かな~とは思ったものの、ほんとうのところはよく分からない。もしも《かささぎ》が、たとえばドクターヘリみたいに、緊急時に飛ぶことまで想定しているのなら、たんに同じ場所を定時に往復するのではなく、いつでも、どこにでも、フレキシブルに飛べるのでなければならないし、たまたま最初の操縦者は舞になりましたが、ほかにも操縦できる人間がいなければ成立しない。電力で飛ぶ《かささぎ》は、一回の飛行距離がどれほどか分からないし、一回の充電時間がどれほどか分からないけれど、すくなくとも、東大阪で製造した機体を、最終的には五島まで運んだのだから、(トラックや船で輸送したのでなければ)もういちど自力で東大阪まで戻ることだって、出来ないはずがないのよね。なお、五島から大阪までは800kmぐらいあるようで、一般のヘリコプターなら4時間ほどの距離です。◇ちなみに、画面で見るかぎり、《かささぎ》の乗員定数は3人でしょうから、もし東大阪に戻ってくるとしても、ノーサイドに集まった面々と会えるのは、やっぱり舞と貴司と歩の3人だけでしょうね。一部の視聴者は、柏木と若葉が対面することを熱望してますが、残念ながら、若葉を東大阪に連れてくるのは無理です。そもそも、彼女はめぐみ丸を運転しなきゃならないし、東大阪には何の用もありません(笑)。柏木のほうも、国際線のパイロットですから、かりに東大阪で舞に再会したとしても、すぐまた関空から旅立つだろうし、長崎くんだりまで若葉に会いに行く暇などなく、そもそも会いにいく必要もありません。…赤の他人なので(笑)。柏木若葉「silent snow」
2023.04.05
朝ドラ「舞いあがれ!」が終了。てっきり舞は宇宙へ行くものと思ってたのに!地球の大気圏内に留まりました。しかも、だいぶ低空(笑)。とはいえ、朝陽くんは航空宇宙工学を専攻してるらしいし、娘の歩ちゃんは宇宙人とお友達みたいだから、大気圏を超えるのは次の世代に託された感じ?◇まあ、「空飛ぶクルマ」にも夢がありますよね。Wikipediaによると、eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft/イーブイトール)は、電動の垂直離着陸機である。人が乗り込める大型の有人eVTOL(空飛ぶクルマ、有人ドローン)の開発も進められている。日本の経済産業省は、eVTOLについて「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」を正式名称としている。つまり、電気を動力として、垂直離着陸が可能であり、飛行に航空機パイロットを必要としない航空機を指す。2021年10月29日、日本のスカイドライブが型式申請を行った。2022年9月7日、大阪府は2025年大阪・関西万博での商用運航を目指す「空飛ぶクルマ」について、2023年2月に大阪城公園で有人の実証飛行を行うと発表した。大阪府によると、日本国内での有人の実証飛行は初めてという。機体は米国「LIFT AIRCRAFT」社製の「HEXE(ヘクサ)」の1人乗りの機体を使用し、巡航速度は時速約100キロ。大阪城公園敷地内で離着陸や昇降時の動作を確認する。観覧席も設ける予定。…だそうです。◇アビキルが開発した空飛ぶクルマは、騒音の少ない小型ヘリコプターって感じで、ちゃんとパイロットが操縦してましたが、経産省が目指してるのは、あくまでパイロットの不要な航空機です。なお、経産省に型式申請した「スカイドライブ」は、東大阪ではなく、愛知の会社。やっぱり日本の機械産業は、大阪じゃなくて愛知なんでしょうか?だとすれば、それはやはり、家康が全国の職人を愛知や静岡に集めたからですね。≫ 愛知のトヨタと、静岡のヤマハ◇空飛ぶクルマが普及するために必要なのは、1.衝突や渋滞のない飛行ルートの確保。2.天候悪化や燃料切れや故障の際に緊急着陸できる場所の確保。3.墜落や騒音被害の回避。…ですよね。また、自動車が走るのに道路が必要なように、空飛ぶクルマが飛ぶのには空気が必要ですが、地上の空気は道路ほどには安定していません。つねに無風状態ではないからです。しかし、風の影響を受けない安定的な飛行ができなければ、乗用車に代替するのは難しい。なお、上の「スカイドライブ」のイメージでは、途中まで自動車として一般道を走行し、道路脇の駐車スペースから離陸しているようです。きっと着陸にも何らかの駐車場を使うのでしょう。◇もし空飛ぶクルマが普及したらどんなことが起こるでしょうか?・移動時間の短縮。移動距離の増大。・山や川を越えるのが容易に。・災害避難が容易に。・大陸の国境が有名無実化。・人々が上空からの視野を獲得。人間の世界観が変容。・地上の交通渋滞が解消。もし空飛ぶクルマが乗用車に代替したらどうなるでしょうか?・地上の交通事故が激減。・アスファルトの車道が激減。・都市部のヒートアイランド現象が改善。・既存の車道の土地活用。・建物の玄関は一階でなく屋上に。・屋上の高さが一律になって建物どうしが空中で連結。…などなど。社会は劇的に変わるかもしれません。おつかれだったね~ぃ。画像は「ゆるキャン△2」です(笑)。
2023.04.01
もう最終週なのですね。予告を見ても、物語がどこに着地するのか、まったく読めない。いやいや、「舞いあがれ!」だけに、どこにも着地しないで舞いあがったまま終わるとか?わたしの関心はいまだに、「大気圏を超えるのか、大気圏内に収まるのか」…ってところにあるのだけど、そんなこと気にしてるのはわたしだけかも(笑)。Tverでは「ゆるキャン△2」を視聴中。同じ女優であるのを忘れてしまうくらい、ぜんぜんキャラがちがうのよね。「すイエんサー」も終了。そして、過去のスゴ技動画などを番組サイトで公開中です。福原遥さんによる紙飛行機作り…リアル #舞いあがれ!な動画もございます。他にも「手紙を超ピッタリ3等分に折りた~い!」とか「カレーうどん 飛びはねさせずに食べた~い!」などございます。▼動画を見る▼https://t.co/JXd6Nybg4V pic.twitter.com/0ZV6VsFXT9— NHK広報 (@NHK_PR) March 4, 2023
