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2026.06.02
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カテゴリ: 鈴木藤三郎
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台湾の工場地選定のため藤三郎台湾視察におもむく

明治33年12月5日、東京市麹町区内幸町、東京倶楽部に最後の発起人会を開催し、同12月10日には日本橋区坂本町、東京銀行集会所で創立総会を開催した。     

 創立総会は益田孝氏が会長席に着き、定款確定の件、創立費認諾の件、重役俸給決定の件、取締役及び監査役選挙の件等を議定した。

鈴木藤三郎氏は、この席で先般の台湾実地調査について報告した。

まず踏査区域の大体を述べ、糖業地としての諸条件即ち地味、気候、地方農民の甘蔗耕作並びに製糖方法その他を説明し、新式の製糖工場設立の有望について、

「今新たに資本と知識とをこの地に加えるならば、今日の産額の5倍ないし8倍を得ることは容易である。」と述べ、その他に対しては次のような要旨を述べた。

「工場敷地については、最初4、5か所を見定めて、更にこれを取捨して3か所を選定した。小工場を諸所に散在させることは経済上不利益であるから、目論見書中の粗糖製造力一昼夜20トンを標準とせずより大規模のものとし、それに適する土地を求める必要がある。更に工場建設に伴う製糖経営者の反感に対する懸念は、その処置を誤まらないならば心配はないと思われる。しかし、いつまでも買入原料にだけ頼るならば、いつ面倒が起らないとも限らないし、さとうきびの改良のほうから考えても、会社が自ら土地を所有することが万全の策である。地価も、実地調査の結果、低廉であることが判明した。そして製造に要する地域は、三年輪作として1年500甲であるから、全体で1,500甲を要するが、差当りその3分の2、すなわち1,000甲を所有するだけでも安心である。したがって土地買収に要する資金は予算額を超過することとなり、建築費も予算額より4、5万円超過する等の点から、株金払込みの時期を早める必要がある。この外営業上に対する懸念は少なく、結果は良好である。」と述べた。

 報告後、質疑応答が行われ、建築費、土地購入に関する株金払込金額の増加について了承され、総督府から一万二千円の補助金下付の件を報告した。

重役会議の結果、 取締役会において鈴木藤三郎氏を社長に互選した。

 創立総会における藤三郎の報告により、原料さとうきびの円滑で十分な供給のためには、農民から買収する原料だけに頼らず、社有地を持って、自らさとうきび農業を営むことが万全の策なこと。土地を所有し、社業の安定を図ると同時に、品種改良、肥培管理等についてさとうきび農業の模範を示し、農民を指導する必要があることが明らかになった。そこで、事業計画を変更し、株金払込額を増加するため、明治34年1月5日百株以上の大株主協議会を開催し、大株主の理解と承諾を得ることとなった。この大株主協議会は藤三郎が会長となって進めた。会長は工場設置候補地として曾文街と橋仔頭の2箇所を選定した旨を述べ、その付近は将来事業拡張上有望なる土地であるから、その購入について協議したいと提議した。井上馨は、我が国砂糖の消費と貿易状態、糖業振興の必要とを述べ、台湾で新式機械による砂糖製造及びさとうきび農業改良が必要なこと、その経営には社有地の購入が先決問題であると説いた。

「私は、官有地払下げについて、およそ5千町ばかりの払下げを受け、これを開墾しサトウキビを植え付ける必要があると考え、児玉総督や後藤民政長官に尋ねたところ『台湾で未開墾地の5千町歩はなんでもない』ということだった。そこで私は、発起人諸君にも未開墾地を買い入れる必要を説いて目論見書に書き入れた。」

しかし、藤三郎の実地調査報告に接して井上の考えは次のようになったと述べた。

「当社工場敷地の候補地である橋仔頭と曾文渓の両地方の有力者はいずれも工場の建設を希望し、土地を購入する場合には、土地代をもって株主になろうと望む者さえある。新たに土地を開墾するより、 現在の耕作地を購入するほうが有利 なことが判明した。その結果、まず曾文渓と橋仔頭で、今のうち各1,500町歩以上3,000町歩の既墾地のサトウキビ耕作地を購入しておくことを当社のために希望する。」と力説した。

「日本の商工業は日に月に進歩しているが、多くの会社は借財で事業を始め、すべて配当が多いことだけを望んで、その基礎が強固かどうかは気にかけないところがある。私は最初からできる限り土地を買入れる必要があると信じる。実に日本経済界のため、この事業の発達と成功を最も希望してやまない。」と述べ、台湾製糖の社業の堅実な発達を切望した。この主張は井上の持論で、事業会社は株主配当率の高きを競ってはならない。不時の変動に備え、堅実な社礎を確立することが緊要であると唱えた。

 後藤民政局長は、土地の買収、建築材料供給など便宜を与えると延べ、従来の台湾企業界には、確実な事業家の渡来がほとんどなく、台湾人の信用を失墜させたと述べ、「従来台湾で事業を起こした者は、多くは俗に壮士とか呼ばれるような、虚業家ばかりで、台湾で営利事業はとうてい成功しないとか、官省が不親切であるとか、いたずらに不平を鳴らし、台湾の生産事業をそしっている」と指摘し、「諸君は、日本の母国者としての義務を保たれ、かつ永遠の営利事業の先導者ですから、十分にこの産業の発達をはかられることを希望してやみません。当社への保護金は、予算外国庫の負担として、議会に提出する積りである。単に今回は台湾事業の発達を計る目的で保護を加える覚悟だが、これらの会社百社ぐらい数えるようにしたいというのが希望である。今後成立する会社で、一々保護を与える事は到底できない。しかし当社に対する保護金は5か年間支出する。」と述べ、金融方面に於ける援助をも強く保証した。いかに事業が重大視せられ、順調な発展を待望されていたか知ることができる。

 当社側では鈴木、益田が主として説明に当ったが、山本達雄氏は、 「初め百万円でこの事業を起す目論見は、今にして考えれば実に少額に失した感がある。よってこれを盛大ならしめ、充分確固たる事業たらしめんには、これに要する金額の払込みをなし、直ちに増資を実行なさしめるのが最も利ありと信ず。故になお充分必要の施設を加えるに怠るべからずと思考す」 と発言された。

大株主協議会の協議事項である土地購入の件等すべて出席株主の賛成を得て、臨時株主総会を開いて、当社創立目論見書中、第一期事業計画変更の件並びに土地買入の件が正式に議決された。「台湾製糖株式会社史」においては「今日厖大な耕地を所有し、事業経営上の一大強味となっている台湾製糖の社是は、実にこの大株主協議会において決定、確立された。」と述べている。






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最終更新日  2026.06.02 02:00:04


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