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2023年03月27日
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テーマ: 酪農生活(161)
カテゴリ: 経済
 米国ではプラントベースのミルク(豆乳、アーモンドミルクなど)の消費が急増し、牛乳の消費量が大きく減少しているという。
 日本でも、学校の長期休暇、コロナ禍による緊急事態宣言下などで、日々搾乳する牛乳が余っていると報道されている。
 牛乳が余っているにも関わらず、輸入飼料の高騰で牛乳は値上げするという。
 一方、乳価の問題は別として、需給緩和のためになる製品であるバターは、クリスマス時期に毎年のように不足してる。
 余っているのに値上げし、「酪農家が大変だ」、酪農家維持のために牛乳を積極的に消費しろという。国家資本主義あるいは、社会主義ならぬ会社主義の日本では、アダム・スミスが唱える価格決定の見えざる手は一切働かないらしい。
 資本主義経済らしからぬ牛乳の価格決定、バターの供給量決定のメカニズムが下記の記事に表されている。
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…平均所得1000万円超の「乳牛農家」をめぐる深い闇
2023年3月8日 プレジデントオンライン
 輸入飼料の高騰で「酪農家が苦境にある」との報道が相次いでいる。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「酪農家の平均所得は2015年から2019年まで1,000万円を超えて推移している。もっとも高かった2017年は1,602万円、100頭以上をも つ乳牛農家は北海道で4,688万円、都府県で5, 167万円だった。数年前まで輸入飼料は安く、 酪農経営はバブルだった。バブルがはじけたからといって、 国民に助けを求めるのはフェアではない」という――。
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■捨てるほど余っているのに、なぜ値上げなのか
「酪農家が大変だ」としきりに報道されている。
 国際的な穀物相場が高騰してエサ代が上昇しているうえ、乳製品(脱脂粉乳)が過剰になって余った生乳を廃棄したり、減産せざるを得なくなっているというのである。1月23日のNHKクローズアップ現代は、「牛乳ショック、値上げの舞台裏で何が」と題して報道していた。しかし、生乳は捨てるほど余っているのに、なぜ乳価は上がるのだろうか?
 供給が多ければ価格が下がるというのが経済学だ。これについて、クローズアップ現代は、何も答えていない。経済の基本原理に反した動きがあるときは、必ず人為的な力が働いている。それを明らかにしなければ、問題の真相に切り込んだことにはならない。
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■牛乳(加工乳)=水+バター+脱脂粉乳
 問題の真相を理解するには、まず「牛乳」という商品について知る必要がある。
 牛乳は面白い商品だ。水を取るとバターと脱脂粉乳ができる。できたバターと脱脂粉乳に水を加えると、元の牛乳に戻る。これは“加工乳”と表示されているが、牛乳と成分に違いがあるわけではない。
 生乳からバターと脱脂粉乳が同時にできる。これが生乳と乳製品の需給を複雑なものにする。2000年に汚染された脱脂粉乳を使った雪印の集団食中毒事件が発生して以来、脱脂粉乳の需要が減少し、余り始めた。脱脂粉乳の需要に合わせて生乳を生産すると、バターが足りなくなる。2014年のバター不足の根っこには、この需給関係がある。
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■バター不足を招いた農林水産省による輸入制限
 当時、日本ではバターが足りなくなったが、世界では余っていて価格も低迷していた。国内の不足分を輸入しようと思えば、安い価格でいくらでも輸入できた。
 それが輸入されなかったのは、制度的にバター輸入を独占している農林水産省管轄の独立行政法人農畜産業振興機構(ALIC)が、国内の酪農生産(乳価)への影響を心配した農林水産省の指示により、必要な量を輸入しなかったからである。なぜ農林水産省はALICに輸入させなかったのだろうか?
 バターを間違って過剰に輸入して余らせると、それを国内で余っている脱脂粉乳と合わせて加工乳が作られる。牛乳市場で加工乳を含めた供給が増える。これだけでも価格の下げ要因となる。
 さらに、問題を複雑にするのは、農林水産省の制度によって、生乳価格は一物一価ではなく、バターや脱脂粉乳の原料となる「加工原料乳」の価格は「飲用牛乳向け」の価格より33%も安いことだ。このため、もともとは加工原料乳を原料とする加工乳のコスト・価格は飲用牛乳より安くなる。安い加工乳が多く出回ると、飲用牛乳の価格も下げざるをえない。
 当然乳業メーカーは乳価の引下げを酪農団体に要求する。そうなると、酪農団体や農林族議員は農林水産省にバターを輸入しすぎたせいだと批判する。かれらの気分を害すると出世できなくなることを恐れて、役人は十分な量のバターを輸入させない。酪農団体も乳製品の輸入に反対し続けてきた。
 ALICではなく自由な民間貿易に任せていれば、十分な量が輸入され、バター不足は起きなかった。結果的に多く輸入されても、バターや生乳の価格が下がるだけで消費者は困らない。
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■「生乳廃棄」は酪農団体が自ら招いた問題
 脱脂粉乳の在庫が増大し、生乳を廃棄したり、生乳生産を減少したりしなければならなくなったことを、酪農家は国の場当たり的な政策のせいだと言う。
 バター不足の後、農林水産省は、バターの供給が足りなくならないよう、酪農団体に生乳生産増加を指導した。バターの需給が均衡すると、脱脂粉乳が過剰になり在庫が増大した。そこで今度は減産を指導している。
 脱脂粉乳が過剰にならないようにすれば、国産ではバター全てを供給できないので、不足分を輸入すればよい。しかし、輸入には酪農団体が反対する。このため、農林水産省がバターを全て国産で供給できるよう生乳生産増加を指示した結果、脱脂粉乳が過剰になったのである。
 酪農家なら、乳製品の需給関係も理解すべきである。増産と減産を繰り返したくないなら、一定量のバターの輸入を認めるしかない。自らの政治活動が生乳廃棄、減産を招いたのだ。
  …  引用終り  …
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 輸入飼料で作る、高価な国産牛乳の価格を維持するために、政管の庇護のもと、乳業メーカーと生産者団体とは量を調整している。
 政管とは、農林族議員と農林水産省を指す。
 誰のためにやっているのかよく分からない価格と需給の不自然な決定方式が、時期により必要ないもの(牛乳)が高値で余り、時期により必要なもの(バター)が定期的に不足する。
 海外の飼料に依存する生産者団体は、税金の投入なしに存続し得なくなり、政管を頼らざるを得なくされている。
 米の食管制度は、日本の農業の自立を助ける意味で理解できるが、海外の飼料と燃料と税金によて成り立っている酪農は、どうしても日本に必要なのだろうか?
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 この後には、酪農家の高齢化で廃業が増えて後継者不足になり、国産の乳製品の供給不安が生じると思われる。現在の構造が維持されれば、乳製品の供給不足は続き、物価は上昇する。





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最終更新日  2023年03月27日 06時00分09秒コメント(0) | コメントを書く


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