2023.03.27
朝ドラ「舞いあがれ!」は難しいテーマに挑んでますね。舞と御園が立ち上げた「こんねくと」は、子会社の形をとってるけど、その業務は生産者組合に近い。つまり、生産者どうしをつなぎ、それを消費者に媒介して、商品開発やブランディング、そして小売りまで担うってこと。日テレの「ファーストペンギン」では、漁協の仲介を取っぱらって、生産者と消費者が直接つながる仕組みを作っていましたが、舞と御園の試みは、それとは真逆の提案です。むしろ、農協や漁協みたいに、まずは生産者どうしが繋がる仕組みを立ち上げようって話。組合ではなく、子会社の形をとるのは、そのほうが機動的で小回りも利くからだと思う。◇ドラマを見ていて気がついたことだけど、おそらく製造業(第二次産業)の場合、農業や漁業(第一次産業)とは違って、元請けと下請けをつなぐ「商工会議所」は存在しても、生産者と消費者をつなぐ「生産者組合」が存在しないのよね。今こそそれが必要とされてる…って話でもある。これは、「あさが来た」や「青天を衝け」の、五代友厚とか渋沢栄一の話にまで遡るけれど、もともと商工会議所ってのは、国や自治体や大企業による巨大事業と、下請けの中小企業とを連絡する仕組みであって、農協や漁協のように、生産者と消費者をつなぐ機関ではなかったのだと思う。◇大企業による元請けの場合は、あくまで需要に合わせて供給の形を考えるので、通常は、収益性の高い事業に特化しながら、大量生産によって価格を下げていくことになります。しかし、収益性の高い事業にのみ特化することは、その反面で、技術の多様性を失うリスクにもなる。本来なら、たとえ少量の生産であっても、多様なニーズに応えていくほうが、技術の多様性を守っていけるし、受け継いでいける。◇生産者組合の場合は、供給側の立場から需要を掘り出すことになります。大口の顧客や大多数の庶民に、大量生産による低価格商品を売るのではなく、むしろ富裕層や事業者・法人などに、少量の高価格商品を売る形になるはずです。ただし、収益性が高まれば、かえって低価格の大量生産ベースに乗せられてしまうので、その場合は、アイディアや権利を売って、大企業による海外生産などに委ねる形になるのかもしれない。◇日テレの「ファーストペンギン」の場合は、曲がりなりにも現実の成功モデルがありました。しかし、今回の「こんねくと」の場合は、かりに何らかのモデルがあるにせよ、はっきりとした成功例はまだ存在しないのだと思う。なので、これは、ひとつの提案であり、思考実験の可能性が高い。この脚本が分かりにくいとすれば、それは、このビジネスモデルそのものが、まだ十分に確立していないからだろうと思います。ネットを見ても、このコンセプトを理解した記事はほぼ皆無で、あいかわらずドラマ評論家の無能っぷりを示しています。脚本の内容が分かりにくくなると、視聴者のなかにもアンチが蛆虫みたいに湧いてきて、SNSではまた「反省会」が盛り上がりはじめてますが、理解できないものを叩くのが大衆心理の常だとはいえ、それは多分に大衆側の理解力の欠如の問題でもある。◇今にして思えば、菱崎重工の下請け生産を断ったのも、ひとつの伏線だったのでしょうねえ。その意味で、今後のIWAKURAが、下請けとして飛行機などの部品生産を担う可能性は、ほとんど無くなったように思える。現実の三菱重工も、舞い上がるどころか、いまやどんどん舞い落ちていて、国産飛行機の事業からは撤退、H3ロケットの打ち上げも失敗、自動車事業にも展望があるとはいえない。そう考えると、IWAKURAが、大企業の下請けから脱却するのは、方向性としては間違っていないのだと思う。◇ただし、中小企業の連携のなかでなら、IWAKURAが飛行機やロケットの事業にかかわる可能性は、十分にありうるだろうし、テレビドラマとしても、最後に舞い上がらないはずはない。なので、わたしは、いまだに舞が宇宙へ飛ぶだろうと思ってます(笑)。
2023.03.10
ドラマ「三千円の使いかた」最終回を見ました。最後のエピソードは、けっこう難しい問題!かつて息子のために借りた教育ローンの返済を、結婚を前にした息子に押しつけてくる親。まあ、もともとは自分の就学のための借金なのだから、息子のほうもそれを了承するけれど…息子の婚約者はそれを納得できません!自分たちの結婚後の生活費が削られるからです。まるで生活笑百科のご相談みたいなお話!ローンを支払うべきなのは、実家の親なのか、それとも息子夫婦なのか??もっといえば、経済リテラシーがなさすぎる家の息子は、経済リテラシーがありすぎる家の娘と結婚できるのか??…って話でもあります。ネットでも意見が割れていました。◇最終回の決着のしかたは、まず新婦の側の実家が借金を一括で返済し、それを無利子で新郎に貸すという形でした。つまり、結婚するなり、義父と新郎は貸借関係になるのですね(笑)。けっしてファンタジックな結末ではなく、ドラマとしては、わりと妥協的で生々しい決着。実際にありうる話かもしれません。まあ、新郎側の実家が返済から逃れることに変わりはないので、こういう決着には賛否両論もあると思う。結婚そのものを諦める場合もあるだろうし、現実的な対応は、人それぞれだろうなと思います。視聴者のあいだで意見が割れるようなテーマを、テレビドラマが突きつけてくるのも悪いことじゃない。◇わたし自身の立場は、前回の放送を見たときから、こちらの「婦人公論」の記事とほぼ同じでした。▶ https://fujinkoron.jp/articles/-/7821たしかに借金の押しつけは不愉快だけれど、経済リテラシーの欠如した人々を、ドラマのなかで断罪しても仕方ないって気がしてた。…だって、経済リテラシーの欠如した人なんて、世の中にはたくさんいるし、正直、わたし自身も計画的にお金を使うのが苦手だし、そのこと自体を糾弾することはできないと思う。◇現在では、政府も、国民に「経済リテラシー」をもつよう促しているのですね。▶ https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201404/1.htmlしかし、たんに呼びかけるだけでは不十分で、政府が本気でそう考えるのなら、全国民に義務教育で学習させなければならない。それを「自己責任」の問題で片づけるべきではありません。◇現代社会は、人々にさまざまな「リテラシー」を要求します。しかし、誰しもが、かならずしも万全なリテラシーを身につけられるわけではない。かつて読み書きのできない人たちが沢山いたように、メディア・リテラシーのない人もたくさんいるし、ヘルス・リテラシーのない人もいるし、エコノミック・リテラシーのない人もいて、しかも、そうしたリテラシーの有無が、社会の格差をどんどん拡大させている。たんに「リテラシーがない」というだけの理由で、就労ができなかったり、結婚や出産ができなかったり、しまいには社会生活さえままならずに、生きていけなくなってしまう人が出てきています。◇とくに高齢者になるほどリテラシーは失われます。独り暮らしになれば、なおさらです。メディア・リテラシーがなければ、スマホも使えず、ネットにもアクセスできず、必要な情報が得られずに、誤まった情報に振り回される。ヘルス・リテラシーがなければ、自分の健康を適切に管理できず、必要な検査や医療も受けられず、かりに薬を処方されても、それを正しく服用できず、みずからオーバードーズで薬害を被ったりする。エコノミック・リテラシーが欠如していれば、むやみに浪費してしまったり、あやしげなサービスに金をつぎ込んだり、あるいは逆に、自分と他人の所有の分別がいいかげんになって、店で万引きを繰り返したりもする。それらは「病気」や「犯罪」と見なされるかもしれませんが、じつは「リテラシーの欠如」という面もあるだろうと思います。◇なんでもかんでも「自己責任」で済ませる社会は酷です。むしろ、リテラシーの欠如した人々がいることを前提に、セーフティーネットのある社会を作らなければならない。そうしないと、情報や医療や経済の格差がどんどん拡大し、国民社会が分断して、ついには国家の凋落を招いてしまう。それは個人の病理というよりも、社会の病理だと思います。ドレミファドンで中尾ミエがMISIAの曲を当てたのが驚き。
2023.02.26
朝ドラ「舞いあがれ!」第19週は、下町ロケットではなく半沢直樹じみた内容。さすがに投資家が勝ち続けるドラマなんてありませんよね。兄の悠人の転落は、織り込み済みだったとも言える。◇この悠人の転落は、今回の朝ドラのなかで、とくに重要なエピソードでした。過去の朝ドラにも、「娘を売り飛ばした父親」(おちょやん)とか、「娘を捨てて米兵と駆け落ちしたヒロイン」(カムカム)などがいて、そのつど "朝ドラ史上最悪" と言われたりしましたが、今回の悠人のインサイダー取引とその賠償額は、おそらく朝ドラ史上「最悪の犯罪」だろうし、なおかつ朝ドラ史上「最大の借金額」だろうと思います。◇そもそも岩倉家が、父の代に工場新設やリーマンショックで抱えた借金は、「ちむどん」の比嘉家の借金なんぞとは比較にならないほど、巨額で深刻だったはずですが、悠人が裁判で請求された損害賠償額は、それをも超えるでしょう。悠人は、その失敗のスケールにおいて、父を超えてしまったのですよね。◇たとえば、「なつぞら」の咲太郎とか、「カムカム」の算太とか、「ちむどん」の賢秀とか、過去の朝ドラにも"ダメ兄貴"は沢山いましたが、この「舞いあがれ」の悠人の犯罪は、過去のダメ兄貴の放蕩なんぞとは比較にならないほど重大で、損害賠償額がどれほどかも想像できません。そもそも、今回の悠人の兄貴像は、過去の"ダメ兄貴"とはだいぶ類型が違っていて、けっしてバカ兄貴ではないのですよね。むしろ、優秀すぎるがゆえに危機をはらんでしまうタイプ。ここに桑原亮子の独創があります。◇じつをいうと、ドラマの序盤では、望月家の「働かない父」とか、梅津家の「働けない息子」のほうが、物語に暗い影を落とすだろうと心配していたのだけど、実際には、岩倉家の失敗や転落のほうがはるかにスケールが大きく、それに比べれば、望月家や梅津家の問題など些細なものに見えてしまいます。しかし、岩倉家の面々は、七回転んでも八回起き上がるような人たちなので、息子が違法取引で有罪判決を受けてもすぐに立ち直り、五島の実家の人たちも平然と笑って生き抜いている。これこそが、桑原亮子が今回の朝ドラに持ち込んだ「新しい家族モデル」です。清く正しく慎ましい家族ではなく、壮大な失敗や転落を繰り返しながら、七回転んでも八回起き上がってくるような家族。逆に言えば、令和の日本人は、そういう生き方をモデルにするほかないってことでしょう。◇まあ、岩倉家の場合は、父であれ、母であれ、兄であれ、妹であれ、何度でも起き上がってくるほどの、傑出した能力や不屈の精神力をもっていて、そこらの凡人が容易に真似できるわけではありません。しかし、そんな異様なポテンシャルをもったハイスペック家族だからこそ、きっと宇宙にまで行くだろう、とも思うのです。…ちなみに、わたしは先週まで、舞は「かぐや姫」で、久留美は「月のウサギちゃん」で、貴司は「紀貫之」か「サンテグジュペリ」だと思っていたのですが、今日の放送を見たら、舞と貴司は「織姫と彦星」でしたねw
2023.02.15
貴司が「千億の星」を短歌に詠んだことで、いよいよIWAKURAの宇宙事業が暗示された感じです。君が行く新たな道を照らすよう千億の星に頼んでおいた舞は宇宙へ行くのでしょうか?◇先日も書きましたが、第1話の「月まで15日」という機内アナウンスや、第3週の「望月家の少女とウサギ」のエピソードから考えるに、桑原亮子は、2023年の干支にちなんで、「月とウサギ」の物語を書こうとしている可能性があり、舞の父が人工衛星に関心を示していたことからも、IWAKURAがいずれ宇宙産業に乗り出す可能性は高い。そうなると、はたして悠人の「金の宇宙人」がロケットに乗るのか、はたまた舞自身が「宇宙船のパイロット」として飛ぶのか、そこらへんが気になってきます。◇おりしも、18日に放送された「クローズアップ現代」では、アルテミス計画など月面事業の展望が取り上げられました。https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4740/2040年ごろには、1万人もの人々が月面都市へ旅行するとのこと。現在のドラマ内の設定は2013年(舞は27才)なので、2040年といえば、そこから27年後(舞は54才)です。後述するように、番組のVTRでは、ご丁寧に「ネジ」の話題まで出てきました。◇すでにドラマにも、三菱重工らしき大企業が登場しています。鶴見辰吾が演じる荒金は《菱崎重工》の重役という設定。かつては、舞の父もそこで働いていたらしい。思えば、「下町ロケット」の吉川晃司は、《帝国重工》の宇宙航空部長だったわけですが、そのモデルも三菱重工だったようです。ちなみに、三菱のグループ企業は不祥事が多く、国との癒着も強くて不信感がもたれているし、とくに三菱重工は軍事産業にも絡んでいるので、あまり朝ドラでそこらへんを美化してほしくありません。わたしは、吉川晃司の演じる鬼教官が「元自衛官」とされた点にも、すこし警戒感を覚えたけれど、朝ドラの内容を、軍事や国防がらみの事業に絡めて美化することには違和感もある。◇他方、先の「クローズアップ現代」によると、月面の《水探査》とか、月面着陸船による《物資輸送》とか、月面都市《ムーンバレー》などの事業は、日本のベンチャー企業が主導しているそうです。そこで取り上げられたのが、ネジの問題!ロケット離陸時の激しい振動に耐えるネジを作るのは難題だそうです。もしや、これを解決するのがIWAKURAなのでは?舞の父が参加した企業セミナーや見学した工場も、そうしたベンチャー企業がらみだったかもしれません。◇先述のとおり、月面都市《ムーンバレー》の計画によれば、2040年ごろには、1000人ほどの研究者が月面に滞在し、10000人ほどが旅行や仕事で月へ出掛けるそうです。そうなると、朝陽くんぐらいの年代の研究者が月面都市に滞在し、舞のようなパイロットが月まで旅客を輸送する未来がありえます。貴司がたびたび口にする《トビウオ》の比喩は、「海の中と外」じゃなく「大気圏の中と外」の話かも!久留美も「望月」家の娘だから、20年前の「まんてん」の宮地真緒みたいに、いつ看護師を辞めて「月へ行く!」と言わないとはかぎらない。それこそ、ラグビーボールみたいな宇宙船で月まで飛翔し、月面でウサギの世話をする時代が来るかもしれません!◇わたしは、先週まで、貴司と朝陽くんはサンテグジュペリなのだと思っていました。彼らは、飛行機と宇宙をつなぐ「詩人」と「星の少年」だからです。しかし、貴司は、その名前から考えると、平安貴族の役人(高貴な司)なのかもしれません。梅津貴司というキャラが短歌を詠むのは、きっと日本の歌人たちが、古代から「梅」だの「月」だのを詠んできたからでしょう。貴司は無意識のうちに、その伝統を負っている。≫ 月を詠んだ短歌もしかしたら、貴司は、在原業平や紀貫之のような歌詠みの生まれ変わりでは?とくに紀貫之は「竹取物語」の作者とも言われてる。舞がかぐや姫になって、望月久留美が月のウサギちゃんになって、貴司がそれを見上げて短歌に詠む、…みたいな流れかも。
2023.01.25
五島に滞在してる朝陽くんが、「星と飛行機」を結びつけようとしてるので、わたしは、ひたすら、サンテグジュペリのことを気にしてるわけですが、◇じつは、このドラマは、始まった当初から、宇宙のモチーフを随所にちらつかせています。たとえば、第一話の冒頭、幼いヒロインが乗った飛行機のなかで、女性の機長が次のようにアナウンスします。…当機はただいま、追い風に乗って時速1100kmで飛行中です。これは、38万km離れた月へ、たった15日でたどりつけるほどのスピードです。なぜそこで月の話をするの??…と、まずは思ったのです。◇そして、ヒロインの実家が「ネジ工場」だと分かったとき、わたしは『半沢直樹』の鶴瓶の役を思い出したわけですが、同時に、「ネジを飛行機に乗せること」が父の夢だと知ったとき、やはり池井戸潤の原作によるTBSの日曜劇場、すなわち『下町ロケット』のことを思い出したわけですね。吉川晃司が演じる鬼教官の大河内も、やはり『下町ロケット』の財前を彷彿とさせるキャラでした。まさかとは思うけど、飛行機を月まで飛ばそうとしてるのか??…と。ネジ屋さんが月まで飛行機飛ばす話なのはだいたい分かった。#舞いあがれ #下町ロケット pic.twitter.com/zHobW2kkVm— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) October 3, 2022 もちろん、このときはシャレのつもりでツイートしたわけです。しかし、その後もヒロインの父は、人工衛星にかんするセミナーや工場見学に参加したりしていた。◇さらに、ヒロインの親友は久留美ちゃんですが、彼女の苗字って「望月」なのですよね。そして、彼女が舞と出会ったきっかけは、小学校での「うさぎ」の世話でした。ここには、あきらかに「月とうさぎ」のモチーフが現れています。じつは桑原亮子が前に書いた『カノブツ』にも、(よるドラ『彼女が成仏できない理由』)謎の「ウミウサギ」というモチーフが出ていたのですが、今回はまさしく「月の兎」なのです。つまり、桑原亮子は2023年が「卯年」であることを見越して、「月とうさぎ」の物語を書こうとしている可能性がある。もしかしたら、福原愛と山下美月を "ウサギちゃん" コンビに見立ててるのかも。◇それに対して、貴司と朝陽くんは、おそらくサンテグジュペリなのです。なぜなら「詩人」と「星の少年」の組み合わせだから。サンテグジュペリは、サハラ砂漠に不時着したときの経験をもとに『星の王子さま』を書きました。つまり、彼は飛行機で宇宙へ行ったのですよね。◇きわめつけの謎は、兄の悠人が実家に送ってきた、ビリケンさん的な「金の宇宙人」です。あれって、いったい何の伏線なのか。幸運を呼ぶとか、プレミアがついて高く売れるとか、そんなことも想像は出来るけど、もしかしたら、あれが岩倉家を宇宙へ飛ばすのかもしれない。あるいは、岩倉家の人々に代わって、あれ自体が宇宙へ飛んでいくかもしれないのです。
2023.01.16
この物語は、「ヒロインがパイロットになるまでのサクセスストーリー」だと誰もが信じてるはずです。もちろん、わたしもそう思ってます!今のところは…。だって、NHKのキャッチコピーにも、「空を見上げて飛ぶことをあきらめないヒロインの物語」と書いてあるし、ウィキペディアにも、「空とパイロットにあこがれ、 空を駆ける夢へ向かい奮闘するヒロインの挫折と再生を描く」って書いてあるし。なにげに「パイロットになる」とは断言されてないけど…。いや、だって、ヒロインがパイロットになった将来の姿も映像化されたし、さすがにそれを裏切るなんてことないでしょう!!◇しかし、「それ自体が壮大なミスリードだった」…なんてことを桑原亮子がやらかさないとも限らない(笑)。実際、過去の朝ドラでも、「純情きらり」の桜子とか、「半分、青い」の鈴愛とか、これといってヒロインが何も成し遂げずに終わる話はあった。そう考えると、舞がパイロットになれずに終わる可能性もないとは言えない。そもそも、すでに舞は資格も取って、あとは就職さえ決まればパイロットになれるわけで、もう、そのこと自体には、さしたるドラマ的な感動もないって気はする。◇いまや物語の焦点は、パイロットになることじゃなく、父の事業を引き継ぎ、兄とも協力しながら家業を立て直し、やがてIWAKURAのネジを飛行機に乗せる、…という夢のほうに移ってきてる感じ。そして、IWAKURAのネジを乗せることができるなら、ヒロインの操縦する飛行機は、旅客機である必要などどこにもなく、たとえば国産の小さな自家用機でも構わない、…ってところに来てる感じも。五島に滞在している星好きな朝陽くんとの関わりも気になる。「星と飛行機」という組み合わせから考えると、脚本家がサンテグジュペリ的な何かを意識してる可能性もあり、貴司の詩人の感性が、舞と朝陽くんの夢をファンタジックに繋いでいくのかもしれない。いずれにせよ、今後の桑原亮子が何をやらかすかは、まだまだ見通せません。◇◇それはそうと、舞と柏木が別れましたね。「ほんとに付き合ってたの??」ってのが多くの視聴者の印象だと思いますが…そこには、やはり、脚本家の交代の問題が大きく響いている。いまさらだけど、やはり吉川晃司は「鬼教官」じゃなきゃいけなかったのよね。吉川晃司が「鬼教官」であればこそ、舞と柏木はもっと連帯を強められたはずだし、その連帯が自然な恋愛感情にも発展したはずだし、さらには、最後の鬼教官との和解のエピソードも、より感動的なものになったはずなのです。しかし、その脚本のプランが捻じ曲げられてしまった。そのせいで、二人の心の繋がりを十分に描けないまま、なんだか唐突に恋人になってしまい、別れのシーンも淡白なままに終わってしまった。まさしく目黒蓮の無駄遣い。彼の存在意義はほとんどないに等しかった。◇噂によれば(というか本人談によれば)、どうやら吉川晃司の提案で、本来の「鬼教官」のキャラが変更されたらしく、一部の視聴者は、そのことを称賛してもいます。たしかに、「倫子もツンデレ。柏木もツンデレ。鬼教官もツンデレ。」…というんじゃ、あまりに話が安っぽかったのは事実。人間関係の物語をツンデレでしか描けないのは、脚本家の力量不足というほかない。けれど、だからといって、全体的なプランを考慮せずに、脚本の意図を捻じ曲げたりしてはいけなかった。これは、吉川晃司の責任でもあるけれど、その提案を受け入れた演出家の責任でもあるし、それを見過ごしたプロデューサーの責任でもある。◇脚本家の交代に起因する問題は、嶋田うれ葉や佃良太の責任ともいえますが、統括やすり合わせを怠ったプロデューサーの責任ともいえるし、脚本の意図を理解しなかった演出家の責任ともいえます。逆から言えば、自分の意図をきちんと周りに伝えなかった桑原亮子の責任ともいえる。実際のところはよく分かりませんが、やっぱりこれは大いに反省しておくべき点ですね。
2023.01.16
舞いあがれ!第14週。…たしかに、わたしは、先月のはじめごろ、桑原亮子が脚本に復帰したあとに、かなり苛酷な展開が待っている可能性は高い。と予想しましたが、新年早々、想像のはるか上をいく厳しさです…(笑)。◇そして、兄が投資業で失敗しそうに見えるのは、あくまでもミスリード的な「フラグ」であって、実際に転落するのは父だけってパターンもありえます。わたし自身、そのほうが面白いと思ってる。という当てずっぽうな予測が、意外にも当たってしまった。ただし、そうなれば、祖母に逆らって故郷を捨ててきた母の選択は、結果的に間違っていた…ということにもなります。とまで書いたものの、事業失敗以上の悲劇は想像できなかった。◇じつをいうと、脚本家が交代する前の段階で、わたしは「貴司の死」をすこし危惧していました。しかし「父の死」はまったく想定外だった。やはり桑原亮子の脚本は容易じゃありません。しかも、たんに喪失の感情を描くだけでなく、リアルな経済問題をえぐりだしているところが、容赦ないほどに厳しい。…そういえば、わたしは、桑原亮子が脚本に復帰してシビアな展開になったときに、かえってSNS全体に「共感できない!」の嵐が吹き荒れ、はげしいバッシングや炎上が起こるかもしれないとも書きました。まあ、一部にはSNSの拒絶反応も見て取れますが、いまのところ、それほど大きなバッシングや炎上は起こっていません。◇わたしは以前、桑原亮子の過去のドラマの印象について、脚本家自身が格闘しすぎてやしないかと思うほど、良くも悪くも真面目すぎる脚本だった印象があって、視聴者に伝わる以前のところで無駄に格闘してる感じ。と書きましたけれど、やはりそれは、この脚本家の不安要素ではある。つまり、ドラマのなかでは解決しえないほどの厳しい状況を、あえて物語のなかに取り込んで、手に負えないような問題に立ち向かってしまう真面目さ。もちろん、それは欠点ではなく、それこそがリアリティを生んでいるともいえる。◇とにかく、この桑原亮子って人は、けっしてイージーな脚本家じゃないのです。そう安々と「幸せな結末」をもたらしてくれる作家じゃない。そのことは、あらかじめ覚悟しておかなければならない。五島の祖母は、投資家の長男に、「逆風のなかの馬鹿力」を示唆しましたが、そんなミラクルな展開で逆転が可能なのか。それともまだまだシビアでリアルな展開が続くのか。今後も、綱渡りの物語が続くんだろうと思います。
2023.01.09
舞いあがれ!第9週。脚本家が交代したことによって、「#舞いあがれ反省会」が活性化するのかと思いきや、それほど過剰な反応は起きていません。むしろ、前作の「ちむどん」のベタなコメディを叩いていた人たちが、なぜか「舞いあがれ」のベタなツンデレには満足してるらしい(笑)。結局、SNSの視聴者が求めてるのは、繊細で複雑なドラマなんぞではなく、たんに「分かりやすい共感」でしかない、ってことですね…。◇逆に、これから後に懸念されるのは、桑原亮子が脚本に復帰してシビアな展開になったときに、かえってSNS全体に「共感できない!」の嵐が吹き荒れ、はげしいバッシングや炎上が起こるかもしれない…ってこと。実際、兄の投資事業とか、父の巨大工場新設とか、岩倉家の「転落フラグ」が立ってしまってるわけだし、桑原亮子が脚本に復帰したあとに、かなり苛酷な展開が待っている可能性は高い。そして、たんに「分かりやすい共感」だけを求めてる視聴者たちは、そういう苛酷な展開を受けつけない可能性が高い。もしも、桑原亮子の脚本がバッシングされる事態になれば、朝ドラは、本格的に、SNSの求める「分かりやすい共感」の範囲内でしか、物語を作れなくなってしまうかもしれません。そうなったら、それは脚本家や制作者にとって悪夢でしかないのだけれど、例によってバカな評論家たちは、ただSNSの世論に追随するばかりで、そうした事態に対して何らの批評性も発揮できそうにありません。◇いまのところ、このたびの脚本家の変更は、さほど悪い結果になってはいませんが、どこにもツッコミどころがないわけじゃありません。最初にも書いたとおり、ツンデレや三角関係をにおわせるような恋愛展開は、あまりにもベタすぎるんじゃないか?…ってのもあるし、たとえば、冷酷な鬼教官という触れ込みだった吉川晃司は、上っ面は『下町ロケット』のキャラを借りているものの、すくなくとも、このドラマでの言動を見るかぎり、どこにも「鬼」と呼ばれるような要素などないし、むしろ温情に厚い教官というべきなんじゃないの?…って気もする。それから、(専門的なことは分かりませんが)方向音痴なパイロットが、北海道の局所的な地形だけを丸暗記しても、それだけじゃ本質的な解決にならないんじゃないの?…ってのもある。そういうツッコミどころが、現状のSNSで許容されていることの疑念もありますが、それ以上に、わたしが引っかかってるのは、兄の投資業に対するあからさまな「偏見」の描写です。◇投資業を批判的に描くのは別にいいと思うけど、それは、あくまで、具体的な業態の中身を描いてからにすべきであって、たんに「投資」と聞いただけで、すべての人物が反射的に眉をひそめてしまうってのは、いくらなんでも職業差別の度が過ぎるし、そういう描写をドラマの「お約束」にしてはいけません。そもそも、兄の投資業だけがヤクザな商売であり、妹の目指してるパイロットとか、父が事業拡大を目指してるネジ作りが、それほどカタギな商売なのかというと、べつにそんなことはないと思います。◇いや、もしかすると、兄が投資業で失敗しそうに見えるのは、あくまでもミスリード的な「フラグ」であって、実際に転落するのは父だけってパターンもありえますけどね。わたし自身、そのほうが面白いと思ってる。父の事業よりも、兄の事業のほうがずっと堅実で安定していた…ってオチなら、それはかなり斬新なドラマになるかもしれません(笑)。現実に、父のようなカタギの商売が、兄のようなヤクザな商売によって救われる、ってことも、ありえない話ではない。金のビリケン宇宙人が、その伏線だったりして??まあ、そんなことになったら、SNSは、またぞろ「共感できない!」と言って荒れるでしょうが。
2022.12.04
おとといの記事にも書いたけど、朝ドラ「舞いあがれ!」の脚本家が交代しました。かなり作風が変わりましたね。「ベタなコメディになった」「ちむどん的になった」と言われれば、たしかにそうです。これはこれで切り換えて、楽しめなくもないとは思うけど、切り換えられない人もたくさんいるでしょうね。NHKが、視聴者にむかって、「脚本家が変わったので皆さんも切り替えてください」…ってわけにもいかんだろうし(笑)。これはちょっと批判されてもしょうがないかな。◇一般に、複数の脚本家による共同執筆はあっていいと思いますが、ともに議論を重ねながら作品を練り上げていくのと、ただバトンリレーのようにして話を繋いでいくのとでは、まったく意味が違います。今回の交代は、桑原亮子側の事情によるものなのか、それとも、外的な判断によるものなのか。つまり、脚本家自身が、航空学校の取材まで追いつかなくなったのか。あるいは、あまりに困難なテーマを抱えすぎて、物語が書けなくなってしまったのか。それとも、物語がシビアになりすぎるのを畏れて、NHKの外部や上層部から横槍が入ったのでしょうか?◇かりに、このまま、序盤で提示したテーマが放棄されてしまうとすれば、それは作品自体を捨てるのも同然。とりあえず《航空学校編》や《パイロット編》などは、後続の脚本家に任せて、この路線でいくとしても、せめて岩倉家の物語や、久留美と貴司の物語については、このまま中途半端にせず、きちんと桑原涼子が復帰して書くべきだろうと思います。たとえシビアな内容になるとしても、わたしはそれを見たいです。
2022.11.23
朝ドラ「舞いあがれ!」。第7週は、けっこう大事な内容でした。◇たまたま先週も同じことを書いたのだけど、この脚本家は、過去の作品を見るかぎり、あまりに真面目すぎて、ドラマ内では解決しえない難しいテーマに取り組んで、七転八倒した挙句、伏線の回収もままならずに、破綻しかねないような物語を書いてしまう人だと思う。今回の朝ドラは、わりと序盤までは滑らかに推移してきたわけですが、第7週の内容には、この脚本家の特質が現れはじめている。やっぱり、かなり困難なテーマに向き合おうとしています。その結果、さまざまなリスクを孕んでいるように見える。今回の脚本が3人体制になったのも、きっとそのことに関係があるんじゃないかと推察します。◇親が「子供を思いやる」というのは、なるべく子供が失敗しないように先回りして心配する…みたいなことなのだけれど、その反対に、親が「子供の自主性を尊重する」ってのは、早い話、子供が失敗することも覚悟する…ってことですよね。そこまでを覚悟しなければ、ほんとうの意味で子供の自主性を尊重することはできない。◇さすがに、今回の朝ドラでは、ヒロイン自身の人生が失敗することはないと思いますが、…ヒロイン以外の人物にかんしては、そのかぎりではない。たとえば、看護師になる久留美の人生は厳しいものになるかもしれません。貴司の人生も救われないまま彷徨いつづけるかもしれません。ヒロインの兄の人生も、どこかで転落するかもしれません。久留美の両親の人生も、最後まで救われないまま終わるかもしれませんし、古本屋の人生も、一般的な意味での成功とは無縁なまま、よりいっそうシビアなものになるかもしれない。この物語の題材には、そういうリスクがあります。◇五島を捨てて駆け落ちしてきた母の人生は、いまのところは上手くいっていますが、はたして父の事業が今後も順調に行くとはかぎらない。どこかで惨憺たる失敗や転落をするかもしれません。そうなれば、祖母に逆らって故郷を捨ててきた母の選択は、結果的に間違っていた…ということにもなります。この物語には、そういうリスクがある。親の判断がつねに正しいわけではないけれど、かならずしも子供の判断が正しいわけでもない。そこに普遍的な《正解》などありえません。どの選択が正しいかなんて、そんなことは誰にも分からない。◇わたしは、今回のドラマが、そのような困難なテーマを選んだ結果、伏線を回収できないまま破綻する危険性もあると思います。すべての人物を救いきれないままに終わるかもしれない。しかし、かりにそうなるとしても、それをただちに「作品の失敗」だと断じるつもりはない。むしろ、そのくらいの覚悟をもって、あえて困難なテーマにいどむ姿勢のほうが正しいと思う。すべての登場人物に救いを与えることが、かならずしもドラマの成功を意味するわけではありません。◇この物語が「サクセスストーリー」だと信じている視聴者にとっては、失敗に終わる人生など受け入れがたいに違いありませんが、それはあくまで視聴者の側のキャパの問題であって、朝ドラの脚本家に課せられた仕事とは、べつに視聴者のキャパの範囲内に収めることではないし、必要があれば、むしろそれを超えていかなければならない。例の「ちむどんどん反省会」の結果、SNSの評判こそが絶対的正義と勘違いした視聴者も多いけれど、もし本当にそうなら、朝ドラはたんなる「視聴率主義」に陥らざるをえません。視聴者のキャパを超えないように、物語を穏便に丸く収めるだけの脚本を書いてたら、いつまでたっても予定調和的なフィクションしか出来なくなる。◇かりに、脚本家自身の選んだテーマが、ドラマのなかでは解決しえないほどに困難なものなら、たとえ多くの視聴者にとって、それが受け入れがたい展開に終始して、はげしい賛否両論やSNSの炎上を巻き起こすとしても、仕方のないことですよね。あくまでも脚本家は、偽りなく、選んだテーマを突き詰めていくしかないと思います。第7週を見るかぎり、この物語には、そういうリスクがあると感じました。追記:第8週から脚本家が嶋田うれ葉に代わりました。今後、桑原亮子が復帰するのかどうか分かりませんが、序盤で提示したテーマがあっさり放棄される可能性もあります。だとすれば、そっちほうがはるかに「作品の失敗」だと思う。テーマを突き詰めたすえに破綻するのならともかく、テーマを安易に放棄するのは、作品そのものを捨てるのに等しい。とくに久留美や貴司の物語については、このまま中途半端にせず、きちんと桑原涼子が復帰して書くべきだと思います。
2022.11.21
朝ドラ「舞いあがれ!」。先週までで青春篇が終わった感じ?◇ドラマにケチをつけるわけじゃないけど、大学の人力飛行サークルの話を見ていて、ちょっと競技のありかたに疑問が湧きました。たしかに、パイロットの体形や体力に合わせて、機体の設計を変えるのも大事な技術なのだろうけど、記録そのものは、理系的な技術ではなく、ほとんどパイロットの体力に負っているように見えます。これじゃあ、理系の競技じゃなくて、ほぼ体育会系の競技なのでは??◇ただでさえ、日本は、いまだ実用的な国産飛行機も作れてないし、ロケットの打ち上げもたびたび失敗してるわけですが、学生の技術コンテストがこんなことでいいんだろうか?実際の競技がどういうものなのか知らないけど、やっぱり純粋に「理系的な技術」で競うべきだろうと思います。それから、試験飛行を陸上でやったら、墜落したときに死者が出るんじゃないか、との懸念ももちました。そこらへんも発想が「体育会系」になっているのでは?◇さて、ここからはドラマの話。脚本は3人体制とのことですが、ここまでは桑原涼子がひとりで書いてますね。彼女の脚本は、『心の傷を癒すということ』『彼女が成仏できない理由』など、NHKの中編ドラマを過去に見ています。どちらの作品も、脚本家自身が格闘しすぎてやしないかと思うほど、良くも悪くも真面目すぎる脚本だった印象があって、視聴者に伝わる以前のところで無駄に格闘してる感じでした。その点、今回の朝ドラは、わりと滑らかに物語が展開していますし、案外、長編ドラマに向いてるのかもしれません。◇祖母と母の過去の確執や、母と娘の共依存の問題は、やや腑に落ちないところもあって、いまだに大学生の主人公が、「母の許し」を得ないと好きなことがやれないのは、やはり共依存の関係が抜け切れてないように見えるけど、そこらへんは、我が道を歩んでいる兄とも対比されながら、今後もなお物語のテーマであり続けるのかもしれません。◇一方、演出のほうは、派手さはないけれど、むしろ地味な良さが出ていると思います。そして、今さらですが、子役の浅田芭路ちゃんがとても上手でしたね。パッと目を見開いて、何かを初めて見るときの演技が、かつての「おしん」の小林綾子を彷彿とさせました。それから、「もがいてたらええんや」との助言をくれた、又吉直樹の古本屋もいい役どころだなと思っています。福原遥は、「ゆるキャン△」ほどの当たり役ではないけれど、ほどよく無難にこなしてるんじゃないでしょうか。総じて、よく出来ていると思います。
2022.11.14
汝の名。最終話。ライオンみたいな山崎紘菜。ブタみたいな北乃きい。…どちらもいい意味で!(笑)2人の女のサドマゾ的な共依存関係。演じることの陶酔と演じる者に対する憧れ。姉は妹への支配と凌辱に喜びを感じ妹は姉への羨望と被虐に喜びを感じる。食う者の喜びと食われる者の喜び。じつは姉妹を演じてるだけの昔の同級生。2人はほんとうは歪んだ形で愛し合っていて男のことなど微塵も愛していない。ほぼ百合。とくに最終話の破滅的な美しさは秀逸でした。— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) May 26, 2022 深夜枠30分で全8話でしたが2時間くらいの映画や舞台にしても良さそうな内容ではある。今回のドラマでは実年齢で3才年下の紘菜がサディスティックな姉を演じる難しさもあったと思うしかりに舞台だったらくりかえし演じるなかで二人芝居の愛憎関係がもっと深まったんじゃないでしょうか。いずれにしてもなかなか稀有な作品でした。
2022.05.27
第1シリーズのことも知らず、しかも、途中から見始めたもんだから、まさか一話ごとに過去へ遡っていく展開だとも知らず、そのうちに「なんか変だなー」と思いはじめて、おのずからネット配信のほうへ誘導され、結局、また第1話から見直していくはめになった。まあ、それが制作者側の狙いでもあるんだろうけど。◇残された手紙や音声や映像を手掛かりにして、過去へと遡っていくスタイルの物語はよくあるけれど、こんなふうに、物語としての「落としどころ」をまったくもってないドラマも珍しい。視聴者は、いってみれば結末のない世界に放り投げられる。それぞれのエピソードは、何気ない日常から切り取った一話完結的なもので、その意味では、(たわいがなさすぎるとはいえ)まあ、どこから見始めても問題のないドラマです。しかし、わたしのように、最後になって第1話を見るというのは、ほんとうに主人公と同じところへ放り投げられるようで、あまりにも辛い。やはり、これは、第一話から順を追って観ていくべき作品だろうと思います。何をもって物語の「結末」とするかは宙づりなのだけれど、なぜか順序どおりに最後まで見ると、じんわりとした幸福に包まれるという、ちょっと不思議な作品でした。◇以下に、第一話のパソコンに残されていた原稿をメモしておきます。 パソコンの近くに飲み物は置くなと怒鳴り、 決して触れるな、ときつく言った。 私はけっして恋愛が上手なほうではなかった。 「好き」といったのは初めて抱いた時だけで、 それも嘘のような、 互いに「お試し」と呼んでいて・・・ 私の書いた小説に嫉妬されたものである。 「やれ、この女とはこんなところに遊びに行ったくせに、 私はあんなところにしか連れて行かないじゃないの」と・・・ 「お前のことと同じくらい好きな友人が、お前のことを好きになってしまった」 と言われた。 プロポーズも格好がつかないままだった。 結果よかったものの、喧嘩のいきおいで始まり・・・ 口をうるさく挟んでくる。 ろくに本を読まない癖に。 私の書いた本しか読まなかったといえば、良い女のように聞こえるか・・・そして、主人公が書き加えた文章。 本当にいなくなってしまったのだと。 あなたの真似をすることで、 あなたのいなくなったことがようやく分かった気がします。 あなたがいなくなっても、世界に明日が来る。 明日が来る。 私は・・・
2019.03.30
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